【解決手段】本発明によれば、原料から第1抽出液を抽出する抽出タンクと、前記抽出タンクにより抽出された第1抽出液を貯蔵する第1ストックタンクと、前記抽出タンクにより抽出された前記第1抽出液又は前記第1ストックタンクに貯蔵された第1ストック抽出液と、1又は複数の調味成分を混合して調味料を製造する製造タンクと、前記抽出タンクにより抽出された前記第1抽出液を、前記製造タンクへ送液するか、前記第1ストックタンクへ送液するか、を決定する経路決定部と、を有する抽出液管理システムが提供される。
前記抽出タンクから前記第1ストックタンクへ送液される第1抽出液を冷却する冷却装置又は前記第1ストックタンクに貯蔵された前記第1ストック抽出液を冷却する冷却装置の少なくとも一方と、
前記第1ストック抽出液の保管期間に応じて、前記冷却装置の冷却温度を制御する温度制御部と、
を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の抽出液管理システム。
前記第1ストックタンクに貯蔵された第1ストック抽出液と、前記第1ストック抽出液とは異なる原料を混合した第2ストック抽出液を貯蔵する第2ストックタンクを有し、
経路決定部は、前記第1ストックタンクに貯蔵された前記第1ストック抽出液を、前記製造タンクへ送液するか、前記第2ストックタンクへ送液するか、を前記生産計画に基づいて決定する、
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の抽出液管理システム。
抽出タンクにより抽出された抽出液を、1又は複数の調味成分を混合して調味料を製造する製造タンクへ送液するか、前記抽出液を貯蔵する複数のストックタンクへ送液するか、を決定する経路決定部と、
前記抽出液の保管期間における使用量を算出する使用量算出部と、
前記使用量算出部により算出された前記抽出液の保管期間における使用量に基づいて、前記抽出タンクにより抽出された前記抽出液を前記複数のストックタンクに振り分ける振分部と、
を有する抽出液管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。
【0012】
<製造フロー>
図1は、本発明の一実施形態に係る調味料の製造フローを示す概念図である。
図1(a)に示されるように、本発明の一実施形態では、鰹、昆布、椎茸及び煮干し等の原料からだし(第1抽出液)を抽出する抽出タンク3と、第1抽出液及び1又は複数の調味成分を混合し、調味料を製造する製造タンクが配管61により接続される。抽出タンク3は、例えば小ロット(1kL)から大ロット(20kL)で第1抽出液を抽出するための設備である。抽出に用いる抽出溶媒は任意であり、例えば、水、塩水、醤油、酢、アルコール等が用いられる。そして、温度及び時間を適宜制御し、種々の原料から第1抽出液を抽出する。配管61は、抽出タンク3により抽出された第1抽出液を製造タンクに送液するための管である。ここで、図示しない設備により、例えば、水、塩水、醤油、アルコール等を製造タンク及び抽出タンク3に送液することが可能である。
【0013】
ストックタンクX5は、抽出タンク3により抽出された第1抽出液を成分調整した第1ストック抽出液を貯蔵するものである。本実施形態では、ストックタンクX5において、第1抽出液と、第1抽出液とは異なる原料と、を混合し、第1ストック抽出液を得る。第1抽出液とは異なる原料の例としては、食塩やアルコール等が挙げられ、後述の保管期間データに基づき、これらの原料により、第1ストック抽出液の成分値が調整される。ストックタンクX5は、配管62を介して抽出タンク3と接続され、配管63を介して製造タンクと接続される。ここで、ストックタンクX5が配管63を介して接続される製造タンクは、抽出タンク3が配管61を介して接続させる製造タンクと同じであってもよく、異なる製造タンクであってもよい。抽出タンク3とストックタンクX5を接続する配管62上には、抽出タンク3からストックタンクX5へ送液される第1抽出液を冷却する冷却装置4が設けられる。冷却装置4は、例えば、熱交換器により構成され、後述の温度制御部12からの指示に基づいて、第1抽出液を予め定められた温度まで冷却する。予め定められた温度は、第1ストック抽出液の保管期間と、第1ストック抽出液の微生物増殖制御のための成分パラメータと、の関係で決定される。本実施形態では、微生物増殖制御のための成分パラメータの一例として、食塩濃度を用いる。かかる関係は、後述の保管期間データ記憶部21に保管期間データとして記憶される。また、冷却装置4に代えて又は冷却装置4に加えて、ストックタンクX5(Y6)付属の(図示しない)冷却装置を利用する場合には、ストックタンクX5(Y6)付属の冷却装置は、後述の温度制御部12からの指示に基づいて、第1ストック抽出液(第2ストック抽出液)を予め定められた温度まで冷却する。なお、抽出タンク3からストックタンクX5までの送液中は、第1抽出液が空気と極力触れないように制御することで、風味変化を最小限に抑制することができる。
【0014】
また、ストックタンクX5は、配管64を介してストックタンクY6と接続される。ストックタンクY6は、ストックタンクX5から送液された第1ストック抽出液と、第1ストック抽出液とは異なる原料を混合した第2ストック抽出液を貯蔵するものである。第1ストック抽出液とは異なる原料の例としては、かつお節エキスなどの魚節エキスや昆布エキスなどの種々のエキス、酵母エキス、だし等が挙げられる。ここで、本実施形態では、第1ストック抽出液と、第1ストック抽出液とは異なる原料の混合はストックタンクY6で行われるものとする。
【0015】
ストックタンクY6は、配管65を介して製造タンクと接続される。ここで、ストックタンクY6が配管65を介して接続される製造タンクは、抽出タンク3が配管61を介して接続させる製造タンク及びストックタンクX5が配管63を介して接続される製造タンクと同じであってもよく、異なる製造タンクであってもよい。なお、ストックタンクX5からストックタンクY6までの送液中は、第1ストック抽出液が空気と極力触れないように制御することで、風味変化を最小限に抑制することができる。
【0016】
ストックタンクX5及びストックタンクY6の周囲には、温度制御のために図示しない冷却装置が設けられる。そして、予め定められた温度以下となるように温度制御される。また、ストックタンクX5及びストックタンクY6は、それぞれ1つ又は複数(例えば10個)設けられる。
【0017】
以下、抽出タンク3から抽出された第1抽出液が配管61を介して製造タンクに送液される経路を経路A、ストックタンクX5から配管63を介して製造タンクに第1ストック抽出液が送液される経路を経路B、ストックタンクX5から配管64を介してストックタンクY6に第1ストック抽出液が送液される経路を経路Cとする。なお、従来のシステムでは、経路Aが採用されていた。一般的に、醤油や糖等と異なり、鰹、昆布、椎茸及び煮干し等から抽出した第1抽出液(だし)は、長期間保管しておくと香りが飛んでしまう点や、腐敗しやすい点などにより、その日のうちに他の原料と混合して調味料を製造する必要がある。したがって、ストックタンクX5及びストックタンクY6に貯蔵することなく経路Aが採用されていたのは、第1抽出液が抽出された日のうちに、第1抽出液を使い切る必要があったためである。
【0018】
図1(b)は、従来の経路Aにおける製造タンクでの混合の様子を示す図である。図示されるように、経路Aでは、抽出タンク3により抽出された第1抽出液と、1又は複数の調味成分としての配管投入材料を配管61により製造タンクへ送液し、調味料を製造する。このように、製造タンクにおいて調味料を製造するたびに、抽出タンク3による第1抽出液の抽出及び送液が必要である。ここで、
図1(b)では、一例として、配管投入材料として、例えば、醤油、液糖類及び食塩水を用いることとした。
【0019】
図1(c)は、経路B又は経路Cにおける製造タンクでの混合の様子を示す図である。図示されるように、経路Bでは、製造タンクにおいて調味料を製造するのに先立ち、予め抽出タンク3により第1抽出液を抽出し、ストックタンクX5に送液した後、食塩やアルコールなどを混合して第1ストック抽出液を製造し、ストックタンクX5に貯蔵する。経路Cでは、ストックタンクX5に貯蔵された第1ストック抽出液と、第1ストック抽出液とは異なる原料を混合し、これにより得られた第2ストック抽出液をストックタンクY6に貯蔵する。そして、これらを任意の配合比率で配管投入材料と混合し、調味料を製造する。つまり、温度制御された第1ストック抽出液又は第2ストック抽出液を、醤油や糖等と同様にストック原料として用いることにより、調味料の製造毎に抽出タンク3による抽出を行う必要がなくなるので、多品種変量生産への対応が可能となる。
【0020】
多品種変量生産について、
図2を用いて説明する。
図2は、抽出液を調合して調味料を製造する様子を表した模式図であり、(a)は経路Aの様子を、(b)は経路Bの様子を表す図である。
【0021】
一例として、6バッチの調味料を製造するための抽出工程に要する時間について説明する。ここで、1バッチとは、1つのタンクにおける1回の処理単位のことである。例えば、5kgの調味料であっても10kgの調味料であっても、1つの製造タンクにおいて1ロットにて製造させる場合はともに1バッチとする。抽出タンク3についても同様である。なお、
図2は、調味料A、調味料B及び調味料Cが各2バッチで合計6バッチの調味料を製造する例である。
【0022】
一例として、抽出タンク3への原料投入から、だし成分を抽出し、抽出タンク3を洗浄するまでに要する時間が3時間(3h)であるとする。そして、調味料毎に、昆布抽出液、鰹抽出液及び椎茸抽出液が図示される混合比率で必要であるとする。
図2(a)に示されるように、経路Aでは、2バッチの調味料Aを製造するために、抽出液Aについて2バッチの抽出工程が必要であり、かかる抽出工程に要する時間は6h(=3h×2バッチ)である。抽出液B及び抽出液Cについても同様であり、各抽出工程に要する時間は6h(=3h×2バッチ)である。したがって、6バッチの調味料を製造するための抽出工程に要する時間は、18h(=6h×3)となる。
【0023】
一方、
図2(b)に示されるように、経路Bでは、抽出タンク3により、予め昆布抽出液、鰹抽出液及び椎茸抽出液(第1抽出液)を抽出し、これに食塩やアルコールなどを混合した第1ストック抽出液をストックタンクX5に貯蔵しておく。そして、これらの第1ストック抽出液を任意の配合比率で混合し、調味料A、調味料B及び調味料Cを製造する。ここで、2バッチの調味料A、調味料B及び調味料Cを製造するために、昆布抽出液について1バッチの抽出工程が必要であり、かかる抽出工程に要する時間は3hである。鰹抽出液及び椎茸抽出液についても同様であり、各抽出工程に要する時間は3hである。したがって、6バッチの調味料を製造するための抽出工程に要する時間は、9h(=3h×3)となる。
【0024】
このように、経路Aでは、1バッチの調味料の製造毎に1バッチの抽出工程が必要であるので、6バッチの調味料を製造するためには6バッチの抽出工程が必要となる。一方、経路Bでは、予め昆布抽出液、鰹抽出液及び椎茸抽出液(第1抽出液)を抽出し、ストック抽出液とすることで、1バッチの調味料の製造毎に1バッチの抽出工程を必要としない。換言すると、1バッチで予め大量の第1抽出液を抽出し、第1ストック抽出液をストックし、必要に応じて種々の調味料に使い回すことにより、製造効率が高まる。このため、経路Aと比べて短時間で抽出工程を終了することができる。なお、経路Cについても同様である。
【0025】
次に、
図3〜
図6を用いて、本発明の一実施形態に係る抽出液管理装置1を用いた抽出液管理システムの構成及び機能について説明する。
【0026】
<ハードウェア構成>
図3は、本発明の一実施形態に係る抽出液管理装置1のハードウェア構成の例を示す図である。抽出液管理装置1は、処理部10、記憶部20、通信部18、操作部16、表示部17を有する。処理部10は、種々の演算処理を実行するものであり、例えば、CPU等により構成される。記憶部20は、種々のデータやプログラムを記憶するものであり、例えば、メモリ、HDD又はSSDにより構成される。ここで、プログラムは、抽出液管理装置1の製造時点においてプリインストールされていてもよく、Web上のサイトからアプリケーションとしてダウンロードしてもよく、無線通信により他の情報処理装置から転送されてもよい。通信部18は、他の情報処理装置と種々のデータを送受信するものであり、任意のI/Oにより構成される。操作部16は、抽出液管理装置1を操作するものであり、例えば、タッチパネル、キーボード、音声入力部により構成される。表示部17は、種々の画像(静止画及び動画を含む)を表示するものであり、例えば、タッチパネルディスプレイやその他のディスプレイで構成される。そして、記憶部20に記憶されたプログラムに従い、処理部10が抽出液管理装置1を制御する。
【0027】
図4に示される抽出タンク3、冷却装置4、ストックタンクX5及びストックタンクY6を制御する情報処理装置のハードウェア構成は、抽出液管理装置1のハードウェア構成と同様であるため、説明を省略する。なお、操作部16及び表示部17については必須ではない。
【0028】
<システム構成及び機能ブロック図>
図4は、発明の一実施形態に係る抽出液管理装置1を用いた抽出液管理システムの例示的な機能ブロック図である。抽出液管理装置1、抽出タンク3、冷却装置4、ストックタンクX5及びストックタンクY6が、ネットワーク100を介してそれぞれ通信し、種々の情報を送受信する。
【0029】
<抽出液管理装置1>
抽出液管理装置1は、例えば、サーバー又はPC等のコンピュータである。抽出液管理装置1は、処理部10、操作部16、表示部17、通信部18及び記憶部20を有する。処理部10は、経路決定部11、温度制御部12、使用量算出部13、洗浄指示部14及び振分部15を備える。記憶部20は、保管期間データ記憶部21、洗浄時間データ記憶部22及び抽出液使用量記憶部23を備える。
【0030】
操作部16、表示部17及び通信部18の各機能については、
図3の説明を参照されたい。
【0031】
<処理部10>
経路決定部11は、抽出タンク3により抽出された第1抽出液の経路を決定するものである。一例として、経路決定部11は、抽出タンク3により抽出された第1抽出液が、種々の調味料に利用可能な汎用性の高いものであるか否かに基づいて経路を決定する。具体的には、顧客からの要求により、特殊な原料由来の第1抽出液を用いることとなった場合には経路Aとする。そして、第1抽出液が、昆布、鰹、椎茸等の汎用性の高いものである場合には経路Bとする。これは、特殊な原料由来の抽出液は他の調味料に使い回しにくいため、ストックすることなく調味料を製造する。一方、汎用性の高い抽出液は、他の調味料に使い回しやすいので、ストックタンクX5又はストックタンクY6にて貯蔵することが好適であるためである。なお、汎用性の高い抽出液であっても、急いで調味料を製造する必要がある場合等には、適宜経路Aが選択される。
【0032】
温度制御部12は、第1抽出液の保管期間に応じて、冷却装置4及び/又はストックタンクX5(Y6)付属の冷却装置の少なくとも1つの冷却温度を制御するものである。以下、本実施形態では、温度制御部12が冷却装置4を制御する場合について説明する。例えば、他の生産計画システムにより決定された、予め定められた期間における生産計画において、第1ストック抽出液の保管期間が決定される。そして、例えば、第1ストック抽出液の保管期間が0又は1日の場合には冷却装置4の冷却温度を35℃、第1抽出液の保管期間が2〜5日の場合には冷却装置4の冷却温度を10℃とするように、冷却装置4を制御する。かかる制御のための制御信号は、抽出液管理装置1の通信部18から冷却装置4の通信部41に送信される。なお、冷却装置4の温度制御はこれに限定されず、例えば、冷却装置4により第1抽出液が35℃まで冷却され、ストックタンクX5付属の冷却装置により第1抽出液が10℃まで冷却される構成としてもよい。ストックタンクY6についても同様である。これらの温度制御は、第1ストック抽出液の保管期間と、第1ストック抽出液の微生物増殖制御のための成分パラメータ及び冷却装置の冷却温度と、を対応付けたデータを用いて実行される。本実施形態では、
図5(a)に示されるデータであって、第1ストック抽出液の保管期間と、第1ストック抽出液の微生物増殖制御のための成分パラメータの例である食塩濃度及びストックタンクでの保管温度と、を対応付けたデータを用いて実行される。
図5(a)に示されるデータにおいて、○は、矢印で示された保管日数内であればストックタンクX5(Y6)にて貯蔵可能であることを表し、×はその保管条件ではストックタンクX5(Y6)では貯蔵できないことを表す。例えば、第1ストック抽出液の食塩濃度が1.5%未満の場合、10℃以下であってもストックタンクX5(Y6)にて保管することができないため、抽出タンク3にて第1抽出液を抽出した後、製造タンクに送液し調味料を製造する必要がある。抽出タンク3にて第1抽出液を抽出した後、第1抽出液を翌日の調味料製造にて使用する場合は、第1抽出液をストックタンクX5に送液した後、(1)第1ストック抽出液の食塩濃度が3.0%以上4.5%未満となるように調整し、かつストックタンクX5の温度が10℃以下となるように調整するか、もしくは、(2)第1ストック抽出液の食塩濃度が6.0%以上7.5%未満となるように調整し、かつストックタンクX5の温度が35℃以下となるように調整するか、等といった複数の方法が挙げられる。ここで、ストックタンクX5の温度が10℃以下の場合、第1ストック抽出液の食塩濃度が9.0%以上となるように調整しておけば、保管日数を5日間とすることができる。このように、予め定められた期間における生産計画に基づき、第1ストック抽出液及び第2ストック抽出液の成分値を、好ましくない微生物の増殖を制御すべく、適宜調整することができる。さらに、第1ストック抽出液及び第2ストック抽出液の微生物増殖制御のための成分パラメータとしては、食塩、アルコール、酢酸、有機酸などの各種微生物への静菌効果のある添加物の濃度や、Brix、pH、酸度、水分活性などが挙げられ、それぞれ単一のパラメータであってもよく、一又は複数のパラメータの組み合わせであってもよい。かかるデータは、抽出液管理装置1の保管期間データ記憶部21に記憶される。
【0033】
使用量算出部13は、第1ストック抽出液の保管期間における使用量を算出する。かかる算出は、調味料と、調味料を製造するために要する第1ストック抽出液の使用量の少なくとも一方と、を対応付けたデータに基づいて実行される。具体的には、
図6(a)に示される、調味料と、調味料を製造するために要する第1ストック抽出液の使用量と、を対応付けたデータに基づいて、予め定められた期間における生産計画を実現するために必要な第1ストック抽出液の使用量を算出する。ここで、予め定められた期間における生産計画は、
図6(b)に示されるような計画であったとする。具体的には、調味料Aを10,000L製造するためには、昆布抽出液が1000L、鰹抽出液が1000L、椎茸抽出液が300L必要となる。そして、予め定められた期間における生産計画において、昆布抽出液1000Lの保管期間が0日、2000Lの保管期間が2日、3000Lの保管期間が4日であり、鰹抽出液2000Lの保管期間が2日、2500Lの保管期間が3日であり、椎茸抽出液1000Lの保管期間が2日、1500Lの保管期間が3日、4000Lの保管期間が5日であったとする。このような場合には、例えば、昆布抽出液の最低保管期間が0日であるので、0日目(当日)に昆布抽出液1000L、鰹抽出液1000L及び椎茸抽出液300Lを混合し、調味料Aを製造する。ここで、鰹抽出液1000Lを保管期間2日のストックタンクX5(Y6)から賄った場合には、ストックタンクX5(Y6)の貯蔵量は1000Lまで減少する。また、鰹抽出液1000Lを保管期間3日のストックタンクX5(Y6)から賄った場合には、ストックタンクX5(Y6)の貯蔵量は1500Lまで減少する。椎茸抽出液についても同様である。かかるデータは、抽出液管理装置1の抽出液使用量記憶部23に記憶される。なお、本実施形態では、
図6(a)に示されるように、調味料と第1ストック抽出液を対応付けたデータを利用したが、調味料と第1抽出液及び/または第2ストック抽出液を対応付けたデータを利用してもよい。
【0034】
洗浄指示部14は、ストックタンクX5(Y6)に対し、洗浄指示を出すものである。具体的には、ストックタンクX5(Y6)に貯蔵された第1ストック抽出液の残量を計測するセンサー53(63)及び残量計算部54(64)により、ストックタンクX5(Y6)が空になったことが検出されると、抽出液管理装置1の通信部18からストックタンクX5(Y6)の通信部51(61)に洗浄指示信号が送信される。そして、図示しないプログラムに基づいて、予め定められた水温及び洗浄時間でストックタンクX5(Y6)の洗浄が開示される。ここで、洗浄設備は図示していないが、各ストックタンクX5(Y6)の内部に設けられた水流発生装置等により実現される。
【0035】
振分部15は、使用量算出部13により算出された第1ストック抽出液の保管期間における使用量に基づいて、抽出タンク3により抽出された第1抽出液を複数のストックタンクX5(Y6)に振り分けるものである。例えば、予め定められた期間における生産計画に基づいて、第1抽出液をストックタンクX5(Y6)に振り分ける。かかる処理は、
図5(b)に示されるデータであって、ストックタンクX5(Y6)に貯蔵された第1ストック抽出液の種類及び製造量と、ストックタンクX5(Y6)の洗浄に要する時間と、を対応付けたデータに基づいて実行されてもよい。例えば、ストックタンクX5(Y6)で製造された昆布抽出液が10kLであった場合には、洗浄時間に1.4h要することとなる。そして、後述の
図9に示されるように、予め定められた期間における生産計画において、第1ストック抽出液の種類、保管期間及び洗浄時間を加味して、複数のストックタンクX5(Y6)の稼働率が最も高くなるように第1抽出液をストックタンクX5(Y6)に振り分ける。なお、
図5(b)に示されるデータでは、製造量が1kL〜20kLまでしか図示していないが、さらに多くの製造量についての洗浄時間を予めデータとして記憶しておいてもよい。また、例えば製造量が3kLの場合には、1kLの洗浄時間と5kLの洗浄時間を線形補間することにより、3kLの製造時間を求めてもよい。かかるデータは、抽出液管理装置1の洗浄時間データ記憶部22に記憶される。また、
図5(b)に示されるデータに代えて、製造量は考慮せず、抽出液の種類と、ストックタンクX5(Y6)の洗浄に要する時間と、を対応付けたデータを利用してもよい。
【0036】
<記憶部20>
保管期間データ記憶部21は、
図5(a)に示されるデータを記憶する。かかるデータについては上述の説明を参照されたい。
【0037】
洗浄時間データ記憶部22は、
図5(b)に示されるデータを記憶する。かかるデータについては上述の説明を参照されたい。
【0038】
抽出液使用量記憶部23は、
図6(a)に示されるデータを記憶する。かかるデータについては上述の説明を参照されたい。
【0039】
<抽出タンク3>
通信部31の機能は、抽出液管理装置1の通信部18と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
処理部32は、各機能を制御し、種々の処理を実行するものである。
【0041】
<冷却装置4>
通信部41及び処理部42の機能は、抽出タンク3の通信部31及び処理部32と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
温度調整部43は、抽出液管理装置1の温度制御部12からの制御信号に基づいて、冷却温度を調整するものである。
【0043】
<ストックタンクX5(Y6)>
次に、ストックタンクX5(Y6)について説明する。なお、ストックタンクX5とストックタンクY6の構造及び機能は基本的に同様であるので、代表としてストックタンクX5について説明する。
【0044】
通信部51及び処理部52の機能は、抽出タンク3の通信部31及び処理部32(冷却装置4の通信部41及び処理部42)と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
センサー53は、ストックタンクX5に貯蔵された第1ストック抽出液の残量をセンシングするものである。
【0046】
残量計算部54は、センサー53からの信号を処理し、ストックタンクX5に貯蔵された第1ストック抽出液の残量を計算するものである。
【0047】
<フローチャート>
次に、
図7〜
図8を用いて、本発明の一実施形態に係る抽出液管理装置1を用いた抽出液管理システムの動作について説明する。
【0048】
図7は、本発明の一実施形態に係る抽出液管理装置1を用いた抽出液管理システムのフローチャートの一例を示す図である。
【0049】
初めに、S1に先立って、図示しない生産計画システムにより、予め定められた期間における生産計画を決定する。ここで、予め定められた期間とは、例えば1日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月である。本実施形態では、予め定められた期間として1週間を採用する。
【0050】
そして、S1において、抽出タンクにて鰹、昆布、椎茸、煮干し(うるめ、あご、あじ等)、しゃけ節等の原料からだし(第1抽出液)を抽出する。
【0051】
次に、S2において、抽出物由来の微粉末を除去するために、一定以下の濁度となるような濾過材を用いて第1抽出液をろ過する。濾過材としては、濾紙や不織布、セライト、セルロース、合成樹脂、合成繊維、金属メッシュワイヤー、グラスファイバーなどが挙げられる。そして、かかる第1抽出液が、種々の調味料に利用可能な汎用性の高いものであるか否を判断する。例えば、しゃけ節や産地指定された昆布を原料とした場合には、
図1(a)に示される経路Aと決定され、後述するS11へと進む。一方、汎用性の高い鰹、昆布、椎茸等を原料とした場合には、
図1(a)に示される経路Bと決定され、S3に進む。これらの経路の決定は、経路決定部11によりなされる。
【0052】
次に、S3において、第1抽出液の種々のパラメータを調整する。例えば、食塩、アルコール、酸味料等の調整剤を投入することにより、種々のパラメータを調整する。
【0053】
次に、S4において、第1抽出液と、S3において投入された調整剤とを混合し、第1ストック抽出液を製造する。
【0054】
次に、S5において、S4において調整剤と混合された第1ストック抽出液の成分を分析し、品質基準を満たしているか否かを判定する。判定基準としては、例えば、各種成分(Nacl、Brix、Alc等)が微生物増殖・風味変化を抑制することが可能な範囲に入っているか否か等を用いることができる。
【0055】
次に、S6において、S5の判定基準を満たしていれば(Yes)、S8へと進み、S5の判定基準を満たしていなければ(No)、S7へと進み、種々の成分を再投入することにより第1ストック抽出液の成分を補正し、再びS5の分析/判定を実行する。これを、S5の判定基準を満たすまで繰り返す。
【0056】
次に、S8において、S5の判定基準を満たした第1ストック抽出液をストックタンクX5にて貯蔵する。このとき、
図5(a)に示されるデータに基づいて、図示しない冷却装置等により、ストックタンクX5に貯蔵された第1ストック抽出液の温度が予め定められた温度となるように調整される。
【0057】
次に、第1ストック抽出液を用いて調味料を製造することを表す調合指示が出された場合には(Yes)、S11へ進み、製造タンクに送液される。一方、第1抽出液に異なる原料を混合し、第2ストック抽出液として利用することが決定された場合(No)、つまり、
図1(a)に示される経路Cと決定された場合には、S10へ進み、ストックタンクY6へと送液される。かかる経路の決定は、経路決定部11によりなされる。
【0058】
そして、S12において、製造タンクにて第1ストック抽出液と、配管投入材料とを混合し、調味料を製造する。
【0059】
次に、経路Cと決定された場合(
図7のS10)について、
図8を用いて説明する。
図8は、第1ストック抽出液がストックタンクY6へ送液される場合における抽出液管理システムのフローチャートの一例を示す図である。
【0060】
まず、S21において、ストックタンクY6に送液された第1ストック抽出液と、第1ストック抽出液とは異なる原料の混合がストックタンクY6でなされる。
【0061】
次に、S22において、分析/判定がなされる。なお、S22、S23及びS24の処理については、それぞれ
図7のS5、S6及びS7と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
次に、S25において、S22の判定基準を満たしたものが、第2ストック抽出液としてストックタンクY6にて貯蔵される。
【0063】
次に、S26にて、第2ストック抽出液を用いて調味料を製造することが決定されると、製造タンクに送液される。
【0064】
そして、S27において、製造タンクにて第2ストック抽出液と、配管投入材料とを混合し、調味料を製造する。
【0065】
このように、本発明の一実施形態では、経路決定部11により経路が決定され、汎用性の低い原料から抽出された第1抽出液については、従来の経路Aとして調味料の製造プロセスを進め、汎用性の高い原料から抽出された第1抽出液については、本発明の特徴的な経路Bとして調味料の製造プロセスを進めることができる。さらに、第1ストック抽出液に他の原料を加えて第2ストック抽出液とする場合には、本発明の特徴的な経路Cとして調味料の製造プロセスを進めることができる。これにより、1バッチで予め大量の第1抽出液を抽出しておき、ストック原料として用いることにより、調味料の製造毎に抽出タンク3による抽出を行う必要がなくなるので、多品種変量生産への対応が可能となる。さらに、経路Cを採用することにより、より柔軟に生産計画に対応することができる。
【0066】
<生産計画>
次に、
図9を用いて、生産計画に基づいたストックタンクX5(Y6)の振り分けについて説明する。
図9は、予め定められた期間における生産計画に基づいた、振分部15による振分処理の例を示す図である。ここで、説明の簡易化のため、ストックタンクX5における振分処理について、3つのストックタンクX5をそれぞれX1、X2及びX3として説明する。なお、ストックタンクY6についても同様である。かかる振分処理は、予め定められた期間における生産の開始前に、振分部15により最適な振り分けについてシミュレーションがなされ、振分先が決定される。
【0067】
まず、図示しない生産計画システムにより決定された、予め定められた期間における生産計画が
図6(b)の通りであったとする。ここで、予め定められた期間として、1週間を採用した。
【0068】
一例として、抽出タンク3にて、保管期間が2日である昆布抽出液1000L、保管期間が2日である鰹抽出液2000L、保管期間が5日である椎茸抽出液4000Lを抽出する。そして、それぞれX1、X2及びX3に振り分ける。昆布抽出液については保管期間が2日であるので、X1への投入日(
図9における0日目)から数えて2日以内に調味料の製造のために消費される。鰹抽出液についても同様である。一方、椎茸抽出液については保管期間が5日であるので、X3への投入日(
図9における0日目)から数えて5日以内に調味料の製造のために消費される。
【0069】
次に、X1及びX2が空になった後に、それぞれのタンクが洗浄される。かかる洗浄時間は、
図5(b)に示されるデータを用いて、各タンクにおける洗浄時間が予測される。
【0070】
次に、X1及びX2に、保管期間が4日である昆布抽出液3000Lと、保管期間が3日である椎茸抽出液1500Lをそれぞれ投入する。例えば、X2の方がX1よりも早く空になった場合であっても、鰹抽出液の方が昆布抽出液よりも洗浄に時間を要するため、タンクの洗浄時間を考慮すると、新たに抽出液を投入できる状態となるのはX1の方がX2よりも早くなることがある。したがって、この場合、例えば、保管期間の長い昆布抽出液を先にX1に投入し、保管期間の短い椎茸抽出液をX2に投入するように振分処理がなされる。
【0071】
そして、X2に投入された椎茸抽出液が3日以内に消費される。X2が空になるのは、Start(0日目)から数えて4日目と5日目の間である。また、同じ日に、X3に投入された椎茸抽出液が消費され、X3が空となる。ここで、次に投入される抽出液が、保管期間が3日である鰹抽出液と、保管期間が0日である昆布抽出液であったとする。この場合、X1には昆布抽出液が残っているため、使用できない。そして、X2とX3を見ると、X2の方が早い段階で空になっており、洗浄時間を考慮しても、X2の方が早くに抽出液を投入可能な状態となる。また、X3の洗浄が終了するのは、Startから数えて5日目を超えたあたりであり、1週間の最終日である7日目までの日数が3日に満たない。このため、保管期間が3日である鰹抽出液はX2に振り分けられ、保管期間が0日である昆布抽出液がX3に振り分けられる。
【0072】
そして、6日目の少し前にX1が空になり、6日目を少し超えたあたりでX3が空になる。ここで、次に投入される抽出液が、保管期間が4日である椎茸抽出液と、保管期間が2日である昆布抽出液であったとする。このとき、1週間の最終日である7日目までの日数が、X1、X3ともに4日に満たないが、少しでも長い期間が残されているX1に保管期間が4日である椎茸抽出液を投入し、残りのX3に保管期間が2日である昆布抽出液を投入する。
【0073】
このように、予め定められた期間における生産計画を実現するために必要な抽出液の使用量を算出し、かかる使用量に基づいて、振分部15による振分処理が実行される。これにより、複数のストックタンクX5(Y6)の稼働率を最大にし、最も効率の良い振り分けを実現することができる。
【0074】
<セキュリティーについて>
次に、
図10を用いて、経路B及び経路Cにて調味料の製造が進められた場合における、セキュリティーの向上について説明する。例えば、顧客から特注の調味料の製造を依頼された場合等には、顧客による工場の視察を受け入れる場合があるが、かかる場合においてもノウハウ等の流出を防止することができる。
【0075】
一例として、調味料Aを製造するために、醤油、砂糖、鰹、昆布が利用されるとする。ここで、鰹、昆布は抽出タンク3によりだし成分を抽出され、製造タンクに送液されるものであり、醤油は配管投入により製造タンクに送液されるものであり、砂糖は機械又は作業者により製造タンクに投入されるものである。
【0076】
従来の経路Aでは、製造タンク及び抽出タンクにこれら4種類の原料が投入されるので、部外者が製造タンク及び抽出タンクの側で観察していた場合に、調味料Aの製造に用いられる4種類の原料に関する情報が流出してしまう可能性がある。
【0077】
一方、経路Bでは、鰹抽出液及び昆布抽出液をそれぞれ第1抽出液としてストックタンクX5に貯蔵している。これにより、部外者が製造タンクの側で観察していた場合における情報流出を、調味料Aの製造に用いられる2種類の原料(醤油、砂糖)及び第1ストック抽出液に関する情報に留めることができる。さらに、第1ストック抽出液はストックタンクX5に貯蔵されており、外部からでは第1ストック抽出液の成分が分からないので、よりセキュリティーが向上する。
【0078】
さらに、経路Cでは、第1ストック抽出液である鰹抽出液及び昆布抽出液と、砂糖を混合することにより、第2ストック抽出液としてストックタンクY6に貯蔵している。これにより、部外者が製造タンクの側で観察していた場合における情報流出を、調味料Aの製造に用いられる1種類の原料(醤油)及び第2ストック抽出液に関する情報に留めることができる。さらに、第2ストック抽出液はストックタンクY6に貯蔵されており、外部からでは第2ストック抽出液の成分が分からないので、よりセキュリティーが向上する。
【0079】
さらに、経路A及び経路Bでは、機械又は作業者により砂糖を製造タンクに投入していたが、経路Cにおいては、砂糖は第2ストック抽出液に含まれているので、製造タンクに第2ストック抽出液を送液し、醤油は配管投入により製造タンクに送液するだけで良いので、作業効率が向上する。
【0080】
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、ストックタンクX5(Y6)の数、ストックタンクX5(Y6)の洗浄時間、冷却装置4の冷却温度及び生産計画における予め定められた期間は適宜調整することができる。また、産地の異なる昆布から抽出される昆布抽出液を、産地毎にストックタンクX5(Y6)に貯蔵することもできる。また、抽出液管理装置1の記憶部20を外部のサーバーに設け、処理部10とネットワーク100を介して通信する構成としてもよい。また、
図4に示される機能ブロック図の各機能部に代えて、各機能部の全て又は一部をASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field−programmable gate array)、DRP(Dynamic ReConfigurable Processor)等のハードウェアによって実現してもよい。また、コンピュータに、
図4における抽出液管理装置1の各機能を実現させるプログラムとして提供することもできる。また、プログラムをCD−ROM等の非一時的な記録媒体に記憶して提供することもできる。さらに、上記実施形態で説明した種々のステップの順番の入れ替え、削除、追加又は変更は、本発明の要旨を変更しない範囲内において可能である。