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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-104238(P2017-104238A)
(43)【公開日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】矯正装置の拡縮連結具交換方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/10 20060101AFI20170519BHJP
   A61C 7/22 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
   A61C7/10
   A61C7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-239580(P2015-239580)
(22)【出願日】2015年12月8日
(71)【出願人】
【識別番号】512017268
【氏名又は名称】曽我 健
(71)【出願人】
【識別番号】506037995
【氏名又は名称】荘司 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】曽我 健
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ02
4C052JJ07
(57)【要約】
【課題】矯正装置の拡縮連結具を安価かつ迅速に交換することができる拡縮連結具交換方法を提供する。
【解決手段】一対の分割プレートの拡縮連結具取付部分を囲う石膏壁となるように拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付け凝固させる石膏壁作成工程S1と、石膏壁によって囲まれる凹陥部を閉塞する石膏蓋となるように凹陥部及びその周囲に石膏を盛り付け凝固させる石膏蓋作成工程S2と、石膏蓋を凹陥部及びその周囲から取り外し拡縮連結具取付部分を開削して拡縮連結具を交換する拡縮連結具交換工程S3と、開削孔にレジンを注入し石膏蓋を凹陥部及びその周囲に装着してレジンを重合させるレジン重合工程S4と、石膏蓋を凹陥部及びその周囲から取り外し石膏壁を拡縮連結具取付部分の周囲から撤去し拡縮連結具取付部分の表面形状を修整する拡縮連結具取付部分修整工程S5とを備えてなる。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の分割プレートの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具を交換する矯正装置の拡縮連結具交換方法であって、
前記一対の分割プレートの拡縮連結具取付部分を開削して前記拡縮連結具を交換する拡縮連結具交換工程と、
前記拡縮連結具交換工程において開削したことにより形成される開削孔にレジンを注入して重合させるレジン重合工程と、を備えてなる矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項2】
前記拡縮連結具取付部分を囲う石膏壁となるように、前記拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付け凝固させる石膏壁作成工程をさらに備えてなる請求項1に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項3】
前記石膏壁作成工程において作成された前記石膏壁によって囲まれたことにより形成される凹陥部を閉塞する石膏蓋となるように、前記凹陥部及びその周囲に石膏を盛り付け凝固させる石膏蓋作成工程をさらに備え、
前記レジン重合工程は、前記開削孔及び前記凹陥部の底部にレジンを注入した後、前記石膏蓋を前記凹陥部及びその周囲に装着してレジンを重合させる工程を含んでなる請求項2に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項4】
前記拡縮連結具取付部分の表面形状を修整する拡縮連結具取付部分修整工程をさらに備えてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項5】
前記拡縮連結具交換工程は、前記拡縮連結具取付部分を開削する前において、前記石膏壁の表面に前記拡縮連結具の位置を標示する拡縮連結具位置標示部を形成する工程を含んでなる請求項2〜4のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項6】
前記石膏壁作成工程は、前記拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付ける前において、前記拡縮連結具の拡縮部分及び前記一対の分割プレートの間の隙間を隙間閉塞部材で閉塞する工程を含んでなる請求項2〜5のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項7】
前記石膏壁作成工程は、前記拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付ける前において、前記矯正装置の側周部分を側周部閉塞部材で閉塞する工程を含んでなる請求項2〜6のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項8】
前記石膏壁作成工程は、前記拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付ける前において、前記一対の分割プレートの裏面を基台に固定する工程を含んでなる請求項2〜7のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項9】
前記石膏蓋作成工程は、前記凹陥部の周囲に石膏を盛り付ける前において、前記凹陥部の周囲に前記石膏蓋の位置決めを行う位置決め部を形成する工程を含んでなる請求項3〜8のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項10】
前記石膏蓋作成工程は、前記凹陥部及びその周囲に石膏を盛り付ける前において、前記凹陥部及びその周囲に分離材を塗布する工程を含んでなる請求項3〜9のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項11】
前記石膏蓋作成工程は、前記凹陥部及びその周囲に石膏を凝固させた後において、前記石膏蓋の表面から前記石膏壁の表面にわたって前記石膏蓋の位置を標示する石膏壁位置標示部を形成する工程を含んでなる請求項3〜10のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項12】
前記レジン重合工程は、前記石膏蓋を前記凹陥部及びその周囲に装着する前において、前記凹陥部の周囲及び前記石膏蓋の裏面に分離材を塗布する工程を含んでなる請求項3〜11のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項13】
前記レジン重合工程は、前記石膏蓋を前記凹陥部及びその周囲に装着する前において、前記石膏蓋の裏面にレジンを注入する工程を含んでなる請求項3〜12のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。
【請求項14】
前記レジン重合工程は、前記石膏蓋を前記凹陥部及びその周囲に装着した後において、前記石膏蓋を前記凹陥部及びその周囲に固定する工程を含んでなる請求項3〜13のいずれか1項に記載の矯正装置の拡縮連結具交換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供はもちろんのこと、成人においても歯列の乱れや咬合不良等の機能不全の状態を、安定した歯列、良好な咬合となるように矯正するための矯正装置の拡縮連結具交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の矯正装置は、例えば、上顎の内面に装着される上レジンプレートと、下顎の内面に装着される下レジンプレートと、上レジンプレート及び下レジンプレートの前部側が開閉するように連結する連結部材と、を備えてなるものであって、上レジンプレート及び下レジンプレートが、夫々、左右に二分割された一対の分割プレートと、一対の分割プレートの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具と、を有してなるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の拡縮連結具は、左右両側に互いに逆ねじとなる雄ねじを有する螺軸(スクリュー)と、螺軸を挟んで前後両側に位置する2本のガイド軸(ガイドピン)と、一対の分割プレートに夫々対向するように取り付けられ螺軸及び2本のガイド軸を軸架するホルダーと、を有してなるものであって、螺軸の中央部に設けられた孔に回転操作具(スクリューキー)を挿入して螺軸を前方向に回転させることにより、一対の分割プレートが互いに離間する方向に移動して一対の分割プレートの間隔を側方に拡大し、逆に、螺軸を後方向に回転させることにより、一対の分割プレートが互いに近接する方向に移動して一対の分割プレートの間隔を側方に縮小することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−146442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の矯正装置では、例えば、拡縮連結具を構成する螺軸の過剰な締緩によりねじ山が潰れて螺軸が空転し、一対の分割プレートの拡縮が不能になることがある。この場合には、通常、矯正装置を全交換する必要があり、もって、矯正装置を再製作することになる。それゆえ、矯正装置の再製作に多大な費用を要するとともに、矯正装置が再製作されるまでの長期間において、患者の矯正治療が中断されることとなり、矯正治療の期間が長期化するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、矯正装置の拡縮連結具を安価かつ迅速に交換することができる矯正装置の拡縮連結具交換方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る矯正装置5の拡縮連結具交換方法は、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具11を交換する矯正装置5の拡縮連結具交換方法であって、
前記一対の分割プレート6a,6aの拡縮連結具取付部分6cを開削して拡縮連結具11を交換する拡縮連結具交換工程S3と、
前記拡縮連結具交換工程S3において開削したことにより形成される開削孔6eにレジン43を注入して重合させるレジン重合工程S4と、を備えてなることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記拡縮連結具取付部分6cを囲う石膏壁31となるように、前記拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付け凝固させる石膏壁作成工程S1をさらに備えてなることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項2の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏壁作成工程S1において作成された石膏壁31によって囲まれたことにより形成される凹陥部32を閉塞する石膏蓋33となるように、前記凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させる石膏蓋作成工程S2をさらに備え、
前記レジン重合工程S4は、前記開削孔6e及び前記凹陥部32の底部にレジン43を注入した後、前記石膏蓋33を前記凹陥部32及びその周囲31cに装着してレジン43を重合させる工程を含んでなることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記拡縮連結具取付部分6cの表面形状を修整する拡縮連結具取付部分修整工程S5をさらに備えてなることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項2〜4のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記拡縮連結具交換工程S3は、前記拡縮連結具取付部分6cを開削する前において、前記石膏壁31の表面31aに前記拡縮連結具11の位置を標示する拡縮連結具位置標示部34を形成する工程を含んでなることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、上記請求項2〜5のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏壁作成工程S1は、前記拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付ける前において、前記拡縮連結具11の拡縮部分24,24、及び前記一対の分割プレート6a,6a、7a,7aの間の隙間25,25を隙間閉塞部材(ワックス41)で閉塞する工程を含んでなることを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、上記請求項2〜6のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏壁作成工程S1は、前記拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付ける前において、前記矯正装置5の側周部分(連結部材8,8付近の隙間8a,8a、一対の分割プレート6a,6aを有する上レジンプレート6と一対の分割プレート7a,7aを有する下レジンプレート7との間の隙間8b)を側周部閉塞部材(パテ42)で閉塞する工程を含んでなることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、上記請求項2〜7のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏壁作成工程S1は、前記拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付ける前において、前記一対の分割プレート7a,7aの裏面7bを基台30に固定する工程を含んでなることを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明は、上記請求項3〜8のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏蓋作成工程S2は、前記凹陥部32の周囲31cに石膏を盛り付ける前において、前記凹陥部32の周囲31cに前記石膏蓋33の位置決めを行う位置決め部(凹部31b)を形成する工程を含んでなることを特徴としている。
【0016】
請求項10の発明は、上記請求項3〜9のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏蓋作成工程S2は、前記凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付ける前において、前記凹陥部32及びその周囲31cに分離材を塗布する工程を含んでなることを特徴としている。
【0017】
請求項11の発明は、上記請求項3〜10のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記石膏蓋作成工程S2は、前記凹陥部32及びその周囲31cに石膏を凝固させた後において、前記石膏蓋33の表面33cから前記石膏壁31の表面31aにわたって前記石膏蓋33の位置を標示する石膏壁位置標示部35を形成する工程を含んでなることを特徴としている。
【0018】
請求項12の発明は、上記請求項3〜11のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記レジン重合工程S4は、前記石膏蓋33を前記凹陥部32及びその周囲31cに装着する前において、前記凹陥部32の周囲31c及び前記石膏蓋33の裏面33dに分離材を塗布する工程を含んでなることを特徴としている。
【0019】
請求項13の発明は、上記請求項3〜12のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記レジン重合工程S4は、前記石膏蓋33を前記凹陥部32及びその周囲31cに装着する前において、前記石膏蓋33の裏面33dにレジン43を注入する工程を含んでなることを特徴としている。
【0020】
請求項14の発明は、上記請求項3〜13のいずれか1項の矯正装置5の拡縮連結具交換方法において、前記レジン重合工程S4は、前記石膏蓋33を前記凹陥部32及びその周囲31cに装着した後において、前記石膏蓋33を前記凹陥部32及びその周囲31cに固定する工程を含んでなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
以下に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。請求項1の発明に係る矯正装置5の拡縮連結具交換方法では、拡縮連結具交換工程S3において、拡縮連結具取付部分6cを開削して拡縮連結具11を交換し、レジン重合工程S4において、開削孔6eにレジン43を注入して重合させるから、従来のように矯正装置を全交換することなく拡縮連結具取付部分6cを開削して拡縮連結具11を交換することができる。それゆえ、従来のように矯正装置を再製作する場合と比較して、矯正装置5の拡縮連結具11を安価かつ迅速に交換することができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、拡縮連結具取付部分6cを囲う石膏壁31となるように、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付け凝固させるから、レジン重合工程S4において、開削孔6eにレジン43を注入したとき、石膏壁31によって、レジン43が拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに流出することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、石膏蓋作成工程S2において、凹陥部32を閉塞する石膏蓋33となるように、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させるから、石膏蓋33の裏面33dは、凹陥部32及びその周囲31cの形状が転写された形状となる。すなわち、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が石膏蓋33の突出部33eの表面に転写される。したがって、レジン重合工程S4において、開削孔6e及び拡縮連結具取付部分6cの表面(凹陥部32の底部)にレジン43を注入した後、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着してレジン43を重合させるから、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43を重合させることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、拡縮連結具取付部分6cの表面形状を修整する拡縮連結具取付部分修整工程S5をさらに備えてなるから、例えば、拡縮連結具取付部分6cの表面と、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dの表面とが滑らかになるように、拡縮連結具取付部分6cの表面に突出したレジン43の表面43aを切削・研磨することにより、一対の分割プレート6a,6aを有する上レジンプレート6を上顎1の内面に違和感なく装着することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、拡縮連結具交換工程S3において、石膏壁31の表面31aに拡縮連結具11の位置を標示する拡縮連結具位置標示部34を形成するから、拡縮連結具位置標示部34によって、拡縮連結具11を正確な位置に装着することができ、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をさらに迅速に交換することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25をワックス41(隙間閉塞部材)で閉塞するから、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付けるとき、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、及び一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25に石膏が侵入して凝固することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。
【0027】
さらに、請求項6の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、ワックス41(隙間閉塞部材)によって、一対の分割プレート6a,6aの間隔が患者の最新矯正位置で固定されるから、拡縮連結具交換工程S3において、拡縮連結具11を患者の最新矯正位置で交換することができる。それゆえ、拡縮連結具11を交換した後、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮調整することなく、患者の最新矯正位置から矯正治療を開始でき、もって、矯正治療の期間を短縮することができる。
【0028】
請求項7の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、矯正装置5の側周部分(連結部材8,8付近の隙間8a,8a、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8b)をパテ42(側周部閉塞部材)で閉塞するから、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付けるとき、矯正装置5の側周部分(連結部材8,8付近の隙間8a,8a、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8b)に石膏が侵入して凝固することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をさらに迅速に交換することができる。
【0029】
さらに、請求項7の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、矯正装置5の側周部分(上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8b)をパテ42(側周部閉塞部材)で閉塞するから、上レジンプレート6がパテ42(側周部閉塞部材)を介して下レジンプレート7に固定されて安定することとなるから、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏を盛り付けやすくなる。
【0030】
請求項8の発明によれば、石膏壁作成工程S1において、一対の分割プレート7a,7aの裏面7bを基台30に固定するから、一対の分割プレート7a,7aが基台30に固定されて一対の分割プレート6a,6aの表面6bが安定することとなり、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに石膏をさらに盛り付けやすくなる。
【0031】
請求項9の発明によれば、石膏蓋作成工程S2において、凹陥部32の周囲31cに石膏蓋33の位置決めを行う凹部31b(位置決め部)を形成するから、例えば、凹陥部32の周囲31cに石膏を盛り付けたとき、石膏蓋33の裏面33dに凹部31b(位置決め部)に対応する凸部33fが形成される。これにより、石膏蓋33の位置決めを容易に行うことができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、石膏蓋作成工程S2において、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付ける前において、凹陥部32及びその周囲31cに分離材を塗布するから、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させた後、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cから容易に取り外すことができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、石膏蓋作成工程S2において、石膏蓋33の表面33cから石膏壁31の表面31aにわたって石膏蓋33の位置を標示する石膏壁位置標示部35を形成するから、石膏壁位置標示部35によって、石膏蓋33を正確な位置に装着することができ、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、レジン重合工程S4において、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着する前において、凹陥部32の周囲31c及び石膏蓋33の裏面33dに分離材を塗布するから、レジン43を重合させた後、石膏蓋33をレジン43の表面43a及び凹陥部32の周囲31cから容易に取り外すことができる。
【0035】
請求項13の発明によれば、レジン重合工程S4において、石膏蓋33の裏面33dにレジン43を注入するから、開削孔6eに注入されたレジン43に気泡が発生する事態を低減させることができると共に、レジン43は縮小し易いものであるため、これによって、当該開削孔6eに注入されたレジン43が不足している場合においても、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43を確実に重合させることができる。
【0036】
請求項14の発明によれば、レジン重合工程S4において、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに固定するから、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43をさらに確実に重合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る矯正装置の使用状態を子供の患者の口の前方から見た正面図である。
図2】(a)は同実施形態に係る矯正装置を斜め前方から見た斜視図、(b)は同矯正装置の側面図である。
図3】同実施形態に係る矯正装置を上顎と下顎とに同時に取り付けた状態を展開した状態で示す平面図である。
図4】同実施形態に係る矯正装置の一部拡大平面図である。
図5】同実施形態に係る矯正装置を例示し、上レジンプレート及び下レジンプレートの前部側を閉じた状態で連結手段で連結し、拡縮連結具の拡縮部分及び一対の分割プレートの間の隙間を隙間閉塞部材で閉塞し、矯正装置の側周部分を側周部閉塞部材で閉塞した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図6】同実施形態に係る矯正装置を固定する基台を斜め前方から見た斜視図である。
図7】同実施形態に係る矯正装置を例示し、拡縮連結具取付部分を囲う石膏壁となるように拡縮連結具取付部分の周囲に石膏を盛り付け凝固させ、石膏壁の表面に拡縮連結具の位置を標示する拡縮連結具位置標示部を形成し、凹陥部の周囲に位置決め部を形成した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図8】同実施形態に係る矯正装置を例示し、石膏壁によって囲まれる凹陥部を閉塞する石膏蓋となるように凹陥部及びその周囲に石膏を盛り付け凝固させ、石膏蓋の表面から石膏壁の表面にわたって石膏蓋の位置を標示する石膏壁位置標示部を形成した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図9】同実施形態に係る矯正装置に形成された石膏壁によって囲まれる凹陥部及びその周囲から取り外した石膏蓋を裏面側から見た斜視図である。
図10】同実施形態に係る矯正装置を例示し、石膏蓋を凹陥部及びその周囲から取り外し、拡縮連結具取付部分を開削して拡縮連結具を取り外し、開削孔及び取付孔を削成した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図11】同実施形態に係る矯正装置を例示し、拡縮連結具を交換した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図12】同実施形態に係る矯正装置を例示し、開削孔、取付孔及び拡縮連結具取付部分の表面(凹陥部の底部)にレジンを注入した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図13】同実施形態に係る矯正装置を例示し、石膏蓋を凹陥部及びその周囲に装着し、石膏蓋を凹陥部及びその周囲に固定手段で固定した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図14】同実施形態に係る矯正装置を例示し、レジンを重合させ、石膏蓋を凹陥部及びその周囲から取り外し、石膏壁を拡縮連結具取付部分の周囲から撤去した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図15】同実施形態に係る矯正装置を例示し、拡縮連結具取付部分の表面形状を修整し、隙間閉塞部材、側周部閉塞部材及び連結手段を撤去した状態を示す斜め前方から見た斜視図である。
図16】同実施形態に係る矯正装置の拡縮連結具交換方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明に係る矯正装置5の拡縮連結具交換方法の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0039】
<矯正装置の説明>
まず、図1図4を参照して、矯正装置の説明を行う。図1において、符号1は、子供の患者の上顎、符号2は、子供の患者の下顎である。図1に示すように、上顎1には、その中央部から左右両側へ上前歯3a〜3c、上奥歯3d〜3fが萌出しており、下顎2には、その中央部から左右両側へと下前歯4a〜4c、下奥歯4d〜4fが萌出している。そして、上前歯3a〜3c、上奥歯3d〜3fが上歯列弓3を形成し、下前歯4a〜4c、下奥歯4d〜4fが下歯列弓4を形成している。
【0040】
矯正装置5は、図1図3を参照して分かるように、上顎1の内面に装着される上レジンプレート6と、下顎2の内面に装着される下レジンプレート7とを、バネ性のある側面視U字形の連結部材8,8によって、上レジンプレート6及び下レジンプレート7の前部側が開閉するように連結し、上レジンプレート6には上歯列弓3の外面に沿って当て付けられる上弓形ワイヤー9を取り付け、下レジンプレート7には下歯列弓4の外面に沿って当て付けられる下弓形ワイヤー10を取り付けてなるものである。上レジンプレート6及び下レジンプレート7は、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂(歯科用レジン、床用レジン)により形成され、上弓形ワイヤー9及び下弓形ワイヤー10は、歯科用ステンレス鋼線により形成される。
【0041】
さらに詳しく、上記矯正装置5の構造について説明すれば、図1図3に示すように、上レジンプレート6は、左右に二分割された一対の分割プレート6a,6aからなり、その分割端面間の間隔、すなわち、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮調整可能な拡縮連結具11によって一体的に連結されている。また、下レジンプレート7は、左右に二分割された一対の分割プレート7a,7aからなるもので、その分割端面間の間隔である一対の分割プレート7a,7aの間隔を拡縮調整可能な拡縮連結具11によって一体的に連結されている。
【0042】
上弓形ワイヤー9及び下弓形ワイヤー10は、図4に示す(図4では下弓形ワイヤー10側を示している)ように、左右に二分割され、上弓形ワイヤー9及び下弓形ワイヤー10の分割端部9a,9a、10a,10a同士が入れ子式に伸縮可能に連結されている。すなわち、図4に示すように、一方の分割端部9a,10aには歯科用ステンレス等の金属製のガイドチューブ12の基端部がろう付け(例えば、溶接)により接続され、このガイドチューブ12に他方の分割端部9a,10aがスライド自在に嵌挿され、それによって両方の分割端部が入れ子式に伸縮可能に連結されている。
【0043】
また、図4に示すように、上弓形ワイヤー9の分割端部9a,9aは、上記のようにガイドチューブ12を介して互いに他の分割端部と入れ子式に伸縮可能に連結され、反対側の端部9b,9bは、図2(b)に示すように、その手前側に上歯列弓3の上奥歯3d(図1参照)外側面に当接する当接部13,13を形成するとともに、上前歯3c,上奥歯の3dの隙間を通るように延びて上レジンプレート6の前部側外側端部に埋入固定されている(図4参照)。すなわち、上弓形ワイヤー9の端部9b,9bは、図2(b)に示すように、その手前側に当接部13,13を形成した状態で上レジンプレート6の前部側外側端部に埋入されて固定されている(図4参照)。また、上弓形ワイヤー9の後部側外側端部には、図2(b)に示すように、上歯列弓3の上奥歯3f(第二乳臼歯)に回し掛けされるような掛止部14及びこの上奥歯3fの臼面上に係止されるコ字状の係止片15が取り付けられている。
【0044】
一方、図4に示すように、下弓形ワイヤー10の分割端部10a,10aは、ガイドチューブ12を介して互いに他の分割端部と入れ子式に伸縮可能に連結され、反対側の端部10b,10bは、図2(b)に示すように、下歯列弓4の下奥歯4d,4e(図1参照)の外側面に当接するような当接部16を形成した状態で、下レジンプレート7の前部側外側端部に埋入されて固定されている(図4参照)。すなわち、下弓形ワイヤー10の両端部は、図2(b)に示すように、その手前側に当接部16,16を形成した状態で下レジンプレート7の前部側外側端部に固着されている(図4参照)。また、下弓形ワイヤー10の後部側外側端部には、図2(b)及び図4に示すように、下歯列弓4の下奥歯4f(第二乳臼歯)の臼面上に係止されるコ字状の係止片17が取り付けられている。
【0045】
上レジンプレート6及び下レジンプレート7の前部側が開閉するように上レジンプレート6及び下レジンプレート7を連結する連結部材8,8は、図3から分かるように、左右一対設けられるもので、バネ性を有する側面視U字形の歯科用ステンレス鋼線からなる複数の線体18(図示では2本)と、これら線体18に套嵌されたポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂製の外皮チューブ19とからなる。そして、図2(a)、図2(b)及び図4に示すように、線体18及び外皮チューブ19の夫々一端部が上レジンプレート6の各分割プレート6aに埋入固定され、その他端部が、夫々下レジンプレート7の一対の分割プレート7a,7aに埋入固定されることよって、上レジンプレート6及び下レジンプレート7は、図2(b)に示すように夫々前部側が横向きV字形に開いた状態に連結される。
【0046】
上レジンプレート6の一対の分割プレート6a,6a(あるいは、下レジンプレート7の一対の分割プレート7a,7a)を拡縮調整可能に連結する拡縮連結具11は、図4に示すように、左右両側に互いに逆ねじが切ってある螺軸20(スクリュー)と、この螺軸20を挟んで両側に位置する2本のガイド軸21,21(ガイドピン)とを、一対の分割プレート6a,6a、又は、一対の分割プレート7a,7aに夫々取り付けたホルダー22,22間にわたって軸架してなるもので、螺軸20の中央部の孔23に図示しない回転操作具(スクリューキー)を挿入して螺軸20を一方向(例えば、前方向)に回転させることにより、一対の分割プレート6a,6a、又は、一対の分割プレート7a,7aが互いに離間する方向に移動して両者の間隔を側方に拡大し、反対方向(例えば、後方向)に回転させると、一対の分割プレート6a,6a、又は、一対の分割プレート7a,7aは互いに近接する方向に移動して両者の間隔を側方に縮小することができる。なお、本実施形態では、例えば、螺軸20のピッチが0.8mmとなるように形成され、孔23が90度おきに4箇所設けられており、1週間に90度ずつ螺軸20を一方向(例えば、前方向)に回転させることにより、一対の分割プレート6a,6a、又は、一対の分割プレート7a,7aを4週間で0.8mm側方に拡大することができるようになっている。
【0047】
上記のように構成される矯正装置5の使用にあたっては、当該矯正装置5を、図2(b)に示す状態から上レジンプレート6及び下レジンプレート7の前部側を押えて若干閉じた状態で、後部側より患者の口腔に押し込んで、上レジンプレート6を上顎1(図1参照)の内面側に密着させて嵌合し、図3に示すように、上弓形ワイヤー9を上歯列弓3の外面に当て付け、その両端部の当接部13,13を上歯列弓3の上奥歯3d外側面に当接させるとともに、掛止部14,14を上奥歯3f,3f(第二乳臼歯)に回し掛け、係止片15,15をこの上奥歯3f,3fの臼面上に夫々係止させ、また上レジンプレート6を下顎2(図1参照)の内面側に密着させて嵌合し、図3に示すように、下弓形ワイヤー10を下歯列弓4の外面に当て付けて、その当接部16,16を下歯列弓4の下奥歯4d,4eの外側面に当接させるとともに、係止片17を下奥歯4f(第二乳臼歯)の臼面上に係止させる。
【0048】
一方、この矯正装置5は、上レジンプレート6及び下レジンプレート7が左右に二分割されて、その分割端面間の間隔を拡縮調整可能な拡縮連結具11により一体的に連結されており、そして上弓形ワイヤー9及び下弓形ワイヤー10は左右に二分割されて、その分割端部同士が入れ子式に伸縮可能に連結されている。そのため、例えば、下レジンプレート7の場合を示す図4から分かるように、拡縮連結具11を拡大操作して、下レジンプレート7の一対の分割プレート7a,7aを互いに離れる方向に移動させると、それに伴って下弓形ワイヤー10の分割端部10a,10a同士も互いに離れる方向に移動して、下弓形ワイヤー10は原形を維持しながら伸張し、また、拡縮連結具11を縮小操作して、下レジンプレート7の一対の分割プレート7a,7aを互いに近づく方向に移動させると、下弓形ワイヤー10の分割端部10a,10a同士も互いに近づく方向に移動して、下弓形ワイヤー10は原形を維持しながら収縮する。これは、上レジンプレート6についても同様である。
【0049】
<拡縮連結具交換方法の説明>
ここで、本実施形態の特徴部分は、矯正装置5の拡縮連結具11を交換する方法に関するものであるため、この点につき、図5図16も参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具11を交換する方法について説明することとする。
【0050】
<石膏壁作成工程の説明>
まず、図16に示す石膏壁作成工程S1を説明する。
【0051】
図16に示す石膏壁作成工程S1において、まず、図5に示すように、上レジンプレート6及び下レジンプレート7の前部側を閉じた状態で、上弓形ワイヤー9と下弓形ワイヤー10とを連結手段40で連結する。連結手段40は、両端部が夫々上弓形ワイヤー9の当接部13,13及び下弓形ワイヤー10の当接部16,16にねじり固定され、上弓形ワイヤー9の当接部13,13と下弓形ワイヤー10の当接部16,16とを連結する複数(図5では2本)の金属製のワイヤーで形成される。これにより、上レジンプレート6が連結手段40を介して下レジンプレート7に固定されて安定することにより、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付けやすくなる。
【0052】
次いで、石膏壁作成工程S1(図16参照)において、図5に示すように、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25をワックス41(隙間閉塞部材の一例)で閉塞する。拡縮連結具11の拡縮部分24,24は、図4に示すように、一対の分割プレート6a,6a、又は、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25に位置する螺軸20及び2本のガイド軸21,21からなる部分である。そして、螺軸20と2本のガイド軸21,21との間には、隙間があり、この隙間を閉塞するようにワックス41(図5参照)が埋設される。なお、ワックス41は、ワックススパチュラ(へら)で築盛される歯科技工用の軟性ワックスであって、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、及び、一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25を完全に閉塞するものである。これにより、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付けるとき、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、及び、一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25に石膏が侵入して凝固することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11を迅速に交換することができる。そしてさらには、ワックス41によって、一対の分割プレート6a,6aの間隔が患者の最新矯正位置で固定されるから、後述する拡縮連結具交換工程S3(図16参照)において、拡縮連結具11を患者の最新矯正位置で交換することができる。したがって、拡縮連結具11を交換した後、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮調整することなく、患者の最新矯正位置から矯正治療を開始でき、もって、矯正治療の期間を短縮することができる。なお、隙間閉塞部材は、ワックス41に限定されるものではなく、例えば、歯科技工用のワセリンであってもよい。
【0053】
次いで、石膏壁作成工程S1(図16参照)において、図5に示すように、連結部材8,8(図15参照)付近の隙間8a,8a、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bをパテ42(側周部閉塞部材の一例)で閉塞する。詳細には、連結部材8,8付近の隙間8a,8aは、図15に示すように、上レジンプレート6及び下レジンプレート7の後部側において連結部材8,8の装着部分が、後方が開放するように前側が尖突する楔形状に切り欠かれた空間と、この空間に配置される連結部材8,8との間の隙間であって、図5に示すように、連結部材8,8の全部が完全に被覆されるようにパテ42で閉塞される。そして、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bは、上レジンプレート6及び下レジンプレート7の前部側を閉じた状態で側部の全部(前部、後部、左側部及び右側部)が側方に開口する隙間であって、これら全ての開口が完全に被覆されるようにパテ42で閉塞される。なお、パテ42は、手指又は石膏スパチュラ(へら)で築盛される歯科技工用のシリコーンパテであって、連結部材8,8付近の隙間8a,8a、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bを完全に閉塞するものである。これにより、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付けるとき、連結部材8,8付近の隙間8a,8a、及び上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bに石膏が侵入して凝固することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。そしてさらに、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bをパテ42で閉塞することによって、上レジンプレート6がパテ42を介して下レジンプレート7に固定されて安定することとなり、もって、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付けやすくなる。なお、側周部閉塞部材は、パテ42に限定されるものではなく、例えば、歯科技工用の印象材であってもよい。
【0054】
次いで、石膏壁作成工程S1(図16参照)において、図5及び図6に示すように、一対の分割プレート7a,7aの裏面7bを基台30(図6参照)に固定する。基台30は、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付けるときに、一対の分割プレート7a,7aの裏面7bを支持固定して一対の分割プレート6a,6aの表面6bを安定させるための専用台である。基台30は、図6に示すように、作業台に載置される台座部30aと、台座部30aの上方に突出して設けられ、外形が一対の分割プレート7a,7aの裏面7bのU字形状の内形に沿う形状となるように形成された支持部30bと、を有してなる。台座部30a及び支持部30bは、例えば、歯科技工用の普通石膏を棒状に築盛し、上記の形状となるように手指又は石膏スパチュラ(へら)で加工して凝固させることにより、一体成形されるものである。このように、一対の分割プレート7a,7aの裏面7bを基台30に固定することにより、一対の分割プレート7a,7aが基台30に固定されて一対の分割プレート6a,6aの表面6bが安定することとなり、もって、後述する拡縮連結具取付部分6c(図5参照)の周囲6d(図5参照)に石膏をさらに盛り付けやすくなる。
【0055】
次いで、石膏壁作成工程S1(図16参照)において、図7に示すように、一対の分割プレート6a,6aの表面6b(図5参照)の拡縮連結具取付部分6cを囲う石膏壁31となるように、拡縮連結具取付部分6cの周囲6d(図5参照)に石膏を盛り付け凝固させる。
【0056】
拡縮連結具取付部分6cとは、一対の分割プレート6a,6aの表面6bのうち、拡縮連結具11が取り付けられている部分及びその周辺部分であって、図5に点線で示すように、拡縮連結具11が取り付けられている部分を中央部に配置した矩形の部分である。また、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dとは、一対の分割プレート6a,6aの表面6bのうち、拡縮連結具取付部分6cを除く周囲部分である。詳細には、拡縮連結具取付部分6cの前側部分、後側部分、左側部分及び右側部分であって、これらの上面から側面にわたって4つの棒状の石膏を手指又は石膏スパチュラ(へら)で築盛することにより、図7に示すように、拡縮連結具取付部分6cの表面が底部となる凹陥部32を囲う窓枠状の石膏壁31が形成される部分である。この石膏壁31は、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、開削孔6e(図10参照)にレジン43(図12参照)を注入したとき、レジン43が拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに流出することを防止する壁としての機能を有するとともに、レジン43の表面43a(図14参照)を拡縮連結具取付部分6cの表面に突出させて重合させる型としての機能を有するものである。これにより、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、開削孔6e(図10参照)にレジン43(図12参照)を注入したとき、レジン43が拡縮連結具取付部分6cの周囲6dに流出することを防止でき、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。なお、石膏壁31の材料となる石膏は、歯科技工用の普通石膏であって、粉状の普通石膏と水とを混練することにより、棒状の石膏が形成される。また、石膏壁31の材料となる石膏としては、粉状の普通石膏と水とを混練するときに、クラックパウダ等の石膏用添加材を添加したものを使用することが好ましい。後述する拡縮連結具取付部分修整工程S5(図16参照)において、石膏壁31を歯科技工用のハンマー等で破壊することができ、もって、石膏壁31を拡縮連結具取付部分6cの周囲6dから撤去しやすくなるためである。
【0057】
<石膏蓋作成工程の説明>
次に、図16に示す石膏蓋作成工程S2を説明する。
【0058】
図16に示す石膏蓋作成工程S2において、図7に示すように、石膏壁31の表面31aに拡縮連結具11の位置を標示する拡縮連結具位置標示部34を形成する。拡縮連結具11は、図4に示すように、左右に二分割された一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの分割端面の中間位置において前後方向に延びるとともに上レジンプレート6及び下レジンプレート7を上顎1,下顎2の内面に装着したときに上下方向に延びる正中線と直交する第1直線L1と、第1直線L1と直交し左右方向に延びて螺軸20の回転軸芯となる第2直線L2とにより位置決めされるものである。拡縮連結具位置標示部34は、図7に示すように、上記の第1直線L1及び第2直線L2に対応する前後方向の直線及び左右方向の直線の一部を、石膏壁31の表面31aに、例えば、黒色のフエルトペンで描いたものである。これにより、拡縮連結具11を正確な位置に装着することができ、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をさらに迅速に交換することができる。
【0059】
次いで、石膏蓋作成工程S2(図16参照)において、図7に示すように、凹陥部32の周囲31cに石膏蓋33の位置決めを行う凹部31b(位置決め部の一例)を形成する。
【0060】
凹陥部32の周囲31cとは、石膏蓋33(図8参照)で閉塞される部分であって、石膏壁31の表面31aにおいて図7の点線で囲まれる部分である。また、凹部31bは、凹陥部32の周囲31cに形成された複数(図7では4個)の円形の凹部であって、歯科技工用の彫刻刀(エバンス)や、歯科技工用の電動エンジン(ハンドピース、マイクロモータ)に装着した切削用のカーバイドバー等によって形成されるものである。この凹部31bは、例えば、凹陥部32の周囲31cにおいて拡縮連結具位置標示部34上に形成されるものである。これにより、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、図13に示すように、石膏蓋33を凹陥部32(図12参照)及びその周囲31c(図7参照)に装着するとき、石膏蓋33の凸部33f(図9参照)を石膏壁31の凹部31b(図7参照)に係合させることができ、もって、凹陥部32の周囲31cに石膏蓋33の位置決めを容易に行うことができる。なお、凹部31bの形状は、円形に限定されるものではなく、例えば、矩形等の任意の形状であってもよい。また、凹部31bの個数は、2個以上であれば、任意の個数に設定できる。さらに、位置決め部は、凹部に限定されるものではなく、例えば、凸部であってもよい。位置決め部が凸部である場合には、石膏蓋33の裏面33dに凸部に対応する凹部が形成され、上記と同様の効果を得ることができる。
【0061】
次いで、石膏蓋作成工程S2(図16参照)において、図7に示すように、凹陥部32及びその周囲31cに、特に、凹陥部32の周囲31cに形成された凹部31bに図示しない分離材を刷毛等により塗布する。この分離材は、例えば、アルギン酸ナトリウムを含有するレジン分離性に優れた歯科技工用の床用レジン分離材であって、凹陥部32及び石膏壁31の表面31aから石膏蓋33(図8参照)を分離するものである。これにより、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させた後、石膏蓋33(図8参照)を凹陥部32及びその周囲31cから容易に取り外すことができる。なお、分離材は、床用レジン分離材に限定されるものではなく、他の用途に使用される分離材、ワセリン、パラフィン、中性洗剤、石鹸水等であってもよい。
【0062】
次いで、石膏蓋作成工程S2(図16参照)において、図8に示すように、石膏壁31によって囲まれる凹陥部32を閉塞する石膏蓋33となるように、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させる。凹陥部32の周囲31cは、図7に示すように、上記したように4個の凹部31bが形成されるとともに、石膏壁31の表面31aにおいて図7の点線で囲まれる部分であって、凹陥部32に向かって滑らかに湾曲する部分である。ここでは、図8に示すように、凹陥部32及びその周囲31cを完全に閉塞するように棒状の石膏を手指又は石膏スパチュラ(へら)で築盛することにより、図9に示すように、石膏蓋33の裏面33dが凹陥部32及びその周囲31cの形状が転写された形状となる石膏蓋33が形成される。この石膏蓋33は、図8に示すように、石膏蓋33の表面33cにおいて、凹陥部32及びその周囲31cを被覆する裾野部分を有する山形形状の装着部33aと、装着部33aの上方に突出して一体的に設けられ石膏蓋33を着脱するときに手指で把持するための矩形柱状の把手部33bと、を有してなる。そしてさらに、図9に示すように、石膏蓋33の裏面33dにおいて、凹陥部32(図7参照)の底部となる拡縮連結具取付部分6c(図7参照)の表面形状が転写された表面を有する突出部33eと、突出部33eの周囲に設けられ石膏壁31の4個の凹部31bに対応する4個の円柱状の凸部33fと、を有してなる。なお、このように形成される石膏蓋33は、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、開削孔6e(図11参照)及び拡縮連結具取付部分6cの表面(凹陥部32の底部)にレジン43(図12参照)を注入したときに、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着して拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるように、レジン43を重合させる型としての機能を有するものである。
【0063】
しかして、石膏壁31によって囲まれる凹陥部32を閉塞する石膏蓋33となるように、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を盛り付け凝固させるから、石膏蓋33の裏面33dが凹陥部32及びその周囲31cの形状が転写された形状となり、もって、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が石膏蓋33の突出部33eの表面に転写されることとなる。したがって、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、開削孔6e(図11参照)及び拡縮連結具取付部分6cの表面(凹陥部32の底部)にレジン43(図12参照)を注入した後、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着してレジン43を重合させるから、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43を重合させることができる。なお、石膏蓋33の材料となる石膏は、歯科技工用の硬石膏(硬質石膏)であって、粉状の硬石膏と水とを混練することにより、棒状の石膏が形成される。一般に、歯科技工用の硬石膏は、歯科技工用の普通石膏と比較して、硬化したときの膨張変形が小さいため、高精度な型を作成することに適している。それゆえ、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が石膏蓋33の突出部33eの表面に高精度に転写されることとなり、もって、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43をさらに確実に重合させることができる。
【0064】
次いで、石膏蓋作成工程S2(図16参照)において、図8に示すように、凹陥部32及びその周囲31cに石膏を凝固させた後、石膏蓋33の表面33cから石膏壁31の表面31aにわたって石膏蓋33の位置を標示する石膏壁位置標示部35を形成する。石膏壁位置標示部35は、図8に示すように、拡縮連結具位置標示部34と異なる位置において、石膏蓋33の表面33cから石膏壁31の表面31aにわたって、形成された複数(図8では3本)の標示部である。これにより、石膏蓋33を正確な位置に装着することができ、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をより迅速に交換することができる。なお、石膏壁位置標示部35は、拡縮連結具位置標示部34と異なる色で形成された標示部であって、例えば、赤色のフエルトペンで描いたものである。
【0065】
<拡縮連結具交換工程の説明>
次に、図16に示す拡縮連結具交換工程S3を説明する。
【0066】
図16に示す拡縮連結具交換工程S3において、図10に示すように、石膏蓋33(図8参照)を凹陥部32及びその周囲31cから取り外し、拡縮連結具取付部分6cを開削して拡縮連結具11(図7参照)を取り外すとともに、開削孔6e及び取付孔6fを歯科技工用の電動エンジン(ハンドピース、マイクロモータ)に装着した切削用のカーバイドバー等によって削成する。この開削孔6eは、図10に示すように、拡縮連結具取付部分6cの中央部に配置した矩形の凹部である。また、取付孔6fは、図10に示すように、開削孔6eの底部において、一対の分割プレート6a,6aの間の隙間25に埋設されたワックス41を開削してなる矩形の凹部であって、図11に示すように、拡縮連結具11の拡縮部分24(図4参照)に装着される樹脂製の板状部材11a(プラスチックタグ)の下端部を装着するための凹部である。なお、板状部材11aの下端部を開削孔6eに装着できる場合には、取付孔6fを設けなくてもよい。
【0067】
次いで、拡縮連結具交換工程S3(図16参照)において、図11に示すように、拡縮連結具11の全部が開削孔6eに配置されるように、板状部材11aの下端部を取付孔6fに装着することによって、拡縮連結具11を交換する。板状部材11aは、拡縮連結具11を交換するとき、拡縮連結具11の拡縮部分24に拡縮連結具11を拡縮不能に装着されるものであって、図15に示すように、後述する拡縮連結具取付部分修整工程S5(図16参照)において撤去されるものである。板状部材11aは、面内方向が、拡縮連結具11の第1直線L1(図4参照)の延出方向、すなわち前後方向となるように、かつ面内方向の中間位置において面内方向と直交する直交方向が、第2直線L2(図4参照)の延出方向、すなわち左右方向となるように、拡縮連結具11に装着される。したがって、図11に示すように、板状部材11aの面内方向が、前後方向に延びる拡縮連結具位置標示部34に一致するように、かつ螺軸20の回転軸芯が、左右方向に延びる拡縮連結具位置標示部34に一致するように、板状部材11aの下端部を取付孔6fに装着することによって、拡縮連結具11を正確な位置に装着することができ、もって、矯正装置5の拡縮連結具11をさらに迅速に交換することができる。なお、板状部材11aの上端部は、通常、拡縮連結具11の拡縮部分24よりも上方に突出しているが、図11では、板状部材11aの全部が開削孔6e及び取付孔6fに配置されるように、板状部材11aの上端部の突出部分の一部が切除されている。これにより、後述するレジン重合工程S4(図16参照)において、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着するとき、板状部材11aの上端部が石膏蓋33に干渉することを防止することができる。
【0068】
<レジン重合工程の説明>
次に、図16に示すレジン重合工程S4を説明する。
【0069】
図16に示すレジン重合工程S4において、図12に示すように、開削孔6e(図11参照)、取付孔6f(図11参照)及び凹陥部32の底部となる拡縮連結具取付部分6c(図11参照)の表面にレジン43を注入する。レジン43は、上レジンプレート6及び下レジンプレート7と同一の材料であって、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂(歯科用レジン、床用レジン)である。また、常温において粘性及び流動性を有し、加熱することにより重合する加熱重合レジンである。なお、レジン43は、加熱重合レジンに限定されるものではなく、例えば、常温において即時重合する即時重合レジンや、紫外線等の光を照射することにより重合する光重合レジンであってもよい。
【0070】
次いで、レジン重合工程S4(図16参照)において、図12に示すように、凹陥部32の周囲31c及び石膏蓋33の裏面33d(図9参照)に、特に、石膏蓋33の裏面33dに形成された突出部33e(図9参照)に図示しない分離材を刷毛等により塗布する。分離材は、例えば、アルギン酸ナトリウムを含有するレジン分離性に優れた歯科技工用の床用レジン分離材であって、図12に示すように、石膏壁31の表面31a及びレジン43の表面43a(図14参照)から石膏蓋33を分離するものである。これにより、レジン43を重合させた後、石膏蓋33をレジン43の表面43a及び凹陥部32の周囲31cから容易に取り外すことができる。
【0071】
次いで、レジン重合工程S4(図16参照)において、図13に示すように、石膏蓋33の把手部33bの中央部において上方が開放するように前後方向にV字状に切り欠かれた切り欠き部33gを削成する。切り欠き部33gは、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着した後において、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに固定するゴムリング等の固定手段36を装着するための溝であって、歯科技工用の彫刻刀(エバンス)や、歯科技工用の電動エンジン(ハンドピース、マイクロモータ)に装着した切削用のカーバイドバー等によって形成されるものである。これにより、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに確実に固定することができる。
【0072】
次いで、レジン重合工程S4(図16参照)において、石膏蓋33の裏面33d(図9参照)、特に、石膏蓋33の裏面33dに形成された突出部33e(図9参照)にレジン43を注入する。石膏蓋33の裏面33d(特に、石膏蓋33の裏面33dに形成された突出部33e)に注入されるレジン43は、開削孔6e(図11参照)、取付孔6f(図11参照)及び凹陥部32の底部となる拡縮連結具取付部分6c(図11参照)に注入されるものと同一である。すなわち、レジン43は、上レジンプレート6及び下レジンプレート7と同一の材料であって、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂(歯科用レジン、床用レジン)である。レジン43は、常温において粘性及び流動性を有し、加熱することにより重合する加熱重合レジンである。これにより、開削孔6eに注入されたレジン43に気泡が発生する事態を低減させることができると共に、レジン43は縮小し易いものであるため、これによって、当該開削孔6eに注入されたレジン43が不足している場合においても、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43を確実に重合させることができる。
【0073】
次いで、レジン重合工程S4(図16参照)において、図13に示すように、石膏蓋33の表面33cの石膏壁位置標示部35が石膏壁31の表面31aの石膏壁位置標示部35に一致するように、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着し、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに固定手段36により固定する。固定手段36は、環状の結束部材であって、例えば、ゴムリングである。図13では、固定手段36を、石膏蓋33の切り欠き部33g、石膏蓋33の前側の表面33c、石膏壁31の前側の表面31a、一対の分割プレート7a,7aの裏面7b、石膏壁31の後側の表面31a及び石膏蓋33の後側の表面33cにわたって装着することにより、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに固定する。これにより、拡縮連結具取付部分6cの表面形状が復元されるようにレジン43をさらに確実に重合させることができる。
【0074】
次いで、レジン重合工程S4(図16参照)において、図13に示すように、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着した状態の矯正装置5を図示しない加圧重合装置(加熱重合装置)に投入して加熱し、図14に示すように、レジン43の表面43aが拡縮連結具取付部分6cの表面形状に復元されるように、レジン43を重合させる。レジン43の表面43aは、拡縮連結具取付部分6cの表面形状を有するとともに、拡縮連結具取付部分6cの表面に突出した形状をなしている。この加圧重合装置では、水が注入された圧力容器(プレッシャーポット)を加熱して、水を所定の温度(例えば、50度)に保持し、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着した状態の矯正装置5を圧力容器の水中に投入して係留し、圧力容器の蓋を閉め、さらに、所定の時間(例えば、5分間)、所定の温度(例えば、80度)、所定の圧力(例えば、0.2MPa)で加熱・加温することによって、レジン43を重合させ、圧力容器から石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cに装着した状態の矯正装置5を取り出す。
【0075】
<拡縮連結具取付部分修整工程の説明>
次に、図16に示す拡縮連結具取付部分修整工程S5を説明する。
【0076】
図16に示すように、拡縮連結具取付部分修整工程S5において、図14に示すように、固定手段36(図13参照)を石膏蓋33(図13参照)の切り欠き部33g(図13参照)、石膏蓋33の前側の表面33c(図13参照)、石膏壁31の前側の表面31a(図13参照)、一対の分割プレート7a,7aの裏面7b、石膏壁31の後側の表面31a(図13参照)及び石膏蓋33の後側の表面33c(図13参照)から取り外す。そして、石膏蓋33を凹陥部32及びその周囲31cから取り外し、石膏壁31(図13参照)を、歯科技工用のハンマー、歯科技工用の石膏鋸、歯科技工用の石膏鉗子等で破壊する。そしてさらに、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dから破壊した石膏壁31(図13参照)を撤去し、図15に示すように、拡縮連結具取付部分6cの表面と、拡縮連結具取付部分6cの周囲6dとが滑らかになるように、レジン43の表面43aを歯科技工用の彫刻刀(エバンス)や、歯科技工用の電動エンジン(ハンドピース、マイクロモータ)に装着した切削用・研磨用のカーバイドバー等によって切削・研磨し、もって、拡縮連結具取付部分6cの表面形状を修整する。これにより、上レジンプレート6を上顎1の内面に違和感なく装着することができる。
【0077】
また、図15に示すように、拡縮連結具11の拡縮部分24に装着された板状部材11a、開削孔6e、取付孔6f及び拡縮連結具取付部分6cの表面(凹陥部32の底部)に注入されて重合したレジン43のうち一対の分割プレート6a,6aの間の隙間25において重合したレジン43、拡縮連結具11の拡縮部分24,24、一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aの間の隙間25,25に埋設されたワックス41を歯科技工用の彫刻刀(エバンス)等により撤去する。そして、連結部材8,8付近の隙間8a,8a、上レジンプレート6と下レジンプレート7との間の隙間8bに埋設されたパテ42を手指等により撤去し、最後に、上弓形ワイヤー9と下弓形ワイヤー10とを連結する連結手段40を撤去する。
【0078】
かくして、以上の工程を経て、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具11を交換することができる。
【0079】
しかして、本実施形態によれば、従来のように矯正装置を全交換することなく拡縮連結具取付部分6cを開削して拡縮連結具11を交換することができるから、従来のように矯正装置を再製作する場合と比較して、矯正装置5の拡縮連結具11を安価かつ迅速に交換することができる。
【0080】
なお、本実施形態においては、一対の分割プレート6a,6aの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具11を交換する方法のみ説明したが、一対の分割プレート7a,7aの間隔を拡縮して連結する拡縮連結具11を交換する場合も、上記と同様の工程を経て行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、上レジンプレート6及び下レジンプレート7が連結部材8,8によって連結された矯正装置5の拡縮連結具交換方法を例示したが、これに限定されるものではなく、連結部材8,8によって連結されておらず、上レジンプレート6、上弓形ワイヤー9及び拡縮連結具11のみを備えてなる矯正装置や、下レジンプレート7、下弓形ワイヤー10及び拡縮連結具11のみを備えてなる矯正装置においても、本実施形態と同様の拡縮連結具交換方法を採用することができる。
【0082】
さらに、本実施形態では、石膏壁作成工程S1、石膏蓋作成工程S2、拡縮連結具交換工程S3、レジン重合工程S4及び拡縮連結具取付部分修整工程S5を備えていたが、これに限定されるものではなく、例えば、拡縮連結具交換工程S3及びレジン重合工程S4のみを備えていてもよく、あるいは、拡縮連結具交換工程S3、レジン重合工程S4及び拡縮連結具取付部分修整工程S5のみを備えていてもよい。
【0083】
他方、本実施形態では、矯正装置5として、左右に二分割された一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aが側方に平行に拡縮する側方拡大装置を説明したが、それに限らず、例えば、左右に二分割された一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aが側方に扇形に拡縮する側方拡大装置や、前後に二分割された一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aが前方に拡大する前方拡大装置や、前後に二分割された一対の分割プレート6a,6a、一対の分割プレート7a,7aが後方に拡大する後方拡大装置であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 上顎
2 下顎
3 上歯列弓
3a〜3c 上前歯
3d〜3f 上奥歯
4 下歯列弓
4a〜4c 下前歯
4d〜4f 下奥歯
5 矯正装置
6 上レジンプレート
6a,6a 一対の分割プレート
6b 表面
6c 拡縮連結具取付部分
6d 拡縮連結具取付部分の周囲
6e 開削孔
6f 取付孔
7 下レジンプレート
7a,7a 一対の分割プレート
7b 裏面
8,8 連結部材
8a,8a 連結部材付近の隙間
8b 上レジンプレートと下レジンプレートとの間の隙間
9 上弓形ワイヤー
9a,9a 分割端部
9b 端部
10 下弓形ワイヤー
10a,10a 分割端部
10b 端部
11 拡縮連結具
11a 板状部材
12 ガイドチューブ
13 当接部
14 掛止部
15 係止片
16,16 当接部
17 係止片
18 線体
19 外皮チューブ
20 螺軸
21,21 ガイド軸
22,22 ホルダー
23 孔
24,24 拡縮部分
25,25 隙間
30 基台
30a 台座部
30b 支持部
31 石膏壁
31a 表面
31b 凹部(位置決め部の一例)
31c 凹陥部の周囲
32 凹陥部
33 石膏蓋
33a 装着部
33b 把手部
33c 表面
33d 裏面
33e 突出部
33f 凸部
33g 切り欠き部
34 拡縮連結具位置標示部
35 石膏壁位置標示部
36 固定手段
40 連結手段
41 ワックス(隙間閉塞部材の一例)
42 パテ(側周部閉塞部材の一例)
43 レジン
43a 表面
L1 第1直線
L2 第2直線
S1 石膏壁作成工程
S2 石膏蓋作成工程
S3 拡縮連結具交換工程
S4 レジン重合工程
S5 拡縮連結具取付部分修整工程

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16