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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-105522(P2017-105522A)
(43)【公開日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20170519BHJP
   F25D 3/08 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
   B65D81/18 B
   F25D3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-242544(P2015-242544)
(22)【出願日】2015年12月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100140464
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 和広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昇平
【テーマコード(参考)】
3E067
3L044
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB02
3E067AC01
3E067AC04
3E067AC12
3E067BA05A
3E067BA05B
3E067BA05C
3E067BB14A
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB17A
3E067BB17B
3E067BB17C
3E067BC07A
3E067EA32
3E067EB27
3E067EC08
3E067EC35
3E067EE28
3E067FA01
3E067FA04
3E067FC01
3E067GA02
3E067GD01
3L044AA04
3L044BA03
3L044CA11
3L044DC01
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】内容物が水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物とともに詰められた氷をより長時間に亘って残存させることができる保冷容器を提供する。
【解決手段】内容物FFを氷BIとともに収容する保冷容器1である。保冷容器1は、内容物FF及び氷BIが収容される収容部11と、氷BI及び氷BIが融解した水が貯留される水氷貯留部12と、水を排出する水抜き穴13aを有する収容部11の底部の排水部13と、水氷貯留部12と排水部13とを区画する隔壁30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を氷とともに収容する保冷容器であって、
前記内容物及び前記氷が収容される収容部と、前記氷及び前記氷が融解した水が貯留される水氷貯留部と、前記水を排出する水抜き穴を有する前記収容部の底部の排水部と、前記水氷貯留部と前記排水部とを区画する隔壁と、を備えることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
上部が開放された箱体と、該箱体の上部の開口部を閉塞する蓋体と、を備え、
前記箱体は、内部に前記収容部及び前記水氷貯留部を有し、底部に前記排水部を有し、
前記水氷貯留部は、前記箱体の前記開口部が開放された状態で、上部が開放されていることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記蓋体によって前記箱体の前記開口部が閉塞された状態で、前記収容部と前記水氷貯留部の上部とが連通することを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記水氷貯留部は、前記箱体の壁面に隣接して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項5】
複数の前記水氷貯留部を有することを特徴とする請求項4に記載の保冷容器。
【請求項6】
異なる高さの複数の隔壁を有することを特徴とする請求項5に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記隔壁は、前記箱体と一体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項8】
前記隔壁は、前記箱体に取り外し可能に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から魚箱等として用いられる発泡スチロール容器が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された発泡スチロール容器は、少なくとも底壁と側壁を備え、底壁又は側壁下部に水抜き穴を設け、該容器の水抜き穴開口部を薄壁により閉鎖して成形し、必要時に、該薄壁を破損して水抜き穴を開口可能にしたことを特徴としている。
【0003】
特許文献1によれば、輸送時等において保冷を望むときには、水抜き穴開口部は閉鎖状態として容器内部と外気との連通をなくし、外気により内部に詰めた氷が融けるのを防いで保冷効果を維持することができる。そして、水抜きが必要になったときには、薄壁を破損させて容器内部の溜まった水を排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3054360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された発泡スチロール容器は、薄壁を破損させて水抜き穴を開口させるまでは、容器内部に溜まった水を排出することができない。そのため、鮮魚等の内容物とともに氷を容器に詰めると、氷が融解して容器内部に水が溜まり、内容物が水に浸かる虞がある。例えば、フエフキダイのように、内容物である商品の種類によっては、水に浸かると商品価値が低下するものがある。
【0006】
また、容器内部に水が溜まるのを防止するために、予め薄壁を破損させて水抜き穴を開口させておくと、水抜き穴から容器内部へ温かい空気が流入して氷の融解が促進され、容器に詰められた氷がより短時間で消失してしまう。容器に詰められた氷が消失すると、内容物である商品の見栄えが悪くなるだけでなく、内容物の温度が上昇して商品価値が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、内容物が水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物とともに詰められた氷をより長時間に亘って残存させることができる保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明の保冷容器は、内容物を氷とともに収容する保冷容器であって、前記内容物及び前記氷が収容される収容部と、前記氷及び前記氷が融解した水が貯留される水氷貯留部と、前記水を排出する水抜き穴を有する前記収容部の底部の排水部と、前記水氷貯留部と前記排水部とを区画する隔壁と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の保冷容器は、容器内部の収容部には、氷とともに内容物が収容され、容器内部の水氷貯留部には、氷が収容される。収容部及び水氷貯留部に収容された氷は、時間の経過とともに融解して水になるが、収容部の氷が融けた水は、収容部の底部の排水部から水を排出する水抜き穴によって外部へ排出される。そのため、収容部では、水が貯留されず、氷だけが残存し、内容物が水に浸かるのを防止できる。
【0010】
一方、水氷貯留部の氷が融けた水は、残存する氷とともに水氷貯留部に貯留される。そのため、水氷貯留部では、氷と水が混在して貯留され、氷が概ね0℃の水に浸かった水氷の状態になる。そのため、収容部の水抜き穴から容器内部に温かい空気が侵入しても、容器内部を水氷によって効果的に冷却することができ、内容物の温度上昇を抑制することができる。
【0011】
また、水氷貯留部において、氷が融けた水を貯留することで、水を排出して氷だけを貯留した場合と比較して、水氷貯留部に貯留される冷媒としての水氷の比熱を大きくすることができる。したがって、内容物とともに詰められた氷を長時間に亘ってより多く残存させることができ、内容物の見栄えを向上させることができるだけでなく、内容物の温度上昇を抑制して商品価値を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の保冷容器は、上部が開放された箱体と、該箱体の上部の開口部を閉塞する蓋体と、を備えてもよい。この場合、前記箱体は、内部に前記収容部及び前記水氷貯留部を有し、底部に前記排水部を有し、前記水氷貯留部は、前記箱体の前記開口部が開放された状態で、上部が開放されていてもよい。これにより、箱体の上部の蓋体を外して、箱体の上部の開口部を開放した状態で、箱体の内部の収容部に内容物を配置し、収容部と水氷貯留部に氷を詰め、その後、箱体の開口部を蓋体で閉塞することができる。したがって、保冷容器の収容部に内容物と氷を収容し、水氷貯留部に氷を収容するのを容易にすることができる。
【0013】
また、本発明の保冷容器は、前記箱体の前記開口部が前記蓋体によって閉塞された状態で、前記収容部と前記水氷貯留部の上部とが連通してもよい。これにより、収容部の底部の排水部の水抜き穴から容器内部へ流入した温かい空気は、収容部の上部へ移動して水氷貯留部の上部へ移動する。また、水氷貯留部に貯留された水氷によって冷却された空気は、水氷貯留部の上部から収容部へ移動し、さらに収容部の底部へ移動する。したがって、水氷貯留部において冷却された空気によって収容部を効果的に冷却し、収容部の内容物の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の保冷容器において、前記水氷貯留部は、前記箱体の壁面に隣接して設けられていることが好ましい。これにより、箱体の壁面を介して容器内部へ侵入する熱を、氷のみの場合と比較して比熱の大きい水氷貯留部の水氷によって、より長時間に亘ってより多く吸収することができる。したがって、箱体の壁面を介して収容部へ到達する熱を、より長時間に亘って遮断し、収容部の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の保冷容器は、複数の前記水氷貯留部を有することができる。より具体的には、例えば、直方体の箱体の一対の長側面に沿って一対の水氷貯留部を配置したり、中央部に配置した収容部の周囲を囲むように多重の水氷貯留部を配置したり、矩形の箱体の四隅に水氷貯留部を配置したりすることができる。これにより、箱体の壁面を介して収容部へ到達する熱を、箱体のスペースや内容物の形状や大きさに応じて、より広い範囲でより適切に遮断することができる。
【0016】
また、本発明の保冷容器は、異なる高さの複数の隔壁を有することができる。これにより、例えば、内容物の形状や大きさに応じて隔壁の高さを異ならせ、収容部のスペースを増加させることができる。また、複数の水氷貯留部の容積を異ならせることができ、箱体の壁面を介して収容部へ到達する熱を、箱体の内部のスペースや内容物の形状や大きさに応じて、より適切に遮断することができる。
【0017】
また、本発明の保冷容器において、前記隔壁は、前記箱体と一体に設けられていてもよい。これにより、保冷容器から隔壁が脱落することが防止され、収容部と水氷貯留部との間の水の移動をより確実に規制することができる。
【0018】
また、本発明の保冷容器において、前記隔壁は、前記箱体に取り外し可能に設置されていてもよい。この場合、箱体の内部のスペースや内容物の大きさや形状に応じて柔軟に隔壁の位置や数を変更することができ、保冷容器を多用途に使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の保冷容器によれば、内容物が水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物とともに詰められた氷をより長時間に亘って残存させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る保冷容器の斜視図。
図2図1に示すII−II線に沿う保冷容器の断面図。
図3図1に示す保冷容器の箱体の平面図。
図4】本発明の実施形態2に係る保冷容器の断面図。
図5図4に示す保冷容器の箱体の平面図。
図6】本発明の実施形態3に係る保冷容器の箱体の平面図。
図7】本発明の実施形態4に係る保冷容器の斜視図。
図8図7に示す保冷容器の箱体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る保冷容器1の斜視図である。図2は、図1に示すII−II線に沿う保冷容器1の断面図である。図3は、図1に示す保冷容器1の箱体10の平面図である。
【0023】
本実施形態の保冷容器1は、例えば、鮮魚等の内容物FFを氷BIとともに収容する保冷容器1である。保冷容器1は、内容物FF及び氷BIが収容される収容部11と、氷BI及び氷BIが融解した水が貯留される水氷貯留部12と、氷BIが融解した水を排出する水抜き穴13aを有する収容部11の底部の排水部13と、水氷貯留部12と排水部13とを区画する隔壁30と、を備えることを特徴としている。
【0024】
より詳細には、本実施形態の保冷容器1は、上部が開放された箱体10と、該箱体10の上部の開口部10aを閉塞する蓋体20とを備えている。箱体10は、内部に収容部11及び水氷貯留部12を有し、底部に排水部13を有している。水氷貯留部12は、箱体10の開口部10aが開放された状態で、上部が開放され、箱体10の開口部10aから氷BIを収容できるようになっている。
【0025】
箱体10及び蓋体20の素材としては、例えば発泡樹脂を用いることができる。発泡樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。
【0026】
本実施形態の保冷容器1において、収容部11は、箱体10の内部の空間であり、隔壁30によって区画された排水部13の上方の空間だけでなく、水氷貯留部12の上方の空間を含んでいる。また、本実施形態の保冷容器1において、水氷貯留部12は、箱体10の内側の底面10b及び壁面10wと、隔壁30の側面31とによって画定され、概ね直方体の形状を有する箱体10の内部の空間である。
【0027】
本実施形態の保冷容器1は、隔壁30の高さ30hが箱体10の内側の底面10bから蓋体20の下面までの高さ10hよりも低くなっている。これにより、蓋体20の下面と隔壁30の上端部との間に間隙が形成され、蓋体20によって箱体10の開口部10aが閉塞された状態で、収容部11と水氷貯留部12の上部とが連通している。箱体10の内側の底面10bから隔壁30の上端までの高さ30hは、例えば、箱体10の内側の底面10bから蓋体20の下面までの高さ10hの30%から80%程度の高さにすることができる。
【0028】
なお、隔壁30の高さ30hは、箱体10の内側の底面10bから蓋体20の下面までの高さ10hと等しくてもよい。この場合、隔壁30の上端部が蓋体20の下面に接し、収容部11と水氷貯留部12とは、隔壁30によって隔離される。しかし、この場合でも、例えば、隔壁30の上部に貫通孔を設けることで、蓋体20によって箱体10の開口部10aが閉塞された状態で、収容部11と水氷貯留部12の上部とを連通させることができる。
【0029】
本実施形態の保冷容器1において、水氷貯留部12は、箱体10の壁面10wに隣接して設けられている。より具体的には、箱体10は、長側壁14と短側壁15とを有する直方体の形状を有し、長側壁14の壁面10wに間隔をあけて対向する隔壁30を有している。隔壁30は、箱体10の底壁16に概ね垂直に設けられ、長側壁14の壁面10wに沿って長側壁14と平行に一対の短側壁15の間に延在している。そして、隔壁30の側面31と長側壁14の壁面10wとの間に形成された水氷貯留部12は、長側壁14の壁面10wに沿って一対の短側壁15の間に延在し、長側壁14の壁面10wに隣接して設けられている。
【0030】
本実施形態の保冷容器1は、箱体10の一対の長側壁14の壁面10wに隣接する一対の水氷貯留部12を有している。このように、保冷容器1は、箱体10の内部のスペースと収容部11に収容される内容物FFの形状や大きさに応じて、複数の水氷貯留部12を有することができる。なお、水氷貯留部12は、複数に限定されず、単数であってもよい。
【0031】
また、本実施形態の保冷容器1において、収容部11の底部の排水部13は、箱体10の内側の底面10bの一部である。すなわち、排水部13は、一対の隔壁30によって区画された箱体10の内側の底面10bの一対の隔壁30の間の部分である。排水部13は、箱体10の底壁16に設けられた水抜き穴13aを有している。排水部13は、水抜き穴13aを介して、主に収容部11の氷BIが融けた水を箱体10の外部へ排出する。また、排水部13は、水氷貯留部12の上方の収容部11の氷BIが融けて水氷貯留部12に貯留された水が排水部13へ溢れた場合にも、その溢れた水を箱体10の外部へ水抜き穴13aを介して排出する。
【0032】
箱体10の底面10bにおける排水部13の面積S1と水氷貯留部12の面積S2との比S1:S2は、例えば、5:5から8:2までの間に設定することができる。排水部13における水抜き穴13aの位置、形状、大きさ、及び数等は、収容部11に収容された内容物FFが水に浸かるのを防止することができ、かつ、収容部11の温度を低温に維持することができるものであれば、特に限定されない。本実施形態の保冷容器1において、排水部13は、一方の短側壁15の近傍が他方の短側壁15の近傍よりも低くなるように傾斜し、最も低くなった部分に二つの水抜き穴13aを有している。
【0033】
また、本実施形態の保冷容器1において、隔壁30は、箱体10と一体に設けられている。すなわち、発泡樹脂製の箱体10を成形する際に、一対の隔壁30は、箱体10と一体成形されている。したがって、本実施形態の保冷容器1において、隔壁30は、箱体10及び蓋体20と同じ発泡樹脂製である。
【0034】
以下、本実施形態の保冷容器1の作用について説明する。
【0035】
本実施形態の保冷容器1は、前述のように、鮮魚等の内容物FFを氷BIとともに収容する容器である。本実施形態の保冷容器1は、内容物FF及び氷BIが収容される収容部11と、氷BI及び氷BIが融解した水が貯留される水氷貯留部12と、水を排出する水抜き穴13aを有する収容部11の底部の排水部13と、水氷貯留部12と排水部13とを区画する隔壁30と、を備えている。
【0036】
保冷容器1の内部に鮮魚等の内容物FFを氷BIとともに収容するには、まず、収容部11に鮮魚等の内容物FFを収容し、その上から収容部11と水氷貯留部12に氷BIを収容する。又は、収容部11と水氷貯留部12に氷BIを収容してから、収容部11に鮮魚等の内容物FFを収容し、さらにその上から氷BIを収容部11に収容する。このとき、収容部11に吸水シートを敷き、その上に鮮魚等の内容物FFを配置してもよい。
【0037】
ここで、本実施形態の保冷容器1は、上部が開放された箱体10と、該箱体10の上部の開口部10aを閉塞する蓋体20と、を備えている。そして、箱体10は、内部に収容部11及び水氷貯留部12を有し、底部に排水部13を有し、水氷貯留部12は、箱体10の開口部10aが開放された状態で、上部が開放されている。
【0038】
これにより、箱体10の上部の蓋体20を外して、箱体10の上部の開口部10aを開放した状態で、箱体10の内部の収容部11に内容物FFを配置し、収容部11と水氷貯留部12に氷BIを詰め、箱体10の開口部10aを蓋体20で閉塞することができる。したがって、保冷容器1の収容部11に鮮魚等の内容物FFとともに氷BIを収容し、水氷貯留部12に氷BIを収容するのを容易にすることができる。
【0039】
このように、保冷容器1の収容部11及び水氷貯留部12に収容された氷BIは、時間の経過とともに融解して水になるが、収容部11の氷BIが融けた水は、収容部11の底部の排水部13から水を排出する水抜き穴13aによって外部へ排出される。そのため、収容部11では、水が貯留されず、氷BIだけを残存させることができ、鮮魚等の内容物FFが水に浸かるのを防止できる。これにより、例えば、フエフキダイのように、水に浸かると商品価値が低下する内容物FFの商品価値が低下するのを防止できる。
【0040】
一方、水氷貯留部12の氷BIが融けた水は、残存する氷BIとともに水氷貯留部12に貯留される。そのため、水氷貯留部12では、氷BIと水が混在して貯留され、氷BIが概ね0℃の水に浸かった水氷の状態になる。そのため、収容部11の水抜き穴13aから保冷容器1の内部に温かい空気が侵入しても、保冷容器1の内部を水氷によって効果的に冷却することができ、内容物FFの温度上昇を抑制することができる。
【0041】
また、水氷貯留部12において氷BIが融けた水を貯留することで、水を排出して氷BIだけを貯留した場合と比較して、水氷貯留部12に貯留される冷媒としての水氷の比熱を大きくすることができる。したがって、保冷容器1の内部に内容物FFとともに詰められた氷BIを長時間に亘ってより多く残存させることができ、鮮魚等の内容物FFの見栄えを向上させることができるだけでなく、内容物FFの温度上昇を抑制して商品価値を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の保冷容器1は、箱体10の開口部10aが蓋体20によって閉塞された状態で、収容部11と水氷貯留部12の上部とが連通している。そのため、収容部11の底部の排水部13の水抜き穴13aから容器内部へ流入した温かい空気は、収容部11の上部へ移動し、収容部11から水氷貯留部12の上部へ移動する。また、水氷貯留部12に貯留された水氷によって冷却された空気は、水氷貯留部12の上部から収容部11へ移動し、さらに収容部11の底部へ移動する。したがって、水氷貯留部12において冷却された空気によって収容部11を効果的に冷却し、収容部11の内容物FFの温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態の保冷容器1において、水氷貯留部12は、箱体10の壁面10wに隣接して設けられている。そのため、箱体10の壁面10wを介して保冷容器1の内部へ侵入する熱を、氷BIのみの場合と比較して比熱の大きい水氷貯留部12の水氷によって、より長時間に亘ってより多く吸収することができる。したがって、箱体10の壁面10wを介して収容部11へ到達する熱を、より長時間に亘って遮断し、収容部11の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0044】
一般に、鮮魚は、頭から尾までの全長が、背から腹までの全幅よりも長い。そのため、鮮魚を直方体形状の箱体10の収容部11に収容するときには、例えば、鮮魚の頭と尾を短側壁15に向け、背と腹を長側壁14に向けて収容する。そのため、箱体10の長側壁14の壁面10wに隣接して水氷貯留部12を設けることで、箱体10の壁面10wのより広い面積に水氷貯留部12を設け、水氷貯留部12に貯留される水氷によって鮮魚の頭から尾までを効果的に保冷することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態の保冷容器1は、複数の水氷貯留部12を有している。これにより、箱体10の壁面10wを介して収容部11へ到達する熱を、箱体10のスペースや内容物FFの形状や大きさに応じて、より広い範囲でより適切に遮断することができる。例えば、鮮魚を直方体形状の箱体10の収容部11に収容するときに、一対の長側壁14に沿って一対の水氷貯留部12を設けることで、水氷貯留部12に貯留される水氷によって、鮮魚の頭から尾までを、腹と背の両側から効果的に保冷することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態の保冷容器1において、隔壁30は、箱体10と一体に設けられていている。これにより、保冷容器1から隔壁30が脱落することが防止され、収容部11と水氷貯留部12との間の水の移動をより確実に規制することができる。
【0047】
また、本実施形態の保冷容器1において、箱体10の底面10bにおける排水部13の面積S1と水氷貯留部12の面積S2との比S1:S2は、例えば、5:5から8:2までの間に設定することができる。これにより、内容物FFを収容するのに必要な収容部11の容積を十分に確保することができるだけでなく、従来よりも長時間にわたって氷を残存させることができる水氷貯留部12の容積を十分に確保することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の保冷容器1によれば、鮮魚等の内容物FFが水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物FFとともに詰められた氷BIをより長時間に亘って残存させることができる。したがって、鮮魚等の内容物FFの見栄えを向上させることができるだけでなく、内容物FFの温度上昇を抑制して商品価値を向上させることができる。
【0049】
[実施形態2]
次に、本発明の保冷容器の実施形態2について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、本発明の実施形態2に係る保冷容器1Aの箱体10Aの断面図である。図5は、図4に示す保冷容器1Aの箱体10Aの平面図である。なお、図4は、図5のIV−IV線に沿う保冷容器1Aの断面図である。
【0050】
本実施形態の保冷容器1Aは、高さの異なる複数の隔壁30を有し、複数の隔壁30が箱体10Aの底壁16に多重の環状に設けられ、最も内側の隔壁30によって区画された箱体10Aの内側の底面10bの一部が収容部11の底部の排水部13とされている点で、前述の実施形態1の保冷容器1と異なっている。本実施形態の保冷容器1Aのその他の点は、前述の実施形態1の保冷容器1と同様であるため、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施形態の保冷容器1Aは、高さの異なる複数の隔壁30によって区画された複数の水氷貯留部12を有している。隔壁30の高さは、収容部11の底部の排水部13に近いほど低くされ、箱体10Aの側壁14Aの壁面10wに近いほど高くされている。これにより、複数の水氷貯留部12は、箱体10Aの側壁14Aの壁面10wに近いほど容積が大きくなっている。
【0052】
収容部11は、箱体10Aの底面10bの中央部に位置する最内周の隔壁30の内側の排水部13の上方において、最も高さが高くなり、箱体10Aの側壁の壁面10wに隣接する最外周の水氷貯留部12及び隔壁30の上方において、最も高さが低くなっている。これにより、収容部11は、箱体10Aの中央部に比較的大きな空間を有している。
【0053】
本実施形態の保冷容器1Aによれば、前述の実施形態1の保冷容器1と同様に、収容部11の氷BIが融けた水は、収容部11の底部の排水部13から水を排出する水抜き穴13aによって外部へ排出されるか、又は水氷貯留部12に貯留される。したがって、収容部11に収容された鮮魚等の内容物FFが水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物FFとともに詰められた氷BIをより長時間に亘って残存させることができる。
【0054】
また、本実施形態の保冷容器1Aは、複数の水氷貯留部12が多重に設けられていることで、貯留される水氷の量を増加させることができる。それに加えて、内側の水氷貯留部12の水氷を外側の水氷貯留部12の水氷によって保冷し、内容物FFとともに詰められた氷BIをより長時間に亘って残存させることができる。
【0055】
また、本実施形態の保冷容器1Aは、高さの異なる複数の隔壁30を有することで、収容部11に収容される内容物FFの形状や大きさに対応させて、水氷貯留部12の上方に必要な大きさの収容部11を形成することができる。一般に、鮮魚は、背と腹の部分が薄く、背と腹の間の中間部が厚くなっている。したがって、例えば、鮮魚の形状に対応させて、箱体10Aの底面10bの中央部の隔壁30の高さを低くし、箱体10Aの底面10bの外縁部の隔壁30の高さを高くすることで、収容部11に内容物FFを収容するのに必要なスペースを確保しつつ、水氷貯留部12の容積を増加させることができる。
【0056】
[実施形態3]
次に、本発明の保冷容器の実施形態3について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施形態3に係る保冷容器1Bの箱体10Bの平面図である。なお、図6において、蓋体20の図示は省略している。
【0057】
本実施形態の保冷容器1Bは、直方体形状の箱体10Bの底面10bの角部に水氷貯留部12を有する点で、前述の実施形態1の保冷容器1と異なっている。本実施形態の保冷容器1Bのその他の点は、前述の実施形態1の保冷容器1と同様であるため、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態の保冷容器1Bによれば、前述の実施形態1の保冷容器1と同様に、収容部11の氷BIが融けた水は、収容部11の底部の排水部13から水を排出する水抜き穴13aによって外部へ排出されるか、又は水氷貯留部12に貯留される。したがって、鮮魚等の内容物FFが水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物FFとともに詰められた氷BIをより長時間に亘って残存させることができる。
【0059】
また、水氷貯留部12は、直方体形状の箱体10Bの内部でデッドスペースになりやすい角部に配置されている。したがって、箱体10Bの内部の空間を有効利用して、水氷貯留部12の容積を必要以上に減少させることなく、排水部13を広く使用することができ、収容部11の底部の排水部13及びその上方に鮮魚等の内容物FFを配置しやすくすることができる。
【0060】
[実施形態4]
次に、本発明の保冷容器の実施形態4について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明の実施形態4に係る保冷容器1Cの斜視図である。図8は、図7に示す保冷容器1Cの箱体10Cの平面図である。
【0061】
本実施形態の保冷容器1Cは、水氷貯留部12と収容部11の底部の排水部13とを区画する隔壁30が箱体10Cに取り外し可能に設置されている点で、前述の実施形態1の保冷容器1と異なっている。本実施形態の保冷容器1Cのその他の点は、前述の実施形態1の保冷容器1と同様であるため、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態の保冷容器1Cは、水氷貯留部12と収容部11の底部の排水部13とを区画する隔壁30が箱体10Cに取り外し可能に設置されている。より具体的には、箱体10Cの長側壁14及び底壁16の内側の壁面10wに溝17が設けられ、この溝17に矩形板状の隔壁30の下端部と両側端部が嵌合されている。この隔壁30によって、箱体10Cは、氷BI及び氷BIが融解した水が貯留される水氷貯留部12と、水抜き穴13aを有する収容部11の底部の排水部13とに区画されている。
【0063】
また、箱体10Cは、内側の底面10bに配置された複数の矩形箱状の内箱40を有している。内箱40は、底壁41と側壁42を有し、上部が開放された有底角筒状に形成されている。内箱40の底部は、箱体10Cの底面10bに設けられた凹部に嵌合させてもよいし、単に箱体10Cの内側の底面10bに接しているだけでもよい。内箱40の側壁42は、水氷貯留部12と排水部13とを区画する隔壁であり、隔壁である側壁42の内側は、水氷貯留部12である。なお、内箱40は、発泡樹脂製であってもよいし、ソリッド樹脂製、すなわち非発泡樹脂製であってもよい。
【0064】
本実施形態の保冷容器1Cによれば、前述の実施形態1の保冷容器1と同様に、収容部11の氷BIが融けた水は、収容部11の底部の排水部13から水を排出する水抜き穴13aによって外部へ排出されるか、又は水氷貯留部12に貯留される。したがって、鮮魚等の内容物FFが水に浸かるのを防止することができ、かつ内容物FFとともに詰められた氷BIをより長時間に亘って残存させることができる。
【0065】
さらに、隔壁30及び隔壁である側壁42を備える内箱40が箱体10Cに取り外し可能に設置されていることで、箱体10Cの内部のスペースや内容物FFの大きさや形状に応じて柔軟に隔壁30の位置や数を変更することができる。したがって、保冷容器1Cを多用途に使用することができる。
【0066】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0067】
以下、本発明の保冷容器を使用した実施例と、従来の保冷容器を使用した比較例について説明する。
【0068】
[実施例]
まず、前述の実施形態1で説明した保冷容器と同一の構成を有する実施例の保冷容器を用意した。保冷容器は、厚さが20mmの発泡樹脂製であり、外寸は550mm×350mm×140mmであった。箱体の底面における排水部の面積S1と水氷貯留部の面積S2との比S1:S2は、6:4であった。また、排水部には、直径15mmの円形の水抜き穴が4つ設けられた。
【0069】
実施例の保冷容器の内部の収容部と水氷貯留部に合計10kgの氷を収容し、箱体の開口部を蓋体によって閉塞し、保冷容器の外部の環境温度を30℃に設定し、10時間後の氷の重量を測定したところ、1.4kgの氷が残存していた。
【0070】
[比較例]
次に、底部に直径15mmの円形の水抜き穴が4つ設けられ、水氷貯留部を有しない比較例の保冷容器を用意した。比較例の保冷容器は、実施例の保冷容器と同様に、厚さが20mmの発泡樹脂製であり、外寸は550mm×350mm×140mmであった。
【0071】
比較例の保冷容器の内部に10kgの氷を収容し、箱体の開口部を蓋体によって閉塞し、保冷容器の外部の環境温度を30℃に設定し、10時間後の氷の重量を測定したところ、0.7kgの氷が残存していた。
【0072】
以上の結果から、収容部と水氷貯留部と排水部と隔壁とを備える実施例の保冷容器は、水氷貯留部及び隔壁を有しない比較例の保冷容器と比較して、容器内部に詰められた氷をより長時間に亘って残存させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1,1A−1C 保冷容器
10,10A−10C 箱体
10a 開口部
10w 壁面
11 収容部
12 水氷貯留部
13a 水抜き穴
13 排水部
20 蓋体
30 隔壁
30h 高さ
42 側壁(隔壁)
BI 氷
FF 内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8