【解決手段】本発明の一実施形態は、中空を備えた筒状体の中空内に挿入される管状体である。この管状体は、樹脂製の管部を備え、管部の外周面には、管部の長手方向に沿ってパーティングラインを有する。そして、管状体が筒状体に挿入された状態において、管部の外周面のうちパーティングラインの近傍の面領域と筒状体の内周面の間に間隙が設けられるように管部の外周面が形成され、それによってパーティングラインとその近傍が筒状体の内周面と接触しないことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)管状体および筒状積層体の構成
以下、本発明の一実施形態に係る管状体、および、当該管状体を含む筒状積層体について、
図1〜4を参照して説明する。
図1は、本実施形態の筒状積層体1の分解組立図である。
図2は、筒状積層体1に含まれる一方の管状体2の平面図(上側)および側面図(下側)である。
図3は、筒状積層体1に含まれる他方の管状体3の平面図(上側)および側面図(下側)である。
図4は、
図2のA−A断面、
図3のB−B断面およびC−C断面の断面図である。ここで、A−A断面は管状体2の断面に相当し、B−B断面およびC−C断面は管状体3の断面に相当する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の筒状積層体1は、基本的には、筒状体4に管状体2,3が内挿されて積層状態となった構造を有する。この筒状積層体1の例では、クランプ9が筒状体4に取り付けられる例を示しているが、この限りではない。つまり、クランプ9は必須ではない。
図1に示す筒状積層体1の具体的な形状は一例に過ぎず、当業者であれば、このような筒状積層構造が、例えば自動車、列車、船舶あるいは建築物等の広範な分野に適用可能であることが理解される。特に、このような筒状積層体1は、高い制振機能を有することから、自動車のインストルメンタルパネルの内部に配置されるリインフォースメントとして好適に用いることができる。
【0014】
筒状体4の外形は筒状積層体1の外形を画定することから、筒状積層体1の使用用途に応じて適宜決定されてよいが、
図1に示す例では、筒状体4は、比較的大径の筒部41と、比較的小径の筒部42と、筒部41および筒部42を連結するテーパ形状の連結部43とを備える。筒状体4の材質は特に限定するものではないが、例えば、鉄やアルミニウム等の強度が高い金属である。筒状体4が金属製である場合、圧延によって形成される。
【0015】
図1および
図2に示すように、管状体2は、後述するブロー成形によって形成される中空の管部21と、管部21の外周面21aに取り付けられ、管部21と一体的に形成される表皮材22,23と、を備える。管状体2は、表皮材22,23の表面が筒状体4の筒部41の内周面に接触するようにして(つまり、筒部41と嵌合するようにして)、筒状体4の筒部41の中空41aに挿入される。管部21の断面は、実質的に楕円形状となっている。パーティングライン210とその近傍は、管部21の長手方向に沿って形成され、管部21の成形時に金型間に入り込んだ樹脂によって他の外周面21aから突出した突出部分となっている。パーティングライン210の突出量が大きい場合にはバリとなる。
【0016】
図2に示すように、表皮材22,23は、管部21の外周面21aのうちパーティングライン210とその近傍を除いた面領域に設けられていることが好ましい。
【0017】
図1および
図3に示すように、管状体3は、後述するブロー成形によって形成される中空の管部31と、管部31の外周面31aに取り付けられ、管部31と一体的に形成される表皮材32,33と、を備える。管状体3は、表皮材32,33の表面が筒状体4の筒部42の内周面に接触するようにして(つまり、筒部42と嵌合するようにして)、筒状体4の筒部42の中空42aに挿入される。従って、管状体3の外形は、管状体2のそれよりも小さい。管部31の断面は、実質的に楕円形状となっている。パーティングライン310とその近傍は、管部31の長手方向に沿って形成され、管部31の成形時に金型間に入り込んだ樹脂によって他の外周面31aから突出した突出部分となっている。パーティングライン310の突出量が大きい場合にはバリとなる。
【0018】
図3に示すように、表皮材32,33は、管部31の外周面31aのうちパーティングライン310とその近傍を除いた面領域に設けられていることが好ましい。
【0019】
筒状積層体1の管部21,31の樹脂材料は、限定されないが、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
本実施形態の筒状積層体1の軽量化を図るため、さらには制振性能を向上させるために、管部21,31は、発泡樹脂製であることが好ましい。管部21,31となる発泡樹脂の発泡倍率は、例えば、1.5〜6倍の範囲である。ここでの発泡倍率とは、発泡前の混合樹脂の密度を、発泡後の発泡樹脂の見かけ密度で割った値である。
また、本実施形態の管部21,31を成形する際の発泡剤として、公知の物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物を適用することができる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。
【0020】
管状体2の表皮材22,23および管状体3の表皮材32,33の材質は、限定するものではないが、通気性のある材料であれば如何なる材料でもよく、例えば、不織布(例えば、ポリプロピレン不織布やポリエステル不織布)、織物、編物、それらを起毛した布地等である。
【0021】
図1に示すように、管状体3には凹部35が形成されている。凹部35は、管状体3が筒状体4の筒部42に挿入されたときに、筒部42の孔55に対応して位置決めされるように形成されている。それによって、管状体3が筒部42に挿入された後に筒部42の孔55に対してクランプ9が外側から取り付けられたときに、クランプ9の先端部分が表皮材32に干渉することが防止される。換言すれば、凹部35の凹み量は、孔55に取り付けられたクランプ9の先端が表皮材32の表面に接触しないように設定されている。
筒部42の孔55の径およびクランプ9の先端形状は、クランプ9を孔55に容易に挿入可能であって、かつクランプ9が筒部42から容易に脱落しないように設定される。
【0022】
次に、
図4を参照して、本実施形態の管状体2,3の断面形状について説明する。
図4の各断面図は、管状体2,3がそれぞれ筒部41,42に挿入されたときの管状体2,3の形状を、筒部41,42およびクランプ9を仮想線で表しながら示している。
【0023】
図4のA−A断面に示すように、管状体2が筒部41の中空41aに挿入された状態では、管状体2の表皮材22,23の表面が筒部41の内周面41bに接触し、それによって管状体2の径方向の移動が筒部41内で規制される。管状体2が筒部41に挿入された状態では、管部21の外周面21aは筒部41の内周面41bと接触しない。ここで、管状体2が筒状体4の中空41aに挿入された状態において、管部21の外周面21aのうちパーティングライン210の近傍の面領域と筒状体4の筒部41の内周面41bの間に間隙が設けられるように管部21の外周面21aが形成され、それによってパーティングライン210が筒部41の内周面41bと接触しないように構成されている。言い換えれば、管状体2が筒部41の中空41aに挿入された状態において、パーティングライン210の近傍で、かつパーティングライン210の近傍の外周面21a上の面領域から筒状体4の筒部41の内周面41bまでの離間距離d1(
図4参照)が、パーティングライン210の突出量よりも大きくなるように、管部21の外周面21aが形成されている。
【0024】
図4のB−B断面に示すように、管状体3が筒部42の中空42aに挿入された状態では、管状体3の表皮材32,33の表面が筒部42の内周面42bに接触し、それによって管状体3の径方向の移動が筒部42内で規制される。管状体3が筒部42に挿入された状態では、管部31の外周面31aは筒部42の内周面42bと接触しない。ここで、管状体3が筒状体4の中空42aに挿入された状態において、管部31の外周面31aのうちパーティングライン310の近傍の面領域と筒状体4の筒部42の内周面42bの間に間隙が設けられるように管部31の外周面31aが形成され、それによってパーティングライン310が筒部42の内周面42bと接触しないように構成されている。言い換えれば、管状体3が筒部42の中空42aに挿入された状態において、パーティングライン310の近傍で、かつパーティングライン310の近傍の外周面31a上の面領域から筒状体4の筒部42の内周面42bまでの離間距離d2(
図4参照)が、パーティングライン310の突出量よりも大きくなるように、管部31の外周面31aが形成されている。
【0025】
図4のC−C断面は、B−B断面とは、クランプ9に対応する位置において管状体3の凹部35が形成されている点で異なる。凹部35において、筒状体4の筒部42の内周面42bと、凹部35を構成する表皮材32の表面との間に間隙が確保され、それによってクランプ9の先端部分が表皮材32と干渉しないように構成されていることがわかる。
【0026】
後述するように、本実施形態の管状体2は一体的にブロー成形され、その際に、長手方向に沿ってパーティングライン210が成形される。前述したように、パーティングライン210とその近傍は、他の外周面21aから突出している。
このとき、本実施形態では、パーティングライン210を管部21からカッター等で除去する必要がないか、除去するとしてもその高さ(例えばバリの高さ)を厳密に管理する必要がない。これは、管状体2が筒状体4の中空41aに挿入するときに、離間距離d1(
図4参照)が十分に確保されているため、パーティングライン210が筒部41の内周面41bと接触しないか、あるいは僅かに接触するに過ぎないためである。さらに、管状体2が筒状体4の中空41aに挿入するときに、パーティングライン210と筒部41の内周面41bとの間の摩擦力が発生しないか、発生したとしても僅かな摩擦力に過ぎないため、管状体2の筒部41に対する挿入容易性を高めることができる。
また、パーティングライン210を除去する必要がないか、除去するとしてもその高さを厳密に管理する必要がないため、管状体2の製造工程を効率化することができる。
【0027】
なお、本実施形態の管状体3についても同様のことがいえる。すなわち、管状体3の筒部42に対する挿入容易性を高めることができる。さらに、パーティングライン310を除去する必要がないか、除去するとしてもその高さを厳密に管理する必要がないため、管状体3の製造工程を効率化することができる。
【0028】
(2)管状体の製造方法
次に、
図5〜7を参照して、本実施形態の管状体2,3の製造方法について説明する。
図5〜7は、それぞれ本実施形態の管状体の製造方法を順に説明する図である。
図5〜7において、
図5の発泡パリソンP以外については、断面視によって示している。
以下で説明する製造方法では、管状体2と管状体3を一体構造とした成形品をブロー成形によって製造し、その後に当該成形品を割断して管状体2と管状体3を得る。
【0029】
図5において、分割金型61,62はそれぞれ形成面(キャビティ面)61a,62aが形成されている。形成面61a,62a上には、表皮材C,Cを保持するための突出部61b,62bが設けられている。そして、予め端部近傍に孔を設けた一対の表皮材C,Cを用意し、発泡パリソンPの押し出し前に、突出部61b,62bに表皮材C,Cの孔を挿入することで、形成面61a,62a上に表皮材C,Cを保持させておく。次いで、環状ダイス100から、発泡剤を含む円筒中空形状の発泡パリソンPを分割金型61,62の間に押し出し、発泡パリソンPを形成面61a,62aの間に配置する。
【0030】
次に、分割金型61,62を型締めして、発泡パリソンPを分割金型61,62で挟み込む。これにより、発泡パリソンPを、分割金型61,62の形成面61a,62aによって画定される密閉空間内に収納させる。
次いで、真空成形によって、発泡パリソンPを分割金型61,62の形成面61a,62aに押し付けて、発泡パリソンPを賦形する。なお、分割金型61,62については、成形後にパーティングラインPL(パーティングライン210,310を含む)が形成されるようにして、金型の形状が決められている。分割金型61,62にそれぞれ真空チャンバ(図示せず)が内蔵され、当該真空チャンバと形成面61a,62aの間には真空吸引のための連通路(図示せず)が設けられている。そして型締め後に、連通路から発泡パリソンPと各形成面との間の密閉空間内の空気を真空チャンバによって吸引する。それによって、
図6に示すように、発泡パリソンPと表皮材C,Cが分割金型61,62の形成面61a,62aに押し付けられる。真空成形を行うことにより、ブロー成形と比較して、発泡パリソンの気泡が潰れ難いという利点がある。
【0031】
次に、分割金型61,62を開型し、十分に冷却された成形品を取り出す。
図7は、開型直後の成形品を示している。この成形品を切断ラインCL2,CL3でカッターにより切断することで不要部212,312を除去する。
図7に示すように、分割金型から取り出された成形品には、分割金型の各形成面の突出部61b,62bに対応して凹部312a,312bが形成されるが、切断ラインCL3は、凹部312a,312bよりも成形品の中央側に設定されている。そのため、不要部312を除去することで、凹部312a,312bも成形品から除去されることになり、成形品に外観不良を招来することはない。
【0032】
その後、成形品を割断位置Dにおいて割断することによって、
図1に示した管状体2,3が得られる。なお、
図1において、管状体2の先端部211および管状体3の先端部311は、割断位置Dに相当する。
ここで得られた管状体2,3には、長手方向にそれぞれパーティングライン210,310が形成されているが、前述したように、パーティングライン210,310を管状体2,3からカッター等で除去する必要はなく、除去するとしてもその高さを厳密に管理する必要がない。
【0033】
(3)付記
上述した実施形態では、管状体2の管部21の外周面21aの少なくとも一部に表皮材22,23を設け、管状体3の管部31の外周面31aの少なくとも一部に表皮材32,33を設けた場合について説明したが、その限りではない。管状体2,3の用途によっては、外周面21a,31aのいずれか一方、または、両方に表皮材を設けなくてもよい。
例えば、管状体2の外周面21aに表皮材22,23を設けない場合、外周面21aのうちパーティングライン210とその近傍を除いた面領域が筒部41の内周面41bに接触した状態で、管状体2が筒部41の中空41aに挿入される。そして、
図4に示したのと同様に、離間距離d1が確保される。
なお、上述した実施形態のように表皮材を設けることは、筒状積層体の制振性能を向上させる点で好ましい。
【0034】
上述した実施形態では、表皮材22,23は、管状体2の管部21の外周面21aのうちパーティングライン210とその近傍を除いた面領域に設けられ、表皮材32,33は、管状体3の管部31の外周面31aのうちパーティングライン310とその近傍を除いた面領域に設けられている場合について説明したが、この限りではない。
表皮材22または表皮材23を管部21の外周面21aのパーティングライン210上に設けてもよいし、表皮材32または表皮材33を管部31の外周面31aのパーティングライン310上に設けてもよい。例えば、表皮材を管部21の外周面21aの全面に設けてもよいし、表皮材を管部31の外周面31aの全面に設けてもよい。その場合には、
図4において、パーティングライン210の高さと表皮材22の厚みを考慮して離間距離d1が設定され、パーティングライン310の高さと表皮材32の厚みを考慮して離間距離d2が設定される。
なお、パーティングライン210近傍の管部21および筒部41の設計自由度、並びに、パーティングライン310近傍の管部31および筒部42の設計自由度を高めるためには、
図4に示したように、パーティングライン210とその近傍を除いた外周面21a上の領域に表皮材を設け、パーティングライン310とその近傍を除いた外周面31a上の領域に表皮材を設けることが好ましい。つまり、設計自由度を得、かつ製造工程の効率化を図るためには、上述した実施形態のように、表皮材は、管状体の管部の外周面のうちパーティングラインとその近傍を除いた面領域に設けることが好ましい。
【0035】
上述した実施形態では、管状体2,3の管部21,31は、発泡樹脂によって成形されている場合について説明したが、この限りではない。管状体2,3の用途によっては、管部21,31は発泡樹脂でなくてもよい。例えば、筒状体4の強度を高めたい場合には、管部21,31を非発泡樹脂によって成形してもよい。
【0036】
上述した実施形態の例では、筒状体4の筒部41,42の断面が実質的に円形であり、管状体2の管部21および管状体3の管部31のそれぞれの断面が実質的に楕円形である場合について説明したが、この限りではない。パーティングラインの近傍で、かつパーティングラインが形成されていない管部の外周面上の面領域から筒状体の筒部の内周面までの離間距離が、パーティングラインの突出量よりも大きくなるように、管部の外周面が形成されている限り、筒部の内周面の形状、および、管状体の外周面の形状は、任意に決定することができる。例えば、管状体および筒状体を、それぞれ断面を多角形としてもよい。
【0037】
図5〜7を参照して、環状ダイスから円筒中空形状の発泡パリソンPを分割金型61,62間に押し出すことによる管状体の製造方法について説明したが、この限りではない。一対のシート状パリソンを分割金型61,62間に押し出すことによって管状体を成形してもよい。この場合、分割金型61,62を型締めする前に、各シート状パリソンと各分割金型の形成面との間でそれぞれ密閉空間を形成し、当該密閉空間を真空吸引することで、一対のシート状パリソンの各々を表皮材C,Cとともに分割金型61,62の形成面61a,62aに押圧させる。その後に分割金型61,62を型締めすることによって、
図7に示したものと同等の成形品を得る。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の管状体は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
例えば、上述した実施形態では、管状体2の管部21と管状体3の管部31が発泡樹脂製である場合について説明したが、非発泡樹脂製であってもよい。非発泡樹脂によって成形する場合には、発泡パリソンの気泡の潰れを考慮する必要がないため、ブロー成形によって成形してもよい。ブロー成形を行う場合、分割金型には、ブロー成形用の孔が設けられており、分割金型を型締めした状態で、発泡パリソンを分割金型のキャビティ面に押し付けることで賦形する。具体的には、分割金型に設けられたブロー成形用の孔から空気等の圧縮気体を発泡パリソンの内部に吹き込み、所定のブロー圧にてブロー成形を行う。
また、ブロー成形と真空成形とを組み合わせる方法で成形を行ってもよい。
本発明は、上述したブロー成形や真空成形のほか、射出成形によって成形された管状体に対しても適用できる。