特開2017-101497(P2017-101497A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本貨物鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 東亜道路工業株式会社の特許一覧 ▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017101497-路盤材及び舗装構造 図000005
  • 特開2017101497-路盤材及び舗装構造 図000006
  • 特開2017101497-路盤材及び舗装構造 図000007
  • 特開2017101497-路盤材及び舗装構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101497(P2017-101497A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】路盤材及び舗装構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 3/00 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
   E01C3/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-236997(P2015-236997)
(22)【出願日】2015年12月3日
(11)【特許番号】特許第5975367号(P5975367)
(45)【特許公報発行日】2016年8月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000230696
【氏名又は名称】日本貨物鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】三浦 康夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健一
(72)【発明者】
【氏名】大熊 佑治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 長門
(72)【発明者】
【氏名】吉武 美智男
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 和則
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸頼
(72)【発明者】
【氏名】梅森 悟史
(72)【発明者】
【氏名】横尾 正義
(72)【発明者】
【氏名】山越 陽介
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AF05
2D051AG01
(57)【要約】
【課題】使用済みのバラストを用いて良好な特性を有する路盤を効率よく形成する。
【解決手段】路盤材は、鉄道の道床に用いられていた使用済みバラスト11と、粒度が調整された鉄鋼スラグ12と、アスファルト乳剤とを含むものとする。鉄鋼スラグは 13.2mmのふるいを85%以上通過するものを用い、使用済みバラストと鉄鋼スラグとの重量比は3:7から7:3までとするのが望ましい。また、アスファルト乳剤は、使用済みバラストの重量の0.5%〜5%と、鉄鋼スラグの重量の5%〜12%との合計の重量が添加されたものとするのが良い。このような路盤材を敷均したときにバラスト間の間隙を鉄鋼スラグが埋め、硬化したアスファルト成分によって粒子間が結着される。鉄鋼スラグはアスファルト乳剤が含む水分によって水硬性を発揮し、鉄鋼スラグ及びバラストが凝結する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の道床に用いられていた使用済みバラストと、粒度が調整された鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含むことを特徴とする路盤材。
【請求項2】
前記鉄鋼スラグは 13.2mmのふるいを85%以上通過するものを用い、 前記使用済みバラストと前記鉄鋼スラグとの重量比は 3:7から7:3までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の路盤材。
【請求項3】
前記アスファルト乳剤は、前記使用済みバラストの重量の0.5%〜5%と、前記鉄鋼スラグの重量の5%〜12%との合計の重量が添加されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の路盤材。
【請求項4】
前記アスファルト乳剤は、カチオン系乳剤であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の路盤材。
【請求項5】
路床の上に下層路盤、上層路盤、舗装体の基層及び表層が積層された舗装構造であって、前記上層路盤が請求項1から請求項4までのいずれかに記載の路盤材によって形成されていることを特徴とする舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、駐車場、広場等の舗装に用いられる路盤材及び舗装構造に係り、特に使用済みリサイクル材料及び鉄鋼産業の副産物を有効に用いる路盤材及びこれを用いた舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道の多くは道床としてバラストが用いられている。バラストは長期間の使用により形状の変化や表面の状態の変化が生じ、道床の機能が劣化する。このため、長期間の使用によって機能が低下したバラストは新しいものと交換される。このようにして大量に発生する使用済みのバラストを再利用することが提案されており、特許文献1には使用済みのバラストを舗装の路盤材として使用することが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、鉄道の道床として使用された後の使用済みバラストと砕石等からなる粒度調整用骨材とを配合し、アスファルト乳剤を添加混合したものを路盤材として使用するものである。このような路盤材は道路の舗装における上層路盤に適しており、使用済みのバラストを有効に利用するとともに、安定処理がなされた路盤を現場において常温で形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−238793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記路盤材では次のような解決が望まれる課題がある。
アスファルト乳剤を路盤の安定処理材として用いるときには、その水分が散逸するまでの状態で路盤上に直ちにアスファルト混合物の舗装体を施工することは望ましくない。このため、安定処理材としてセメントを併用し、セメントの水和作用によってアスファルト乳剤の水分を吸収する。また、アスファルト乳剤のみでは路盤に十分な強度を得ることが難しく、セメントの硬化によって十分な強度を得るものとしている。
【0006】
しかし、セメントはアスファルト乳剤を含む路盤材を作製する際に散布されており、飛散を防ぐために粉塵抑制対策を施す必要が生じる。また、使用するセメント量に対応して散布する領域の区割りを行うことになり、施工の効率が悪くなっている。さらに、セメントを使用することにより六価クロムが溶出していないことを確認するための六価クロム抽出試験を行う必要が生じている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用済みの
バラストを用いて良好な特性を有する路盤を効率よく形成することができる路盤材、及びこの路盤材を用いた舗装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、鉄道の道床に用いられていた使用済みバラストと、粒度が調整された鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含む路盤材を提供する。
【0009】
この路盤材では、敷均したときに粒径の大きい砕石である使用済みのバラスト間に鉄鋼スラグとアスファルト乳剤との混合物が充填される。そして、鉄鋼スラグは水硬性を有することからアスファルト乳剤が含む水分によって鉄鋼スラグの粒子間が結着するとともにバラストと結着する。また、アスファルト乳剤の水分が鉄鋼スラグの水硬作用に供されることによってアスファルト成分が硬化し、鉄鋼スラグと使用済みバラストとを結着する。これにより、鉄鋼スラグの水硬性によって大きな強度が得られるとともに、鉄鋼スラグの水硬性のみによって結着しているときに比べて強度を失うまでの変形量が増大し、変形に対して粘り強い路盤を形成することができる。
また、路盤の安定処理材としてアスファルト乳剤を使用すると、含有する水分が散逸するまで路盤の強度の発現が十分得られず、舗装の工事に長期間を要することになったり、路盤にセメントを混合して、水和反応によって早期に水分を消失させたりする必要が生じるが、本発明の路盤材では、アスファルト乳剤に含まれる水分が鉄鋼スラグの水硬作用に消費されてアスファルト乳剤が硬化する。したがって、セメント等を使用する必要がなく、十分な強度を有する路盤の施工を効率よく行うことができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の路盤材において、 前記鉄鋼スラグは 13.2mmのふるいを85%以上通過するものを用い、前記使用済みバラストと前記鉄鋼スラグとの重量比は 3:7から7:3までの範囲であるものとする。
【0011】
一般にバラストは、粒径が9mm〜60mm程度の砕石が用いられており、鉄鋼スラグの粒径及びバラストと鉄鋼スラグとの重量比を上記のように設定することにより、混合して締め固めたときの比重を最大値に近い値とすることができる。したがって、大きな密度に締め固められることによって路盤材は大きな強度を有するものとなる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の路盤材において、前記アスファルト乳剤は、前記使用済みバラストの重量の0.5%〜5%と、前記鉄鋼スラグの重量の5%〜12%との合計の重量が添加されたものとする。
【0013】
アスファルト乳剤を上記の範囲に設定することによって、バラストと鉄鋼スラグとの混合比が変動しても硬化したアスファルト成分によって鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグとバラスト間を有効に結着することができる。そして、鉄鋼スラグの水硬作用に十分な水分を供給して路盤に十分な強度が発現するとともに、施工後の路盤に水分が過剰となるのを抑えることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の路盤材において、 前記アスファルト乳剤は、カチオン系乳剤とする。
【0015】
バラストの表面は石灰分やカルシウム分が遊離して表面の電位が負となっているものが多く、正の電荷を有するカチオン系アスファルト乳剤の分解が促進され、早期の強度が発現する。
【0016】
請求項5に係る発明は、 路床の上に下層路盤、上層路盤、舗装体の基層及び表層が積層された舗装構造であって、前記上層路盤が請求項1から請求項4までのいずれかに記載の路盤材によって形成されている舗装構造を提供するものである。
【0017】
この舗装構造では、使用済みのバラストと鉄鋼スラグとを有効に用いることができるとともに、鉄鋼スラグの水硬性によって大きな強度を有する上層路盤が得られる。そして、鉄鋼スラグとアスファルト乳剤とを混合することによって、鉄鋼スラグの水硬性のみによって結着しているときに比べて、強度を失うまでの変形量が大きく、変形に対して粘り強い上層路盤を備えた舗装構造とすることができる。
また、路盤の安定処理材としてアスファルト乳剤を使用することにより、鉄鋼スラグの水硬作用に必要な水分をアスファルト乳剤から供給して、セメント等を使用することなく効率よく十分な強度を有する路盤を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の路盤材では使用済みのバラスト及び鉄鋼産業の副産物である鉄鋼スラグを用い、セメントを用いずに十分な強度を有する路盤を効率よく形成することができる。また、本発明の舗装構造では、上記のようにすぐれた特性を有する上層路盤を備えた舗装構造を効率よく形成することができる、
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態である路盤材を用いた舗装構造の一例を示す概略断面図である。
図2図1に示す舗装構造の上層路盤の部分拡大断面図である。
図3】バラストと鉄鋼スラグとの重量比と、これらの混合物を締め固めたときの単位体積重量との関係を示す図である。
図4】本発明に係る路盤材と水硬性によって凝固した鉄鋼スラグとについて一軸圧縮強さと変位量との関係を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である路盤材を上層路盤に用いた舗装構造を示す概略断面図である。この舗装構造は、道路の車道部分に設けられたものであり、路床1の上に下層路盤2及び上層路盤3が形成され、その上に舗装体の基層4と表層5とが積層されたものである。
【0021】
上記舗装体の基層4は、いわゆる密粒度アスファルト混合物によって形成されている。密粒度アスファルト混合物は、骨材の粒度を調整することによってアスファルトと骨材とによる密実な層となっており、ほぼ不透水性を有するものである。そして、表層5はいわゆる開粒度アスファルト混合物によって形成され、路面上の水を透過して路側へ排水することができるものとなっている。
なお、表層5は上記開粒度アスファルト混合物によって形成されたものに限定されず、密粒度アスファルト混合物によって形成されたものであってもよい。また、開粒度アスファルト混合物を敷均して転圧し、空隙にセメントミルクを充填したものや、吸水性を有する充填材を充填したものであってもよい。
【0022】
上記下層路盤2は、切込み砂利、切込み砕石等の路盤材を敷均し、転圧して形成されたものであり、厚さは10cm〜30cm程度とするのが望ましい。
【0023】
上記上層路盤3は、本発明の一実施形態である路盤材を用いて形成されたものであり、この路盤材は鉄道の軌道に用いられていた使用済みのバラストと、鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含むものである。この上層路盤の厚さは、バラストの粒径が一般的な路盤に用いられる砕石より大きいことを考慮して決定するのが望ましく、10cm〜20cm程度とするのがよい。
【0024】
図2は、上記上層路盤3の一部を拡大して示す断面図である。
この図に示されるように、上層路盤3は使用済みのバラスト11と鉄鋼スラグ12とにアスファルト乳剤を添加した混合物を締め固めたものであり、アスファルト乳剤の水分が消失してアスファルト成分13が硬化している。つまり、粒径の大きいバラスト11の粒子間に生じる空隙を鉄鋼スラグ12が埋め、さらにこれらの粒子の表面を被覆するアスファルト成分13によって鉄鋼スラグ12の粒子間及び鉄鋼スラグ12の粒子とバラスト11の粒子間を結着するものとなっている。また、鉄鋼スラグ12は水硬性を有することにより、アスファルト乳剤から供給された水分によって鉄鋼スラグ12の粒子間及び鉄鋼スラグ12の粒子とバラスト11の粒子の間が凝結されている。
【0025】
上記バラスト11は、鉄道の軌道に用いられていたときの粒径及び粒度分布のままに使用することができ、本実施の形態では粒度分布が表1に示すとおりとなっている。
【0026】
【表1】
【0027】
上記鉄鋼スラグ12は、高炉から排出される溶融スラグを加圧水の噴射等によって急冷した高炉水砕スラグと、転炉又は電気炉から排出されたスラグを徐冷した製鋼スラグとを混合したものである。そして、本実施の形態においては、この鉄鋼スラグの粒度分布は表2に示すとおりとなっている。
【0028】
【表2】
【0029】
この表に示されるとおり鉄鋼スラグの粒径はほとんどが13mm以下となっている。この粒度分布は、粒径が大きい砕石であるバラスト間に鉄鋼スラグが入り込み、空隙が小さくなるように締め固めることができるように決定されたものである。
【0030】
上記バラスト11と上記鉄鋼スラグ12との混合比は重量比で3:7〜7:3の範囲とするのが望ましく、本実施の形態では重量比が5:5となるように混合されている。
図3は上記バラストと上記鉄鋼スラグとの混合比を変えて締め固めたときの単位体積あたりの重量を測定した結果を示す概略図である。この図に示されるように、バラストと鉄鋼スラグと混合比がほぼ4.5:5.5〜5:5のときに、締め固めたときの単位体積重量が最大となり、3:7〜7:3の範囲において単位体積重量は最大値の約80%が維持される。
【0031】
アスファルト乳剤は、カチオン系のものを使用し、バラストの重量に対して0.5%〜5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して5%〜12%に相当する量との合計を添加するのが望ましい。より望ましくはバラストの重量に対して0.5%〜2.5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して6.5%〜8.5%に相当する量との合計を添加するものである。本実施の形態では、バラストと鉄鋼スラグとの混合比を5:5とし、バラストの重量に対して1.5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して7.5%に相当する量との合計を添加している。したがって、バラストと鉄鋼スラグとの混合物100重量部に対してカチオン系のアスファルト乳剤4.5重量部を添加するものとなっている。
【0032】
上記アスファルト乳剤の量は、次の点を満たすものである。
(1)アスファルト乳剤がバラストの粒子及び鉄鋼スラグの粒子を被覆し、それぞれの粒子間を結着するのに十分な量であること。
(2)鉄鋼スラグの水硬化性が発揮されるのに十分な水分量の供給が可能な量であること。
(3)アスファルト乳剤に含まれる水分量が、鉄鋼スラグの水硬性が発揮されるために必要な水分量より過剰となる量が多すぎないこと。
【0033】
バラストは表1に示されるように粒径が大きい砕石であり、被表面積が一般に路盤材料として用いられる砕石等より小さくなっている。一方、鉄鋼スラグは表2に示されるように粒子のほとんどの粒径が13mm以下となっており、被表面積が大きい。このように特性が著しく異なる材料を混合したものに対して、アスファルト乳剤の適量は、バラストと鉄鋼スラグとの混合比に大きく影響されるものである。そして、鉄鋼スラグの水硬性が発揮されるために必要な水分量は、路盤材の中で鉄鋼スラグの占める割合によって変動する。したがって、バラストの重量に対して定められる量と、鉄鋼スラグの重量に対して定められる量との合計量として適切な量のアスファルト乳剤を決定することができる。
【0034】
次に、上記路盤材を上層路盤に使用した舗装構造の施工について説明する。
この舗装構造では、路床を形成した上に下層路盤を形成するための砕石等を敷均し、転圧することによって下層路盤を形成することができる。この下層路盤は、路盤材の敷均し及び転圧を10cm〜15cm程度の厚さごとの複数層に分けて施工することができる。
【0035】
上記下層路盤上に本発明の実施形態である路盤材を敷均し、転圧する。この路盤材は舗装構造を施工する現場においてバラストおよび鉄鋼スラグを敷き均し、路上破砕混合機によってアスファルト乳剤とバラストと鉄鋼スラグを混合して作製することができる。このように混合された路盤材をグレーダーで整正し、締め固められた下層路盤の上に転圧して上層路盤を形成する。
【0036】
上層路盤の上には、密粒度アスファルト混合物を敷均し、転圧して舗装体の基層を形成する。そして、基層の上には開粒度アスファルト混合物を敷均し、転圧して表層を形成する。アスファルト混合物による舗装体の形成は、上層路盤を形成した後、路盤材に含まれるアスファルト乳剤の水分が散逸するのを待たずに施工することができる。舗装体を施工した後にも上層路盤内ではアスファルト乳剤に含まれる水分が鉄鋼スラグの水硬反応に用いられ、舗装体によって水分の蒸発が妨げられても、上層路盤内に水分が長く留まるのが抑制される。
【0037】
このような舗装構造は、本発明の路盤材を用いて上層路盤を形成することにより、次のような特徴を有するものとなる。
この舗装構造では、上層路盤に鉄道の軌道に用いられて廃材となったバラスト及び鉄鋼産業の副産物である鉄鋼スラグを、多大な加工を施すことなく利用することができる。したがって、資材のリサイクルを促進するものとなる。
【0038】
また、上層路盤は、アスファルト乳剤と鉄鋼スラグの水硬性によって安定処理が施され、十分な強度を有するとともに、路盤が強度を失うまでの変形量が増大し、粘り強いものとなる。
鉄鋼スラグはアスファルト乳剤と接触して水分が供給されることによって水硬性が発現し、鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグの粒子とバラストの粒子との間を結着して上層路盤は大きな強度を有するものとなる。そして、アスファルト乳剤の水分が鉄鋼スラグの水硬作用に供され、アスファルト乳剤は早期に硬化して鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグとバラストとの間を結着する。硬化したアスファルト成分は変形性能を有し、鉄鋼スラグ及びバラストの粒子が凝結した上層路盤を粘り強いものとする。
【0039】
図4は、本発明の路盤材と、アスファルト乳剤を用いることなく鉄鋼スラグを水硬性によって凝結させたものと、について一軸圧縮試験を行ったときの荷重と変形量との関係を示す概略図である。この図に示されるように、双方とも鉄鋼スラグの水硬性によってほぼ同等の強度を有するものであるが、本発明の路盤材では水分の散逸によって硬化したアスファルト成分によって強度を保持したまま大きな変形を許容するものとなる。
また、上層路盤の安定処理にセメントを用いる必要がなく、セメントを散布して用いるときのように粉塵を抑制するための処置等が不要となり、効率よく上層路盤を形成することができる。
【0040】
以上に、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜に変更して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0041】
1:路床, 2:下層路盤, 3:上層路盤, 4:舗装体の基層, 5:舗装体の上層,
11:バラスト, 12:鉄鋼スラグ, 13:アスファルト成分
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2016年5月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の道床に用いられていた使用済みバラストと、粒度が調整された鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含み、
前記鉄鋼スラグは 13.2mmのふるいを85%以上通過するものを用い、
前記使用済みバラストと前記鉄鋼スラグとの重量比は 3:7から7:3までの範囲であることを特徴とする路盤材。
【請求項2】
前記アスファルト乳剤は、前記使用済みバラストの重量の0.5%〜5%と、前記鉄鋼スラグの重量の5%〜12%との合計の重量が添加されたものであることを特徴とする請求項1に記載の路盤材。
【請求項3】
前記アスファルト乳剤は、カチオン系乳剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の路盤材。
【請求項4】
路床の上に下層路盤、上層路盤、舗装体の基層及び表層が積層された舗装構造であって、前記上層路盤が請求項1から請求項3までのいずれかに記載の路盤材によって形成されていることを特徴とする舗装構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、駐車場、広場等の舗装に用いられる路盤材及び舗装構造に係り、特に使用済みリサイクル材料及び鉄鋼産業の副産物を有効に用いる路盤材及びこれを用いた舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道の多くは道床としてバラストが用いられている。バラストは長期間の使用により形状の変化や表面の状態の変化が生じ、道床の機能が劣化する。このため、長期間の使用によって機能が低下したバラストは新しいものと交換される。このようにして大量に発生する使用済みのバラストを再利用することが提案されており、特許文献1には使用済みのバラストを舗装の路盤材として使用することが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、鉄道の道床として使用された後の使用済みバラストと砕石等からなる粒度調整用骨材とを配合し、アスファルト乳剤を添加混合したものを路盤材として使用するものである。このような路盤材は道路の舗装における上層路盤に適しており、使用済みのバラストを有効に利用するとともに、安定処理がなされた路盤を現場において常温で形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−238793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記路盤材では次のような解決が望まれる課題がある。
アスファルト乳剤を路盤の安定処理材として用いるときには、その水分が散逸するまでの状態で路盤上に直ちにアスファルト混合物の舗装体を施工することは望ましくない。このため、安定処理材としてセメントを併用し、セメントの水和作用によってアスファルト乳剤の水分を吸収する。また、アスファルト乳剤のみでは路盤に十分な強度を得ることが難しく、セメントの硬化によって十分な強度を得るものとしている。
【0006】
しかし、セメントはアスファルト乳剤を含む路盤材を作製する際に散布されており、飛散を防ぐために粉塵抑制対策を施す必要が生じる。また、使用するセメント量に対応して散布する領域の区割りを行うことになり、施工の効率が悪くなっている。さらに、セメントを使用することにより六価クロムが溶出していないことを確認するための六価クロム抽出試験を行う必要が生じている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用済みのバラストを用いて良好な特性を有する路盤を効率よく形成することができる路盤材、及びこの路盤材を用いた舗装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 鉄道の道床に用いられていた使用済みバラストと、粒度が調整された鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含み、 前記鉄鋼スラグは 13.2mmのふるいを85%以上通過するものを用い、 前記使用済みバラストと前記鉄鋼スラグとの重量比は 3:7から7:3までの範囲であることを特徴とする路盤材を提供する。
【0009】
この路盤材では、敷均したときに粒径の大きい砕石である使用済みのバラスト間に鉄鋼スラグとアスファルト乳剤との混合物が充填される。そして、鉄鋼スラグは水硬性を有することからアスファルト乳剤が含む水分によって鉄鋼スラグの粒子間が結着するとともにバラストと結着する。また、アスファルト乳剤の水分が鉄鋼スラグの水硬作用に供されることによってアスファルト成分が硬化し、鉄鋼スラグと使用済みバラストとを結着する。これにより、鉄鋼スラグの水硬性によって大きな強度が得られるとともに、鉄鋼スラグの水硬性のみによって結着しているときに比べて強度を失うまでの変形量が増大し、変形に対して粘り強い路盤を形成することができる。
また、路盤の安定処理材としてアスファルト乳剤を使用すると、含有する水分が散逸するまで路盤の強度の発現が十分得られず、舗装の工事に長期間を要することになったり、路盤にセメントを混合して、水和反応によって早期に水分を消失させたりする必要が生じるが、本発明の路盤材では、アスファルト乳剤に含まれる水分が鉄鋼スラグの水硬作用に消費されてアスファルト乳剤が硬化する。したがって、セメント等を使用する必要がなく、十分な強度を有する路盤の施工を効率よく行うことができる。
【0010】
さらに、一般にバラストは、粒径が9mm〜60mm程度の砕石が用いられており、鉄鋼スラグの粒径及びバラストと鉄鋼スラグとの重量比を上記のように設定することにより、混合して締め固めたときの比重を最大値に近い値とすることができる。したがって、大きな密度に締め固められることによって路盤材は大きな強度を有するものとなる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の路盤材において、前記アスファルト乳剤は、前記使用済みバラストの重量の0.5%〜5%と、前記鉄鋼スラグの重量の5%〜12%との合計の重量が添加されたものとする。
【0012】
アスファルト乳剤を上記の範囲に設定することによって、バラストと鉄鋼スラグとの混合比が変動しても硬化したアスファルト成分によって鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグとバラスト間を有効に結着することができる。そして、鉄鋼スラグの水硬作用に十分な水分を供給して路盤に十分な強度が発現するとともに、施工後の路盤に水分が過剰となるのを抑えることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の路盤材において、 前記アスファルト乳剤は、カチオン系乳剤とする。
【0014】
バラストの表面は石灰分やカルシウム分が遊離して表面の電位が負となっているものが多く、正の電荷を有するカチオン系アスファルト乳剤の分解が促進され、早期の強度が発現する。
【0015】
請求項4に係る発明は、 路床の上に下層路盤、上層路盤、舗装体の基層及び表層が積層された舗装構造であって、前記上層路盤が請求項1から請求項3までのいずれかに記載の路盤材によって形成されている舗装構造を提供するものである。
【0016】
この舗装構造では、使用済みのバラストと鉄鋼スラグとを有効に用いることができるとともに、鉄鋼スラグの水硬性によって大きな強度を有する上層路盤が得られる。そして、鉄鋼スラグとアスファルト乳剤とを混合することによって、鉄鋼スラグの水硬性のみによって結着しているときに比べて、強度を失うまでの変形量が大きく、変形に対して粘り強い上層路盤を備えた舗装構造とすることができる。
また、路盤の安定処理材としてアスファルト乳剤を使用することにより、鉄鋼スラグの水硬作用に必要な水分をアスファルト乳剤から供給して、セメント等を使用することなく効率よく十分な強度を有する路盤を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の路盤材では使用済みのバラスト及び鉄鋼産業の副産物である鉄鋼スラグを用い、セメントを用いずに十分な強度を有する路盤を効率よく形成することができる。また、本発明の舗装構造では、上記のようにすぐれた特性を有する上層路盤を備えた舗装構造を効率よく形成することができる、
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である路盤材を用いた舗装構造の一例を示す概略断面図である。
図2図1に示す舗装構造の上層路盤の部分拡大断面図である。
図3】バラストと鉄鋼スラグとの重量比と、これらの混合物を締め固めたときの単位体積重量との関係を示す図である。
図4】本発明に係る路盤材と水硬性によって凝固した鉄鋼スラグとについて一軸圧縮強さと変位量との関係を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である路盤材を上層路盤に用いた舗装構造を示す概略断面図である。この舗装構造は、道路の車道部分に設けられたものであり、路床1の上に下層路盤2及び上層路盤3が形成され、その上に舗装体の基層4と表層5とが積層されたものである。
【0020】
上記舗装体の基層4は、いわゆる密粒度アスファルト混合物によって形成されている。密粒度アスファルト混合物は、骨材の粒度を調整することによってアスファルトと骨材とによる密実な層となっており、ほぼ不透水性を有するものである。そして、表層5はいわゆる開粒度アスファルト混合物によって形成され、路面上の水を透過して路側へ排水することができるものとなっている。
なお、表層5は上記開粒度アスファルト混合物によって形成されたものに限定されず、密粒度アスファルト混合物によって形成されたものであってもよい。また、開粒度アスファルト混合物を敷均して転圧し、空隙にセメントミルクを充填したものや、吸水性を有する充填材を充填したものであってもよい。
【0021】
上記下層路盤2は、切込み砂利、切込み砕石等の路盤材を敷均し、転圧して形成されたものであり、厚さは10cm〜30cm程度とするのが望ましい。
【0022】
上記上層路盤3は、本発明の一実施形態である路盤材を用いて形成されたものであり、この路盤材は鉄道の軌道に用いられていた使用済みのバラストと、鉄鋼スラグと、アスファルト乳剤とを含むものである。この上層路盤の厚さは、バラストの粒径が一般的な路盤に用いられる砕石より大きいことを考慮して決定するのが望ましく、10cm〜20cm程度とするのがよい。
【0023】
図2は、上記上層路盤3の一部を拡大して示す断面図である。
この図に示されるように、上層路盤3は使用済みのバラスト11と鉄鋼スラグ12とにアスファルト乳剤を添加した混合物を締め固めたものであり、アスファルト乳剤の水分が消失してアスファルト成分13が硬化している。つまり、粒径の大きいバラスト11の粒子間に生じる空隙を鉄鋼スラグ12が埋め、さらにこれらの粒子の表面を被覆するアスファルト成分13によって鉄鋼スラグ12の粒子間及び鉄鋼スラグ12の粒子とバラスト11の粒子間を結着するものとなっている。また、鉄鋼スラグ12は水硬性を有することにより、アスファルト乳剤から供給された水分によって鉄鋼スラグ12の粒子間及び鉄鋼スラグ12の粒子とバラスト11の粒子の間が凝結されている。
【0024】
上記バラスト11は、鉄道の軌道に用いられていたときの粒径及び粒度分布のままに使用することができ、本実施の形態では粒度分布が表1に示すとおりとなっている。
【0025】
【表1】
【0026】
上記鉄鋼スラグ12は、高炉から排出される溶融スラグを加圧水の噴射等によって急冷した高炉水砕スラグと、転炉又は電気炉から排出されたスラグを徐冷した製鋼スラグとを混合したものである。そして、本実施の形態においては、この鉄鋼スラグの粒度分布は表2に示すとおりとなっている。
【0027】
【表2】
【0028】
この表に示されるとおり鉄鋼スラグの粒径はほとんどが13mm以下となっている。この粒度分布は、粒径が大きい砕石であるバラスト間に鉄鋼スラグが入り込み、空隙が小さくなるように締め固めることができるように決定されたものである。
【0029】
上記バラスト11と上記鉄鋼スラグ12との混合比は重量比で3:7〜7:3の範囲とするのが望ましく、本実施の形態では重量比が5:5となるように混合されている。
図3は上記バラストと上記鉄鋼スラグとの混合比を変えて締め固めたときの単位体積あたりの重量を測定した結果を示す概略図である。この図に示されるように、バラストと鉄鋼スラグと混合比がほぼ4.5:5.5〜5:5のときに、締め固めたときの単位体積重量が最大となり、3:7〜7:3の範囲において単位体積重量は最大値の約80%が維持される。
【0030】
アスファルト乳剤は、カチオン系のものを使用し、バラストの重量に対して0.5%〜5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して5%〜12%に相当する量との合計を添加するのが望ましい。より望ましくはバラストの重量に対して0.5%〜2.5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して6.5%〜8.5%に相当する量との合計を添加するものである。本実施の形態では、バラストと鉄鋼スラグとの混合比を5:5とし、バラストの重量に対して1.5%に相当する量と、鉄鋼スラグの重量に対して7.5%に相当する量との合計を添加している。したがって、バラストと鉄鋼スラグとの混合物100重量部に対してカチオン系のアスファルト乳剤4.5重量部を添加するものとなっている。
【0031】
上記アスファルト乳剤の量は、次の点を満たすものである。
(1)アスファルト乳剤がバラストの粒子及び鉄鋼スラグの粒子を被覆し、それぞれの粒子間を結着するのに十分な量であること。
(2)鉄鋼スラグの水硬化性が発揮されるのに十分な水分量の供給が可能な量であること。
(3)アスファルト乳剤に含まれる水分量が、鉄鋼スラグの水硬性が発揮されるために必要な水分量より過剰となる量が多すぎないこと。
【0032】
バラストは表1に示されるように粒径が大きい砕石であり、被表面積が一般に路盤材料として用いられる砕石等より小さくなっている。一方、鉄鋼スラグは表2に示されるように粒子のほとんどの粒径が13mm以下となっており、被表面積が大きい。このように特性が著しく異なる材料を混合したものに対して、アスファルト乳剤の適量は、バラストと鉄鋼スラグとの混合比に大きく影響されるものである。そして、鉄鋼スラグの水硬性が発揮されるために必要な水分量は、路盤材の中で鉄鋼スラグの占める割合によって変動する。したがって、バラストの重量に対して定められる量と、鉄鋼スラグの重量に対して定められる量との合計量として適切な量のアスファルト乳剤を決定することができる。
【0033】
次に、上記路盤材を上層路盤に使用した舗装構造の施工について説明する。
この舗装構造では、路床を形成した上に下層路盤を形成するための砕石等を敷均し、転圧することによって下層路盤を形成することができる。この下層路盤は、路盤材の敷均し及び転圧を10cm〜15cm程度の厚さごとの複数層に分けて施工することができる。
【0034】
上記下層路盤上に本発明の実施形態である路盤材を敷均し、転圧する。この路盤材は舗装構造を施工する現場においてバラストおよび鉄鋼スラグを敷き均し、路上破砕混合機によってアスファルト乳剤とバラストと鉄鋼スラグを混合して作製することができる。このように混合された路盤材をグレーダーで整正し、締め固められた下層路盤の上に転圧して上層路盤を形成する。
【0035】
上層路盤の上には、密粒度アスファルト混合物を敷均し、転圧して舗装体の基層を形成する。そして、基層の上には開粒度アスファルト混合物を敷均し、転圧して表層を形成する。アスファルト混合物による舗装体の形成は、上層路盤を形成した後、路盤材に含まれるアスファルト乳剤の水分が散逸するのを待たずに施工することができる。舗装体を施工した後にも上層路盤内ではアスファルト乳剤に含まれる水分が鉄鋼スラグの水硬反応に用いられ、舗装体によって水分の蒸発が妨げられても、上層路盤内に水分が長く留まるのが抑制される。
【0036】
このような舗装構造は、本発明の路盤材を用いて上層路盤を形成することにより、次のような特徴を有するものとなる。
この舗装構造では、上層路盤に鉄道の軌道に用いられて廃材となったバラスト及び鉄鋼産業の副産物である鉄鋼スラグを、多大な加工を施すことなく利用することができる。したがって、資材のリサイクルを促進するものとなる。
【0037】
また、上層路盤は、アスファルト乳剤と鉄鋼スラグの水硬性によって安定処理が施され、十分な強度を有するとともに、路盤が強度を失うまでの変形量が増大し、粘り強いものとなる。
鉄鋼スラグはアスファルト乳剤と接触して水分が供給されることによって水硬性が発現し、鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグの粒子とバラストの粒子との間を結着して上層路盤は大きな強度を有するものとなる。そして、アスファルト乳剤の水分が鉄鋼スラグの水硬作用に供され、アスファルト乳剤は早期に硬化して鉄鋼スラグの粒子間及び鉄鋼スラグとバラストとの間を結着する。硬化したアスファルト成分は変形性能を有し、鉄鋼スラグ及びバラストの粒子が凝結した上層路盤を粘り強いものとする。
【0038】
図4は、本発明の路盤材と、アスファルト乳剤を用いることなく鉄鋼スラグを水硬性によって凝結させたものと、について一軸圧縮試験を行ったときの荷重と変形量との関係を示す概略図である。この図に示されるように、双方とも鉄鋼スラグの水硬性によってほぼ同等の強度を有するものであるが、本発明の路盤材では水分の散逸によって硬化したアスファルト成分によって強度を保持したまま大きな変形を許容するものとなる。
また、上層路盤の安定処理にセメントを用いる必要がなく、セメントを散布して用いるときのように粉塵を抑制するための処置等が不要となり、効率よく上層路盤を形成することができる。
【0039】
以上に、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜に変更して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0040】
1:路床, 2:下層路盤, 3:上層路盤, 4:舗装体の基層, 5:舗装体の上層,
11:バラスト, 12:鉄鋼スラグ, 13:アスファルト成分