【解決手段】打撃されることで振動して楽音を発音する打面板14が筐体11に設けられ、打面板14を貫通して放音孔が形成される。打面板14への打撃による振動を検出する打撃センサ41,42の検出結果に応じて楽音信号が音源装置50により生成され、音源装置50により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を発音体60が発音する。発音体60が筐体11に設けられるので、筐体11の振動による楽音および電子楽音を1つの筐体11から発音できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施の形態における打楽器10の概略構成について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における打楽器10の正面図であり、
図2は打楽器10の背面図であり、
図3は打楽器10の上面図である。なお、
図1の上側、下側、手前側、奥側、左側、右側をそれぞれ打楽器10の上方、下方、前方、後方、左方、右方とする。
【0024】
図1から
図3に示すように、打楽器10は、カホンであり、演奏者が着座する上面を構成する上面板12と、上面板12と対向する下面を構成する下面板13と、上面板12と下面板13とを繋いで側面を構成する側面板とにより空洞が形成される直方体状の筐体11を備える。側面板は、正面(
図1紙面手前側)に位置する打面板(打面部)14と、打面板14と対向する背面板15と、正面視において左側に位置する左側面板16と、左側面板16と対向する右側面板17とから構成される。
【0025】
打楽器10(筐体11)は、一般的なカホンと同様に寸法が奥行き(前後方向)約300mm×横幅約300mm×高さ約500mmに形成される。打楽器10は、演奏者が上面板12に着座した状態で打面板14を演奏者が打撃することで、筐体11全体が、特に打面板14が振動してアコースティックの楽音を発音する。打楽器10は、打撃位置に応じて主に2種類の楽音を発音する。具体的には、打楽器10は、打面板14の中央が打撃された場合には比較的低音の楽音を発音し、打面板14の上端側(上面板12側)が打撃された場合には比較的高音の楽音を発音する。
【0026】
上面板12は、木製の平板であり、演奏者によって操作される操作子18aと、操作子18aによる操作状況等を表示する表示器18bとを有する操作パネル18が左右方向中央の打面板14側に設けられる。下面板13は、正方形状の平板であり、四隅にゴム足19が取り付けられる。
【0027】
打面板14(側面板の一部)は、木製の平板であり、上面板12、下面板13、背面板15、左側面板16及び右側面板17の板厚よりも薄く形成される。これにより、打面板14の剛性を低くして打面板14を振動し易くできる。打面板14は、上端(上面板12側の端部)から上下方向中央までが演奏者により主に打撃される部分である。
【0028】
打面板14には、正面視において左右方向中心よりも右側(右側面板17側)、且つ、上下方向中心よりも下側(下面板13側)を貫通して円形状の放音孔14aが形成される。放音孔14aは、打面板14への打撃により筐体11の内部に発生する風圧を筐体11の外部へ逃がす開口であり、外観を考慮して筐体11の内部を視認し難くするためにメッシュ状のシート20で覆われる。放音孔14aは、直径が60mm(開口面積が約28cm
2)以上に設定されることが好ましく、本実施の形態では放音孔14aの直径が90mm(開口面積が約64cm
2)に設定される。
【0029】
背面板15(側面板の一部)は、木製の平板であり、背面視において上下方向中心よりも上側(上面板12側)に取手21が取り付けられ、上下方向中心よりも下側(下面板13側)に背面パネル30が設けられる。左側面板16(側面板の一部)及び右側面板17(側面板の一部)は、木製の平板である。
【0030】
背面パネル30は、後述する音源装置50を操作するためのつまみや、音源装置50と外部機器とを接続するための端子等が設けられる部位である。背面パネル30は、音源装置50の電源となる電池(図示せず)が収容される電池ボックス31と、電池の代わりに音源装置50の電源となる外部電源(図示せず)が接続される外部電源端子32と、音源装置50の電源をオンオフする電源スイッチ33と、演奏者により操作される背面操作子34と、外部機器(図示せず)と音源装置50とを電気的に接続する入力端子35及び出力端子36とを備えている。
【0031】
次に、
図4及び
図5を参照して、打楽器10の内部構造について説明する。
図4は打面板14を取り除いた打楽器10の正面図であり、
図5は
図1のV−V線における打楽器10の断面図である。なお、
図4及び
図5は、操作パネル18や第1センサ41、第2センサ42、音源装置50、発音体60等を繋ぐ配線が省略して図示されている。
【0032】
図4及び
図5に示すように、筐体11は、上面板12、下面板13、背面板15、左側面板16及び右側面板17の端縁同士を連結する複数の棒状の角材により構成される補強材22を備える。上面板12、下面板13、背面板15、左側面板16及び右側面板17と補強材22とが接着剤により互いに接着されることで、各板12,13,15,16,17の連結部分からの音の漏れを防止できる。
【0033】
上面板12には打面板14側の端縁に沿って角棒状の第1横材23(上面板12の一部)が設けられ、下面板13には打面板14側の端縁に沿って角棒状の第2横材24が設けられる。左側面板16には打面板14側の端縁に沿って角棒状の第1支柱25(支柱)が設けられ、右側面板17には打面板14側の端縁に沿って角棒状の第2支柱26(支柱)が設けられる。第1支柱25及び第2支柱26は、第1横材23(上面板12)と所定の間隔を隔てるように第2横材24から上下方向に延びる。第1支柱25及び第2支柱26には、支持部27が掛け渡される。
【0034】
筐体11は、上面板12の第1横材23、下面板13の第2横材24、左側面板16の第1支柱25、及び、右側面板17の第2支柱26に打面板14の各端縁を木ねじ(図示せず)で締結することで形成される。そのため、木ねじを外すことで打面板14を容易に交換できる。また、打面板14を締結する木ねじの締付を調整することで、打面板14の振動の仕方を調整でき、打面板14の振動による楽音の音色を変更できる。
【0035】
支持部27は、打面板14と所定の距離を隔てて配置される棒状の角材であり、打面板14にスネアワイヤータイプの響き線28の先端が接触するように響き線28の基端が取り付けられる。打撃により振動する打面板14と響き線28とが接触することで楽音が生じる。なお、響き線28はスネアワイヤータイプに限らず、弦タイプの響き線を用いることも可能である。弦タイプの響き線の場合、上面板12(第1横材23)及び下面板13(第2横材24)に響き線の両端をそれぞれ取り付けて響き線を打面板14に接触させる。
【0036】
取手21は、手を挿入する部分の先端が開口した部位であり、背面板15を板厚方向に貫通する共鳴孔21aに筒状のポート21bが接続される。ポート21bが共鳴孔21aから筐体11の内部へ延びて、取手21は形成される。ポート21bは、断面が略四角形状の部位であり、共鳴孔21aから上面板12へ向かって延び、上面板12へ向かうにつれて断面積が小さくなる。これにより、取手21に手を入れて持ち易くしつつ、ポート21bの先端の開口面積を小さくできる。本実施の形態ではポート21bの先端の開口面積(共鳴孔21a及びポート21bの最小断面積)が約20cm
2に設定される。なお、放音孔14aと同様に、打面板14への打撃により筐体11の内部に発生する風圧を共鳴孔21a及びポート21bから筐体11の外部へ逃がすことができる。
【0037】
打楽器10は、打面板14が打撃されることで電子楽音を発音させる機構を備えている。具体的には、打楽器10は、打面板14への打撃を検出する第1センサ41及び第2センサ42(打撃センサ)と、第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて楽音信号を生成する音源装置50と、音源装置50により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を発音する発音体60とを備えている。
【0038】
第1センサ41及び第2センサ42は、振動の検出素子である円板状の圧電素子43と、圧電素子(検出素子)43の片面に接着される、クッション性を有する円板状の両面テープ44と、両面テープ44を介して圧電素子43が貼り付けられる長方形状の基板45とを備えている。圧電素子43は、主に板厚方向への変形を検出する。圧電素子43の径よりも両面テープ44の径を小さくすることで、圧電素子43を変形させ易くできる。これにより、第1センサ41及び第2センサ42の検出感度を確保できる。
【0039】
第1センサ41は、打面板14の振動を検出するセンサであり、圧電素子43の両面テープ44が接着される面とは反対の面に円錐台状のスポンジから構成される緩衝材46が接着され、緩衝材46が打面板14と接触する。第1センサ41の圧電素子43は、主に前後方向(打面板14の振動方向)の振動を検出する。緩衝材46は、第1センサ41の接触により打面板14の振動が妨げられることを防止するための部材であり、打面板14とは接着されておらず、圧電素子43と打面板14との間で圧縮される。
【0040】
第1センサ41は、正面視において打面板14の左右方向中心よりも左側(左側面板16側)、且つ、打面板14の上下方向中央に位置する。第1センサ41は、打面板14と支持部27との間に配置されて、基板45が支持部27に木ねじ47で締結される。第1センサ41は、緩衝材46を介して打面板14の振動を圧電素子43により検出し、打面板14と支持部27との間に圧電素子43が位置するので、打面板14の振動によって第1センサ41が変位することを支持部27により規制できる。
【0041】
第2センサ42は、上面板12(筐体11の打面板14と異なる部分)の振動を検出するセンサであり、第2センサ42の圧電素子43が上下方向(打面板14の振動方向と垂直な方向)の振動を検出するように、打面板14と非接触状態を保ちつつ上面板12の第1横材23に取り付けられる。第2センサ42は、正面視において打面板14の左右方向中央に位置する。
【0042】
第2センサ42は、第1横材23に支持される被支持部42aと、被支持部42aから延びて被支持部42aに対して上下方向に揺動する揺動部42bとから構成される。被支持部42aは、基板45が第1横材23に木ねじ47で締結される。揺動部42bには圧電素子43の一部が設けられる。揺動部42bが振動を増幅し、揺動部42bの揺動方向の振動を圧電素子43が検出するので、第2センサ42の検出感度を向上できる。
【0043】
音源装置50は、下面板13の内側および背面パネル30に設けられる。発音体60は、出力が3W程度の正面視円形状のコーン型のスピーカであり、音源装置50から電力が供給される。これにより、発音体60を軽量化できると共に、発音体60における消費電力を抑制できるので、打楽器10を持ち運びやすくできると共に、音源装置50を電池駆動にした場合の電池の持続時間を確保できる。なお、発音体60には出力が3W以外のスピーカを用いることが可能である。
【0044】
発音体60は、筐体11の内部に設けられ、音軸が打面板14と垂直になるように前面を打面板14へ向けて、下面板13に取り付けられる発音体支持部61により支持される。発音体60は、音軸方向から見て(正面視において)発音体60の中心が打面板14の中央よりも右側(右側面板17側)、且つ、第1センサ41よりも下側(下面板13側)に配置される。
【0045】
発音体60は、音軸方向から見て(正面視において)発音体60の中心が放音孔14aの内側に位置するように配置される。発音体60は、打面板14(放音孔14a)と所定の距離(本実施の形態では約70mm)を隔てて、打面板14と音源装置50との間に配置される。これにより、打面板14への打撃による風圧を放音孔14aから筐体11の外部へ逃がすことができる。
【0046】
発音体支持部61は、発音体60の前面と後面とを隔てる板状の部材であり、下面板13に立てて取り付けられる。発音体支持部61(発音体60の後面)から背面板15までの距離は、発音体支持部61(発音体60の前面)から打面板14(放音孔14a)までの距離よりも長く設定される。
【0047】
発音体支持部61は、発音体60の外縁から発音体60の径方向へ向かって広がる。発音体60の前面と後面とでは発音される電子楽音の位相が逆なので、回折し易い電子楽音の低音が発音体60の前面と後面とで打ち消し合うことがある。発音体60の前面と後面とを発音体支持部61により隔てることで、電子楽音の低音が打ち消し合うことを抑制できる。
【0048】
次に、
図6を参照して、音源装置50の電気的構成について説明する。
図6は音源装置50の電気的構成を示すブロック図である。音源装置50は、CPU51と、ROM52と、RAM53と、入力部54と、音源55と、デジタルアナログコンバータ(DAC)56と、背面操作子34とを備え、各部34,51〜56がバスライン57を介して互いに接続される。音源装置50の各部34,51〜56には、バスライン57を介して操作子18a及び表示器18bが接続される。入力部54には、筐体11に装着される第1センサ41及び第2センサ42が接続される。
【0049】
CPU51は、ROM52に記憶される固定値やプログラム、RAM53に記憶されているデータなどに従って、音源装置50の各部を制御する中央制御装置である。ROM52は、書き替え不能な不揮発性メモリであって、CPU51や音源55に実行させる制御プログラム(図示せず)や、この制御プログラムが実行される際にCPU51や音源55により参照される固定値データ(図示せず)などが記憶される。
【0050】
RAM53は、書き替え可能な揮発性メモリであり、CPU51が制御プログラムを実行するにあたり、各種のデータを一時的に記憶するためのテンポラリエリアを有する。背面操作子34は、音量のパラメータや第1センサ41の検出感度と第2センサ42の検出感度とのバランスのパラメータを設定するつまみである。
【0051】
入力部54は、筐体11に装着された第1センサ41及び第2センサ42を接続するインターフェイスである。第1センサ41及び第2センサ42から出力されたアナログ信号波形は、入力部54を介して音源装置50に入力される。入力部54には、アナログデジタルコンバータ(図示せず)が内蔵されている。第1センサ41及び第2センサ42から入力されるアナログ信号波形は、アナログデジタルコンバータによって所定時間毎にデジタル値に変換される。CPU51は、入力部54において変換されたデジタル値に基づいて、筐体11(打面板14)への打撃の有無や打撃位置、打撃の強さ等を判断し、その判断に応じた発音指示を音源55へ行う。
【0052】
音源55は、CPU51から楽音の発音指示を受けた場合に、その発音指示や操作子18a及び背面操作子34の操作状況に応じた音色および音量の楽音信号を生成する。音源55には、波形ROM(図示せず)が内蔵される。この波形ROMには、筐体11への打撃位置や操作子18aの操作状況に対応する音色の楽音信号が記憶されている。
【0053】
なお、音源55に波形ROMを内蔵せずに、筐体11の打撃位置や操作子18aの操作状況に対応する音色の楽音信号をROM52に記憶させることも可能である。また、CPU51からの発音信号と、操作子18a及び背面操作子34の操作状況とに応じた音色および音量の楽音信号を音源55が生成する場合に限らず、CPU51が操作子18a及び背面操作子34の操作状況に応じた発音指示を音源55へ行い、その発音指示に応じた音色および音量の楽音信号を音源55が生成するように制御することも可能である。
【0054】
また、音源55には、フィルタやエフェクトなどの処理を行う、図示されないDSP(Digital Signal Processor)が内蔵される。音源55は、発音指示がCPU51から入力された場合に、その発音指示に従う音色の楽音信号を波形ROMから読み出し、DSPにおいてフィルタやエフェクトなどの所定の処理を行い、処理後の楽音信号をDAC56へ出力する。DAC56は、入力された楽音信号をデジタルからアナログへ変換し、音源装置50の外部に設けられる発音体60へ出力する。このような音源装置50により、筐体11への打撃による第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じた電子楽音を発音体60が発音する。
【0055】
なお、DAC56と発音体60との間にアンプを接続することが可能である。また、音源装置50は、入力端子35にオーディオプレーヤなどの外部機器(図示せず)を接続してオーディオプレーヤに記憶された楽曲を発音体60から発音させることが可能である。音源装置50は、出力端子36にアンプやスピーカ等の外部機器(図示せず)を接続して、音源55により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を外部機器から発音させることが可能である。
【0056】
次に、
図7を参照して、音源装置50で実行される制御について説明する。
図7は打面板14を打撃したときのアコースティックの楽音71、電子楽音72及び合成楽音73の音量−時間グラフである。なお、合成楽音73は、楽音71と電子楽音72とを合成した楽音である。
図7に示すグラフは、縦軸が楽音71、電子楽音72及び合成楽音73それぞれの音量を示し、横軸が時間を示す。
【0057】
打楽器10は、打面板14が打撃されると、打撃されたときから楽音71が発音され、打撃による振動が第1センサ41及び第2センサ42に伝達されて、第1センサ41及び第2センサ42が打撃による振動を検出する。後述する理由により、楽音71の発音と、第1センサ41及び第2センサ42の少なくとも一方による振動検出とが略同時であり、この時間を時間t0とする。
図7に示すように、音源装置50は、楽音71が発音したタイミングである時間t0から4msec経過後の時間t1に電子楽音72を発音させる。具体的な処理としては、CPU51(音源装置50)は、第1センサ41及び第2センサ42の少なくとも一方が打撃による振動を検出したときを時間t0とし、時間t0から4msec経過後の時間t1になったときに発音体60が電子楽音72を発音するようにタイミングを調整して音源55へ発音指示をする。音源55が発音指示に応じた楽音信号を生成し、音源55により生成される楽音信号に基づいた電子楽音72を発音体60が発音する。
【0058】
なお、時間t1になったときに発音体60が電子楽音72を発音するように、CPU51の代わりに音源55でタイミングを調整して音源55から発音体60へ楽音信号を送るように制御することも可能である。また、打面板14が打撃されたとき(楽音71の発音)から、第1センサ41及び第2センサ42の少なくとも一方が打撃による振動を検出するときまでには時間差が生じるが、その時間差は4msecに比べて十分小さいので無視できるものとする。即ち、本実施の形態では、楽音71の発音と、第1センサ41及び第2センサ42の少なくとも一方による振動検出とが略同時である。
【0059】
楽音71が発音したタイミングである時間t0から4msec経過後の時間t1に電子楽音72が発音されるので、楽音71と電子楽音72とを一連の合成楽音73にさせつつ、楽音71に対して電子楽音72を目立たせることができる。なお、時間t0と時間t1との差は4msecに限らず、3〜6msecの範囲であれば同様に、楽音71と電子楽音72とを一連の合成楽音73にさせつつ、楽音71に対して電子楽音72を目立たせることができる。その結果、打楽器10による演奏の表現力を向上できる。
【0060】
また、第1センサ41及び第2センサ42の少なくとも一方が打撃による振動を検出したとき(時間t0)から3〜6msec(好ましくは4msec)後に電子楽音72を発音させるので、打撃の強さの算出や打撃位置の判断に十分な時間をかけることができる。これにより、打撃の強さを精度良く算出できると共に、打撃位置の判断精度を確保できる。
【0061】
以上のような打楽器10によれば、打面板14が打撃されることでアコースティックの楽音が発音され、打撃による振動を検出する第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて音源装置50が楽音信号を生成し、楽音信号に基づいた電子楽音を発音体60が発音する。発音体60が筐体11に設けられるので、筐体11の振動による楽音および電子楽音を1つの筐体11から発音できる。これにより、打楽器10による演奏の表現力を向上できる。
【0062】
打面板14に放音孔14aが形成されるので、打面板14の振動により打面板14の表側(
図1紙面手前側の面)から発音される楽音と、放音孔14aから放音される楽音との向きを揃えることができる。ここで、打面板14を左右に2等分する中心線が放音孔14aにより分断される場合、打面板14の振動による楽音が、打面板14に放音孔14aがない場合(一般的なカホン)の楽音の音質と大きく異なる。
【0063】
一方、本実施の形態では、正面視において打面板14の左右方向中心(打面板14を左右に2等分する中心線)よりも右側に放音孔14aが位置するので、打面板14の振動による楽音の音質が、打面板14に放音孔14aがない場合の楽音の音質と大きく異ならないようにできる。従って、打面板14の振動による楽音と、放音孔14aから放出される楽音との向きを揃えつつ、打面板14に放音孔14aがない場合の楽音の音質に、打面板14の振動による楽音の音質を近づけることができる。
【0064】
また、カホンである打楽器10には、演奏者が打面板14に足を押し当てながら打面板14を打撃することで、響きや余韻をカットした楽音を発音させる奏法がある。また、打面板14に足を押し当てる位置が打面板14の上端に近づくほど、楽音の音高が高くなるので、打面板14に押し当てた足を上下にスライドすることがある。特に、演奏者は正面視において打面板14の左側に右足を押し当てることが多いので、正面視において打面板14の左右方向中心よりも右側に放音孔14aが位置することで、演奏者が足を上下にスライドさせるときに足を放音孔14aに引っ掛かり難くできる。
【0065】
筐体11の体積に対して筐体11を貫通する放音孔14a及び共鳴孔21aの開口面積が十分に小さいので、打面板14への打撃により筐体11の内部の空気が圧縮され、放音孔14aが所謂バスレフポートとして機能する。これにより、打面板14の振動により打面板14の裏側(背面板15側)から発音される楽音の所定の周波数帯域(低音域)を放音孔14aにより増強できる。また、発音体60が筐体11の内部に設けられるので、発音体60が発音する電子楽音の所定の周波数帯域(低音域)を放音孔14aにより増強できる。なお、放音孔14aにより増強される周波数帯は、放音孔14aの開口面積、放音孔14aの長さ(打面板14の板厚)、筐体11の体積、放音孔14aと発音体60との距離に基づいて決定される。
【0066】
筐体11の体積に対して筐体11を貫通する放音孔14a及び共鳴孔21aの開口面積が十分に小さいので、共鳴孔21a及びポート21bが所謂バスレフポートとして機能する。これにより、筐体11の内部から外部へ放音される楽音(打面板14の裏側からの楽音および電子楽音)の所定の周波数帯域(低音域)を共鳴孔21aにより増強できる。なお、共鳴孔21a及びポート21bにより増強される周波数帯は、共鳴孔21a及びポート21bの最小開口面積、共鳴孔21a及びポート21bの長さ、筐体11の体積に基づいて決定される。放音孔14aにより増強可能な周波数帯と、共鳴孔21aにより増強可能な周波数帯とを異ならせることで、筐体11の内部から外部へ放音される楽音(打面板14の裏側からの楽音および電子楽音)を増強可能な周波数帯を広げることができる。
【0067】
背面板15に形成される共鳴孔21aから上面板12へ向かってポート21bが延びるので、即ち、打面板14と対向する位置に設けられる共鳴孔21aから打面板14の振動方向と交差する方向へポート21bが延びるので、打面板14への打撃により筐体11の内部に発生する風圧をポート21bにより分散できる。これにより、打面板14への打撃により発生する風圧による発音体60への影響を低減できる。また、打面板14の裏側からの楽音がポート21bに衝突して拡散することで、打面板14の裏側からの楽音を筐体11の内部で十分に反響させることができる。
【0068】
発音体60の音軸方向から見て放音孔14aの内側に発音体60の中心が位置するので、電子楽音を放音孔14aから筐体11の外部へ直接放音できる。音は、周波数が高いほど回折し難く、周波数が高いほど発音体60の中心側から発音される。発音体60と放音孔14aとの位置関係により、発音体60の中心側から発音される電子楽音の中高音を放音孔14aから筐体11の外部へ直接放音できるので、筐体11に遮られることによる電子楽音の中高音の低減を抑制できる。
【0069】
発音体60の後面から背面板15までの距離が発音体60の前面から放音孔14a(打面板14)までの距離よりも長く設定されるので、即ち、発音体60から放音孔14aまでの距離(本実施の形態では70mm)が打面板14から背面板15までの距離(本実施の形態では筐体11の奥行き約300mmと略同等)の1/2未満に設定されるので、発音体60の後面から発音される電子楽音の低音を発音体60の前面側へ回り込み易くできる。これにより、発音体60の後面から発音される電子楽音の低音を放音孔14aから筐体11の外部へ放音し易くできるので、放音孔14aから放音される電子楽音の低音の音質を向上できる。また、発音体60から放音孔14aまでの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/2以下に設定されるので、発音体60を放音孔14aに近づけて、発音体60が発音する楽音を放音孔14aから筐体11の外部へ放音し易くできる。
【0070】
一方、発音体60から放音孔14aまでの距離が短いほど、打面板14の裏側からの楽音や発音体60の後面から発音される電子楽音が、発音体60に遮られて放音孔14aから筐体11の外部へ放音され難くなる。発音体60から放音孔14aまでの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/6以上に設定されることで、打面板14の裏側からの楽音や発音体60の後面から発音される電子楽音を、放音孔14aから筐体11の外部へ放音し易くできる。
【0071】
従って、発音体60から放音孔14aまでの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/6以上、且つ、1/2未満に設定されることで、電子楽音の低音の音質を向上できると共に、打面板14の裏側からの楽音、及び、発音体60が発音する電子楽音を筐体11の外部へ放音し易くできる。より好ましくは、発音体60から放音孔14aまでの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/5以上、且つ、1/3未満に設定されることで、電子楽音の低音の音質をより向上できると共に、打面板14の裏側からの楽音、及び、発音体60が発音する電子楽音を筐体11の外部へより放音し易くできる。
【0072】
また、発音体60から打面板14までの距離が短いほど、打面板14を打撃したときの衝撃(振動)による発音体60への影響が大きくなる。発音体60から打面板14までの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/6以上に設定されることで、打面板14を打撃したときの衝撃による発音体60への影響を低減できる。より好ましくは、発音体60から放音孔14aまでの距離が打面板14から背面板15までの距離の1/5以上に設定されることで、打面板14を打撃したときの衝撃による発音体60への影響をより低減できる。
【0073】
さらに、電子楽音の中高音は回折し難いので、発音体60から打面板14までの距離が長いほど、放音孔14aから放音される電子楽音の中高音は広がり難くなる。また、放音孔14aの直径が大きいほど、放音孔14aから放音される電子楽音の中高音は広がり易くなる。
【0074】
放音孔14aの直径(本実施の形態では約90mm)が放音孔14aと発音体60との距離(本実施の形態では約70mm)の1.0〜1.5倍に設定されることで、打面板14の裏側からの楽音や発音体60の後面から発音される電子楽音を、筐体11の外部へ放音し易くしつつ、電子楽音の中高音を広がり易くできる。より好ましくは、放音孔14aの直径が放音孔14aと発音体60との距離の1.1〜1.4倍に設定される。さらに好ましくは、放音孔14aの直径が放音孔14aと発音体60との距離の1.2〜1.3倍に設定される。これにより、打面板14の裏側からの楽音や発音体60の後面から発音される電子楽音を、筐体11の外部へ放音し易くしつつ、電子楽音の中高音をより広がり易くできる。
【0075】
第1センサ41が打面板14の振動を検出し、第2センサ42が第1横材23(筐体11の打面板14と異なる部分)の振動を検出するので、第1センサ41の出力結果および第2センサ42の出力結果から打撃位置を判断できる。打撃位置に応じた音色の楽音信号を音源装置50により生成できるので、打撃位置に応じて電子楽音の音色を変更でき、打楽器10による演奏の表現力を向上できる。
【0076】
打面板14の振動方向の振動を第1センサ41が検出し、打面板14の振動方向と垂直な方向の振動を第2センサ42が検出するので、第2センサ42が打面板14の振動の影響を受けることを抑制できる。その結果、第2センサ42の誤検出を抑制できる。
【0077】
打楽器10は、演奏者により主に打撃される位置として、打面板14の中央と、打面板14の上端側(上面板12側)とがある。打面板14の上端側を打撃した場合よりも、打面板14の中央を打撃した場合には打面板14の振動が大きくなるので、打面板14の振動を直接検出する第1センサ41の出力値を大きくできる。その結果、打面板14の中央への打撃を第1センサ41が検出し易くできる。
【0078】
特に演奏時、右利きの演奏者であれば1拍目(強拍)は、正面視において打面板14の左側の上下方向中央を右手で打撃することが多い。第1センサ41は、正面視において打面板14の左右方向中心よりも左側、且つ、上下方向中央に位置するので、打撃位置から第1センサ41までの距離を近づけることができる。打撃位置からの距離が近いほど、第1センサ41へ伝達される衝撃(振動)を大きくできるので、第1センサ41の出力値を大きくでき、右利きの演奏者における1拍目の打撃を第1センサ41が確実に検出できる。
【0079】
一方、打面板14の上端側を打撃した場合、第2センサ42が第1横材23に取り付けられるので、打撃位置から第2センサ42までの距離を近づけることができる。打撃位置から第2センサ42へ伝達される衝撃(振動)を大きくできるので、第2センサ42の出力値を大きくできる。その結果、打面板14の上端側への打撃を第2センサ42が検出し易くできる。
【0080】
正面視において打面板14の左右方向中心よりも左側に第1センサ41が位置し、正面視において打面板14の左右方向中央に第2センサ42が位置するので、打面板14への打撃位置が左右方向に変化するにつれて、第1センサ41及び第2センサ42の出力値の増減の仕方(ピークの位置)が互いに異なる。第1センサ41の出力結果と第2センサ42の出力結果との比較により、左右方向の打撃位置の判断精度を向上できる。
【0081】
また、正面視において打面板14の上下方向中央に第1センサ41が位置し、第1横材23に第2センサ42が取り付けられるので、第1センサ41の出力結果と第2センサ42の出力結果との比較により、上下方向の打撃位置の判断精度を向上できる。これらの結果、第1センサ41及び第2センサ42による打撃位置の判断精度を向上できる。
【0082】
第1センサ41を支持する支持部27が掛け渡される第1支柱25及び第2支柱26と、第2センサ42を支持する第1横材23とが所定の距離を隔てて配置されるので、打面板14を打撃したときの振動が、第1支柱25及び第2支柱26を介して支持部27と第1横材23とで互いに伝達されることを抑制できる。第1センサ41及び第2センサ42をそれぞれ支持する部分同士の振動の伝達を抑制できるので、第1センサ41及び第2センサ42の誤検出を抑制して検出精度を確保できる。
【0083】
正面視において、打面板14の左右方向中心よりも左側、且つ、打面板14の上下方向中央に第1センサ41が位置し、打面板14の左右方向中央、且つ、打面板14の上端側に第2センサ42が位置するのに対して、正面視において発音体60の中心が打面板14の左右方向中心よりも右側、且つ、第1センサ41よりも下面板13側に位置する。発音体60と第1センサ41及び第2センサ42との距離を離すことができるので、発音体60の振動を第1センサ41及び第2センサ42が誤検出することを抑制できる。
【0084】
演奏者が着座する上面板12に操作子18aが設けられるので、演奏者が筐体11に座って演奏しながら操作子18aを操作し易くできる。操作子18aの操作に応じて音源装置50が楽音信号を生成し、その楽音信号に基づいた電子楽音を発音体60が発音するので、演奏中に操作子18aを操作して電子楽音の音色や音量を容易に変更できる。その結果、打楽器10による演奏の表現力を向上できる。
【0085】
さらに、操作子18aが上面板12の左右方向中央の打面板14側に設けられるので、演奏者が筐体11に座って、打面板14を両手で打撃し易いように演奏者が正面を向いたときに、操作子18aが演奏者の股間付近に位置する。演奏中に操作子18aをより操作し易くできるので、演奏中に電子楽音の音色や音量をより容易に変更できる。
【0086】
次に、
図8を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、発音体60の全部が筐体11の内部に設けられる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、発音体83の一部が筐体81の内部に設けられて発音体83の一部が筐体81の外部に設けられる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。また、第2実施の形態は、第1実施の形態における放音孔14aを備えていないが、共鳴孔21a及びポート21bを放音孔として扱うことができる。
【0087】
図8は第2実施の形態における打楽器80の正面図である。
図8に示すように、打楽器80は、カホンであり、上面板12と、下面板13と、側面板とにより空洞が形成される直方体状の筐体81を備える。側面板は、正面(
図8紙面手前側)に位置する打面板82と、打面板82と対向する背面板15と、左側面板16と、右側面板17とから構成される。
【0088】
打楽器80(筐体81)は、演奏者が上面板12に着座した状態で打面板82を演奏者が打撃することで、筐体81全体が、特に打面板82が振動してアコースティックの楽音を発音する。また、打楽器80は、打面板82が打撃されることで電子楽音を発音させる機構を備えている。具体的には、打楽器80は、打面板82への打撃を検出する第1センサ41及び第2センサ42(打撃センサ)と、第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて楽音信号を生成する音源装置50と、音源装置50により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を発音する発音体83とを備えている。
【0089】
打面板82は、木製の平板であり、上面板12、下面板13、背面板15、左側面板16及び右側面板17の板厚よりも薄く形成される。これにより、打面板82の剛性を低くして打面板82を振動し易くできる。打面板82は、上端(上面板12側の端部)から上下方向中央までが演奏者により主に打撃される部分であり、正面視において左右方向中心よりも右側(右側面板17側)、且つ、上下方向中心よりも下側(下面板13側)に発音体83が貫通する開口(図示せず)が設けられる。
【0090】
発音体83は、正面視円形状のコーン型のスピーカである。発音体83は、一部が筐体81の内部に設けられて、発音体83との接触により打面板82の振動を妨げないように、一部が打面板82の開口を通して筐体81の外部に飛び出ている。
【0091】
発音体83は、音軸が打面板82と垂直になるように前面を正面(紙面手前側)へ向けて、筐体81の内部に支持される。これにより、打面板82の振動による楽音の方向と、発音体83が発音する電子楽音の方向を揃えることができる。
【0092】
以上のような打楽器80によれば、打面板82を貫通して筐体81に発音体83が設けられることで発音体83の前面が筐体81の外部に位置するので、発音体83の前面から発音される電子楽音が筐体81に妨げられることを防止できる。その結果、筐体81に妨げられることにより電子楽音の音質が変わることなく、電子楽音を広範囲に広げることができる。
【0093】
打面板82を貫通して発音体83を筐体81に設ける場合、打面板82を貫通する開口が、正面視において打面板82の左右方向中心よりも右側(右側面板17側)、且つ、打面板82の上下方向中心よりも下側(下面板13側)に設けられるので、打面板82を左右に2等分する中心線が打面板82の開口により分断されることを防止できる。打面板82の振動による楽音の音質が、打面板82に開口がない場合の楽音の音質と大きく異ならないようにできる。従って、正面視において打面板82の左右方向中心よりも右側を貫通して発音体83を筐体81に設けた場合でも、打面板82に開口がない場合の楽音の音質に、打面板82の振動による楽音の音質を近づけることができる。また、打面板82の左右方向中心よりも右側を発音体83が貫通して設けられるので、正面視において打面板82の左側に右足を押し当てる奏法を演奏者がする場合、演奏者の足を発音体83に引っ掛かり難くできる。
【0094】
次に、
図9から
図12を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、打楽器10がカホンである場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、打楽器90がボンゴである場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。また、ボンゴとは一般的に大小2つの片面太鼓を繋ぎ合せたものを指すが、本実施の形態では大小2つの片面太鼓のうち一方について説明をし、他方の説明は省略する。
【0095】
まず、
図9及び
図10を参照して打楽器90の概略構成について説明する。
図9は第3実施の形態における打楽器90の正面斜視図であり、
図10は打楽器90の背面斜視図である。
図9及び
図10に示すように、打楽器90は、ボンゴであり、円筒状のシェル92の一端を革製の膜状の打面部93で塞いだ筐体91を備え、フープ94により打面部93の外周端がシェル92の外周面に固定される。打楽器90は、打面部93を演奏者が打撃することで、筐体91全体が、特に打面部93が振動してアコースティックの楽音を発音する。
【0096】
シェル92は、合成樹脂製の部材であり、演奏者によって操作される操作子18aと、操作子18aによる操作状況等を表示する表示器18bとを有する操作パネル18が設けられる。シェル92は、操作パネル18が設けられる位置の反対側に放音孔95が形成される。放音孔95は、外観を考慮して筐体91の内部を視認し難くするためにメッシュ状のシート20で覆われる。
【0097】
次に、
図11及び
図12を参照して打楽器90の内部構造について説明する。
図11は打面部93を取り除いた打楽器90の上面図であり、
図12は
図11のXII−XII線における打楽器90の断面図である。なお、本実施の形態では、
図11の紙面手前側を打楽器90の上方、
図11の左側を打楽器90の前方、
図11の上側を打楽器90の左方として説明する。このとき、打面部93が筐体91の上面、シェル92が筐体91の側面である。
【0098】
図11及び
図12に示すように、打楽器90は、打面部93(
図9参照)が打撃されることで電子楽音を発音させる機構を備えている。具体的には、打楽器90は、打面部93への打撃を検出する第1センサ41及び第2センサ42(打撃センサ)と、第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて楽音信号を生成する音源装置50と、音源装置50により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を発音する発音体60とを備えている。
【0099】
シェル92は、上端が打面部93に塞がれる第1端部92aであり、下端が第2端部92bであり、シェル92の径方向の振動を検出するように第2センサ42が第1端部92aに取り付けられる。筐体91は、上述したように第1端部92a側の面が打面部93であり、第2端部92b側の面の全面が開口している。この筐体91の第2端部92b側の開口を共鳴孔92cとする。打楽器90は、打面部93を固定端とし、共鳴孔92cを自由端とし、シェル92をパイプとして、筐体91の内部で発音する、所定の周波数帯の楽音とその倍音とを増強できる。
【0100】
シェル92は、外径および内径が第1端部92aから第2端部92bへ向かって徐々に広がって形成され、第1端部92aの厚さ(径方向寸法)が、第2端部92b側の厚さと比べて大きく形成される。シェル92は、第1端部92aよりも第2端部92b側の内周面に第1支持部96及び第2支持部97が掛け渡される。
【0101】
第1支持部96及び第2支持部97は、木製の棒状の角材であり、1面が打面部93と平行になるように両端が接着剤によりシェル92の内周面に接着される。第1支持部96は、第1端部92a側の面に第1センサ41が取り付けられ、第2端部92b側の面に音源装置50が取り付けられる。第2支持部97は、上面視において第1支持部96よりも放音孔95側に位置する。第2支持部97は、第2端部92b側の面に発音体支持部61を介して発音体60が取り付けられる。
【0102】
第1センサ41は、緩衝材46を介して打面部93と接触して打面部93の振動を検出するセンサであり、筐体91の左右方向中心よりも右側に位置する。第2センサ42は、シェル92(筐体91の打面部93と異なる部分)の振動を検出するセンサであり、シェル92の周方向において操作パネル18が設けられる位置に片持ち状態で取り付けられ、筐体91の左右方向中央に位置する。
【0103】
発音体60は、音軸が打面部93と平行になるように発音体支持部61に支持され、発音体60の中心が筐体91の左右方向中心よりも左側に位置する。発音体60は、音軸方向から見て発音体60の中心が放音孔95の内側に位置する。
【0104】
以上のような打楽器90によれば、打面部93が打撃されることでアコースティックの楽音が発音され、打撃による振動を検出する第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて音源装置50が楽音信号を生成し、楽音信号に基づいた電子楽音を発音体60が発音する。発音体60が筐体91に設けられるので、筐体91の振動による楽音および電子楽音を1つの筐体91から発音できる。これにより、打楽器90による演奏の表現力を向上できる。
【0105】
打楽器90は、操作パネル18を演奏者に向けた(打楽器90の前方に演奏者が位置する)状態で演奏するのが好ましい。この場合、発音体60の音軸方向が演奏者の正面(聴衆側)へ向き、シェル92の操作パネル18が設けられる位置の反対側(聴衆側)に放音孔95が形成されるので、発音体60が発音する電子楽音が放音孔95から演奏者の正面へ放音できる。
【0106】
さらに、音軸方向から見て発音体60の中心が放音孔95の内側に位置するように配置されるので、電子楽音を放音孔95から筐体91の外部へ直接放音できる。発音体60の中心側から発音される電子楽音の中高音を放音孔95から筐体91の外部へ直接放音できるので、筐体91に遮られることによる電子楽音の中高音の低減を抑制できる。
【0107】
また、操作パネル18を演奏者に向けた打楽器90を演奏する場合、演奏者から見て第1センサ41が打面部93の右側に位置するので、打面部93の右側を打撃したときの第1センサ41の出力値を大きくできる。右利きの演奏者であれば1拍目(強拍)は、打面部93の右側を右手で打撃することが多いので、打撃位置から第1センサ41までの距離を近づけて第1センサ41の出力値を大きくできる。その結果、右利きの演奏者における1拍目の打撃を第1センサ41が確実に検出できる。
【0108】
演奏者は打面部93の縁を打撃するときに、打面部93の演奏者側の縁を打撃することが多い。操作パネル18を演奏者に向けた打楽器90を演奏する場合、第2センサ42がシェル92の演奏者側に取り付けられるので、打面部93の演奏者側の縁を打撃したときの打撃位置から第2センサ42までの距離を近づけて第2センサ42の出力値を大きくできる。その結果、打面部93の縁への打撃を検出し易くできる。
【0109】
筐体91の体積に対して放音孔95及び共鳴孔92cの開口面積が十分に大きいので、打面部93への打撃により筐体91の内部の空気が殆ど圧縮されない。打面部93への打撃により発生する風圧を放音孔95から筐体91の外部へ逃がす必要がないため、発音体60を放音孔95に近づけることができる。発音体60を放音孔95に近づけることで、発音体60が放音する電子楽音が筐体91に遮られることを抑制できる。
【0110】
なお、第2端部92bの内径が小さくなるようにシェル92を形成したり、第2端部92bを塞ぎ、その塞いだ部分の一部に共鳴孔92cを設けたりすることによって共鳴孔92cの開口面積を小さくすることで、打面部93への打撃により筐体91の内部の空気が圧縮するように設定することが可能である。この場合、放音孔95及び共鳴孔92cが所謂バスレフポートとして機能する。
【0111】
次に、
図13から
図15を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、打楽器10がカホンである場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、打楽器100がカウベルである場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図13は第4実施の形態における打楽器100の斜視図であり、
図14は打面板113を透過した打楽器100の上面図であり、
図15は
図14のXV−XV線における打楽器100の断面図である。
【0112】
図13から
図15に示すように、打楽器100は、カウベルであり、1面が打面板(打面部)113である六面体状の金属製の筐体110と、打面板113への打撃を検出する第1センサ41及び第2センサ42(打撃センサ)と、第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて楽音信号を生成する音源装置50と、音源装置50により生成される楽音信号に基づいた電子楽音を発音する発音体120とを備えている。
【0113】
筐体110は、長方形状の第1面板111と、第1面板111と対向する長方形状の第2面板112と、第1面板111及び第2面板112の一辺を繋ぐ四角形状の打面板113と、打面板113と対向する四角形状の第3面板114と、第1面板111、第2面板112、打面板113及び第3面板114の一辺を繋ぐ長方形状の第4面板115と、第4面板115と対向する第5面板116とを備える。説明を容易にするため本実施の形態では、第1面板111と第2面板112とが対向する方向を前後方向、打面板113と第3面板114とが対向する方向を上下方向、第4面板115と第5面板116とが対向する方向を左右方向とする。
【0114】
第1面板111は、左右方向に長い金属製の平板であり、第3面板114側、且つ、左右方向中心よりも第4面板115側に楕円形状の放音孔117が形成される。第1面板111は、第1面板111の振動を検出する第2センサ42が第1面板111の内側(第2面板112側の面)に取り付けられる。第2センサ42は、放音孔117よりも打面板113側に位置する。放音孔117は、打面板113への打撃により筐体110の内部に発生する風圧を筐体110の外部へ逃がす開口であり、外観を考慮して筐体110の内部を視認し難くするためにメッシュ状のシート20で覆われる。筐体110の体積に対して放音孔117の開口面積が十分に小さいので、放音孔117が所謂バスレフポートとして機能する。
【0115】
第2面板112は、左右方向に長い金属製の平板であり、第1面板111よりも左右方向の寸法が小さく形成される。これにより、筐体110は第2面板112から第1面板111へ向かって断面積が大きくなる。
【0116】
打面板113は、金属製の平板であり、前後方向中心よりも第2面板112側、且つ、左右方向中央に操作パネル18が設けられ、前後方向中心よりも第1面板111側が演奏者により主に打撃される部分である。第3面板114は、金属製の平板であり、第3面板114の内側(打面板113側の面)に音源装置50が設けられ、第3面板114の内側に発音体120が取り付けられる。音源装置50は、第3面板114の前後方向中心よりも第2面板112側、且つ、第3面板114の左右方向中央に位置する。発音体120は、第3面板114の前後方向中心よりも第1面板111側、且つ、第3面板114の左右方向中心よりも第4面板115側に位置する。
【0117】
第4面板115及び第5面板116は、前後方向に長い金属製の平板であり、前後方向中央の内側に打面板113と所定の距離を隔てて角棒状の支持部118が掛け渡される。支持部118は、打面板113側の面の左右方向中央に第1センサ41が取り付けられる。第1センサ41は、緩衝材46を介して打面板113と接触して打面板113の振動を検出する。
【0118】
発音体120は、楕円形状のコーン型のスピーカであり、音源装置50から電力が供給される。発音体120は、第1センサ41及び第2センサ42の間にそれぞれとの距離がほぼ同じになるように配置され、放音孔117と所定の距離を隔てる。これにより、打面板113への打撃による風圧を放音孔117から筐体110の外部へ逃がすことができる。
【0119】
発音体120は、音軸が第1面板111と垂直になるように前面を第1面板111へ向けて配置され、音軸方向(前後方向)から見て発音体120の中心が放音孔117の内側に位置する。発音体120が発音する電子楽音を放音孔117から筐体110の外部へ直接放音できるので、筐体110に遮られることによる電子楽音の中高音の低減を抑制できる。
【0120】
以上のような打楽器100によれば、打面板113が打撃されることでアコースティックの楽音が発音され、打撃による振動を検出する第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に応じて音源装置50が楽音信号を生成し、楽音信号に基づいた電子楽音を発音体120が発音する。発音体120が筐体110に設けられるので、筐体110の振動による楽音および電子楽音を1つの筐体110から発音できる。これにより、打楽器100による演奏の表現力を向上できる。
【0121】
カウベルである打楽器100には、打面板113の前後方向中央を打撃する奏法と、打面板113の第1面板111側の端縁を打撃する奏法とがある。打面板113の前後方向中央に第1センサ41が位置するので、打面板113の前後方向中央への打撃を第1センサ41により検出し易くできる。また、第2センサ42が第1面板111に取り付けられるので、打面板113の第1面板111側の端縁への打撃を第2センサ42により検出し易くできる。
【0122】
カウベルである打楽器100の演奏方法には、第3面板114を手のひらに向けた状態で打楽器100を片手で持ってスティック(図示せず)等で打面板113を打撃する方法と、第2面板112に設けた支持具(図示せず)をスタンド(図示せず)に取り付けてスティック等で打面板113を打撃する方法とがある。片手で打楽器100を持つ場合、打面板113に操作子18aが設けられるので、打楽器100を演奏しながら操作子18aを操作し易くできる。その結果、演奏中に操作子18aを操作して電子楽音の音色や音量を容易に変更できる。
【0123】
打面板113の左右方向中央に配置される第1センサ41及び第2センサ42に対して、第1センサ41及び第2センサ42との距離がほぼ同じになるように打面板113の左右方向中心よりも第4面板115側に発音体120が配置されるので、第1センサ41及び第2センサ42との距離を確保できる。その結果、発音体120の振動を第1センサ41及び第2センサ42が誤検出することを抑制できる。
【0124】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、操作パネル18、放音孔14a,95,117、第1センサ41、第2センサ42、音源装置50、発音体60,83,120等の位置は一例であり、配置を変更することは当然可能である。特に、各実施の形態では各部位および各装置が右利きの演奏者に適した配置にされているが、各部位および各装置の配置を左右逆に構成することで左利きの演奏者に適した配置にできる。
【0125】
上記第1,2実施の形態では打楽器10,80がカホンである場合、上記第3実施の形態では打楽器90がボンゴである場合、上記第4実施の形態では打楽器100がカウベルである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。コンガやドラム、ティンバレス等の打楽器に本発明を適用することは当然可能である。なお、コンガやドラム、ティンバレス等の場合の構成は上記第3実施の形態におけるボンゴの場合と略同一である。また、上面板12に着座して筐体11の側面である打面板14を打撃するカホンに限らず、筐体の上面を打面板とするカホンに本発明を適用することも可能である。筐体の上面を打面板とするカホンの場合の構成も上記第3実施の形態におけるボンゴの場合と略同一である。
【0126】
上記各実施の形態では、発音体60,83,120の少なくとも一部が筐体11,81,91,110の内部に設けられる場合について説明したが必ずしもこれに限られるものではなく、筐体11,81,91,110の外部に発音体60,83,120の全体が露出するように設けることは当然可能である。また、発音体60,83,120を筐体11,81,91,110とは別の場所に設置することも可能である。さらに、発音体60,83,120に限らず、筐体11,81,91,110の外部に音源装置50の全体が露出するように設けることや、音源装置50を筐体11,81,91,110とは別の場所に設置することも可能である。
【0127】
上記第1,3,4実施の形態では、音軸方向から見て発音体60,120の中心が放音孔14a,95,117の内側に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、音軸方向から見て発音体60,120の中心が放音孔14a,95,117の外側に位置することは当然可能である。この場合、発音体60,120が発音する電子楽音の中高音を筐体11,91,110の外部へ放音し難くでき、電子楽音の低音を強調できる。また、発音体60,120の音軸方向を、放音孔14a,95,117が設けられる面とは異なる方向に向けることも可能である。この場合、電子楽音の中高音を筐体11,91,110の外部へより放音し難くでき、電子楽音の低音をより強調できる。
【0128】
上記第1,3実施の形態では、放音孔14a,95が円形状である場合、上記第4実施の形態では、放音孔117が楕円形状である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、放音孔14a,95,117を長円形状や多角形状、半円形状、三日月状、これらの組み合わせの形状に形成することは当然可能である。また、放音孔14a,95,117がシート20に覆われる場合に限らず、シート20を省略することは可能である。この場合、放音孔14a,95,117から筐体11,91,110の外部へ放音される楽音へのシート20による影響をなくすことができる。
【0129】
上記各実施の形態では、打面板14,82,113(打面部93)への打撃を検出する打撃センサ(第1センサ41、第2センサ42)が2つ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、打撃センサを1つ設けることや、打撃センサを3つ以上設けることは当然可能である。打撃センサを3つ以上設けることで、打撃センサの検出結果の比較による打撃位置の判断精度を向上できる。また、打楽器10,80,90,100の演奏者により打撃されることが多い位置に打撃センサを設けることで打撃を検出し易くできる。
【0130】
上記各実施の形態では、第1センサ41、第2センサ42は振動の検出素子が圧電素子43である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、動電型や静電容量型等の接触式の検出素子を用いることは当然可能である。また、接触式の検出素子に限らず、非接触式の検出素子を用いることも可能である。
【0131】
上記各実施の形態では、第1センサ41が緩衝材46を介して打面板14,82,113(打面部93)と接触する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1センサ41を打面板14,82,113(打面部93)に直接取り付けることも可能である。
【0132】
上記各実施の形態では、第1センサ41の振動の検出方向(打面板14,82,113(打面部93)の振動方向)と第2センサ42の振動の検出方向とが垂直である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1センサ41の振動の検出方向と第2センサ42の振動の検出方向とのなす角度を0度以上、且つ、90度未満とすることは当然可能である。第1センサ41の振動の検出方向と第2センサ42の振動の検出方向とのなす角度が60度以上であれば、第2センサ42が打面板14,82,113(打面部93)の振動の影響を受けることを抑制でき、第2センサ42の誤検出を抑制できる。
【0133】
上記第1,2実施の形態では、筐体11,81が直方体である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上面板12、下面板13、打面板14,82、背面板15、左側面板16及び右側面板17の各端縁の連結部分が、平面状または曲面状に面取りされた形状の筐体11,81を用いることは当然可能である。また、筐体11,81を平面視多角形状や、平面視円形状、角錘台状とすることも可能である。各板12,13,14,15,16,17を曲面板状にすることも可能である。
【0134】
上記第1実施の形態では、上面板12、下面板13、背面板15、左側面板16及び右側面板17の端縁同士を補強材22で連結し、上面板12の第1横材23、下面板13の第2横材24、左側面板16の第1支柱25、及び、右側面板17の第2支柱26に打面板14の各端縁を取り付けることで筐体11が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。各板12,13,15,16,17の厚さを調整して、各板12,13,15,16,17の端縁同士を直接連結することは当然可能である。この場合、上面板12、下面板13、左側面板16及び右側面板17の端面に打面板14を取り付け、第2センサ42を上面板12に直接取り付ける。
【0135】
上記第1実施の形態では、発音体支持部61が板状の部材である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、発音体60の後面を覆う箱状に発音体支持部61を形成することは当然可能である。発音体支持部61を箱状に形成することや、板状または箱状の発音体支持部61の寸法を調整することで、筐体11の外部へ放音される電子楽音の音質を調整できる。