特開2017-101643(P2017-101643A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101643(P2017-101643A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】ガソリン直噴レール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/00 20060101AFI20170512BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   F02M55/00 Z
   F02M55/02 350F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-237410(P2015-237410)
(22)【出願日】2015年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】特許業務法人 銀座総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀司
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB01
3G066AD05
3G066BA35
3G066BA46
3G066CB12
(57)【要約】
【課題】
今後のガソリン直噴システムにおける高圧化に際し、レール本体とエンドキャップとをろう付け固定した場合であっても、レール本体の肉厚を厚くすることなくろう付け部の破壊を防止可能とする。
【解決手段】
レール本体1の両端内方にエンドキャップ2が挿入配置されるとともに、このエンドキャップ2の外周3とレール本体1の内周4とがろう付け固定されたガソリン直噴レールにおいて、レール本体1の外周3に軸方向長さLがL≧5mmである補強リング6を備え、この補強リング6のエンドキャップ2側の一端10の位置が、上記レール本体1とエンドキャップ2とのろう付け部12に重ならない位置であるとともに、この補強リング6の一端10からろう付け部12の先端13までの距離Xが0mm≦X≦15mmであって、補強リング6の肉厚がレール本体1の肉厚の40%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール本体の両端内方にエンドキャップが挿入配置されるとともに、このエンドキャップの外周とレール本体の内周とがろう付け固定されたガソリン直噴レールにおいて、レール本体の外周に軸方向長さLがL≧5mmである補強リングを備え、この補強リングのエンドキャップ側の一端の位置が、上記レール本体とエンドキャップとのろう付け部に重ならない位置であるとともに、この補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xが0mm≦X≦15mmであって、補強リングの肉厚がレール本体の肉厚の40%以上であることを特徴とするガソリン直噴レール。
【請求項2】
レール本体の両端内方にエンドキャップが挿入配置されるとともに、このエンドキャップの外周とレール本体の内周とがろう付け固定されたガソリン直噴レールにおいて、レール本体の外周に補強リングを備え、この補強リングのエンドキャップ側の一端の位置が、上記レール本体とエンドキャップとのろう付け部に重なる位置であるとともに、このろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離YがY≧5mmであって、補強リングの肉厚がレール本体の肉厚の40%以上であることを特徴とするガソリン直噴レール。
【請求項3】
補強リングは、その軸方向長さLがL≦30mmであることを特徴とする請求項1のガソリン直噴レール。
【請求項4】
ろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離Yは、Y≦30mmであることを特徴とする請求項2のガソリン直噴レール。
【請求項5】
補強リングは、ろう付け、焼きばめ、又は溶接にてレール本体に固定されたことを特徴とする請求項1、2、または3のガソリン直噴レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン直噴用のレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガソリン直噴レールは特許文献1に示す如く、レール本体の両端にエンドキャップを挿入配置したものが一般的に使用されており、その中でも図7に示す如く、レール本体(31)にエンドキャップ(32)を離脱困難に固定するために、レール本体(31)の内周(33)とエンドキャップ(32)の外周(34)とをろう付け固定したものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-97690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如くレール本体(31)とエンドキャップ(32)とをろう付け固定した場合には、図8の矢印に示す如く燃料流通部に内圧が付加された場合に、この内圧によってレール本体(31)が拡径方向に変形するものとなるため、この変形によりろう付け部(35)を引き剥がす力が作用する。そのため、今後システムを高圧化した場合には、従来のレール本体(31)の肉厚ではエンドキャップ(32)とレール本体(31)とのろう付け部(35)がこのろう付け部(35)の先端(36)側から破壊してしまうおそれがある。このような事態を回避する手段としては、レール本体(31)の肉厚を従来のものよりも厚くする方法が考えられるが、肉厚を厚くした場合にはレール本体(31)の容積が大きくなることから、熱が伝わりにくくなってろう付けの際にろう材の溶融温度まで温度を上げることができず、ろう付け困難となるとともに、重量が重くなりガソリンの燃費性能が低下するものとなる。
【0005】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、今後のガソリン直噴システムにおける高圧化に際し、レール本体とエンドキャップとをろう付け固定した場合であっても、レール本体の肉厚を厚くすることなくろう付け部の破壊を防止可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1発明は上述の如き課題を解決したものであって、レール本体の両端内方にエンドキャップが挿入配置されるとともに、このエンドキャップの外周とレール本体の内周とがろう付け固定されたガソリン直噴レールにおいて、レール本体の外周に軸方向長さLがL≧5mmである補強リングを備え、この補強リングのエンドキャップ側の一端の位置が、上記レール本体とエンドキャップとのろう付け部に重ならない位置であるとともに、この補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xが0mm≦X≦15mmであって、補強リングの肉厚をレール本体の肉厚の40%以上としたものである。
【0007】
また本願の第2発明は、レール本体の両端内方にエンドキャップが挿入配置されるとともに、このエンドキャップの外周とレール本体の内周とがろう付け固定されたガソリン直噴レールにおいて、レール本体の外周に補強リングを備え、この補強リングのエンドキャップ側の一端の位置が、上記レール本体とエンドキャップとのろう付け部に重なる位置であるとともに、このろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離YがY≧5mmであって、補強リングの肉厚をレール本体の肉厚の40%以上としたものである。
【0008】
ここで、レール本体に補強リングを備えた際のレール本体の内圧付加時の応力の低減効果について有限要素解析を行った。この有限要素解析について説明すると、まず補強リングの肉厚をレール本体の肉厚の40%とするとともに、軸方向長さLをそれぞれ4、5、10、30とした複数の補強リングを用意し、各補強リングにおける、応力比と補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xとの関係について解析した。その解析結果を図2(a)に示す。尚、上記応力比とは、レール本体に補強リングを備えない場合の発生応力と補強リングを備えた場合の発生応力との比率を示すものであって、応力比=(補強リングを備えた場合の発生応力)/(レール本体に補強リングを備えない場合の発生応力)の数式にて算出されるものである。そして応力比が1.0の場合は応力低減効果がないことを意味し、値が0に近づけば近づくほど応力低減効果が高いことを示す。
【0009】
この有限要素解析の結果、図2(a)に示す如く補強リングの長さL=4の場合には応力比がXの値にかかわらず1.0からあまり減少しないのに対し、L=5、10、30の場合には、いずれもXが0に近づくにつれて、応力比が1.0から明らかに減少することが確認された。この結果から、本願の第1発明では補強リングの軸方向長さLをL≧5mmとするとともに、本願の第2発明ではろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離YをY≧5mmとしている。
【0010】
次に、軸方向長さLを10mmとするとともに、各肉厚をレール本体の肉厚の20%、40%とした2種類の補強リングを用意し、各補強リングの応力比と補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xとの関係についても解析した。その解析結果を図2(b)に示す。
【0011】
この有限要素解析結果から、図2(b)に示す如くレール本体との肉厚比が20%の場合には応力比の減少がほとんど見られないのに対し、肉厚比が40%の場合には、いずれもXが0に近づくにつれて応力比が明らかに減少することが確認された。この結果から、本願の第1、第2発明では補強リングの肉厚をレール本体の肉厚の40%以上としている。
【0012】
また、図2(a)(b)に示す如く、Xが15mm以上の場合には、応力比は1.0のままである。そのため、Xを15mm以上としたとしても補強リングを備えることによる応力比の減少は期待できないことから、本願の第1発明では、補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xの範囲を0mm≦X≦15mmとしている。
【0013】
尚、本願の第2発明については、補強リングのエンドキャップ側の一端の位置が、上記レール本体とエンドキャップとのろう付け部に重なる位置であることを必須の構成要件としていることから、補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離については特に問題となることはない。
【0014】
また本願の第1発明において、補強リングはその軸方向長さLをL≦30mmとしたものであっても良い。補強リングの軸方向長さLを30mmより長くしても著しい応力の減少効果は見られず、逆に、材料の無駄になるとともに製品の重量が重くなるという問題が生じる。
【0015】
また本願の第2発明において、ろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離YをY≦30mmとしたものであっても良い。ろう付け部の先端から補強リングの他端までの距離Yを30mmより長くしても著しい応力の減少効果は見られず、逆に、材料の無駄になるとともに製品の重量が重くなるという問題が生じる。
【0016】
また本願の第1、2発明において、補強リングはろう付け、焼きばめ、又は溶接にてレール本体に固定されたものであっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1、第2発明は上述の如く、応力又は変位量が大きいレール本体の外周位置に補強リングを備えたものであるから、レール本体の拡径方向への変形を抑えることができる。そのため、今後のガソリン直噴システムにおける高圧化に際し、レール本体とエンドキャップとをろう付け固定した場合であっても、レール本体の肉厚を厚くする必要がないため、レール本体の重量を重くすることなく、ろう付け部の破壊を防止可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1を示す断面図。
図2】応力比と補強リングの一端からろう付け部の先端までの距離Xとの関係を示すグラフ。
図3】実施例1を示す斜視図。
図4】実施例2を示す断面図。
図5】実施例3を示す断面図。
図6】実施例3を示す斜視図。
図7】従来例を示す断面図。
図8】従来例を示す内圧付加時の断面図。
【実施例1】
【0019】
本願の第1発明である実施例1について、図1〜3において以下に説明する。まず、(1)はレール本体であって、このレール本体(1)の外径を22mmとするとともに、内径を17mmとしている。また、レール本体(1)の外径Dと肉厚tとの比を0.1としている。またこのレール本体(1)の材質を、ステンレス製としている。尚、本実施例では上記の如くレール本体(1)の材質をステンレス製としているが、他の異なる実施例では鉄鋼製とすることも可能である。またこのレール本体(1)の両端内方には、その外径をレール本体(1)の内径に対応させた円柱状のエンドキャップ(2)を挿入配置している。
【0020】
そしてこのエンドキャップ(2)の外周(3)とレール本体(1)の内周(4)との間隔にろう材(5)を配置し、エンドキャップ(2)とレール本体(1)とをろう付け固定している。またこのレール本体(1)の外周(7)には補強リング(6)を装着している。この補強リング(6)は、軸方向の長さL=20mmの円筒形であって、その内周をレール本体(1)の外周(7)にろう付けにて固定している。尚、本実施例及び下記実施例2、3では上記の如く、補強リング(6)をレール本体(1)にろう付け固定しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、補強リング(6)をレール本体(1)に焼きばめ、又は溶接にて固定配置することも可能である。
【0021】
またこの補強リング(6)は、その肉厚をレール本体(1)の肉厚tの120%としている。尚、補強リング(6)とエンドキャップ(2)の材質はステンレス又は鉄鋼である。また、本発明のガソリン直噴レールに使用するレール本体(1)の寸法は、外径Dが10mm〜25mm、内径が7mm以上、外径Dと肉厚tの比が、t/D=0.1〜0.25のものが好ましい。
【0022】
また、本実施例では図1に示す如く、補強リング(6)のエンドキャップ(2)側の一端の位置がレール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)に重ならないよう、補強リング(6)をレール本体(1)に装着しており、補強リング(6)の一端(10)からろう付け部(12)の先端(13)までの距離XをX=5mmとしている。
【0023】
上記の如く、補強リング(6)の長さLをL≧5mm、補強リング(6)の一端(10)からろう付け部(12)の先端(13)までの距離Xを0mm≦X≦15mm、補強リング(6)の肉厚をレール本体(1)の肉厚の40%以上とすることにより、内圧の付加によって発生する応力又は変位量が大きいレール本体(1)の外周(7)位置に補強リング(6)が備えられたものとなる。そのため、レール本体(1)の拡径方向への変形を抑えることができ、ろう付け部(12)の破壊を防止することが可能となる。
【実施例2】
【0024】
また、上記実施例1では補強リング(6)の一端(10)からろう付け部(12)の先端(13)までの距離XをX=5mmとしているが、本願の第1発明である本実施例2では図4に示す如く、X=0mmとしている。また、他の寸法については上記実施例1と同じく、補強リング(6)の軸方向の長さL=20mmとするとともに、その肉厚をレール本体(1)の肉厚の120%としている。このように本実施例2の場合も0mm≦X≦15mmの範囲内にあって、更に補強リング(6)の長さLがL≧5mm、補強リング(6)の肉厚がレール本体(1)の肉厚の40%以上であることから、本実施例2の場合も応力又は変位量が大きいレール本体(1)の外周(7)位置に補強リング(6)が備えられたものとなり、レール本体(1)の拡径方向への変形を抑えてろう付け部(12)の破壊を防止することができる。
【実施例3】
【0025】
また、上記実施例1、2では、補強リング(6)のエンドキャップ(2)側の一端(10)の位置が、レール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)に重ならない位置となるよう補強リング(6)をレール本体(1)に固定配置しているが、本願の第2発明における本実施例3では、補強リング(6)のエンドキャップ(2)側の一端(10)の位置が、レール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)に重なる位置に補強リング(6)を固定配置している。
【0026】
本実施例3について図5、6において説明すると、本実施例のレール本体(1)の外径、内径、レール本体(1)の外径Dと肉厚tとの比、材質については上記実施例1と同じである。そしてこのレール本体(1)の両端内方には、このレール本体(1)の内径に外径を対応させた円柱状のエンドキャップ(2)を挿入配置するとともに、エンドキャップ(2)の外周(3)とレール本体(1)の内周(4)との間隔をろう材(5)にてろう付け固定している。またこのレール本体(1)の外周(7)には、補強リング(6)を装着しており、この補強リング(6)は、軸方向の長さL=30mmの円筒形であって、その内周をレール本体(1)の外周(7)にろう付けにて固定している。またこの補強リング(6)は、その肉厚をレール本体(1)の肉厚の120%としている 。
【0027】
また図5、6に示す如く、補強リング(6)のエンドキャップ(2)側の一端(10)の位置が、レール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)に重なるよう補強リング(6)をレール本体(1)に装着しており、レール本体(1)の一端側の端面が補強リング(6)の一端(10)側の端面と面一になるよう配置している。そして、図5に示すレール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)の先端(13)から補強リング(6)の他端(11)までの距離Yを、Y=20mmとしている。
【0028】
上記の如く、補強リング(6)のエンドキャップ(2)側の一端(10)の位置が、レール本体(1)とエンドキャップ(2)とのろう付け部(12)に重なる位置に補強リング(6)をレール本体(1)に固定配置するとともに、ろう付け部(12)の先端(13)から補強リング(6)の他端(11)までの距離YをY≧5mm、補強リング(6)の肉厚をレール本体(1)の肉厚の40%以上とすることにより、内圧の付加によってレールに発生する応力又は変位量が大きいレール本体(1)の外周(7)位置に補強リング(6)が備えられたものとなる。そのため、レール本体(1)の拡径方向への変形を抑えることができ、ろう付け部(12)の破壊を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 レール本体
2 エンドキャップ
3 外周(エンドキャップ)
4 内周
6 補強リング
7 外周(レール本体)
10 一端
11 他端
12 ろう付け部
13 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8