特開2017-103343(P2017-103343A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-103343(P2017-103343A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20170512BHJP
   H01S 5/32 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   H01S5/042 612
   H01S5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-235292(P2015-235292)
(22)【出願日】2015年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松舘 政茂
(72)【発明者】
【氏名】坪利 悠司
(72)【発明者】
【氏名】高山 翼
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA01
5F173AH40
5F173AK08
5F173AK14
5F173AK15
5F173AK20
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】素子と第1電極および第2電極と配線部材との接合を保持することができる、発光デバイスを提供すること。
【解決手段】発光デバイスは、p型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるp型添加部分と、n型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるn型添加部分と、p型添加部分とn型添加部分との境界部分に形成されるpn活性部分と、からなる素子と、素子のp型添加部分表面に形成される第1電極と、素子のn型添加部分表面に形成される第2電極と、電源装置に接続される配線部材と第1電極および第2電極の表面とをそれぞれ接続する接続部と、を備え、p型添加部分、n型添加部分およびpn活性部分は、その一部またはすべての領域からなる発光部を有し、第1電極および第2電極は、素子側から順に、素子との接合性の高い部材からなるコンタクト層と、接続部との接合性の高い部材からなる接合層と、からなる。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるp型添加部分と、n型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるn型添加部分と、前記p型添加部分と前記n型添加部分との境界部分に形成されるpn活性部分と、からなる素子と、
前記素子の前記p型添加部分表面に形成される第1電極と、
前記素子の前記n型添加部分表面に形成される第2電極と、
電源装置に接続される配線部材と前記第1電極および前記第2電極の表面とをそれぞれ接続する接続部と、
を備え、
前記p型添加部分、前記n型添加部分および前記pn活性部分は、その一部またはすべての領域からなる発光部を有し、
電源装置から、前記配線部材と、前記第1電極および前記第2電極を介して前記素子に電流が印加されることにより、前記p型添加部分、前記n型添加部分および前記pn活性部分内に電子が添加され、電子が付与されることによって前記発光部が発光する発光デバイスであって、
前記第1電極および前記第2電極は、前記素子側から順に、
前記素子との接合性の高い部材からなるコンタクト層と、
前記接続部との接合性の高い部材からなる接合層と、
からなることを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記コンタクト層は、前記素子とオーミック接触可能な部材からなることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極は、前記コンタクト層と前記接合層との間に、前記接続部を構成する金属イオンが前記素子内に入り込むことを防止する部材からなるバリアメタル層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第1電極および前記第2電極は、前記コンタクト層と前記接合層との間に、反射係数が0.5以上である光閉じ込め層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記第1電極および前記第2電極は、前記素子側から、コンタクト層、光閉じ込め層、バリアメタル層、接合層の順に積層されていることを特徴とする請求項4に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接遷移型の半導体レーザ装置等に適用される発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電流注入によってレーザ発信を得る間接遷移型半導体レーザの発光素子として、特許文献1に記載のものがある。この発光素子は、シリコン等の間接遷移型半導体にp型不純物が添加されたp型活性部分と、前記間接遷移型の半導体にn型不純物が添加されたn型活性部分と、p型活性部分とn型活性部分との境界部分に形成されるpn活性部分とを備えている。
【0003】
p型活性部分およびn型活性部分は、その一部の領域、また、pn活性部分は、そのすべての領域が、電流が印加されて電子が付与されることにより発光する発光部となっている。また、n型活性部分およびp型活性部分には電源が接続され、レーザの発信時には、n型活性部分側が正電圧、p型活性部分側が負電圧となるように順方向にバイアス電圧が印加される。これにより、n型活性部分、pn活性部分およびn型活性部分に電流が注入され、n型活性部分、pn活性部分およびn型活性部分内の発光部に電子が付与されることにより、その一部またはすべてが発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−243824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなレーザの発信を行う際、発光素子は、p型活性部分の表面にp型電極、n型活性部分の表面にn型電極が形成された状態で、p型電極とn型電極に設けられた接合部に接合された配線部材を介して電流が印加される。
【0006】
ここで、発光素子と第1電極および第2電極、第1電極および第2電極と接合部とは材質が異なるため、選択する材料によっては接合度が低くなり、動作を繰り返す中で、その一部またはすべてが剥離する等の問題が生じるおそれがある。このような問題が生じ場合、素子に対して所望の電流を印加することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、素子と第1電極および第2電極と配線部材との接合を保持することができる、発光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の発光デバイスは、p型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるp型添加部分と、n型不純物が添加された間接遷移型半導体からなるn型添加部分と、前記p型添加部分と前記n型添加部分との境界部分に形成されるpn活性部分と、からなる素子と、前記素子の前記p型添加部分表面に形成される第1電極と、前記素子の前記n型添加部分表面に形成される第2電極と、電源装置に接続される配線部材と前記第1電極および前記第2電極の表面とをそれぞれ接続する接続部と、を備え、前記p型添加部分、前記n型添加部分および前記pn活性部分は、その一部またはすべての領域からなる発光部を有し、電源装置から、前記配線部材と、前記第1電極および前記第2電極を介して前記素子に電流が印加されることにより、前記p型添加部分、前記n型添加部分および前記pn活性部分内に電子が添加され、電子が付与されることによって前記発光部が発光する発光デバイスであって、前記第1電極および前記第2電極は、前記素子側から順に、前記素子との接合性の高い部材からなるコンタクト層と、前記接続部との接合性の高い部材からなる接合層と、からなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、第1電極および第2電極は、素子との接合性の高い部材からなるコンタクト層と、接続部との接合性の高い部材からなる接合層とからなる。従って、素子と第1電極および第2電極、第1電極および第2電極と接続部とが剥離することを防止できる。
【0010】
第2の発明の発光デバイスは、前記第1の発明において、前記コンタクト層は、前記素子とオーミック接触可能な部材からなることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、半導体と金属との界面ではショットキー障壁が存在するため、半導体と金属との間で接触抵抗が大きくなる。従って、コンタクト層を構成するものを不用意に選択した場合、素子に対して所望の電流を印加することができず、想定した発光強度を得ることができないおそれがある。
【0012】
本発明では、コンタクト層は、素子とオーミック接触可能な部材からなる。従って、半導体と金属との界面の接触抵抗を無視できるほどに小さくすることができる。これにより、素子に対して所望の電流を印加することができる。
【0013】
第3の発明の発光デバイスは、前記第1または2の発明において、前記第1電極および前記第2電極は、前記コンタクト層と前記接合層との間に、前記接続部を構成する金属イオンが前記素子内に入り込むことを防止する部材からなるバリアメタル層を有することを特徴とするものである。
【0014】
ここで、接合部と第1電極および第2電極とを接合した際、接合部を構成する金属イオンが電極や素子の内部まで浸食することがある。このような浸食が生じると、素子内のp型不純物の配位が変化し、十分な電流を印加しても所望の発光強度を得ることができなくなるおそれがある。
【0015】
本発明では、第1電極および第2電極は、コンタクト層と接合層との間に、接続部を構成する金属イオンが素子内に入り込むことを防止する部材からなるバリアメタル層を有する。従って、金属イオンの浸食をバリアメタル層よりも上層までに留めることができる。これにより、接合部の金属イオンがコンタクト層および素子まで浸食することを防止することができる。
【0016】
第4の発明の発光デバイスは、前記第1〜3のいずれかの発明において、前記第1電極および前記第2電極は、前記コンタクト層と前記接合層との間に、反射係数が0.5以上である光閉じ込め層を有する。
【0017】
本発明では、第1電極および第2電極は、コンタクト層と接合層との間に、反射係数が0.5以上である光閉じ込め層を有する。従って、素子の厚み方向において、第1電極の光閉じ込め層と第2電極の光閉じ込め層との間で光を閉じ込めることができる。これにより、素子の厚み方向においても光を強振させて、発光強度を高めることができる。
【0018】
第5の発明の発光デバイスは、前記第4の発明において、前記第1電極および前記第2電極は、前記素子側から、コンタクト層、光閉じ込め層、バリアメタル層、接合層の順に積層されている。
【0019】
本発明では、第1電極および第2電極は、素子側から、コンタクト層、光閉じ込め層、バリアメタル層、接合層の順に積層されている。従って、素子側から、コンタクト層、バリアメタル層、光閉じ込め層、接合層の順に積層されている場合と比較して、光閉じ込め層を素子側に配置することができるため、より狭い領域に光を閉じ込めることができる。これにより、狭い領域で強振させることによって、より発光強度の高い光を得ることができる。
【0020】
また、第1電極および第2電極の層が上述した順に積層されている場合、接合部の金属イオンによる浸食が光閉じ込め層にまで達してしまうおそれがある。一般的に、接合部を構成する金属の反射係数は、光閉じ込め層の反射係数よりも小さいため、光閉じ込め層の浸食箇所では、その他の場所と比較して反射係数が小さくなり、全体として厚み方向における光閉じこめ効果が弱くなってしまうおそれがある。
【0021】
本発明では、光閉じ込め層は、バリアメタル層よりも素子側に配置されている。従って、接合部の金属イオンが光閉じ込め層まで浸食されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る発光素子の長手方向から見た断面図である。
図2】(a),(b)は、本実施形態に係る発光素子の長手方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態は、半導体レーザやLED光源として利用され、n型添加部分2側が正電圧、p型添加部分1側が負電圧となるように、順方向にバイアス電圧を印加することにより発光する発光デバイス100,200,300に本発明を適用した一例である。なお、発光デバイス100,200,300は、所定厚みを有し、厚み方向に直交する方向から見て矩形状をなす略直方体形状であるが、図面上では全形の図示を省略し、長手方向から見た断面図によって、その構成を説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、発光デバイス100は、発光素子10と、発光素子10の表面に形成されたp型電極20およびn型電極30とからなる。
【0026】
発光素子10は、シリコン等の間接遷移型の半導体にp型不純物が添加されたp型添加部分1と、同間接遷移型の半導体にn型不純物が添加されたn型添加部分2と、p型添加部分1とn型添加部分2との境界部分に形成されたpn活性部分3とからなる。p型添加部分1およびn型添加部分2の一部の領域は、電流が印加されて電子が付与されることによって発光する発光部となっている。また、pn活性部分3のすべての領域は、電流が印加されて電子が付与されることによって発光する発光部となっている。
【0027】
p型電極20は、発光素子10のp型添加部分1の上側表面に形成されている。また、p型電極20の上側表面には、はんだからなる接続部6が形成されている。さらに、接続部6には配線部材8が接合され、この配線部材8に接続された電源装置(不図示)から電流が供給される。n型電極30は、発光素子10のn型添加部分2の下側表面に形成されている。また、n型電極30の下側表面には、はんだからなる接続部7が形成されている。さらに、接続部7には配線部材9が接合され、この配線部材9に接続された電源装置(不図示)から電流が供給される。
【0028】
なお、以上は、後述する図2の(a),(b)に記載の形態(第2実施形態および第3実施径形態)においても構成が等しいため、以下では説明を割愛し、構成の異なるp型電極およびn型電極に特に着目して説明を行う。
【0029】
図1に示すように、p型電極20およびn型電極30は、発光素子10側から順に、発光素子10との接合性の高い部材からなるコンタクト層11,12と、接続部6,7との接合性の高い部材からなる接合層13,14とを有している。より具体的には、コンタクト層11,12は、例えば、Ni,Ti,W,Pb,Ta,Al,Cr,Y等からなる。さらに、コンタクト層11,12は、それらのうち、Al,Ti,Y,Cr等、発光素子10との間でオーミック接触可能なものであることがより好ましい。また、接合層13,14は、例えば、Au,Ag,Al,Cu等からなる。
【0030】
本実施形態では、p型電極20およびn型電極30は、発光素子10との接合性の高い部材からなるコンタクト層11,12と、接続部6,7との接合性の高い部材からなる接合層13,14とを有している。従って、発光素子10とp型電極20およびn型電極30、p型電極20およびn型電極30と接続部6,7とが剥離することを防止できる。また、コンタクト層11,12は、好ましくは、発光素子10とオーミック接触可能な部材からなる。従って、半導体と金属との界面の接触抵抗を無視できるほどに小さくすることができる。これにより、発光素子10に対して所望の電流を印加することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図2の(a)に示すように、p型電極40およびn型電極50は、第1実施形態において記載したコンタクト層11,12と接合層と、その間に形成されたバリアメタル層15,16とを有している。バリアメタル層15,16は、接続部6,7を構成するはんだに含まれる金属イオンが、発光素子10内まで浸食することを防止するためのものである。より具体的には、バリアメタル層15,16は、例えば、Ni,TiN,Ti,Ta,TaN,Pt,Fe等からなる。
【0032】
本実施形態では、p型電極40およびn型電極50は、コンタクト層11,12と接合層13,14と、その間に形成されたバリアメタル層15,16とを有している。従って、接合部6,7の金属イオンの浸食を、バリアメタル層15,16よりも上層までに留めることができる。これにより、接合部6,7の金属イオンがコンタクト層11,12および発光素子10まで浸食することを防止することができる。
【0033】
(第3実施形態)
図2の(b)に示すように、p型電極60およびn型電極70は、第1実施形態において記載したコンタクト層11,12と接合層13,14と、第2実施形態において記載したバリアメタル層15,16と、光閉じ込め層17,18とを有している。光閉じ込め層17,18は、その反射係数が0.5以上であって、発光素子10の厚み方向において、光を閉じ込めるためのものである。光閉じ込め層10は、例えば、Au,Al,Ag,Cu等からなる。コンタクト層11,12と接合層13,14とバリアメタル層15,16と光閉じ込め層17,18とは、発光素子10側から、コンタクト層11,12、光閉じ込め層17,18、バリアメタル層15,16、接合層13,14の順に積層されている。
【0034】
本実施形態では、p型電極60およびn型電極70は、反射係数が0.5以上である光閉じ込め層17,18を有している。従って、発光素子10の厚み方向において、p型電極60の光閉じ込め層17とn型電極70の光閉じ込め層18との間で光を閉じ込めることができる。これにより、発光素子10の厚み方向においても光を強振させて、発光強度を高めることができる。
【0035】
また、コンタクト層11,12と接合層13,14とバリアメタル層15,16と光閉じ込め層17,18とは、発光素子10側から、コンタクト層11,12、光閉じ込め層17,18、バリアメタル層15,16、接合層13,14の順に積層されている。従って、発光素子10側から、コンタクト層11,12、バリアメタル層15,16、光閉じ込め層17,18、接合層13,14の順に積層されている場合と比較して、光閉じ込め層17,18を発光素子10側に配置することができるため、より狭い領域に光を閉じ込めることができる。これにより、狭い領域で強振させることによって、より発光強度の高い光を得ることができる。さらに、光閉じ込め層17,18がバリアメタル層15,16よりも発光素子10側に配置されているため、接合部6,7の金属イオンが光閉じ込め層17,18まで浸食されることを防止することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0037】
本実施形態では、コンタクト層11,12、接合層13,14、バリアメタル層15,16および光閉じ込め層17,18は、各層ごとにひとつの効果を有する場合について記載したが、例えば、1つの層によって複数の効果を得られる材質で構成されていても構わない。より具体的には、Alによれば、ひとつの層によって、コンタクト層と光閉じ込め層とを兼ねることができる。また、Ni,Ti,Taによれば、コンタクト層とバリアメタル層とを兼ねることができる。また、例えば、グラフェン,ITO,ZnO,SnO,FTO等により、p電極およびn電極を1層で構成しても構わない。
【0038】
また、本実施形態に係る発光デバイスは、半導体レーザのみならず、LED光源等に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 p型活性部分
2 n型活性部分
3 pn活性部分
10 発光素子
20 p型電極
30 n型電極
40 p型電極
50 n型電極
60 p型電極
70 n型電極
100 発光デバイス
図1
図2