(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-10239(P2017-10239A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】トレーサビリティ管理装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20161216BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20161216BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20161216BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
B65G1/137 A
B65G61/00 524
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-124459(P2015-124459)
(22)【出願日】2015年6月22日
(11)【特許番号】特許第5923202号(P5923202)
(45)【特許公報発行日】2016年5月24日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】網谷 佳久
【テーマコード(参考)】
3C100
3F522
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA34
3C100AA57
3C100BB05
3C100BB15
3C100BB21
3C100BB27
3C100CC01
3C100DD05
3C100DD12
3C100DD22
3F522AA02
3F522AA03
3F522BB01
3F522BB27
3F522BB28
3F522BB29
3F522CC09
3F522DD05
3F522DD22
3F522DD32
3F522DD34
3F522FF02
3F522FF04
3F522FF11
3F522GG13
3F522GG16
3F522GG23
3F522GG25
3F522GG37
3F522GG42
3F522GG45
3F522LL36
3F522LL61
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】ロット内における特定の時間帯に製造された製品を特定することができるトレーサビリティ管理装置、プログラムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、前記トレーサビリティ管理装置は、追跡のための管理データを取得する管理データ取得部と、追跡対象の製品に関するデータであって前記製品毎に付与された前記製品の製造時刻に関する情報を含む追跡対象データを取得する追跡対象データ取得部と、追跡対象の製品の梱包に関わる梱包容器を特定する梱包容器特定部と、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部と、を備えるトレーサビリティ管理装置が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、
前記トレーサビリティ管理装置は、
追跡のための管理データを取得する管理データ取得部と、
追跡対象の製品に関するデータであって前記製品毎に付与された前記製品の製造時刻に関する情報を含む追跡対象データを取得する追跡対象データ取得部と、
追跡対象の製品の梱包に関わる梱包容器を特定する梱包容器特定部と、
追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部と、
を備え、
追跡のための前記粒度は、製造ロット、搬送具及び梱包容器のうちの少なくとも1種以上であり、
前記管理データは、前記製造ロットにおいて前記梱包容器に梱包された製品数、前記梱包容器毎に付与される梱包容器識別情報及び前記搬送具毎に付与される情報であって搬送の際の状況に基づいて前記梱包容器識別情報に対応付けられた搬送具識別情報を含み、
前記梱包容器識別情報は、追跡対象の製品を含む複数の製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割した場合に、それぞれの区間内で製造された複数の製品を梱包する前記梱包容器毎に付与されており、
前記梱包容器特定部は、前記追跡対象データおよび前記管理データを参照し、追跡対象の前記製品の製造時刻及び前記梱包容器に梱包された製品数に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器に付与された前記梱包容器識別情報を特定し、
前記搬送具特定部は、前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別情報及び前記管理データを参照し、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器を搬送していた前記搬送具に付与された前記搬送具識別情報を特定し、
前記製造時刻に関する情報は、前記製品の製造時刻、前記製品が製造されたロットを識別するための情報及び前記梱包容器識別情報のうちの少なくとも1つを含む、
トレーサビリティ管理装置。
【請求項2】
前記管理データ取得部は、
前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表すデータを取得し、
前記梱包容器特定部は、
前記追跡対象データに含まれる前記製品の製造時刻、前記管理データに含まれる前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数及び前記受信した少なくとも2つを表すデータに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する、
請求項1に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項3】
前記特定された前記搬送具に搭載された前記梱包容器に関する情報を取得し、回収対象とすべき範囲を判定する判定部
を有する請求項1又は請求項2に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項4】
前記判定部により回収対象と判定された範囲を出力する出力部
を有する請求項3に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項5】
前記梱包容器識別番号は、
前記梱包容器に梱包される前記製品が製造された前記製造ロット内において固有の番号である、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項6】
前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号が対応付いていない場合において、前記梱包容器識別番号を表すデータ又は前記製造ロット、前記製造ロットにて製造された製品を識別するための情報を表すデータが含まれる第1コード画像と、前記搬送具識別番号を表すデータが含まれる第2コード画像と、を前記搬送具に貼り付け、前記貼り付けられた前記第1コード画像及び前記第2コード画像を読み取ることで、前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号を対応付ける読取コード対応付部と、
を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項7】
製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号と、前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号と、が対応付いたデータを受信する受信部と、
前記受信部により受信されたデータに基づいて、トレース対象となる前記搬送具識別番号に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部と、
前記特定された前記梱包容器識別番号が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間において製造された前記製品を特定する製品特定部と、
を有するトレーサビリティ管理装置。
【請求項8】
コンピュータを、
任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、
追跡のための管理データを取得する管理データ取得部、
追跡対象の製品に関するデータであって前記製品毎に付与された前記製品の製造時刻に関する情報を含む追跡対象データを取得する追跡対象データ取得部、
追跡対象の製品の梱包に関わる梱包容器を特定する梱包容器特定部、
追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、
を備え、
追跡のための前記粒度は、製造ロット、搬送具及び梱包容器のうちの少なくとも1種以上であり、
前記管理データは、前記製造ロットにおいて前記梱包容器に梱包された製品数、前記梱包容器毎に付与される梱包容器識別情報及び前記搬送具毎に付与される情報であって搬送の際の状況に基づいて前記梱包容器識別情報に対応付けられた搬送具識別情報を含み、
前記梱包容器識別情報は、追跡対象の製品を含む複数の製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割した場合に、それぞれの区間内で製造された複数の製品を梱包する前記梱包容器毎に付与されており、
前記梱包容器特定部は、前記追跡対象データおよび前記管理データを参照して、追跡対象の前記製品の製造時刻及び前記梱包容器に梱包された製品数に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器に付与された前記梱包容器識別情報を特定し、
前記搬送具特定部は、前記梱包容器識別情報及び前記管理データを参照して、搬送の際の状況に基づいた対応関係に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器を搬送していた前記搬送具に付与された前記搬送具識別情報を特定すし、
前記製造時刻に関する情報は、前記製品の製造時刻、前記製品が製造されたロットを識別するための情報及び前記梱包容器識別情報のうちの少なくとも1つを含む
トレーサビリティ管理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の追跡に利用するトレーサビリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトレーサビリティシステムとして、下記の特許文献1には、不具合の可能性がある製品の現在の在処を直ちに特定でき、それ以上の流通を停止することができるトレーサビリティシステムが開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、製造ロットごとに搬送先を把握でき、簡易でありながら管理情報の秘匿性に優れるトレーサビリティ管理システムが開示されている。
【0004】
このように、製品の品質を管理するために、製造ロット毎に品質管理を行う手法は様々な企業で導入されている。そして、安全性や選択に対する関心を満たすために、製品の流通を追跡可能とするトレーサビリティシステムと組み合わせた運用もなされている。そして、不幸にも製造中の異物混入や搬送中の劣化等による不良品の発生によりリコールを実施する際には、かかるトレーサビリティシステムの追跡結果を利用し、製造ロット単位で製品を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−122926
【特許文献2】特開2013−124155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのシステムでは製造ロットごとに搬送先を把握でき、製品に不具合が発見されたときにはかかる製品と同じロットにおいて製造された製品を特定できるので、例えば、あるロットにおける原料の賞味期限が切れていた場合や、薬品が混入していた場合にロット単位で回収することができる。しかし、あるロットのうちの特定の時間帯に製造された製品に不具合が発見される場合もありうる。例えば、製造設備上の天井から数分間水漏れが発生していた場合や、搬送業者に受け渡した後に搬送車内に長時間放置され、製品の品質が著しく損なわれた場合等である。このような場合、同じロットで製造された製品のうち、特定の製品のみ品質が低下しているものの、それ以外の製品には問題がないといえる。
【0007】
しかし、従来のシステムでは、このような場合でも製造ロット単位でしか回収することができなかった。つまり、実際には問題がない製品でも、たまたま問題が生じた製品と同じロットであるというだけでまとめて回収されてしまう。多品種・小ロット等のような場合にはあまり問題はないかもしれないが、1ロットで大量に製造する場合には、1ロット全てを回収するというのは時間と費用がかかり、また、資源の廃棄による環境への悪影響という観点からみても好ましいものではない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ロット内における特定の時間帯に製造された製品を、ロット、搬送具及び梱包容器のうちの少なくとも1種以上の単位で特定することができるトレーサビリティ管理装置、プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、前記トレーサビリティ管理装置は、追跡のための管理データを取得する管理データ取得部と、追跡対象の製品に関するデータであって前記製品毎に付与された前記製品の製造時刻に関する情報を含む追跡対象データを取得する追跡対象データ取得部と、追跡対象の製品の梱包に関わる梱包容器を特定する梱包容器特定部と、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部と、を備え、追跡のための前記粒度は、製造ロット、搬送具及び梱包容器のうちの少なくとも1種以上であり、前記管理データは、前記製造ロットにおいて前記梱包容器に梱包された製品数、前記梱包容器毎に付与される梱包容器識別情報及び前記搬送具毎に付与される情報であって搬送の際の状況に基づいて前記梱包容器識別情報に対応付けられた搬送具識別情報を含み、前記梱包容器識別情報は、追跡対象の製品を含む複数の製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割した場合に、それぞれの区間内で製造された複数の製品を梱包する前記梱包容器毎に付与されており、前記梱包容器特定部は、前記追跡対象データおよび前記管理データを参照して、追跡対象の前記製品の製造時刻及び前記梱包容器に梱包された製品数に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器に付与された前記梱包容器識別情報を特定し、前記搬送具特定部は、前記梱包容器識別情報及び前記管理データを参照して、搬送の際の状況に基づいた対応関係に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器を搬送していた前記搬送具に付与された前記搬送具識別情報を特定すし、前記製造時刻に関する情報は、前記製品の製造時刻、前記製品が製造されたロットを識別するための情報及び前記梱包容器識別情報のうちの少なくとも1つを含む、トレーサビリティ管理装置が提供される。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記管理データ取得部は、前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表すデータを取得し、前記梱包容器特定部は、前記追跡対象データに含まれる前記製品の製造時刻、前記管理データに含まれる前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数及び前記受信した少なくとも2つを表すデータに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する。
好ましくは、前記特定された前記搬送具に搭載された前記梱包容器に関する情報を取得し、回収対象とすべき範囲を判定する判定部を有する。
好ましくは、前記判定部により回収対象と判定された範囲を出力する出力部を有する。
好ましくは、前記梱包容器識別番号は、前記梱包容器に梱包される前記製品が製造された前記製造ロット内において固有の番号である。
好ましくは、前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号が対応付いていない場合において、前記梱包容器識別番号を表すデータ又は前記製造ロット、前記製造ロットにて製造された製品を識別するための情報を表すデータが含まれる第1コード画像と、前記搬送具識別番号を表すデータが含まれる第2コード画像と、を前記搬送具に貼り付け、前記貼り付けられた前記第1コード画像及び前記第2コード画像を読み取ることで、前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号を対応付ける読取コード対応付部と、を有する。
好ましくは、製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号と、前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号と、が対応付いたデータを受信する受信部と、前記受信部により受信されたデータに基づいて、トレース対象となる前記搬送具識別番号に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部と、前記特定された前記梱包容器識別番号が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間において製造された前記製品を特定する製品特定部と、を有するトレーサビリティ管理装置が提供される。
好ましくは、コンピュータを、任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、追跡のための管理データを取得する管理データ取得部、追跡対象の製品に関するデータであって前記製品毎に付与された前記製品の製造時刻に関する情報を含む追跡対象データを取得する追跡対象データ取得部、追跡対象の製品の梱包に関わる梱包容器を特定する梱包容器特定部、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、を備え、追跡のための前記粒度は、製造ロット、搬送具及び梱包容器のうちの少なくとも1種以上であり、前記管理データは、前記製造ロットにおいて前記梱包容器に梱包された製品数、前記梱包容器毎に付与される梱包容器識別情報及び前記搬送具毎に付与される情報であって搬送の際の状況に基づいて前記梱包容器識別情報に対応付けられた搬送具識別情報を含み、前記梱包容器識別情報は、追跡対象の製品を含む複数の製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割した場合に、それぞれの区間内で製造された複数の製品を梱包する前記梱包容器毎に付与されており、前記梱包容器特定部は、前記追跡対象データおよび前記管理データを参照して、追跡対象の前記製品の製造時刻及び前記梱包容器に梱包された製品数に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器に付与された前記梱包容器識別情報を特定し、前記搬送具特定部は、前記梱包容器識別情報及び前記管理データを参照して、搬送の際の状況に基づいた対応関係に基づいて、追跡対象の前記製品が梱包された前記梱包容器を搬送していた前記搬送具に付与された前記搬送具識別情報を特定すし、前記製造時刻に関する情報は、前記製品の製造時刻、前記製品が製造されたロットを識別するための情報及び前記梱包容器識別情報のうちの少なくとも1つを含むトレーサビリティ管理装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】製品を工場で製造してから搬送するまでのフロー及び各工程において作成されるデータの説明図である。
【
図2】トレーサビリティ管理装置の機能ブロック図及び全体のシステムを表す図である。
【
図3】ロット毎に作成するデータについての図であり、(a)1ロットで製造されたボトルとダンボールに詰める時間について、(b)はロットデータの中身を表す図である。
【
図4】QRコード及びパレットIDとの対応付けを説明する図であり、(a)はダンボールに付加されるQRコードの中身を、(b)はパレットIDとQRIDの対応付けを表す図である。
【
図6】ボトルが詰められたダンボールにQRコードが付加される様子を表す図である。
【
図7】搬送用のパレットに複数のダンボールが搭載された図である。
【
図9】製品と搬送具の対応を特定するフローを表す図であり、(a)は製品を起点に搬送具を特定するフロー、(b)は搬送具を起点に製品を特定するフローを表す図である。
【
図10】回収範囲の判定処理についての図であり、(a)は回収範囲を判定するフロー、(b)はパレットに搭載したダンボールの内訳について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。
【0013】
<1.第1実施形態>
第1実施形態のトレーサビリティ管理装置1は、ある製造ロットにおいて製造された製品である醤油ボトル(以下、ボトル5)が順に詰められた梱包容器(以下、ダンボール7)に対して付与されたIDと、複数の梱包容器が搭載された搬送具(以下、パレット11)に付与されたIDと、を対応付けることで、製造ロット内における特定の時間帯に製造された製品を特定するものである。
【0014】
図1は、製品を工場で製造してから搬送するまでのフロー及び各工程において作成されるデータの説明図である。まず、S11で製品を製造する。本実施形態では工場でボトル5が大量に製造される。このとき、各製造年月日を記載したラベルをボトル5に貼り付ける。併せて、ボトル5に製造年月日をレーザー刻印してもよい。そして、製造年月日(製造時刻)を表すデータを後述の製造時刻記憶部209に記憶する。
【0015】
次に、S13にてボトル5をダンボール7に詰めるとともに、ダンボール7にQRコード9を付加する。QRコード9は種々の情報を含む2次元コード画像であり、ダンボール7に直接印刷されてもよく、QRコード9が印刷されたラベルをダンボール7に貼り付けてもよい。このとき、QRコード9に自身を識別するIDを表すデータ(以下、QRID)を含ませる。本実施形態では、ボトル5を10本ずつダンボール7に詰めるものとし、QRIDは、ダンボール7に詰められたボトル5が製造されたロット内でユニークな連続番号とする。これにより、同じロットにて製造されたボトル5が詰められたダンボール7はQRIDによりそれぞれ区別される。なお、QRコード9でなくとも、QRIDを含められるものであれば種々の2次元コードであればよい。
【0016】
次に、ボトル5が10本ずつ詰められたダンボール7をパレット11に搭載する(S15)。搭載量は搬送先により搬送量が異なるためまちまちであるが、例えば10箱、30箱、50箱ほど搭載する。このとき、パレット11には自身を識別するIDを表すデータ(以下、パレットID)を含んだバーコード13を付加するとともに、後述するシステムにより、パレット11のパレットIDと、パレット11に搭載されたダンボール7のQRIDとを対応付けて記憶する。
【0017】
次に、パレット11を搬送し、各搬送先へと届ける。このとき、搬送したパレット11毎に、搬送日、ロット番号、パレットID、倉庫エリア、倉庫ロケーション、搬送指示番号、納入日、届出先名称、納入先、搬送数量、金額及び担当課を対応付けて記憶する。
【0018】
図2は本実施形態のトレーサビリティ管理装置1の機能ブロック図及び全体のシステムを表す図である。本実施形態では、ネットワーク4を介してトレーサビリティ管理装置1、ダイレクトマーキング装置2及びパレットラベル出力装置3が互いに通信可能となっている。
【0019】
<トレーサビリティ管理装置1>
トレーサビリティ管理装置1は、CPU等から構成されて各部を制御するとともに種々のプログラムやエンジンを実行する制御部10と、メモリ、ハードディスク、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の記憶媒体から構成され、種々のデータを記憶する記憶部20と、トレーサビリティ管理装置1を操作するためのタッチパネルやキーボード、音声入力部等で構成される操作部30と、文字、画像、動画等の情報を表示するディスプレー等の表示部40と、インターネットやイントラネット等のネットワークに接続され、外部の情報端末と通信する通信部50とを備える。制御部10は、記憶部20、操作部30、表示部40及び通信部50とそれぞれ通信し、これらを制御する。
【0020】
<制御部10>
ロットID管理・生成部101は、ロット毎に自身を識別するIDを表すデータ(以下、ロットID)、製造開始時刻、製造終了時刻、製造所要時間、製造されるボトル5の数、製造されるボトル5がダンボール7に詰められる数、ダンボール7の1つ当たりに詰められるボトル5を製造するのに要する時間及びボトル5の製品コードを対応付けたデータを生成し、ロットIDを管理する。
【0021】
QRID管理・生成部103は、QRコード9が表す情報として、ボトル5が製造されたロットのロットID、製造年月日、QRID、製品コード、賞味期限を対応付けたデータを生成し、QRIDを管理する。
【0022】
QR・パレット対応付部107は、パレットに付加されるバーコード13が表すパレットIDを表すデータを生成し、パレットIDを管理するパレットID管理・生成部105と、パレットID及び当該パレットIDに対応するパレット11に搭載されたダンボール7に対応するQRIDを対応付けたデータを生成する。
【0023】
送受信部109は、制御部10内の各部、操作部30、表示部40、通信部50及び記憶部20の各部とデータの送受信を行う。
【0024】
第1梱包容器特定部111は、ボトル5の製造時刻及びダンボール7に詰められたボトル5の数に基いて、ボトル5が詰められたダンボール7に付加されたQRIDを特定する。
【0025】
搬送具特定部113は、第1梱包容器特定部111により特定されたQRIDと対応するパレットIDを、QR・パレット対応付部107が生成したデータを参照して特定する。
【0026】
第2梱包容器特定部117は、パレット11に付されたパレットIDと対応するQRIDを、QR・パレット対応付部107が生成したデータを参照して特定する。
【0027】
製品特定部119は、第2梱包容器特定部117により特定されたQRIDが付加されたダンボール7に詰められたボトル5の製造時刻を特定する。
【0028】
判定部121は、回収対象とする範囲を判定する。
【0029】
コントローラ115は、制御部10内の各部を制御するプログラムである。
【0030】
<記憶部20>
ロットデータ記憶部201は、ロットID管理・生成部101が生成したデータを記憶する。QRID記憶部203は、QRID管理・生成部103が生成したデータを記憶する。パレットID記憶部205は、パレットID管理・生成部105が生成したデータを記憶する。QR・パレット記憶部207は、QR・パレット対応付部107が生成したデータを記憶する。製造時刻記憶部209は、
図1のS11における製品の製造時刻を記憶する。
【0031】
<ダイレクトマーキング装置2>
ダイレクトマーキング装置2は、ボトル5が詰められ、コンベアを流れているダンボール7に対して、コンベアの流れを止めることなくQRIDを付加する装置である。内部に図示しない制御部及び通信部を含み、ネットワーク4を介して接続されるトレーサビリティ管理装置1のQRID管理・生成部103が生成したデータを受信してQRコード9を生成し、ダンボール7に付加する。このとき、QRIDは詰められるボトル5が製造されたロット内でユニークな番号であるので、あるロット内ではダンボール7が異なればQRIDも異なる。
【0032】
<パレットラベル出力装置3>
パレットラベル出力装置3は、QRコード9が付加されたダンボール7が搭載されるパレット11に対して、パレットIDを付加する装置である。通信部31、パレットラベル出力部33及び図示しない制御部を含み、ネットワーク4を介して接続されるトレーサビリティ管理装置1のパレットID管理・生成部105が生成したデータを受信してバーコード13を生成し、パレット11に付加する。このとき、パレットラベル出力部33がバーコード13を含むラベルを出力する。なお、かかるラベルはパレット11に人手で貼り付けてもよいし、機械により自動で貼り付けてもよい。
【0033】
<ロットデータ>
図3はロットID管理・生成部101が生成し、ロットデータ記憶部201に記憶されるデータを表す図であり、(a)はロットとダンボール7にボトル5を詰める時間の関係を、(b)はロットデータ記憶部201に記憶されるデータを表す図である。
【0034】
図3(a)及び(b)に示されるように、例えば製造ロット番号(ロットID)「ao5y3lw」で表されるロットは、製造開始時刻が「2015/4/10 10:00」であり、製造終了時刻が「2015/4/10 12:00」であり、製造に要した所要時間が「2時間」であり、ロット内におけるボトル5の製造本数が「10,000本」であり、製造されたボトル5が詰められるダンボール7の数が「1,000箱」(1箱のダンボール7につき10本のボトル5を詰める場合)であり、製造されたボトル5の製品コードが「bqz8s01」である。
【0035】
図3(a)に示したように、2時間(=7,200s)で10,000本のボトル5が製造されており、これらが1,000箱のダンボール7に詰められることになる。したがって、1箱のダンボール7に詰められるボトル5を製造するのに要する時間は「7.2s(=7,200/1,000)」である。そして、QRID管理・生成部103が、所要時間の2時間を1,000個の区間(1区間当たり7.2s)で分割し、区間毎にユニークなQRIDを生成する。本実施形態では、第1区間の間に製造された10本のボトル5が詰められるダンボール7に対してQRID「00001」を、第2区間の間に製造された10本のボトル5が詰められるダンボール7に対してQRID「00002」を、というように規定する。
【0036】
このようにして求めた「1ハコ当たり所要時間」も含め、ロットID管理・生成部101は
図3(b)のようなデータを生成し、ロットデータ記憶部201に記憶する。
【0037】
<QRコード及びパレットIDとの対応付け>
図4はQRコード9及びパレットIDとの対応付けを説明する図であり、(a)はQRコード9の内容を、(b)はパレットIDとQRIDの対応付けを表す図である。
【0038】
図4(a)に示されるように、ダンボール7に印刷されるQRコード9には、詰められるボトル5が製造されたロットを表す「製造ロット(ロットIDに相当)」、ボトル5の製造年月日、「シリアルID(QRIDに相当)」、ボトル5の製品の種類を表す製品コード及びボトル5の賞味期限が含まれる。本実施形態では、QRコード9にはボトル5の「製造時間」までは入れていない。これは、ボトル毎の製造時間をリアルタイムで反映させてQRコード9を生成するためにはダイレクトマーキング装置2にかかる負荷が大きくなり、その結果コンベアの速度を低下させる必要が生じるので、ロット内において製品の製造に要する所要時間が伸びてしまい、生産性が低下するためである。このようなデータをQRID管理・生成部103が生成し、QRID記憶部203に記憶する。
【0039】
パレットID管理・生成部105によりパレット11毎にパレットIDが生成され、かかるパレットIDが含まれるバーコード13がパレット11に付加される。そして、
図1のS17のときに、パレット11と搭載されたダンボール7を対応付けるために、QR・パレット対応付部107により
図4(b)のようなデータが生成され、QR・パレット記憶部207に記憶される。なお、本実施形態では、パレットID「001」で特定されるパレット11にはQRID「00001」〜「00050」で特定される50箱のダンボール7が搭載され、パレットID「002」で特定されるパレット11にはQRID「00051」〜「00095」で特定される45箱のダンボール7が搭載され、パレットID「003」で特定されるパレット11にはQRID「00096」〜「00140」で特定される45箱のダンボール7が搭載される。
【0040】
<ボトル>
図5は、
図1のS11において製造されたボトル5を表す図である。ボトル5にはそれぞれ製造された時刻が記載されたラベルが貼られ、レーザー刻印によりボトル5本体にも刻まれる。これは、消費者がラベルを剥がした状態のボトル5が不良品として送られてきた場合でも、確実にボトル5の製造時刻を特定するためである。なお、ラベルについては図示しないが、製造時刻以外にも商品名や賞味期限等、種々の情報が含まれる。本実施形態では、製造時刻を1秒単位(小数点未満は切り捨て)でラベルに印字しており、かかる製造時刻を表すデータを
図1のS11にて製造時刻記憶部209に記憶する。なお、製造時刻の記録の仕方は上記方法に限られず、5秒単位、10秒単位等適宜調整される。また、製造時刻に関する情報として、時刻そのものでなく、ロットの区分を表す情報やQRIDを表す情報であってもよい。
【0041】
<ダイレクトマーキング>
図6は、
図1のS13においてボトル5が詰められたダンボール7にQRコード9が付加されるときの図である。ダンボール7はベルトコンベア15上で移送され、脇に設けられたダイレクトマーキング装置2により順次QRコード9が付加される。このとき、ダイレクトマーキング装置2はネットワーク4を介して接続されるトレーサビリティ管理装置1からデータを受信し、ダンボール7毎に異なるQRIDを含んだQRコード9を生成する。
【0042】
<パレットへの搭載>
図7は、
図1のS15においてパレット11に複数のダンボール7が搭載された様子を表す図である。そして、
図1のS17においてパレット11にパレットIDを表すバーコード13が付加される。パレット11への搭載時において、現場の作業者がコードリーダー等で光学的にパレット11のバーコード13及びそのパレット11に搭載された複数のダンボール7に付加されたQRコード9を読み取り、読み取られたデータをトレーサビリティ管理装置1に送信することで、QR・パレット対応付部107が
図4(b)のようなデータを生成する。又は、パレット11毎に定められた、パレット11に搭載するダンボール7の箱数を利用し、QR・パレット対応付部107が自動的に生成するとしてもよい。例えば、本実施形態では先に製造されたダンボール7から先に搬送する、いわゆる「先入れ先出し」を採用しているため、パレットID「001」のパレット11には50箱、パレットID「002」のパレット11には45箱、パレットID「003」のパレット11には45箱、と予めトレーサビリティ管理装置1に入力しておくと、箱数に基いてQRIDを順次パレットIDに対応付けることができる。
【0043】
<ボトルの流通>
図8は、
図1のS19においてボトル5の流通を概念的に表す図である。パレットID「001」及び「002」のパレット11は卸業者Xへ搬送され、そこからスーパーa,b及びコンビニc,dへ流れていく。パレットID「003」〜「005」のパレット11は卸業者Yへ搬送され、そこからそば屋e及びラーメン屋fに流れていく。このとき、上述のように、作業者により搬送したパレット11毎に届出先名称等を履歴データとして記憶し、トレーサビリティ管理装置1に送信しておく。なお、卸業者を介さずに直接大手スーパー等に搬送してもよい。
【0044】
<ボトルとパレットの対応特定フロー>
図9はボトル5とパレット11の対応を特定するフローを表す図であり、(a)はボトル5を起点にパレット11を特定するフロー、(b)はパレット11を起点にボトル5を特定するフローを表す図である。例えば、消費者から品質に問題があるとしてボトル5が郵送されてきたとする(S21)。そして、ボトル5に記録された製造時刻を元にしてロットを特定し、原因を究明する。これは、
図3(b)のロットデータを参照することで可能である。そして、品質に問題が生じた原因がロット全体に影響する場合(S23:NO)は、従来のようにロット全体の回収を進める(S29b)。品質に問題が生じた原因がロット内の特定の1又は複数の時間帯(区間)にのみ及ぶ場合(S23:YES)、不良品のボトル5に記録された製造時刻から、かかるボトル5が詰められたダンボール7に付加されたQRIDを第1梱包容器特定部111が特定する(S25)。本実施形態では、不良品として郵送されてきたボトル5が製造された区間に製造されたボトル5にのみ品質に問題が生じた場合(かかる時間帯に水漏れが発生していた等)、かかるボトル5が出荷されたパレット11に搭載されたボトル5に広く品質に問題が生じた場合(パレット11にネズミが入り込んでいた等)又はかかるボトル5を載せた搬送車により搬送されたボトル5に広く品質に問題が生じた場合(搬送車によるトラブルでボトル5が高温環境に長時間放置された等)を想定している。
【0045】
図3を参照すると、例えば製造時刻が「2015/4/10 10:10」であった場合、ロットでの製造開始から10分(600s)後に製造されたボトル5であると特定できる。そうすると、「1ハコ当たり所要時間」が「7.2s」であるので、「600/7.2=83.3・・・」より、84個目のダンボール7、すなわちQRIDが「00084」であるダンボール7に詰められたことが分かる。換言すると、
図3(a)のように1,000個に分割された区間のうち、第84区間においてダンボール7に詰められたものである。つまり、第1梱包容器特定部111が製造時刻記憶部209及び前記ロットデータ記憶部201を参照し、QRIDを特定する。
【0046】
次に、特定されたQRIDが付されたダンボール7が搭載されたパレット11を搬送具特定部113が特定する(S27)。
図4を参照すると、QRID「00084」が付加されたダンボール7はパレットID「002」のパレット11に搭載されたことが分かる。つまり、搬送具特定部113は、特定されたQRID及び前記QR・パレット記憶部記憶部209を参照し、パレットIDを特定する。
【0047】
次に、
図8より、パレットID「002」のパレット11が搬送された先は卸業者Xであることが特定できるので、卸業者Xと協力し、各スーパー及びコンビニへ回収の旨を伝える(S29a)。なお、S29の詳細については後述する。
【0048】
このようにして、不良品として受け取ったボトル5を起点とし、かかるボトル5に生じた問題が特定の区間でのみ生じたものであった場合には、ボトル5の製造時刻より当該ボトル5が詰められたダンボール7に付加されたQRIDを特定し、それにより対応するパレットIDを特定することが可能となるため、従来のようにロット全体で回収することなく、同一ロット内でも真に回収が必要なもののみをパレット11単位で特定することができる。
【0049】
次に、
図9(b)について説明する。ある卸業者、例えば、
図8の卸業者Yから、ある特定の日に搬送された製品の品質に問題があるとして報告されたとする(S31)。そして、卸業者Yに搬送したパレット11に付加されたパレットID「003」〜「005」(
図8参照)をのうち、上記特定の日に搬送したパレット11に付加されたパレットIDは「003」であったとする。これは、
図1のS19において記憶された、パレットIDと搬送先が対応付いたデータを参照して特定される。そして、パレットID「003」を元に、かかるパレット11に搭載されたダンボール7に付加されたQRIDを第2梱包容器特定部117が特定する(S33)。
図4を参照すると、QRID「00096」〜「00140」であると分かる。
【0050】
次に、特定されたQRIDが付加されたダンボール7に詰められたボトル5の製造時刻を製品特定部119が特定する(S35)。QRID「00096」〜「00140」とは、第96区間〜第140区間の間に製造されたボトル5が詰められたダンボール7であるので、「第96区間の開始時刻=10:00 + 96× 7.2 =10時11分31秒」、「第140区間の製造終了時刻=10:00 + 141× 7.2=10時16分51.2秒」と計算できる。
【0051】
次に、かかる時間帯に製造されたボトル5とその他の時間帯に製造されたボトル5について、図示しない品質管理システムに記憶されたデータを比較し、合わせて製造現場に設けられた防犯カメラや各種のセンサー等を利用し、原因を究明する。そして、かかる原因がロット全体に影響する場合(S37:No)、従来のようにロット全体の回収を進める(S39b)。一方、原因が第96区間〜第140区間のみに影響する場合(S37:Yes)、卸業者Yと協力し、そば屋e及びラーメン屋fへ回収の旨を伝える(S39a)。このとき、パレット11「003」に対応するボトル5のみを特定できればその範囲で回収するが、パレットID「003」〜「005」に対応するボトル5が混ざってしまい特定できない場合は、それらを全て回収する。なお、原因究明の結果、パレットID「003」が付加されたパレット11を搬送した搬送車にトラブルが生じ、パレット11が長時間搬送車に放置されたことによりボトル5に詰められた製品の品質に問題が生じたことが判明した場合にも、パレットID「003」に対応するボトル5のみを回収対象とする。
【0052】
このようにして、不良品として受け取ったボトル5が搬送されたパレット11を起点とし、かかるパレット11に搭載された他のボトル5の製造時刻を特定し、問題の原因がロット内における特定の区間にのみ影響するか全体に影響するかの判断に役立つ。これにより、問題の原因が特定の区間のみに影響するものであった場合、従来のようにロット全体で回収することなく、同一ロット内でも真に回収が必要なもののみをパレット11単位で特定することができる。
【0053】
<回収範囲>
次に、不良品の回収範囲を判定する処理について、
図10を用いて説明する。
図10(a)は回収範囲を判定するフローであり、(b)はパレット11に搭載されたダンボール7の内訳を示す図である。かかる処理は、
図2の判定部121により実行される。具体的には、
図9のS29aにおける回収範囲を判定する処理であり、特定の区間(時間帯)に製造されたボトル5にのみ品質に問題が生じた場合、つまり、あるダンボール7(以下、対象ダンボール)に詰められたボトル5にのみ品質に問題が生じた場合について説明する。
【0054】
図8及び
図9の例では、パレットID「002」のパレット11が搬送されたのは卸業者Xのみであったが、同じパレット11に卸業者A社、B社及びC社に搬送するボトル5を搭載してそれぞれに搬送したとする。そして、不良品として回収されたボトル5を元に原因を究明し、QRID「0201」〜「0240」のダンボール7(対象ダンボール)に詰められたボトル5に品質不良が生じていたとする。このようなケースでは、まずS41において、判定部121が履歴データからパレット11の搭載内訳を取得する。例えば、
図10(b)に示すように、パレットID「008」のパレット11にはQRID「00195」〜「00270」の76のダンボール7が搭載されたというデータである。
【0055】
次に、S43において、対象ダンボールのQRIDをもとに、各ダンボール7の搬送先を特定する。
図10(b)より、対象ダンボールはA社及びB社へ搬送されたことを特定できる。そして、S45にてA社及びB社を回収範囲と判定し、結果を表示部40に出力する。
【0056】
このように、従来のようなロット単位でなく、パレット単位で製品を追跡でき、さらに、搬送先まで加味して回収範囲を判定することができる。これにより、製品の回収を極めて効率的に行うことができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態のようなトレーサビリティ管理装置1を含むシステムを有する工場Aに、第1実施形態のようなトレーサビリティ管理装置1を含むシステムを有さない、具体的にはダンボール7に付加するQRIDは生成できるが、QRIDとパレットIDの対応付け機能を有さない工場Bで製造されたボトル5を集め、これらをまとめて搬送する場合おける例である。
【0058】
工場Bはかかる対応付け機能を有さないため、工場Bで製造されたボトル5が工場Aに搬送された時点では
図4(b)のようなデータは生成できていない。そこで、
図1のS17に変えて、
図7のパレット11にバーコード13に加え、パレット11に搭載されているダンボール7に付加されたQRIDが含まれたQRコード9をさらに付加する。そして、作業者がコードリーダー等でバーコード13及びQRコード9をまとめて読み取ることで、
図4(b)のようなデータを生成する。このとき、QRコード9に含まれる情報は、搭載される全てのダンボール7に付加されたQRIDでもよく、搭載されるダンボール7に付加されたQRIDのうち最も番号が若いものと搭載されたダンボール7の数を合わせたものでもよい。
【0059】
これにより、トレーサビリティ管理装置1を含むシステムを有さない工場Bで製造されたボトル5でっても、第1実施形態と同様にQRIDとパレットIDを対応付けることができるので、パレット11単位でボトル5を追跡することが可能となる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、異なる種類の製品であるボトル5a(例えば醤油)が詰められたダンボール7aと、ボトル5b(例えばポン酢)が詰められたダンボール7bが1つのパレット11に搭載された例である。
【0061】
第1実施形態の
図4(b)とは異なり、パレットID「001」が付加されたパレット11には、QRID「00001」〜「00030」が付加されたダンボール7aが30本、QRID「00001」〜「00020」が付加されたダンボール7bが20本混ざって搭載されたとする。ここで、QRID「001」に対応するボトル5aが製造されたロットと、QRID「001」に対応するボトル5bはそれぞれ製造されたラインが異なるため、QRIDが同じでも互いに区別することができる。
【0062】
そして、第1実施形態と同様に、例えば消費者から不良品として醤油(ボトル5a)が郵送されてきた場合には、
図9(a)のフローに従ってかかるボトル5aが搭載されたパレット11を特定でき、また、消費者から不良品としてポン酢(ボトル5b)が郵送されてきた場合にも同様にボトル5bを特定することができる。これは、ロット内でユニークなQRIDをダンボール7a及び7bに付加し、それぞれが搭載されるパレット11に付加されるパレットIDと対応付けることで可能となるものである。なお、
図4(b)のフローについても同様に可能である。
【0063】
このように、複数の種類の製造が詰められたダンボール7が1つのパレット11に搭載される、いわゆる「混載」のときにおいても、ロット単位でなくパレット11単位でボトル5に対応するパレット11を特定でき、また、逆にパレット11に対応するボトル5を特定することができる。
【0064】
以上、本発明の第1実施形態〜第3実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、QRコード9及びバーコード13に替えて、これらに相当する情報が含まれたICチップをダンボール7及びパレット11に付加し、チップリーダー等により電磁的に情報を収集してもよい。また、
図2のトレーサビリティ管理装置1のうち、記憶部20を外部のサーバーに設け、制御部10とネットワーク4を介して通信する構成としてもよい。さらに、パレットラベル出力装置3として、トレーサビリティ管理装置1が生成したバーコード13を表すデータを印刷できるラベルプリンタを利用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1:トレーサビリティ管理装置、10:制御部、101:ロットID管理・生成部、103:QRID管理・生成部、105:パレットID管理・生成部、107:QR・パレット対応付部、109:送受信部、111:第1梱包容器特定部、113:搬送具特定部、115:コントローラ、117:第2梱包容器特定部、119:製品特定部、121:判定部、20:記憶部、201:ロットデータ記憶部、203:QRID記憶部、205:パレットID記憶部、207:QR・パレット記憶部、209:製造時刻記憶部、30:操作部、40:表示部、4:ネットワーク、5:ボトル、7:ダンボール、9:QRコード、11:パレット、13:バーコード
【手続補正書】
【提出日】2015年12月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部と、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部と、
(3)前記製品の製造時刻、前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数及び前記第2データに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第1データに基いて、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置。
【請求項2】
旧請求項3
前記特定された前記搬送具に搭載された前記梱包容器に関する情報を取得し、回収対象とすべき範囲を判定する判定部
を有する請求項1に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項3】
旧請求項4
前記判定部により回収対象と判定された範囲を出力する出力部
を有する請求項2に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項4】
旧請求項5
前記梱包容器識別番号は、
前記梱包容器に梱包される前記製品が製造された前記製造ロット内において固有の番号である、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置
【請求項5】
旧請求項6
前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号が対応付いていない場合において、前記梱包容器識別番号を表すデータ又は前記製造ロット、前記製造ロットにて製造された製品を識別するための情報を表すデータが含まれる第1コード画像及び前記搬送具識別番号を表すデータが含まれる第2コード画像を前記搬送具に貼り付け、前記貼り付けられた前記第1コード画像及び前記第2コード画像を読み取ることで、前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号を対応付ける読取コード対応付部、
を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項6】
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部と、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部と、
(3)前記第1受信部により受信された前記第1データに基づいて、トレース対象となる前記搬送具識別番号に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第2データに基づいて、前記梱包容器識別番号が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間において製造された前記製品を特定する製品特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部、
(3)前記製品の製造時刻、前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数、前記第1データ及び前記第2データに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部、及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第1データに基いて、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置として機能させるためのプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2016年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部と、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部と、
(3)前記製品の製造時刻、前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数及び前記第2データに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第1データに基いて、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置。
【請求項2】
前記特定された前記搬送具に搭載された前記梱包容器に関する情報を取得し、回収対象とすべき範囲を判定する判定部
を有する請求項1に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項3】
前記判定部により回収対象と判定された範囲を出力する出力部
を有する請求項2に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項4】
前記梱包容器識別番号は、
前記梱包容器に梱包される前記製品が製造された前記製造ロット内において固有の番号である、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項5】
前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号が対応付いていない場合において、前記梱包容器識別番号を表すデータ又は前記製造ロット、前記製造ロットにて製造された製品を識別するための情報を表すデータが含まれる第1コード画像及び前記搬送具識別番号を表すデータが含まれる第2コード画像を前記搬送具に貼り付け、前記貼り付けられた前記第1コード画像及び前記第2コード画像を読み取ることで、前記梱包容器識別番号と前記搬送具識別番号を対応付ける読取コード対応付部、
を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトレーサビリティ管理装置。
【請求項6】
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部と、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部と、
(3)前記第1受信部により受信された前記第1データに基づいて、トレース対象となる前記搬送具識別番号に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第2データに基づいて、前記梱包容器識別番号が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間において製造された前記製品を特定する製品特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
任意の粒度で製品の追跡を行うトレーサビリティ管理装置であって、
(1)製品を製造する単位である製造ロットに要する時間を複数の区間に分割し、前記区間内で製造された複数の製品毎に梱包された梱包容器毎に付与される梱包容器識別番号及び前記複数の梱包容器が搭載された搬送具毎に付与される搬送具識別番号に対応付いた第1データを受信する第1受信部、
(2)前記製造ロットの開始時刻、終了時刻又は所要時間のうち少なくとも2つを表す第2データを取得する第2受信部、
(3)前記製品の製造時刻、前記製品が前記梱包容器に梱包された製品数、前記第1データ及び前記第2データに基づいて、前記製品の製造時刻が前記複数の区間のいずれに属するかを求め、前記区間に対応する前記梱包容器識別番号を特定する梱包容器特定部、及び
(4)前記梱包容器特定部により特定された前記梱包容器識別番号及び前記第1データに基いて、追跡対象の製品の搬送に関わる搬送具を特定する搬送具特定部、
を有するトレーサビリティ管理装置として機能させるためのプログラム。