特開2017-104994(P2017-104994A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社高橋機械製作所の特許一覧

<>
  • 特開2017104994-エンボス加工装置 図000003
  • 特開2017104994-エンボス加工装置 図000004
  • 特開2017104994-エンボス加工装置 図000005
  • 特開2017104994-エンボス加工装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-104994(P2017-104994A)
(43)【公開日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】エンボス加工装置
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/10 20060101AFI20170519BHJP
   B31F 1/36 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
   B31F1/10
   B31F1/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-238504(P2015-238504)
(22)【出願日】2015年12月7日
(11)【特許番号】特許第5954722号(P5954722)
(45)【特許公報発行日】2016年7月20日
(71)【出願人】
【識別番号】505155724
【氏名又は名称】株式会社高橋機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(74)【代理人】
【識別番号】100179877
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 健治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康雄
【テーマコード(参考)】
3E078
【Fターム(参考)】
3E078AA04
3E078BB51
3E078DD09
(57)【要約】
【課題】ロールターレット機構に支持されたエンボスロールの温度設定をコンパクトな構成で実現することができるエンボス加工装置を提供する。
【解決手段】エンボスロール12をシート積層体の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置において、エンボスロール12を複数本支持し、エンボスロール12をターレット回転軸19の周りに回動してシート積層体に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構13を備え、各エンボスロール12の内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路30をそれぞれ備え、ターレット回転軸19の内部には、ロール内熱媒流路30に連通する軸内熱媒流路34を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置において、
前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、
前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、
前記ターレット回転軸の内部には、ロール内熱媒流路に連通する軸内熱媒流路を備えたことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
前記軸内熱媒流路は、ターレット回転軸の軸方向に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載のエンボス加工装置。
【請求項3】
前記軸内熱媒流路と、熱媒流体を供給する熱媒供給源とを、ターレット回転軸の軸端にて連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンボス加工装置。
【請求項4】
前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路毎に連通する複数の前記軸内熱媒流路を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンボス加工装置。
【請求項5】
前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、
前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止することを特徴とする請求項4に記載のエンボス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンボス加工装置は、エンボスロールとバックアップロールとの間に樹脂製シート材等の被加工物を送出し、エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行う装置である。
【0003】
そして、2以上の異なる型のエンボスロールをターレット機構のアームに支持し、このアームを回転して、バックアップロールに対向するエンボスロールを入れ換えるように構成されたエンボス加工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成のエンボス加工装置によれば、エンボスロールの交換を迅速に行うことができ、エンボス加工の型を変更する作業の効率、ひいては、エンボス加工により施される模様を切り換える作業の効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−020176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンボス加工を良好に仕上げるためには、エンボスロールの外周に形成されたエンボス型面をエンボス加工に適した温度に設定することが望ましく、エンボスロール内に熱媒流体を通流させることが考えられる。しかしながら、ターレット機構に支持されたエンボスロールへ熱媒流体を供給するために熱媒流路を単に設けようとすると、ターレット機構の構造が複雑になってしまい、エンボス加工装置のコンパクト化を図ることができない。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロールターレット機構に支持されたエンボスロールの温度設定をコンパクトな構成で実現することができるエンボス加工装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置において、
前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、
前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、
前記ターレット回転軸の内部には、ロール内熱媒流路に連通する軸内熱媒流路を備えたことを特徴とするエンボス加工装置である。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記軸内熱媒流路は、ターレット回転軸の軸方向に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載のエンボス加工装置である。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記軸内熱媒流路と、熱媒流体を供給する熱媒供給源とを、ターレット回転軸の軸端にて連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンボス加工装置である。
【0010】
請求項4に記載のものは、前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路毎に連通する複数の前記軸内熱媒流路を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンボス加工装置である。
【0011】
請求項5に記載のものは、前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、
前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止することを特徴とする請求項4に記載のエンボス加工装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、前記ターレット回転軸の内部には、ロール内熱媒流路に連通する軸内熱媒流路を備えたので、軸内熱媒流路の配置スペースをターレット回転軸の配置スペースとは別個に確保する必要がない。したがって、ロールターレット機構に支持されたエンボスロールの温度設定をコンパクトな構成で実現することができる。また、軸内熱媒流路を通る熱媒流体をターレット回転軸により保温することができる。これにより、軸内熱媒流路内における熱媒流体の熱損失を抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記軸内熱媒流路がターレット回転軸の軸方向に沿って延在するので、ターレット回転軸の重心が軸中心から極端に外れてしまう不都合を抑えることができ、ロールターレット機構における回転動作、さらには、エンボスロールの移動を滞りなく実行することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記軸内熱媒流路と、熱媒流体を供給する熱媒供給源とを、ターレット回転軸の軸端にて連通するので、エンボスロールの移動時に軸内熱媒流路と熱媒供給源との連通箇所が大きく移動することを避けることができる。これにより、連通箇所に不必要な負荷が掛かること、ひいては軸内熱媒流路と熱媒供給源とを連通する構成が不用意に外れる不都合を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路毎に連通する複数の前記軸内熱媒流路を備えたので、エンボスロール毎に温度設定を異ならせることができる。したがって、ロールターレット機構のうち、一つのエンボスロールにてエンボス加工を行っている最中に、他のエンボスロールの温度を次回のエンボス加工の条件に合わせて予め設定しておくことができる。これにより、エンボス加工における温度設定の切り換えが必要な場合であっても、前回のエンボス加工の終了から次回のエンボス加工の開始までの時間を短縮することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止するので、各軸内熱媒流路と熱媒供給源とを連通する構成がロールターレット機構の回転動作に伴って複雑に捻じれる不都合を避けることができ、ロールターレット機構の回転動作やエンボスロール内への熱媒流体の通流を滞りなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エンボス加工装置の要部概略図である。
図2】ロールターレット機構の概略図である。
図3】ロールターレット機構におけるエンボスロールの回転動作を示す概略図であり、(a)はエンボスロールを転圧位置に移動した状態、(b)はエンボスロールを転圧位置に移動する前の状態である。
図4】複数の軸内熱媒流路を備えたロールターレット機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
エンボス加工装置1は、被加工物を構成する複数種類の長尺な樹脂製シート材を積層し、積層したシート材の表面にエンボス加工を施す装置である。具体的には、図1に示すように、複数種類の帯状シート材(本実施形態では、トップ層TL,中層ML,下地層BLと称される3種類のシート材)を原反から解いてエンボス加工装置1の下流側へ送り出す送出部2と、送出部2から送り出された複数種類(本実施形態では、トップ層TL,中層MLの2種類)のシート材を積層ロール3aに巻回しながら積層してシート積層体を送り出す積層部3と、シート積層体を搬送しながらヒーター4aにより加熱する加熱部4と、加熱されたシート積層体を搬送しながらその表面(本実施形態では、トップ層TLの表面)にエンボス加工を行うエンボス加工部5と、エンボス加工が施されたシート積層体(エンボスシート)ESを冷却しながら送り出す冷却部(図示せず)と、冷却後のエンボスシートESをその側縁部を切り落としながら送り出す側縁切除部(図示せず)と、側縁部が切り落とされたエンボスシートESを巻き取る巻取り部(図示せず)とを備えて構成されている。
【0019】
また、送出部2から送り出されたシート材のうち、積層部3にて積層されないシート材(本実施形態では下地層BL)を加熱部4には通さず、エンボス加工部5へ送出して加熱状態のシート積層体(詳しくは、シート積層体の中層ML側)へ積層するように構成されている。そして、エンボス加工部5では、この非加熱状態のシート材(下地層BL)にはエンボス加工を施さず、加熱状態のシート積層体の露出面(トップ層TLの表面)にエンボス加工を行うように構成されている。
【0020】
次に、エンボス加工部5について説明する。
エンボス加工部5は、図2および図3に示すように、外周面がゴム等の弾性体で被覆されたバックアップロール11と、複数本(本実施形態では2本)のエンボスロール12が支持されるロールターレット機構13とを備えて構成されている。そして、ロールターレット機構13をバックアップロール11に対して近づけたり離したりする方向(図1中、矢印Aで示す方向)に沿ってスライド可能とし、バックアップロール11とエンボスロール12との間に非加熱状態のシート材(下地層BL)と加熱状態のシート積層体(中層ML,トップ層TL)を挟んでエンボスロール12をシート積層体の表面(トップ層TL)へ押圧し、この状態でバックアップロール11を回転駆動して各シート材を送ることにより、エンボスロール12の外周に形成された凹凸模様のエンボス型面12aをシート積層体の表面に転圧してエンボス加工を行うように構成されている(図3(a)参照)。
【0021】
ロールターレット機構13は、架台16上にターレットベース17をスライド可能な状態で載置し(図1参照)、このターレットベース17の左右両側部には一対のターレットブラケット18を立設し、各ターレットブラケット18の軸受20を貫通した状態でターレット回転軸19を回動可能に架設し、このターレット回転軸19と前記バックアップロール11の軸中心とが平行な姿勢になるように配置している。また、ターレット回転軸19のうち両ターレットブラケット18の間に位置する箇所には、互いにターレット回転軸19の軸方向に離間した一対のアーム状のロールブラケット21をターレット回転軸19の周りに位相をずらした状態で複数組(本実施形態では180度位相をずらした状態で2組)備え、各組のロールブラケット21同士の間にエンボスロール12を回転可能な状態で軸受22によりそれぞれ支持している。なお、ターレット回転軸19は、各ロールブラケット21を備える箇所から外側に位置する軸側部19a,19bを中実な円柱部材で構成し、両ロールブラケット21の間に位置する軸中央部19cを中空な円筒部材で構成している。
【0022】
さらに、ターレット回転軸19の一方の軸側部(図2中、上側に描画されている駆動接続軸側部)19aには、複数のギア24aと駆動モータ24bとを備えて構成されるターレット駆動機構24を接続し、駆動モータ24bの動作を制御装置25により制御して、ターレット回転軸19と各ロールブラケット21と各エンボスロール12とを共回りさせるように構成されている。詳しくは、エンボスロール12をターレット回転軸19の周りに回転して、このエンボスロール12をシート積層体に転圧可能な位置(転圧位置PP)、言い換えると、バックアップロール11との間でシート積層体を挟持可能な位置へ移動したり、エンボスロール12を転圧位置PPから待機位置WPに外したりするように構成されている(図3参照)。
【0023】
そして、ロールターレット機構13には、熱媒供給源28から供給される水や油等の熱媒流体をエンボスロール12内に通流させるための構成を備えている。具体的に説明すると、各エンボスロール12の内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路30をそれぞれ備え、このロール内熱媒流路30の入口および出口をエンボスロール12のうちロールブラケット21に挿通されたロール軸部12bの軸端(詳しくは、エンボスロール12を挟んでターレット駆動機構24とは反対側に位置するロール軸部12bの軸端)に開設している。さらに、この軸端にはロータリージョイント31を接続し、ロール内熱媒流路30の入口および出口をターレット回転軸19の内部へロータリージョイント31を介して連通するように構成されている。
【0024】
また、ターレット回転軸19の内部には、各ロール内熱媒流路30に連通する軸内熱媒流路34をターレット回転軸19の軸方向に沿って延在する状態で備えている。具体的には、軸内熱媒流路34を上流部34a、中流部34b、下流部34cに分割し、上流部34aをターレット回転軸19のうち軸中央部19cを挟んでターレット駆動機構24とは反対側に位置する軸側部(図2中、下側に描画されている駆動非接続軸側部)19bに穿設して備え、中流部34bを軸中央部19c内に挿入される配管で構成し、下流部34cを駆動接続軸側部19aに穿設して備えている。そして、上流部34aのうち軸内熱媒流路34の入口となる上流開口を駆動非接続軸側部19bの軸端の回転中心に開設し、下流部34cのうち軸内熱媒流路34の出口となる下流開口を駆動接続軸側部19aの軸端の回転中心に開設している。
【0025】
さらに、中流部34bの下流側端部と下流部34cの中流側端部とを、ターレット回転軸19の外方に位置する連通配管37で連通し、上流部34aの中流側端部と各ロータリージョイント31の流体入口とを入口側配管38で連通し、各ロータリージョイント31の流体出口と中流部34bの上流側端部とを出口側配管39で連通している。そして、軸内熱媒流路34の入口および出口(言い換えると、ターレット回転軸19の両軸端)にはロータリージョイント40をそれぞれ接続し、入口側のロータリージョイント40には、熱媒流体を熱媒供給源28からロールターレット機構13へ供給する供給配管41を連通し、出口側のロータリージョイント40には、熱媒流体をロールターレット機構13から熱媒供給源28へ回収する回収配管42を連通している。なお、軸内熱媒流路34の入口,出口がターレット回転軸19の回転中心から外れて開設される場合には、ターレット回転軸19の回動に伴ってロータリージョイント40の位置が移動するので、供給配管41,回収配管42をフレキシブル配管等で構成してロータリージョイント40の移動を許容することが好適である。
【0026】
このような構成のロールターレット機構13を備えたエンボス加工装置1において、模様が互いに異なる複数種類(本実施形態では2種類)のエンボス加工を引き続いて行う場合には、ロールターレット機構13をバックアップロール11から離した状態で、各エンボス加工を行うためのエンボスロール12をロールターレット機構13の各ロールブラケット21にそれぞれセットする。さらに、各配管38,39を接続して熱媒流路30,34を連通し、熱媒流体を熱媒供給源28からロールターレット機構13へ供給する。すると、この熱媒流体が軸内熱媒流路34の上流部34a、ロール内熱媒流路30、軸内熱媒流路34の中流部34b、下流部34cを通り、再び熱媒供給源28に回収され、ロール内熱媒流路30内を通流する熱媒流体により、エンボスロール12のエンボス型面12aの温度調整が行われる。また、加熱部4により加熱された状態のシート積層体(トップ層TL、中層ML)と、非加熱状態のシート材(下地層BL)とをロールターレット機構13とバックアップロール11との間に送り出して、エンボス加工の準備を整える。
【0027】
エンボス加工の準備が整ったならば、制御装置25による駆動モータ24bの制御に基づいてロールターレット機構13を回転駆動して、先に行うエンボス加工で使用するエンボスロール12を転圧位置PPに移動する。さらに、ロールターレット機構13をバックアップロール11へ近づけ、転圧位置PPのエンボスロール12をシート積層体へ転圧してエンボス加工を開始する。そして、転圧位置PPのエンボスロール12によるエンボス加工が終了したならば、ロールターレット機構13をバックアップロール11から離し、制御装置25による駆動モータ24bの制御に基づいてロールターレット機構13を回転駆動して、エンボス加工が終了したエンボスロール12を転圧位置PPから外す(離隔する)とともに、次回のエンボス加工用のエンボスロール12を転圧位置PPに移動する。さらに、ロールターレット機構13をバックアップロール11へ近づけ、転圧位置PPのエンボスロール12をシート積層体へ転圧して次回のエンボス加工を開始する。
【0028】
このようにして異なる複数のエンボスロール12の切り換えをロールターレット機構13の回転駆動により行えば、前回のエンボス加工の終了から次回のエンボス加工の開始までの準備時間を短縮することができる。また、ターレット回転軸19の内部に軸内熱媒流路34を備えているので、軸内熱媒流路34の配置スペースをターレット回転軸19の配置スペースとは別個に確保する必要がない。したがって、ロールターレット機構13に支持されたエンボスロール12の温度設定(詳しくは、エンボス型面12aの温度設定)をコンパクトな構成で実現することができる。さらに、軸内熱媒流路34を通る熱媒流体をターレット回転軸19により保温することができる。これにより、軸内熱媒流路34内における熱媒流体の熱損失を抑えることができる。また、軸内熱媒流路34内の熱媒流体を保温する保温材をターレット回転軸19とは別個に設ける必要がなく、ロールターレット機構13の構成部品点数が増えること、ひいてはエンボス加工装置1の構成部品点数が増えることを抑えることができる。
【0029】
また、軸内熱媒流路34がターレット回転軸19の軸方向に沿って延在するので、ターレット回転軸19の重心が軸中心から極端に外れてしまう不都合を抑えることができ、ロールターレット機構13における回転動作、さらには、エンボスロール12の移動を滞りなく実行することができる。そして、軸内熱媒流路34と熱媒供給源28とをターレット回転軸19の軸端にて連通するので、エンボスロール12の移動時に軸内熱媒流路34と熱媒供給源28との連通箇所が大きく移動することを避けることができる。これにより、連通箇所に不必要な負荷が掛かること、ひいては軸内熱媒流路34と熱媒供給源28とを連通する構成(ロータリージョイント40,供給配管41,回収配管42)が不用意に外れる不都合を抑えることができる。
【0030】
ところで、上記第1実施形態では、単一の熱媒供給源28から供給される熱媒流体を各ロール内熱媒流路30へ通流するため、各エンボスロール12のエンボス型面12aが同じ温度に設定されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示す第2実施形態のロールターレット機構13′は、基本的には第1実施形態と同じであるが、エンボスロール12毎にエンボス型面12aを異なる温度に設定可能である点で異なる。
【0031】
具体的に説明すると、第2実施形態のロールターレット機構13′は、ターレット回転軸19の内部に、個々のエンボスロール12のロール内熱媒流路30毎に連通する複数の軸内熱媒流路34(本実施形態では、2本の軸内熱媒流路34)をターレット回転軸19の軸方向に沿って延在する状態で備え、各軸内熱媒流路34には別個の熱媒供給源28をそれぞれ接続し、各熱媒供給源28から供給される熱媒流体の温度を互いに異ならせることができるように構成されている。さらに、ターレット回転軸19の駆動非接続軸側部19bには各軸内熱媒流路34の上流部34aをそれぞれ穿設して備え、軸中央部19c内には、各軸内熱媒流路34の中流部34bとなる配管をそれぞれ挿入し、駆動接続軸側部19aには各軸内熱媒流路34の下流部34cをそれぞれ穿設して備えている。そして、各上流部34aのうち各軸内熱媒流路34の入口となる上流開口を駆動非接続軸側部19bの軸端にそれぞれ開設し、各下流部34cのうち各軸内熱媒流路34の出口となる下流開口を駆動接続軸側部19aの軸端にそれぞれ開設している。なお、第2実施形態では、各軸内熱媒流路34の中流部34bと下流部34cとをターレット回転軸19の内部で連通しているが、ターレット回転軸19の外方に位置する連通配管(図示せず)を介して連通してもよい。
【0032】
さらに、各上流部34aの中流側端部と各エンボスロール12のロータリージョイント31の流体入口とを入口側配管38でそれぞれ連通し、各エンボスロール12のロータリージョイント31の流体出口と各中流部34bの上流側端部とを出口側配管39でそれぞれ連通している。そして、各軸内熱媒流路34の入口および出口(言い換えると、ターレット回転軸19の両軸端)にはスイベルジョイント45をそれぞれ接続し、入口側の各スイベルジョイント45には、熱媒流体を各熱媒供給源28から各エンボスロール12へ供給する供給配管41をそれぞれ連通し、出口側の各スイベルジョイント45には、熱媒流体を各エンボスロール12から各熱媒供給源28へ回収する回収配管42をそれぞれ連通している。なお、軸内熱媒流路34の入口および出口がターレット回転軸19の軸端の回転中心から外れて開設されているため、供給配管41および回収配管42をフレキシブル配管等で構成して、ターレット回転軸19の回転に伴ってスイベルジョイント45が移動することを許容するように構成されている。
【0033】
このような構成のロールターレット機構13′を備えた第2実施形態のエンボス加工装置1においては、熱媒供給源28毎に熱媒流体の温度設定を異ならせ、各熱媒供給源28から各供給配管41、各軸内熱媒流路34、各入口側配管38を介して各ロール内熱媒流路30へ熱媒流体を供給することにより、エンボスロール12毎にエンボス型面12aの温度設定を異ならせることができる。このことから、転圧位置PPに配置されたエンボスロール12でエンボス加工を行っている最中に、転圧位置PPから外れている他のエンボスロール12のエンボス型面12aの温度を次回のエンボス加工の条件に合わせて予め設定しておくことができる。これにより、エンボス加工における温度設定の切り換えが必要な場合であっても、前回のエンボス加工の終了から次回のエンボス加工の開始までの時間を短縮することができる。
【0034】
そして、転圧位置PPのエンボスロール12によるエンボス加工が終了したならば、ロールターレット機構13′をバックアップロール11から離し、制御装置25による駆動モータ24bの制御に基づいてロールターレット機構13′を回転駆動して、エンボス加工が終了したエンボスロール12を転圧位置PPから外すとともに、次回のエンボス加工用のエンボスロール12を転圧位置PPに移動する。さらに、ロールターレット機構13′をバックアップロール11へ近づけ、転圧位置PPのエンボスロール12をシート積層体へ転圧して次回のエンボス加工を開始する。
【0035】
さらに、異なる加工条件(温度設定やエンボス模様等の条件)で次々回のエンボス加工を行う場合には、転圧位置PPから待機位置WPに外れたエンボスロール12に対して、次々回の加工条件に合わせて熱媒流体の温度を調整したりエンボスロール12自体を着脱交換したりして次々回のエンボス加工の準備を行う。そして、転圧位置PPのエンボスロール12によるエンボス加工が終了したならば、ロールターレット機構13′をバックアップロール11から離し、制御装置25による駆動モータ24bの制御に基づいてロールターレット機構13′を回転駆動して、エンボス加工が終了したエンボスロール12を転圧位置PPから外すとともに、次々回のエンボス加工用のエンボスロール12を転圧位置PPに移動する。さらに、ロールターレット機構13′をバックアップロール11へ近づけ、転圧位置PPのエンボスロール12をシート積層体へ転圧して次々回のエンボス加工を開始する。
【0036】
このとき、制御装置25は、本発明におけるストッパー手段として機能して駆動モータ24bを制御し、前回のエンボス加工から次回のエンボス加工に切り換えたときの回転方向とは逆方向でロールターレット機構13′を回転駆動し、次回のエンボス加工用のエンボスロール12が2度のロールターレット機構13′の回転駆動を経てターレット回転軸19の周りに1回転することを阻止する。このようにしてロールターレット機構13′の回転動作を制御装置25(ストッパー手段)により規制するので、各軸内熱媒流路34と熱媒供給源28とを連通する構成(本実施形態においては、2本の供給配管41同士および2本の回収配管42同士)がロールターレット機構13′の回転動作に伴って複雑に捻じれる不都合を避けることができ、ロールターレット機構13′の回転動作やエンボスロール12内への熱媒流体の通流を滞りなく行うことができる。
【0037】
なお、上記第2実施形態では、ターレット回転軸19を1回転させない制御でロールターレット機構13′が回転駆動するため、各軸内熱媒流路34の入口および出口の管継手としてスイベルジョイント45を採用しているが、スイベルジョイント45の代わりにロータリージョイントを採用してもよい。また、ロールターレット機構13′の回転動作を規制するストッパー手段として、駆動モータ24bを制御する制御装置25を例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、エンボスロール12がターレット回転軸19の周りを1回転することを阻止できれば、どのような構成のストッパー手段を適用してもよい。例えば、ロールターレット機構13′の回転動作を機械的に規制するストッパー手段として、ロールブラケット21に当接する当接突起を適用してもよい。
【0038】
ところで、上記各実施形態においては、ロールターレット機構13,13′に2本のエンボスロール12を支持したが、本発明はこれに限定されない。例えば、3本以上のエンボスロール12をロールターレット機構13,13′に支持してもよい。また、軸内熱媒流路34を上流部34a,中流部34b,下流部34cに分割し、上流部34aと中流部34bとの間にロール内熱媒流路30を連通したが、本発明はこれに限定されない。要は、ターレット回転軸19内に備えられた軸内熱媒流路を介してロール内熱媒流路30に熱媒流体を通流することができれば、どのような構成の軸内熱媒流路を適用してもよい。
【0039】
さらに、上記各実施形態では、本発明のエンボス加工装置によりエンボス加工が施される被加工物として、長尺な3枚の樹脂製シート材を積層したものを挙げたが、本発明はこれに限定されない。要は、エンボスロールを転圧してエンボス加工が施される被加工物であれば、その形状や材質は問わない。例えば、単層で構成される長尺なシート材でもよいし、あるいは、無端ベルト等でエンボス加工装置内を搬送される枚葉材であってもよい。さらに、紙製、皮革製、薄膜金属製の被加工物にエンボス加工を施してもよい。また、バックアップロールの代わりに本発明のロールターレット機構を備え、2つのロールターレット機構の間に送出される被加工物の表裏両面にエンボス加工を行うことができるようにエンボス加工装置を構成してもよい。
【0040】
そして、前記した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 エンボス加工装置
2 送出部
3 積層部
3a 積層ロール
4 加熱部
4a ヒーター
5 エンボス加工部
11 バックアップロール
12 エンボスロール
12a エンボス型面
12b ロール軸部
13,13′ ロールターレット機構
16 架台
17 ターレットベース
18 ターレットブラケット
19 ターレット回転軸
19a 駆動接続軸側部
19b 駆動非接続軸側部
19c 軸中央部
20 軸受
21 ロールブラケット
24 ターレット駆動機構
24a ギア
24b 駆動モータ
25 制御装置
28 熱媒供給源
30 ロール内熱媒流路
31 ロータリージョイント
34 軸内熱媒流路
34a 上流部
34b 中流部
34c 下流部
37 連通配管
38 入口側配管
39 出口側配管
40 ロータリージョイント
41 供給配管
42 回収配管
45 スイベルジョイント
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2016年5月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置において、
前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、
前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、
前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路に連通する複数の軸内熱媒流路を備えたことを特徴とするエンボス加工装置である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項4に記載のものは、前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、
前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンボス加工装置である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路に連通する複数の軸内熱媒流路を備えたので、軸内熱媒流路の配置スペースをターレット回転軸の配置スペースとは別個に確保する必要がない。したがって、ロールターレット機構に支持されたエンボスロールの温度設定をコンパクトな構成で実現することができる。また、軸内熱媒流路を通る熱媒流体をターレット回転軸により保温することができる。これにより、軸内熱媒流路内における熱媒流体の熱損失を抑えることができる。さらに、エンボスロール毎に温度設定を異ならせることができる。したがって、ロールターレット機構のうち、一つのエンボスロールにてエンボス加工を行っている最中に、他のエンボスロールの温度を次回のエンボス加工の条件に合わせて予め設定しておくことができる。これにより、エンボス加工における温度設定の切り換えが必要な場合であっても、前回のエンボス加工の終了から次回のエンボス加工の開始までの時間を短縮することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止するので、各軸内熱媒流路と熱媒供給源とを連通する構成がロールターレット機構の回転動作に伴って複雑に捻じれる不都合を避けることができ、ロールターレット機構の回転動作やエンボスロール内への熱媒流体の通流を滞りなく行うことができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスロールを被加工物の表面に転圧してエンボス加工を行うエンボス加工装置において、
前記エンボスロールを複数本支持し、エンボスロールをターレット回転軸の周りに回動して被加工物に転圧可能な位置へ移動するロールターレット機構を備え、
前記各エンボスロールの内部には、熱媒流体が通流するロール内熱媒流路をそれぞれ備え、
前記ターレット回転軸の内部には、個々のエンボスロールのロール内熱媒流路に連通する複数の軸内熱媒流路を備えたことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
前記軸内熱媒流路は、ターレット回転軸の軸方向に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載のエンボス加工装置。
【請求項3】
前記軸内熱媒流路と、熱媒流体を供給する熱媒供給源とを、ターレット回転軸の軸端にて連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンボス加工装置。
【請求項4】
前記ロールターレット機構の回転動作を規制するストッパー手段を備え、
前記ストッパー手段は、エンボスロールがターレット回転軸の周りに1回転することを阻止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンボス加工装置。