(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-104007(P2017-104007A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】二次側からのフィードバックを有する非接触コネクタシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20170512BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20170512BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20170512BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
H02J50/80
H04B5/02
H02J50/12
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-218037(P2016-218037)
(22)【出願日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】15194497.2
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503168201
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ネーデルランド ビーヴイ
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Nederland BV
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100189360
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ギード ハブラーケン
(72)【発明者】
【氏名】イエーレン ディトネル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン マンク
(72)【発明者】
【氏名】レザ ホセイニ
(72)【発明者】
【氏名】サミール アブルカッシーム
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ランゲ
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB05
5K012AE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一次側の誘導結合要素と、入力電力から一次側の誘導結合要素にて磁界を発生するための共振回路とを有する送電コネクタを有する非接触コネクタシステムを提供する。
【解決手段】送電コネクタ102と嵌合可能な受電コネクタ104が、一次側の誘導結合要素Lpと電磁的に結合される時に電力を受け取るように動作可能な二次側の誘導結合要素Lsを有する。送電コネクタと受電コネクタの間には双方向のデータリンクが形成される。二次側のセンシングユニット136が、少なくとも1つの二次側の動作パラメータを測定するように動作可能であり、一次側の共振回路110の動作は、少なくとも1つの二次側の動作パラメータと少なくとも1つの一次側の動作パラメータの組み合わせに応じて制御される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コネクタ(102)と、前記送電コネクタ(102)と嵌合可能な受電コネクタ(104)とを備える非接触コネクタシステム(100)であって、
前記送電コネクタ(102)は、
入力電力を提供する電源に接続可能な電力入力端子に接続される一次側の誘導結合要素(Lp)と、
前記入力電力から前記一次側の誘導結合要素(Lp)にて磁界を発生するための共振回路(110)と、
前記送電コネクタと受電コネクタ(102,104)との間に双方向のデータリンクが形成されるようにデータを送信および受信するための一次側のデータトランシーバ要素(124)と、
前記送電コネクタ(102)に接続された第1の外部部品と通信するために前記一次側のデータトランシーバ要素(124)に接続された一次側のデータ通信インターフェース(122)と、
前記共振回路(110)、前記一次側のデータ通信インターフェース(122)、および前記一次側のデータトランシーバ要素(124)の動作を制御するための一次側の制御ユニット(134)とを有し、
前記受電コネクタ(104)は、
前記一次側の誘導結合要素(Lp)と電磁結合されるときに電力を受け取るように動作可能である二次側の誘導結合要素(Ls)と、
前記送電コネクタ(102)と前記受電コネクタ(104)の嵌合状態において、前記一次側のデータトランシーバ要素(124)と双方向のデータリンクを形成するように動作可能である二次側のデータトランシーバ要素(128)と、
前記受電コネクタ(104)に接続された第2の外部部品と通信するために前記二次側のデータトランシーバ要素(128)に接続された二次側のデータ通信インターフェース(132)を有し、
前記受電コネクタ(104)は、少なくとも1つの二次側の動作パラメータを測定するように動作可能である二次側のセンシングユニット(136)をさらに備え、前記一次側の制御ユニット(134)は、前記少なくとも1つの二次側の動作パラメータと少なくとも1つの一次側の動作パラメータの組み合わせに応じて前記共振回路(110)の動作を制御するために前記一次側のデータ通信インターフェース(122)に接続される非接触コネクタシステム。
【請求項2】
前記一次側のトランシーバ要素(124)は、一次側のアンテナ要素(126)を備え、前記二次側のトランシーバ要素(128)は、二次側のアンテナ要素(130)を備え、当該コネクタシステム(100)の嵌合状態における前記アンテナ要素(126,130)は、双方向の無線周波数通信を可能にするように動作可能である請求項1に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項3】
前記一次側の動作パラメータは、前記一次側の誘導結合要素(Lp)にかかる一次側の電圧(Vp)を備え、前記二次側の動作パラメータは、前記二次側の誘導結合要素にかかる二次側の電圧(Vs)を備え、前記一次側の制御ユニット(134)は、これらのパラメータに基づいて、前記一次側の誘導結合要素(Lp)と前記二次側の誘導結合要素(Ls)との間の距離を計算するように、又は、これらのパラメータに基づいて、前記一次側の入力における電力と前記二次側における出力電力のと間の電力損失を計算するように動作可能である請求項1又は2に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項4】
前記第1および第2のアンテナ要素(126,130)は、各々、円偏波アンテナを備える請求項2又は3に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項5】
前記二次側のセンシングユニット(136)は、前記受電コネクタの温度を示す温度値を発生するための温度測定ユニットを備え、前記温度値は、前記双方向のデータリンクを介して一次側へ送信される請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項6】
前記受電コネクタ(104)は、嵌合状態において、前記一次側の誘導結合要素(Lp)又は一次側の補助巻線(Lpm1)に誘導結合される二次側の補助巻線(Lsm)を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項7】
前記送電コネクタ(102)は、一次側の補助巻線(Lpm1)と、それに結合される高周波源とを備え、前記二次側の補助巻線は、前記二次側および一次側の補助巻線が適切に嵌合されるときに高周波数の共振振動を行うように動作可能である二次側の共振回路に結合され、前記二次側のセンシングユニットは、前記高周波数の共振振動の有無を検出するように動作可能である請求項6に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項8】
前記二次側のトランシーバ要素(128)は、前記二次側のセンシングユニットによって発生される制御信号を前記二次側のデータ通信インターフェースによるデータ出力と結合するための変調ユニットを備える請求項2〜7のいずれか一項に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項9】
前記一次側のトランシーバ要素(124)は、前記制御信号と前記データを分離するための復調ユニットを備える請求項8に記載の非接触コネクタシステム。
【請求項10】
送電コネクタ(102)と受電コネクタ(104)との間で電力を誘導的に伝送するための非接触コネクタシステム(100)を制御する方法であって、前記方法は、
共振回路によって入力電力を変換することによって一次側の誘導結合要素(Lp)にて磁界を発生することと、
前記一次側の誘導結合要素と電磁的に結合されるときに電力を受け取るように二次側の誘導結合要素を動作することと、
前記送電コネクタと前記受電コネクタの間で双方向のデータリンクを確立することと、
前記受電コネクタに設けられた二次側のセンシングユニットによって少なくとも1つの二次側の動作パラメータを測定することと、
前記少なくとも1つの二次側の動作パラメータを示す二次側の制御データと、少なくとも1つの一次側の動作パラメータを示す一次側の制御データとの組み合わせに応じて前記共振回路の動作を制御することを備える方法。
【請求項11】
前記一次側の動作パラメータは、前記一次側の誘導結合要素にかかる一次側の電圧(Vp)を備え、前記二次側の動作パラメータは、前記二次側の誘導結合要素にかかる二次側の電圧(Vs)を備え、これらのパラメータに基づいて、前記一次側の誘導結合要素と前記二次側の誘導結合要素の間の距離が計算される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記一次側の動作パラメータは、前記一次側の誘導結合要素に流れる電流(Ip)を備え、前記二次側の動作パラメータは、前記二次側の誘導結合要素にかかる二次側の電圧(Vs)を備え、これらのパラメータに基づいて、前記一次側の誘導結合要素と前記二次側の誘導結合要素の間の距離が計算される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記二次側の電圧の測定を行う間に負荷を遮断することをさらに備える請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記一次側の動作パラメータは、前記一次側の誘導結合要素に流れる電流(Ip)又は一次側の補助巻線(Lpm1)に流れる補助電流(Ipm)、又は前記一次側の補助巻線(Lpm1)にかかる補助電圧(Vpm)を備え、前記二次側の動作パラメータは、前記一次側の誘導結合要素又は前記一次側の補助巻線(Lpm1)に誘導結合される二次側の補助巻線にかかる二次側の補助電圧(Vsm)を備え、これらのパラメータに基づいて、前記一次側の誘導結合要素と前記二次側の誘導結合要素の間の距離が計算される請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記二次側の制御データは、前記送電コネクタと前記受電コネクタの間の前記双方向のデータリンクを介して伝送されるデータと結合される請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触コネクタシステムと、送電コネクタと受電コネクタの間で電力を誘導的に伝送するために非接触コネクタシステムを制御する付属的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導的なエネルギー伝送の原理は、複数の用途において、多くの用途の技術開発の物理的根拠となっている。誘導的なエネルギー伝送の場合に必須の要素が疎結合導体であり、これは、相手側デバイスにおけるインダクタすなわち磁気巻線との一次側の送電デバイスにおけるインダクタすなわち磁気巻線の磁気結合を意味している。動作時、一次側の部分と二次側の部分との間で、エネルギーが誘導的に伝送される。二次側の部分を一次側の部分から移動させると、エネルギー伝送は中断する。この意味で、「非接触」という用語は、一次側の部分と二次側の部分の夫々において対応する電気コンタクトとの間でオーミック接続しなくてもエネルギー伝送が実現可能であることを示すために使用される。
【0003】
電気コンタクトの排除は、様々な適用領域における多くの用途に対して非常に重要である。これは、電源とシンクとの間の電気接続の機械的設定において高い需要のある用途に特に当てはまり、誘導的なエネルギー伝送(IE)の適用によって、技術的に複雑なプラグおよびケーブルを回避することができる。さらに、外部からのコネクタ機器によって機械的設定を不必要に複雑にすることなく、IEに基づく技術的なエネルギー供給システムの部品を環境影響から保護することができる。さらに、IEに関する一部の適用領域では、技術的な実現可能性の観点から、電気的な接続部の使用を回避しなければならない。例えば、爆発の可能性のある環境において、すなわち導電性および/又は攻撃性の媒体内でシステムの部品が動作しているとき、非接触式のエネルギー伝送を可能にするシステムに頼ることは技術的に有利である可能性がある。さらに、IEの使用により、デバイスおよび結果的にこれらデバイスの電気コンタクトが高い応力にさらされるシステムの信頼性を高めることができる。これは、一方で、IEに基づく部品により、摩擦によって摩耗し易いワイパコンタクトの使用を避けることができるため、回転部品又は可動部品を備えるシステムに関して当てはまる。さらに、IE技術は、IE技術を用いなければ複数のプラグに合わせて寸法を設定されなければならないコネクタを備える装置において有利に使用されることができる。
【0004】
互いにオーミック接触することなく電力、信号、およびデータを確実に伝送する非接触コネクタは、様々な適用分野において使用されている。特に、過酷な環境において確実に接続された状態を維持する必要がある可動部品および電子部品が含まれる産業ロボットシステムの分野では、電力およびデータを効果的に伝送し、水、塵、又は振動等の過酷な環境に影響されない非接触コネクタシステムが必要である。
【0005】
かかる非接触コネクタシステムの一例が、欧州特許第2581994号明細書に開示されている。この文献によれば、一次側から二次側へ電力をワイヤレスで伝送するために嵌合可能な一次側および二次側の誘導結合要素を有する非接触コネクタシステムが提供される。さらに、このコネクタシステムの嵌合した2つの部分の間に無線周波数のデータリンクを確立する2つのアンテナ要素を介して、双方向のデータ伝送が行われる。
【0006】
現在、ティーイーコネクティビティ社(TE Connectivity)が、ARISOという名称の非接触コネクタシステムを製造しており、これを、
図1に概略的に描写する。この既知の非接触コネクタシステム200は、送電コネクタ202および受電コネクタ204を備える。送電コネクタ202は、入力電源から電力が供給される一次側の誘導結合要素Lp(一次側のパワーコイルとも呼ぶ)を有する。入力電力は、例えば、DC/DCコンバータ206および後続のDC/ACコンバータ208によって交流電圧に変換される直流電力でもよい。
図1に概略的に示されているように、パワーコイルLpは、パワーコイルLpに並列なキャパシタCpを備える共振回路210の一部である。
【0007】
送電コネクタ202と受電コネクタ204の2つの嵌合面212,214が十分に近接している場合、二次側のパワーコイルLsは、一次側のパワーコイルLpに磁気的に結合している。二次側のパワーコイルLsは、二次側の共振回路216の一部である。この電磁結合により、一次側から二次側へ電力が伝送される。二次側の共振回路216は、調整した直流出力電力を発生する整流回路218(例えばブリッジ整流器を備える)および後続のDC/DCコンバータ224に接続される。
【0008】
電力伝送に加え、非接触コネクタシステム200は、このコネクタシステムを通してデータを伝送するための双方向のデータリンクを確立するための手段をさらに備える。一次側のデータ通信インターフェース222が、送電コネクタ202に接続された第1の外部部品(図示せず)と通信する。1つ以上のアンテナ要素226を有する一次側のデータトランシーバ要素224が、通信インターフェース222からのデータ信号を無線信号に変換し、それに対応して、受信した無線信号を、通信インターフェース222に入力される電気的なデータ信号に変換する。
【0009】
受電コネクタ204は、ワイヤレスの近傍界のデータリンクを介して一次側から信号を受信し、二次側から一次側に向かって信号を送信する1つ以上のアンテナ230を有する対応する二次側のデータトランシーバ要素228を備える。二次側のデータ通信インターフェース232が、受電コネクタ204に接続された第2の外部部品(図示せず)と通信するために二次側のデータトランシーバ要素228に接続されている。
【0010】
一次側の制御ユニット234が、共振回路210、一次側のデータ通信インターフェース222、および一次側のデータトランシーバ要素224の動作を制御するために設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、電力とデータの両方を伝送する既知の非接触コネクタシステムは、効率的に電力を伝送するための共振駆動回路を使用しており、二次側から測定および送信された情報を制御に利用できないという意味で、フィードフォワード制御に基づいてこれらの共振システムを制御している。これは、特に、全体的なサイズに関して厳しい要求事項を満足しなければならない非接触コネクタシステムに当てはまる。
【0012】
その結果、特にエネルギー効率が良く、安全で、ロバストである一方、特にコスト効率の良い方法で製造されることができる電力とデータの両方を伝送する非接触コネクタシステムの必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態が、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明に係る非接触コネクタシステムは送電コネクタを備え、この送電コネクタは、入力電力を提供する電源に接続可能な電力入力端子に接続される一次側の誘導結合要素と、前記入力電力から前記一次側の誘導結合要素にて磁界を発生するための共振回路と、前記送電コネクタと受電コネクタとの間に双方向のデータリンクが形成されるようにデータを送信および受信するための一次側のデータトランシーバ要素と、前記送電コネクタに接続された第1の外部部品と通信するために前記一次側のデータトランシーバ要素に接続された一次側のデータ通信インターフェースと、前記共振回路、前記一次側のデータ通信インターフェース、および前記一次側のデータトランシーバ要素の動作を制御するための一次側の制御ユニットとを有する。
【0015】
さらに、当該非接触コネクタシステムは、前記伝送コネクタと嵌合可能な受電コネクタを備え、この受電コネクタは、前記一次側の誘導結合要素と電磁結合される時に電力を受け取るように動作可能である二次側の誘導結合要素と、前記送電コネクタと前記受電コネクタの嵌合状態において、前記一次側のデータトランシーバ要素と双方向のデータリンクを形成するように動作可能である二次側のデータトランシーバ要素と、前記受電コネクタに接続された第2の外部部品と通信するために前記二次側のデータトランシーバ要素に接続された二次側のデータ通信インターフェースとを有する。
【0016】
本発明は、前記受電コネクタが、少なくとも1つの二次側の動作パラメータを測定するように動作可能である二次側のセンシングユニットをさらに備え、前記一次側の制御ユニットが、前記少なくとも1つの二次側の動作パラメータと少なくとも1つの一次側の動作パラメータの組み合わせに応じて前記共振回路の動作を制御するために前記一次側のデータ通信ユニットに接続されるという思想に基づくものである。
【0017】
二次側の1つ以上のパラメータを検出し、その情報を双方向のデータリンクを介して一次側のコネクタに伝送することによって、当該コネクタシステムの性能を大幅に向上させることができる。二次側および一次側では様々なパラメータが監視されることができ、その情報は、電力伝送を制御するために一次側の制御ユニットによって使用されることができる。
【0018】
特に、本発明に係る非接触コネクタシステムの熱管理は、送電コネクタおよび受電コネクタの温度を測定することによって向上させることができる。
【0019】
さらに、一次側の誘導結合要素および二次側の誘導結合要素にかかる電圧を監視することによって、遠距離給電(power over distance)および範囲外管理(out of range management)を実施することができる。これら2つの電圧の比は、2つの誘導結合要素の間の距離に関する測定基準として使用することができる。通常、伝送可能な最大電力は、送電コネクタと受電コネクタの間の距離が大きくなると低減する。現在のコネクタシステムでは、電力伝送は、所定のレベルに最大化されており、この距離が特定のレベル辺りである場合はゼロになるように設定されている。一次側および二次側の誘導結合要素にかかる電圧の比を評価することにより、当該コネクタシステムは、一次側の誘導結合要素と二次側の誘導結合要素との間の現在の距離が分かり、そこから伝送されることができる電力量を計算することができる。さらに、必要に応じて、実際の距離に関する情報、伝送可能な電力、およびこの距離が遠過ぎる(言い換えれば、受電コネクタが範囲外である)という事実が、外部部品へ伝送されることができる。
【0020】
本発明に係る非接触コネクタシステムは、さらに、一次側および二次側の誘導結合要素にかかる電圧と共に前記送電コネクタと受電コネクタの温度を監視することによって、温度に依存する電力伝送を実施することができるという利点を有する。従来、電力レベルが高いほど、このシステムでは送電側と受電側の両方において温度が高くなる。本発明によれば、送電コネクタおよび受電コネクタにおける温度レベルが低い場合に、伝送可能な電力レベルを上げることができる。
【0021】
本発明によれば、負荷および送電コネクタと受電コネクタの嵌合端の間の距離に応じてパワーコイルドライバ(例えば、プッシュプルドライバ)の直流入力電圧を変えることによって、より単純な制御アルゴリズムが実施されることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る非接触コネクタシステムは、送電コネクタとコネクタ内の電力トランシーバにおける最低電力レベル(the low)を監視することによって、異物検出(FOD)を行うことができるという利点を有する。伝送された電力が、受電側の負荷および距離に依存する期待値辺りであれば、当該システムはスイッチオフされることができる。
【0023】
さらに、電力部が停止したままでもデータ伝送部が起動され、データリンクを確立することができるため、電力伝送のスイッチオンおよびオフをより確実なものにすることができる。これは、主に、データ伝送部が低電圧のみを必要とし、供給電力をほとんど必要としないということによる。
【0024】
有利なことに、本発明に係る非接触コネクタシステムは、低電圧ロックアウト閾値が当該システムの入力電圧を測定することによってヒステリシスも含むようにこの閾値に関してプログラム可能であることができる。
【0025】
本発明に係る非接触コネクタシステムは、好ましくは、第1のアンテナ要素および第2のアンテナ要素を備え、これらのアンテナ要素は、当該コネクタシステムの嵌合状態において、双方向の無線周波数通信を可能にするように動作可能である。無線周波数通信は、ワイヤレスの近傍界のデータリンクを提供する十分に確立されたロバストな方法である。しかしながら、本発明に係る非接触コネクタシステムのために、赤外線によるすなわち光学的なデータ伝送を使用することもできることは当業者には明白である。特に、第1および第2のアンテナ要素は、円偏波アンテナを備えてもよい。これは、当該非接触コネクタシステムが、これらの長手軸に対して嵌合方向に関して完全に回転対称であり、従って、送電コネクタおよび受電コネクタの回転角から独立した嵌合が保証されるという利点を有する。円偏波アンテナは、適切な接続を行うために左旋又は右旋のいずれかであることができる。
【0026】
当該非接触コネクタは、さらに、夫々2つのアンテナ要素、すなわち、各コネクタによるデータ送信を可能にするための第1のアンテナ要素と、他方のコネクタからのデータを受信するための第2のアンテナ要素を含んでもよい。好ましくは、各コネクタ上の2つのアンテナ要素は、アップリンクチャネル(受電コネクタから送電コネクタへ)と、ダウンリンクチャネル(送電コネクタから受電コネクタへ)を互いに分離するために、異なる回転方向の偏波を有する。
【0027】
本発明の有利な一実施形態によれば、受電コネクタは、嵌合状態において、一次側の誘導結合要素又はさらなる一次側の補助巻線に誘導結合される二次側の補助巻線を備える。このような二次側のさらなる巻線は、送電コネクタと受電コネクタの間の距離測定を行うために有利に使用されることができる。
【0028】
さらに、一次側のパワーコイルおよび二次側のパワーコイル上のさらなる補助巻線は、改良した異物検出(FOD)をもたらすために使用されることができる。
【0029】
有利なことに、一次(すなわち、送電)側と二次(すなわち、受電)側の両方に、負荷のない、すなわち、パワーコイルに接続されていないさらなる巻線が追加される。一次/送電側は、一次側のキャパシタと二次側における共振回路によって(適切な部品を選択することによって)共振が生じるように小さな高周波信号によって駆動されることができる。
【0030】
送電側および受電側の両方におけるコイルは同一の周波数に調整される場合、そのように作り出された共振は、磁界に影響を及ぼす何らかの異物によって容易に乱されてしまう。この擾乱は、共振の離調を介して測定されることができる。これにより、この方法は、異物の検出を向上する。
【0031】
距離測定に関して同一のさらなる巻線が使用される場合、距離測定と異物測定の間の干渉を避けるために注意しなければならない。これは、例えば、電力伝送に使用される周波数(通常200kHz前後)よりも大幅に高い共振周波数をとることによって行うことができる。
【0032】
第1の有利な実施形態によれば、二次側からのフィードバックを実施するために、直交振幅変調(QAM)方式が使用されることができる。しかしながら、本発明に係る非接触コネクタシステムと共に使用することもできる多くのその他の十分に確立された無線周波数(RF)変調方式が存在することは当業者には明白である。
【0033】
本発明によれば、当該非接触コネクタシステムの2つのコネクタの間でデータを双方向に伝送する場合、第1の外部部品から第2の外部部品へ伝送されなければならないペイロードデータを含む高ビットレートのデータチャネルと、一次側へ戻されるように結合される低ビットレート制御データを備える制御チャネルを分離するために、幾つかの異なる分離方式が使用されることができる。
【0034】
これは一般的に知られているように、分離は、時間領域では時分割多重化を行うことによって、周波数領域では周波数分割多重化を行うことによって、空間領域では、各コネクタにおいて異なる種類のデータを送信および受信するために2つの物理的に分離されたアンテナを使用することによってなされることができる。後者の場合、一方はデータストリームのため、他方は制御ストリームのための2つの完全なRFシステムが実施される。また、アンテナは互いに分離されている。
【0035】
さらに、無線波の異なる偏波を使用することにより、チャネルの分離を達成することもできる。この場合、同様に2つの完全なRFシステムが実施されるが、2つのアンテナを使用する代わりに、1つのアンテナのみが使用される。例えば、水平偏波又は右旋偏波によって1つの信号が伝送され、垂直偏波又は左旋偏波を介して他方の信号が伝送される。
【0036】
また、本発明は、送電コネクタと受電コネクタとの間で電力を誘導的に伝送するための非接触コネクタシステムに対応する制御方法に関する。当該方法は、次のステップ、すなわち、
共振回路によって入力電力を変換することによって一次側の誘導結合要素にて磁界を発生するステップと、
前記一次側の誘導結合要素と電磁的に結合された時に電力を受け取るように二次側の誘導結合要素を動作するステップと、
前記送電コネクタと前記受電コネクタの間で双方向のデータリンクを確立するステップと、
前記受電コネクタに設けられた二次側のセンシングユニットによって少なくとも1つの二次側の動作パラメータを測定するステップと、
前記少なくとも1つの二次側の動作パラメータを示す二次側の制御データと、少なくとも1つの一次側の動作パラメータを示す一次側の制御データとの組み合わせに応じて前記共振回路の動作を制御するステップとを備える。
【0037】
かかる制御方法に係る非接触コネクタシステムを動作させることにより、電力および通信データの特に安全かつ電力効率の良いワイヤレス伝送が達成できる。
【0038】
当該方法のさらなる一実施形態によれば、双方向のデータリンクは、直列ビットストリームから無線周波数信号を発生するために直交振幅変調(QAM)を使用する。
【0039】
当該方法のさらなる一実施形態によれば、双方向のデータリンクは、二次側の制御データを双方向のデータリンクを介して送信されるデータと組み合わせるために時分割多重化又は周波数分割多重化を使用する。
【0040】
当該方法の他の実施形態によれば、双方向のデータリンクは、二次側の制御データを双方向のデータリンクを介して送信されるデータと組み合わせるために空間分離を使用する。
【0041】
当該方法のさらなる一実施形態によれば、双方向のデータリンクは、全二重を実現するためにRF信号の左旋および右旋偏波を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
添付の図面は、本明細書に援用され、本発明の幾つかの実施形態を説明するために本明細書の一部を形成する。これらの図面は、本明細書と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。これらの図面は、本発明が如何にして作られ、使用されることができるかの好適且つ代替的な例を説明するためのものに過ぎず、本発明を説明および記載された実施形態のみに限定するものとしてみなされるべきではない。さらに、それらの実施形態のいくつかの態様が、本発明に係る課題解決法を―個別に又は様々な組み合わせで―形成してもよい。以下で説明される実施形態は、従って、単独、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかで考えられることができる。さらなる特徴および利点は、添付の図面に示すように、本発明の様々な実施形態の次のより具体的な説明から明らかになり、添付の図面では、同様の参照記号は、同様の要素を指している。
【
図1】従来の非接触コネクタシステムのブロック図である。
【
図2】本発明に係る非接触コネクタシステムの斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る非接触コネクタシステムのブロック図である。
【
図4】本発明に係るトランシーバユニットの送信部の概略図である。
【
図5】本発明に係るトランシーバユニットの受信部の概略図である。
【
図6】データチャネルと制御チャネルを送信するための時分割多重化方式を説明する概略図である。
【
図7】データチャネルと制御チャネルを受信するための時分割多重化方式を説明する概略図である。
【
図8】周波数領域におけるチャネル分離のさらなる技術を説明する概略図である。
【
図9】第1の実施形態に係る誘導電力伝送を説明する回路図である。
【
図10】第2の実施形態に係る誘導電力伝送を説明する回路図である。
【
図11】第1の実施形態に係る誘導電力伝送を説明する回路図である。
【
図12】二次側の補助巻線を備える距離測定を説明する回路図である。
【
図13】一次側および二次側の補助巻線を備える距離測定を説明する回路図である。
【
図14】一次側の補助巻線と二次側の補助巻線とを備える、さらなる実施形態に係る電力伝送回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、これから、図面を参照してさらに詳細に説明するが、まず
図2を参照する。
図2は、本発明の考え得る一実施形態に係る非接触コネクタシステム100の斜視図を示す。非接触コネクタシステム100は、第1の端子101を介して電源(図示せず)に接続可能な送電コネクタ102を備える。送電コネクタ102は、非接触コネクタシステム100の一次側を画定する。非接触コネクタシステム100は、非接触コネクタシステム100の二次側を画定する受電コネクタ104をさらに備える。第2の端子103が、二次側の外部部品(図示せず)に当該システムを接続するために設けられている。
【0044】
送電コネクタ102および受電コネクタ104の夫々の嵌合面112,114が互いに十分に近づけられると、受電コネクタ104は、送電コネクタ102と電磁的に結合するため、一次側から二次側への非接触の誘導的なエネルギー伝送が発生可能である。
【0045】
誘導電力伝送を可能にすることに加えて、非接触コネクタシステム100は、2つのコネクタ102,104の間で双方向のデータリンクを設けることもできる。
【0046】
図2に示す非接触コネクタシステム100は、傾き、曲げ、ずれを含む運動の自由度が高いという利点を有する。さらに、流体および(非強磁性の)壁を介して電力およびデータ信号を伝送することによって、改良された設計柔軟性およびコスト削減が達成できる。さらに、この接続により、360°も超える角度により速く回転することを可能にする回転の自由がもたらされる。非接触コネクタシステム100は、湿った環境および埃っぽい環境での無限の嵌合サイクルを保証し、それによって、メンテナンスコストを低減する。耐振性および完全密閉されたコネクタにより、厳しい環境において安全かつ確実な接続がもたらされることができる。
【0047】
図3は、本発明に係る非接触コネクタシステム100の第1の実施形態のブロック図を示す。
図2を参照して既に言及したように、非接触コネクタシステム100は、送電コネクタ102および受電コネクタ104を備える。送電コネクタ102は、入力電源から電力を供給される一次側の誘導結合要素Lp(一次側のパワーコイルとも呼ぶ)を有する。入力電力は、例えば、DC/DCコンバータ106および後続のDC/ACコンバータ108によって交流電圧に変換される直流電力でもよい。これは
図3に概略的に示されているが、パワーコイルLpは、パワーコイルLpに並列なキャパシタCpを備える共振回路110の一部である。しかしながら、共振回路110は、当然のことながら、直列共振回路でもよい。
【0048】
送電コネクタ102および受電コネクタ104の嵌合面112,114が互いに十分に近接しているとき、二次側のパワーコイルLsは、一次側のパワーコイルLpに磁気的に結合されている。二次側のパワーコイルLsは、二次側の共振回路116の一部である。この電磁結合により、一次側から二次側へと電力が伝送される。二次側の共振回路116は、調整した直流出力電力を発生する整流回路118(例えばブリッジ整流器を備える)および後続のDC/DCコンバータ124に接続される。
【0049】
電力伝送に加えて、非接触コネクタシステム100は、このコネクタシステムを通してデータを伝送するために双方向のデータリンクを確立するための手段をさらに備える。一次側のデータ通信インターフェース122が、送電コネクタ102に接続された第1の外部部品(図示せず)と通信する。1つ以上のアンテナ要素126を有する一次側のデータトランシーバ要素124が、通信インターフェース122からのデータ信号を無線信号に変換し、それに対応して、受信した無線信号を、通信インターフェース122に入力される電気的なデータ信号に変換する。
【0050】
受電コネクタ104は、ワイヤレスの近傍界の無線リンクを介して一次側から信号を受信し、二次側から一次側に向かって信号を送信する1つ以上のアンテナ要素130を有する対応する二次側のデータトランシーバ要素128を備える。二次側のデータ通信インターフェース132が、前記受電コネクタ104に接続された第2の外部部品(図示せず)と通信するために二次側のデータトランシーバ要素128に接続される。
【0051】
一次側の制御ユニット134が、共振回路110、一次側のデータ通信インターフェース122、および一次側のデータトランシーバ要素124の動作を制御するために設けられる。
【0052】
本発明によれば、受電コネクタ100は、二次側のセンシングユニット136をさらに備える。二次側のセンシングユニット136は、少なくとも1つの二次側の動作パラメータを監視し、一次側へ送信されて一次側の制御ユニット134によって評価される制御信号138を発生する。言い換えれば、送電コネクタ102と受電コネクタ104の間のデータリンクは、この非接触コネクタシステムによって相互接続される2つの部品の間で通信されるペイロードデータに加えて、二次側のパラメータに関する情報を一次側の制御ユニット134に提供するさらなる制御データを伝達する。
【0053】
この情報により、非接触コネクタシステムの全体的な性能を向上することが可能になる。さらに、一次側の制御ユニット134も、一次側で1つ以上の動作パラメータを測定するための手段を備えていてもよい。
【0054】
特に、本発明によれば、次のパラメータが監視および制御されうる。
【0055】
トランスミッタ側では、次のパラメータを測定することができる。
a.入力電圧および入力電流、その結果として、入力電力が分かる
b.送電コネクタ102の温度
c.DC/ACコンバータ108に関する入力電圧
d.一次側のパワーコイルLpにかかる電圧Vp、一次側のパワーコイルLpを通る電流、および一次側のパワーコイルLpにかかる電圧Vpと一次側のパワーコイルLpを通る電流の間の位相、その結果として、伝送された電力が分かる
e.一次側のデータ通信インターフェース122上のデータの存在、すなわち、データが伝送されるか否か
【0056】
レシーバ側では、次のパラメータを測定することができる。
a.出力電圧および出力電流、その結果として、出力電力が分かる
b.受電コネクタ104の温度
c.二次側のパワーコイルLsにかかる電圧Vs、二次側のパワーコイルLsを通る電流、および二次側のパワーコイルLsにかかる電圧Vsと二次側のパワーコイルLsを通る電流の間の位相、その結果として、受容された電力が分かる
d.二次側のデータ通信インターフェース132上のデータの存在、すなわち、データが伝送されるか否か
【0057】
VpおよびVsに関する情報を有することにより、システム制御は、送電コネクタ102と受電コネクタ104の間の距離を決定することができる。この距離を知っていることにより、確実な遠距離給電(power−over−distance)ディレーティング等の機能が可能になる。
【0058】
有利なことに、本発明に係るフィードバックを提供することにより、非接触コネクタシステム100の次のシステムの特徴および特性をもたらすことができる。
1.低電圧ロックアウト(ヒステリシス)
送電コネクタ102における入力電圧を監視することにより、信頼性のあるヒステリシスを含む改良された低電圧ロックアウト機構を実施することができる。
2.突入電流制限
受電コネクタ104は、送電コネクタ102が起動している最中であればスタンバイ状態になることができる。これにより、レシーバ側での突入電流が低減されることになる。一旦送電コネクタ102が完全な動作状態になれば、受電コネクタ104は、通常動作に入ることができる。
3.ソフトスタート
突入電流の制限から生じる特徴として、ソフトスタート機能をさらに実施することができる。
4.電力出力短絡保護(定電流/電流フォールドバック)
図1を参照して説明される従来のコネクタシステムに関しては、送電コネクタの出力において短絡がある場合、システム制御が絶えず電力出力をアクティブにしようとするという欠点がある。出力電圧および電流を監視することにより、この絶え間ないスイッチオン/スイッチオフ挙動を必要に応じて回避することができる。
5.電力の動作上の即応性
受電コネクタ104の側の電力レベルに関する情報を受信することにより、動作上の即応性に達したときにフィードバック信号を送信することができる。
6.出力範囲外(Out−of−Power Range)
送電コネクタ102と受電コネクタ104の間の距離が分かっている場合、動作中のシステムを保証することができる一定の距離における最低の電力レベルを定めることができる(所謂、遠距離給電(power−over−distance)ディレーティング)。この距離(すなわち、負荷)が大きくなり過ぎた場合、この非接触コネクタシステムは、確実にスイッチオフされることができる。
7.過熱防止(ヒステリシス)
この非接触コネクタシステムの温度は、周囲温度およびデバイス内の温度上昇という2つの因子に基づいている。現在、トランスミッタ側の温度のみが監視されており、レシーバがオーバーヒートする可能性を残している。レシーバ側の温度を監視することにより、両側での(過度な)温度上昇の制御が可能になり、臨界温度の際に、このシステムを電源オフすることができる。
さらに、起動時と内部温度上昇を決定できる時点より後の温度および一種の過熱給電(power−over−temperature)の測定を実施することができる。
8.異物保護
現在は、レシーバ側での電力出力が不明であるため、フェイルセーフ異物保護はほとんど不可能である。このシステムは、大き過ぎる電力が入力側から引き出されるときはシャットダウンするが、出力側には電力が供給されるため、トランスミッタとレシーバ側の間の金属部品では相当な電力が未だに生じる可能性がある。トランスミッタとレシーバ側の両方における電力レベルを知ることにより、電力が送られる箇所のはるかに良い知識を利用することができるようになり、従って、異物保護機能を実質的に向上させることができる。
9.データ逆極性保護
入力線上にデータが存在するか否かに関するフィードバック情報を提供することにより、本システムは、逆極性故障が考えられる場合に、電力スイッチオフを検討することもできるようになる。
10.データ出力短絡保護
データインターフェース上の短絡のフィードバックにより、システムのシャットダウンひいてはシステムの保護が許可される。
11.データの動作即応性
規定された最低電力レベルにおける即応性が達成される。この電力レベルには、電力が、適用可能な最低ビットレートに関してRFチップをサポートするのに十分に高いときに到達する。また、さらなる距離情報により、規定された一定の距離に合致する電力レベルおよびビットレートを保証することができる。
12.診断法
一次側および二次側の動作パラメータのさらなる情報および比較可能な概要は、任意の事後解析をサポートし、従って、誤動作を診断し、リアルタイムのシステム制御を可能にする。さらに、オペレータは、システムの状態と、短絡、過熱等の潜在的な故障に関して知ることができる。
13.プログラマビリティ
システムの各相手側の電力とRF部の間のさらなる制御インスタンスにより、ファームウェアに関するプログラマビリティを可能にすることができる。例えば、最大の電力又はデータレートをソフトウェアを介して制御することができる。
14.外部ウェイクアップ
受電コネクタは、トランスミッタ側から又はそのデータ通信インターフェース132からウェイクアップを受け取るるまでスタンバイ状態にすることができる。
【0059】
双方向のワイヤレスデータリンクを介して伝送されるその他の(ペイロード)データと共に制御データ138をフィードバックするために、本発明は、この制御データをペイロードデータストリームに取り込む幾つかの技術を提供する。
【0060】
制御データ138は、ペイロードデータストリームが結合プロセスの影響を受けないように、送電コネクタ102に送信されるペイロードデータおよび受電コネクタ104と結合されることが重要である。
【0061】
アンテナ130によって送信される無線周波数(RF)信号を発生するために、伝送対象のデータは、一般的に知られているように、キャリア信号に変調される。多くの無線周波数変調方式が当該技術において知られているが、以下では、直交振幅変調(QAM)技術のみを、より詳細に、かつ
図4および5を参照して説明する。本発明によれば、二次側のトランシーバ要素128は、直列ビットストリームからRF出力信号を発生するための変調ユニット140を備える。それに対応して、一次側のトランシーバ要素124は、復調ユニット142を備える。
【0062】
あらゆる変調方式と同様に、QAMは、データ信号に応じて、キャリア信号、すなわち搬送波(一般的に正弦波)の何らかの側面を変更することによってデータを伝達する。QAMの場合、互いに90°位相がずれた(直角位相にある)2つの波の振幅が、データ信号を表現するために変えられる(変調又は符号化される)。送信された信号を復調するために、これらの2つの変調された信号は、コヒーレント復調器を使用して復調させることができる。かかるレシーバは、受信した信号に余弦信号と正弦信号の両方を別々に乗算し、夫々、受信したI(t)とQ(t)の推定値を生成する。キャリア信号の直交性により、変調信号を個別に検出することができる。
【0063】
本発明に従って制御信号とペイロード信号を結合するために、RFシステムにおいて2つの異なるチャネルを伝送する任意の適当な技術を採用することができる。特に、次の選択肢を用いることができる。
a.時間領域における分離、すなわち、時分割多重化
b.周波数領域における分離、すなわち、周波数分割多重化
c.空間領域における分離
d.異なる偏波(polarization)を使用する分離
【0064】
QAMに基づくRF伝送システムを使用した場合に関して、低ビットレートの制御チャネルを高ビットレートのデータチャネルと結合する方法と、データチャネルの影響を最低限にして全ての情報を相手側に伝送する様々な選択肢を次の例で示す。
【0065】
時間領域における分離を使用する場合、1Gbpsのデータチャネルを伝送するための60GHzのISMバンドの場合、全ての利用可能なISMバンドがペイロードデータの伝送のために使用される訳ではないという事実を利用する。その結果、一部のバンド幅が制御チャネルのために未だ利用可能である。ペイロードデータ(チャネル1)と制御チャネル(チャネル2)を結合することは、
図6に描くようにビットレートの増加によって行うことができる。次いで、2つのチャネルは、
図4の変調ユニット140に送られる直列ビットストリームを発生するための結合器144に入力される。受信側、すなわち、送電コネクタ102では、
図5の復調ユニット142によって出力される直列ビットストリームは、結合解除器146を使用して2つのチャネルに分離される。
【0066】
周波数領域における分離を使用するには、2つの異なる選択肢が利用できる。
【0067】
まず、
図4から分かるように、入力データストリームは、QAMのような変調を作り出するために2つのデータストリームに分割される。データストリームを分割する代わりに、「データチャネル」が一方の入力(Iチャネル)に接続されることができ、「制御チャネル」が他方の入力(Qチャネル)に接続されることができる。受信側、すなわち、送電コネクタ102では、
図5に示す並直列変換器は省くことができ、データストリームは、Iチャネル出力に存在し、制御ストリームはQチャネル出力に存在する。
【0068】
或いは、IチャネルとQチャネルに分離する代わりに、
図4に示すデジタルアナログ変換器(DAC)の異なるビット入力を使用することによって、2つのデータストリームを結合することができる。この代替方法は
図8に描写されている。
【0069】
さらに、ペイロードデータからの制御データの空間的分離も行うことができる。この場合、2つの完全なRFシステムが実施され、一方はデータストリームに対して、他方は制御ストリームに対して行われる。また、アンテナも互いに分離されるため、送電コネクタ102と受電コネクタ104の各々は、制御データとペイロードデータを送信および/又は受信するための別々のアンテナを有する。
【0070】
ペイロードデータから制御データを分離する他の可能性としては、偏波の使用による分離がある。
【0071】
この場合、同様に2つの完全なRFシステムが実施されるが、2つのアンテナを使用する代わりに、送電コネクタ102と受電コネクタ104の各々において1つのアンテナのみが使用される。この場合、例えば、水平偏波又は右旋偏波によって1つの信号が伝送され、垂直偏波又は左旋偏波を介して第2の信号が伝送される。
【0072】
尚、電力レシーバから電力トランスミッタへ向かって制御データとペイロードデータを結合することに関する上述の結合方式は、データストリームを介してクロック信号を送信するために適用することもできる。この場合、クロックデータリカバリ(CDR)を有利なことに省略することができる。
【0073】
既に上記で述べたように、本発明に従って受電コネクタ104から送電コネクタ102へフィードバックされる制御データは、監視すべき複数のパラメータを含んでもよい。監視すべき重要なパラメータは、送電コネクタ102と受電コネクタ104の間の距離である。本発明は、この距離を決定するために制御データのフィードバックを使用するいくつかの有利な実施形態を提供する。
【0074】
送電コネクタ102と受電コネクタ104の間の誘導共振結合は、異なる共振回路110,116を使用することによって得ることができる。特に、各側で並列共振回路又は直列共振回路のいずれかが使用できる。本発明に従って有利に使用される構成を
図9〜11に示す。
図9に示すように、まず、夫々の誘導結合コイルとの一次側のキャパシタCpおよび二次側のキャパシタCsの直列配置を選択することができ、その結果、一次側および二次側で直列共振が生じる。或いは、
図10に示すように、二次側において並列共振をもたらすことができる一方で、一次側の共振回路は直列配置である。
図9および10に示す回路に関して、入力は、入力Vinによって駆動される電圧である。
【0075】
或いは、
図11に示すように、一次側にも並列共振構成を設けることができる。この場合、入力は、電流源Iinによって駆動される電流でなければならない。
【0076】
図9に示す誘導結合電力伝送システムに関して、トランスミッタコイルおよびレシーバコイルにかかる電圧は、次の式(1)および(2)によって与えられる。
【0077】
ここで、Vpは、一次側のトランスミッタコイルにかかる電圧、Vsは、二次側のレシーバコイルにかかる電圧、Ipは、一次側のトランスミッタコイルを通る電流、Isは、二次側のレシーバコイルを通る電流である。Lpは、一次側のトランスミッタコイルのインダクタンスであり、Lsは、二次側のレシーバコイルのインダクタンスであり、Lmは、これらの間の相互インダクタンスである。
【0078】
この相互インダクタンスは、式(3)に従ってインダクタンスLpおよびLsの関数として表すことができる。
【0079】
式(3)では、kは結合係数であり、一次側のトランスミッタコイルと二次側のレシーバコイルの間の距離に依存する。近似として、結合係数とトランスミッタコイルとレシーバコイルの間の距離の積は一定である。従って、一次側のトランスミッタコイルと二次側のレシーバコイルに負荷が接続されなければ(Is=0)、二次側の電圧Vsは、結合係数に関する評価基準であり、従って、距離に関する評価基準でもある。Vsは、Is=0の場合に関して、式(4)で表すことができる。
【0080】
パラメータLpおよびLsは設計によって既知であり、IpおよびVsは測定可能であるため、結合係数、従って距離は、式(4)を用いて計算することができる。
【0081】
しかしながら、二次側には常に負荷が存在するはずであり、距離の計算に影響を及ぼす。従って、本発明は、この問題を克服するための2つの異なる方法を提供する。
【0082】
まず、負荷は、例えば、
図3に示す整流器218をスイッチオフすることによって一時的に中断することができる。これは、非常に短期間に(例えば、1%未満の確率で)行われる場合、電力伝送に対する影響は限定される。この方法の欠点は、短期間に負荷をスイッチオフするためのさらなる制御の必要性と、二次側のレシーバコイルにかかる電圧の高速測定の必要性である。
【0083】
その結果、本発明の有利な一実施形態によれば、二次側のレシーバコイルに、負荷されないさらなる巻線が追加される。その結果として生じる電力伝送のための共振回路の第1の例を
図12に示す。この実施形態によれば、受電コネクタ104は、二次側の補助巻線Lsmを含み、この補助巻線Lsmは、一次側に誘導結合されているが、二次側のレシーバコイルの出力には接続されておらず、従って実際には負荷されていない。二次側の補助巻線Lsmと二次側の受電巻線Lsの間の結合は、1に近くあるべきである。二次側の補助巻線にかかる電圧Vsmと一次側のコイルを通る電流Ipの比Vsm/Ipは、結合係数に関する正確な評価基準であり、従って距離に関する正確な評価基準であることが分かる。
【0084】
送電コネクタ102と受電コネクタ104の間の距離を決定するために、二次側の補助巻線Lsmにかかる電圧Vsmが測定される。さらに、距離を計算するために、一次側のコイルを流れる電流Ipが決定されなければならない。一次側では、二次側の負荷とは関係なく、電圧および電流が正確に測定されることができる。従って、測定の機能のためには、別の一次側の補助巻線は必要ない。
【0085】
しかしながら、一次側の送電コネクタ102における電流Ipを測定することは厄介な場合がある。その結果、さらなる有利な一実施形態によれば、さらなる一次側の補助巻線を設けることができる。この一次側での電圧測定を容易にする構成を
図13に示す。
【0086】
送電コネクタ102と受電コネクタ104との間の距離の測定に加え、異物検出(FOD)を可能にするために、一次側および二次側で補助巻線を使用する構成を使用することもできる。
図14は、送電コネクタ102および受電コネクタ104の嵌合面112,114の間に強磁性の異物が侵入しているか否かを検出するために使用することができる回路構成の一例を示す。
【0087】
図14に示すように、異物検出は、補助巻線LpmおよびLsmを設けることによって向上させることができる。この実施形態によれば、両補助巻線は負荷されておらず、パワーコイルLp,Lsに接続されていない。低振幅のさらなる高周波数信号V1が、一次側の補助共振回路を駆動するために提供される。二次側の共振回路の部品Lsm,Rsm,Csmは、異物がない状態において二次側でも共振が発生するように選択される。
【0088】
送電側と受電側のコイルが同一の周波数に調整された場合、そのようにして作り出された共振は、磁界を「吸収」する何らかの異物によって容易に乱されてしまう。この擾乱は、共振の離調を介して測定されることができる。これにより、この方法は、異物の検出を向上する。
【0089】
この異物検出と
図13を参照する上記の距離測定のために同一の補助巻線が使用される場合、この距離測定と異物測定の間に干渉が生じないことが保証されなければならない。このために、例えば、共振周波数V1は、大抵200kHz前後である電力伝送のために使用される周波数よりも大幅に高くなるように選択されることができる。
【符号の説明】
【0090】
100 非接触コネクタシステム
101 第1の端子
102 送電コネクタ
103 第2の端子
104 受電コネクタ
106 DC/DCコンバータ
108 DC/ACコンバータ
110 一次側の共振回路
112 送電コネクタの嵌合面
114 受電コネクタの嵌合面
116 二次側の共振回路
118 整流回路
120 DC/DCコンバータ
122 一次側のデータ通信インターフェース
124 一次側のトランシーバ要素
126 一次側のアンテナ要素
128 二次側のトランシーバ要素
130 二次側のアンテナ要素
132 二次側のデータ通信インターフェース
134 一次側の制御ユニット
136 二次側のセンシングおよびモニタリングユニット
138 制御信号
140 変調ユニット
142 復調ユニット
144 結合器
146 結合解除器
200 非接触コネクタシステム
202 送電コネクタ
204 受電コネクタ
206 DC/DCコンバータ
208 DC/ACコンバータ
210 一次側の共振回路
212 送電コネクタの嵌合面
214 受電コネクタの嵌合面
216 二次側の共振回路
218 整流回路
220 DC/DCコンバータ
222 一次側のデータ通信インターフェース
224 一次側のトランシーバ要素
226 一次側のアンテナ要素
228 二次側のトランシーバ要素
230 二次側のアンテナ要素
232 二次側のデータ通信インターフェース
234 一次側の制御ユニット
【外国語明細書】