(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-104196(P2017-104196A)
(43)【公開日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】皮膚摩擦具
(51)【国際特許分類】
A61H 39/04 20060101AFI20170519BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
A61H39/04 S
A61H7/00 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-239018(P2015-239018)
(22)【出願日】2015年12月8日
(71)【出願人】
【識別番号】515340626
【氏名又は名称】有限会社吉村鍼灸院
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 春生
【テーマコード(参考)】
4C100
4C101
【Fターム(参考)】
4C100AA02
4C100AA15
4C100AA33
4C100AA34
4C100BB01
4C100CA01
4C101BA01
4C101BC27
4C101BD14
4C101BD22
4C101BD26
4C101BE02
(57)【要約】
【課題】熟練がなくても擦る角度の調節が容易で、適度な刺激を与えることができる皮膚摩擦具を提供する。
【解決手段】屈曲部3を境にした両側に第1片1と第2片2が設けられ、上記第1片1と上記第2片2のうち少なくとも一方に擦過部4が設けられている。このため、上記擦過部4を適切な角度で皮膚13に擦りつけ、適度な摩擦刺激を与えることができる。すなわち、第1片1と第2片2のうち一方を把持するか屈曲部3を摘み、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつける。これにより、皮膚13への適度な摩擦刺激を与えることができる。熟練を要することなく、誰でも適切な施術を行うことができる。また、力が入りすぎることがないため、上記擦過部4は刺激を減らす必要はない。したがって、誰でも効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部を境にした両側に第1片と第2片が設けられ、上記第1片と上記第2片のうち少なくとも一方に擦過部が設けられていることを特徴とする皮膚摩擦具。
【請求項2】
板状体が屈曲成形されることにより、上記屈曲部および上記第1片ならびに上記第2片が形成されている請求項1記載の皮膚摩擦具。
【請求項3】
上記板状体が幅方向と長手方向を有し、上記長手方向に沿って上記屈曲部が設けられている請求項2記載の皮膚摩擦具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として人体の皮膚に摩擦を与えて神経や血管に刺激を与える皮膚摩擦具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鍼灸療法の一環として、皮膚に摩擦刺激を与えることが行われている。
【0003】
特許文献1は、皮膚摩擦具に関するものであり、つぎの記載がある。
[課題を解決するための手段]
[0005]本発明は、掌に握れる太さのロッド状の本体を設け、該本体の先端部に突起条を設け、該突起条の突起部を非尖鋭に形成したことを特徴とする皮膚の表面より神経や血管を刺激する皮膚摩擦具から構成される。
[発明の効果]
[0006]本発明によると、掌で握れる太さのロッド状の本体(1)に形成するため、比較的楽に施術することができ、また、該本体(1)の先端部に突起条(2)を設け、該突起条(2)の突起部(2a)を非尖鋭に形成することにより、患者の皮膚を傷つけることなく、摩擦できることにより、衛生的であり、かつ、複数の患者を連続的に施術しても問題がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−204928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の皮膚摩擦具は、ロッド状の本体(1)を掌で握って施術する。施術はしやすいものの、つい力が入ってしまい、その調節が容易でない。皮膚に摩擦刺激を与える突起部(2a)が鋭いと、患者の皮膚を傷つけてしまう。このため、あえて突起部(2a)を非尖鋭に形成して刺激を減らしており、十分な刺激を与え難い。
また、擦る角度によって摩擦刺激の効果は変動し、効果的な摩擦刺激を与えられる角度範囲は決まっている。ところが、ロッド状の本体(1)を握って施術する特許文献1の皮膚摩擦具では、擦る角度を調節しにくく、効果的な摩擦刺激を与えるためには熟練が必要である。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するため、つぎの目的をもってなされた。
熟練がなくても擦る角度の調節が容易で、適度な刺激を与えることができる皮膚摩擦具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の皮膚摩擦具は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
屈曲部を境にした両側に第1片と第2片が設けられ、上記第1片と上記第2片のうち少なくとも一方に擦過部が設けられている。
【0008】
請求項2に記載の皮膚摩擦具は、請求項1に記載の構成に加えて、つぎの構成を採用した。
板状体が屈曲成形されることにより、上記屈曲部および上記第1片ならびに上記第2片が形成されている。
【0009】
請求項3に記載の皮膚摩擦具は、請求項1または2に記載の構成に加えて、つぎの構成を採用した。
上記板状体が幅方向と長手方向を有し、上記長手方向に沿って上記屈曲部が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の皮膚摩擦具は、屈曲部を境にした両側の第1片と第2片のうち、少なくとも一方に擦過部を設けている。このため、上記擦過部を適切な角度で皮膚に擦りつけ、適度な摩擦刺激を与えることができる。すなわち、第1片と第2片のうち一方を把持するか屈曲部を摘み、上記擦過部を撫で勝手に皮膚に擦りつける。これにより、皮膚への適度な摩擦刺激を与えることができる。熟練を要することなく、誰でも適切な施術を行うことができる。また、力が入りすぎることがないため、上記擦過部は、特許文献1ほど刺激を減らす必要はない。したがって、誰でも効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【0011】
請求項2に記載の皮膚摩擦具では、板状体を屈曲成形して屈曲部、第1片および第2片を形成している。このため、材料の調達や製造が容易で、極めて安価なものになる。また、板状体の屈曲部を指の間に挟んで施術すればよい。このとき、上記擦過部を撫で勝手に皮膚に擦りつけ、力が入りすぎることがなく、皮膚に適度な摩擦刺激を与えることができる。このように、施術に熟練を要さず、誰でも適切で効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【0012】
請求項3に記載の皮膚摩擦具は、幅方向と長手方向を有する板状体の長手方向に沿って屈曲部を設けている。このため、板状体の屈曲部を指の間に挟んで施術すればよく、上記擦過部を撫で勝手に皮膚に擦りつけ、力が入りすぎることもない。また、一回の摩擦で刺激を与えることができる領域を広く確保できる。このように、施術に熟練を要さず、誰でも適切で効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の皮膚摩擦具の一実施形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は背面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。
【
図2】上記皮膚摩擦具を矢印X方向から見た参考図である。
【
図3】上記皮膚摩擦具の使用状態の一例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
〔構造の説明〕
図1および
図2は、本発明を具現化した一実施形態の皮膚摩擦具である。
この皮膚摩擦具は、大略トラック形状に形成した板状体を、長手方向に沿って屈曲成形することにより形成されている。
【0016】
上記皮膚摩擦具を形成する板状体は、金属材料、樹脂材料等を用いて形成することができる。上記金属材料としては、特に限定するものではなく、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮などの銅合金、鉄、ステンレスなどの鉄合金等を使用することができる。上記樹脂材料としては、特に限定するものではなく、たとえば各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エポキシ系樹脂などを使用することができる。
【0017】
上記板状体は、図示した例では大略トラック形状に形成されたものであり、幅方向Wと長手方向Lを有している。上記長手方向Lに沿って、上記幅方向Wの中央部を貫くように、上記屈曲部3が設けられている。
【0018】
この皮膚摩擦具は、上述したように板状体が屈曲成形されることにより上記屈曲部3
が形成されるとともに、上記屈曲部3を境にした両側に第1片1と第2片2が形成されている。
【0019】
そして、上記第1片1と上記第2片2のうち少なくとも一方に擦過部4が設けられる。
【0020】
上記擦過部4は、上記第1片1と上記第2片2の双方に設けることもできる。この場合、上記第1片1と上記第2片2の長手方向Lに沿う両方の側縁を擦過部4として機能させる。このようにすることにより、第1片1側で摩擦したり、第2片2側で摩擦したり、施術する部位に応じて切り換えて使用でき、使い勝手がよくなる。
【0021】
この例では、皮膚摩擦具の外周縁の全周を擦過部4として機能させている。このようにすることにより、使用する擦過部4の領域を変えることで、摩擦の幅や強さを自由に変えて摩擦刺激を与えることができる。施術する部位や目的に応じて切り換えて使用でき、使い所の幅が広がる。
【0022】
図示した例では、上記板状体の長手方向Lの長さは約55mmに設定されている。また、上記第1片1および上記第2片2の幅寸法は、それぞれ約15mmに設定されている。上記第1片1および上記第2片2の両端部には、それぞれ半径約15mmのアールが設けられている。上記第1片1および上記第2片2には、それぞれ長手方向Lに沿う約39mmの直線部が設けられる。
【0023】
上記板状体の厚みは約0.5mmに設定され、全周にわたって設けられた擦過部4には、半径約0.25mmのアールが設けられている。
【0024】
上記屈曲部3の角度は、下限値で80°〜90°程度、上限値で120°〜130°程度の範囲内に設定するのが好ましい。図示した例では90°に設定している。また、上記屈曲部3は、内側面で半径約5mmのアールが設けられている。
【0025】
〔使用方法の説明〕
図3は、上記皮膚摩擦具の使用方法を説明する図である。
【0026】
図3(A)は、第1片1の直線部である領域Aを使用して摩擦刺激を行う状態である。この例では、第1片1と第2片2のうち一方を把持するか屈曲部3を摘む。図示した例では、第2片2の屈曲部3近傍を、人差し指11と中指12の間に挟んでいる。この状態で、第1片1の直線部である領域Aを皮膚13に当接させ、矢印Yに示すように屈曲部3側に向かって移動させる。これにより、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつけ、皮膚13への適度な摩擦刺激を与えることができる。
【0027】
図3(B)は、第1片1の曲線部である領域Bを使用して摩擦刺激を行う状態である。この例では、屈曲部3の凹部側に指を当てて摘むようにして皮膚摩擦具を把持するか、第1片1と第2片2のうち一方を親指・人差し指・中指で掴む。その状態で、第1片1の曲線部である領域Bを皮膚13に当接させ、矢印Yに示すように第1片1側に向かって傾けて移動させる。これにより、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつけ、皮膚13への適度な摩擦刺激を与えることができる。
図3(A)より少し強めの摩擦刺激を与えることができる。
【0028】
図3(C)は、屈曲部3の凸面側である領域Cを使用して摩擦刺激を行う状態である。この例では、屈曲部3の凹部側に指を当てて摘むようにして皮膚摩擦具を把持するか、第1片1と第2片2のうち一方を親指・人差し指・中指で掴む。その状態で、屈曲部3の凸面側である領域Cを皮膚13に当接させ、矢印Yに示すように屈曲部3の凸面側に向かって傾けて移動させる。これにより、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつけ、皮膚13への適度な摩擦刺激を与えることができる。
図3(B)よりさらに強めの摩擦刺激を与えることができる。
【0029】
このように、持つ部位を変え、摩擦に使用する領域を変えることにより、摩擦の幅・角度・強さを自由に調節しながら摩擦刺激を与えることができる。
【0030】
〔作用効果〕
以上に述べた実施形態では、つぎの作用効果を奏する。
【0031】
本実施形態の皮膚摩擦具は、屈曲部3を境にした両側の第1片1と第2片2のうち、少なくとも一方に擦過部4を設けている。このため、上記擦過部4を適切な角度で皮膚に擦りつけ、適度な摩擦刺激を与えることができる。すなわち、第1片1と第2片2のうち一方を把持するか屈曲部3を摘み、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつける。これにより、皮膚13への適度な摩擦刺激を与えることができる。熟練を要することなく、誰でも適切な施術を行うことができる。また、力が入りすぎることがないため、上記擦過部4は、特許文献1ほど刺激を減らす必要はない。したがって、誰でも効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【0032】
本実施形態の皮膚摩擦具では、板状体を屈曲成形して屈曲部3、第1片1および第2片2を形成している。このため、材料の調達や製造が容易で、極めて安価なものになる。また、板状体の屈曲部3を指の間に挟んで施術すればよい。このとき、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつけ、力が入りすぎることがなく、皮膚13に適度な摩擦刺激を与えることができる。このように、施術に熟練を要さず、誰でも適切で効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【0033】
本実施形態の皮膚摩擦具は、幅方向と長手方向を有する板状体の長手方向に沿って屈曲部3を設けている。このため、板状体の屈曲部3を指の間に挟んで施術すればよく、上記擦過部4を撫で勝手に皮膚13に擦りつけ、力が入りすぎることもない。また、一回の摩擦で刺激を与えることができる領域を広く確保できる。このように、施術に熟練を要さず、誰でも適切で効果的な摩擦刺激を与えることができる。
【0034】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【符号の説明】
【0035】
1:第1片
2:第2片
3:屈曲部
4:擦過部
11:人差し指
12:中指
13:皮膚