【課題】取り扱いが簡便で、酸性物質と前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質とを含有する発泡性皮膚外用剤において、発泡性皮膚外用剤の製造時や保管時に予期せぬ炭酸ガスの発生という問題を生じることがない、安定性、耐久性に優れた発泡性皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】一剤型、又は、二剤以上の多剤型の発泡性皮膚外用剤であって、いずれか同一剤内に少なくとも酸性物質と前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質とを含有し、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が互いに物理的に接触しないように配合すること、もしくは、前記同一剤内に水分を含有しないようにすることを特徴とする。
一剤型、又は、二剤以上の多剤型の発泡性皮膚外用剤であって、いずれか同一剤内に少なくとも酸性物質と前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質とを含有し、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が互いに接触しないように共存することを特徴とする発泡性皮膚外用剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様は、一剤型以上の発泡性皮膚外用剤であって、いずれか同一剤内に少なくとも酸性物質と前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質とが互いに接触しないように配合されているか、もしくは、前記同一剤内に水分を含まないことを特徴とする。本発明の発泡性皮膚外用剤全体としての剤形は一剤型であっても、二剤型であっても、それ以上の多剤型であっても構わない。
【0014】
前記同一剤内に前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とが互いに接触しないように配合すること、もしくは、前記同一剤内に水分を含まないようにすることにより、発泡性皮膚外用剤を一剤型や二剤型以上にすることができる。取り扱いの容易性の点からは、一剤型とすることが特に好ましい。
【0015】
以下、本発明の発泡性皮膚外用剤の各構成成分及び外用剤の製造方法について説明する。
【0016】
1.酸性物質
本発明に用いる酸性物質としては、有機酸、無機酸のいずれでもよく、これらの1種又は2種以上が用いられる。また、これらは、固体状でも気体状でも液状でもかまわず、特に限定はされないが、炭酸ガスの反応が速やかに起こりやすくなり、炭酸ガスの発生を量の調整により制御しやすくなるという点で、固体状のものを採用することが好ましい。
【0017】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸等があげられる。なかでも、安全性、水への溶解性の観点から、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸が好ましい。
【0018】
2.炭酸ガス発生物質
本発明に用いる酸と反応して二酸化炭素を発生する炭酸ガス発生物質は、さまざまなものが特に限定されることなく使用できる。前記炭酸ガス発生物質として、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、等の炭酸塩、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水酸化マグネシウム等の炭酸水素塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうちでも、炭酸水素塩が好ましく使用でき、程よい発泡力を実現することができる点で、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。また、これらは、固体状でも液状でもかまわず、特に限定はされないが、炭酸ガスの反応が速やかに起こりやすくなり、炭酸ガスの発生を量の調整により制御しやすくなるという点で、固体状のものを採用することが好ましい。
【0019】
前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質は、単一の粉末あるいは顆粒状物質であっても良いし、賦形剤、顆粒化剤等の他成分との混合物からなる粉末あるいは顆粒であっても良く、粉状のものなら何でも良い。
【0020】
3.配合物質
上記粉末あるいは顆粒に含有できるその他の成分としては、例えば、乳糖、粉糖、澱粉、キシリトール、D−ソルビトール、ブドウ糖、D−マンニトール、果糖、蔗糖、白糖、尿素等の粉末を、特に制限なく、単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
ここで、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質とその他成分との混合物を造粒することにより、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質の顆粒を得る場合、その他成分(ただし、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質を被覆するコート層は含まない。)の含有量としては特に制限はないが、上記顆粒中において80質量%未満とすることが好ましい。その他成分が80質量%を超える含有量で存在する場合、発泡性が低くなるため好ましくない。
【0022】
4.造粒方法
上記粉末あるいは顆粒の製造方法は、本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や湿式破砕造粒法、流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法等の常法に従い製造できる。
【0023】
例えば、マトリックス基剤として、顆粒化剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点顆粒化剤に前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。
【0024】
また、例えば、流動層造粒機に上記材料を投入し、数分間気流で混合し、これに、水を噴霧することにより造粒してもよい。
【0025】
マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合は、ビーカー等の容器中で顆粒化剤を水又はエタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、これに前記炭酸ガス発生物質を溶解又は分散させて十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し、粒の大きさを揃えるために篩過した後、顆粒とする。
【0026】
前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質の形状としては、例えば、不規則な形状、平面な形状、多面体形状、球状、しずく状、繊維状、円柱状、微粉状等が特に制限なく採用できる。また、その粒径としては、幅広い範囲のものが、特に制限なく使用できる。特に、取り扱いのしやすさ、粘性組成物との混合のしやすさの点から、粒径分布が1,000μm以下程度のものがより好ましい。本発明における上記粒径分布は、通常のレーザー回折/散乱法によって求めることができる。
【0027】
5.酸性物質と炭酸ガス発生物質の同一剤内共存化手段
本発明の態様は、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とを同一剤内に含有し、前記同一剤内において前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が互いに物理的に接触しないように配合され、共存するか、もしくは、前記同一剤内に水分を含まないことを要すが、その共存化手段は特に限定されること無く、広く適用が可能である。
【0028】
前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が互いに物理的に接触しないように配合する場合、例えば、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とのいずれか一方又は両方に、これを包むコート層を設けてもよいし、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とのいずれか一方又は両方をカプセル化してもよい。また、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質の間に、これらが直接接しないように前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質を含有しない層を挟み、圧縮成形して固体状としてもよい。
【0029】
また、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とを同一剤内に含有していても、同一剤内に水分が含まれないように調整した場合には、予期せぬ炭酸ガスの発生という問題を防ぐことができる。例えば、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質とを含む同一剤内に含まれる成分として、粉末、オイル、非水溶剤等を使用したり、その保存を透湿性のない密閉容器中で行うことで実現可能である。また、保存の際に、密閉容器内の気体中に水分を含まないように処理(例えば、真空処理や不活性ガスで充填)したり、乾燥剤等の使用を行うことも好ましい。
【0030】
以下に、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質の同一剤内への共存化手段について具体的に述べるが、これらに限定されない。
【0031】
(1)第一の同一剤内共存化手段
まず、第一の前記同一剤内共存化手段について詳述する。すなわち、「酸性物質と炭酸ガス発生物質が互いに物理的に接触しないように配合し、共存させる」方法である。
【0032】
(1−1)コート層形成
本発明において用いられる前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質は上記したものなら特に限定なくそのまま使用できるが、その少なくとも一方においてコート層を有すものとする。コート層を設けることにより、同一剤内に前記酸性物質、前記炭酸ガス発生物質及びその他成分を共存させても、その製造時や保管時に予期せぬ炭酸ガス発生の恐れがないので、安定性、耐久性の点から好ましい。
【0033】
図1にコート層の形成態様を概念的に示す。図中符号2で示すコート層は、符号1で示す酸性物質又は炭酸ガス発生物質の表面を全部(A参照)あるいは一部(B参照)覆うように形成される。Aに示す態様では、酸性物質又は炭酸ガス発生物質1の表面全体がコート層2により被覆されるため、酸性物質と炭酸ガス発生物質との物理的接触を、理論上、完全に排除できる。
【0034】
コート層2は、酸性物質と炭酸ガス発生物質との物理的接触を抑制できる限りにおいて、Bに示すように、酸性物質又は炭酸ガス発生物質1の表面の一部のみを被覆するものであってもよい。この態様では、酸性物質又は炭酸ガス発生物質1の表面にコート層2で覆われていない部分(露出部分)が存在することとなる。このため、発泡性皮膚外用剤の使用の際に水と混合すると、水が酸性物質又は炭酸ガス発生物質1の露出部分に接触し、速やかに酸性物質又は炭酸ガス発生物質1を溶解させるため、短時間で十分な発泡を得ることができる。
【0035】
上記コート層を構成するに好ましい被覆剤としては、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質と反応性が低いものであれば特に限定することなく使用することができる。被覆剤には、糖質、水溶性高分子、有機酸塩、脂肪酸類、重合体、加熱によって一定以上の温度で溶解する油脂及び炭化水素ワックスからなる群より選ばれるいずれか一つ以上を用いることができる。これらの中でも、糖質、水溶性高分子、有機酸塩及び油脂が好ましい。
【0036】
糖質としては、例えば、乳糖(ラクトース)、蔗糖(スクロース)及びマルトース(麦芽糖)、トレハロースなどの二糖類;三糖以上の少糖類あるいはオリゴ糖類;白糖;マンニトール、ソルビトール及びキシリトールなどの糖アルコールが挙げられる。
また、水溶性高分子としては、例えば、でんぷん、セルロースガム等のセルロース誘導体、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン及びデキストリンなどが挙げられる。セルロース誘導体としては、セルロースガム(カルボキシメチルセルロース)の他、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
これらの中でも、糖質では乳糖、白糖、トレハロース及びマンニトールが、水溶性高分子ではでんぷん、セルロースガム、キサンタンガム及びデキストリンが好ましい。
【0037】
有機酸塩としては、例えば、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸及びピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸塩が好ましい。
【0038】
脂肪酸類としては、例えば、炭素数12〜22の脂肪酸が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0039】
重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドン等のN−ビニル−2−ピロリドンの重合物やビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体類などが挙げられる。ポリエチレングリコール等のエチレングリコールの重合物は安定性や耐久性の点から好ましくない。
【0040】
油脂類としては、例えば、ナタネ油、ヒマシ油、ヤシ油及び牛脂などが挙げられ、これらに水素添加を行った硬化油を用いることもできる。また、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール及びステアリルアルコールなどの高級アルコールやミツロウ及びカルナウバロウなどのロウ類を用いることもできる。
【0041】
炭化水素ワックスとしては、例えば、ワセリン、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。剤形としては固体状のものがよりコーティングに適している。
【0042】
これらの被覆剤は単独でも使用することができるが、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、クエン酸等の酸性物質を被覆する場合には、クエン酸カルシウム等の有機酸塩を採用することが好ましい。
【0043】
酸性物質及び/又は炭酸ガス発生物質に対する被覆剤の使用量は、酸性物質又は炭酸ガス発生物質に対して、1〜100%(w/w)(酸性物質又は炭酸ガス発生物質:被覆剤=100:1〜100:100)、好ましくは1〜67%(100:1〜60:40)、さらに好ましくは1〜43%(100:1〜70:30)、1〜25%(100:1〜80:20)程度とされる。
【0044】
コート層の被覆法は、粒子の被覆に通常用いられるものであれば、いずれの方法で行ってもよい。例えば、噴霧造粒や転動造粒等により、造粒と同時に被覆してもよく、粉末又は造粒物に油脂コーティング、造粒コーティング、輸送層法、パンコーティング、転動コーティング、流動コーティング又はドライコーティング等の方法を用いて被覆してもよい。コーティングの際、過度な熱や、物理的な力が加わったりすると、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質が破壊されると共に、生成した被膜が壊れ、前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質の表面全体に上記脂質粉状体を均一にコーティングすることが難しくなるばかりか、表面に前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質が漏出し吸湿による固化、あるいは配合時に他成分へ及ぼす悪影響の原因ともなるので、コーティング条件はコート層及びコーティング対象が破壊されない程度のものとする必要がある。
【0045】
図1Aに示した態様のコート層の場合、例えば、酸性物質または炭酸ガス発生物質を、一定条件下で溶解させた被覆剤(油脂等)中に加え、均一に混合した後に冷却する。これにより、酸性物質または炭酸ガス発生物質の表面全体を被覆するコート層を形成できる。
【0046】
また、
図1Bに示した態様のコート層の場合、例えば、酸性物質または炭酸ガス発生物質を湿らせ、被覆剤(糖質、水溶性高分子、有機酸塩、油脂等)を噴霧して付着させた後、乾燥する。これにより、酸性物質または炭酸ガス発生物質の表面を部分的に被覆するコート層を形成できる。
【0047】
コート層は、製造時や保管時には、酸性物質と炭酸ガス発生物質が互いに物理的に接触しないようにして予期せぬ炭酸ガス発生を防止する一方、使用時(水分を含む液体との混合時)には、酸性物質と炭酸ガス発生物質とが適度に反応し所望の量の炭酸ガスを発生させるものである必要がある。そのため、油脂等の水に溶解しない被覆剤を用いる場合は、
図1Aに示した態様のコート層が好ましい。水溶性の被覆剤を用いる場合には、
図1A、Bに示したいずれの態様のコート層も採用できる。
【0048】
(1−2)カプセル化
本発明の酸性物質及び/又は炭酸ガス発生物質をカプセル化する方法は、特に限定されること無く公知の方法を採用することができる。
【0049】
カプセル化の方法としては、公知の方法が特に限定されること無く適用することができ、カプセル化の材料としては、ゼラチン、でんぷん、アラビアゴム、メチルセルロース、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、シリコーン樹脂、固形ワックス、ポリエチレン、脂肪酸、高級アルコール等、またリポソーム等の界面活性剤の多重層を形成したもの等が含まれるが、これらに限定することなく広く用いることができる。例えば、カプセルの基本構造が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンから選択される一種以上のモノマーから形成されるホモポリマー又はコポリマーからなる、もしくは前記モノマーとアクリル酸、メタクリル酸、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートから選択されるモノマーとから形成されるコポリマーからなる樹脂カプセルとすることも好ましい。この様なマイクロカプセルは、内容物とカプセルの外殻を構成するポリマーの構成モノマーとを水等の反応溶媒中に乳化させて、これにアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を加えて、乳化重合を行えばよい。かかる乳化に用いる界面活性成分としては、例えば、「ラポナイトXLG」の名称で販売されているヘクスライト等が好適に例示できる。生じたマイクロカプセルを遠心分離等の手段で分離し、所望により、洗浄することにより、本発明のマイクロカプセルを製造することが出来る。
【0050】
(1−3)固体化
本発明においては、前記酸性物質を含む第一層と前記炭酸ガス発生物質を含む第二層の間にこれらが直接接しないように、前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質以外の物質(例えば、賦形剤、増粘剤等)からなる第三層を挟み、圧縮成形して固体化することも、有用な方法のひとつである。前記固体化された剤形としては、錠剤状、球状、板状等、固体であればどのような剤形でも構わない。ここで、用いる前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質は、そのまま使用してもよいし、第一層又は第二層いずれか一方以上に、上記の方法でコート層を設けた前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質や、カプセル化した前記酸性物質又は前記炭酸ガス発生物質を使用してもよい。固体化の方法は、公知の方法が特に限定されること無く適用することができる。
【0051】
上記第一層及び第二層に含まれる前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質は、そのまま使用してもよいし、それ以外に賦形剤、増粘剤等を混合して使用してもよい。第一層、第二層及び第三層に用いられる賦形剤、増粘剤等としては、上記顆粒剤の説明において記載したものを特に限定無く使用することができる。
【0052】
(1−4)第一の同一剤内共存化手段のための補助手段
本発明に係る発泡性皮膚外用剤は、上述の酸性物質及び炭酸ガス発生物質に加えて、多糖類、金属石けん等を含有することが好ましい。少なくとも一方がコート化、カプセル化あるいは固体化された酸性物質及び炭酸ガス発生物質に多糖類、金属石けん等を添加することで、予期せぬ炭酸ガスの発生を防止する効果を高めることができる。多糖類等の添加量は、酸性物質及び炭酸ガス発生物質が配合された同一剤全体に対して例えば1〜20%(w/w)程度とされ、好ましくは5〜10%(w/w)程度とされる。なお、添加される多糖類等は固体状であればよく、例えば粉末状、顆粒状であってよい。
【0053】
多糖類及びその誘導体としては、例えば、デキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアガム、ヒドロキシプロピルグアガム、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、カチオン化グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、トラガカントガム、ペクチン、グルコマンナン、シゾフィラン、カラギーナン、アルギン酸、寒天、アガロース、でんぷん、キサンタンガム、デキストラン、カードラン、プルラン、イヌリン等が挙げられる。これらの中でもデキストリン及びでんぷんが好ましい。
【0054】
金属石けんとしては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム等のカルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム等のマグネシウム塩などが挙げられる。これらの中でもステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0055】
(1−5)発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤
本発明では、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が配合され、少なくともその一方がコート層を有すもの、少なくともその一方がカプセル化されたもの、前記酸性物質を含む第一層と前記炭酸ガス発生物質を含む第二層の間に第三層を形成し固体化したものを、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤として供給してもよい。この発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤は、多糖類、金属石けん等を含むことが好ましい。
【0056】
(2)第二の同一剤内共存化手段
次に、第二の前記同一剤内共存化手段について詳述する。すなわち、「同一剤内に水分を含まない」方法である。前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質を含有する同一剤内には、少なくとも両者の反応を促進する水分を含有しないことが好ましい。
【0057】
本発明において、発泡性皮膚外用剤内の水分とは、液状又は気体状のものに加え、発泡性皮膚外用剤に配合するすべての成分中から経時的変化により放出される水分をも含む。同一剤内にこれら水分を含有しないことにより、仮に前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が直接接したとしても、予期せぬ炭酸ガスの発生という問題を防ぐことができる。
【0058】
そのため、前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質を含有する剤内に含まれるその他成分としては、水分が含まれないように適宜選択する必要がある。更に、環境中からの発泡性皮膚外用剤中への水分の浸入を防ぐことや、含まれる成分中から経時的に放出される水分を除去することにより、前記剤内に水分が含有されない状態を維持することが重要である。
【0059】
6.発泡性皮膚外用剤
本発明の発泡性皮膚外用剤は、前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質に加え、有効成分、増粘剤、pH調整剤、油脂、香料、着色剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、アルコール、多価アルコール、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、無機塩、滑沢剤、溶剤等の、通常皮膚外用剤に使用される成分の一種以上と共に混合し、一剤型の発泡性皮膚外用剤とすることができる。一剤型の発泡性皮膚外用剤を作成する際に、前記発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を使用することもできる。
【0060】
また、少なくとも前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質を含有する第一剤と、これとは別に、少なくとも水を含有する第二剤とからなる、二剤型の発泡性皮膚外用剤とすることも可能である。このときにも、第一剤を作成する際に、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を使用することもできる。
【0061】
二剤型発泡性皮膚外用剤とする場合、有効成分、増粘剤、pH調整剤、油脂、香料、着色剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、アルコール、多価アルコール、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、無機塩、滑沢剤、溶剤等から選択される一種以上の成分を、上記第一剤あるいは第二剤中に混合することができる。
【0062】
前記酸性物質及び前記炭酸ガス発生物質を含有する同一剤内に添加できるものとして、液体では非水溶液を使用することが好ましく、例えば、炭化水素油、油脂、エステル油、シリコーン油等の液状オイル、プロピレングリコール等の多価アルコール、精油、香料、グリコールエーテル類等の非水溶剤、非イオン性界面活性剤等が例示できる。一方、固体としては、乳糖、オリゴ糖、でんぷん等の賦形剤、乾燥剤等を例示することができる。更に、乾燥剤としては、塩化カルシウム、過塩素酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム等の化学的乾燥剤、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト等の物理的乾燥剤を挙げることができる。
【0063】
本発明の発泡性皮膚外用剤は、上記二剤型発泡性皮膚外用剤の態様を適宜変更して、三剤型以上の多剤型にすることも可能である。一方、本発明の発泡性皮膚外用剤を一剤型とすることは、包装等を簡便化することができるため、製造コストを削減するうえで好ましい。
【0064】
以下、本発明の上記発泡性皮膚外用剤に含有される、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質以外に使用可能な成分の代表的なものについて更に説明する。
【0065】
本発明に使用される有効成分としては、特に限定されることなく、通常、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等に用いられる薬剤や植物を目的に応じ使用することができる。代表的なものとして、例えば、グリチルリチン酸又はその誘導体、胎盤抽出物等の美白剤、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の保湿成分、甘草等の植物成分等が挙げられる。なお、植物成分としては、その全草、葉(葉身、葉柄等)、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、茎、根茎、根、塊根等を、そのまま、切断、破砕、粉砕、搾取して用いるか、又はこれら処理されたものを乾燥もしくは粉末化して用いることができる。
【0066】
本発明に使用される増粘剤としては、化粧品、外用医薬品、医薬部外品分野において用いられ得る水溶性成分であれば特に限定されるものでなく、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド/ポリアクリルアミドコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする親水性合成高分子や、キサンタンガム、サクシノグリカン、グアガム、ローカストビーンガムをはじめとする親水性天然高分子のほか、ラポナイト、ベントナイト、スメクタイト等の親水性粘土鉱物等の親水性増粘性化合物が例示される。なかでも、皮膚外用剤に含まれる水分との相互作用の大きい親水性増粘剤を用いることが好ましい。これに対し、化粧料等で用いられる通常の増粘剤を用いた場合は、前記酸性物質を含有させた場合に粘度が低下してしまい垂れ落ちの原因となることもある。
【0067】
一剤型発泡性皮膚外用剤の場合、水分を含む液体と一剤型発泡性皮膚外用剤を混合することで発泡を生じさせるのに対し、二剤型発泡性皮膚外用剤の場合、二剤を混合することにより発泡を始めることができる。本願発明に使用される前記水分を含む液体としては、通常、化粧品、医薬品等に用いられる水、一般家庭で使用する水の他、水分を含む液体であれば、特に制限なくあらゆる液体を使用することができる。例えば、水道水、蒸留水、膜濾過水、イオン交換水、海洋深層水の他、日本酒、ワイン等の酒類、豆乳、飲むヨーグルト、アセロラジュース、スポーツ飲料、炭酸水等の飲料、米のとぎ汁等が挙げられる。これらは、単独で使用することも、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0068】
使用する水分を含む液体の量は、特に限定されることなく広い範囲で使用することが可能であるが、皮膚外用剤に対し重量で1〜5倍量で加えることが好ましく、2〜4倍量加えることが一層好ましい。1倍量を超える液体を加えることにより、迅速に皮膚外用剤を溶解することができ、又、十分な量の炭酸ガスを発生させることができる。一方、液体を5倍量以内で加えることにより、皮膚外用剤の粘度低下による垂れ落ちを防止することができる。
【0069】
使用する水分を含む液体の温度は、特に限定されることなく広い範囲が使用できるが、予め冷却して使用することが、一剤型皮膚外用剤に含まれる有効成分の働きが高くなるため特に好ましい。使用できる温度範囲は、塗布時の使用感や使用者の利便性の観点から、室温程度の水や水道水を使用するのが好ましい。
【0070】
7.発泡性皮膚外用剤の使用形態
本発明の一剤型発泡性皮膚外用剤の場合は、使用に際し、手のひらの上あるいは容器内で水分を含む液体と混合することにより発泡を生じさせる。また、二剤型発泡性皮膚外用剤の場合は、使用に際し、手のひらの上あるいは容器内で、二剤を混合することにより発泡を生じさせる。
【0071】
発泡性皮膚外用剤を保存する方法は、一剤型発泡性皮膚外用剤の場合も、二剤型発泡性皮膚外用剤の場合も、水分を遮断して保存されていれば特に制限されない。そのため、これらは保存容器内に、それぞれ密封状態で保存するのが好ましい。使用される保存容器の形状は、目的に応じて適宜選択でき、カップ状、チューブ状、バッグ状、瓶状、スティック状、ポンプ状、ジャー状、缶詰状等が挙げられる。また、保存容器を構成する材料は、例えば、プラスチック、ガラス、アルミニウム等の金属、紙、各種ポリマー等を単独あるいは2種以上用いることができ、これらに限定されることなく広く使用できる。
【0072】
容器の具体例としては、密閉性、内容物の保存安定性、製造コスト等の点で、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミスティック、アルミバッグ等の保存容器、チャック付きスタンドパウチ、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルム等で蓋をヒートシールしたポリエチレンテレフタレート製の保存容器等が好ましい。
【0073】
更に、水分を遮断するために、使用する密閉容器内を真空にしたり、乾燥した窒素等を充填したりすることが好ましい。
【0074】
8.発泡性皮膚外用剤の用途
本発明の発泡性皮膚外用剤は、皮膚血流量の増加を促すものであり、美白、肌質改善、そばかす改善、肌の若返り、肌の引き締め、部分痩せを目的とした、化粧品、乳液、クリーム、パック剤、ピーリング剤等の化粧品だけでなく、毛髪用、洗浄剤、浴用剤等の医薬部外品、薬品等の医薬品のいずれにも好適に使用することができる。
【実施例】
【0075】
1.安定性評価試験I
<実施例1>
酸性物質としてコート層を形成したクエン酸の粉末0.2g(2質量部)、炭酸ガス発生物質として炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。クエン酸粉末へのコート層形成は、クエン酸粉末0.19g(95質量部)を湿らせ、これにクエン酸カルシウム0.01g(5質量部)を噴霧して付着させた後、乾燥することによって行った。
【0076】
コート層を形成したクエン酸粉末と、炭酸水素ナトリウム粉末を、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルムバッグに収容し、密封した。40℃、50℃又は60℃で、17〜27日間保管し、保管期間中、バッグの膨化の有無を指標として炭酸ガスの発生の有無を観察した。
【0077】
<実施例2>
実施例1の発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、1%w/wデキストリン粉末を添加した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0078】
<実施例3〜6>
発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤へのデキストリン添加量を2.5,5,7.5,10%w/wとした以外は実施例2と同様にして評価を行った。
【0079】
<比較例1>
クエン酸の粉末0.19g(2質量部)、炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(8質量部)を、コート層を形成せずにアルミフィルムバッグに収容し、密封した。実施例1と同様にして炭酸ガスの発生の有無を観察した。
【0080】
結果を「表1」に示す。表中、「なし」は、保管期間(17〜27日)中、炭酸ガスの発生がみられなかったことを示す。また、「あり」は、炭酸ガスが発生したことを示し、括弧内の数字は、発泡を認めた保管日数を表す。
【0081】
【表1】
【0082】
コート層を形成していない比較例1では、40℃、50℃、60℃のいずれの保管温度においても1日後に炭酸ガスの発生が確認された。一方、クエン酸の粉末にクエン酸カルシウムによるコート層を形成した実施例1では、40℃の保管条件では観察を行った全期間で炭酸ガスの発生は認められず、50℃及び60℃の保管条件でも炭酸ガスの発生はそれぞれ7日後、3日後となり、比較例1に対して有意に遅延できた。この結果から、コート層形成により、保管時における予期せぬ炭酸ガスの発生を防止できることが示された。
【0083】
発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、さらにデキストリンを添加した実施例2〜6では、保管期間中における炭酸ガスの発生をより効果的に防止できた。デキストリンの添加量1%、2.5%、5%、7.5%では、濃度依存的に皮膚外用剤の安定性を向上させ、炭酸ガスの発生を著しく遅延させる効果を奏した。また、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に添加する粉末をデキストリンからでんぷんに変更して行った試験においても、デキストリンと同様に、保管期間中における炭酸ガスの発生を防止する効果が得られた。
【0084】
<実施例7>
発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、3%w/wステアリン酸カルシウム粉末を添加した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0085】
<実施例8>
発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤へのステアリン酸カルシウム添加量を5%w/wとした以外は実施例7と同様にして評価を行った。
【0086】
結果を「表2」に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤にステアリン酸カルシウムを添加した実施例7,8では、コート層を形成していない比較例1及びクエン酸カルシウムによるコート層を形成したのみの実施例1(表1参照)に対して有意に炭酸ガスの発生を遅延できた。この結果から、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤へのステアリン酸カルシウムの添加により、皮膚外用剤の安定性を向上できることが示された。ステアリン酸カルシウム及び上記のデキストリン及びでんぷんが、炭酸ガスの発生を遅延させる機序は明らかではないが、コート層の安定化に寄与している可能性が考えられた。
【0089】
2.安定性評価試験II
<実施例9>
クエン酸カルシウムのコート層が形成されたクエン酸の粉末0.18g(クエン酸当量、2質量部)、炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。クエン酸粉末へのコート層形成は、クエン酸粉末とクエン酸カルシウムの質量部比を9:1とした以外は、実施例1と同様にして行った。
【0090】
コート層が形成されたクエン酸粉末と、炭酸水素ナトリウム粉末を、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルムバッグに収容し、密封した。40℃、50℃又は60℃で、20日間保管し、保管期間中、バッグの膨化の有無を指標として炭酸ガスの発生の有無を観察した。評価の基準となる発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤として、上述の実施例1のものを併せて試験した。
【0091】
【表3】
【0092】
<実施例10>
実施例9の発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、デキストリン粉末を全重量に対して6%添加した以外は実施例9と同様にして評価を行った。
【0093】
<実施例11>
油脂(ナタネ油)のコート層が形成されたクエン酸の粉末0.18g(クエン酸当量、2質量部)、炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。クエン酸粉末へのコート層形成は、クエン酸粉末0.16g(8質量部)を湿らせ、ナタネ油0.04g(2質量部)を噴霧して付着させた後、乾燥することによって行った。
【0094】
<実施例12>
実施例11の発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、デキストリン粉末を全重量に対して6%添加した以外は実施例11と同様にして評価を行った。
【0095】
<実施例13>
クエン酸の粉末0.18g(2質量部)、油脂(ナタネ硬化油)のコート層が形成された炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(炭酸水素ナトリウム当量、8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。炭酸ナトリウム粉末へのコート層形成は、炭酸ナトリウム粉末と油脂の質量部比を9:1とした以外は、実施例11と同様にして行った。
【0096】
<実施例14>
実施例15の発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、デキストリン粉末を全重量に対して6%添加した以外は実施例13と同様にして評価を行った。
【0097】
<実施例15>
クエン酸カルシウムのコート層を形成したクエン酸の粉末0.18g(クエン酸当量、2質量部)、油脂(ナタネ硬化油)のコート層が形成された炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(炭酸水素ナトリウム当量、8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。クエン酸粉末へのコート層形成は、実施例1記載の方法に従って行った。ナタネ硬化油のコート層が形成された炭酸水素ナトリウムには、実施例13と同じものを用いた。
【0098】
<実施例16>
実施例17の発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤に、デキストリン粉末を全重量に対して6%添加した以外は実施例15と同様にして評価を行った。
【0099】
<比較例2>
ポリエチレングリコール(分子量4,000)のコート層が形成されたクエン酸の粉末0.18g(クエン酸当量、2質量部)、炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。クエン酸粉末へのコート層形成は、クエン酸粉末に対して1/10質量部のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0100】
<比較例3>
クエン酸の粉末0.18g(2質量部)、ポリエチレングリコール(分子量4,000)のコート層が形成された炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(炭酸水素ナトリウム当量、8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。炭酸ナトリウム粉末へのコート層形成は、炭酸ナトリウム粉末に対して1/10質量部のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例11と同様にして行った。
【0101】
<比較例4>
比較例2と同じコートされたクエン酸の粉末0.18g(クエン酸当量、2質量部)と、比較例3と同じコートされた炭酸水素ナトリウムの粉末0.8g(炭酸水素ナトリウム当量、8質量部)を用いて、発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。
【0102】
結果を「表4」に示す。表中、「なし」は、保管期間(20日)中、炭酸ガスの発生がみられなかったことを示す。また、「あり」は、炭酸ガスが発生したことを示し、括弧内の数字は、発泡を認めた保管日数を表す。
【0103】
【表4】
【0104】
実施例9〜16では、評価の基準とした実施例1に比較して、炭酸ガスの発生を防止又は遅延できた。一方、比較例2〜4では、40℃、50℃、60℃のいずれの保管温度においても1日後に炭酸ガスの発生が確認された。
【0105】
3.安定性評価試験III
種々の被覆剤でコート層を形成したクエン酸の粉末を用い、炭酸水素ナトリウムと混合して発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を調製した。発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤を、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルムバッグに収容し、密封した。40℃で1日間保管し、バッグの膨化の有無を指標として炭酸ガスの発生の有無を観察した。
【0106】
被覆剤には、乳糖、白糖、トレハロース、マンニトール、デキストリン、バレイショデンプン、セルロースガム、キサンタンガム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール(分子量400、1,500、4,000、20,000)を用いた。
【0107】
クエン酸粉末8gに対して、0.3gの精製水を加え、よく混ぜながら全体を湿らせた。湿らせたクエン酸粉末に2gの被覆剤を加え、均一になるまでよくまぶした後、60℃で2〜3時間乾燥させた。コート層を形成したクエン酸粉末(2質量部)を炭酸水素ナトリウムの粉末(8質量部)と混ぜた。
【0108】
結果、乳糖、白糖、トレハロース、マンニトール、デキストリン、バレイショデンプン、セルロースガム及びキサンタンガムによりコート層を形成したクエン酸粉末を含む発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤では、炭酸ガスの発生はみられなかった。一方、ステアリン酸及びポリエチレングリコールによりコート層を形成したクエン酸粉末又はコート層を形成していないクエン酸粉末を含む発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤では、炭酸ガスが発生した。
【0109】
保管温度を50℃又は60℃とした追加試験においても、乳糖、デキストリン、バレイショデンプン、セルロースガム及びキサンタンガムでは、保管7日目で炭酸ガスの発生がなく、良好な安定性が確認された。また、被覆剤に乳糖を用いて、クエン酸粉末と被覆剤との質量比(クエン酸粉末:乳糖)を8:2から7:3、6:4あるいは5:5に変更して試験を行った結果、いずれの場合も良好な安定性を確認できた(60℃、5日間)。
【0110】
4.有効性評価試験I
<製剤例1>
以下の処方に従って、顆粒剤及びジェル剤からなる二剤型の発泡性皮膚外用剤を調製した。
A:顆粒剤(発泡性皮膚外用剤用炭酸ガス発生剤)
クエン酸カルシウムコートクエン酸粉末
:0.2g(クエン酸当量)
炭酸水素ナトリウム粉末 :0.8gB:ジェル剤
ブチレングリコール :1.95g
キサンタンガム :0.13g
フェノキシエタノール :0.04g
水 :10.88g
【0111】
調製した製剤を用いて臨床試験を行った。20代〜30代の女性4名を被験者とした。洗顔後15分間馴化してから、(1)角層水分量、(2)水分蒸散量、(3)肌弾力について1回目の測定を行った。発泡性皮膚外用剤を顔全体に塗布し、15分間放置した。発泡性皮膚外用剤をヘラで除去し、洗い流した後15分間馴化してから、2回目の測定を行った。
【0112】
(1)角層水分量の測定は、SKICON-200EX(アイ・ビー・エス株式会社)を用いて行った。(2)水分蒸散量の測定は、テヴァメーター(登録商標)TM300(CK社)を用いて行った。(3)肌弾力は、キュートメーター(登録商標)MPA580(CK社)を用いて行った。
【0113】
<製剤例2>
製剤例1の顆粒剤に1%w/wデキストリン粉末を添加した以外は製剤例1と同様にして測定を行った。
【0114】
<比較製剤例1>
製剤例1の顆粒剤のクエン酸カルシウムでコートされたクエン酸粉末を、コートされていないクエン酸粉末に変更した以外は製剤例1と同様にして測定を行った。
【0115】
<比較製剤例2>
比較製剤例2の顆粒剤に1%w/wデキストリン粉末を添加した以外は比較製剤例2と同様にして測定を行った。
【0116】
結果を「表5」〜「表7」に示す。各表には、1回目の測定値、2回目の測定値及び変化率を、被験者4名の平均値±標準偏差により示す。
【0117】
(1)角層水分量
【表5】
【0118】
(2)水分蒸散量
【表6】
【0119】
(3)肌弾力
【表7】
【0120】
製剤例1,2では、比較製剤例1,2に比して、使用後の(1)角質水分量及び(3)肌弾力が顕著に高まった。また、製剤例1,2では、比較製剤例1,2に比して、使用後の(2)水分蒸散量を顕著に抑制できた。これらの結果から、本発明に係る発泡性皮膚外用剤が肌状態を顕著に改善し、優れた美容効果を奏することが確認された。
【0121】
<処方例>
以下の処方例1〜4に従って、一剤型の発泡性皮膚外用剤を調製した。
【0122】
処方例1
炭酸水素ナトリウム :0.5〜40%
コート化クエン酸
クエン酸 :0.2〜30%
クエン酸カルシウム:0.01〜2%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
【0123】
処方例2
炭酸水素ナトリウム :0.5〜40%
コート化クエン酸
クエン酸 :0.2〜30%
クエン酸カルシウム:0.01〜2%
デキストリン :0.1〜30%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
【0124】
処方例3
コート化炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウム:0.5〜40%
ナタネ硬化油 :0.05〜5%
クエン酸 :0.2〜30%
デキストリン :0.1〜30%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
【0125】
処方例4
コート化炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウム:0.5〜40%
ナタネ硬化油 :0.05〜5%
コート化クエン酸
クエン酸 :0・2〜30%
クエン酸カルシウム:0.01〜2%
デキストリン :0.1〜30%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
【0126】
処方例5
炭酸水素ナトリウム :0.5〜40%
コート化クエン酸
クエン酸 :0.2〜30%
乳糖 :0.01〜2%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
【0127】
処方例6
炭酸水素ナトリウム :0.5〜40%
コート化クエン酸
クエン酸 :0.2〜30%
セルロースガム :0.01〜2%
デキストリン :0.1〜30%
キサンタンガム :1〜20%
ブドウ糖 :残量
一剤型、又は、二剤以上の多剤型の発泡性皮膚外用剤であって、いずれか同一剤内に少なくとも酸性物質と前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質とを含有し、前記酸性物質と前記炭酸ガス発生物質が互いに接触しないように共存している粉末状の剤であり、前記炭酸ガス発生物質がコート層を有しているパック剤である、発泡性皮膚外用剤(但し、酸性基を有する高分子物質でコーティングを施したアスコルビン酸を配合するものを除き、また、前記コート層がポリエチレングリコールからなるものを除き、また、前記炭酸ガス発生物質が炭酸水素ナトリウムであって前記コート層が炭酸ナトリウム又はその複塩からなるものを除く)。