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特開2017-101363脱墨廃液処理装置および脱墨処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101363(P2017-101363A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】脱墨廃液処理装置および脱墨処理装置
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
   D21C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-237057(P2015-237057)
(22)【出願日】2015年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晋基
(72)【発明者】
【氏名】中尾 建太
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CA40
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】小型の古紙再生処理装置に搭載可能なコンパクトな構成で、かつ脱水効率に優れた脱墨廃液処理装置および脱墨処理装置を提供する。
【解決手段】古紙パルプを含む脱墨廃液を脱水処理するものであり、始端側から終端側へ向けて上り勾配で傾斜配置し、軸心廻りに回転する螺旋状回転部606と、透水性を有し、螺旋状回転部606の周囲に軸心方向に沿って配置するケーシング605と、軸心方向で螺旋状回転部の終端に対向する押え板617を備え、ケーシング605は、始端側から終端側に向けて重力脱水部615を有し、終端に圧縮脱水部618を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを含む脱墨廃液を脱水処理するものであり、始端側から終端側へ向けて上り勾配で傾斜配置し、軸心廻りに回転する螺旋状回転部と、透水性を有し、螺旋状回転部の周囲に軸心方向に沿って配置するケーシングと、軸心方向で螺旋状回転部の終端に対向する押え板を備え、ケーシングは、始端側から終端側に向けて重力脱水部を有し、終端に圧縮脱水部を有することを特徴とする脱墨廃液処理装置。
【請求項2】
ケーシングは、重力脱水部が螺旋状回転部の周囲において上部開放の開空間をなし、圧縮脱水部が押え板と螺旋状回転部の終端との間に閉空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の脱墨廃液処理装置。
【請求項3】
ケーシングの圧縮脱水部が円筒状をなすことを特徴とする請求項2に記載の脱墨廃液処理装置。
【請求項4】
ケーシングの重力脱水部が所定目幅を有する網状体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の脱墨廃液処理装置。
【請求項5】
螺旋状回転部は、ケーシングから離脱可能な螺旋状羽根部を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の脱墨廃液処理装置。
【請求項6】
古紙を離解処理してなるパルプ溶液を脱墨処理する脱墨部と、脱墨部の下方に配置する請求項1から5の何れか1項に記載の脱墨廃液処理装置を備え、脱墨部に設けた取出し口から流出する脱墨廃液が脱墨廃液処理装置のケーシング内に自然流下することを特徴とする脱墨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプを含むパルプ溶液の脱墨処理において発生する脱墨廃液を処理する技術に係り、古紙の発生場所であるオフィス等に設置して紙を再生することができる古紙再生処理装置等に適用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1では、紙のセルロース繊維及びインキ粒子等の疎水性物質を含む懸濁物質の水性懸濁液から固形分を分離する方法として、水性懸濁液にカチオン性高分子凝集剤を混合して懸濁物質をフロキュレートさせ、フロキュレートされた懸濁液にアニオン性コロイド状物質を混合することにより、フロキュレートされた固形分を凝集させ、この凝集した固形分を含有する懸濁液を加圧濾過に付す方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2では、古紙を離解して得られた古紙パルプ液中に気泡供給部から気泡を供給して脱墨を行う脱墨槽と、脱墨槽から溢流した気泡を受け止めるオーバーフロー槽と、気泡の消滅により生じた脱墨排液の処理を行う排液処理部とを設け、排液処理部が脱墨排液に凝集剤を添加する凝集剤添加部と、凝集剤添加部より凝集剤が添加された脱墨排液を貯留し、凝集物を沈殿させる沈殿槽と、沈殿槽内の上澄み液を外部に排出する外部排出流路とを備える構成が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3では、廃紙フィーダより投入された廃紙に界面活性剤溶液を浸透させて軟化させる解繊槽と、解繊槽内で界面活性剤溶液を攪拌し、軟化した廃紙をファイバ状に解繊する攪拌機と、解繊槽内のファイバ状に解繊された廃紙の解繊物を水面よりも上方に搬送する解繊物搬送手段と、解繊槽内の水面よりも高位置に配置され、解繊物搬送手段により搬送された解繊物をブロック状にプレス成形するための筒体を備えた解繊物ブロック成形手段と、解繊物ブロック成形手段の筒体の一端側開口面に沿ってそれぞれ進退可能な押出しブロックを有し、解繊物ブロック成形手段によりプレス成形され、除水された解繊物ブロックを押出す解繊物押出し手段と、解繊物押出し手段により押出されて落下する解繊物ブロックを解繊物回収手段に案内するシュートと、シュート内を滑り落ちてくる解繊物ブロックを下方で受け止める解繊物回収手段を備える廃紙処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平06−509742
【特許文献2】特開2011−226021
【特許文献3】特許第3268511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、脱墨廃液の脱水処理として、メッシュベルトで脱墨廃液をろ過し、メッシュベルト上の残渣を圧縮ローラ等で圧搾している。しかし、この圧搾ローラによる圧搾では脱水した廃棄物の含水率が90%程度となり、大量の水分が残っている。このため、廃棄物を取り出して処理する作業に労力と費用を要した。
【0007】
また、特許文献3では、解繊物搬送手段として、筒体と筒体内に回動自在に配置したスクリューコンベアを用いている。しかし、この構成において解繊物懸濁液は筒体へ流入しても直ちに脱水されることなく、懸濁液のままで槽内の液面下にある筒体内を搬送され、液面上に搬送されて筒体の小孔から液相分が抜け出して脱水が進行する。さらに、スクリューコンベアで解繊物を解繊物ブロック形成筒体内に送り、ピストンロッドで押圧して脱水する。
【0008】
したがって、特許文献3においては、スクリューコンベアの周囲において筒体が閉空間を形成し、筒体の流路断面の大きさが筒体を流れる解繊物懸濁液の流量を規制する要因となり、脱水量を増加させるためには、筒体およびスクリューコンベアの大型化を必要とする。さらには、脱水処理にスクリューコンベアと、ピストンロッドを有する解繊物押出し用シリンダを必要とするために、装置構成が大型化する要素を含んでおり、古紙の発生場所であるオフィス等に設置して紙を再生する小型の古紙再生処理装置には不向きである。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するものであり、小型の古紙再生処理装置に搭載可能なコンパクトな構成で、かつ脱水効率に優れた脱墨廃液処理装置および脱墨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の脱墨廃液処理装置は、古紙パルプを含む脱墨廃液を脱水処理するものであり、始端側から終端側へ向けて上り勾配で傾斜配置し、軸心廻りに回転する螺旋状回転部と、透水性を有し、螺旋状回転部の周囲に軸心方向に沿って配置するケーシングと、軸心方向で螺旋状回転部の終端に対向する押え板を備え、ケーシングは、始端側から終端側に向けて重力脱水部を有し、終端に圧縮脱水部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の脱墨廃液処理装置において、ケーシングは、重力脱水部が螺旋状回転部の周囲において上部開放の開空間をなし、圧縮脱水部が押え板と螺旋状回転部の終端との間に閉空間を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の脱墨廃液処理装置において、ケーシングの圧縮脱水部が円筒状をなすことを特徴とする。
本発明の脱墨廃液処理装置において、ケーシングの重力脱水部が所定目幅を有する網状体からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の脱墨廃液処理装置において、螺旋状回転部は、ケーシングから離脱可能な螺旋状羽根部を有することを特徴とする。
本発明の脱墨処理装置は、古紙を離解処理してなるパルプ溶液を脱墨処理する脱墨部と、脱墨部の下方に配置する上述した何れかの脱墨廃液処理装置を備え、脱墨部に設けた取出し口から流出する脱墨廃液が脱墨廃液処理装置のケーシング内に自然流下することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、ケーシングに投下された脱墨廃液は、重力脱水部において直ちに液相分が脱水され、水分を含む古紙パルプ等の固形成分が螺旋状回転部の回転により重力脱水部を移送される間に水切りされて圧縮脱水部に送られる。圧縮脱水部では押え板に向けて古紙パルプを螺旋状回転部で送り出すことで圧搾して脱水する。したがって、螺旋状回転部の回転によりケーシング内で古紙パルプを搬送することで古紙パルプの脱水、水切り、圧搾の工程を連続して行うことができ、簡略な構成で脱水効率の向上を図ることができる。
【0015】
重力脱水部が上部開放の開空間をなし、固液分離と透水性に優れた網状体からなることで、ケーシングの流路断面の大きさに規制されることなく一度に多量の脱墨廃液を短時間にケーシングに投下することができ、処理時間の短縮を図ることができる。
【0016】
螺旋状回転部は、ケーシングから離脱可能な螺旋状羽根部を有することで、ケーシング内面や網状体の目に固形分が詰まったときに、螺旋状羽根部を取り外すことで、ケーシングのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0017】
また、脱墨部に設けた取出し口から流出する脱墨廃液が脱墨廃液処理装置のケーシング内に自然流下するので、動力を要することなく脱墨廃液の移送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における脱墨廃液処理装置を示す正面図
図2】同脱墨廃液処理装置の平面図
図3】同脱墨廃液処理装置の図1のA−A矢視断面図
図4】同脱墨廃液処理装置において押え板を閉じた状態を示す斜視断面図
図5】同脱墨廃液処理装置において押え板を開いた状態を示す斜視断面図
図6】同実施の形態における古紙再生処理装置を示すブロック図
図7】同実施の形態における抄紙部を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図6に示すように、古紙再生処理装置は、古紙再生処理系を構成する複数の処理部を有しており、処理部には古紙投入部1、パルパー部9、脱墨部11、抄紙部13、乾燥部14、仕上部15、白水タンク部100、脱墨廃液処理装置101がある。また、古紙再生処理装置は各処理部の運転を制御する制御部700を備えている。
【0020】
本実施の形態において、古紙投入部1は、再生原料の古紙をパルパー部9に投入するものであり、パルパー部9は、古紙を離解用水中で離解させて古紙パルプを含むパルプ溶液を製造する。脱墨部11は、脱墨槽501においてパルプ溶液を脱墨処理し、パルプ溶液中の繊維、インク等の固形分を含んだ脱墨廃液を分離除去し、脱墨したパルプ溶液を抄紙部13に送るとともに、脱墨廃液を取出し口から脱墨排水系102を通して脱墨廃液処理装置101に供給する。
【0021】
図7に示すように、抄紙部13は、脱墨されたパルプ溶液から湿紙12を抄紙するものであり、複数のローラ41に巻回されたメッシュ状のベルトからなる抄紙ワイヤー42と、脱墨されたパルプ溶液を抄紙ワイヤー42上に注ぐヘッドボックス43を有している。
【0022】
抄紙ワイヤー42の無端軌道は、ヘッドボックス43から後述する乾燥ローラ49に至るまでの往路部と、乾燥ローラ49の一部を覆う転移部と、乾燥ローラ49からヘッドボックス43に戻る復路部からなる。
【0023】
抄紙ワイヤー42の往路部には、抄紙ワイヤー42の下部側でヘッドボックス43の近くに、抄紙ワイヤー42の下面に摺接して抄紙ワイヤー42の下面から滴る水を払う水切り部44と、抄紙ワイヤー42を介して湿紙12から水分を吸引する吸引装置45を設けている。
【0024】
さらに吸引装置45の下流側には、複数の絞りローラ41a、41bが抄紙ワイヤー42を挟んで位置しており、絞りローラ41a、41bによって双方のローラ間を通過する抄紙ワイヤー42上の湿紙12を絞る。ヘッドボックス43から抄紙ワイヤー42に供給された直後の湿紙12の含水率を100%とすると、絞りローラ41a、41bを通過した湿紙12は、含水率が60−65%である。
【0025】
乾燥部14は、脱水された湿紙12を乾燥する乾燥ローラ49を備えており、乾燥ローラ49は加熱装置を内蔵している。乾燥ローラ49の一部は複数のローラ50に巻回したカンバスベルト51が無端軌道の一部で乾燥ローラ49を覆っており、乾燥部14においてカンバスベルト51と乾燥ローラ49の外周面との間に湿紙12を挟み、乾燥ローラ49で湿紙12を乾燥させる。抄紙ワイヤー42の転移部とカンバスベルト51との間には、乾燥ローラ49に湿紙12を押圧するカレンダローラ50aを設けている。
【0026】
乾燥した乾紙61は、カンバスベルト51の往路終端位置でスクレーパ111によりカンバスベルト51から剥離させて仕上部15に案内する。
仕上部15は、湿紙12を乾燥して得られる乾紙61に対して仕上工程を行い、得られた再生紙62を紙受部63に排出するものであり、乾紙61を所定のサイズに切断する金属製のカッター装置60およびスリッター装置112が設けられている。
【0027】
白水タンク部100は、抄紙排水系104を通して抄紙部13から流入する古紙パルプを含む排水である白水を貯留するものであり、白水を白水返送系105、106を通して古紙再生処理系の各所へ返送する。パルパー部9に連通する白水返送系106は、パルパー部9の槽体91に離解用水として白水を供給する。
【0028】
給水源、ここでは上水配管107から用水を供給する給水配管108が白水タンク部100に接続しており、給水配管108に電磁弁からなる緊急停止用の元弁装置109を設けている。
【0029】
図1から図5に示すように、脱墨廃液処理装置101は、脱墨部11の脱墨槽501の下方に位置し、脱墨部11から脱墨排水系102を通して動力を必要とせずに自然流下する脱墨廃液を処理するもので、古紙パルプの繊維、インク、トナー等の固形成分と液相成分とを分離する。脱墨部11と脱墨廃液処理装置101とで脱墨処理装置を構成する。
【0030】
脱墨廃液は固形成分の含有率が高く、脱墨剤としての界面活性剤を含んでいる。脱墨廃液に凝集剤を添加することで固形成分と液相との分離が容易に行える。このため、脱墨廃液は、脱墨部11で添加された凝集剤を伴って脱墨廃液処理装置101に流下するか、脱墨排水系102の途中において凝集剤が添加される。凝集剤としては例えばカチオン系のものを使用することができる。
【0031】
脱墨廃液処理装置101は、脱水部601と圧縮部602を有し、一側に脱水部601の脱水系駆動部603を有し、他側に圧縮部602の圧縮系駆動部604を有し、脱水部601と圧縮部602の下方に廃液タンク300およびゴミ用タンク301を有し、圧縮部602の排出側とゴミ用タンク301の間にシューター302を有している。
【0032】
脱墨廃液処理装置101は構造躯体として、脱水系駆動部603に配置する前部外壁板650と、脱水部601と脱水系駆動部603の間に配置する前側固定板651と、脱水部601と圧縮部602の間に配置する後側固定板652と、圧縮部602に配置する後部外壁板653と、前部外壁板650と前側固定板651と後側固定板652を連結する前部連結部材654、655と、後側固定板652と後部外壁板653を連結する後部連結部材656、657を有している。
【0033】
脱水部601は、前側固定板651と後側固定板652の間に位置し、ケーシング605と螺旋状回転部606を有しており、螺旋状回転部606は始端側から終端側へ向けて上り勾配で傾斜配置し、軸心廻りに回転し、ケーシング605は、螺旋状回転部606の周囲に軸心方向に沿って配置している。
【0034】
螺旋状回転部606は、胴軸607の周囲に螺旋状羽根部608を設けたものであり、胴軸607は軸心方向に貫通孔609を有し、貫通孔609に回転駆動軸610を挿入する。螺旋状回転部606は、構造躯体側に回転自在に保持された回転駆動軸610に対して螺旋状羽根部608をネジ止めして着脱自在に設けており、螺旋状羽根部608がケーシング605から離脱可能に設けられている。この構成によりケーシング605の内面や網状体の目に固形分が詰まったときに、螺旋状羽根部608を取り外すことで、ケーシング605のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0035】
また、構造躯体側に対して回転駆動軸610と螺旋状羽根部608を一体的に着脱自在に設けて、回転駆動軸610と螺旋状羽根部608をケーシング605から離脱可能に設けることも可能である。さらに、構造躯体側に対して回転駆動軸610と螺旋状羽根部608と脱水系駆動部603を一体的に着脱自在に設けて、回転駆動軸610と螺旋状羽根部608と脱水系駆動部603をケーシング605から離脱可能に設けることも可能である。また、螺旋状羽根部608はケーシング605から離脱不能に設けることも可能である。
【0036】
本実施の形態では、胴軸607が始端側から終端側まで同一外径の形状をなすが、胴軸607をテーパ状に形成し、始端側を細く、終端側を太く形成することも可能であり、羽根部608のピッチを始端側で広く、終端側で狭くすることも可能である。
【0037】
ケーシング605は、前側固定板651に固定する始端板611と、後側固定板652に固定する終端板612と、始端板611と終端板612の間に掛け渡して螺旋状回転部606の両側に配置する側板613、614と、両側の側板613、614に掛け渡し螺旋状回転部606の軸心に沿って配置した重力脱水部615を有している。重力脱水部615は所定目幅を有して固液分離と透水性に優れた網状体からなり、螺旋状回転部606の周囲に上部開放の開空間を形成しており、断面U字状をなして、底部が螺旋状羽根部608の外周縁に摺接し、側部を側板613、614に固定している。重力脱水部615をなす網状体は、始端板611と終端板612と側板613、614に対して着脱自在に設けることも可能であり、メンテナンスが容易となる。重力脱水部615は上部開放の断面円形状であってもよく、楕円形であってもよい。重力脱水部615が上部開放の開空間をなすことで、異物が混入したときも容易に取り除くことができ、メンテナンスが容易である。しかし、重力脱水部615を閉空間とすることも可能である。
【0038】
重力脱水部615の網材の外側には複数の支持ロッド616を始端板611と終端板612の間に掛け渡して設けている。重力脱水部615は網状体に代えてパンチングメタルやろ布等を使用することも可能であるが、網状体は開口率が大きく、透水性に優れているので、本実施の形態においては脱墨廃液の固液分離に適している。
【0039】
圧縮部602は、螺旋状回転部606の終端に対向して配置する押さえ板617と、ケーシング605の終端板612に設けた円筒状をなす圧縮脱水部618を有し、圧縮脱水部618が押え板617と螺旋状回転部606の終端との間に閉空間を形成する。
【0040】
脱水系駆動部603は、前部外壁板650に設けた脱水駆動モータ660と、脱水駆動モータ660の駆動軸に設けた主動プーリー661と、螺旋状回転部606の回転駆動軸610の一端側に設けた従動プーリー662と、主動プーリー661と従動プーリー662とに掛け渡したベルト663を備え、前部外壁板650に設けたフォトインタプラタ664と回転駆動軸610の一端に設けた遮光板665を有している。
【0041】
圧縮系駆動部604は、後側固定板652と後部外壁板653の間に配置し、両側を後部連結部材656、657で支持する中間支持部670と、中間支持部670と後部外壁板653の間に配置し、両端を中間支持部670と後部外壁板653とで回転自在に保持するボールネジ部671と、ボールネジ部671のナット部672と一体にボールネジ部671の軸心方向に移動する押え板支持部673と、押え板支持部673と押え板617の間に配置し、押え板支持部673に対して押え板617をケーシング605の圧縮脱水部618に向けて付勢する複数のスプリングロッド674と、後部外壁板653に設けた
押え板駆動モータ675と、押え板駆動モータ675の駆動軸に設けた主動プーリー676と、ボールネジ部671の一端に設けた従動プーリー678と、主動プーリー678と従動プーリー678とに掛け渡したベルト679を備えている。また、圧縮脱水部618に溜まる圧縮物が所定量に達したことを検出する検出部として、圧縮系駆動部604に複数の光学センサ691、692を設け、押え板617に遮光板693を設けて押え板617の移動を検出する。この実施の形態では、押え板617の閉鎖位置と開放位置を検出するセンサ手段を圧縮物が所定量に達したことを検出する検出部に兼用しているが、検出部には他の構成を適用することも可能である。
【0042】
以下、上記した構成の作用を説明する。制御部700は、古紙投入部1とパルパー部9と脱墨部11と抄紙部13と乾燥部14と仕上部15と脱墨廃液処理装置101と白水タンク部100を制御し、各処理部において古紙再生処理系の運転を行う。
【0043】
脱墨廃液処理装置101において、ケーシング605の重力脱水部615には、脱墨部11から脱墨排水系102を通して脱墨廃液が動力を必要とせずに自然流下する。重力脱水部615は、所定長さを有するので、多くの脱墨廃液を一度に受け入れることができる。ケーシング605に投下された脱墨廃液は、重力脱水部615が上部開放の開空間をなし、固液分離性および透水性に優れた網状体からなり、重力脱水部615が螺旋状回転部606に沿って始端側から終端側へ上り勾配で傾斜することで、圧縮脱水部618に達することなく、始端側において直ちに液相分が脱水される。脱水された液相分は廃液タンク300に流下して貯溜され、装置の外部へ排出される。あるいは一部を消泡液として脱墨槽501へ循環させて利用する。
【0044】
圧縮脱水部618は、網状体をなすことで、開口率が大きくなり、透水性(排水性)がよく、古紙パルプの繊維等を網の線材で係止して脱墨廃液を素早く固液分離できる。よって、ケーシング605の流路断面の大きさに規制されることなく一度に多量の脱墨廃液を短時間にケーシング605に投下することができ、処理時間の短縮を図ることができる。
【0045】
脱墨廃液処理装置101の脱水部601では、脱水駆動モータ660の駆動により主動プーリー661、ベルト663、従動プーリー662を介して回転駆動軸610が回転し、回転駆動軸610と一体に螺旋状回転部606が回転し、水分を含む古紙パルプ等の固形成分が螺旋状回転部606の回転により重力脱水部615を始端側から終端側へ移送される間に水切りされて圧縮脱水部618に送られる。
【0046】
図4に示すように、脱墨廃液処理装置101の圧縮部602では、押え板駆動モータ675の駆動により主動プーリー676、ベルト679、従動プーリー678を介してボールネジ部671が回転し、ボールネジ部671のナット部672と一体にボールネジ部671の軸心方向に押え板支持部673が移動し、押え板支持部673とともに、スプリングロッド674および押え板917がケーシング605の圧縮脱水部618に向けて移動し、スプリングロッド674を圧縮しながら押え板617をケーシング605の圧縮脱水部618の筒状体の開口を閉塞する。この状態で、スプリングロッド674が押え板617を圧縮脱水部618に向けて付勢している。
【0047】
螺旋状回転部606の回転により螺旋状羽根部608で圧縮脱水部618に送り込まれる古紙パルプ等の固形成分が、圧縮脱水部618と押え板617と螺旋状回転部606の終端との間の閉空間において圧縮され、圧搾により脱水される。圧縮脱水部618の内部に滞留する圧縮物が閉空間の容量を超えると押え板617をスプリングロッド674の付勢力に抗して後退させる。この押え板617の移動を光学センサ691で検出することで、圧縮物が所定量に達したことを容易に検出することができる。
【0048】
図5に示すように、押え板駆動モータ675の駆動によりボールネジ部671を逆回転させ、押え板支持部673とともに押え板917を後退させ、押え板617をケーシング605の圧縮脱水部618から離間させ、筒状体の開口を開放し、圧縮物を排出する。圧縮物の排出は、螺旋状回転部606の回転により送り出され、シューター302によりゴミ用タンク301に排出されて回収される。よって、圧縮物の排出のための機構が不要である。押え板617の開放は押え板駆動モータ675によらずして別途に設けたハンドル等を手動操作することによって行うことも可能である。また、圧縮物の排出は、螺旋状回転部606の回転によらずして他の手段、例えば、圧縮脱水部618から圧縮物を叩き落とす機構等を別途に設けて行うことも可能である。
【0049】
したがって、螺旋状回転部606の回転によりケーシング605内で古紙パルプを搬送することで古紙パルプの脱水、水切り、圧搾の工程を連続して行うことができ、簡略な構成で脱水効率の向上を図ることができ、従来において90%の含水率であった排出物を60−70%の含水率の圧縮物とすることができる。排出物の体積は従来の1/4程度にまで減らすことができる。
【0050】
また、脱墨部11に設けた取出し口から流出する脱墨廃液が脱墨廃液処理装置101のケーシング605内に自然流下するので、動力を要することなく脱墨廃液の移送を行うことができる。ここでは、脱墨廃液を脱墨部11の底部のほぼ中央に位置する取出し口から取り出した。しかし、脱墨部11において脱墨廃液を取り出す位置は底部に限るものではない。また、脱墨廃液はポンプ等を使用して脱墨廃液処理装置101に移送することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 古紙投入部
9 パルパー部
11 脱墨部
12 湿紙
13 抄紙部
14 乾燥部
15 仕上部
41 ローラ
41a、41b 絞りローラ
42 抄紙ワイヤー
43 ヘッドボックス
44 水切り部
45 吸引装置
49 乾燥ローラ
50 ローラ
50a カレンダローラ
51 カンバスベルト
60 カッター装置
61 乾紙
62 再生紙
63 紙受部
100 白水タンク部
101 脱墨廃液処理装置
102 脱墨排水系
104 抄紙排水系
105、106 白水返送系
107 上水配管
108 給水配管
109 元弁装置
111 スクレーパ
112 スリッター装置
300 廃液タンク
301 ゴミ用タンク
302 シューター
501 脱墨槽
601 脱水部
602 圧縮部
603 脱水系駆動部
604 圧縮系駆動部
605 ケーシング
606 螺旋状回転部
607 胴軸
608 螺旋状羽根部
609 貫通孔
610 回転駆動軸
611 始端板
612 終端板
613、614 側板
615 重力脱水部
616 支持ロッド
617 押さえ板
618 圧縮脱水部
650 前部外壁板
651 前側固定板
652 後側固定板
653 後部外壁板
654、655 前部連結部材
656、657 後部連結部材
660 脱水駆動モータ
661 主動プーリー
662 従動プーリー
663 ベルト
664 フォトインタプラタ
665 遮光板
670 中間支持部
671 ボールネジ部
672 ナット部
673 押え板支持部
674 スプリングロッド
675 押え板駆動モータ
676 主動プーリー
678 従動プーリー
679 ベルト
691、692 光学センサ
693 遮光板
700 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7