(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-102021(P2017-102021A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】測定対象の状態判別方法および測定対象の状態判別装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
G01N29/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-235737(P2015-235737)
(22)【出願日】2015年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】515334913
【氏名又は名称】赤尾 昭彦
(71)【出願人】
【識別番号】500249604
【氏名又は名称】下山 二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(74)【代理人】
【識別番号】100185971
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100151677
【弁理士】
【氏名又は名称】播磨 里江子
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】下山 二郎
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA12
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC14
2G047GB02
2G047GG47
(57)【要約】
【課題】測定対象内部の状態を把握可能な、状態判別方法及び状態判別装置を提供する。
【解決手段】本発明による状態判別方法は、複数のソナーを2次元にアレー化して成る送受信部から測定対象に入射波を送信する送信ステップ、入射波の反射波を受信する受信ステップ、入射波が送信されてから反射波が受信されるまでの時間差を、複数のソナー毎に算出する算出ステップ、算出された時間差に関する時間情報を、複数のソナーの位置と対応付けてる出力情報であって、時間差の差異に応じて当該時間情報を異ならせる出力情報を出力する出力ステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソナーを2次元にアレー化して成る送受信部から測定対象に入射波を送信する送信ステップと、
前記入射波の反射波を受信する受信ステップと、
前記入射波が送信されてから前記反射波が受信されるまでの時間差を、前記複数のソナー毎に算出する算出ステップと、
前記算出ステップにて算出された時間差に関する時間情報を、前記複数のソナーの位置と対応付けて出力させる出力情報であって、前記時間差の差異に応じて当該時間情報を異ならせて出力させる出力情報を出力する出力ステップと、
を含み、
前記受信ステップ及び前記送信ステップが、所定の間隔で実行され、
前記出力ステップが、前記所定の間隔毎に前記出力情報を出力する、
ことを特徴とする測定対象の状態判別方法。
【請求項2】
複数のソナーを2次元にアレー化して成り、測定対象に入射波を送信し、当該入射波の反射波を受信する送受信部と、
前記入射波を送信してから前記反射波を受信するまでの時間を、前記複数のソナー毎に算出する算出部と、
前記算出部が算出した時間に関する時間情報を、前記複数のソナーの位置と対応付けて出力させる出力情報であって、前記時間の差異に応じて前記時間情報を異ならせて出力させる出力情報を出力する出力部と、
を備え、
前記送受信部は、所定の間隔で前記入射波の送信及び前記反射波の受信を実行し、
前記出力部は、前記所定の間隔毎に、前記出力情報を出力する、
ことを特徴とする測定対象の状態判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の凍結状態を判別可能な測定対象の状態判別方法および測定対象の状態判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍された食品の解凍状態を判定する方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−50235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1では、食品の解凍状態を判定するのに1つの超音波発振子を用いるため、冷凍された食品において、超音波発振子と受信センサーとの間に含まれない、すなわち音波の伝搬しない部分の解凍状態を判別することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、測定対象としての冷凍された食品の解凍状況、すなわち内部の状態を把握可能な、状態判別方法及び状態判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題を解決すべく、本発明の一態様に係る状態判別方法は、複数のソナーを2次元にアレー化して成る送受信部から測定対象に入射波を送信する送信ステップと、入射波の反射波を受信する受信ステップと、入射波が送信されてから反射波が受信されるまでの時間差を、複数のソナー毎に算出する算出ステップと、算出ステップにて算出された時間差に関する時間情報を、複数のソナーの位置と対応付けた出力情報であって、時間差の差異に応じて当該時間情報を異ならせる出力情報を出力する出力ステップとを含み、受信ステップ及び送信ステップが、所定の間隔で実行され、出力ステップが、所定の間隔毎に出力情報を出力することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る状態判別装置は、複数のソナーを2次元にアレー化して成り、測定対象に入射波を送信し、当該入射波の反射波を受信する送受信部と、入射波を送信してから反射波を受信するまでの時間を、複数のソナー毎に算出する算出部と、算出部が算出した時間に関する時間情報を、複数のソナーの位置と対応付けた出力情報であって、時間の差異に応じて時間情報を異ならせる出力情報を出力する出力部とを備え、送受信部は、所定の間隔で入射波の送信及び反射波の受信を実行し、出力部は、所定の間隔毎に、出力情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、冷凍された食品の解凍状況、すなわち測定対象の内部の状態を把握可能な、状態判別方法及び状態判別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施態様による状態判別装置の概略図である。
【
図2】(a)は、送受信部に測定対象を載せた状態を示す図、(b)は、(a)の断面図であって、本発明の一実施態様による状態判別方法を説明する概略図である。
【
図3】(a)〜(c)は、本発明の一実施態様による状態判別方法によって出力される、測定対象の状態の判別表示(氷の分布図)である。
【
図4】本発明の一実施態様による状態判別方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、諸図面を参照しながら、本発明の一実施態様を説明する。
図1は、本発明の一実施態様による状態判別装置の概略図である。図に示すように、状態判別装置100は、ソナー111を二次元に複数アレー化して成る送受信部110、算出部120、記憶部130、制御部140、判定部150、データ処理部160、出力部170及びバスBUSを備える。
【0011】
ソナー111は、超音波を含む音波を測定対象に向けて送信、すなわち入射させて、測定対象からの反射波を受信する。送受信部110は、複数のソナー111を2次元にアレー化して成る。なお、ソナー111の数は例示に過ぎず、これに限られるものではないことに留意されたい。送受信部110には、測定対象として、冷凍(凍結)された食品(例えば、肉、魚、ケーキ、パン、ピザ等)が載置される。従って、送受信部110の大きさは、測定対象が載置可能な大きさであることが望ましく、また、ソナー111の数は、例えば5〜10センチメートル間隔で等間隔で配置されることが望ましい。なお、ソナー111が発信する音波の周波数や強度は、測定対象の種類や厚み、状態判別装置100を設置する場所の周囲の環境に応じて選択すればよい。例えば、音波の強度は、測定対象以外の周囲に存在する物からの反射波が雑音としてソナー111によって受信されないような強さとすることが望ましい。ここで、送受信部110による、入射波と反射波の送受信は、所定の時間間隔で、測定対象の状態に応じて、例えば食品が解凍されたと判断できる条件になるまで繰り返される。
【0012】
算出部120は、送受信部110から測定対象に送信された入射波が、測定対象で反射され反射波として受信されるまでの時間差を算出する。冷凍された食品の解凍状態に応じて、その内部及び表面には氷が存在する。詳細は後述するが、音波は氷及び食品の境界面にて反射されるため、ソナー111で受信される、食品の内部に入射した入射波の反射波には、内部に存在する氷からの反射波と、食品と外部空気との境界面からの反射波とが存在する。算出部120は、それぞれの反射波に対して、入射波が送信されてから反射波を受信するまでの時間差を算出する。
【0013】
記憶部130は、状態判別装置100においてデータ処理に用いられるプログラムや、反射波の測定結果を記憶するメモリである。また、記憶部130には、送受信部110で受信する反射波が雑音と判定される条件や、測定対象の内部にて音波を反射させる物が、氷ではないと判定される条件等が格納される。制御部140は、例えばCPUで構成され、装置全体の制御を司る。判定部150は、算出部120で算出された時間差に基づき、食品が解凍されたと判断される条件になったか否かを判定する。データ処理部160は、送受信部110から出力されたアナログデータをデジタルデータに変換したり、記憶部130に格納された各種条件に基づき、雑音としての反射波の処理等を行う。
【0014】
出力部170は、算出部120にて算出された時間差に関する時間情報を、複数のソナー111の位置と対応付けて出力させる出力情報であって、時間差の差異に応じてその時間情報を異ならせて出力させるための出力情報を作成する。出力部170は、当該出力情報を図示しないモニタなどの表示部に出力し、測定対象の内部の氷の分布図を出力するものである(詳細は後述する)。なお、出力部170は、モニタなどの表示部に表示するための出力情報ではなく、コンピュータが計算および読込可能な出力情報を出力するものであってもよい。状態判別装置100は、表示部に表示させる、またはコンピュータが読込可能な出力情報を出力することにより、測定対象の判別を可能とし、内部の状態を把握可能とする。
【0015】
次に、本発明の一実施態様による、状態判別方法の動作原理について説明する。
図2(a)は、送受信部110に測定対象200を載せた状態を示す図、
図2(b)は、
図2(a)の断面図である。測定対象200は、冷凍された食品等であり、例えば、肉、魚、ケーキ、パン、ピザ等である。
図2(b)に示すように、測定対象200の内部には、氷210が存在する。氷210の大きさや厚みといった分布状況は、測定対象200の外見から判断することはできない。ここで、送受信部110の各ソナー111から送信された音波は、測定対象200の内部を進行して、氷210及び測定対象200の内部表面(外気との境界面)にて反射される。あるソナーから送信され、内部表面で反射された音波は、経路L10を通って、同じソナーにて受信される。また、経路L10の音波を送信したソナーとは異なるソナーから送信され、氷210で反射された音波は、経路L20を通って、ソナーにて受信される。各ソナーで受信された反射波と、入射波が送信された時間差は、経路L10と経路L20とで異なってくる。すなわち、経路L20の音波は、時間差が短く、経路L10の音波は、時間差が長くなる。本発明の状態判別方法では、この原理を用い、内部に存在する氷の分布を判別するものである。
【0016】
図3(a)〜(c)は、本発明の一実施態様による状態判別方法によって出力される、測定対象の状態の判別表示(氷の分布図)の模式図である。
図3において、(a)はある時刻t=T1、(b)は時刻t=T2、(c)は時刻t=T3に算出(音波の送受信)が行われた結果の分布図が示されており、ここで、T1<T2<T3のように時間が経過したとする。
図3において、「〇」「●」「+」はソナーの位置を示し、「〇」は、ソナー上部に氷が存在しないと推定される箇所、「●」は、氷が存在すると推定される箇所、「+」は、ソナー上部に測定対象が存在しない箇所である。
【0017】
上述のように、算出部120によって算出された時間差に応じて、測定対象の内部表面での反射であるか、又は内部に存在する氷での反射であるかが判定される。例えば、各ソナーで算出された時間差のうち最も短いものを基準として、その基準値から所定の範囲内の時間差が判定されたソナーの上部には、氷が存在すると判断することができる。このようなソナーの位置には「●」が表示される。また、測定対象200の形状や、伝搬定数といった物質固有の特性に応じて、氷が存在しない場合の、入射波と反射波との間の時間差(音波の伝搬経路を伝搬するのに要する時間)を推測し、その時間差を予め記憶部130に記憶しておいてもよい。それにより、ソナーの位置と、算出部120によって算出された時間差との関係から、音波が、氷ではなく内部表面で反射したと判定することもできる。このようなソナーの位置には、「〇」が表示される。判定部150は、上述の判定を各ソナー毎に行い、判定結果を出力部170へ出力する。ソナーのうち「+」の部分は、反射波が測定されないソナーである。
【0018】
そして、時間が経過するにつれて解凍が進むため、「●」と表示されるソナーは少なくなっていく。例えば、
図3(a)の場合は、エリアA10の部分に氷が分布しているが、
図3(b)では、エリアA20、
図3(c)では、エリアA30に「●」が表示され、内部の解凍が進んでいることを、一目で理解することができる。なお、ある程度時間が経過してもなお、「●」の表示が継続される部分は、測定対象の内部に存在する氷ではない物である可能性が高い。このような場合、出力部170によって、そのソナーの上部にある「●」を、異なる記号と置換して表示させる出力情報が出力されてもよい。
【0019】
次に、本発明の一実施態様による状態判別方法について、フローチャートを用いて説明する。
図4は、本発明の一実施態様による状態判別方法のフローチャートである。まず、送受信部110に載置された測定対象200に対して、ソナー111から入射波(音波)が送信される(ステップS11)。その後、ソナー111によって、測定対象(及び内部の氷等)からの反射波が受信される(ステップS12)。次に、算出部120は、各ソナー毎に、入射波が送信されてから反射波を受信するまでの時間差を算出する(ステップS13)。出力部170は、算出した時間差の差異に応じて、時間差に関する時間情報を、各ソナーに対応付けて出力させる出力情報を出力する(ステップS14)。その後、終了指示があったか否かが判定され(ステップS15)、終了指示が為されるまで、所定の時間間隔で、ステップS11〜S14の処理が繰り返される。
【0020】
上述のように、本発明の一実施態様によれば、測定対象の内部に存在する氷の分布が判別されるため、測定対象の内部の状況を把握することが可能となる。従って、食品の解凍時において、解凍不足であったり、解凍し過ぎたりすることなく、最適な状態で解凍することができる。
【0021】
なお、上述のように本発明の一実施態様を説明したが、本発明はこれに限られないことは言うまでもない。例えば、上記では、状態判別処理を、終了指示があった場合に終了させる態様について説明した。しかしながら、判定部150が、「○」に対する「●」の割合とから、解凍がある程度進んだと推定できる条件、例えば、「●」が「○」の2割以下となったと判定された場合に、判別処理を終了させてもよい。
【0022】
また、本発明による状態判別装置100を、既存の解凍装置に組み込み、解凍状況を判別しながら食品の解凍を進めることも可能である。その際には、判定部150による判定結果に応じて、解凍装置による解凍を停止させる出力情報を、出力部170によって出力してもよい。
【0023】
また、本発明による状態判別装置100は、ディスプレイ等に、解凍状況を判別するための分布図を表示させることが可能である。さらに、本発明による状態判別装置100は、解凍状況を数値化として外部コンピュータに出力し、当該コンピュータによる計算に利用できる情報を出力するものであってもよい。本発明の状態判別装置100によれば、冷凍された食品の解凍状況、すなわち測定対象の内部の状態を、ディスプレイを介してユーザに判別可能とする、またはコンピュータに判別可能とさせる状態判別方法及び状態判別装置を提供することができる。
【0024】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上記実施の形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
100 状態判別装置
111 ソナー
110 送受信部
120 算出部
130 記憶部
140 制御部
150 判定部
160 データ処理部
170 出力部
200 測定対象
210 氷
L10,L20 経路
A10〜A30 エリア