【課題】第1の方式のみに対応する位置検出装置と第2の方式のみに対応する位置検出装置とを並べて使用する場合において、スタイラス側で、方式切り替えの要否を判定できるようにする。
【解決手段】本発明によるアクティブスタイラスは、センサ30との間で形成される静電容量を介し送信信号をセンサコントローラ31に対して送信するスタイラス2であって、芯体20と、芯体20の近傍に設けられた電極21と、所定の入力の検出に応じて第1のモードで動作するか第2のモードで動作するかを選択し、第1のモードが選択された場合にパルス列信号である第1の送信信号を送信する第1のモードで動作し、第2のモードが選択された場合に正弦波信号である第2の送信信号を送信する第2のモードで動作し、所定の入力の検出を繰り返し実行する、信号処理部24とを備える。
前記信号処理部は、前記第1のモードでの動作中において、前記第1の送信信号を間欠的に送信する一方、前記第1の送信信号を送信していないときに前記電極を用いて位置検出装置が送信した信号の検出動作を行い、前記信号の検出結果に応じて前記第2のモードへの切り替えの要否を判定する
請求項1又は2に記載のアクティブスタイラス。
前記信号処理部は、前記第1のモードでの動作中において、所定の第1の周期で前記第1の送信信号を間欠的に送信するとともに、該第1の周期で前記第2のモードへの切り替えの要否を判定するよう構成される
請求項3に記載のアクティブスタイラス。
前記信号処理部は、前記第2のモードでの動作中において、前記第2の送信信号を間欠的に送信する一方、前記第2の送信信号を送信していないときに前記電極を用いて位置検出装置が送信した信号の検出動作を行い、前記信号の検出結果に応じて前記第1のモードへの切り替えの要否を判定する
請求項3に記載のアクティブスタイラス。
前記信号処理部は、前記第2のモードでの動作中に当該アクティブスタイラスが使用中であるか否かを判定し、使用中でないと判定した場合に、前記所定の入力の検出動作を行う
請求項1に記載のアクティブスタイラス。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、スタイラス2と、位置検出装置3とを備えて構成される。
【0020】
スタイラス2は、位置検出装置3に対してダウンリンク信号DSを送信する機能と、位置検出装置3が送信するアップリンク信号USを受信する機能とを備える位置指示器である。スタイラス2が送信するダウンリンク信号DSには、形式の異なる2種類のダウンリンク信号DS1,DS2(第1及び第2の送信信号)が含まれる。後述する
図9に示すように、ダウンリンク信号DS1は、無変調のパルス列信号であるバースト信号d1Bと、パルス列信号を変調してなるデータ信号d1Dとを含む信号である。ダウンリンク信号DS1の具体的な例としては、特許文献3記載の変調方式や、相互容量方式のタッチパネルの送信電極に供給されるパルス列信号と同じように、あるいは、相関をもってスタイラスからパルス列信号を送信する方式によるダウンリンク信号が挙げられる。また、ダウンリンク信号DS2は、無変調の正弦波信号であるバースト信号d2Bと、正弦波信号を変調してなるデータ信号d2Dとを含む信号である。ダウンリンク信号DS2の具体的な例としては、例えばアクティブES(商標)方式で用いられるダウンリンク信号が挙げられる。
【0021】
スタイラス2は、
図1に示すように、芯体20、電極21、筆圧検出部22、スイッチ23、信号処理部24、及び電源25を有して構成される。
【0022】
芯体20は、その長手方向がスタイラス2のペン軸方向と一致するように配置される棒状の部材であり、スタイラス2のペン先を構成する。芯体20の先端部の表面には導電性材料が塗布され、電極21を構成している。芯体20の後端部は、筆圧検出部22に当接される。筆圧検出部22は、位置検出装置3のタッチ面3a(後述)等にスタイラス2のペン先を押し当てたときに芯体20の先端に加わる圧力(芯体20に加えられた筆圧)に応じた筆圧レベル(後述する
図4等に示す筆圧レベルP)を検出するもので、具体的な例では、筆圧に応じて静電容量の変化する可変容量モジュールにより構成される。
【0023】
電極21は、芯体20の近傍に設けられる導電体であり、配線により信号処理部24と電気的に接続されている。信号処理部24がダウンリンク信号DSを電極21に供給すると、電極21には、供給されたダウンリンク信号DSに応じた電荷が誘導される。これにより、後述するセンサ30内の静電容量に変化が生じ、位置検出装置3は、この変化を検出することによりダウンリンク信号DSを受信する。また、位置検出装置3が送信しているアップリンク信号USが電極21に到来すると、電極21には、到来したアップリンク信号USに応じた電荷が誘導される。信号処理部24は、こうして電極21に誘導された電荷を検出することにより、アップリンク信号USを受信する。
【0024】
スイッチ23は、例えばスタイラス2の筐体の側面に設けられたサイドスイッチであり、ユーザによる操作を受け付け可能に構成された入力部として機能する。具体的には、ユーザによる操作の状態(押下状態)に応じて、後述する
図4等に示すスイッチ情報SWを出力するよう構成される。スイッチ情報SWは、例えばオンとオフの2つの状態のいずれか一方を示す情報である。
【0025】
信号処理部24は、位置検出装置3が送信するアップリンク信号USを電極21を介して受信する機能と、ダウンリンク信号DS(ダウンリンク信号DS1,DS2)を生成し、位置検出装置3に向け、電極21を介して送信する機能とを有する。なお、アップリンク信号USは、後述するようにコマンドを含む場合がある。その場合における信号処理部24は、受信したアップリンク信号USを復調及び復号することによってコマンドを取得し、取得したコマンドに従ってダウンリンク信号DSの生成を行う。
【0026】
電源25は、信号処理部24に動作電力(直流電圧)を供給するためのもので、例えば円筒型のAAAA電池により構成される。
【0027】
位置検出装置3は、
図1に示すように、タッチ面3aを構成するセンサ30と、センサコントローラ31と、これらを含む位置検出装置3の各部を制御するシステムコントローラ32とを有して構成される。
【0028】
センサコントローラ31は、スタイラス2が送信するダウンリンク信号DSをセンサ30を介して受信する機能と、スタイラス2に向け、センサ30を介してアップリンク信号USを送信する機能とを有する。
【0029】
図1には位置検出装置3を1つしか示していないが、センサコントローラ31には、ダウンリンク信号DS1を受信できるがダウンリンク信号DS2は受信できないタイプのもの(上述した第1の方式のみに対応する位置検出装置3)と、ダウンリンク信号DS2を受信できるがダウンリンク信号DS1は受信できないタイプのもの(上述した第2の方式のみに対応する位置検出装置3)とがある。本実施の形態によるスタイラス2は、これらの位置検出装置3の両方を並べて使用する場合において、
図4〜
図9を参照して後述する交互送信方式よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラス2を持ち替えなくて済むように構成されている点に特徴を有する。
【0030】
図2は、位置検出システム1の使用状態の一例を示す図である。同図には、それぞれ
図1に示した位置検出装置3である2種類の位置検出装置3A,3Bが1つの机の上に並べて配置され、1人のユーザが1本のスタイラス2を用いて、位置検出装置3Aに絵を、位置検出装置3Bに文章をそれぞれ入力する例を示している。本発明は、このような場合に効果を発揮する。なお、
図2の例では、位置検出装置3A,3Bはそれぞれアクセスポイント5を介して図示しないサーバに接続されており、サーバでは、位置検出装置3Aに入力された絵と、位置検出装置3Bに入力された文章とが1つの文書として統合される。
【0031】
図3は、位置検出装置3の構成を示す図である。同図は上述した2つのタイプの位置検出装置3の構成をまとめて示したもので、アップリンク信号USの送信に関する部分は、ダウンリンク信号DS2を受信できるタイプの位置検出装置3に特有の構成である。言い換えれば、ダウンリンク信号DS2を受信できないタイプの位置検出装置3はアップリンク信号USの送信機能を有しない。
【0032】
図3に示すように、センサ30は複数の線状電極30Xと複数の線状電極30Yとがマトリクス状に配置された構成を有しており、これら線状電極30X,30Yによってスタイラス2と容量結合する。このセンサ30は、スタイラス2だけでなく指の検出にも使用される。また、センサコントローラ31は、送信部60、選択部40、受信部50、ロジック部70、及びMCU80を有して構成される。
【0033】
送信部60は、
図1に示したアップリンク信号USを送信するための回路である。具体的には、パターン供給部61、スイッチ62、拡散処理部63、符号列保持部64、及び送信ガード部65を含んで構成される。なお、このうち特にパターン供給部61に関して、本実施の形態では送信部60内に含まれるものとして説明するが、MCU80内に含まれることとしてもよい。
【0034】
パターン供給部61は検出パターンc1を保持しており、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t1の指示に従って、所定の連続送信期間(例えば、3msec)の間、検出パターンc1に対応する信号(あるいはビット列)を連続して繰り返し出力する機能を有する。また、この連続送信期間の終了直後、あるいは、後述する制御情報c2の送信開始時に、所定の区切りパターンSTPを少なくとも2回連続して出力する機能も有している。
【0035】
検出パターンc1は、スタイラス2がセンサコントローラ31の存在を検出するために用いられるシンボルの値のパターンであり、事前に(スタイラス2がセンサコントローラ31を検出する前に)スタイラス2に既知にされている。シンボルは、送信処理においては変調に用いる情報の単位(送信信号が表現する情報の単位)であり、受信処理においては受信信号である1シンボルを復調して得られる情報の単位である。シンボルの値は、ビット列に変換される値(以下、「ビット列対応値」と称する)と、シンボルを受信したスタイラス2によってビット列に変換されない値(以下、「ビット列非対応値」と称する)とを含むことができる。後述の表1に示すように、前者にかかるシンボルは2のべき乗の個数の値をとり、「0001」などのビット列に対応付けることができる。こうしてビット列により表記される各シンボルのビット長は、拡散処理部63の仕様により決定される。一方、後者にかかるシンボルは1個以上(例えば2個)の値をとり、後述の表1に示すように「P」「M」などと表記されるビット列に対応付けられない値を取る。後述の表1に示す一例では、「P」と「M」はそれぞれ、所定の拡散符号列とその反転符号列とに対応付けられる。
【0036】
検出パターンc1はビット列非対応値のパターンにより表される。具体的には、「PMPMPM・・・」のように2つのビット列非対応値「P」「M」の繰り返しにより構成される。
【0037】
区切りパターンSTPは、上記連続送信期間の終了をスタイラス2に通知するためのシンボルのパターンであり、検出パターンc1の繰り返し中に現れないシンボルのパターンによって構成される。一例を挙げると、上記のように検出パターンc1を「PMPMPM・・・」のように2つのビット列非対応値「P」「M」の繰り返しで構成する場合、区切りパターンSTPは、ビット列非対応値「P」を2回連続させてなるパターン「PP」により構成することができる。区切りパターンSTPと検出パターンc1との構成を逆にして、区切りパターンを「PM」により構成して検出パターンc1を「PP」により構成してもよい。
【0038】
スイッチ62は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t2に基づいてパターン供給部61及びMCU80のいずれか一方を選択し、選択した一方の出力を拡散処理部63に供給する機能を有する。スイッチ62がパターン供給部61を選択した場合、拡散処理部63には検出パターンc1又は区切りパターンSTPが供給される。一方、スイッチ62がMCU80を選択した場合、拡散処理部63には、MCU80から制御情報c2が供給される。
【0039】
制御情報c2は、スタイラス2への指示内容を示すコマンドを含む情報であり、MCU80によって生成される。制御情報c2は可変長のビット列に対応づけられるシンボルの値(例えば0〜15)を含み、スタイラス2との間でその値が事前に共有されていない点で、検出パターンc1とは異なっている。また、制御情報c2は、上述した所定ビット長の2のべき乗の個数(8値)の値を示す値「D」により示される点で、値「P」「M」とを含む検出パターンc1と異なっている。
【0040】
符号列保持部64は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t3に基づき、自己相関特性を有する11チップ長の拡散符号PNを生成して保持する機能を有する。符号列保持部64が保持している拡散符号PNは、拡散処理部63に供給される。
【0041】
拡散処理部63は、スイッチ62を介して供給されるシンボルの値(拡散処理部63の処理により送信信号により表現される情報)に基づいて符号列保持部64によって保持される拡散符号PNを変調することにより、12チップ長の送信チップ列を得る機能を有する。以下、この機能について、具体例を挙げて説明する。
【0042】
以下で説明する例では、検出パターンc1、区切りパターンSTP、制御情報c2のそれぞれを、ビット列対応値0〜15(対応ビット列「0000」〜「1111」)及びビット列非対応値「P」「M」の組み合わせによって構成するものとする。また、符号列保持部64が保持している拡散符号PNは「00010010111」であるとする。この場合、拡散処理部63は、以下の表1に従って、各シンボルの値(0〜15並びにP及びM)を送信チップ列に変換する。
【0044】
表1に示すように、この例では、まずシンボルの値「P」は、拡散符号PN「00010010111」の先頭に「1」を付けてなる送信チップ列に変換される。またシンボルの値「0」〜「7」はそれぞれ、拡散符号PN「00010010111」を表1に示したシフト量で巡回シフトさせてなる符号列の先頭に「1」を付けてなる送信チップ列に変換される。その他のシンボルの値「M」「8」〜「15」はそれぞれ、シンボルの値「P」「0」〜「7」に対応する送信チップ列を反転させてなる送信チップ列に変換される。
【0045】
拡散処理部63は、以上のような変換処理によって送信チップ列を取得し、送信ガード部65に供給するよう構成される。
【0046】
送信ガード部65は、ロジック部70から供給される制御信号ctrl_t4に基づき、アップリンク信号USの送信期間と、スタイラス2からの信号を受信する受信期間との間に、送信動作と受信動作を切り替えるために送信と受信の両方を行わない期間であるガード期間を挿入する機能を有する。
【0047】
選択部40は、ロジック部70の制御に基づいて、センサ30から信号を送信する送信期間と、センサ30により信号を受信する受信期間とを切り替えるスイッチである。具体的に説明すると、選択部40は、スイッチ44x,44yと、導体選択回路41x,41yとを含んで構成される。スイッチ44xは、ロジック部70から供給される制御信号sTRxに基づき、送信期間には、送信部60の出力端を導体選択回路41xの入力端に接続し、受信期間には、導体選択回路41xの出力端を受信部50の入力端に接続するよう動作する。スイッチ44yは、ロジック部70から供給される制御信号sTRyに基づき、送信期間には、送信部60の出力端を導体選択回路41yの入力端に接続し、受信期間には、導体選択回路41yの出力端を受信部50の入力端に接続するよう動作する。導体選択回路41xは、ロジック部70から供給される制御信号selXに基づき、複数の線状電極30Xのうちの1つ又は複数を選択し、選択したものをスイッチ44xに接続するよう動作する。導体選択回路41yは、ロジック部70から供給される制御信号selYに基づき、複数の線状電極30Yのうちの1つ又は複数を選択し、選択したものをスイッチ44yに接続するよう動作する。導体選択回路41x,41yによって複数の線状電極30X又は複数の線状電極30Yが選択されるのは、例えば、タッチ面3aの全面からアップリンク信号USを送信する場合である。
【0048】
受信部50は、ロジック部70の制御信号ctrl_rに基づいて、スタイラス2が送信するダウンリンク信号DS(ダウンリンク信号DS1又はダウンリンク信号DS2)を受信するための回路である。具体的には、増幅回路51、検波回路52、及び、アナログデジタル(AD)変換器53を含んで構成される。
【0049】
増幅回路51は、選択部40から供給されるダウンリンク信号DSを増幅して出力する。検波回路52は、増幅回路51の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器53は、検波回路52から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器53が出力するデジタル信号は、MCU80に供給される。
【0050】
ダウンリンク信号DS1を受信できるがダウンリンク信号DS2は受信できないタイプの位置検出装置3に含まれる受信部50は、無変調のパルス列信号又はパルス列信号を変調してなる信号を受信する一方で、無変調の正弦波信号又は正弦波信号を変調してなる信号を受信しない(又は、できない)ように構成される。したがって、この場合のMCU80には、センサ30にダウンリンク信号DS1が到来した場合にのみ、受信部50からデジタル信号が供給されることになる。一方、ダウンリンク信号DS2を受信できるがダウンリンク信号DS1は受信できないタイプの位置検出装置3に含まれる受信部50は、無変調の正弦波信号又は正弦波信号を変調してなる信号を受信する一方で、無変調のパルス列信号又はパルス列信号を変調してなる信号を受信しない(又は、できない)ように構成される。したがって、この場合のMCU80には、センサ30にダウンリンク信号DS2が到来した場合にのみ、受信部50からデジタル信号が供給されることになる。
【0051】
ロジック部70及びMCU80は、送信部60及び受信部50等の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、MCU80は、内部にROMおよびRAMを有し、所定のプログラムに基づき動作するマイクロプロセッサである。一方、ロジック部70は、MCU80の制御に基づき、上述した各制御信号を出力するよう構成される。MCU80はまた、AD変換器53から供給されるデジタル信号に基づいてスタイラス2の位置を示す座標データx,y等を導出し、システムコントローラ32に対して出力する処理と、AD変換器53から供給されるデジタル信号がデータ信号d1D又はデータ信号d2Dを示している場合には、そのデジタル信号により表されるデータResを取得し、システムコントローラ32に対して出力する処理とを行うよう構成される。
【0052】
以下、スタイラス2の構成及びスタイラス2が行う処理について詳しく説明するが、初めに、上述した交互送信方式を採用するスタイラス2について説明し、その後、本発明の第1乃至第5の実施の形態によるスタイラス2について説明することとする。
【0053】
図4は、本発明の背景技術によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は上述した交互送信方式を採用するものであって、本発明の背景技術に相当するが、後述する第1乃至第5の実施の形態によるスタイラス2と同様に本発明の発明者が発明したものであり、本願の優先日時点で公知になっていたものではない。
【0054】
図4に示すように、交互送信方式を採用するスタイラス2は、
図1にも示した信号処理部24及び電源25に加え、増幅部26を有して構成される。信号処理部24は、制御部90a、昇圧部91、発振部92a、スイッチ部93aを有して構成される。なお、
図4には、信号処理部24が有する機能のうちアップリンク信号USの受信に関する機能を示していないが、後述する本発明の各実施の形態によるスタイラス2のように、交互送信方式を採用するスタイラス2にも、アップリンク信号USの受信に関する機能を設けることは可能である。
【0055】
昇圧部91は、電源25から供給される直流電圧を昇圧することにより、直流電圧V1を生成する機能を有する。具体的な例では、昇圧部91はDC−DCコンバータ又はチャージポンプ回路によって構成される。
【0056】
発振部92aは、電源25から供給される直流電圧に基づいて発振動作を行うことにより、所定周波数で振動する無変調の正弦波信号(搬送波信号)を生成する機能を有する。増幅部26は、発振部92aによって生成された正弦波信号を所定の増幅率で増幅することにより、無変調の正弦波信号v2を生成する機能を有する。増幅部26は、
図4に示すように、トランス及びキャパシタにより構成される増幅回路により構成されることが好ましい。
【0057】
スイッチ部93aは単極3投形のスイッチ素子であり、昇圧部91の出力端に接続される端子aと、増幅部26の出力端に接続される端子bと、接地電位が供給される電源配線に接続される端子gと、電極21に接続される共通端子cとを有して構成される。
【0058】
制御部90aは、スイッチ部93aを制御するための制御信号Ctrlを供給するICであり、電源25から供給される電力により動作するよう構成される。具体的な例では、制御部90aはASIC又はMCUであってよい。
【0059】
ダウンリンク信号DS1を送信する場合の制御部90aは、昇圧部91の出力端と電極21の間に設けられる第1のスイッチ部として機能するよう、スイッチ部93aを制御する。つまり、端子aが共通端子cに接続されている状態と、端子gが共通端子cに接続されている状態との間で、スイッチ部93aを切り替える処理を行う。端子aが共通端子cに接続されている状態は第1のスイッチ部がオンとなっている状態に対応し、端子gが共通端子cに接続されている状態は第1のスイッチ部がオフとなっている状態に対応する。
【0060】
ダウンリンク信号DS1のうちバースト信号d1Bを送信するタイミングでは、制御部90aは、所定の周期で周期的にスイッチ部93aの切り替え制御を行う。端子aが共通端子cに接続されている場合には、直流電圧V1がスイッチ部93aの出力電圧となる。一方、端子gが共通端子cに接続されている場合には、接地電位がスイッチ部93aの出力電圧となる。したがって、スイッチ部93aからは無変調のパルス列信号が出力され、これがバースト信号d1Bとなる。
【0061】
一方、ダウンリンク信号DS1のうちデータ信号d1Dを送信するタイミングでは、制御部90aは、筆圧レベルPやスイッチ情報SWなどのデータResに応じてスイッチ部93aの切り替え制御を行う。なお、データResには、スタイラス2の識別情報などの他の情報を含んでもよい。制御部90aは、この切り替え制御によって、データResに基づいて変調されたパルス列信号であるデータ信号d1Dを生成する。
【0062】
制御部90aによるパルス列信号の変調の具体的な方式としては、多種のものが考えられる。以下では、オンオフ変調を用いる場合と、周波数変調を用いる場合とについて、具体的な例を示して説明する。
【0063】
図5は、制御部90aにより生成されるデータ信号d1Dの一例(オンオフ変調されたパルス列信号である場合)を示す図である。この場合の制御部90aは、データResの送信対象ビットが「1」である場合にスイッチ部93aを端子a側に切り替え、データResの送信対象ビットが「0」である場合にスイッチ部93bを端子g側に切り替える。これによりデータ信号d1Dは、
図5に示すように、送信対象ビットが「1」である場合にハイレベル(=直流電圧V1)となり、送信対象ビットが「0」である場合にローレベル(=接地電位)となる2値信号となる。
【0064】
図6は、制御部90aにより生成されるデータ信号d1Dの他の一例(周波数変調されたパルス列信号である場合)を示す図である。この場合の制御部90aは、データResの値に応じた周波数でスイッチ部93bの切り替え制御を行う。例えば
図6には、データResが8ビットのデータであり、この8ビットのデータにより表される値がxである場合に、制御部90aが周波数N−x×m[Hz]でスイッチ部93bの切り替え制御を行う例を示している。この例に示すように、この場合のデータ信号d1Dは、データResの値に応じた周波数で振動するパルス列信号となる。
【0065】
図4に戻り、ダウンリンク信号DS2を送信する場合の制御部90aは、増幅部26の出力端と電極21の間に設けられる第2のスイッチ部として機能するよう、スイッチ部93aを制御する。つまり、端子bが共通端子cに接続されている状態と、端子gが共通端子cに接続されている状態との間で、スイッチ部93aを切り替える処理を行う。端子bが共通端子cに接続されている状態は第2のスイッチ部がオンとなっている状態に対応し、端子gが共通端子cに接続されている状態は第2のスイッチ部がオフとなっている状態に対応する。
【0066】
ダウンリンク信号DS2のうちバースト信号d2Bを送信するタイミングでは、制御部90aは、スイッチ部93aを端子b側に固定する。したがって、スイッチ部93aからは無変調の正弦波信号v2が出力され、これがバースト信号d2Bとなる。
【0067】
一方、ダウンリンク信号DS2のうちデータ信号d2Dを送信するタイミングでは、制御部90aは、筆圧レベルPやスイッチ情報SWなどのデータResに基づいてスイッチ部93aの切り替え制御を行う。なお、この場合においても、データResにはスタイラス2の識別情報などの他の情報を含んでもよい。制御部90aは、この切り替え制御によって、データResに基づいて変調された正弦波信号であるデータ信号d2Dを生成する。
【0068】
制御部90aによる正弦波信号の変調の具体的な方式としては、オンオフ変調が採用される。
【0069】
図7は、制御部90aにより生成されるデータ信号d2Dの一例(オンオフ変調された正弦波信号である場合)を示す図である。制御部90aは、データResの送信対象ビットが「1」である場合にスイッチ部93aを端子b側に切り替え、データResの送信対象ビットが「0」である場合にスイッチ部93bを端子g側に切り替える。これによりデータ信号d2Dは、
図7に示すように、送信対象ビットが「1」である場合に正弦波信号v2となり、送信対象ビットが「0」である場合に接地電位に固定される信号となる。
【0070】
ここで、
図7から理解されるように、送信対象ビットが「0」である場合には、何も送信していないのと同じ状態となる。この何も送信していない状態が継続するのを防止するため、制御部90aは、データResをまずマンチェスター符号化し、マンチェスター符号化したデータResに基づいてスイッチ部93aの切り替え制御を行うことにより、データ信号d2Dを生成することとしてもよい。
【0071】
図4に戻り、制御部90aは、ダウンリンク信号DS1と、ダウンリンク信号DS2とを交互に送信するように構成される。これは、ダウンリンク信号DS1のみに対応する位置検出装置3と、ダウンリンク信号DS2のみに対応する位置検出装置3とのいずれにもスタイラス2の送信信号を受信させることができるようにするためであり、ダウンリンク信号DS1,DS2を交互に送信することから、本願の発明者は「交互送信方式」と呼んでいる。以下、具体的に説明する。
【0072】
図8は、制御部90aが行う処理を示すフロー図である。また、
図9は、制御部90aにより生成される信号の一例を示す図である。なお、
図9の横軸は時間を示し、横軸の上側は送信Txを下側は受信Rxを示している。以下、これらの図を参照しながら説明を続ける。
【0073】
まず
図9に示すように、制御部90aは、一定の周期T1で、ダウンリンク信号DS1,DS2の送信処理を繰り返すよう構成される。各周期T1の中において制御部90aは、ダウンリンク信号DS1のバースト信号d1B、ダウンリンク信号DS1のデータ信号d1D、ダウンリンク信号DS2のバースト信号d2B、ダウンリンク信号DS2のデータ信号d2Dの順に、各信号の送信処理を行う。ダウンリンク信号DS1の送信は周期T1中d1(d1<T1)の時間を用いて実行され、ダウンリンク信号DS2の送信は周期T1中d2(d2=T1−d1)の時間を用いて実行される。なお、一般的にはd1<d2となる。
【0074】
ここで、T1及びd2の具体的な値は、制御部90aによるダウンリンク信号DS2の送信周期が、ダウンリンク信号DS2の送信のみに対応するスタイラス(すなわち、ダウンリンク信号DS1の送信機能を有しないスタイラス)によるダウンリンク信号DS2の送信周期に等しくなるよう選択することが好適である。こうすることで、センサコントローラ31側では、ダウンリンク信号DS2の送信のみに対応するスタイラスが送信する場合と同様の周期で、ダウンリンク信号DS2を受信することが可能になる。なお、ダウンリンク信号DS2の送信のみに対応するスタイラス同じデータ量のダウンリンク信号DS2を送信しようとすると、ダウンリンク信号DS1の送信を行う必要があるために時間が足りなくなることも考えられるが、その場合には、バースト信号d2B及びデータ信号d2Dの一方又は両方について、送信データ量を低減しても構わない。例えば、ダウンリンク信号DS2の送信のみに対応するスタイラスが一回の周期でN個のシンボルを送信するとして、制御部90aは、周期T1の一周期内にM個(M<N)のシンボルのみを送信することとしてもよい。
【0075】
また、
図9において水玉でハッチングした区間は、正弦波信号v2が送信されている区間を表している。この表記によれば、同図に示すように、データ信号d2Dは断続的に送信される信号となる。これは、
図7を参照して説明したように、送信対象ビットが「0」である場合に信号処理部24が正弦波信号v2を出力しないことに対応するものである。
【0076】
図8のフロー図を参照すると、制御部90aは、処理を開始するとまず、ダウンリンク信号DS1の送信を開始する(ステップS1)。その後、ダウンリンク信号DS1の送信を行いつつ時間の経過を監視し(ステップS2)、所定時間d1が経過すると、ダウンリンク信号DS2の送信を開始する(ステップS3)。その後、ダウンリンク信号DS2の送信を行いつつ時間の経過を監視し(ステップS4)、所定時間d2が経過すると、ステップS1に戻って再びダウンリンク信号DS1の送信を開始する。このように、制御部90aは、ダウンリンク信号DS1,DS2の送信を交互に行う。これにより、ダウンリンク信号DS1のみに対応する位置検出装置3と、ダウンリンク信号DS2のみに対応する位置検出装置3とのいずれにも、スタイラス2の送信信号を受信させることが可能になる。
【0077】
一方で、制御部90aの制御によれば、常に、ダウンリンク信号DS1,DS2の両方が繰り返し送信されることになる。これではダウンリンク信号DS1,DS2のいずれか一方が常に無駄に送信されていることになるので、上述したように、スタイラス2の低消費電力化の観点から好ましくない。本発明は交互送信方式のこのような課題に着目したもので、交互送信方式よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラスを持ち替えなくて済むようにすることを実現する。以下、本発明の第1乃至第5の実施の形態について、順に詳しく説明する。
【0078】
図10は、本発明の第1の実施の形態によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は、制御部90a及びスイッチ部93aに代えて制御部90b及びスイッチ部93bを有する点で、
図4に示したスタイラス2と相違する。その他の点では
図4に示したスタイラス2と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では相違点に着目して説明する。
【0079】
スイッチ部93bは、スイッチ部93aに端子rを追加し、単極4投形としたものである。端子rは、バッファを経て、制御部90bの受信端子に接続される。また、制御部90bは、アップリンク信号USの受信機能を制御部90aに追加した他、第1及び第2のモードのいずれか一方で動作するよう構成したものである。
【0080】
アップリンク信号USの受信機能に関して、制御部90bは、送信と受信を時分割で行うよう構成される。すなわち、制御部90bは、送信と受信を同時に行えるようには構成されていない。送信のための制御部90bの基本的な動作は、制御部90aについて上述した通りである。一方、受信を行う際には、制御部90bは、制御信号Ctrlによってスイッチ部93bを端子r側に切り替える。これにより、電極21に現れた電荷が制御部90bの受信端子に供給されるので、制御部90bは、こうして供給された電荷に基づいて、位置検出装置3が送信したアップリンク信号USを受信する。
【0081】
第1のモードは、スタイラス2がダウンリンク信号DS1を送信するモードである。一方、第2のモードは、スタイラス2がダウンリンク信号DS2を送信するモードである。制御部90bは、第1のモードでの動作中に、上述した処理によりダウンリンク信号DS1を生成して電極21に供給する一方、第2のモードへの切り替えの要否を判定する処理を行う。一方、第2のモードでの動作中には、上述した処理によりダウンリンク信号DS2を生成して電極21に供給する一方、第1のモードへの切り替えの要否を判定する処理を行う。制御部90bは、これらの判定を、各モードにおけるアップリンク信号USの受信の有無に基づいて行う。そして、判定の結果として第2のモードへの切り替えが必要であると判定した場合には、自身の動作を第2のモードでの動作に切り替える。また、第1のモードへの切り替えが必要であると判定した場合には、自身の動作を第1のモードでの動作に切り替える。以下、具体的に説明する。
【0082】
図11〜
図13は、制御部90bが行う処理を示すフロー図である。また、
図14は、制御部90bにより生成される信号の一例を示す図である。なお、
図14の横軸は時間を示し、横軸の上側は送信Txを下側は受信Rxを示している。以下、これらの図を参照しながら説明を続ける。
【0083】
まず
図14に示すように、制御部90bは、
図9にも示した一定の周期T1(所定の第1の周期)で、ダウンリンク信号DS1を間欠的に送信するよう構成される。これは、第1のモードでの動作である。より具体的に言えば、制御部90bは、各周期T1の始期から周期T1より短い所定時間d1にわたり、ダウンリンク信号DS1を送信するよう構成される。このようにダウンリンク信号DS1が間欠的に送信されているため、周期T1内には、送信動作を行っていない期間が必ず存在する。制御部90bは、この期間を利用し、電極21を用いて位置検出装置3が送信したアップリンク信号USの検出動作を行う。そして、その検出結果に応じて、第2のモードへの切り替えの要否を判定する。したがって、制御部90bは、周期T1で、第2のモードへの切り替えの要否を判定していることになる。
【0084】
第2のモードに切り替わった後の制御部90bは、一定の周期d2(所定の第2の周期)で、ダウンリンク信号DS2を間欠的に送信するよう構成される。なお、この周期d2の時間長は、
図9に示した所定時間d2と等しくてもよいし、等しくなくてもよい。この間欠的な送信は、上述したように、データ信号d2Dの送信の際、送信対象ビットが「1」である場合には信号処理部24から正弦波信号v2が出力される一方、送信対象ビットが「0」である場合には信号処理部24から正弦波信号v2が出力されないことによって実現されるものである。したがって、ダウンリンク信号DS2の間欠的な送信は、
図14にも示すように、バースト信号d2Bではなくデータ信号d2Dの送信中に行われる。制御部90bは、この間欠的な送信によって信号処理部24から正弦波信号v2が出力されていない期間を利用し、電極21を用いて位置検出装置3が送信したアップリンク信号USの検出動作を行う。そして、検出の結果に応じて、周期d2ごとに、第1のモードへの切り替えの要否を判定する。
【0085】
図11のフロー図を参照すると、制御部90bは、第1のモードでの動作を行うサブルーチン(ステップS10)と、第2のモードでの動作を行うサブルーチン(ステップS30)とを交互に実行するよう構成される。詳しくは
図12及び
図13を参照しながら説明するが、この処理は、ステップS10とステップS30の切り替えが時間の経過に応じて行われるわけではなく、各サブルーチンの中で実行されるモード切り替え要否の判定処理の結果に基づいて行われる点で、
図8に示した制御部90aの処理と異なっている。以下、ステップS10,S30のそれぞれにおける処理について、詳しく説明する。
【0086】
図12は、第1のモードでの動作(
図11に示すステップS10)の詳細を示すフロー図である。同図に示すように、第1のモードで動作中の制御部90bはまず、ダウンリンク信号DS1(バースト信号d1B及びデータ信号d1Dを含む)の送信を開始する(ステップS11)。その後、ダウンリンク信号DS1の送信を行いつつ時間の経過を監視し(ステップS12)、所定時間d1が経過すると、アップリンク信号USの受信を開始する(ステップS13)。そして、所定時間dr(dr≦T1−d1)が経過すると(ステップS14)、アップリンク信号USの受信を終了し(ステップS15)、所定の周期T1の経過を待って(ステップS16)、第1のモードを維持するか否かを判定する(ステップS17)。
【0087】
ここで、上述したように、アップリンク信号USを送信する能力を有するのはダウンリンク信号DS2を受信できるタイプの位置検出装置3のみであって、ダウンリンク信号DS2を受信できないタイプの位置検出装置3はアップリンク信号USの送信機能を有しない。したがって、アップリンク信号USが受信されているということは、ダウンリンク信号DS2を受信できる位置検出装置3がスタイラス2の近くに存在していることを意味する。そこで、ステップS17において制御部90bは、今回のサブルーチン実行の間(より具体的には、ステップS13でアップリンク信号USの受信を開始してからステップS15でアップリンク信号USの受信を終了するまでの間)にアップリンク信号USが受信されていた場合に、スタイラス2がダウンリンク信号DS2を送信できるようにするため、第1のモードを維持しない(すなわち、第2のモードに切り替える)と判定する。逆に、今回のサブルーチン実行の間にアップリンク信号USが受信されていない場合には、ダウンリンク信号DS2を受信できる位置検出装置3はスタイラス2の近くに存在しないと判断し、第1のモードを維持する(すなわち、第2のモードに切り替えない)と判定する。
【0088】
ステップS17で第1のモードを維持すると判定した場合、制御部90bは、ステップS11に戻って処理を続ける。すなわち、
図11に示したステップS10のサブルーチン(
図12に示す第1のモードでの動作)が繰り返される。一方、ステップS17で第1のモードを維持しないと判定した場合、制御部90bは、ステップS10のサブルーチンを抜けて処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS30のサブルーチン(
図13に示す第2のモードでの動作)が開始されることになる。
【0089】
図13は、第2のモードでの動作(
図11に示すステップS30)の詳細を示すフロー図である。同図に示すように、第2のモードで動作中の制御部90bはまず、バースト信号d2Bの送信を開始する(ステップS31)。バースト信号d2Bの送信時間は予め決められており、次いで制御部90bは、この予め決められた送信時間が満了したか否かを判定することにより、バースト信号d2Bの送信が終了したか否かを判定する(ステップS32)。
【0090】
次に、制御部90bは、データ信号d2Dを構成する各送信対象ビット(データResの各ビット。ただし、マンチェスター符号化を行う場合には、マンチェスター符号化したデータResの各ビット)を順次対象とするループ処理を行う(ステップS33)。このループ処理は、周期d2が経過するまでの間、繰り返される(ステップS38)。
【0091】
ステップS33のループ処理において制御部90bはまず、送信対象ビットが「1」であるか否かを判定する(ステップS34)。この処理では、送信対象ビットが「0」である場合に否定判定がなされる。なお、送信対象のデータResが存在しない場合におけるステップS34の判定結果は、送信対象ビットが「0」である場合と同じく否定とすればよい。
【0092】
ステップS34で否定的な結果が得られた場合、制御部90bは、アップリンク信号USの受信を開始する(ステップS35)。一方、ステップS34で肯定的な結果が得られた場合、制御部90bは、アップリンク信号USの受信動作を行っていた場合にはアップリンク信号USの受信動作を終了したうえで(ステップS36)、1ビット分の正弦波信号v2の送信を開始する(ステップS37)。
【0093】
ステップS35でアップリンク信号USの受信を開始した後、又は、ステップS37で正弦波信号v2の送信を開始した後、制御部90bは、周期d2が経過したか否かを判定する(ステップS38)。そして、経過していないと判定した場合にはステップS34に戻り、次の送信対象ビットを対象として処理を繰り返す。一方、ステップS38で経過したと判定した場合には、ループ処理を抜けて第2のモードを維持するか否かの判定を行う(ステップS39)。
【0094】
ステップS39の判定の基準は、
図12に示したステップS17における判定の基準と同様とすることが好ましい。すなわち、制御部90bは、今回のサブルーチン実行の間(より具体的には、ステップS35でアップリンク信号USの受信を開始してからステップS36でアップリンク信号USの受信を終了するまでの間。第2のモードでは、この期間が複数回存在する)にアップリンク信号USが受信されていた場合には、第2のモードを維持する(すなわち、第1のモードに切り替えない)と判定し、逆に、今回のサブルーチン実行の間にアップリンク信号USが受信されていない場合には、第2のモードを維持しない(すなわち、第1のモードに切り替える)と判定することが好ましい。
【0095】
ステップS39で第2のモードを維持すると判定した場合、制御部90bは、ステップS31に戻って処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS30のサブルーチン(
図13に示す第2のモードでの動作)が繰り返される。一方、ステップS39で第2のモードを維持しないと判定した場合、制御部90bは、ステップS30のサブルーチンを抜けて処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS10のサブルーチン(
図12に示す第1のモードでの動作)が開始されることになる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によれば、スタイラス2側でモード切り替えの要否を判定し、その結果に応じてスタイラス2自身の動作モードを切り替えているので、スタイラス2の動作モードを、ダウンリンク信号DS1の受信のみに対応する位置検出装置3とともに使用する場合には第1のモードとし、ダウンリンク信号DS2の受信のみに対応する位置検出装置3とともに使用する場合には第2のモードとすることができる。したがって、ダウンリンク信号DS1の受信のみに対応する位置検出装置3(上述した第1の方式のみに対応する位置検出装置)とともに使用する場合にはダウンリンク信号DS2を送信せず、ダウンリンク信号DS2の受信のみに対応する位置検出装置3(上述した第2の方式のみに対応する位置検出装置)とともに使用する場合にはダウンリンク信号DS1をしないようスタイラスを構成することが可能になるので、これらの位置検出装置3を並べて使用する場合において、
図4に示した交互送信方式を採用するスタイラス2よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラスを持ち替えなくて済むようにすることが可能になる。
【0097】
次に、
図15は、本発明の第2の実施の形態によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は、制御部90bに代えて制御部90cを有する点で、
図10に示したスタイラス2と相違する。その他の点では
図10に示したスタイラス2と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では相違点に着目して説明する。
【0098】
制御部90cは、第2のモードにおける処理の点で制御部90bと異なり、その他の点では制御部90bと同様である。具体的には、第2のモードでの動作中に当該スタイラス2が使用中であるか否かを判定し、使用中でないと判定した場合にのみアップリンク信号USの受信動作を行い、使用中であると判定した場合にはアップリンク信号USの受信動作を行わないよう構成される。以下、具体的に説明する。
【0099】
図16は、制御部90cによる第2のモードでの動作の詳細を示すフロー図である。また、
図17は、制御部90cにより生成される信号の一例を示す図である。なお、
図17の横軸は時間を示し、横軸の上側は送信Txを下側は受信Rxを示している。以下、これらの図を参照しながら説明を続ける。
【0100】
図16に示すように、制御部90cは、ステップS31,S32の処理を制御部90bと同様に実行する(
図13参照)。その後、制御部90cは、当該スタイラス2が使用中であるか否かを判定する(ステップS40)。この判定は、例えば筆圧レベルPが0より大きいか否かに基づいて行えばよい。すなわち、筆圧レベルPが0より大きい場合には、スタイラス2がタッチ面3aに触れている蓋然性が高いので使用中であると判定し、筆圧レベルPが0以下である場合には、スタイラス2がタッチ面3aから離れている蓋然性が高いので使用中でないと判定すればよい。また、スイッチ情報SWがオンである場合に、スタイラス2が使用中であると判定してもよい。この場合には、ユーザの意思により、スタイラス2が使用中であるか否かを決定することが可能になる。
【0101】
ステップS40で使用中であると判定した場合の制御部90cは、データ信号d2Dの送信を開始する(ステップS41)。この送信は、上述したように送信対象ビットが「0」である場合には信号処理部24から正弦波信号v2が出力されないため、
図17に示すように間欠的なものとなる。制御部90bはこの間欠送信の合間を利用してアップリンク信号USの受信動作を行ったが、制御部90cは、
図17にも示すようにそのような受信動作を行わない。このような処理を採用しているのは、ステップS40において使用中であると判定されているのであるから、スタイラス2は引き続きダウンリンク信号DS2を受信可能な位置検出装置3の近くにあり、第1のモードに切り替える必要はないと考えられるからである。
【0102】
一方、ステップS40で使用中でないと判定した場合の制御部90cは、アップリンク信号USの受信を開始する(ステップS42)。この場合の受信動作は、
図17にも示すように、連続的に行われる。このような連続的な受信動作が可能になるのは、使用中でない場合にはデータ信号d2Dを送る必要はないと考えられるため、データ信号d2Dの送信を行っていないからである。
【0103】
その後、制御部90cは、周期d2が経過するまでデータ信号d2Dの送信又はアップリンク信号USの受信を継続し(ステップS43)、ステップS43で周期d2が経過したと判定した場合には、第2のモードを維持するか否かの判定を行う(ステップS44)。
【0104】
ステップS44の判定では、ステップS42での受信動作が行われていない場合(すなわち、ステップS40でスタイラス2が使用中であると判定した場合)には、無条件で第2のモードを維持するとの判定がなされる。したがって、この場合にはステップS44を省略することも可能である。一方、ステップS42で受信動作が行われた場合には、
図13に示したステップS39と同じ判定基準により、第2のモードを維持するか否かの判定がなされる。
【0105】
ステップS44で第2のモードを維持すると判定した場合、制御部90cは、ステップS31に戻って処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS30のサブルーチン(
図16に示す第2のモードでの動作)が繰り返される。一方、ステップS44で第2のモードを維持しないと判定した場合、制御部90cは、ステップS30のサブルーチンを抜けて処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS10のサブルーチン(
図12に示す第1のモードでの動作)が開始されることになる。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によれば、第1の実施の形態によるスタイラス2と同様の効果に加え、第1の実施の形態に比べて長い期間にわたりアップリンク信号USの受信を連続して行える、という効果が得られる。これにより、第1の実施の形態に比べて高い精度で、アップリンク信号USを受信することが可能になる。
【0107】
次に、
図18は、本発明の第3の実施の形態によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は、制御部90bに代えて制御部90dを有する点で、
図10に示したスタイラス2と相違する。その他の点では
図10に示したスタイラス2と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では相違点に着目して説明する。
【0108】
制御部90dは、アップリンク信号USの受信の有無ではなく、
図1に示したスイッチ23が受け付けたユーザ操作に基づいて第1のモード又は第2のモードへの切り替えの要否を判定する点で制御部90bと異なり、その他の点では制御部90bと同様である。以下、具体的に説明する。
【0109】
図19及び
図20は、制御部90dが行う処理を示すフロー図である。また、
図21は、制御部90dにより生成される信号の一例を示す図である。なお、
図21の横軸は時間を示し、横軸の上側は送信Txを下側は受信Rxを示している。以下、これらの図を参照しながら説明を続ける。
【0110】
図19は、第1のモードでの動作(
図11に示すステップS10)の詳細を示すフロー図である。同図に示すように、第1のモードで動作中の制御部90dは、まずステップS11の処理を、制御部90bと同様に実行する(
図12参照)。その後、
図12に示したステップS12〜S15の処理は行わずに、所定の周期T1が経過するまで待機する(ステップS16)。ステップS12〜S15の処理を行わないので、
図21にも示すように、第1のモードでの動作中にはアップリンク信号USの受信は行われない。周期T1が経過したら、制御部90dは、スイッチ情報SWに基づき、ユーザによるモード切替指示があったか否かを判定する(ステップS18)。言い換えれば、第2のモードへの切り替え要否を判定する。
【0111】
ステップS18でモード切替指示がなかったと判定した場合、制御部90dは、ステップS11に戻って処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS10のサブルーチン(
図19に示す第1のモードでの動作)が繰り返される。一方、ステップS18でモード切替指示があったと判定した場合、制御部90bは、ステップS10のサブルーチンを抜けて処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS30のサブルーチン(
図20に示す第2のモードでの動作)が開始されることになる。
【0112】
図20は、第2のモードでの動作(
図11に示すステップS30)の詳細を示すフロー図である。同図に示すように、第2のモードで動作中の制御部90dは、まずステップS31〜S38の処理を、制御部90bと同様に実行する(
図13参照)。したがって、第2のモードでの各信号の送受信は、
図21にも示すように、第1の実施の形態と同様に行われる。その後、制御部90dは、
図13に示したステップS39の判定処理に代え、スイッチ情報SWに基づいてユーザによるモード切替指示があったか否かを判定する処理(ステップS50)を行う。言い換えれば、第1のモードへの切り替え要否を判定する。
【0113】
ステップS50でモード切替指示がなかったと判定した場合、制御部90dは、ステップS31に戻って処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS30のサブルーチン(
図20に示す第2のモードでの動作)が繰り返される。一方、ステップS50でモード切替指示があったと判定した場合、制御部90dは、ステップS10のサブルーチンを抜けて処理を続ける。これにより、
図11に示したステップS10のサブルーチン(
図19に示す第1のモードでの動作)が開始されることになる。
【0114】
以上説明したように、本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によれば、ユーザの明示的な指示により、第1のモードと第2のモードとを切り替えることが可能になる。したがって、第1及び第2の実施の形態と同様、ダウンリンク信号DS1の受信のみに対応する位置検出装置3とダウンリンク信号DS2の受信のみに対応する位置検出装置3とを並べて使用する場合において、
図4に示した交互送信方式を採用するスタイラス2よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラスを持ち替えなくて済むようにすることが可能になる。
【0115】
なお、本実施の形態では、
図13に示した制御部90bの処理のうちステップS39を修正することにより制御部90dの処理を構成したが、
図13に示した制御部90cの処理のうちステップS44を同様に修正することにより制御部90dの処理を構成することも可能である。この場合、第2の実施の形態と同様、第1の実施の形態に比べて高い精度でアップリンク信号USを受信することが可能になる、という効果も得ることが可能になる。
【0116】
次に、
図22は、本発明の第4の実施の形態によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は、制御部90d及び発振部92aに代えて制御部90e及び発振部92bを有する点で、
図10に示したスタイラス2と相違する。その他の点では
図10に示したスタイラス2と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では相違点に着目して説明する。
【0117】
制御部90eは、ダウンリンク信号DS2を構成するデータ信号d2Dを生成する際、スイッチ部93bを端子bに切り替えた状態で固定する一方、筆圧レベルPやスイッチ情報SWなどのデータResに応じて、スイッチ部93aの切り替え制御ではなく発振部92bの発振状態の制御を行う。具体的には、送信対象ビットが「1」である場合に発振部92bを発振状態とし、送信対象ビットが「0」である場合に発振部92bを発振停止状態とする。また、バースト信号d2Bを生成する際の制御部90eは、スイッチ部93bを端子bに切り替えた状態で固定し、かつ、発振部92bを発振状態に固定する。
【0118】
本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によっても、第1の実施の形態によるスタイラス2と同様、スタイラス2からダウンリンク信号DS2を送信することが可能になる。その他の点では、本実施の形態によるスタイラス2は第1の実施の形態によるスタイラス2と同様であるので、本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によっても、第1の実施の形態と同様、ダウンリンク信号DS1の受信のみに対応する位置検出装置3とダウンリンク信号DS2の受信のみに対応する位置検出装置3とを並べて使用する場合において、
図4に示した交互送信方式を採用するスタイラス2よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラスを持ち替えなくて済むようにすることが可能になる。
【0119】
なお、本実施の形態と同様のダウンリンク信号DS2の生成を、第1の実施の形態によるスタイラス2だけでなく第2及び第3の実施の形態によるスタイラス2においても行うようにしてもよいのは、勿論である。
【0120】
次に、
図23は、本発明の第5の実施の形態によるスタイラス2の構成を示す図である。同図に示すスタイラス2は、昇圧部91に代えて整流部94を有する点で、
図10に示したスタイラス2と相違する。その他の点では
図10に示したスタイラス2と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では相違点に着目して説明する。
【0121】
整流部94は、ダイオード及びキャパシタを用いて増幅部26から出力される正弦波信号v2を整流することにより、直流電圧V1を生成する回路である。整流部94によって生成された直流電圧V1は、スイッチ部93bの端子aに供給される。
【0122】
本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によっても、第1の実施の形態によるスタイラス2と同様、スタイラス2からダウンリンク信号DS1を送信することが可能になる。その他の点では、本実施の形態によるスタイラス2は第1の実施の形態によるスタイラス2と同様であるので、本実施の形態によるスタイラス2の構成及び動作によっても、第1の実施の形態と同様、ダウンリンク信号DS1の受信のみに対応する位置検出装置3とダウンリンク信号DS2の受信のみに対応する位置検出装置3とを並べて使用する場合において、
図4に示した交互送信方式を採用するスタイラス2よりも低消費電力で、位置検出装置3を移るたびにスタイラスを持ち替えなくて済むようにすることが可能になる。
【0123】
また、本実施の形態によるスタイラス2の構成によれば、昇圧部91が不要になるので、信号処理部24の構成を簡易なものとすることが可能になる。
【0124】
なお、本実施の形態と同様の直流電圧V1の生成を、第1の実施の形態によるスタイラス2だけでなく第2乃至第4の実施の形態によるスタイラス2においても行うようにしてもよいのは、勿論である。ただし、第4の実施の形態によるスタイラス2に適用する際には、ダウンリンク信号DS1の送信時に発振部92bを発振状態としておく必要がある。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0126】
例えば、上記各実施の形態では、スタイラス2がアップリンク信号USの受信の有無に基づいてモード切り替えの判定を行う場合、アップリンク信号USの内容については考慮していなかったが、スタイラス2は、アップリンク信号USの内容にも基づいて、モード切り替えの有無を判定することとしてもよい。この場合、センサコントローラ31からの明示的な指示により、スタイラス2のモードを切り替えることが可能になる。
【0127】
また、上記各実施の形態では、アップリンク信号USを検出パターンc1、区切りパターンSTP、及び制御情報c2により構成される信号としたが、本発明は、アップリンク信号USが単純なトリガ信号である場合などにも好適に適用可能である。