【解決手段】マーキゼット組織の角目組織経編地であって、隣り合う2つの鎖編20,20の間に、複数の挿入糸13,14を相対向して交互に折り返してX状に交差した掛渡部19,19を形成した。
前記掛渡部の両端部を鎖編のループに摺動不能に係止して、前記鎖編と連結編とにより画成される角目の四つ角を剛結したことを特徴とする、請求項1に記載の角目組織経編地の製造方法。
挿入糸を交差して形成した前記掛渡部と、2つの鎖編の間で複数の鎖糸を相対向して交互に折り返してX状に交差した掛渡部とを重合させて編成したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の角目組織経編地の製造方法。
編成を終えた編地全体に少なくとも熱セット加工または樹脂コーティング加工を施したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の角目組織経編地の製造方法。
前記掛渡部の両端部を鎖編のループに摺動不能に係止させ、鎖編と連結編とにより画成される角目の四つ角が剛結されていることを特徴とする、請求項6に記載の角目組織経編地。
挿入糸が交差する前記掛渡部と、2つの鎖編の間で前記複数の鎖糸が相対向して交互に折り返されてX状に交差した掛渡部とを重合させて前記連結編を構成したことを特徴とする、請求項6に記載の角目組織経編地。
【背景技術】
【0002】
作業者の墜落事故防止、工具類や小さな落下物の捕捉等に用いられるネットには、ラッシェル地を素材とした菱目ネットが多用されている(特許文献1)。
この菱目ネットは、強度的に優れた特性を有している反面、ネットを強制的に拡張しなければ菱目を保持できないといった形態安定性に問題があることが知られていて、その縫製加工や、現場設置に多くの手数と時間を要して取扱いに不便であった。
その一方で、経編地の一種としてマーキゼット組織の角目ネットが知られている。
一般的な角目ネットは形態安定性に優れている反面、構造的にネットの交差部が摺動し易いため、大きな外力が加わらないカーテン等のインテリア用途に用いられ、重量落下物の捕捉用途に用いることができなかった。
出願人は、マーキゼット組織の一部の編成糸のずれ動きを抑制する角目組織経編地(角目ネット)を先に提案した(特許文献2)。
図6を参照して説明すると、この角目ネットWは、一定の間隔に配列された鎖編Cと、鎖編Cの間を連結する連結編Rとを有する。連結編Rは、鎖編Cに編込まれる一定長の編込部Fと、鎖編C間に掛け渡される掛渡部Bとにより構成されている。
この角目ネットWでは、鎖編Cの間に複数の連結編R1,R2を掛け渡して掛渡部Bを形成しているが、例えば連結編R2の場合、中間の鎖編C2をひとつ飛ばして右端列の鎖編C1と遠方の鎖編C3との区間bの間で地糸を折り返した構成となっている。
中間の鎖編C2を飛ばして掛け渡す構成としたのは、緯方向の編み糸(掛渡部B)の太さを経方向の編み糸(鎖編C)の太さに合わせて縦横の糸の太さを均一にしてネットの見た目をよくするためであり、経方向の編み糸の太さが大径の場合は2列以上の鎖編Cを飛ばして掛け渡すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した角目ネットWはつぎのような改良すべき課題を有する。
<1>従来の角目ネットWは、鎖編Cに対して掛渡部Bの太さを確保するためのダミーの挿通糸として交差させた構成である。
例えば、区間bに掛け渡した掛渡部Bの一部の地糸は、中間の鎖編C2との交差部において中間の鎖編C2のループ内を摺動可能に挿通した構造となっているため、ネット交差部のズレ動きを確実に拘束できなかった。
すなわち、ニードルループによる拘束効果によってネットの交差部のズレをある程度は抑制できるものの、角目ネットWにニードルループの拘束力を越えるほどの大きな引張力が作用すると、掛渡部Bが破断強度に達する前にネットの交差部にズレを生じる。
ネットの交差部にズレを生じると、角目サイズが拡縮変化したり、地糸が摩擦破断したりするおそれがある。
<2>従来の角目ネットWは角目Dの四つ角に相当するすべての交差部が固定された構成ではなかった。
そのため、角目ネットWの外周縁部を支持部材に固定して現場に張設した場合、落下物を捕捉したときの衝撃力で以て、外周端部に位置する角目Dの角部が口開きするおそれがあった。
<3>従来の角目ネットWは掛渡部Bが引張力に対して十分な強度を発揮することができなかった。
具体的には、隣り合う2つの鎖編C間に、見掛け上3本の地糸が架け渡してあるが、引張力に対抗できるのは、実質的に1本の地糸にすぎず、残り2本の地糸は引張力にほとんど機能しておらず、掛渡部Bの引張強度を高めるために改良の余地がある。
<4>角目ネットWの引張強度を高める方法としては、例えば地糸の糸径を太くしたり、地糸の本数を増やしたりすることが考えられる。
しかしながら、前記した角目ネットWの増強手段は、単位面積当たりの糸量が増してコストが嵩む問題と、重量が増してネットの運搬性と取扱性が悪化するといった新たな問題が生じる。
殊に、学校等の体育館や屋内運動場他、各種建築物等の天井全面を覆う場合には、角目ネットWの平面積に比例して、ネットの単位面積当たりの重量差とコストの影響が大きく表れる。
<5>さらに角目ネットWを構成する地糸の糸径を太くしたり、地糸の本数を増やしたりすると、編地の径が太くなって視覚的にネットが見え易くなる。例えば、角目ネットWを建物の天井落下を防止する捕捉ネットとして用いた場合にはネットの存在が目立ち易い。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、つぎの少なくとも一つの角目組織経編地の製造方法、角目組織経編地および落下物捕捉用ネットを提供することにある。
<1>編地の強度を犠牲にすることなく、角目組織経編地の軽量化が図れること。
<2>編地の交差部の強度を向上させて、角目の四つ角のズレ防止効果を高めること。
<3>施工時の取り扱い、形態安定性等に優れた工業的価値の高い角目組織経編地および落下物捕捉用ネットを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一定の間隔に配列した複数の鎖編と、該鎖編の間に挿入糸を架け渡した連結編とを具備したマーキゼット組織の角目組織経編地の製造方法であって、隣り合う2つの鎖編の間に、複数の挿入糸を相対向して交互に折り返してX状に交差した掛渡部を形成する。
本発明の他の形態においては、前記掛渡部の両端部を鎖編のループに摺動不能に係止して、前記鎖編と連結編とにより画成される角目の四つ角を剛結したことを特徴とする。
本発明の他の形態においては、挿入糸を交差して形成した前記掛渡部と、2つの鎖編の間で複数の鎖糸を相対向して交互に折り返してX状に交差した掛渡部とを重合させて編成してある。
本発明の他の形態においては、補強用のタテ糸をさらに具備し、該タテ糸を鎖編に沿って編成してもよい。
本発明の他の形態においては、編成を終えた編地全体に少なくとも熱セット加工または樹脂コーティング加工を施してもよい。
本発明は、一定の間隔に配列した複数の鎖編と、該鎖編の間に挿入糸が架け渡された連結編とを具備したマーキゼット組織の角目組織経編地であって、隣り合う2つの鎖編の間に、複数の挿入糸が相対向して交互に折り返されてX状に交差した掛渡部を具備する。
本発明の他の形態においては、前記掛渡部の両端部を鎖編のループに摺動不能に係止させ、鎖編と連結編とにより画成される角目の四つ角が剛結されている。
本発明の他の形態においては、挿入糸が交差する前記掛渡部と、2つの鎖編の間で前記複数の鎖糸が相対向して交互に折り返されてX状に交差した掛渡部とを重合させて前記連結編を構成している。
本発明の他の形態においては、補強用のタテ糸を更に具備し、該タテ糸が鎖編に沿って配置されている。
本発明は前記した何れかの角目組織経編地で形成した落下物捕捉用ネットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明はつぎの効果を奏する。
<1>隣り合う2つの鎖編の間にX状に掛け渡した複数の挿入糸のすべてを、引張り抵抗材として機能させることができる。
そのため、角目組織経編地の強度を犠牲にすることなく、角目組織経編地を編成するすべての地糸の太さを細くできる。
<2>すべての地糸の太さを細くできることに伴い、角目組織経編地の編成に用いる総糸量を削減できて、大幅な軽量化とコストの削減が可能となる。
殊に、角目組織経編地を、学校等の体育館や屋内運動場他、各種建築物等の天井全面を覆う落下物捕捉用ネットとして適用する場合には、ネットの平面積に比例して軽量化と低コスト化が効果が顕著に表れる。
<3>隣り合う2つの鎖編の間に掛け渡した複数の挿入糸および複数の鎖糸のすべてを、引張抵抗材として機能させることができるので、地糸の糸径を大径化したり本数を増やしたりせずに角目組織経編地の連結編の引張強度を格段に高めることができる。
<4>編地のすべての交差部のズレを防止できるので、角目の四つ角に強度のバラツキがなくなり、角目組織経編地の外周端部に位置する角目の口開きを効果的に防止できる。
<5>地糸の糸径を細くできることに伴い、視覚的に角目組織経編地の存在が見えにくくなり、角目組織経編地を落下物捕捉用ネットとして適用したときにネットの存在が目立たず、景観性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
<1>角目組織経編地の概要
図1に本発明に係る角目組織経編地10の一例を示し、
図2に
図1の角目組織経編地10の組織図を示し、
図3に
図1の角目組織経編地10の部分拡大図を示す。
図1を参照すると、角目組織経編地10は、一定の間隔に配列した複数の鎖編20と、隣り合う鎖編20,20の間を二種類の地糸(鎖糸と挿入糸)で以てX状に交差して連結した連結編30と、鎖編20および連結編30とにより画成する方形の角目40とにより構成し、例えばラッシェル機等の経編機により製造する。
【0011】
<2>角目組織経編地の構成
図2,3を参照して説明すると、角目組織経編地10は、複数の鎖糸11,12で以て一定の間隔に配列した複数の鎖編20と、複数の挿入糸13,14で以て隣り合う鎖編20,20の間を連結した2種類の角目編地(第1角目編地10a、第2角目編地10b)とにより構成した複合編地である。
第1角目編地10aと第2角目編地10bは同時並行して編成することで、分離不能な一枚ものの角目編地となる。
なお、本例では鎖編10に補強用のタテ糸15をS字状に挿入した形態について示すが、タテ糸15は必須ではなく省略される場合もある。
【0012】
<2.1>第1角目編地
図2,4を参照して説明すると、第1角目編地10aは、2系統の鎖糸11,12で以てコース方向に沿って複数の連続ループ(ニードルループおよびシンカーループ)として編み込まれた一定長の編込部16と、隣り合う鎖編20,20の間でX状に交差して掛け渡された掛渡部17とにより構成する。
隣り合う鎖編20,20の間において、編込部16と掛渡部17とがその左右を入れ変えて、略90度の角度で交互に折り返し、これを繰り返して第1角目編地10aを編成する。なお、編込部16のループ数は適宜選択する。
【0013】
図4は
図2に示した第1角目編地10aの組織図から鎖糸11,12のみを取り出した模式図(鎖糸11,12を黒く塗り潰して示す)である。
同図(A)は一方の鎖糸11による模式図を示し、同図(B)は他方の鎖糸12による模式図を示し、同図(C)は(A)と(B)を組み合せて両鎖糸11,12を交差させた模式図を示している。
例えば
図4(A),(B)を参照すると、一方の鎖糸11は右列の鎖編20から左列の鎖編20へ移動して適数経編する工程と、次いでまた元の右列に戻って適数経編する工程を繰り返して編成する。
他方の鎖糸11もまた同様に左列の鎖編20から右列の鎖編20へ移動して適数経編する工程と、次いでまた元の左列に戻って適数経編する工程を繰り返して編成する。
実際に編地を編成する際には、
図4(A)と
図4(B)の工程が並行して進行する。
各鎖糸11,12の編込部16のコース長は共に同一であり、同一の段で鎖糸11,12の左右が交互に入れ代わるため、2本の掛渡部17,17は隣り合う2つの鎖編20,20間でX状に交差して掛け渡した状態となる。
ここでいう「X状」とは、編地を正面視した状態における2本の掛渡部17,17の掛け渡した形状を指す。
これにより、隣り合う鎖編20,20と、該鎖編20と交差して位置する掛渡部17,17とにより方形の角目40を画成している。
【0014】
<2.2>第2角目編地
図2,5を参照して説明すると、第2角目編地10bは、2系統の挿入糸13,14で以て鎖編20にS字状に挿入して編成された一定長の挿入部18と、隣り合う鎖編20,20間でX状に交差して掛け渡された掛渡部19とにより構成する。
隣り合う鎖編20,20の間において、挿入部18と掛渡部19とがその左右を入れ変えて、略90度の角度で交互に折り返し、これを繰り返して第1角目編地10aを編成する。
両挿入糸13,14の折り返し位置は、前記した鎖糸11,12の折返し位置と一致するように、同一の段で行う。
【0015】
図5は
図2に示した第2角目編地10bの組織図から挿入糸13,14のみを取り出した模式図(挿入糸13,14を黒く塗り潰して示す)である。
同図(A)は一方の挿入糸13による模式図を示し、同図(B)は他方の挿入糸13による模式図である。
例えば
図5(A)を参照すると、一方の挿入糸13は右列の鎖編20から左列の鎖編20へ移動して適数のループを挿通する工程と、次いでまた元の右列に戻って適数のループを挿通する工程を繰り返して編成する。
図5(B)に示すように他方の鎖糸11もまた同様に左列の鎖編20から右列の鎖編20へ向けて略直角に移動して適数のループを挿通する工程と、次いでまた元の左列へ向けて略直角に戻って適数のループを挿通する工程を繰り返して編成する。
実際に編地を編成する際には、
図5(A)と
図5(B)の工程が並行して進行する。
各挿入糸13,14が挿通する挿入部18のループ数は共に同一であり、同一の段で左右が交互に入れ代わるため、2本の掛渡部19,19は隣り合う2つの鎖編20,20間でX状に交差して掛け渡した状態となる。
ここでいう「X状」とは、編地を正面視した状態における2本の掛渡部19,19の掛け渡し形状を指す。
これにより、隣り合う鎖編20,20と、該鎖編20と交差して位置する掛渡部19,19により方形の角目40を画成している。
【0016】
<2.3>第1角目編地と第2角目編地の重合関係
図2,3を参照して第1角目編地10aと第2角目編地10bの各部位の重合関係について説明する。
第1角目編地10bの編込部16と第2角目編地10bの挿入部18が同一の経軸線上で重合し、第1角目編地10bの掛渡部17と第2角目編地10bの掛渡部19が同一の緯軸線上で重合する。
角目組織経編地10の経軸は鎖糸11,12による編込部16と、挿入糸13,14による挿入部18とが重合した連続体により構成し、その緯軸は鎖糸11,12が重合して交差した掛渡部17,17,19,19の連続体(連結編30)により構成する。
【0017】
<3>連結編
図1に示した連結編30は、隣り合う2つの鎖編20,20の間でX状に交差させて架け渡した鎖糸11,12による掛渡部17,17と、挿入糸13,14による掛渡部19,19とにより構成する。連結編30は少なくとも4本以上の地糸11〜14で構成してあればよい。
従来はコース方向へ向けた編地の補強のみを目的として挿入糸を鎖編20に沿ってS字状に挿入するだけの構成であり、本発明のように隣り合う2つの鎖編20,20の間に挿入糸13,14を掛け渡した構成は存在しなかった。
【0018】
<3.1>連結編の端部構造
2つの鎖編20,20の間に横架した連結編30を構成する鎖糸11,12および挿入糸13,14は、それぞれ同種の地糸を相対向して折り返した構成となっている。
このように2つの鎖編20,20の間に形成される編地を左右対称構造としたのは、連結編30を構成する掛渡部17,17および19,19の両端部を鎖編20のループに摺動不能に係止させるためと、連結編30自体の引張強度を高めるためである。
換言すれば、連結編30を構成する掛渡部17,17および19,19の両端部と鎖編20との交差部を剛結するためと、連結編30の地糸を太くしたり、地糸を増やしたりせずに連結編30の強度を高めるためである。
【0019】
<3.2>挿入糸の折返し位置
ここで重要なことは、掛渡部19,19を形成するために、各挿入糸13,14を、2つの鎖編20,20のコースを越えない範囲で折り返した構成としたことである。
2つの鎖編20,20の範囲で折り返す構成としたのは、掛渡部19,19を構成する各挿入糸13,14が鎖編20を挿通して飛び越えると、各掛渡部19,19と鎖編20との交点を固定できずに、各掛渡部19,19の摺動を許容してしまい、鎖編20,20の間に掛け渡した掛渡部19,19がウェール方向の荷重伝達部材として機能しなくなるからである。
各挿入糸13,14を2つの鎖編20,20のコース内で摺動不能に掛け渡すことで、各挿入糸13,14の摺動を確実に阻止して、鎖編20,20の間におけるウェール方向の荷重伝達部材として機能させることが可能となるから、各挿入糸13,14に使用する糸の太さを従来と比べて細くできる。
連結編30を構成する各鎖糸11,12についても同様である。
【0020】
<4>地糸
角目組織経編地10の地糸11〜15の使用素材は、引張強度に優れた例えばポリエステル、ナイロン、ビニロン、アラミド、紡績糸等の公知の素材を適用でき、これらの素材を組み合せた複合糸、または非複合糸が適用可能である。
地糸11〜15の素材や糸径は使途に応じて適宜選択する。
【0021】
<4.1>地糸の例示
角目組織経編地10を落下防止ネットとして適用する場合には、鎖糸11,12に280〜3300dtのポリエステル、挿入糸13,14に280dt〜3300dtのポリエステル、タテ糸15に280〜3300dtのポリエステルを用いることができる。
上記した地糸の太さは例示であり、これに限定されるものではない。
【0022】
<4.2>角目組織経編地の総糸量について
本発明では2つの鎖編20,20の間において、鎖糸11,12および挿入糸13,14を繰り返し直角に折り返した構成を採ることで、鎖糸11,12および挿入糸13,14を経方向および緯方向の両方向に対する引張抵抗材として機能させることが可能である。
そのため、鎖糸11,12および挿入糸13,14に細径の糸地を使用できることから、角目組織経編地10の編成に必要な総糸量を大幅に削減できる。
したがって、従来の同種の角目編地と比較して、角目組織経編地10を大幅に軽量化できるだけでなく、コストも大幅に低減できる。
【0023】
<5>角目組織経編地の引張特性
上記した角目組織経編地10に、コース(経)方向の引張力が作用すると、編地のコース方向に位置する鎖編20、鎖糸11,12による編込部16、挿入糸13,14による挿通部18、および補強用のタテ糸15が協働して引張力に対抗する。
また角目組織経編地10にウェール(緯)方向の引張力が作用した場合には、鎖編20を越えてウェール方向に位置する複数の連結編30が互いに荷重を伝達し合う。
そのため、ウェール方向に位置する連結編30を構成する複数の掛渡部17,17および19,19(鎖糸11,12と挿入糸13,14)に均等な張力が作用することとなって、掛渡部17,17、19,19を構成する鎖糸11,12および挿入糸13,14のすべての地糸が協働して引張力に対抗する。
角目組織経編地10に角目40の対角線方向の引張力が作用した場合も同様である。
このように、隣り合う2つの鎖編20,20の間に掛け渡した連結編30の掛渡部17,17および19,19を構成する鎖糸11,12と挿入糸13,14のすべてが引張抵抗糸として機能させることができるので、地糸の糸径を太くしたり、鎖編20と連結編30を編成する地糸の本数を増やしたりせずに、従来のマーキゼット組織と比較して、角目組織経編地10の引張強度を格段に高めることができる。
【0024】
<6>角目の強度
図3に示すように、角目40を画成する連結編30の両端部は鎖編20に剛結されていて、その全長が変化しない。
しかも、すべての角目40の四つ角に相当する鎖編20と連結編30との交差部すべてが剛結されている。
そのため、角目組織経編地10に外力が作用しても、角目40の形状とサイズの変化を確実に防止できる。
また角目組織経編地10の外周端末部に位置する角目40に集中的に引張力が作用した場合であっても、端末の交差部の地糸が解けないので角目40の閉鎖形状を維持できる。
このように角目組織経編地10に形成されるすべての角目40が同一構造であるため、角目組織経編地10を任意の方向に切断しても外周端末部に位置する角目40が解けない。
【0025】
<7>角目組織経編地の他の特性
本発明に係る角目組織経編地10は既述した特性にくわえてつぎの特性を有する。
既述したように、角目組織経編地10ではすべての地糸11〜14がコース方向とウェール方向に対してズレをまったく生じないので、地糸11〜14の一部が摩擦により破断することがない。
また、糸径を太くしたり、地糸の本数を増やしたりせずに、角目組織経編地10を編成できるから、編地の単位面積当たりの糸量の問題やコスト高の問題を解消できる。
さらに、角目組織経編地10の軽量化が可能となるから、従来と比べて角目組織経編地10の運搬性と取扱性を改善できる。
さらにまた、角目組織経編地10の連結編30を細く編成できるので、角目組織経編地10の全体が視覚的に目立たなくなる。
【0026】
[変形例]
以降に既述した角目組織経編地10の変形例について説明する。
【0027】
<1>熱セット加工
既述した角目組織経編地10の全体に均一温度の熱セットを施す場合もある。
熱可塑性の地糸で編成した角目組織経編地10に乾熱または湿熱による熱処理を施して編地全体を熱収縮させることで、角目組織経編地10の形態安定性と寸法安定性がさらに向上する。
【0028】
<2>樹脂コーティング加工
角目組織経編地10の表面全体を熱硬化性の樹脂膜で被覆することも可能である。
樹脂の膜厚や樹脂の特性は使途に応じて適宜選択する。
角目組織経編地10の編地表面を樹脂コーティングすることで、鎖糸11,12と挿入糸13,14を硬化樹脂で拘束できるから、角目組織経編地10を構成する鎖編20と連結編30の交差部の強度をさらに高めることができる。
さらに、編地表面を樹脂コーティングすることで、角目組織経編地10の全体に「こし」が出て、施工性の向上と角目組織経編地10の設置後における撓み変形を抑制できる。
また角目組織経編地10の使途に応じて、熱セットと樹脂コーティングを併用する場合もある。
【0029】
[角目組織経編地の使途]
従来の一般的な角目組織経編地は緯方向の引張強度が非常に弱く、使途がカーテン等のインテリア用途に限られていた。
出願人が先に提案した角目組織経編地(特開2012−97376号公報)は、一般的な角目組織経編地と比べて形態安定性と強度の点である程度の改善をみたが、高い強度が求められる学校等の体育館や屋内運動場他、各種建築物等の落下物防止用途に用いるには編地の交点強度と糸量の点で課題があり、実用化へ向けて改善の余地があった。
本発明の角目組織経編地10を、天井材の落下物を捕捉する落下防止ネットに適用した場合の捕捉性能が格段に向上することは勿論のこと、各種の土木用途のネット資材として実用化することが可能である。