特開2017-100994(P2017-100994A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本除蟲菊株式会社の特許一覧

特開2017-100994ゴキブリ集合誘引物質、ゴキブリ集合誘引剤及びゴキブリ駆除剤
<>
  • 特開2017100994-ゴキブリ集合誘引物質、ゴキブリ集合誘引剤及びゴキブリ駆除剤 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-100994(P2017-100994A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】ゴキブリ集合誘引物質、ゴキブリ集合誘引剤及びゴキブリ駆除剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/22 20060101AFI20170512BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20170512BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170512BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20170512BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20170512BHJP
   A01N 25/08 20060101ALN20170512BHJP
   A01N 43/54 20060101ALN20170512BHJP
   A01N 59/14 20060101ALN20170512BHJP
【FI】
   C07D311/22CSP
   A01N43/16 C
   A01P7/04
   A01P19/00
   A01M1/02 A
   A01N25/08
   A01N43/54 F
   A01N59/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-235216(P2015-235216)
(22)【出願日】2015年12月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香谷 康幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 憲忠
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4C062
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA17
2B121BA03
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC06
2B121CC16
2B121CC25
2B121CC31
4C062EE48
4H011AC02
4H011AC07
4H011BA01
4H011BA08
4H011BB08
4H011BB09
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC19
4H011BC20
4H011BC22
4H011DA02
4H011DA03
4H011DC05
4H011DC06
4H011DD05
4H011DD07
4H011DE17
4H011DG13
4H011DG14
4H011DH02
4H011DH09
4H011DH10
4H011DH18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴキブリ集合誘引物質、並びにゴキブリ集合誘引物質を含有するゴキブリ誘引剤及びゴキブリ駆除剤の提供。
【解決手段】4位にオキソ基、及び8位にヒドロキシ基を有し、芳香族ヒドロキシ基の水素原子と環状カルボニル化合物のカルボニル酸素原子との水素結合によりゴキブリ集合誘引を発現する、式(I)で表されるベンゾ[b]ピラン−4−オン誘導体又はその塩、及びこれを含有する、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ等のゴキブリの誘引剤及び駆除剤。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴキブリ集合誘引物質である、一般式(I)
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよいアリール基;又は
置換されていてもよいヘテロアリール基
を表す。)
のいずれかで表される化合物又はその塩。
【請求項2】
〜Rが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
が、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
が、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
及びRが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
が水素原子であり、R、R及びRのうちR及びR4を含むいずれか2つ以上が置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる請求項3〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
ゴキブリ集合誘引物質である、下記式(I−1)〜(I−3)
【化2】
のいずれかで表される化合物又はその塩。
【請求項8】
ゴキブリ集合誘引物質である、下記式(I−1)
【化3】
で表される化合物又はその塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を少なくとも一種以上含有するゴキブリ集合誘引剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を少なくとも一種以上含有するゴキブリ駆除剤。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその塩の少なくとも一種以上の、ゴキブリを集合誘引又は駆除するための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリ集合誘引物質、ならびにゴキブリ集合誘引物質を含有するゴキブリ集合誘引剤及びゴキブリ駆除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴキブリ類は代表的な衛生害虫であり、一般家庭はもちろん産業上の様々な場所に侵入して大きな被害を与えている。そのため、多くの駆除方法が用いられているが、棲息場所が人間生活と密着しているため、殺虫剤の使用は制限され、また狭い隙間等に隠れる習性を持ち、繁殖力が強いことから従来の捕虫器や食毒剤では効果的な駆除が得られていないのが現状である。
【0003】
ゴキブリ類のうち、特にワモンゴキブリは、熱帯及び亜熱帯地域を中心に世界的に広く生息しており、食中毒腸炎(サルモネラ菌)や赤痢、レプラ等の病原菌を有することが報告されている。日本では、関西以南の温暖な地域及び市街地の地下街やビルを中心に存在が確認されている。ワモンゴキブリは、国内で多く見られる他のチャバネゴキブリ、クロゴキブリ等に比べ、体長が大きい、産卵回数が多い、成虫寿命が長い等の好ましくない特徴も多く有しているため、特に効果的な駆除が望まれていた(非特許文献1)。
【0004】
本発明者等はワモンゴキブリの虫体及び糞に、ゴキブリ集合誘引物質が含まれることを見出した。さらに研究を続け、いくつかのゴキブリ集合誘引物質の同定に成功した(特許文献1)。しかしながら、さらに高活性を示すゴキブリ集合誘引物質の探索が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本家庭用殺虫剤工業会編『家庭用殺虫剤概論III』
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/098681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はゴキブリ集合誘引物質、並びに該ゴキブリ集合誘引物質を含むゴキブリ集合誘引剤又はゴキブリ駆除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、芳香族ヒドロキシ基の水素原子と環状カルボニル化合物のカルボニル酸素原子との水素結合がゴキブリ集合誘引の発現に重要であるという知見から、新たなゴキブリ集合誘引物質を見出した。さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成が優れた効果があることを見出したものである。
(1) ゴキブリ集合誘引物質である、一般式(I)
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよいアリール基;又は
置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。)
のいずれかで表される化合物又はその塩。
(2) R〜Rが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、前記(1)に記載の化合物又はその塩。
(3) Rが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、前記(1)又は(2)に記載の化合物又はその塩。
(4) Rが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の化合物又はその塩。
(5) R及びR4が、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、前記(1)〜(4)のいずれか1に記載の化合物又はその塩。
(6) Rが水素原子であり、R、R及びRのうちR及びR4を含むいずれか2つ以上が置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる前記(3)〜(5)のいずれか1に記載の化合物又はその塩。
(7) ゴキブリ集合誘引物質である、下記式(I−1)〜(I−3)
【化2】
のいずれかで表される化合物又はその塩。
(8) ゴキブリ集合誘引物質である、下記式(I−1)
【化3】
で表される化合物又はその塩。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれか1に記載の化合物又はその塩を少なくとも一種以上含有するゴキブリ集合誘引剤。
(10) 前記(1)〜(8)のいずれか1に記載の化合物又はその塩を少なくとも一種以上含有するゴキブリ駆除剤。
(11) 前記(1)〜(8)のいずれか1に記載の化合物又はその塩の少なくとも一種以上の、ゴキブリを集合誘引又は駆除するための使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたゴキブリ集合誘引効果を有するゴキブリ集合誘引物質を提供することができ、該ゴキブリ集合誘引物質を使用して、高いゴキブリ誘引効果を有するゴキブリ集合誘引剤及びゴキブリ駆除剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ゴキブリ集合誘引活性を確認する生物試験に用いるリニアトラックオルファクトメーター(線形通路付き嗅覚計)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において「ゴキブリ」とは、分類学上の昆虫網ゴキブリ目に属する種類のうち、シロアリを除く昆虫を意味し、例えば、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、クロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)、ヤマトゴキブリ(Periplaneta japonica)等が含まれるが、これらには限定されない。
【0013】
本発明のひとつの態様は、ゴキブリ集合誘引物質に関する。
本発明において、「ゴキブリ集合誘引」とは、ゴキブリの成虫/幼虫又はオス/メスの区別に関わらずに前記ゴキブリを寄り集めることを包含する。また、本発明において、「ゴキブリ集合誘引物質」とは、ゴキブリ集合誘引活性を有する物質を意味し、以後「ゴキブリ集合誘引化合物」ともいう。
【0014】
本発明のゴキブリ集合誘引物質は、好ましくは下記一般式(I)
【化4】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよいアリール基;又は
置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。)
のいずれかで表される化合物又はその塩である。
【0015】
「(C−C)アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ターシャリーペンチル基、ネオペンチル基、2,3−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ノルマルヘキシル基、イソヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、3,3−ジメチルブチル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基が挙げられ、
「(C−C)シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜6個の環状のアルキル基が挙げられ、
「(C−C)アルケニル基」としては、例えばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ペンテニル基、1−ヘキセニル基、3,3−ジメチル−1−ブテニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニル基が挙げられ、
「(C−C)シクロアルケニル基」としては、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル等の炭素原子数3〜6個の環状のアルケニル基が挙げられ、
「(C−C)アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−メチル−1−プロピニル基、2−メチル−3−プロピニル基、ペンチニル基、1−ヘキシニル基、3−メチル−1−ブチニル基、3,3−ジメチル−1−ブチニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニル基が挙げられる。
【0016】
「(C−C)アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ターシャリーペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3−ジメチルプロピルオキシ基、1−エチルプロピルオキシ基、1−メチルブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,1,2−トリメチルプロピルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基が挙げられ、
「(C−C)シクロアルコキシ基」としては、例えば、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素原子数3〜6個の環状のアルコキシ基が挙げられ、
「(C−C)アルケニルオキシ基」としては、例えば、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニルオキシ基が挙げられ、
「(C−C)アルキニルオキシ基」としては、例えば、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニルオキシ基が挙げられる。
【0017】
「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、2−アンスリル基等の(C−C14)アリール基が挙げられ、
「ヘテロアリール基」としては、例えば、フラン、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、オキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリン、チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、トリアゾール又はテトラゾール等から水素原子がひとつ除かれたものが挙げられる。
【0018】
「(C−C)」、「(C−C)」、「(C−C)」等の表現は各種置換基の炭素原子数の範囲を示す。更に、上記置換基が連結した基についても上記定義を示すことができ、例えば、「(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基」の場合は直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルコキシ基が直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基に結合していることを示す。
【0019】
本発明における、塩としては、いずれの塩であってもその機能を有するものであればいずれも可能である。例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。前記酸付加塩としては、特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。前記金属塩としては、特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、特に限定されず、トリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、モノメチルアンモニウム塩等が挙げられる。前記有機アミン付加塩としては、特に限定されず、例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、モルホリン塩、ピペリジン塩等の付加塩が挙げられる。前記アミノ酸付加塩としては、特に限定されず、例えば、リジン塩、グリシン塩、フェニルアラニン塩等の付加塩等が挙げられる。
【0020】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物及びその塩は、その構造式中に1つ又は複数個の不斉中心を有する場合があり、2種以上の光学異性体及びジアステレオマーが存在する場合もあり、本発明は各々の光学異性体及びそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。
【0021】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物及びその塩は、単独で用いてもよいし、複数のものを混合して用いてもよい。
【0022】
本発明のひとつの好ましい態様において、ゴキブリ集合誘引物質は、前記一般式(I)のR〜Rが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、化合物又はその塩である。
【0023】
本発明のひとつのより好ましい態様において、ゴキブリ集合誘引物質は、前記一般式(I)のRが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、化合物又はその塩である。本態様において、前記一般式(I)のR〜Rは、上記と同様であってよく、ゴキブリ集合誘引活性の観点から、好ましくは、R〜Rが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である。
【0024】
本発明の別のひとつのより好ましい態様において、ゴキブリ集合誘引物質は、前記一般式(I)のRが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、化合物又はその塩である。本態様において、前記一般式(I)のR〜Rは、上記と同様であってよく、ゴキブリ集合誘引活性の観点から、好ましくは、R〜Rが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様において、ゴキブリ集合誘引物質は、前記一般式(I)のR及びRが、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である、化合物又はその塩である。本態様において、前記一般式(I)のR及びRは、上記と同様であってよく、ゴキブリ集合誘引活性の観点から、好ましくは、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい(C−C)アルキル基、置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基、置換されていてもよい(C−C)アルケニル基、及び置換されていてもよい(C−C)アルキニル基からなる群から選ばれる基である。
【0026】
本発明において、「置換されていてもよい」とは、水素原子が水素原子以外の原子又は基に置換されている場合を包含し、水素原子以外の原子又は基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、水酸基、(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)アルケニル基、(C−C)シクロアルケニル基、(C−C)アルキニル基、(C−C)アルコキシ基、(C−C)シクロアルコキシ基、(C−C)アルケニルオキシ基、(C−C)アルキニルオキシ基、(C−C)アルキルチオ基、(C−C)シクロアルキルチオ基、(C−C)アルケニルチオ基、(C−C)アルキニルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)シクロアルキルスルフィニル基、(C−C)アルケニルスルフィニル基、(C−C)アルキニルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)シクロアルキルスルホニル基、(C−C)アルケニルスルホニル基、(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基等が挙げられる。これらの具体例は、上記したもの等が挙げられる。
このような原子又は置換基は、「置換されていてもよい」置換基に好ましくは1〜6個程度であり、複数のときは同一又は異なっていてもよい。
【0027】
本発明の別のひとつの態様において、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であってもよい。
【化5】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよいアリール基;又は
置換されていてもよいヘテロアリール基
を表し、
〜Rから選ばれる2つは、それらが結合する炭素原子と共に環を形成する。)
で表される化合物又はその塩。
上記、R〜Rから選ばれる2つが、それらが結合する炭素原子と共に形成する環としては、特に限定されず、脂環式環であってもよく、芳香環であってもよい。上記環としては、例えばシクロアルカン環、シクロアルケン環、ヘテロアルキル環、アリール環、ヘテロアリール環等が挙げられ、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジヒドロフラン環、ジオキソラン環、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等が挙げられる。上記環の炭素数は特に限定されないが、1〜15のものが好ましい。
【0028】
なお、本発明のひとつの態様においては、前記一般式(I)で表される化合物において、Rがハロゲン原子である場合が除かれてもよい。
【0029】
本発明において、ゴキブリ集合誘引物質の活性を確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、リニアトラックオルファクトメーター(線形通路付き嗅覚計)(図1)を用いた生物試験が挙げられる。
【0030】
リニアトラックオルファクトメーター(線形通路付き嗅覚計)とは、一般的に、昆虫の揮発性成分への反応を観察するために用いられる生物検定装置をいい、装置分岐部で誘引成分を含む気流に被験昆虫が誘引されるようにした装置である(日林誌、89(2)2007『揮発性成分のニホンキバチ成虫に対する誘引活性試験を行うオルファクトメーターの作成』p135-137、農業環境研究叢書 第17号『農業生態系の保全に向けた生物機能の活用』p108-134等を参照)。
【0031】
前記リニアトラックオルファクトメーターを用いた生物試験を具体的に説明する。図1の中央の筒の上部の1から吸引すると、左右の筒の上部(2a及び2b)から空気が入り、横筒を通ってそれぞれ中央の筒上部へと流れる気流が発生する仕組みとなっている。左筒がコントロール側、右筒がサンプル側である。図1の筒に吊下げた金属製のディスクである3にサンプルを塗布し、中央の筒下部の4に供試虫(7〜10日齢の幼虫)を入れ、中央の筒上部からポンプでゆっくり吸引する(2.5L/分)。25±1℃、相対湿度40〜60%、全暗の条件で、供試虫を5分間自由に行動させ、その後コントロール側及びサンプル側に移動した供試虫を数える。その後、下記式から余剰比係数(EPI値)を算出する。
EPI=(NS−NC)/(NS+NC)
(式中、NSはサンプル側に移動した供試虫の数、NCはコントロール側に移動した供試虫の数である。)
EPI値が1に近いほど、ゴキブリ集合誘引活性が高いことを示す。
【0032】
本発明の別の態様は、前記一般式(I)で表される化合物を含むゴキブリ駆除剤又はゴキブリ集合誘引剤に関する。
【0033】
本発明のゴキブリ駆除剤又はゴキブリ集合誘引剤における前記一般式(I)で表される化合物又はその塩の配合量は、ゴキブリ集合誘引効果が発揮されれば特に限定されず、剤形や適用方法、使用場所に応じて適宜選択することができる。例えば、ゴキブリ駆除剤の総量に対し、前記一般式(I)で表される化合物又はその塩を、例えば、通常2.0×10−7ppm〜1ppm(2.0×10−11〜1.0×10−4重量%)、好ましくは4.0×10−6ppm〜0.5ppm(4.0×10−10〜5.0×10−5重量%)の濃度で配合してよい。
【0034】
本発明の好ましい態様では、例えば、本発明のゴキブリ集合誘引物質を、殺虫剤を含む食毒剤に混合したり、粘着式捕虫器用の餌に混合して使用したりしてもよく、固形剤(例えば、粉剤、粒剤等)、エアゾール剤、液剤、シートなどの各種ゴキブリ駆除剤に適宜適用して駆除効果の増強を図ることができる。所望により、本発明の前記ゴキブリ駆除剤又は前記ゴキブリ集合誘引剤に対して、種々の添加剤が、当分野における技術常識に従って使用される。
【0035】
前記殺虫剤としては、特に限定されないが、例えば、ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、レスメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、フタルトリン、イミプロトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、プラレトリン、フェンフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、ジメフルトリン、モンフルオロトリン等のピレスロイド剤;フェニトロチオン、トリクロルホン、ジクロルボス、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン剤;カルバリル、メチルカルバミン酸−2−(1−メチルプロピル)フェニル(BPMC)、プロポクスル、セビン等のカーバメート剤;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫剤;ヒドラメチルノン等のヒドラゾン系殺虫剤;フィプロニル等のフェニルピラゾール系殺虫薬;ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられ、これらは、マイクロカプセル化又はサイクロデキストリンで包接化されてもよい。食毒剤を調製するために用いられる担体としては、ケイ酸、カオリン、タルク等の各種鉱物質粉末;木粉、とうもろこし粉、小麦粉、でんぷん等の各種植物質粉末;糖蜜、脱脂粉乳、魚粉等の成分;又は、アビオン等の賦形剤、固着剤等を挙げることができる。また、粘着式捕虫器に使用される基材としては、天然ゴム系、又は、ポリブテン、ポリイソブテンを主体とし、ロジン、パラフィンワックス等で粘着力を高めた合成ゴム系粘着物を例示できる。その他、必須ではないが、芳香剤、防臭剤、殺菌剤、安定剤、溶剤等の補助成分を適宣配合することによって、効力の優れた多目的組成物が得られる。
【0036】
こうして得られたゴキブリ駆除剤又はゴキブリ集合誘引剤は、台所、倉庫、冷蔵庫の裏等、ゴキブリが徘徊する場所に適用すれば、ゴキブリ等に対し高い集合誘引効果及び/又は高い駆除効果を奏するものである。本発明のゴキブリ駆除剤又はゴキブリ集合誘引剤の形態は特に限定されず、液剤又は固剤とすることができる。
【0037】
前記液剤の調製において用いられる担体としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ケロシン、パラフィン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。前記液剤は、さらに、通常の塗膜形成剤、乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、安定剤、噴射剤等の添加剤を配合することができ、塗布形態、接着剤形態、乳剤、分散剤、懸濁剤、ローション、ペースト、クリーム、噴霧剤、エアゾール等の形態で利用することができる。
【0038】
前記添加剤としては、例えばニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル樹脂等のビニル系樹脂;アルキッド系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム、ポリビニルアルコール等の塗膜形成剤;石鹸類;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルアリールスルホン酸塩等の界面活性剤;液化石油ガス、ジメチルエーテル、フルオロカーボン、液化炭酸ガス等の噴射剤;カゼイン、ゼラチン、アルギン酸等を挙げることができる。
【0039】
前記固剤の調製において用いられる担体としては、例えばケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、ゼオライト、珪藻土、タルク、クレー、炭酸カルシウム、陶磁器粉等の鉱物質粉末;木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉等の植物質粉末;シクロデキストリン等の包接化合物等、又はパルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体;セルロール又は再生セルロール製のビーズ及び発泡体を挙げることができる。さらに、該固剤の調製において、例えばトリシクロデカン、シクロドデカン、2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、トリメチレンノルボルネン等の昇華性担体;又はパラジクロロベンゼン、ナフタレン、樟脳等の昇華性防虫剤等を用い、上記誘引活性物質を溶融混合または擂潰混合後に成型して昇華性固剤とすることもできる。
【0040】
また、前記一般式(I)で表される化合物又はその塩は、例えばポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等を用いたスプレードライ法;ゼラチン、ポリビニルアルコール、アルギン酸等を用いた液中硬化法;コアセルベーション法等に従いマイクロカプセル化した形態に調製することもでき、ベンジリデン−D−ソルビトール、カラギーナン等のゲル化剤を用いてゲルの形態に調製することもできる。さらに、本発明の
ゴキブリ集合誘引物質に犬猫忌避剤、鳥の忌避剤、蛇の忌避剤、殺虫・殺ダニ剤、効力増強剤、酸化防止剤、齧歯類動物駆除及び忌避剤、昆虫成長制御物質、摂餌物質、他の誘引活性成分であるアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミンなどのアルキルアミン類、2−ジメチルアミノエタノール、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールなどのアミノアルコール類、ペリプラノン類、ボルニルアセテート、テルペノイド類、ゴキブリ集合誘引物質である一般式(II)〜(IV)
【化6】
(式中、Ra〜Re及びRa’〜Re’は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルケニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルコキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルケニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルキニルオキシ基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基;
置換されていてもよい(C−C)アルコキシハロ(C−C)アルキル基;
置換されていてもよいアリール基;又は
置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、
また、Xはメチレン基(-CH2-)または、酸素原子を表す。
aとRb は、それらが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。)
のいずれかで表される化合物又はその塩、さらには殺菌剤、防黴剤、防腐剤、着香料、着色料、誤食防止剤等を配合することもできる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0042】
<実施例1>2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6,8−トリメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの製造
4,6−ジメチル−1,3−ベンゼンジオール(730mg,5.3mmol)とクロトン酸(540mg,6.3mmol)の混合物に室温下でボロントリフルオライドジブチルエーテラ−ト5mLを滴下し、70℃で5時間撹拌した。反応液に冷水を注加し、これを酢酸エチルで2回抽出した。該有機層を飽和重曹水溶液、食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式
【化7】
で示される2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6,8−トリメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを50mg得た。
黄色固体:H−NMR (CDCl,TMS) δ(ppm):1.51(d, 3H),2.10(s, 3H),2.13(s, 3H),2.67(m, 2H),4.52(m, 1H),7.11(s, 1H),11.82(s, 1H)
【0043】
<実施例2>2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン及び2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,8−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの製造
4−メチル−1,3−ベンゼンジオール(870mg,7.0mmol)とクロトン酸(720mg,8.4mmol)の混合物に室温下でボロントリフルオライドジブチルエーテラ−ト6mLを滴下し、70℃で3時間撹拌した。反応液に冷水を注加し、これを酢酸エチルで2回抽出した。該有機層を飽和重曹水溶液、食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式
【化8】
で示される2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを6mg得た。
黄色固体:H−NMR (CDCl,TMS) δ(ppm):1.52(d, 3H),2.15(s, 3H),2.67(m, 2H),4.52(m, 1H),6.34(d, 1H),7.24(d, 1H),11.96(s, 1H)
さらに極性の高い成分として下記式
【化9】
で示される2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,8−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを6mg得た。
黄色固体:H−NMR (CDCl,TMS) δ(ppm):1.55(d, 3H),2.11(s, 3H),2.67(m, 2H),4.52(m, 1H),6.42(d, 1H),7.25(d, 1H),11.57(s, 1H)。
【0044】
<<試験例1>>生物試験
実施例1で製造した化合物について、各化合物10−3ピコグラム(pg)〜10pgを、ワモンゴキブリ若齢幼虫について、リニアトラックオルファクトメーターを用いた生物試験に供し、そのゴキブリ集合誘引活性を確認した。その結果、実施例1で製造した化合物は国際公開第2015/098681号に記載している3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−[1−メチルプロピル]−5,7−ジメチル−1H−2−ベンゾピラン−1−オン(下記式(化10)で示した化合物)の1.5倍の集合誘引活性を示すことが分かった。
【化10】
【0045】
次に、本発明のゴキブリ集合誘引物質を用いた各種製剤化の具体例を示す。なお、「部」は「重量部」を示す。
<実施例3>食毒剤の製造
ヒドラメチルノン5部、ホウ酸15部、脱脂粉乳10部、ゴマ油5部、グリセリン15部、でんぷん25部、米ぬか20部、精製水5部からなる混合物に、2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6,8−トリメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(実施例1[化7]で示した化合物)又は2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(実施例2[化8]で示した化合物)を0.1ppmの含有量になるように加えてよく混練したものをそれぞれ約10gずつ搾り出して成形し、食毒剤を調製した。
【0046】
<実施例4>捕獲器の製造
米ぬか30部、魚粉15部及びでんぷん糊剤50部を精製水5部で練ったものに、2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,6,8−トリメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(実施例1[化7]で示した化合物)又は2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,8−ジメチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(実施例2[化9]で示した化合物)が1つの錠剤あたり100ppmとなるよう添加含有させたものを直径15mmで2mm厚の円盤状に打ち抜き、錠剤(重さ1g)を作製した。
次にポリブテン(分子量900)95部、ポリイソブチレン(分子量120万)5部からなる粘着組成物を調製し、この組成物を8×15cmの広さ、厚さ1mmのボール紙に厚さ0.5mmに塗着して粘着板を得た。この粘着板の中央に、先に作製した錠剤を置き、ゴキブリ誘引捕獲器を得た。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により得られるゴキブリ集合誘引物質は、ゴキブリに対して優れたゴキブリ集合誘引活性を有した。該ゴキブリ集合誘引物質を用いることにより、ゴキブリ誘引剤又はゴキブリ駆除剤を提供することができる。

図1