【解決手段】超音波プローブは、超音波エネルギーをシャフトに沿って近位端から遠位端へと伝達する。超音波プローブは、その遠位端に少なくとも1つのノッチを含む。線維組織、例えば動物組織の皮膚層を筋肉層に結合する隔壁をノッチ内に配置することができ、したがって線維組織は超音波プローブの遠位端の少なくとも一部分と接触することになる。超音波プローブを通って遠位端に導通された超音波エネルギーによって、ノッチ内の線維組織が分断されることになる。超音波プローブはまた、実施形態では、超音波支援脂肪吸引(UAL)手技の一部として、脂肪組織を細分化または乳化させるようにも設計されている。
前記少なくとも2つの切刃に関連した面と前記外面とによって境界を画定された前記プローブ本体の部分は、前記外面によってのみ境界を画定された前記プローブ本体の別の部分の断面積の約95%〜80%に等しい断面積を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
前記少なくとも2つの切刃に関連した面と前記外面とによって境界を画定された前記プローブ本体の部分の断面積は、約80%であることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
前記少なくとも2つの切刃は中心点を備え、前記少なくとも2つの切刃の中心点は、前記先端から約2.54センチメートル(1インチ)離間されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な実施形態について、添付の図面を参照しながら以下でさらに詳細に説明するが、これらの図面は本明細書の一部を成すものであり、本発明の技術を実施するための例示的な実施形態を具体的に示すものである。しかし、実施形態は、数多くの様々な形態で実施することができ、本明細書に記載のこれらの実施形態のみに限られるものと解釈すべきではなく、これらの実施形態は、本開示を網羅的かつ完璧なものとし、本発明の技術範囲を当業者に完全に伝えるために示すものである。実施形態は、方法、システム、または装置として実施することができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で取られるべきではない。例えば、本発明の技術の実施形態は、UAL手技の一部として、隔壁を分断してセルライトを処置し、脂肪組織を細分化するのに有用であるが、本発明の技術は、それだけに限られるものではない。本発明の技術の実施形態を用いて、他の種類の組織を切断または細分化することもできる。
【0017】
図1は、動物組織100の一部分の断面を示す。組織100は、皮膚層104、脂肪層108、およびその下にある解剖学的構造層112、例えば筋肉層を含む。隔壁128A〜Cの形の線維組織によって、皮膚層104がその下にある解剖学的構造層112に取り付けられている。
【0018】
皮膚層104の外面116は、セルライトによる影響を受けている。セルライトは、外面116上のいくつかの窪み、例えば窪み120A〜Cとして現れている。
図1に示すように、窪み120A〜Cは、層108内の脂肪細胞が皮膚層104の内面124を押し上げることによって生じている。脂肪細胞が内面124を押し上げると、皮膚層104の、隔壁128A〜Cが皮膚層104の内面に結合している部分は、他の部分ほどは伸びず、または膨張しないので、外面116上に窪み120A〜Cが生じることになる。
【0019】
図2Aは、
図1に示す組織100の断面を示し、組織100の、本発明の技術の一実施形態による超音波プローブ200を用いた処置プロセス中にある部分と、既に処置済みの部分とが示されている。超音波プローブ200は、超音波駆動アセンブリ(図示略)に接続するように構成された近位端204を含む。超音波プローブ200はまた、近位端204を遠位端212に接続するシャフト208を含む。実施形態では、プローブ200は、約2mmから約10mm、例えば約3mmから約4mmの間の直径を有する。実施形態では、プローブ200は、長さが約10cmから約30cm、例えば長さが約15cmから約25cmの間である。
【0020】
実施形態では、近位端204は、
図2Aに示すハンドピース216内に配置された超音波駆動アセンブリに接続されている。超音波プローブ200は、外科医がハンドピース216を用いることによって操作される。ハンドピース216内の超音波駆動アセンブリは、超音波駆動アセンブリを駆動する増幅器220に接続されている。超音波駆動アセンブリは、近位端204からシャフト208を通って遠位端212に伝達される超音波エネルギーを発生し、遠位端212で超音波エネルギーが組織100内の手術部位に印加される。増幅器220は、実施形態では、超音波駆動アセンブリを駆動するパルス化信号を供給する。一実施形態では、信号は、特許文献1、名称「PULSED ULTRASONIC DEVICE AND METHOD」に示され、記載されているパルス化信号の1つまたは複数と同じ、または類似したものであり、この特許を、本明細書に完全に記載されているものとしてその全体を参照により本明細書に組み込む。他の実施形態では、増幅器は、線維組織を切断するように最適化された特性(例えば周波数)を有する信号と、脂肪組織を細分化および乳化させるように最適化された異なる信号と、を供給することが可能である。外科医は、増幅器220の設定を変更して信号を変え、それによって処置する組織に合わせて信号を最適化させることができる。実施形態では、ハンドピース216および増幅器220は、コロラド州ルイスビルのSound Surgical Technologies LLCから市販されているVASER(登録商標)超音波システムの一部である。
【0021】
プローブ200の遠位端212は、隔壁128A〜Cなどの線維組織を分断するために使用される切断面を備えたノッチ244を含む。ノッチ244の実施形態が、以下の
図3Bおよび3Cでさらに詳細に示されている。
【0022】
図3Aは、プローブ200、およびその中心軸240を示す。ノッチ244が、遠位端212の先端248に凹部を作成することによって形成されている。
図3Bは、ノッチ244を矢印252によって示す方向から示した遠位端212の正面図を示す。
図3Cは、ノッチ244を矢印256によって示す方向から示したプローブ200の上面図を示す。
【0023】
図3Bおよび
図3Cに示すように、ノッチ244は、中心軸240に実質的に垂直な長さLおよび幅W、ならびに中心軸240に実質的に平行な深さDを有する。ノッチ244は、側壁260Aおよび260Bを含む。
図3Bおよび
図3Cに示す実施形態では、側壁260Aおよび260Bは、底部268から先端248の外面264へとテーパが付いている。側壁260Aおよび260Bは、テーパが付いているものとして示されているが、他の実施形態では、側壁は直線であることに留意されたい。ノッチ244はまた、表面272Aおよび272Bを含み、これらの表面は、プローブ200の外面276から底部268へとテーパが付き、それによって底部268が鋭利な刃(sharpened edge)となっている。
【0024】
実施形態では、ノッチ244は、約2mmから約10mmの間、例えば約3mmから約4mmの間の長さ(L)および幅(W)を有し、これらは超音波プローブ200の寸法に依存する。ノッチは、約0.25mmから約5mmの間の深さ(D)を有することができる。
【0025】
図2Aに戻ると、隔壁128Cは、超音波プローブ200の遠位端212にあるノッチ244を用いて分断されている。底部268の切断面と、超音波エネルギーとの組合せによって、超音波プローブ200では、外科医がそれほど強い力を加える必要なく、隔壁128Cを容易に分断することが可能となっている。したがって、外科医は迅速かつ容易に隔壁128A〜Cを分断することができ、外科医が誤ってプローブ200を組織100の望ましくない領域に押しやる力を加える恐れがない。いかなる操作原理にも縛られるものではないが、ノッチの刃が比較的鋭利であるため、線維組織とノッチとが物理的に係合し、超音波エネルギーが印加されると、線維組織を切断する能力が高まると現時点では考えられている。
【0026】
理解されるように、線維組織をノッチ244内に配置するには、ノッチ244を適正に向けなければならず、すなわち側壁260Aおよび260Bを線維組織の長軸に平行にしなければならない。
図2Aに示す実施形態では、側壁260Aおよび260Bは、隔壁128Aの長軸132Aに実質的に平行である。この向きを維持するために、ある実施形態では、プローブ200に定位機構(orienting feature)218が設けられている。実施形態では、定位機構218は、外科医がノッチ244の向きを知ることを可能とする線または他の指標である。定位機構218は、プローブ200に印刷しても、刻印してもよい。
【0027】
隔壁128Cを分断した結果、窪み120Cはそれほど目立っていない。次いで、外科医は追加の処置、例えば窪み120Cの下の脂肪組織の除去または移動を引き続き行って、窪み120Cをさらに平滑にすることができる。以下で記すように、ある実施形態では、プローブ200をやはり用いて、隔壁の分断前、分断中、または分断後に層108の組織を細分化し、乳化させることができる。理解されるように、超音波プローブ200を使用すると、外科医は隔壁128A〜Cを全て分断し、窪み120A〜Cを平滑化することによって、皮膚層104の外面116上のセルライトを迅速かつ容易に処置することができる。
【0028】
隔壁128Cを分断することに加えて、ある実施形態では、超音波プローブ200の遠位端212をやはり用いて、脂肪組織を細分化し、乳化させることができる。
図2Aに示すように、ある体積の脂肪組織224が超音波プローブ200によって乳化されている。理解されるように、実施形態では、超音波プローブ200を組織100に挿入する前に、脂肪組織の細分化および乳化を助け、組織100を麻痺させる局所麻酔薬を含む浸潤溶液を用いて、組織100を浸潤させる段階がある。細分化および乳化後、別の段階で、脂肪組織224の体積を、カニューレを用いて吸引することができる。したがって、プローブ200によって、外科医が単一の段階で隔壁を分断し、かつ組織を乳化させることが可能となる。その結果、セルライトの処置に有効な、効率のよいプロセスが得られる。
【0029】
ある実施形態では、プローブ200は、乳化された脂肪組織224を吸引するためにやはり使用されるカニューレでよい。これらの実施形態では、単一の器具(カニューレ)を用いて、組織100を浸潤溶液に浸潤させ、脂肪組織の体積224を細分化し乳化させ、隔壁128A〜Cを分断し、かつ体積224を吸引することができる。これらの実施形態では、吸引および浸潤システムを用いて、浸潤溶液を組織100に送達し、乳化組織224を除去することに留意されたい。
【0030】
ある実施形態では、撮像をプローブ200と組み合わせて用いて、セルライトの処置などの手技を実施する。例えば、
図2Aに示すように、表示装置232に接続されたプローブ228を、皮膚層104の外面116に配置する。このプローブは組織100を撮像し、その画像を外科医が見られるように表示装置232に表示する。プローブ228は、実施形態では、超音波振動子を備えた超音波プローブである。
【0031】
外科医は、表示装置232に表示された組織100の画像を用いて、組織100内のプローブ200の位置を識別し、隔壁128A〜Cなどの構造体も同様に識別する。プローブ228および表示装置232の使用によって、プローブ200を用いて実施されるセルライトの処置手技の効率を向上させることができる。ある実施形態では、プローブ228は手装着式であり、米国特許出願第12/718,618号明細書、名称「THERAPEUTIC PROCEDURE WITH HAND WORN ULTRASOUND TRANSDUCER」に記載の特徴を含み、この特許を、本明細書に完全に記載されているものとしてその全体を参照により本明細書に組み込む。他の実施形態では、プローブ228は、TouchView(登録商標)指プローブであり、Terason 2000+(商標)超音波システムと組み合わせて使用し、これらはそれぞれコロラド州ルイスビルのSound Surgical Technologies LLCから市販されている。
【0032】
ある実施形態では、感圧スイッチ236がプローブ200に接続されている。スイッチ236を用いて、ハンドピース216内の超音波駆動アセンブリに送達される電力を制御する。一定量の圧力が感圧スイッチ236に加わったときだけスイッチ236がオンになり、超音波駆動アセンブリに電力供給され、超音波エネルギーが発生することになる。したがって、外科医はノッチ244内に線維組織を配置し、プローブ200を前方に押すことができる。外科医が加えた力に応答して感圧スイッチ236がオンになり、電力が超音波駆動アセンブリに供給され、それによってノッチ244内の線維組織を分断するために使用される超音波エネルギーが発生する。線維組織が分断された後は、圧力が開放されることになり、スイッチ236はオフになり、超音波駆動アセンブリへの電力供給がなくなる。感圧スイッチ236を用いると、超音波エネルギーは、線維組織がノッチ244内にあり、外科医がその線維組織を分断する態勢にあるときだけプローブ200の遠位端212に供給される。実施形態では、感圧スイッチ236は、小型のスナップ式スイッチであり、一般にマイクロスイッチとして知られている。
【0033】
線維組織を分断する方法では、プローブ200の遠位端212が、患者の体内の手術部位に配置される。隔壁128A〜Cなどの線維組織が、超音波プローブ200の遠位端212にあるノッチ244内に配置される。次いで、超音波エネルギーが超音波プローブの遠位端に送達され、それによってノッチ244内の線維組織が分断される。ある実施形態では、この方法は、超音波エネルギーの、超音波プローブ200の遠位端212への送達を維持して、手術部位にある脂肪組織を細分化し、乳化させる段階をさらに含むことができる。脂肪組織の細分化および乳化段階の前に、浸潤段階があってもよく、この段階で浸潤液が手術部位に送達される。
【0034】
図2Bは、本発明の技術の別の実施形態を示し、ここでは超音波プローブ200を用いていくつかの隔壁を選択的に分断し、他の隔壁はそのまま残してある。状況によっては、外科医は皮膚層104を解剖学的構造層112に結合している隔壁の全てを分断したくない場合がある。全ての隔壁を分断すると、皮膚層104が解剖学的構造層に対してずれる結果となり得る。身体には、皮膚層104が解剖学的構造層112に対してずれるのを許容してしまうことが望ましくないある領域があり、例えば臀部がそうである。こうした状況では、外科医はある隔壁だけ分断し、その他の隔壁は分断しないことになる。一実施形態では、緊張してセルライトを形成している隔壁は切断し、他の隔壁(例えば140A〜B)はそのまま残して、皮膚層104が解剖学的構造層112に取り付けられたままにする。
図2Bに示すように、隔壁140Aおよび140Bは、幾分の弛みを有し、外面116上にセルライトを形成する原因となってはいない。したがって、隔壁140Aおよび140Bは、ある実施形態では外科医によって切断されずに残されている。外科医は、適切な任意の方法または装置を用いて、どの隔壁を分断すべきであり、どの隔壁をそのまま残すべきであるか識別することができる。一実施形態では、後述のように、真空システムを用いて、外科医が分断すべき隔壁を識別するのを支援する。
【0035】
図2Bは、真空システム242をプローブ200と組み合わせて用いて、隔壁を選択的に分断してセルライトを処置する様子を示している。
図2Bに示すように、吸着カップ240が真空システム242に接続されている。真空システム242によって吸着カップ240内に吸引力が生じ、したがって吸着カップ240が外面116に配置されると、この吸着カップ240は皮膚層104を解剖学的構造層112から引き離すことになる。皮膚層104を解剖学的構造層112から引き離すことによって、外科医は、どの隔壁が緊張しており、セルライトを形成しているのかをより判定しやすくなる。
図2Bには吸着カップ240が示されているが、本発明の技術の他の実施形態では、吸着パッド、吸着マット、または皮膚層104を解剖学的構造層112から引き離すことを可能とする他の装置を利用できることに留意されたい。
図2Bに示すように、外科医は隔壁128Cを分断すべきと判定し、プローブ200を用いてその隔壁を切断している。隔壁140Aおよび140Bは緊張しておらず、幾分の弛みを含む。したがって、外科医はこれらの隔壁をそのまま残すべきと判定することができる。
【0036】
図2Bには吸着カップ240が示されているが、本発明の技術の他の実施形態では、吸着パッド、吸着マット、または皮膚層104を解剖学的構造層112から一時的に引き離すことを可能とする他の装置を利用できることに留意されたい。
図2Bに示すように、外科医は隔壁128Cを分断すべきと判定し、プローブ200を用いてその隔壁を切断している。隔壁128Cを分断した結果、窪み120Cは以前よりも目立たなくなっている(
図1参照)。外科医は、追加の処置、例えば窪み120Cの下の脂肪組織の除去または移動を引き続き行って、窪み120Cをさらに平滑にすることができる。隔壁140Aおよび140Bは緊張しておらず、幾分の弛みを含む。したがって、外科医はこれらの隔壁は切断せずに残すべきと判定することができる。
【0037】
ある実施形態では、吸着カップ240は、組織を撮像するために使用されるプローブ228を含むことができる。これらの実施形態では、組織が吸着カップ240に引き込まれると、プローブ228の一部分と接触し、この部分によって、表示装置232に表示される組織の画像が生成される。ある実施形態では、プローブ228によって生成され、表示装置232に表示される画像は、外科医がどの隔壁を分断すべきであり、どの隔壁をそのまま残すべきであるか判定するのを支援する。画像は、隔壁の特徴、例えば隔壁が緊張しているのか、それとも弛みを有するのかを示すことができ、外科医はこうした特徴を用いて、隔壁を分断すべきかどうか判定する。
【0038】
適切ないかなる吸着カップ、吸着装置、または真空システムも、吸着カップ240、および真空システム242として使用することができる。本発明の技術のある実施形態では、MEDCONTOUR(商標)およびMC1(商標)として知られるシステムを使用しており、これらは全て、コロラド州ルイスビルのSound Surgical Technologies LLCから販売されている。他の実施形態では、異なる吸着装置または真空システムを使用してもよい。
【0039】
ある実施形態では、感圧スイッチ236は、外科医がどの隔壁を分断すべきであるか判定するのを支援するように構成されている。上記のように、感圧スイッチ236は、ハンドピース216内の超音波駆動アセンブリに送達される電力を制御するように構成されている。一定量の圧力が感圧スイッチ236に加わったときだけ、スイッチ236がオンになり、超音波駆動アセンブリに電力供給され、超音波エネルギーが発生することになる。感圧スイッチ236は、緊張した隔壁が外科医によってノッチ244内に配置され、外科医がプローブ200を前方に押すと、感圧スイッチ236がオンになって、電力が超音波駆動アセンブリに送達されることになるように構成することができる。ノッチ244内に配置された隔壁が弛みを有する場合、すなわち緊張していない場合、感圧スイッチ236は、外科医がプローブ200を前方に押してもオンにはならず、この隔壁はその弛みのため移動することになる。感圧スイッチ236は、これらの実施形態では、外科医が、緊張していて切断すべき隔壁と、緊張しておらず、切断せずに残しておける隔壁とを区別するのを支援する。
図2Bに示すように、ある実施形態では、感圧スイッチ236を、吸着カップ240および真空システム242と組み合わせて使用することができる。
【0040】
図4Aは、本発明の技術の第1の実施形態による超音波プローブ302の遠位端300の上面図を示す。
図4Bは、
図4Aに示す実施形態の側面図を示す。
図4Aに示すように、遠位端300はノッチ304を含む。ノッチ304内には、切断面308がある。線維組織がノッチ304内に配置されると、線維組織は切断面308と接触する。ノッチ304は、線維組織が切断面308と接触したまま留まるのを確実にする一助となる。遠位端300に伝達される超音波エネルギーによって切断面308が振動し、線維組織を分断するのを助ける。上述のように、線維組織は隔壁でよく、
図1および2に示す隔壁128A〜Cなどでよい。
【0041】
ノッチ304および切断面308に加えて、
図4Aおよび
図4Bに示す実施形態は、遠位部分300付近に溝312を含む。溝312は、プローブ302のシャフトを実質的に取り囲み、プローブ302のシャフトの遠位端300の側部に沿って、かつその周りで組織接触表面領域を低減させる働きをする。溝312はまた、遠位端付近に追加の組織細分化表面領域をもたらしている。特許文献3、名称「ULTRASONIC PROBE AND METHOD FOR IMPROVED FRAGMENTATION」には、超音波プローブに使用する溝が記載されている。本発明の技術の実施形態では、溝312は、特許文献3に記載の特徴を組み込んでおり、この特許を、本明細書に完全に記載されているものとしてその全体を参照により本明細書に組み込む。溝は、任意選択による機構であり、本発明の技術のある実施形態には含まれないことに留意されたい。
【0042】
図4Bは、
図4Aに示す実施形態の側面図を示す。超音波プローブ302の遠位端300は概ね丸く、または弾頭形であり、遠位端300のノッチ304を含む部分を除いて、縁部が平滑であり、かつ丸まっている。他の実施形態では、遠位端300は、
図4Bに示す丸まった縁部ではなく、より鋭利な縁部を有する。
【0043】
本明細書では、ノッチは、プローブの遠位端に配置されている。「遠位端」とは、先端が湾曲したプローブの端部頂点、または先端がより丸いプローブの端面を意味する。遠位端はまた、先端が湾曲したプローブの湾曲部分の中央から僅かにずれたノッチを含む。このノッチは、プローブの「遠位端」ではなくプローブの「遠位端付近」にある、プローブのシャフトに横方向に延びるプローブの溝とは区別される。これらの横方向の溝は、細分化に使用される。これらの溝は、隔壁などの線維組織を切断するのには適さず、というのはかかる横方向の溝は、隔壁と位置合せしにくいからである。さらに、こうした横方向の溝は、典型的には鋭利ではなく、線維組織を切断するために必要となる鋭利なブレード表面を形成することもない。一方、プローブの端部にあるノッチの方が、本明細書で述べた技術などを用いて隔壁と遥かに位置合せしやすい。ノッチと隔壁とが係合すると、医師は、プローブの軸に沿って穏やかに圧力を加え、ノッチおよび切断面を介して超音波エネルギーの伝達を促進して隔壁を切断することができる。プローブの「端部」に配置されたノッチは、これらの操作原理を実現することができる限り、僅かにずらすことができる。
【0044】
図5Aは、本発明の技術の別の実施形態による第2の超音波プローブ402の遠位端400の上面図を示す。
図5Bは、
図5Aに示す実施形態の側面図を示す。プローブ302と同様に、プローブ402はその遠位端400にノッチ404を含む。ノッチ404内には、切断面408がある。切断面408を用いて、ノッチ404内に配置された線維組織を分断する。遠位端400に伝達された超音波エネルギーによって、切断面408が振動し、線維組織を分断するのを助ける。プローブ402はまた、溝412を含み、実施形態では溝312と同様である。
【0045】
図5Bは、超音波プローブ302の遠位端300と、超音波プローブ402の遠位端400との相違を示している。遠位端300の丸く、弾頭形の形状とは異なり、遠位端400はテーパの付いた形状を有する。すなわち、遠位端400を横から見ると、
図5Bに示すように、厚さD1が厚さD2よりも大きい。
【0046】
図6Aは、本発明の技術のさらに別の実施形態による第3の超音波プローブの遠位端の上面図を示す。
図6Bは、
図6Aに示す実施形態の側面図を示す。
図6Aに示すように、遠位端500は、2つのノッチ504および516を含む。ノッチ504内には切断面508があり、ノッチ516内には切断面520がある。線維組織がノッチ504または516内のいずれかに配置されると、線維線維は切断面(508または520)と接触する。遠位端500に伝達された超音波エネルギーによって、切断面508および520が振動し、線維組織を分断するのを助ける。ノッチを2つにすることによって、より線維組織をノッチ内に配置して分断しやすくなる。プローブ502はまた、溝512を含み、実施形態では溝312と同様である。
【0047】
図6Bに示すように、超音波プローブ502の遠位端500は、遠位端300と同様に概ね丸く、または弾頭形であり、縁部が平滑であり、かつ丸まっている。他の実施形態では、遠位端500は、
図6Bに示す丸まった縁部ではなく、より鋭利な縁部を有する。
【0048】
図7Aおよび
図7Bは、本発明の技術の実施形態に使用できる異なるノッチ設計および切断面形状を示す。
図7Aは、切断面604を有するV形ノッチ600を示す。ノッチ600は、ノッチ304、404、504、および516と同様である。
図7Bは、切断面612を含むU形ノッチ608を示す。理解できるように、切断面612は、より厚い線維組織を切断する実施形態で有用となり得るより長い刃を有する。
図7Aおよび
図7Bは、本発明の技術の実施形態で使用できる、異なるチャネルおよび切断面形状の非限定的な例である。いかなるノッチ形状および切断面形状も使用することができ、なおも本発明の技術の範囲内に含まれる。
【0049】
図8は、楕円形、または他の実施形態では角が丸まった矩形の断面704を有するプローブ700の別の実施形態を示す。図示してはいないが、プローブ700もやはり、遠位端712の先端708に、線維組織を分断するためのノッチを含んでもよい。プローブ700の一特徴は、ノッチの向きが判定しやすく、というのはノッチ特徴を、断面704の長軸712および短軸716に関して正しく向けることができるからである。さらに、断面を楕円形にすることによって、プローブを直線状の切開部の形状により近づけることが可能となる。すなわち、断面704の長軸712を直線状の切開部に平行に配置する。こうすることによって、切開部部位におけるストレスが低減し、患者の皮膚の摩擦および伸長が低減する。こうすることによって、実施形態では、外科医が皮膚ポートの使用を回避し、その代わりにプローブ700の周囲にシースを使用することが可能となる。特許文献4、名称「PROTECTIVE SHEATH & METHOD FOR ULTRASONIC PROBES」は、本明細書に完全に記載されているものとしてその全体を参照により本明細書に組み込むものであるが、この米国特許には、本発明の技術のある実施形態のプローブ700の周囲に使用できるシースが記載されている。
図8に示すプローブ700の実施形態では、プローブ700は、溝(312、412、および512)などの溝を含まない。そうではなく、プローブ700の外面は、比較的平滑である。
【0050】
本発明の技術のノッチを有するプローブは、例えばVASER(登録商標)システムを用いた超音波支援脂肪吸引で現在使用されているプロセスと同様にして使用することができる。一般に、処置を行う医師は、患者の皮膚に切開部を設け、超音波プローブを挿入する。本発明の技術の好ましい実施形態では、ノッチを有するプローブを、皮膚表面に概ね水平の位置で挿入し、ノッチを皮膚に垂直に向ける。こうすることによって、医師がノッチを隔壁と位置合せしやすくなり、隔壁とノッチとの最大接触が得やすくなる。とりわけ、プローブを回転させて、ノッチと隔壁との位置合せを達成する必要が回避される。位置合せが達成されると、医師は、超音波エネルギーを印加しながら、プローブに沿って圧力を穏やかに加えて、隔壁を容易に分断することができる。このようにして、1つまたは複数の隔壁を分断することができる。分断プロセス前、分断プロセス中、または分断プロセス後、超音波エネルギーをやはりプローブに印加して、隣接する脂肪組織を乳化させることができる。その後、脂肪組織を、当技術分野で既知のように吸引力を印加することによって抽出することができる。
【0051】
図9A〜
図9Cは、プローブ800の別の実施形態を表す。ここでは、切断面802が超音波プローブ800の外面804に沿って形成されている。こうすることによってより長い切刃806が設けられ、したがって先に述べた実施形態で必要となるようにプローブの端部800を隔壁に正確に配置する必要が低減される。切断面802同士は、刃806でつながっており、超音波増幅器が起動されると、この刃806が切断行為を実施する。これらの切断面802はプローブ軸A周りで対称に形成されており、したがってプローブ800に動的な非対称性が導入されることはない。かかる非対称性によってプローブ800に望ましくない横振動が生じることがあり、それによって機械が早期に故障するおそれがある。この実施形態を使用すると、外科医は、プローブ800を切断すべき隔壁に沿って配置し、次いで超音波増幅器および振動子を作動させ、プローブ端部800を横方向にメスと同様の動きで動かす。溝810をやはり上述のように用いて、脂肪を分解させることができる。
【0052】
図9Cから分かるように、プローブ材料を除去して切断面802を形成することによって、プローブ800の断面積が低減している。プローブ材料の除去による断面積の低減は、プローブ800の許容可能な操作寿命を維持するには約20%以下であることが望ましいことが判明している。すなわち、切断面802を形成するために断面積を除去しすぎると、超音波によってプローブ材料の劣化がより早まることがあり、早期に故障する結果となる。したがって、隣接する切断面802同士の間でかなり鋭角の角度αを形成することが望ましいものの、角度αが鋭角すぎると、断面材料が除去されすぎることになり、その結果望ましくない故障が生じることになる。断面積を約5%から約20%まで低減させることによって、許容可能な耐用寿命を発揮するが、適切な切断機能をなおも生じるプローブを作製することができることが予想される。すなわち、プローブの、切断面802と外面804とによって境界が画された部分の断面積(すなわち切断領域の断面)は、プローブの外面804だけによって境界が画された部分の断面積(すなわちプローブ本体の断面)の約80%から約95%の間でよい。プローブ本体の断面積の約80%の切断領域の断面積が特に有利であることが判明している。さらに、ある用途では、切刃806の長さLは約1センチメートルであることが望ましくなり得るが、1センチメートルよりも長い、またはそれよりも短い長さもやはり許容可能となり得る。当然ながら、より長い切刃806によって、組織がより長く切断されることになる。また、切断面802は、切刃806の中心点が遠位先端808から距離Dとなるように配置することが望ましい。プローブに印加される超音波信号によって、プローブ800に沿って縦振動パターンが生じる。切刃806の中心点を、遠位先端808から第1の波腹だけ離して配置することによって、最も効率のよい切断作用が得られることが判明している。この距離Dは周波数に依存する。例えば、約36kHzの超音波周波数では、距離Dは先端808から約1インチとなる。他の周波数では、他の距離Dに基づいて最適化させることができる。
【0053】
上記の説明は、例示の目的で示したものである。本発明の技術は、上述の特徴のみに限られるものではなく、上述していない追加の特徴も含むことができる。例えば、実施形態では、本発明の技術の超音波プローブは、プローブの長軸に垂直に切断した場合に様々な断面形状を有することができる。
図2A〜
図6Bに示す実施形態は、概ね円形または楕円形(
図7)の断面形状を有する。しかし、他の実施形態では、断面形状は正方形、長方形、菱形、星形、または他の形状でもよい。
【0054】
本明細書を通して、「一実施形態」について参照してきたが、これは、記載されている特定の特徴、構造体、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、かかる句の使用は、ただ1つの実施形態よりも多くの実施形態を指すことがある。さらに、記載の特徴、構造体、または特性を、1つまたは複数の実施形態として適切ないかなる形にも組み合わせることができる。
【0055】
上記の説明は、ある例では、本発明の技術の実施形態が隔壁を切断してセルライトを処置するために有用として説明している。本発明の技術は、セルライトの処置、または他の特定の美容外科手技のみに限られるものではないことに留意されたい。
【0056】
しかし、本発明の技術は、1つまたは複数の具体的な詳細なく、または他の方法、構造体、材料などを用いて実施できることが、当技術分野に関連する分野の当業者には認識できよう。他の例では、周知の構造体または操作については詳細には示さず、または説明していないが、これは単に本発明の技術の態様が曖昧になることを回避するためである。
【0057】
例示の実施形態および用途について記載し、説明してきたが、本発明の技術は、上述の正確な構成および資源のみに限られるものではないことを理解されたい。本明細書に開示の方法およびシステムの構成、動作、および詳細について、特許請求する本発明の技術の範囲から逸脱せずに当業者に明白な様々な改変、変化、および変更を行うことができる。