【解決手段】洗浄装置の主軸に複数の洗浄工具10,20を装着する洗浄工具アタッチメント1であって、筐体と、主軸に連結されて主軸と一体として、筐体に回転自在に支持された第1軸体3と、第1軸体3の軸方向に対して異なる軸方向に筐体に回転自在に支持された第2軸体4と、第2軸体4の軸方向に対して並行して、筐体に回転自在に支持された複数の工具取付軸体51,52と、第1軸体3から第2軸体4に駆動力を伝達して回転軸の向きを変換する回転軸変換歯車機構6と、第2軸体4の駆動力を複数の工具取付軸体51,52に伝達し、複数の工具取付軸体51,52をそれぞれ同じ回転速度で位相角θを同期して回転させる同期回転機構8と、を備えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークの形状によっては、ワーク内部に形成された凹部にバリ、切り屑、洗浄液等が残りやすく、除去しにくい場合がある。このような凹部を有するワークに対しては、立形の高圧洗浄装置の主軸に対して異なる方向に洗浄する洗浄ノズル、バリ取り工具、ブラシ、エアブロー等の種々の洗浄工具を設けることが、ワークに残留する異物や洗浄液の量を減少させると考えられる。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、主軸に対して交差する軸方向に装着した複数の洗浄工具を同じ回転速度で位相角を同期して回転させることができる洗浄工具アタッチメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、洗浄装置の主軸に複数の洗浄工具を装着する洗浄工具アタッチメントであって、筐体と、前記主軸に連結されて当該主軸と一体として、前記筐体に回転自在に支持された第1軸体と、この第1軸体の軸方向に対して異なる軸方向に、前記筐体に回転自在に支持された第2軸体と、この第2軸体の軸方向に対して並行して、前記筐体に回転自在に支持された複数の工具取付軸体と、前記筐体内に配設され、前記第1軸体から前記第2軸体に駆動力を伝達して回転軸の向きを変換する回転軸変換歯車機構と、前記筐体内に配設され、前記第2軸体の駆動力を前記複数の工具取付軸体に伝達し、当該複数の工具取付軸体をそれぞれ同じ回転速度で位相角を同期して回転させる同期回転機構と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
なお、本発明において、「洗浄」の用語は、ノズルから洗浄液を噴射する洗浄の他、砥磨体やリーマ等の工具や刃具を使用するバリ取り、ブラシを使用する磨き処理、エアブロー等による清掃や乾燥処理、その他の加工や処理を広く含むものとする。
【0009】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、第1軸体の軸方向に対して異なる軸方向に、前記筐体に回転自在に支持された第2軸体を備え、前記第2軸体の駆動力を前記複数の工具取付軸体に伝達することで、複数の工具軸体を主軸に対して異なる軸線方向に回転させることができる。
【0010】
このため、主軸と異なる軸方向に洗浄工具を回転させることができるため、多様な洗浄部位に対して好適な方向から洗浄を行うことが可能となるので、切り屑や洗浄液の排出性を向上させて洗浄効果を高めることができる。
【0011】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、複数の工具取付軸体をそれぞれ同じ回転速度で位相角を同期して回転させる同期回転機構を備えたことで、複数のワークまたは洗浄部位に対して、それぞれ複数の洗浄工具を同期させて同時に洗浄することができる。
【0012】
このため、例えばL型ノズル等のように方向性を有する洗浄工具を旋回方向における所定の位相角に合わせて洗浄目標に合致させることができるため、複数のワークまたは洗浄部位を効率よく確実に洗浄することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記回転軸変換歯車機構は、前記第1軸体に固定された第1傘歯車と、前記第2軸体に固定された第2傘歯車と、を備えたこと、を特徴とする。
【0014】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、前記回転軸変換歯車機構を傘歯車で構成することで、第1軸体と第2軸体の軸方向を異なる方向に支持することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記複数の工具取付軸体は、前記第2軸体の周りに配設された第1工具取付軸体および第2工具取付軸体を有し、前記同期回転機構は、前記第2軸体に配設され前記複数の工具取付軸体を回転させる駆動歯車と、前記第1工具軸体に配設され前記駆動ギヤから駆動力が伝達される第1歯車と、前記第2工具軸体に配設され前記駆動ギヤから駆動力が伝達される第2歯車と、を備えたこと、を特徴とする。
【0016】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、同期回転機構において、第1歯車を介して第1工具軸体を回転させ、第2歯車を介して第2工具軸体を回転させる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記第2軸体と前記駆動歯車とを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除する駆動歯車締結手段を備えたこと、を特徴とする。
【0018】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、前記第2軸体と前記駆動歯車とを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除する駆動歯車締結手段を備えたことで、第1工具軸体と第2工具軸体の回転方向における位相角を容易に合わせることができる。
【0019】
つまり、駆動歯車締結手段によって、前記第2軸体と前記駆動歯車とを互いに自由回転可能に連結を解除した状態で、第1工具軸体と第2工具軸体の位相角を原点位置に合わせてから、第1工具軸体と第2工具軸体とを一体回転可能に連結することで、同期回転機構によって、第1工具軸体と第2工具軸体の位相角を同期して回転させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記第1工具軸体と前記第1歯車とを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除する第1の歯車締結手段と、前記第2工具軸体と前記第2歯車とを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除する第2の歯車締結手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0021】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、第1の歯車締結手段と第2の歯車締結手段とを備えたことで、第1工具軸体と第2工具軸体の回転方向における位相角を容易に合わせることができる。
【0022】
つまり、第1の歯車締結手段によって、前記第1工具軸体と前記第1歯車、および前記第2工具軸体と前記第2歯車との連結を解除した状態で駆動歯車、第1歯車、および第2歯車を組み付けてから、前記第1工具軸体と前記第1歯車、および前記第2工具軸体と前記第2歯車とを一体回転可能に連結することで、同期回転機構によって、第1工具軸体と第2工具軸体の位相角を同期して回転させることができる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記第1工具取付軸体、および前記第2工具取付軸体が前記第1軸体の軸線を通る平面に対して面対称に配設されていること、を特徴とする。
【0024】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、前記第1軸体を挟んで両側にそれぞれ前記第1工具取付軸体、および前記第2工具取付軸体を配設することができるため、簡易かつコンパクトに構成することができる。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の洗浄工具アタッチメントであって、前記筐体は、前記洗浄液を前記複数の工具取付軸体まで流通させる洗浄液供給路を備えたこと、を特徴とする。
【0026】
本発明に係る洗浄工具アタッチメントは、前記洗浄装置から前記複数の工具取付軸体まで洗浄液を流通させる洗浄液供給路を備えたことで、前記複数の工具取付軸体に装着される種々の洗浄ノズルから洗浄液を噴出させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、主軸に対して交差する軸方向に装着した複数の洗浄工具を同じ回転速度で位相角を同期して回転させることができる洗浄工具アタッチメンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1について、適宜
図1から
図5を参照しながら詳細に説明する。なお、参照する
図1は、回転軸変換歯車機構と同期回転機構の配置を説明するための図であり、説明の便宜上、歯車の歯筋方向を線で示す。
【0030】
洗浄工具アタッチメント1は、
図1から
図4に示すように、洗浄装置100(
図4(a)参照)のタレット103に設けられている主軸101(
図4(a)参照)に連結される連結装置であり、主軸101に第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20とを装着するためのアダプタである。
【0031】
洗浄装置100(
図4(a)参照)は、回転角度を割り出し可能に回転駆動される主軸101に洗浄工具(不図示)を装着してワーク(不図示)を洗浄(バリ取り等を含む。)する装置である。洗浄装置100は、特に限定されるものではないが、洗浄工具を交換可能な洗浄装置が好適であり、例えば特許文献1に記載の立形のタレット式の洗浄装置が利用される。また、洗浄装置100は、工具マガジンを有する立形の自動工具交換式の洗浄装置が利用される。
【0032】
なお、本実施形態におけるX、Y、Z軸の軸構成や上下、左右、前後等の向きは例示であり、種々の洗浄装置ごとに異なる軸構成等を採用することができる。
【0033】
洗浄工具アタッチメント1は、
図1に示すように、主軸101(
図4(a)参照)の回転を第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20に伝達して、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20とをそれぞれ同じ回転速度及び同じ位相角で、第1の洗浄工具10から噴射した噴流F1と第2の洗浄工具20から噴射した噴流F2の位相角(所定の原点からの回転角度)θを同期して回転させる機能を有する。
【0034】
このため、洗浄工具アタッチメント1は、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20によって、複数のワーク(不図示)やワークの複数の洗浄箇所を並べて、同時に洗浄するためのアタッチメントである。ワークは、例えばバルブボディ、ABSボディ、ブレーキ用マスターシリンダ、スターターモータ用ギヤケース等に対して、好適に適用することができる。
【0035】
洗浄工具アタッチメント1は、
図4(a)に示すように、洗浄装置100に連結される筐体2と、主軸101に連結される第1軸体3と、第1軸体3の軸方向に対して異なる軸方向である直交する方向に配設された第2軸体4と、
図3に示すように、第2軸体4の軸方向に対して並行して、筐体2に回転自在に支持された複数の工具取付軸体5である第1工具取付軸体51および第2工具取付軸体52と、第1軸体3から第2軸体4に駆動力を伝達して回転軸の向きを変換する回転軸変換歯車機構6と、複数の工具取付軸体5(51,52)をそれぞれ同じ回転速度で位相角θ(
図1参照)を同期して回転させる同期回転機構8と、洗浄液を第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20に供給する洗浄液供給路9と、を備えている。
【0036】
図3に示すように、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20は、同一形状の洗浄ノズル(L型ノズル)であるため、第1の洗浄工具10について説明し、第2の洗浄工具20については第1の洗浄工具10と同様の符号(アルファベット)を付して詳細な説明は省略する。
第1の洗浄工具10は、第1工具取付軸体51に固定される取付座10aと、洗浄液の流通流路10bが通るノズル軸体10cと、ノズル軸体10cの先端部に形成された洗浄液の噴出口10dと、を備えている。
【0037】
第1の洗浄工具10は、タレット103(
図4(a)参照)から洗浄液供給路9(
図2を合わせて参照)を通って洗浄液の流通流路10bに供給された洗浄液を噴出口10dから噴流F1として噴射する洗浄ノズルである。第2の洗浄工具20は、洗浄装置100(
図4(a)参照)から洗浄液供給路9を通って洗浄液の流通流路20bに供給された洗浄液を噴出口20dから噴流F2として噴射する洗浄ノズルである。
第1の洗浄工具10は、キーまたはピンを介して、工具取付軸体51の取付け座10aに固定される。第1の洗浄工具10は、工具取付軸体51と一体として回転し、回転方向の位置決めをする。
【0038】
ここで、第1の洗浄工具10、第2の洗浄工具20としては、上述のL型ノズルの他、軸体の中心軸に沿って軸体先端から洗浄液を噴出する直射ノズル、先端部に複数の噴口を備える回転ノズル、洗浄ランス、ねじりブラシ、カップブラシその他の公知の除去工具を利用できる。
【0039】
筐体2は、ブロック形状をなして洗浄装置100に連結されるヘッド部21と、ヘッド部21の下部に固定され工具取付軸体5が配設されるギヤケース部22と、ギヤケース部22に配設され第1工具取付軸体51および第2工具取付軸体52をそれぞれ回転自在に支持する第1軸受部23および第2軸受部24と、を備えている。
ヘッド部21には、第1軸体3と第2軸体4が回転自在に軸支されている。ギヤケース部22には、複数の歯車からなる同期回転機構8が収容されている。
【0040】
第1軸体3は、主軸101にキー101aを介して、主軸101と同軸上に連結される軸部31と、軸部31の下部に固定された第1傘歯車である傘歯車32と、軸部31を回転自在に支持する軸受B1と、を備えている。
軸部31は、主軸101と一体として回転する回転軸である。例えば、立形の洗浄装置100の主軸101が垂直方向(Y軸方向)であれば、軸部31も垂直方向に配設される。
傘歯車32は、回転軸変換歯車機構6を構成する要素であり、本実施形態では振動や騒音をより低減するため、まがりば傘歯車(
図1参照)を採用しているが、すぐば傘歯車であってもよい。
【0041】
第2軸体4は、回転軸となる軸部41と、軸部41の前部に固定された第2傘歯車である傘歯車42と、軸部41の後部に配設された駆動歯車43と、駆動歯車43の後端部に配設された駆動歯車締結手段44と、軸部41を回転自在に支持する軸受B2と、を備えている。
軸部41は、軸方向が第1軸体3の軸部31に対して異なる方向、本実施形態では直交する水平方向(Z軸方向)に配設されている。
【0042】
傘歯車42は、回転軸変換歯車機構6を構成する要素であり、本実施形態では振動や騒音をより低減するため、まがりば傘歯車(
図1参照)を採用しているが、すぐば傘歯車であってもよい。
【0043】
回転軸変換歯車機構6は、前記した傘歯車32と傘歯車42を備えた歯車機構で構成されている。
なお、本実施形態においては、回転軸変換歯車機構6によって、第1軸体3の軸方向(Y軸方向)に対して第2軸体4の軸方向を直交する水平方向(Z軸方向)に変換したが、これに限定されるものではなく、ワーク(不図示)の形状等に応じて第1軸体3と第2軸体4のなす角度が60度、80度や120度等の所定の角度を持たせた軸方向に変換してもよい。
【0044】
なお、回転軸変換歯車機構6は、傘歯車32及び傘歯車42の組合せによる傘歯車機構に替えて、ねじ歯車機構又はウォーム歯車機構を利用できる。
【0045】
駆動歯車43は、同期回転機構8を構成する平歯車(
図1参照)であり、同期回転機構8の駆動源となる歯車である。駆動歯車43は、駆動歯車締結手段44を介して軸部41に装着されている。
【0046】
駆動歯車締結手段44は、軸部41と駆動歯車43とを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除するように構成されたいわゆる摩擦式ロック手段である。
具体的には、
図4(a)に示すように、駆動歯車締結手段44は、駆動歯車43の内周部と軸部41の外周部の間に介装され、軸部41に外嵌されたフランジリング44aと、フランジリング41aに外嵌されたスリットリング44bと、フランジリング44aに対してスリットリング44bを軸方向に移動させるロックボルト44cと、を備えている。フランジリング44aの外周部とスリットリング44bの内周部には、軸方向の後ろ側(Z方向の正方向)が拡径されたテーパが形成されている。
【0047】
かかる構成により、
図5(b)に示すように、駆動歯車締結手段44は、ロックボルト44cを締める(符号Sを参照)とスリットリング44bがテーパに沿って拡径され、フランジリング44aが縮径する。また、ロックボルト44cの軸力は、テーパ面に沿った軸方向分力と、テーパ面に垂直な径方向の分力の合力と考えられる。径方向の分力は、スリットリング44bを駆動歯車43に付勢し、その反力は、フランジリング44aを軸部41に付勢する。ロックボルト44cの軸力の分力に応じた摩擦力がスリットリング44bと駆動歯車43の間に生ずる。フランジリング44aと軸部41との間にも同様に摩擦力が生ずる。この摩擦力により、駆動歯車締結手段44は、軸部41と駆動歯車43とを一体として固定できる。
【0048】
一方、
図5(a)に示すように、駆動歯車締結手段44は、ロックボルト44cを緩める(符号Uを参照)とスリットリング44bがテーパに沿って後方に移動し縮径されるため、軸部41と駆動歯車43との間に隙間が生じて、軸部41と駆動歯車43との連結を解除し自由回転が可能になる。
【0049】
なお、本実施形態においては、簡易な構成で作動が確実であるので、駆動歯車締結手段44としてテーパ形状によるくさび効果を利用したいわゆる摩擦式ロック(締結)手段を採用したが、これに限定されるものではなく、カップリング等の種々の公知の締結ロック手段を採用することもできる。
【0050】
図3に示すように、第1工具取付軸体51と第2工具取付軸体52は、複数の工具取付軸体5(51,52)をコンパクトに配設して種々のワークに柔軟に適応するため、第1軸体3の軸線および第2軸体4の軸線を通る平面(YZ平面)に対して面対称に配設されている。
第1工具取付軸体51と第2工具取付軸体52は、それぞれ位置が異なるが同様の構成であるので、第1工具取付軸体51の構成について説明し、第2工具取付軸体52の詳細な説明は省略する。
【0051】
第1工具取付軸体51は、回転軸となる軸部51aと、軸部51aの先端部に設けられた工具取付部51bと、軸部51aの後部にキーK1によって固定された第1歯車51cと、洗浄液供給路93aと、軸部51aを回転自在に支持する軸受B3と、を備えている。
【0052】
同期回転機構8は、第2軸体4の駆動力を工具取付軸体5(51,52)に伝達する機構であり、前記した駆動歯車43、並びに第1歯車51cおよび第2歯車52cと、駆動歯車43から第1歯車51cに動力を伝達する第1アイドル歯車81と、駆動歯車43から第2歯車52cに動力を伝達する第2アイドル歯車82と、を備えている。
第1アイドル歯車81は、軸受B4で回転自在に支持された軸体81aと、平歯車81bと、を備えている。第2アイドル歯車82は、軸受B5で回転自在に支持された軸体82aと、平歯車82bと、を備えている。
【0053】
ここで、第1歯車51cおよび第2歯車52cの歯数は同数となっている。また、駆動歯車43と第1歯車51cの中間に設けられたアイドラ歯車数と、駆動歯車43と第2歯車52cの中間に設けられたアイドラ歯車数とが同数である。そのため、第1歯車51cと駆動歯車43との減速比が、第2歯車52cと駆動歯車43との減速比と同一であり、かつ、第1歯車51cと第2歯車52cとの回転方向が同一となる。従って、第1歯車51cと第2歯車52cの回転速度が同期する。
【0054】
なお、同期回転機構8は、上述の構成に替えて、無端チェイン及びスプラインの組合せ、歯付ベルト及び歯付プーリの組合せ、傘歯車及びドライブシャフトの組合せなど、公知の同期回転機構を利用できる。
【0055】
洗浄液供給路9は、
図3および
図4(a)に示すように、タレット103の先端部に配設された洗浄液流路102から筐体2の内部を通って第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20まで洗浄液を供給する供給路であり、タレット103に形成された洗浄液流路102に連通し筐体2の上部に平面視コ字状に形成された流路91(
図2を合わせて参照)と、流路91からそれぞれ第1工具取付軸体51および第2工具取付軸体52に連通された正面視L字状の流路92aおよび正面視逆L字状の流路92bと(
図2参照)、流路92aおよび流路92bからそれぞれ第1の洗浄工具10の流通流路10bと第2の洗浄工具20の流通流路20bに連通された流路93aおよび流路93bと(
図3参照)、を備えている。
【0056】
以上のように構成された本発明の第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1の組み立て方法について、主として
図5を参照しながら説明する。
第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1における同期回転機構8は、駆動歯車43、第1歯車51c、第2歯車52c、第1アイドル歯車81、および第2アイドル歯車82が平歯車で構成され(
図1を合わせて参照)、駆動歯車43は、駆動歯車締結手段44を介して軸部41に装着されているため、以下のような組み立て手順とすることが望ましい。
【0057】
〈駆動歯車締結手段44のロックボルト44cを緩める〉
すなわち、
図5(a)に示すように、駆動歯車締結手段44のロックボルト44cを緩めた状態(符号U参照)で組み付ける。駆動歯車締結手段44のロックボルト44cを緩めた状態では、第2軸体4と駆動歯車43の連結が解除されているため、駆動歯車43に対して、第2軸体4、傘歯車42、傘歯車32、および第1軸体3が自由に回転できる。
【0058】
〈同期回転機構の組み付け〉
図5(a)に示すように、第1工具取付軸体51の軸部51aに第1歯車51cをキーK1で固定してギヤケース部22に組み付ける。第2工具取付軸体52の軸部52aに第2歯車52cをキーK2で固定してギヤケース部22に組み付ける。このとき、第1アイドル歯車81と第2アイドル歯車82は、組み付けない状態とする。
【0059】
〈第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20の位相角を合わせる〉
このように第1アイドル歯車81と第2アイドル歯車82を組み付けない状態では、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20はそれぞれ自由に回転できるため、第1の洗浄工具10の噴出口10dと第2の洗浄工具20の噴出口20dの位相角θ(
図1参照)を所定の原点に合わせることができる。
【0060】
〈第1アイドル歯車81と第2アイドル歯車82を組み付ける〉
第1の洗浄工具10の位相角を原点に保持した状態で、第1アイドル歯車81を装着する。このとき、第1アイドル歯車81は平歯車(
図1参照)であるので、駆動歯車43を回転させずに位相角を保持したままで軸方向にスライドさせて第1アイドル歯車81を装着する。同様に、第2の洗浄工具20の位相角を保持した状態で、第2アイドル歯車82を装着する。このとき、第2アイドル歯車82は平歯車(
図1参照)であるので、駆動歯車43を回転させずに位相角を保持したままで軸方向にスライドさせて第2アイドル歯車82を装着する。
【0061】
〈洗浄工具アタッチメント1を洗浄装置100のタレット103に固定する〉
洗浄装置100を操作して、主軸101の回転方向を原点復帰する。
駆動歯車締結手段44のロックボルト44cを緩めた状態では、第2軸体4と駆動歯車43の連結が解除されているため、駆動歯車43に対して、第1軸体3が自由に回転できる。このため、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20の位相角θ(
図1参照)を所定の原点に合わせ、かつ、キー101a(
図4(a)参照)によって第1軸体3を洗浄装置100の主軸101に係合させた状態で、洗浄工具アタッチメント1をタレット103に固定することができる。
【0062】
このようにして、第1の洗浄工具10の噴出口10dと第2の洗浄工具20の噴出口20dの位相角θ(
図1参照)を合わせた状態で、洗浄工具アタッチメント1を洗浄装置100の主軸101に固定する。最後に、
図5(b)に示すように、駆動歯車締結手段44のロックボルト44cを締めつけて(符号S参照)、第2軸体4と駆動歯車43とを一体として回転するように固定する。
【0063】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について、
図6と
図7を参照しながら説明する。
図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1Aは、主として第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1に対して、同期回転機構8Aが相違するため、主として相違する構成について説明し、第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1と共通する構成については同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0064】
第2の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1Aにおける同期回転機構8Aは、駆動歯車43A、第1歯車51Ac、第2歯車52Ac、第1アイドル歯車81A、および第2アイドル歯車82Aが、それぞれ、はすば歯車、又はやまば歯車で構成されている点で、駆動歯車43、第1歯車51c、第2歯車52c、第1アイドル歯車81、および第2アイドル歯車82が平歯車で構成されている第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1における同期回転機構8と相違する。
【0065】
また、第2の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1Aにおける同期回転機構8Aでは、駆動歯車43Aは、キーK4を嵌合させた状態でロックナット45によって軸部41Aに固定されるとともに、第1歯車51Acが第1の歯車締結手段44Aを介して第1工具取付軸体51Aの軸部51Aaに装着され、第2歯車52Acが第2の歯車締結手段44Aを介して第2工具取付軸体52Aの軸部52Aaに装着されている点で、駆動歯車締結手段44を介して駆動歯車43が軸部41に装着されている第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1と相違する。
【0066】
ここで、第1の歯車締結手段44Aは、第1工具取付軸体51Aの軸部51Aaと第1歯車51Acとを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除するように構成されたいわゆる摩擦式ロック手段である。第2の歯車締結手段44Aは、第2工具取付軸体52Aの軸部52Aaと第2歯車52Acとを一体回転可能に連結または自由回転可能に連結を解除するように構成されたいわゆる摩擦式ロック手段である。
【0067】
なお、第1の歯車締結手段44Aおよび第2の歯車締結手段44Aは、駆動歯車締結手段44と同様の構成であり、配置が異なるのみであるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
第2の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1Aは、はすば歯車等を使用する同期回転機構8Aを採用したことで、騒音や振動をより低減できるという効果を有する。また、洗浄工具アタッチメント1Aは、以下に示すように組み立て手順においても第1の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1と相違する。
【0069】
〈同期回転機構8Aの組み付け〉
図6に示すように、同期回転機構8Aを構成する駆動歯車43A、第1歯車51Ac、第2歯車52Ac、第1アイドル歯車81A、および第2アイドル歯車82Aを噛み合わせて組んだ状態で、それぞれ駆動歯車43Aを軸部41Aに、第1歯車51Acを軸部51Aaに、第2歯車52Acを軸部52Aaに、第1アイドル歯車81Aを軸受B4に、第2アイドル歯車82Aを軸受B5に装着する。
【0070】
このとき、
図7(a)に示すように、駆動歯車43Aは、キーK4を嵌合させ、ロックナット45によって軸部41Aに固定する。第1歯車51Acには、第1の歯車締結手段44Aを装着し、第1の歯車締結手段44Aのロックボルト44Acは緩めた状態とする(符号U参照)。第2歯車52Acには、第2の歯車締結手段44Aを装着し、第2の歯車締結手段44Aのロックボルト44Acは緩めた状態とする(符号U参照)。
【0071】
〈第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20の位相角を合わせる〉
第1歯車51Acに装着された第1の歯車締結手段44Aのロックボルト44Acを緩めた状態では、第1歯車51Acと軸部51Aaとの連結が解除されている。第2歯車52Acに装着された第2の歯車締結手段44Aのロックボルト44cを緩めた状態では、第2歯車52Acと軸部52Aaとの連結が解除されている。
このため、第1歯車51Acに対して軸部51Aaを自由に回転させることができる。また、第2歯車52Acに対して軸部52Aaを自由に回転させることができる。
【0072】
洗浄装置100を操作して、主軸101の回転方向を原点復帰する。洗浄工具アタッチメント1Aを洗浄装置100のタレット103(
図4(a)参照)に固定する。
第1の歯車締結手段44A、および第2の歯車締結手段44Aのロックボルト44cを緩めた状態で、第1の洗浄工具10の噴出口10dと第2の洗浄工具20の噴出口20dの位相角θ(
図1参照)を合わせる。
【0073】
そして、
図7(b)に示すように、第1の歯車締結手段44A、および第2の歯車締結手段44Aのロックボルト44cを締めつけて(符号S参照)、第1歯車51Acと軸部51Aa、および第2歯車52Acと軸部52Aaとを一体として回転するように固定する。
【0074】
以上のように構成した本発明の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1,1Aは、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、洗浄装置100の主軸101と直交する水平方向(Z軸方向)に第1の洗浄工具10および第2の洗浄工具20を回転させることができるため、洗浄時の切り屑や洗浄液の排出性を向上させて洗浄効果及び水きり効果を高めることができる。
【0075】
本発明の実施形態に係る洗浄工具アタッチメント1,1Aは、第1の洗浄工具10および第2の洗浄工具20をそれぞれ同じ回転速度で位相角θ(
図1参照)を同期して回転させる同期回転機構8を備えている。そのため、第1の洗浄工具10および第2の洗浄工具20とのピッチに合わせて離間させ、並行に配置した複数のワークまたは洗浄部位に対して、それぞれ第1の洗浄工具10および第2の洗浄工具20を同期させて同時に洗浄することができる。
【0076】
このため、第1の洗浄工具10および第2の洗浄工具20をそれぞれ所定の位相角θに合わせて洗浄目標に合致させることができるため、複数のワークまたは洗浄部位を効率よく確実に洗浄することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、適宜変形して実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、説明を簡素化するために、第1の洗浄工具10と第2の洗浄工具20の2本の洗浄工具を装着するためのアダプタとしたが、これに限定されるものではなく、ワークの数や洗浄箇所に応じて3本以上の洗浄工具に適用してもよい。