(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101400(P2017-101400A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】コンクリートブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/14 20060101AFI20170512BHJP
B28B 1/14 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
E02B3/14 303
B28B1/14 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-233248(P2015-233248)
(22)【出願日】2015年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515332399
【氏名又は名称】株式会社半澤組
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】谷根 規之
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA12
2D118BA03
2D118HA25
2D118HA26
2D118HC00
2D118HD01
(57)【要約】
【課題】 簡単かつ低コストで平滑で美しい仕上げ面を有するコンクリートブロックの製造方法を提供する。
【解決手段】 稜線部分又は形状変化部分で分割される型枠の頂部の投入口から生コンクリートを前記型枠内に投入して固化させた後、前記型枠を分解して所定形状のブロック体を取り出すことで形成されるコンクリートブロックの製造方法において、前記型枠内に前記生コンクリートを投入した後(S2)、前記生コンクリートが固化しない時間範囲内で前記生コンクリートを養生して(S9)、前記生コンクリートの表面に水分や気泡を浮上させる工程(S10)と、前記投入口に押圧部材を嵌め込み前記生コンクリートに押圧力を付与する工程(S11)とを有し、前記押圧力によって、前記型枠の稜線部分又は形状変化部分の連結部から前記生コンクリートの表面に浮き出た水分及び気泡を押し出す方法としてある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稜線部分又は形状変化部分で分割される型枠の頂部の投入口から頂部に達するまで生コンクリートを前記型枠内に投入して固化させた後、前記型枠を分解して所定形状のブロック体を取り出すことで形成されるコンクリートブロックの製造方法において、
前記型枠内の頂部まで前記生コンクリートを投入した後、前記生コンクリートが固化しない時間範囲内で前記生コンクリートの養生を行い、前記生コンクリートの表面に水分や気泡を浮上させる工程と、
前記投入口に押圧部材を嵌め込み前記生コンクリートに押圧力を付与する工程とを有し、
前記押圧力によって、前記型枠の稜線部分又は形状変化部分の連結部から前記生コンクリートの表面に浮き出た水分及び気泡を押し出すこと、
を特徴とするコンクリートブロックの製造方法。
【請求項2】
前記頂部に露出する前記生コンクリートに水分が浮き出るまで養生することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの製造方法。
【請求項3】
前記押圧力の付与と解除を繰り返して前記生コンクリートに振動を付与することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートブロックの製造方法。
【請求項4】
前記押圧力の付与を一定時間持続した後に解除する工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
前記生コンクリートの投入を、締固めを行いながら前記型枠の形状変化部に達するまで行い、投入された前記生コンクリートが形状変化部まで達するごとにスページングを行い、前記生コンクリートが頂部まで達したら余盛りをするとともにスページングを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリートブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消波ブロックなどのコンクリートブロックの製造方法に関し、特に稜線部分又は形状変化部分で分割される型枠の頂部の投入口から生コンクリートを前記型枠内に投入して固化させた後、前記型枠を分解して所定形状のブロック体を取り出すことで形成されるコンクリートブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブロックの一例である消波ブロックは、例えば特許文献1の
図3に示されているように、複数の側型枠(同
図3において符号1a,1b,1cで示されている)を稜線部分又は形状変化部分でボルトによって連結し、側型枠の端部開口に端板(同図において符号5で示されている)をボルトで取り付けて蓋をするように構成された型枠を用いて成形される。
型枠内には生コンクリートを数回に分けて投入するが、一回の投入ごとにバイブレータを使用して締固めを行い、型枠の内面と生コンクリートとの間に隙間ができないようにする。型枠途中の形状変化部(例えば複数の支持脚の分岐部分)まで生コンクリートが達したら、「ピカコン」と称される攪拌道具又は鋼製のスページング棒を用いて生コンクリートを攪拌し、型枠と生コンクリートとの境界部分に集まった気泡を除去する作業(スページング)を行う。上記の作業は生コンクリートが型枠の頂部に達するまで繰り返し、型枠の頂部まで達したら、余盛りをして入念にスページングを行い、余盛り部分を均して平らにする。以後、生コンクリートが固化するまで養生し、固化したら型枠を分解して消波ブロックを取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−74224号公報(
図3及び段落0003,0004の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、型締めとスページングを入念に行っても気泡を完全に抜くことは極めて困難で、消波ブロックの表面に気泡によるものと見られる疵(気泡痕)が残り、平滑で美しい仕上げ面の消波ブロックを製造することは困難であるという問題があった。 本発明は、このような問題を解決するべくなされたもので、簡単かつ低コストで平滑で美しい仕上げ面を有するコンクリートブロックの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
型枠内の生コンクリートから気泡を抜くためには、型締めとスページングを念入りに行うほか、型枠振動機などで型枠の外側から型枠内の生コンクリートに振動を付与したり、一回に投入する生コンクリートの量や生コンクリート投入のタイミングを調整したりすることで、気泡を抜けやすくすることができる。しかし、その一方で、生コンクリート内の水分が型枠と生コンクリートとの境界部分に浮き出て溜まり、コンクリートブロックの表面、特に稜線部分や形状変化部分に黒ずみや凹凸、クラック様の溝などの水流痕が目立ってくるという新たな問題が発生する。
【0006】
そこで本発明の発明者がコンクリートブロックの表面から気泡痕及び水流痕の両方を無くすべく鋭意研究を行った結果、型枠内に生コンクリートを投入した後に、生コンクリートが固化しない時間範囲内で生コンクリートを養生することで、生コンクリートの表面に水分や気泡が浮き出てくること、そして、この状態の生コンクリートに押圧力を付与することで、表面に浮き出た水分と気泡を前記型枠の稜線部分又は形状変化部分の連結部から押し出して気泡痕及び水流痕を無くせることを見出した。
【0007】
具体的に本願の請求項1に記載の発明は、稜線部分又は形状変化部分で分割される型枠の頂部の投入口から生コンクリートを前記型枠内に投入して固化させた後、前記型枠を分解して所定形状のブロック体を取り出すことで形成されるコンクリートブロックの製造方法において、前記型枠内に前記生コンクリートを投入した後、前記生コンクリートが固化しない時間範囲内で前記生コンクリートを養生して、前記生コンクリートの表面に水分や気泡を浮上させる工程と、前記投入口に押圧部材を嵌め込み前記生コンクリートに押圧力を付与する工程とを有し、前記押圧力によって、前記型枠の稜線部分又は形状変化部分の連結部から前記生コンクリートの表面に浮き出た水分及び気泡を押し出すコンクリートブロックの製造方法としてある。
養生時間は、成形しようとするコンクリートブロックの形状や大きさ及び季節によっても相違するが、例えば四脚で4tの重量を有する消波ブロックでは、夏場で2時間、冬場で3時間程度の養生が目安となる。また、請求項2に記載するように、前記頂部から露出する前記生コンクリートの状態観察を行い、当該露出部分に水分が浮き出てくる時間を養生の目安とすることもできる。
【0008】
型枠内の生コンクリートへの前記押圧力の付与形態は、成形しようとするコンクリートブロックの形状や大きさにもよるが、付与と解除とを複数回繰り返すようにするとよい。例えば、請求項3に記載するように、押圧力の付与と解除を繰り返して前記生コンクリートに振動を付与するようにしてもよいし、前記押圧力の付与を一定時間持続した後に解除する工程を複数回繰り返すようにしてもよい。
本発明の製造方法におけるコンクリートブロックの成形は、気泡を抜くために行われている通常の製造過程の最後に前記押圧力を付与すればよく、例えば請求項5に記載するように、前記生コンクリートの投入を、締固めを行いながら前記型枠の形状変化部に達するまで行い、投入された前記生コンクリートが形状変化部まで達するごとにスページングを行い、前記生コンクリートが頂部まで達したら余盛りをするとともにスページングを行う工程の後に、前記押圧力を付与して気泡と水分を除去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、型枠の稜線部分又は形状変化部分に溜まりやすい気泡と水分の両方を生コンクリートから除去することができ、気泡痕も水流痕もないきれいな仕上がりのコンクリートブロックを製造することができる。また、型枠内の生コンクリートに押圧力を付与するという工程が増える一方で、生コンクリートの表面に水分や気泡を浮上させる養生時間の間に他の型枠の作業を行うことが可能になるので、同時並行的に作業を進めていた従来の工程に比して作業人員を減らすことができるから、その分製造コストを抑制することが可能になり、外観に優れる高品質のコンクリートブロックを安価に提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のコンクリートブロックの製造方法の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態では、
図1に示すような型枠を用いて四脚の消波ブロックを成形する場合を例に挙げて説明する。
消波ブロックを成形するための型枠7は、四脚の消波ブロックの上部三方向の側面を成形する3つの側型枠1a,1b,1cと、これらの側型枠1a,1b,1cの底部に取り付けられて消波ブロックの底部を成形する底型枠3と、側型枠1a,1b,1cの端部に取り付けられて消波ブロックの各支持脚の端面を成形する端板5とを組み合わせて構成される。側型枠1a,1b,1c、底型枠3及び端板5の各々には、消波ブロックの稜線部分及び端面部分に相当する部分にフランジが形成され、このフランジを互いに突き合わせてボルトによって連結される。
【0011】
型枠7の頂部には生コンクリートの投入口となる開口が形成されるが、この開口に取り付けられる端板5に代えて、
図2に示すような押圧部材10を準備する。この押圧部材10は、前記開口にぴったりと嵌る形状及び大きさを有する押圧板10aと、この押圧板10aの中央から突出し、図示しない押圧力付与手段に連結されるロッド10bとから構成される。前記押圧力付与手段としては、押圧部材10によって型枠7内の生コンクリートを押圧できるものであればその構成は不問である。例えば油圧シリンダや電動ハンマ(ピック)などを用いることができる。
図3は、この実施形態における消波ブロックの製造工程を説明するフローチャートである。
まず、側型枠1a,1b,1cと底型枠3及び端板5とをボルトで連結して型枠7を組み立てる(ステップS1)。そして、頂部の開口から生コンクリートを型枠7内に投入する(ステップS2)。
【0012】
一定量の生コンクリートを型枠7内に投入した後は、従来と同様に締固めを行い(ステップS3)、生コンクリートが形状変化部分(例えば支持脚と支持脚の境い目)に達したら(ステップS4)、「ピカコン」と称される攪拌道具又は鋼製のスページング棒を用いて生コンクリートを攪拌し、型枠7の内面と生コンクリートとの境界部分に集まった気泡を除去するスページングを行う(ステップS6)。
ステップS2〜S6の作業は生コンクリートが型枠7の頂部に達するまで繰り返し(ステップS5)、頂部に達したら生コンクリートが前記開口から型枠7の外側まで盛り上がるように余盛りを行い(ステップS7)、入念にスページングを行う(ステップS8)。
なお、余盛りの高さは、押圧部材10によって押圧力を付与した後に、余盛り部分が潰されて前記開口の高さとほぼ同じ高さになるようにする。
【0013】
この後、第一の養生を行う(ステップS9)が、この第一の養生の目的は、型枠7内の生コンクリートの表面(型枠7の内面と生コンクリートとの境界面)に水分や気泡を浮上させるためである。この養生の時間は成形しようとする消波ブロックの大きさや形状、季節などによって相違するが、型枠7の頂部の余盛りからフリージング水が浮き出てくる時間を目安とするとよい(ステップS10)。4t・四脚の消波ブロックでは、夏で2時間、冬で3時間が概ねの目安である。
【0014】
フリージング水が浮き出てきたら(ステップS10)、開口に押圧部材10の押圧板10aが嵌め込み、ロッド10bを介して生コンクリートに押圧力を付与する(ステップS11)。押圧力の大きさは、側型枠1a,1b,1cと底型枠3及び端板5との連結部分から水分が押し出される程度で、例えば4t・四脚の消波ブロックでは2〜3t程度が目安となる。押圧力が、水分が押し出される規定値に達したら、押圧部材10による押圧力の付与を解除し(ステップS12)、再び前記規定値になるまで押圧力を付与する。
【0015】
前記規定値での押圧力の付与時間は成形しようとする消波ブロックの形状や大きさにもよるが、押圧力が規定値に達してすぐに押圧力を解除する(付与時間0)ようにしてもよいし、規定値での押圧力の付与を一定時間(例えば1分)持続した後に、押圧力を解除するようにしてもよい。
この押圧力の付与と解除は予め設定された回数(例えば10回)だけ繰り返し(ステップS13)、当該回数に達したら、スページングと頂部天面のコテ仕上げを行う(ステップS14)。
なお、頂部天面は押圧板10aによってほぼ平らに均されているので、従来のように余盛り部分を除去する作業が不要である。この後、頂部の開口を端板で蓋をして生コンクリートが固化するまで第二の養生を行う(ステップS15)。
【0016】
図4は本発明の効果を説明する写真である。
図4(b)は従来の製造方法によって製造された消波ブロックで、支持脚と支持脚との間の境界部分に気泡痕が生じている。(c)は型枠の外側から振動を付与したもので、気泡痕は目立たなくなるが、境界部分に水流痕が発生している。
(a)は本願発明の方法によって製造された消波ブロックで、支持脚と支持脚の間などの形状変化部分に気泡痕も水流痕も認められない。
このように、本願発明によれば、きれいな仕上がりの消波ブロックを製造することができる。
【0017】
なお、従来の消波ブロックの製造工程では、型枠の組立に3名の作業員が必要であり、型枠内に生コンクリートを投入し締固めるのに2名の作業員が必要である。さらに、生コンクリートを投入し終わった後に余盛り部分を均して仕上げる作業員が1名必要である。これら型枠の組立、コンクリートを投入し締固め、仕上げの各作業は同時並行的に行われるから、常時6名の作業者が必要であった。本発明では、ステップS9において2〜3時間程度の養生時間を必要とするから、仕上げ作業は、型枠内への生コンクリートの投入を担当する作業員又は締固めを担当する作業員が行えばよく、仕上げのための作業員が不要になる。そのため、同時並行で作業を行う作業員の数を減らすことができ、その分製造コストを削減することができる。
【0018】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では四脚の消波ブロックを例に挙げて説明したが、本発明は六脚又はその他の消波ブロックにも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、護岸用の消波ブロックに限らず、防潮堤や防波堤を形成するためのブロックや道路上に置かれる境界ブロックなど、土木用のコンクリートブロックの製造に広範に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】消波ブロックを成形するための型枠の構成例を説明する斜視図である。
【
図2】型枠内の生コンクリートに押圧力を付与するための押圧部材の一例を示す斜視図である。
【
図3】この実施形態における消波ブロックの製造工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1a,1b,1c 側型枠
3 底型枠
5 端板
7 型枠
10 押圧部材
10a 押圧板
10b ロッド