【解決手段】第一の部材10と第二の部材20との間に配設され、第一の部材と第二の部材との連結部位Bを密封するブーツ1であって、第一の部材と第二の部材のいずれか一方に固定される固定部11と、第一の部材と第二の部材のいずれか他方に押圧されて接触する圧接部12との間にわたって連続して一体に形成される弾性を有した筒状部1cを含み、圧接部は、外部からの異物侵入を防止する第一のシールリップ12bと、内部からの油漏れを防止する第二のシールリップ12aを少なくとも備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなダストカバー(ブーツ)は、ボールジョイントの組立て時にソケットまたはナックルアームのいずれにも嵌合されていないため、単にダストカバー(ブーツ)だけでは装着が完全であるか確認する必要が生じる。また、このダストカバー(ブーツ)は、それぞれ裾広がりの筒状に形成された第一のシール部と第二のシール部からなる弾性材であることから、ソケットとナックルアームの間で軸方向に圧縮されて変形する自由度を十分に有しているとはいえず、ボールスタッドの揺動によりシール性(密封性)が十分でない虞がある。さらに、ダスト侵入防止及び潤滑剤漏洩防止を兼ねた1つの環状のシール部を有しているだけでは、圧縮されて変形する自由度を十分に有してないことに相俟ってダストカバー(ブーツ)としての密封性が十分でない虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、第一の部材と第二の部材とのジョイント時に、装着状況をその都度、目視等の確認作業を要さずとも確実に行なえ、かつ、追従性を高めて密封性に優れたブーツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、第一の部材と第二の部材との間に配設され、前記第一の部材と前記第二の部材との連結部位を密封するブーツであって、
前記ブーツは、
前記第一の部材と前記第二の部材のいずれか一方に固定される固定部と、
前記第一の部材と前記第二の部材のいずれか他方に押圧されて接触する圧接部と、
前記固定部と前記圧接部との間にわたって連続して一体に形成される弾性を有した筒状部を含み、
前記圧接部は、外部からの異物侵入を防止する第一のシールリップと、内部からの油漏れを防止する第二のシールリップを少なくとも備えている。
本発明において、前記固定部の外径は、前記圧接部の外径よりも小径に形成されており、前記筒状部は、前記圧接部寄りに形成されている円筒部と、前記円筒部から前記固定部に向けて小径となるテーパ筒部とを含む。
本発明において、前記固定部は、第一の部材と第二の部材のいずれか一方に形成された嵌合溝に嵌合される嵌合部と、前記嵌合部の上面外周縁に立設される矯正部とを含む。
本発明において、前記第二の部材は、第一の部材に対して揺動可能に連結されている。
本発明において、前記圧接部の近傍に前記円筒部を補強する補強部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第一の部材と第二の部材とのジョイント時に、装着状況をその都度、目視等の確認作業を要さずとも確実に行なえ、かつ、追従性を高めて密封性に優れたブーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブーツを、第一の部材と第二の部材とのジョイント部に装着させた使用状態を示す概略側面図で、第二の部材が揺動した状態を仮想線で示す。
【
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る組み付け前のブーツを示す断面図で、(b)は、(a)に示したブーツの嵌合部における矯正部(突起)の部分拡大図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係るブーツにおける固定部の嵌合部を、第二の部材の嵌合溝に嵌合し、圧接部が第一の部材と接触していない状態を示す断面図で、(b)は、第二の部材の嵌合溝に、ブーツにおける固定部の嵌合部を嵌合しようとしている状態図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るブーツを装着させ、第一の部材と第二の部材とが揺動してない状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るブーツを装着させ、第一の部材と第二の部材とを片方向(図面では左方向側)に揺動した状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るブーツを装着させ、第一の部材と第二の部材とを片方向(図面では右方向側)に揺動した状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るブーツの外周に補強リングを装着している状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るブーツの内周に補強金具を装着している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るブーツについて、添付図面を参照して説明する。
本実施形態では、
図1に示す形態の第一の部材10と第二の部材20とで構成されているブーツ装着対象物Aを想定し、前記第一の部材10と第二の部材20との間のジョイント部B(連結部位)に、本発明の実施形態であるブーツ1を装着した実施の一形態が示されている。ブーツ1は、装着時において、
図1に示されるように、第一の部材10と第二の部材20との間に配設され、第一の部材10と第二の部材20とのジョイント部Bを密封している。
【0010】
第一の部材10は、例えば、円柱状のシャフトの先端に、空間領域10bを内設した略円筒形状を為す端部を一体に設け、端部は、上端(図面上で上端の領域)を開放して開口部10aを設けるとともに下端(図面上で下端の領域)を閉じた有底中空状に形成されている。
また、本実施形態では、
図1にて符号Lで示す範囲の水平方向(図面で横方向)の肉厚を、符号Mで示す水平方向の肉厚に比して厚肉に形成している。
このように厚肉にすることで、第二の部材20の揺動する部分が強化されるため安定して揺動でき、また、後述するブーツ1の圧接部12(シールリップ部に相当)を密着させる受け面10dの領域を広く確保することができる。また、第一の部材10の材質は本実施形態では金属製であるが、用途・仕様によっては樹脂製などでも本発明の範囲内である。
【0011】
第二の部材20は、例えば、円柱状のシャフト23の先端に、前記第一部材10の空間領域10b内で摺動する摺動部分(図示せず)と、この摺動部分の上方に備えられる円筒部30と、当該円筒部30とシャフト23との間にて円筒部30とシャフト23よりも小径に形成された小径円筒部32を備えてシャフト23と一体に形成されている。
前記小径円筒部32とシャフト23の下面及び円筒部30の上面との間で形成される環状の凹溝空間が、ブーツ1の固定部11の嵌合部1fを嵌合する嵌合溝24として形成されている(
図1及び
図3参照)。当該嵌合溝24の水平方向の奥行き(溝深さ)及び鉛直方向の長さ(溝高さ)は、嵌合されるブーツ1の嵌合部1fの肉厚に適応して決められる。
また、第二の部材20の材質は本実施形態では金属製であるが、用途・仕様によって決めることができ、例えば樹脂製などでも本発明の範囲内である。
【0012】
なお、ブーツ装着対象物Aは、本実施形態にて採用した第一の部材10と第二の部材20からなる形態に限定解釈されるものではなく、第一の部材10と第二の部材20が相対的に揺動可能であれば全て対象であり、本発明の範囲内で設計変更可能である。また、第一の部材10と第二の部材20は、いずれか一方が可動部材で他方が固定部材である形態であっても、双方が可動部材であってもよく任意に設計変更可能である。
【0013】
また、
図1に示されたブーツ装着対象物Aは、一例として、第一の部材10に対して第二の部材20を所定の角度θの傾きで揺動可能に構成されているものであり、仮想線で揺動状態を図示している。なお、本実施形態では、第一の部材10の中心軸Xと第二の部材20の中心軸Yとの所定の角度θを略7度の傾斜としている。
【0014】
ブーツ1は、装着前は、
図2に示されるように、第二の部材20の揺動に従って自在に変形する可撓性を備えた所定の筒形状であって、第二の部材20に固定される固定部11と、第一の部材10に押圧されて接触する圧接部12と、固定部11と圧接部12との間にわたって連続して一体に形成される筒状部1cとで構成されている。
なお、本実施形態において、ブーツ1は、例えば、ゴム材、軟質合成樹脂材などの弾性を有する材料で成形されている。
【0015】
筒状部1cは、中空の筒状を為し、圧接部12寄りに形成されている円筒部1dと、円筒部1dから固定部11に向けて小径となる略断面視テーパの傾斜を有するテーパ筒部1eとを含んで構成されている(
図2参照)。上述の通りの構成であるため、固定部11の外径は圧接部12の外径よりも小径に形成されている。
【0016】
固定部11は、筒状部1cにおけるテーパ筒部1eの上端から水平方向で内側に向けて突設され、前記第二の部材20の嵌合溝24に嵌合される環状の嵌合部1fと、当該嵌合部1fの上面外周縁に立設される矯正部1a(突起)とを含んで形成されている。すなわち、嵌合部1fは、テーパ筒部1eの上端に略断面視矩形状で、テーパ筒部1eよりも肉厚に形成されている。
嵌合部1fの肉厚は、前記嵌合溝24内に圧縮されて嵌合可能な肉厚が本発明の範囲内で設定される。このように肉厚とすることで、前記嵌合溝24に対して嵌合部1fを強固に嵌合することができる(
図3(a)参照)。
【0017】
矯正部(突起)1aは、嵌合部1fの上面外周縁にて、上方向に丸みを持った略断面視三角形状に隆起して一体に立設されている。なお矯正部(突起)1aの位置が分り易いように、
図2(b)において、当該部分の拡大図を示している。
このような矯正部(突起)1aを設けた理由は次のとおりである。
嵌合部1fが嵌合溝24に圧入された後、第二の部材20が揺動されると嵌合部1fの先端が嵌合溝24の奥部下方向に丸め込まれるように変形する、いわゆる巻き込みという現象が生じてブーツ1が適切に嵌合されない虞がある。
本実施形態によれば、嵌合部1fが嵌合溝24に嵌合されたとき、矯正部1a(突起)が嵌合溝24と強く圧着されるため、揺動時に、嵌合部1fの先端が嵌合溝24の奥部下方向に丸め込まれるように変形しようとしても、矯正部(突起)1aが突っ張って、嵌合溝24内で生じる巻き込み現象を防止し得る。これにより、嵌合部1fが嵌合溝24に圧入された状態において強く嵌合されることになり、ブーツ1が安定して嵌合されることが可能となった。
さらに、ブーツ1の姿勢を安定して保つことができ、確実に圧接部12と第一の部材10の受け面10dにより密着されることが可能となった。
【0018】
圧接部12は、筒状部1cにおける円筒部1dに一体形成され、外部からの異物侵入を防止する第一のシールリップ(ダストシール)12bと、内部からの油漏れを防止する第二のシールリップ(オイルシール)12aを少なくとも備えている(
図2参照)。
【0019】
第一のシールリップ12bは、円筒部1dの下端から外方に向けて徐々に大径となるように一体成形されている。すなわち、大気中等の外部環境に向けて傾斜した姿勢で突出し、その突出端が第一の部材10の受け面10dに対して接触状態(或いは、僅かな隙間を隔てた非接触状態)に位置決めされている。これにより、外部環境に存するダストや液状物などの異物の侵入防止が図られている。
【0020】
第二のシールリップ12aは、円筒部1dの下端から内方に向けて徐々に小径となるように一体成形されている。第二のシールリップ12aのリップ先端が常時一定の緊迫力で第一の部材10の受け面10dに摺接した状態に維持される(
図3、
図4参照)。このように第二のシールリップ12aを環状にわたって設けることにより、第二の部材20の揺動時に、圧接部12から潤滑剤が逃げようとしても、リップ先端が壁となって、ブロックするように作用する。その結果、第一の部材10と第二の部材20の間の良好な潤滑が維持されることにより、低トルク(摩擦力の低減)で耐久性に優れたブーツ装着対象物Aを実現することができる。
【0021】
以下、本実施形態のブーツ1がブーツ装着対象物Aに装着され、第二の部材20の揺動に従って変移している状態を
図3乃至
図6を用いて説明する。
図3(a),(b)は、ブーツ1の装着(組立)の一工程であって、先ず、
図3(b)において、嵌合溝24に嵌合部1fを装着する(図面では矢印D方向)状態を表している。
図3(a)は、ブーツ1の一端側の嵌合部1fが嵌合溝24に圧入されているだけで、第一の部材10とは圧着していないフリー(非固定)の状態を示している。これは、ブーツ装着対象物Aの組立工程の最初の段階は、第二の部材20にブーツ1を装着させた状態だけのため、当該嵌合部1fの上面外周縁に矯正部1a(突起)自体は嵌合溝24に接する程度に圧着される。
すなわち、ブーツ装着対象物Aの組立て時には、先に第二の部材20に固定部11側を取り付けておき、つまり、嵌合部1fが第二の部材20の嵌合溝24に嵌合されて取り付けられ、圧接部12側が第一の部材10に対してフリー(自由)な状態で装着される。この装着方法によれば、第一の部材10に第二の部材20を連結するだけで、ブーツ1も併せて装着することができる。したがって、簡単に組立てを行うことができ、特に自動装着作業下での目視しづらい状況下でも組立てが容易に可能となる。
【0022】
図4は、第一の部材10の開口部10aに、ブーツ1を装着した第二の部材20を挿入後、上方方向(図面では矢印のS方向)にスライド(移動)させて、第一の部材10と圧接部12を所定の位置で圧着させている状態を示している。この状態のとき、矯正部(突起)1a自体は圧着により潰され隙間なく密着される。ただ、単にブーツ1が鉛直方向に圧縮されている状態(正面断面視の形状が対象的)のため、第二の部材20の圧縮に従って、中空の筒状部1cは圧縮されている。
【0023】
図5は、
図4に示された圧縮されたブーツ1が、例えば、
図1のとおり、第一の部材10の中心軸Xと第二の部材20の中心軸Yとの所定の角度θを略7度の傾斜で、左側(図面では矢印C1方向)に揺動されている状態のブーツ装着対象物Aの部分拡大図を示している。
この傾斜によって、ブーツ1が装着されて第二の部材20が揺動すると筒状部1cの伸び側である右側(図面では矢印C1の反対方向)に引張り力が発生して、ブーツ1全体に変形(正面断面視の形状が非対象的)を生じている。この変形によって、いわゆる巻き込み現象が生じようと作用するが、矯正部(突起)1aが設けられたことによって、嵌合部1fの先端が嵌合溝24の奥部下方向に丸め込まれるような変形(いわゆる巻き込みという現象)が生じないように作用することができる。また、テーパ筒部1eが設けられたことによって、筒状部1cの変形が外方へ誘導されるため、圧接部12が上方に反り返るような変形(いわゆる捲れという現象)が生じないように作用することができる。したがって、第二の部材20が揺動したときにも十分に密封することができる。
【0024】
図6は、
図5の揺動の方向とは反対方向で、第一の部材10の中心軸Xと第二の部材20の中心軸Yとの所定の角度θを略7度の傾斜で、右側(図面では矢印C2方向)に揺動されている状態のブーツ装着対象物Aの部分拡大図を示している。
この傾斜によって、ブーツ1が装着されて第二の部材20が揺動すると筒状部1cの伸び側である左側(図面では矢印C2の反対方向)に引張り力が発生して、ブーツ1全体に変形(正面断面視の形状が非対象的)を生じようと作用するが、矯正部1a(突起)が設けられたことによって、嵌合部1fの先端が嵌合溝24の奥部下方向に丸め込まれるような変形(いわゆる巻き込みという現象)が生じないように作用することができる。また、テーパ筒部1eが設けられたことによって、筒状部1cの変形が外方へ誘導されるため、圧接部12が上方に反り返るような変形(いわゆる捲れという現象)が生じないように作用することができる。したがって、第二の部材20が揺動したときにも十分に密封することができる。
【0025】
図7及び
図8は本発明のブーツの他の実施形態を示し、圧接部12の近傍に円筒部1dを補強する補強部材40として、補強金具40aまたは補強金具40bのいずれかを備えている(
図7、
図8参照)。
図7に示す補強金具40aは断面視円形状の環状の金具で、円筒部1dの外周に巻回されている。補強金具40aにより、円筒部1dを真円形状に保ち、受け面10dとの密着面が楕円形状に変形することを防ぐためである。すなわち、円筒部1dが圧接されたとしても、ブーツ1の円筒部1dが本来の真円形状に保たれることで、オイルシールリップ12aとダストシール12bが全周にわたって確実に第一の部材10の受け面10dに圧着されて、良好なシール性が保持することができる。なお、本実施形態では、補強金具40は、2本巻回しているが、補強金具の形状や太さはブーツ1に対応して決められる。
【0026】
図8に示す補強金具40bは、断面矩形状の環状の補強金具40bで、円筒部1dの内面にインサート成形されている。作用効果は
図7に示した実施形態と同様である。なお、本実施形態では、一つの補強金具40bを埋設しているが、金具の大きさや形状等はブーツ1に対応して決められる。