(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101808(P2017-101808A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20170512BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20170512BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20170512BHJP
C10M 103/02 20060101ALI20170512BHJP
C10M 125/02 20060101ALI20170512BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20170512BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20170512BHJP
【FI】
F16C33/10 D
F16C17/02 Z
F16C33/12 B
C10M103/02
C10M125/02
C10N20:02
C10N40:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-237875(P2015-237875)
(22)【出願日】2015年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 治
【テーマコード(参考)】
3J011
4H104
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA02
3J011DA01
3J011JA01
3J011KA02
3J011LA01
3J011MA03
3J011RA10
3J011SB01
3J011SE05
4H104AA04A
4H104AA04C
4H104EA02A
4H104LA03
4H104PA01
(57)【要約】
【課題】軽荷重・高速回転および高荷重の双方の使用条件下において、良好な摺動性能を発揮することができる固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受を提供する。
【解決手段】滑り軸受1は、軸受本体2の第一の貫通孔22aに嵌入される第一の固体潤滑剤3aにISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油を含浸させ、軸受本体2の第二の貫通孔22aに嵌入される第二の固体潤滑剤3bにISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油を含浸させている。軽荷重・高速回転の使用条件下においては、第一の固体潤滑剤3aから迅速に滲み出た低粘度の潤滑油が摺動面の全面に迅速に広がり、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。また、高荷重の使用条件下においては、第二の固体潤滑剤3bから滲み出た高粘度の潤滑油が、支持対象の荷重によって途切れる可能性の低い高粘度の膜を摺動面上に形成するため、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持対象を摺動可能に支持する滑り軸受であって、
前記支持対象を摺動可能に支持する摺動面と、
前記摺動面に埋め込まれた複数の固体潤滑剤と、を備え、
前記複数の固体潤滑剤は、複数のグループに分類され、前記グループ毎に粘度の異なる潤滑油が含浸されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記複数の固体潤滑剤は、黒鉛を含み、多孔質状を呈しており、
前記複数の固体潤滑剤の含油率は、含浸される潤滑油の粘度が高いものほど大きい
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載の滑り軸受であって、
前記潤滑油は、粘度に応じて異なる添加剤が添加されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記複数のグループは、ISO粘度グレード番号100以上の潤滑油が含浸された固体潤滑剤のグループと、ISO粘度グレード番号32以下の潤滑油が含浸された固体潤滑剤のグループと、を含む
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記複数の固体潤滑剤は、前記グループ毎にサイズあるいは形状が異なる
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記摺動面は、金属材料および前記固体潤滑剤を含み、
前記固体潤滑剤は、前記金属材料の凹部に埋め込まれて固定されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受に関し、特に、潤滑油を含浸した固体潤滑剤が摺動面に埋め込まれた固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受は、基体となる金属製の軸受本体の摺動面に黒鉛等の固体潤滑剤が埋め込まれた滑り軸受であり、一般的なすべり軸受に対して、高荷重条件下で使用できる、耐久性および性能安定性に優れる等の利点を有する。例えば、特許文献1には、潤滑油を含浸した固体潤滑剤が摺動面に埋め込まれた固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−166539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の潤滑油を含浸した固体潤滑剤が摺動面に埋め込まれた固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受では、固体潤滑剤から滲み出た潤滑油が摺動面の全面を覆うことにより、良好な摺動性能を発揮する。ここで、軽荷重・高速回転の使用条件下においては、潤滑油が迅速に固体潤滑剤から滲み出て摺動面の全面に広がることが好ましい。一方、高荷重(極圧)の使用条件下においては、摺動面を覆う潤滑油の膜が支持対象の荷重によって途切れることのないようにすることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の潤滑油を含浸した固体潤滑剤が摺動面に埋め込まれた固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受は、この点が考慮されていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽荷重・高速回転および高荷重の双方の使用条件下において、良好な摺動性能を発揮することができる固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受では、摺動面に埋め込まれた固体潤滑剤に粘度の異なる潤滑油を含浸させている。
【0007】
例えば、本発明の滑り軸受は、支持対象を摺動可能に支持する滑り軸受であって、
前記支持対象を摺動可能に支持する摺動面と、
前記摺動面に埋め込まれた複数の固体潤滑剤と、を備え、
前記複数の固体潤滑剤は、複数のグループに分類され、前記グループ毎に粘度の異なる潤滑油が含浸されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、摺動面に埋め込まれた複数の固体潤滑剤を複数のグループに分け、グループ毎に粘度の異なる潤滑油を固体潤滑剤に含浸させている。このため、軽荷重・高速回転の使用条件下においては、固体潤滑剤から迅速に滲み出た低粘度の潤滑油が摺動面の全面に迅速に広がり、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。また、高荷重の使用条件下においては、固体潤滑剤から滲み出た高粘度の潤滑油が、支持対象の荷重によって途切れる可能性の低い高粘度の膜を摺動面上に形成するため、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。したがって、本発明によれば、軽荷重・高速回転および高荷重の双方の使用条件下において、良好な摺動性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受1の正面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受1の正面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
【0012】
図示するように、本実施の形態に係る固体潤滑剤埋込タイプの滑り軸受1は、鉄、あるいは高力黄銅等の銅合金等からなる金属製の軸受本体2と、軸受本体2に埋め込まれた複数の第一の固体潤滑剤3aおよび複数の第二の固体潤滑剤3bと、を備えている。
【0013】
軸受本体2は、円筒体であり、内周面20および外周面21間を貫き、第一の固体潤滑剤3aが嵌入される複数の円筒状の第一の貫通孔22aと、内周面20および外周面21間を貫き、第二の固体潤滑剤3bが嵌入される複数の円筒状の第二の貫通孔22bとが、適切な間隔で交互に形成されている。後述するように、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bは、互いに異なる直径R1、R2(ここでは、第一の固定潤滑剤3aの直径R1<第二の固定潤滑剤3bの直径R2)を有する円柱体であり、これに合わせて第一の貫通孔22aおよび第二の貫通孔22bも互いに異なる直径を有している。また、軸受本体2の内周面20および外周面21の少なくとも一方は、第一の貫通孔22aから露出した第一の固体潤滑剤3a、および第二の貫通孔22bから露出した第二の固体潤滑剤3bとともに、支持対象(内周面20の場合は軸受本体2に挿入された軸部材が支持対象となり、外周面21の場合は軸受本体2が挿入された筒状部材が支持対象となる)を支持する摺動面を構成する。
【0014】
第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bは、互いに異なる直径R1、R2を有する円柱体であり、多孔質の黒鉛で形成される。軸受本体2の第一の貫通孔22aに嵌入された第一の固体潤滑剤3a、および軸受本体2の第二の貫通孔22bに嵌入された第二の固体潤滑剤3bは、軸受本体2の内周面20および外周面21を切削加工することにより、内周面20および外周面21からの突出部分が除去され、内周面20および外周面21の面形状に滑らかに揃うように仕上げられる。
【0015】
また、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bは、添加剤が添加された潤滑油を含浸している。第一の固体潤滑剤3aに含浸された潤滑油は、ISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油である。このような低粘度の潤滑油は、第一の固体潤滑剤3aから迅速に滲み出て内周面20あるいは外周面21の全面に迅速に広がるため、軽荷重(例えば10N/mm
2以下)・高速回転(例えば0.1m/s以上)の使用条件下においても、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。また、第二の固体潤滑剤3bに含浸された潤滑油は、ISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油である。このような高粘度の潤滑油は、第二の固体潤滑剤3bから滲み出て内周面20あるいは外周面21の全面に粘性の高い油膜を形成するため、高荷重(例えば100N/mm
2以上)の使用条件下においても、支持対象の荷重によって摺動面上の油膜が途切れることなく、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。
【0016】
第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bに含浸された潤滑油には、金属と反応して金属表面に皮膜を作り、金属表面の摩擦係数を下げる皮膜効果を発揮する添加剤が添加されている。ここで、第一の固体潤滑剤3aに含浸された潤滑油に添加される添加剤には、常温領域(例えば20度〜30度)で皮膜効果を発揮するリン系添加剤が用いられる。軽荷重の使用条件下においては、滑り軸受1と支持対象との間に大きな摩擦力が発生しないので、滑り軸受1の温度はそれほど上昇せず、常温のままである。そこで、第一の固体潤滑剤3aに含浸されたISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油に、リン系添加剤を添加することにより、滑り軸受1の温度が常温のままである軽荷重の使用条件下においても、摺動面として機能する金属製の軸受本体2の内周面20あるいは外周面21に皮膜を形成して、摩擦係数を下げることができる。また、第二の固体潤滑剤3bに含浸された潤滑油に添加される添加剤には、高温領域(例えば100度以上)で皮膜効果を発揮する硫黄系添加剤および塩素系添加剤の少なくとも一方が用いられる。高荷重の使用条件下においては、滑り軸受1と支持対象との間に大きな摩擦力が発生し、滑り軸受1の温度が急激に上昇して高温に達する。そこで、第二の固体潤滑剤3bに含浸されたISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油に、硫黄系添加剤および塩素系添加剤の少なくとも一方を添加することにより、滑り軸受1の温度が高温に達する高荷重の使用条件下においても、摺動面として機能する金属製の軸受本体2の内周面20あるいは外周面21に皮膜を形成して、摩擦係数を下げることができる。
【0017】
第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bを形成する多孔質の黒鉛の含油率(黒鉛に含浸される油の体積の黒鉛の体積に対する割合)は、含浸される潤滑油の粘度が高いものほど大きくなるように設定されている。これにより、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bから滲み出る潤滑油の流出速度を適切に調整している。具体的には、ISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油が含浸される第一の固体潤滑剤3aには、含油率の小さい多孔質の黒鉛(例えば含油率15%以下)で形成することにより、低粘度の潤滑油が第一の固体潤滑剤3aから一挙に流出するのを防止し、適切な速度で第一の固体潤滑剤3aから潤滑油を流出させている。このような含油率の小さい多孔質の黒鉛の円柱体は、例えばCIP(Cold Isostatic Pressing)成形により作製することができる。また、ISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油が含浸される第二の固体潤滑剤3bには、含油率の大きい多孔質の黒鉛(例えば含油率20%以上)で形成することにより、高粘度の潤滑油を第二の固体潤滑剤3bから流出しやすくして、適切な速度で第二の固体潤滑剤3bから潤滑油を流出させている。このような含油率の小さい多孔質の黒鉛の円柱体は、例えば押出成形により作製することができる。ただし、黒鉛の円柱体の製造方法は、上述のCIP成形や押出成形に限定されない。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を説明した。
【0019】
本実施の形態では、軸受本体2の複数の第一の貫通孔22aにそれぞれ嵌入される第一の固体潤滑剤3aに、ISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油を含浸させ、軸受本体2の複数の第二の貫通孔22aにそれぞれ嵌入される第二の固体潤滑剤3bに、ISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油を含浸させている。このため、軽荷重・高速回転の使用条件下においては、第一の固体潤滑剤3a各々から迅速に滲み出た低粘度の潤滑油が摺動面の全面に迅速に広がり、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。また、高荷重の使用条件下においては、第二の固体潤滑剤3b各々から滲み出た高粘度の潤滑油が、支持対象の荷重によって途切れる可能性の低い高粘度の油膜を摺動面上に形成するため、支持対象および摺動面間を潤滑することができる。したがって、本実施の形態によれば、軽荷重・高速回転および高荷重の双方の使用条件下において、良好な摺動性能を発揮することができる。
【0020】
また、本実施の形態では、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bを多孔質の黒鉛で形成するとともに、高粘度の潤滑油が含浸される第二の固体潤滑剤3bに用いる多孔質の黒鉛の含油率を、低粘度の潤滑油が含浸される第一の固体潤滑剤3aに用いる多孔質の黒鉛の含油率より大きくしている。このため、低粘度の潤滑油が第一の固体潤滑剤3aから一挙に流出するのを防止する一方、高粘度の潤滑油を第二の固体潤滑剤3bから流出しやすくできる。したがって、本実施の形態よれば、それぞれ適切な速度で第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bから潤滑油を流出させることができる。
【0021】
また、本実施の形態では、第一の固体潤滑剤3aに含浸されたISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油に、常温領域で皮膜効果を発揮するリン系添加剤を添加している。このため、滑り軸受1の温度が常温のままである軽荷重の使用条件下においても、摺動面に皮膜を形成して、摩擦係数を下げることができる。さらに、本実施の形態では、第二の固体潤滑剤3bに含浸されたISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油に、高温領域で皮膜効果を発揮する硫黄系添加剤および塩素系添加剤の少なくとも一方を添加している。このため、滑り軸受1の温度が高温に達する高荷重の使用条件下においても、摺動面に皮膜を形成して、摩擦係数を下げることができる。
【0022】
また、本実施の形態では、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bを、互いに異なる直径R1、R2を有する円柱体とし、これに合わせて、軸受本体2の第一の貫通孔22aおよび第二の貫通孔22bも、互いに異なる直径にしている。このため、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bをそれぞれ対応する第一の貫通孔22aおよび第二の貫通孔22bに確実に嵌入させることができ、滑り軸受1の作製時における作業性を改善することができる。
【0023】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0024】
例えば、上記の実施の形態では、軸受本体2の複数の第一の貫通孔22aにそれぞれ嵌入される第一の固体潤滑剤3aに、ISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油を含浸させ、軸受本体2の複数の第二の貫通孔22aにそれぞれ嵌入される第二の固体潤滑剤3bに、ISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油を含浸させている。しかし、本発明はこれに限定されない。摺動面に埋め込まれた複数の固体潤滑剤を複数のグループに分け、グループ毎に粘度の異なる潤滑油を固体潤滑剤に含浸させたものであればよい。
【0025】
また、上記の実施の形態では、第一の固体潤滑剤3aおよび第二の固体潤滑剤3bを、互いに異なる直径R1、R2を有する円柱体とし、これに合わせて、軸受本体2の第一の貫通孔22aおよび第二の貫通孔22bも、互いに異なる直径にしている。しかし、本発明はこれに限定されない。粘度の異なる潤滑油が含浸された固体潤滑剤のグループ毎に、サイズあるいは形状を異ならせ、これに合わせて、軸受本体の貫通孔も、嵌入される固体潤滑剤のグループ毎に異ならせたものであればよい。
【0026】
また、上記の実施の形態では、摺動面に埋め込まれた複数の固体潤滑剤を複数のグループに分け、グループ毎に粘度の異なる潤滑油を固体潤滑剤に含浸させているが、本発明はこれに限定されない。摺動面に埋め込まれた少なくとも一つの固体潤滑剤のそれぞれに粘度の異なる複数の潤滑油を含浸させてもよい。このようにすることにより、複数の固体潤滑剤を複数のグループに分ける必要がなくなり、固体潤滑剤をグループ単位で管理する必要がなくなるので、固体潤滑剤の在庫管理等の簡素化することができる。
【0027】
この場合、個々の固体潤滑剤に含浸させる複数の潤滑油に、ISO粘度グレード番号100以上の高粘度の潤滑油と、ISO粘度グレード番号32以下の低粘度の潤滑油と、を含めることが好ましい。また、ISO粘度グレード番号100以上の潤滑油には、硫黄系添加剤および塩素系添加剤の少なくとも一方が添加され、ISO粘度グレード番号32以下の潤滑油には、リン系添加剤が添加されていることが好ましい。
【0028】
また、上記の実施の形態において、固体潤滑剤は、黒鉛を含み、多孔質状を呈しているものであればよい。
【符号の説明】
【0029】
1:滑り軸受、 2:軸受本体、 3a:第一の固体潤滑剤、 3b:第二の固体潤滑剤、 20の軸受本体2の内周面、21:軸受本体2の外周面、22a:軸受本体2の第一の貫通孔、22b:軸受本体2の第二の貫通孔