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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-101893(P2017-101893A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】均熱構造体
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
   F28D15/02 102F
   F28D15/02 102H
   F28D15/02 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-236540(P2015-236540)
(22)【出願日】2015年12月3日
(71)【出願人】
【識別番号】311014705
【氏名又は名称】株式会社UACJ銅管
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭治
(72)【発明者】
【氏名】小松 哲敏
(57)【要約】
【解決課題】高温使用時に異常加熱が起こった場合に、均熱ブロック内に挿通されているヒートパイプが爆裂し難い均熱構造体を提供すること。
【解決手段】少なくとも、金属製の均熱ブロックと、該均熱ブロック内に形成されているヒートパイプ挿通孔に挿入されているヒートパイプと、有する均熱構造体であり、該ヒートパイプは、管本体部の少なくとも一方の端部に、一端側が該管本体部の内部と連通する小径部を設け、少なくとも該小径部の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、該管本体部及び該小径部の他の部分より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されており、該ヒートパイプの管本体部の耐力値σ0.2(200)は、50MPa以上であり、20℃におけるDp−Doが0.1mm以上且つDoの5%以下であり、該ヒートパイプの該管本体部の400℃における伸びが30%以上であること、を特徴とする均熱構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、金属製の均熱ブロックと、該均熱ブロック内に形成されているヒートパイプ挿通孔に挿入されているヒートパイプと、を有する均熱構造体であり、
該ヒートパイプは、管本体部の少なくとも一方の端部に、一端側が該管本体部の内部と連通する小径部を設け、少なくとも該小径部の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、該管本体部より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されており、
該ヒートパイプは銅合金からなり、該ヒートパイプの管本体部の200℃における耐力値σ0.2(200)は、50MPa以上であり、
20℃における、該ヒートパイプ挿入孔の内径と該管本体部の外径との差が、0.1mm以上且つ該管本体部の外径の5%以下であり、
該ヒートパイプの該管本体部の400℃における伸びδ(400)が30%以上であること、
を特徴とする均熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシーラーやヒートロール等の金属製の均熱ブロックにヒートパイプが挿通されて構成される均熱構造体であり、高温条件下で使用される均熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
均熱構造体は、均熱構造体を構成する金属製の均熱ブロックが加熱され、加熱された均熱ブロックから被加熱体に熱を加えることにより、被加熱体に熱を均一に加えるための構造体である。そして、この均熱構造体では、金属製の均熱ブロックの温度が速やかに均一になるように、内部に水等の作動液が封入された管体からなるヒートパイプが、金属製の均熱ブロックに挿通されて設置されている。
【0003】
均熱構造体には、高温条件下で使用されるものがある。高温条件下で使用される均熱構造体の通常使用温度は、200℃以上であり、最高使用温度は、300℃程度である。このような高温条件下で使用される均熱構造体の用としては、ヒートシーラーやヒートロールが挙げられる。そのため、ヒートパイプは、通常使用時には200℃に、最高使用温度では300℃程度に曝される。
【0004】
上記のような高温条件に曝されるヒートパイプの材質には、最高使用温度でも塑性変形しない、耐力値の高い、耐熱性に優れる銅合金が採用されている。例えば、10%キュプロニッケルなどの200℃での耐力値がおよそ50MPa以上の材料が採用されている。
【0005】
ここで、高温条件下で使用される均熱構造体において、正常時にヒートパイプが曝される最高温度は、300℃程度であるので、正常時のピートパイプの温度は、300℃程度であるが、異常加熱により突発的に温度が上昇する場合がある。そして、異常加熱が起こった場合、ヒートパイプのコンテナが急激に膨張して、爆裂することがある。
【0006】
そこで、このようなヒートパイプのコンテナの爆裂を防止する方法として、例えば、特許文献1及び2には、ヒートパイプの先端の封止部からスローリークする構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−110392号公報
【特許文献2】特開2008−185322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1又は2のような対策を採ることにより、ある程度、異常加熱による爆裂を防止することはできる。
【0009】
しかしながら、更に高温となる環境下でヒートパイプの使用となると、異常加熱が起こった場合には、特許文献1又は2の対策では、爆裂を完全に防止するには至らない。そのため、更に、爆裂が起こり難くすることが求められている。
【0010】
従って、本発明の目的は、高温使用時に異常加熱が起こった場合に、均熱ブロック内に挿通されているヒートパイプが爆裂し難い均熱構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明は、少なくとも、金属製の均熱ブロックと、該均熱ブロック内に形成されているヒートパイプ挿通孔に挿入されているヒートパイプと、を有する均熱構造体であり、
該ヒートパイプは、管本体部の少なくとも一方の端部に、一端側が該管本体部の内部と連通する小径部を設け、少なくとも該小径部の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、該管本体部より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されており、
該ヒートパイプは銅合金からなり、該ヒートパイプの管本体部の200℃における耐力値σ0.2(200)は、50MPa以上であり、
20℃における、該ヒートパイプ挿入孔の内径と該管本体部の外径との差が、0.1mm以上且つ該管本体部の外径の5%以下であり、
該ヒートパイプの該管本体部の400℃における伸びδ(400)が30%以上であること、
を特徴とする均熱構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温使用時に異常加熱が起こった場合に、均熱ブロック内に挿通されているヒートパイプが爆裂し難い均熱構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の均熱構造体の形態例を示す模式的な斜視図である。
図2図1に示す均熱構造体の端面図である。
図3図1中の均熱ブロックの端面図である。
図4図1に示す均熱構造体に挿通されているヒートパイプの模式図である。
図5図4中、符号Aで囲った部分の拡大図である。
図6図5のX−X線端面図である。
図7】ヒートパイプの小径部を加圧閉塞する前の模式的な端面図である。
図8】20℃における均熱構造体内のヒートパイプ及びその近傍の拡大端面図である。
図9】400℃における均熱構造体内のヒートパイプ及びその近傍の拡大端面図である。
図10】ヒートパイプの形態例の模式的な端面図である。
図11】実施例1で用いた評価用治具を示す斜視図である。
図12】実施例2で用いた均熱ブロックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の均熱構造体について、図1図10を参照して説明する。図1は、本発明の均熱構造体の形態例を示す模式的な斜視図である。図2は、図1に示す均熱構造体の端面図であり、図2(A)はヒータ挿通孔の伸長方向に平行な面でヒータ挿入孔を切った図であり、図2(B)はヒートパイプ挿通孔の伸長方向に平行な面でヒートパイプ挿入孔を切った図であり、図(C)はヒートパイプ挿通孔の伸長方向に対して垂直な面で切った図である。なお、図2(A)及び図2(B)では、ヒータ又はヒートパイプについては正面図で表している。図3は、図1中の均熱ブロックの端面図であり、ヒートパイプ挿通孔及びヒータ挿通孔の伸長方向に対して垂直な面で切った図である。図4は、図1に示す均熱構造体に挿通されているヒートパイプの模式図であり、図4(A)は平面図であり、図4(B)は正面図である。なお、図4では、図2に示す状態でヒートパイプが挿通されているときの正面の図を正面図として、上から見た図を平面図としたが、実際の均熱構造体中においては、ヒートパイプの円周方向の向きは、任意である。図5は、図4中、符号Aで囲った部分の拡大図である。図6は、図5のX−X線端面図である。図7は、ヒートパイプの小径部を加圧閉塞する前の模式的な端面図である。図8は、20℃における均熱構造体内のヒートパイプ及びその近傍の拡大端面図であり、ヒートパイプの伸長方向に対して垂直な面で切った図である。図9は、400℃における均熱構造体内のヒートパイプ及びその近傍の拡大端面図であり、ヒートパイプの伸長方向に対して垂直な面で切った図である。図10は、ヒートパイプの形態例を示す模式図であり、端部近傍をヒートパイプの中心線に重なる面で切った端面の拡大図である。
【0015】
図1図3に示すように、均熱構造体10は、均熱ブロック1と、均熱ブロック1内に挿通されているヒートパイプ2aと、均熱ブロック1内に挿通されているヒータ3と、からなる。ヒータ3は、図2(A)に示すように、均熱ブロック1内に形成され、ヒータ3の挿通方向61に伸長するヒータ挿通孔6内に挿通されて、設置されている。ヒートパイプ2aは、図2(B)に示すように、均熱ブロック1内に形成され、ヒートパイプ2aの挿通方向51に伸長するヒートパイプ挿通孔5内に挿通されて、設置されている。また、図2(C)に示すように、ヒートパイプ2aは、均熱ブロック1内に、ヒートパイプ挿通孔の伸長方向に対して垂直な方向71に、等間隔で複数配置されており、また、ヒータ3は、均熱ブロック1内に、ヒートパイプ挿通孔の伸長方向に対して垂直な方向71に、等間隔で複数配置されている。
【0016】
図4図6に示すように、均熱ブロック1内に挿通されているヒートパイプ2aは、管本体部11と、管径減少部13aと、小径部15aと、加圧時変形部29aと、扁平重合部14aと、を有する。
【0017】
このようなヒートパイプ2aは、図7に示す小径部を加圧閉塞する前のパイプ21の小径部を加圧閉塞することにより得られる。図7に示す小径部を加圧閉塞する前のパイプ21は、管本体部11と、管本体部11の一端側に、管本体部11の一端側の管径を徐々に小さくする加工を施すことにより形成される管径減少部13aと、一端側が管径減少部13aに繋がり、他端側19が開口している小径部18と、からなる。そして、小径部を加圧閉塞する前のパイプ21の開口20から小径部18内を経て、管本体部11内に作動液が入れられた後、小径部18の一部が、小径部18の内壁17が互いに重なり合うように加圧されて、扁平重合部14aが形成され、小径部18の他端側19が閉塞される。
【0018】
加圧閉塞により形成される扁平重合部14aでは、加圧閉塞前の小径部18の一方の片側半分(管を周方向に見たときの片側半分の部分)が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった一方の扁平重合部薄肉各部27a1と、小径部18の他方の片側半分が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった他方の扁平重合部薄肉各部27a2とが、重なり合っている。そして、扁平重合部14aの端部28aでは、一方の扁平重合部薄肉各部27a1の一端側が、加圧時変形部29aの一方の片側半分29a1に繋がっており、他方の扁平重合部薄肉各部27a2の一端側が、加圧時変形部29aの他方の片側半分29a2に繋がっている。加圧時変形部29aの一方の片側半分29a1及び他方の片側半分29a2は、小径部15aに繋がっている。なお、加圧時変形部29aの一方の片側半分29a1及び他方の片側半分29a2は、加圧の時に、扁平重合部が形成される部分の加圧圧縮に伴って、小径部が潰れるように変形することで形成される部分であり、内壁同士は重なり合っておらず、且つ、管壁は圧縮されていない。
【0019】
つまり、ヒートパイプ2aは、管本体部11の一方の端部に、一端側が管本体部11の内部と連通する小径部(小径部を加圧閉塞する前のパイプ21の小径部18に相当する。)を設け、小径部の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、管本体部11より薄肉の扁平重合部14aを形成させることにより、端部が閉塞されている。ヒートパイプ2aは、管本体部11と、管本体部11の一端側に形成されている管径減少部13aと、一端側が管径減少部13aに繋がり、他端側が加圧時変形部29aに繋がる小径部15aと、一端側が小径部15aに繋がり、他端側が扁平重合部14aに繋がる加圧時変形部29aと、加圧時変形部29aに繋がる扁平重合部14aと、を有する。また、ヒートパイプ2aでは、管本体部11の他端の端部12は、略半球状の形状に封止加工されている。
【0020】
また、図10には、小径部を加圧閉塞する前のパイプの小径部の全部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して扁平重合部を形成させたヒートパイプの形態例を示す。図10中、ヒートパイプ2bは、管本体部11の一端側に、管本体部11の一端側の管径を徐々に小さくする加工を施すことにより形成される管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側が開口している小径部と、を有する小径部を加圧閉塞する前のパイプに、小径部の開口から小径部内を経て、管本体部11内に作動液が入れられた後、小径部の全部が、小径部の内壁が互いに重なり合うように加圧されて、ヒートパイプ2bの一端側に扁平重合部14bが形成されることにより作製される。そして、小径部を加圧閉塞する前のパイプの小径部の全部が加圧閉塞されると、管径縮小部13bの他端も少しだけ加圧されることになる。そのため、ヒートパイプ2bについては、加圧閉塞により形成される扁平重合部14bでは、加圧閉塞前の小径部の一方の片側半分が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった一方の扁平重合部薄肉各部27b1と、小径部の他方の片側半分が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった他方の扁平重合部薄肉各部27b2とが、重なり合っている。そして、扁平重合部14bの端部28bでは、一方の扁平重合部薄肉各部27b1の一端側が、加圧時変形部29bの一方の片側半分29b1に繋がっており、他方の扁平重合部薄肉各部27b2の一端側が、加圧時変形部29bの他方の片側半分29b2に繋がっている。加圧時変形部29bの一方の片側半分29b1及び他方の片側半分29b2は、管径減少部13bに繋がっている。なお、加圧時変形部29bの一方の片側半分29b1及び他方の片側半分29b2は、加圧の時に、扁平重合部が形成される部分の加圧圧縮に伴って、管径減少部の他端の一部分が潰れるように変形することで形成される部分であり、内壁同士は重なり合っておらず、且つ、管壁は圧縮されていない。
【0021】
つまり、ヒートパイプ2bは、管本体部11の一方の端部に、一端側が管本体部11の内部と連通する小径部(小径部を加圧閉塞する前のパイプの小径部に相当する。)を設け、小径部の全部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、管本体部11より薄肉の扁平重合部14bを形成させることにより、端部が閉塞されている。ヒートパイプ2bは、管本体部11と、管本体部11の一端側に形成されている管径減少部13bと、一端側が管径減少部13bに繋がり、他端側が扁平重合部14bに繋がる加圧時変形部29bと、加圧時変形部29bに繋がる扁平重合部14bと、を有する。
【0022】
また、ヒートパイプとしては、小径部を加圧閉塞する前のパイプの小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部分を、内壁が互いに重なり合うように加圧して扁平重合部を形成させたヒートパイプが挙げられる。このような形態例のヒートパイプは、管本体部の一方の端部に、一端側が管本体部の内部と連通する小径部(小径部を加圧閉塞する前のパイプの小径部に相当する。)を設け、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部分を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、管本体部より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されている。そして、このような形態例のヒートパイプは、管本体部と、管本体部の一端側に形成されている管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側が扁平重合部に繋がる加圧時変形部と、加圧時変形部に繋がる扁平重合部と、を有する。
【0023】
ヒートパイプ2aでは、扁平重合部14aの肉厚(図6中、符号tで示す長さであり、扁平重合部薄肉各部27aのそれぞれの厚みに相当する。)が、管本体部11の肉厚(図6中、符号tで示す長さ)よりも薄いので、また、ヒートパイプ2bでは、扁平重合部14bの肉厚(図10中、符号tで示す長さであり、扁平重合部薄肉各部27bのそれぞれの厚みに相当する。)が、管本体部11の肉厚(図10中、符号tで示す長さ)よりも薄いので、異常加熱により突発的な温度上昇が起こって、ヒートパイプ内に封入されている水の飽和蒸気圧が上昇して内圧が高くなったときに、扁平重合部14a又は14bの重なり合っている内壁部分が剥がれるように変形し、言い換えると、重なり合っている一方の扁平重合部薄肉各部27a1又は27b1と他方の扁平重合部薄肉各部27a2又は27b2とが剥がれるように変形し、できた隙間に蒸気が入り込むことにより、スローリークが起こる。つまり、ヒートパイプ2a及び2bでは、ヒートパイプの一方の端部に、扁平重合部14a又は14bを設けることにより、異常加熱により突発的な温度上昇が起こって、内圧が急激に上昇したときに、スローリークを起こさせることができる。
【0024】
均熱構造体10は、均熱ブロック1内に形成されているヒートパイプ挿通孔5にヒートパイプ2aを挿通することにより作製されるため、作製温度、通常、20℃程度の温度において、ヒートパイプ挿通孔5の内径が、ヒートパイプの管本体部11の外径より大きくないと、ヒートパイプ2aをヒートパイプ挿通孔5内に挿通することができない。そのため、図8に示すように、20℃において、ヒートパイプ挿通孔5の内径Dpとヒートパイプの管本体部11の外径Doとの差(Dp−Do)は、0.1mm以上且つヒートパイプの管本体部11の外径Doの5%以下に調節されている。
【0025】
また、均熱構造体10は、少なくとも400℃においては、図9に示すように、ヒートパイプ挿通孔5の内壁23とヒートパイプの管本体部11の外壁24が密着している。
【0026】
本発明の均熱構造体は、金属製の均熱ブロックと、該均熱ブロック内に設けられたヒートパイプ挿通孔に挿入されているヒートパイプと、を有する均熱構造体であり、
該ヒートパイプは、管本体部の少なくとも一方の端部に、一端側が該管本体部の内部と連通する小径部を設け、少なくとも該小径部の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、該管本体部より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されており、
該ヒートパイプの管体は、200℃における耐力値σ0.2(200)が50MPa以上である銅合金からなり、
20℃における、該ヒートパイプ挿入孔の内径と該管本体部の外径との差が、0.1mm以上且つ該管本体部の外径の5%以下であり、
該ヒートパイプの該管本体部の400℃における伸びδ(400)が30%以上であること、
を特徴とする均熱構造体である。
【0027】
本発明の均熱構造体は、少なくとも、金属製の均熱ブロックと、均熱ブロック内に形成されているヒートパイプ挿通孔に挿通されているヒートパイプと、を有する。
【0028】
均熱ブロックの材質は、金属であり、耐熱性を有しているものであれば、特に制限されず、例えば、鉄、アルミニウム、銅及びそれらの合金等が挙げられる。本発明の均熱構造体が、ヒートシーラー用の均熱構造体の場合、ヒートロール用の均熱構造体の場合及び射出成形やプレスの金型用の均熱構造体の場合、均熱ブロックの材質としては、鉄、アルミニウム、銅及びそれらの合金等が挙げられる。
【0029】
均熱ブロックの形状、大きさ等は、均熱構造体の用途等に合わせて、適宜選択される。例えば、本発明の均熱構造体がヒートシーラーとして用いられる場合、均熱ブロックは、シート状の被加熱体を加熱するための平面状の加熱面を有する形状である。また、本発明の均熱構造体がヒートロールとして用いられる場合、均熱ブロックは、円柱状の形状を有し、円筒状の加熱面を有する。
【0030】
本発明の均熱構造体に係るヒートパイプは、少なくとも、管本体部と、ヒートパイプの端部に形成されている扁平重合部と、を有する。このヒートパイプの作製例を挙げると、例えば、管本体部の少なくとも一端側に、管本体部の一端側の管径を徐々に小さくし、続いて、小径部を形成させる加工を施すことにより、管本体部と、管本体部の少なくとも一端側に繋がり、管径が徐々に小さくなっている管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側が開口している小径部と、からなる小径部を加圧閉塞する前のパイプ(以下、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A))を作製し、次いで、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部又は一部を、あるいは、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧閉塞して、ヒートパイプの一端側に扁平重合部を形成させることにより、ヒートパイプを作製する。つまり、ヒートパイプが、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の一部を加圧閉塞して作製されるヒートパイプの場合、ヒートパイプは、管本体部と、管本体部の少なくとも一端側に形成されている管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側が加圧時変形部に繋がる小径部と、一端側が小径部に繋がり、他端側に扁平重合部が形成されている加圧時変形部と、一端側が加圧時変形部に繋がる扁平重合部と、を有する。また、ヒートパイプが、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部を加圧閉塞して作製されるヒートパイプの場合、ヒートパイプは、管本体部と、管本体部の少なくとも一端側に形成されている管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側に扁平重合物が形成されている加圧時変形部と、一端側が加圧時変形部に繋がる扁平重合部と、を有する。また、ヒートパイプが、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部を加圧閉塞して作製されるヒートパイプの場合、ヒートパイプは、管本体部と、管本体部の少なくとも一端側に形成されている管径減少部と、一端側が管径減少部に繋がり、他端側に扁平重合物が形成されている加圧時変形部と、一端側が加圧時変形部に繋がる扁平重合部と、を有する。なお、加圧閉塞される部分は、「少なくとも小径部の一部」であり、「少なくとも小径部の一部」とは、「小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部」のことである。
【0031】
つまり、ヒートパイプは、管本体部の少なくとも一方の端部に、一端側が管本体部の内部と連通する小径部(小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部に相当する。)を設け、小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部を、内壁が互いに重なり合うように加圧して、管本体部より薄肉の扁平重合部を形成させることにより、端部が閉塞されている。
【0032】
ヒートパイプの管本体部の外径(Do)は、好ましくは5.0〜30.0mm、特に好ましくは5.0〜16.0mmである。ヒートパイプの管本体部の肉厚(t)は、好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.3〜1.0mmである。ヒートパイプの管本体部の肉厚(t)に対するヒートパイプの管本体部の外径(Do)の比(Do/t)は、好ましくは5〜30、特に好ましくは10〜20である。また、ヒートパイプの管本体部の伸長方向の長さは、均熱構造体毎に適宜選択される。なお、ヒートパイプの管本体部は、コンテナ部とも呼ばれる。
【0033】
ヒートパイプの管径減少部は、一端側が管本体部に繋がっており、且つ、他端側が小径部に繋がっているか又は他端側に加圧時変形部が形成されている。ヒートパイプの管径減少部の長さは、適宜選択されるが、好ましくはヒートパイプの外径以下である。ヒートパイプの管径減少部の肉厚(t)は、管本体部の肉厚と略同じである。なお、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の一部を加圧閉塞して、扁平重合部が形成されている場合は、ヒートパイプの管径減少部の他端側は、小径部に繋がっており、また、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部を加圧閉塞して、扁平重合部が形成されている場合は、ヒートパイプの管径減少部の他端側には、加圧時変形部が形成されている。また、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部を加圧閉塞して、扁平重合部が形成されている場合は、ヒートパイプの管径減少部の他端側には、加圧時変形部が形成されている。また、ヒートパイプの管径減少部の長さとは、ヒートパイプを伸長方向に平行かつ管の中心線に重なる面で切ったときに、管径減少部の一端の位置から他端の位置までのヒートパイプの伸長方向の長さである。
【0034】
小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の一部を加圧閉塞して、扁平重合部が形成されている場合は、ヒートパイプは小径部を有し、この場合、ヒートパイプの小径部は、一端側が管径減少部に繋がっており、且つ、他端側には加圧時変形部が形成されている。ヒートパイプの小径部は、小径部が加圧閉塞される前のパイプ(A)の小径部のうち、加圧閉塞されずに残った部分である。ヒートパイプの小径部の長さは、適宜選択される。言い換えると、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部を加圧閉塞するときに、どれだけ小径部を残して、加圧閉塞させるか、あるいは、小径部を残さず全部加圧閉塞するかは、適宜選択される。
【0035】
加圧時変形部は、小径部が加圧閉塞される前のパイプ(A)の小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部が加圧閉塞されるときに、扁平重合部が形成される部分の加圧圧縮に伴って、小径部の一部又は管径減少部の他端の一部分が潰れるように変形することで形成される部分であり、内壁同士は重なり合っておらず、且つ、管壁は圧縮されていない。そして、加圧時変形部は、加圧時変形部の一方の片側半分及び加圧時変形部の他方の片側半分からなる。加圧時変形部の一方の片側半分及び加圧時変形部の他方の片側半分の一端側は、小径部又は管径減少部に繋がっている。また、加圧時変形部の一方の片側半分は、一方の扁平重合部薄肉各部に繋がっており、且つ、加圧時変形部の他方の片側半分は、他方の扁平重合部薄肉各部に繋がっている。なお、加圧時変形部の片側半分とは、管を周方向に見たときの片側半分の部分の意味である。同様に、小径部の片側半分とは、管を周方向に見たときの片側半分の部分の意味である。
【0036】
扁平重合部は、加圧時変形部の他端側に形成されている。扁平重合部は、小径部が加圧閉塞される前のパイプ(A)の小径部の全部又は一部が、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部が、内壁が互いに重なり合うように加圧されることにより形成される。扁平重合部は、加圧閉塞される前のパイプ(A)の小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部の一方の片側半分が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった一方の扁平重合部薄肉各部と、加圧閉塞される前のパイプ(A)の小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部の他方の片側半分が加圧されることにより、管壁が圧縮されて肉厚が薄くなった他方の扁平重合部薄肉各部とからなる。つまり、扁平重合部では、一方の扁平重合部薄肉各部と他方の扁平重合部薄肉各部とが、重なり合っている。
【0037】
扁平重合部の肉厚(t)(扁平重合部薄肉各部のそれぞれの肉厚に相当する。)は、管本体部の肉厚(t)に比べ薄い。扁平重合部の肉厚(t)が、管本体部の肉厚(t)に比べ薄いことにより、異常加熱により突発的な温度上昇が起こって、内圧が急激に上昇したときに、スローリークを起こさせることができる。扁平重合部の肉厚(t)は、0.2mm以上であることが好ましい。扁平重合部の肉厚(t)が0.2mm未満だと、正常な使用温度で使用されているときにリークするおそれがある。そして、スローリークを起こさせる効果が高まる点で、管本体部の肉厚(t)に対する扁平重合部の肉厚(t)の比(t/t)が、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。また、ヒートパイプでは、ヒートパイプの端部に扁平重合部が形成されることにより、ヒートパイプの端部が閉塞されている。
【0038】
小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)は、管本体部の端部に、管径を徐々に減じる加工を施して管径減少部を形成させ、次いで、管径減少部に続いて、所定の管径の小径部を所定の長さで形成させる加工を施すことにより作製される。
【0039】
小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の管本体部の外径、内径、肉厚、長さは、ヒートパイプの管本体部の外径、内径、肉厚、長さと同じである。また、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の管径減少部の肉厚は、ヒートパイプの管径減少部の肉厚と同じである。
【0040】
小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の長さは、ヒートパイプの外径、全長等に応じて適宜選択される。小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の肉厚は、ヒートパイプの小径部の肉厚と同じである。なお、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の長さは、ヒートパイプを伸長方向に平行かつ管の中心線に重なる面で切ったときに、小径部の一端(管径減少部の他端)の位置から小径部の他端の位置までのヒートパイプの伸長方向の長さである。
【0041】
そして、小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の開口から、管本体部内に作動液が入れられ、小径部の全部又は一部、あるいは、小径部の全部及び管径減少部の他端側の一部が、加圧閉塞されることにより、ヒートパイプが作製される。
【0042】
また、ヒートパイプには、ヒートパイプの少なくとも一方の端部に、扁平重合部が形成されていればよいので、ヒートパイプの一方の端部にのみ、扁平重合部が形成されていてもよいし、あるいは、ヒートパイプの両方の端部に、扁平重合部が形成されていてもよい。ヒートパイプの一方の端部にのみ、扁平重合部が形成されている場合、管本体部の他方の端部は、扁平重合部より厚い肉厚を有し、且つ、扁平重合部より耐圧性が高くなる形状に封止加工されている。
【0043】
本発明の均熱構造体に係るヒートパイプ内には、作動液として水が封入されている。
【0044】
ヒートパイプは銅合金からなる。すなわち、ヒートパイプは銅合金製である。ヒートパイプの管本体部の200℃における耐力値σ0.2(200)は、50MPa以上である。ヒートパイプの管本体部の200℃における耐力体σ0.2(200)が、上記範囲未満だと、材料が軟化して、ヒートパイプとしての形態を維持できなくなる。
【0045】
ヒートパイプの管本体部の400℃における伸びδ(400)は、30%以上、好ましくは30〜50%である。ヒートパイプの管本体部の400℃における伸びδ(400)が上記範囲にあることにより、管本体部の一部に弱い部分があっても破断することなく、400℃までの温度でヒートパイプの管本体部の外壁が均熱ブロック内のヒートパイプ挿通孔の内壁に密着するまで膨張するので、管本体部の爆裂を防ぐことができる。
【0046】
ヒートパイプを構成する銅合金としては、特に制限されないが、例えば、10%キュプロニッケル銅合金が挙げられる。
【0047】
本発明の均熱構造体では、均熱ブロック内に形成されているヒートパイプ挿通孔に、ヒートパイプが挿通されて、均熱ブロック内にヒートパイプが設置されている。
【0048】
本発明の均熱構造体では、20℃におけるヒートパイプ挿入孔の内径と管本体部の外径との差は、0.1mm以上且つ管本体部の外径の5%以下であり、好ましくは0.1〜0.3mmである。本発明の均熱構造体においては、高温使用時に異常加熱が起こっても、均熱ブロック内に挿通されているヒートパイプが爆裂し難いことは勿論、それに加えて、ヒートパイプの交換が容易であることも求められている。そして、20℃におけるヒートパイプ挿入孔の内径と管本体部の外径との差が、上記範囲未満だと、均熱構造体の作製時に、ヒートパイプ挿通孔にヒートパイプを挿通すること、及びヒートパイプの交換時に、ヒートパイプ挿通孔からヒートパイプを抜くことが困難となり、また、上記範囲を超えると、400℃において、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの外壁が密着しなくなる。なお、20℃におけるヒートパイプ挿入孔の内径と管本体部の外径との差が、0.3mmを超え且つ管本体部の外径の5%以下である場合は、熱抵抗が高くなり過ぎる可能性があるので、隙間に伝熱グリースを充填することが好ましい。
【0049】
本発明の均熱構造体では、少なくとも400℃において、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの管本体部の外壁が密着する。本発明の均熱構造体では、ヒートパイプの管本体部の400℃における伸びδ(400)が30%以上、好ましくは30〜50%であるので、少なくとも400℃において、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの管本体部の外壁が密着することができる。なお、本発明の均熱構造体では、400℃でヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの管本体部の外壁が密着していればよく、400℃より低い温度では、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの管本体部の外壁が密着していてもよいし、密着していなくてもよい。
【0050】
本発明の均熱構造体では、均熱ブロックの材質及びヒートパイプの材質を選択して両者の熱膨張率及び伸びを調節し、加えて、それらの膨張率及び伸びを加味して、ヒートパイプ挿通孔の内径、ヒートパイプの管本体部の外径、ヒートパイプ挿通孔の内径とヒートパイプの管本体部の外径との差を調節することにより、20℃においては、ヒートパイプ挿入孔の内径と管本体部の外径との差が、0.1mm以上且つ管本体部の外径の5%以下、好ましくは0.1〜0.3mmとなり、且つ、少なくとも400℃においては、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの管本体部の外壁が密着しているように設計することができる。
【0051】
本発明の均熱構造体中に設置されているヒートパイプの数及び設置位置は、均熱構造体の用途、均熱ブロックの大きさ、ブロック内の許容温度差等により、適宜選択される。
【0052】
本発明の均熱構造体では、ヒートパイプ挿通孔とヒートパイプとの隙間に、伝熱グリースが充填されていてもよい。
【0053】
本発明の均熱構造体は、均熱ブロックを加熱するためのヒータが、均熱ブロック内に設置されていてもよい。均熱ブロック内にヒータを設置する方法としては、例えば、均熱ブロックに、ヒータの挿通孔を形成し、そのヒータの挿通孔内に棒状のヒータを挿通し設置する方法、製造(鋳造)時にヒータを一緒に鋳込む方法、ヒータ取付部が半割り可能な構造で、ヒータ取付後ネジ等で固定する方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の均熱構造体の均熱ブロックを加熱するための手段としては、上述した均熱ブロック内に設置されるヒータが挙げられる。
【0055】
本発明の均熱構造体は、均熱ブロックが150〜300℃に加熱される使用条件下で用いられる。そして、本発明の均熱構造体がこのような均熱ブロックが、不具合により正常な使用条件を逸脱してしまい、300℃以上に加熱される条件下で使用されているときには、異常加熱が発生して、ヒートパイプの温度が急激に400℃を超える温度まで上昇することがある。ここで、ヒートパイプの管本体部の爆裂は、通常、450℃程度の温度で起こる。そこで、本発明の均熱構造体では、少なくとも400℃でヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの外壁が密着するように設計されているので、つまり、ヒートパイプの管本体部が爆裂する温度より低い温度で、ヒートパイプ挿通孔の内壁とヒートパイプの外壁が密着するように設計されているので、異常加熱が発生して、急激にヒートパイプ内の圧力が上昇しても、管本体部が爆裂する温度に至る前に、ヒートパイプの管本体部の膨張が、均熱ブロックのヒートパイプ挿通孔の内壁により拘束されて、爆裂を引き起こすような管本体部の膨張が防がれる。そして、ヒートパイプの端部には、少なくとも小径部の一部が加圧閉塞され且つ管壁が圧縮されて形成された、管本体部より薄肉の扁平重合部が設けられているので、急激にヒートパイプ内の圧力が上昇したときに、扁平重合部からスローリークする。これらのことにより、本発明の均熱構造体では、異常加熱が発生して、急激にヒートパイプ内の圧力が上昇しても、ヒートパイプの管本体部が爆裂しない。
【0056】
本発明の均熱構造体の用途としては、高温状態でブロック表面温度を均一にするためのヒートシーラー、高温状態でブロック表面温度を均一にし、温度ムラが生じないようにするためのヒートロール、ブロック内の温度をコントロールするための加熱された金型等が挙げられる。
【0057】
以下に実施例を挙げて更に本発明を詳細に説明するが、これらは一例であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
<評価用治具>
図11に示す均熱ブロックに模した評価用治具を準備した。その評価用治具の材質は、純アルミニウム(JIS A 1050)であり、寸法諸言は、図11及び表1に示す通りである。なお、図11に示す評価用治具は、上下半割形状であり、上部部材と下部部材とをボルトにて固定した。また、図11中、×印で示した4箇所に、熱電対を設置した。
【0059】
【表1】
【0060】
<ヒートパイプの作製>
表2に示す組成及び物性の銅合金管を用意し、表3に示す寸法及び一端側が図10に示す形状に加工して、ヒートパイプを作製した。なお、ヒートパイプ内には、作動液として、純水を封入した。
【0061】
【表2】
*管材A及びBのいずれも、JIS C 7060に規定の10%キュプロニッケル銅合金である。
【0062】
【表3】
【0063】
<評価試験>
上記で得たヒートパイプ3本と評価用治具を、表4に示す組み合わせで組み合わせて、試験体を組み付けた。
次いで、試験体を加熱炉内に静置し、常温から400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した。
常温に冷却した後、棒状の治具で、20kgの力で、ヒートパイプの端部(扁平重合部が形成されていない方の端部)を押し、ヒートパイプの外壁とヒートパイプ挿通孔の内壁とが密着しているか否かを確認した。なお、治具で押しても、ヒートパイプ挿通孔内でヒートパイプが動かなかった場合を密着しているとして「○」と、動かなかった場合を密着していないとして「×」と評価した。その結果を表4に示す。
次いで、450℃まで昇温し、450℃で10分保持した後、試験体を放冷した。試験体が常温まで冷えた後、治具のボルトを外して、ヒートパイプを取り出し、ヒートパイプの管本体部の破裂の有無と、扁平重合部からのリークの数を確認した。なお、管本体部に破裂が観察されなかった場合を「無」と、破裂が観察された場合を「破裂」と記載した。その結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
(実施例2)
<ヒートロールの作製>
図12に示す外径80mm、内径40mmの寸法形状で、純アルミニウム(JIS A 1050)製の均熱ブロックを用意した。次いで、均熱ブロックのヒートパイプ挿通孔に、表5に示すヒートパイプを挿入し設置して、ヒートロールを作製した。
【0066】
<評価試験>
作製したヒートロールを加熱炉内に静置し、常温から昇温し、450℃で10分保持した後、ヒートロールを放冷した。ヒートロールが常温まで冷えた後、ヒートパイプを取り出し、ヒートパイプの管本体部の破裂の有無と、扁平重合部からのリークの有無を確認した。
【0067】
【表5】
【符号の説明】
【0068】
1 均熱ブロック
2a、2b ヒートパイプ
3 ヒータ
5 ヒートパイプ挿通孔
6 ヒータ挿通孔
10 均熱構造体
11、11a 管本体部
12 管本体部の他方の端部
13、13a、13b 管径減少部
14、14a、14b 扁平重合部
15、15a 小径部
17 小径部の内壁
18 小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部
19 小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の他端
20 小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)の小径部の開口
21 小径部を加圧閉塞する前のパイプ(A)
22 管径減少部の他端(小径部の一端)
23 ヒートパイプ挿通孔の内壁
24 ヒートパイプの外壁
25 管径減少部の一端
26 小径部の他端
27a、27b 扁平重合部薄肉各部
27a1、27b1 一方の扁平重合部薄肉各部
27a2、27b2 他方の扁平重合部薄肉各部
28a、28b 扁平重合部の一端
29a、29b 加圧時変形部
29a1、29b1 加圧時変形部の一方の片側半分
29a2、29b2 加圧時変形部の他方の片側半分
61 ヒータの伸長方向
51 ヒートパイプの伸長方向
71 ヒートパイプの伸長方向に対して垂直な方向
Do ヒートパイプの外径
Dp ヒートパイプ挿通孔の内径
扁平重合物の肉厚
管本体部の肉厚
管径減少部の肉厚
小径部の肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12