【解決手段】真空断熱材1Aは、表面フィルム11と裏面フィルム12とで構成される袋本体13と、その内部に芯材10が収容されて真空状態で密封される。袋本体13には、4方の縁部が接合されて縁部シール部が形成され、対向する一対の第1縁部シール部341を含む部分が、底面24の一側縁に相当する第1位置221から第1延出部311として形成されている。この真空断熱材1Aの第1延出部311を、第1位置221を基点として底面24側に折返して底面24に固定することで本発明の真空断熱材1が得られる。
対向する他の一対の第3縁部シール部を含む部分が、前記側面から第3延出部として延出されており、前記第3延出部の両側縁には、内方に向かって折り込まれるガセット折部が形成されている請求項1または2に記載の真空断熱材。
前記第1延出部または前記第2延出部には、第1縁部シール部と前記第1位置との間、または、前記第2縁部シール部と前記第2位置との間に、前記表面フィルムと裏面フィルムとを接合する接合部が形成されている請求項1から4のいずれかに記載の真空断熱材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような真空断熱材は、通常、一定のパネル形状をなしており、所定の面積で使用する際には複数の真空断熱材を並べて配置する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような4方シール袋においては、パネル状の真空断熱材の側面側に、延出するシール部が位置することになり、このシール部の存在によって、複数の真空断熱材を平面上に並べて配置した際に、真空断熱材間に隙間が生じて断熱性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、複数の真空断熱材を並べて配置する際に、隣接する真空断熱材同士に余分な隙間が形成されることを抑制し、収容率を高めて断熱性を向上できる真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、真空断熱材同士が隣接する真空断熱材の側面または天面または底面に、シール部に起因する段差が生じない構成にすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 表面フィルムと裏面フィルムとで構成される袋本体と、前記袋本体に収容される真空断熱用の芯材と備え、天面と底面と側面とを有する真空断熱材であって、
前記袋本体には、4方の縁部が接合されて縁部シール部が形成され、
4つの前記縁部シール部のうち、対向する一対の第1縁部シール部を含む部分が、前記天面または底面の一側縁である第1位置から第1延出部として形成されており、
前記第1延出部は、前記第1位置を基点として天面側または底面側に折返されて、
前記側面に前記第1延出部が存在しないように、前記天面または底面に固定されている真空断熱材。
【0010】
(2) 表面フィルムと裏面フィルムとで構成される袋本体と、前記袋本体に収容される真空断熱用の芯材と備え、天面と底面と側面とを有する真空断熱材であって、
前記袋本体には、4方の縁部が接合されて縁部シール部が形成され、
4つの前記縁部シール部のうち、対向する一対の第2縁部シール部を含む部分が、前記天面および底面の対向する一側縁の間の第2位置から第2延出部として形成されており、
前記第2延出部は、前記第2位置を基点として前記側面に沿って折返されて、
前記天面および底面から前記第2延出部が突出しないように、前記側面に固定されている真空断熱材。
【0011】
(3) 対向する他の一対の第3縁部シール部を含む部分が、前記側面から第3延出部として延出されており、前記第3延出部の両側縁には、内方に向かって折り込まれるガセット折部が形成されている(1)または(2)に記載の真空断熱材。
【0012】
(4) 前記第3延出部は、前記第3位置を基点として前記側面に沿って折り返されて前記側面に固定されている、(3)に記載の真空断熱材。
【0013】
(5) 前記第1延出部または前記第2延出部には、第1縁部シール部と前記第1位置との間、または、前記第2縁部シール部と前記第2位置との間に、前記表面フィルムと裏面フィルムとを接合する接合部が形成されている(1)から(4)のいずれかに記載の真空断熱材。
【発明の効果】
【0014】
本発明の真空断熱材は、複数の真空断熱材を並べて配置する際に、隣接する真空断熱材同士に余分な隙間が形成されることを抑制することができるため、収容率を高めて断熱性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の真空断熱材について説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
<第1実施形態>
<真空断熱材>
図1および
図5に示すように、
図5に示す本実施形態の真空断熱材1は、
図1に示す真空断熱材1Aの延出部を底面側に折返して底面に固定して得られる。このため、まず、折返前の真空断熱材1Aにつき説明した後に、真空断熱材1につき説明する。以下、延出部を折返す前の状態の真空断熱材1Aを、単に真空断熱材1Aと称する。
【0018】
図1から
図4を用いて真空断熱材1Aにつき説明する。
図1は真空断熱材1Aの斜視図であり、
図2は真空断熱材1Aの平面図であり、
図3は真空断熱材1Aの側面図であり、
図4は真空断熱材1Aの正面図である。
【0019】
真空断熱材1Aは、表面フィルム11と裏面フィルム12とで構成される袋本体13と、その内部に収容される芯材10とで構成され、真空状態で密封されている。芯材10は、天面と底面と側面とを有する直方体形状である。
【0020】
[積層体]
袋本体13を構成する積層体は、少なくとも、基材層とバリア層とシーラント層とを備える積層体である。基材層を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン等を用いることができる。また、シーラント層を構成する材料としては、ポリプロピレンやポリエチレン等を用いることができる。
【0021】
基材層とシーラント層との間にはバリア層が配置されており、バリア層としては、アルミニウム箔などの金属箔や、アルミニウムなどの無機物薄膜や、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの無機酸化物薄膜、エチレン−ビニルアルコール共重合等のバリア性を有する樹脂層、およびこれらを組み合わせた構成が例示できる。
【0022】
基材層とバリア層とシーラント層とは、従来公知の接着剤層を介してドライラミネート法により積層されていてもよく、押出しコート法によって積層されていてもよい。
【0023】
[芯材]
芯材10は、袋本体13に収容される断熱性の高い真空断熱用の芯材である。芯材10としては、熱伝導度の低いものであることが好ましい。たとえば、芯材空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材である芯材を挙げることができる。
【0024】
芯材を構成する物質としては、たとえば、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、たとえば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。中でも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。
【0025】
また、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらの中でも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
【0026】
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で使用が好ましい。
【0027】
なお、芯材10は、これらを単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
【0028】
[真空断熱材1Aの構成]
袋本体13は、4方の縁部が接合されて縁部シール部が形成されており、所謂4方シールの密封包装形態である。この実施形態においては、縁部シール部は、対向する一対の第1縁部シール部341と、対向する他の一対の第3縁部シール部342とからなる。たとえば、縁部シール部は、熱や超音波を利用した溶着によって形成することができる。
【0029】
袋本体13内には、直方体状の芯材10が収容されている。そして、袋本体13を構成する表面フィルム11と裏面フィルム12のうち、表面フィルム11が芯材10の天面および側面に沿って追随することで、天面21と側面22、23とが形成されており、裏面フィルム12の一部で底面24が形成されている。
【0030】
具体的には、この実施形態においては、表面フィルム11における、芯材10の天面に相当する位置の第1部分111が天面21を構成し、裏面フィルム12のうちの、芯材10の底面に相当する位置の第1部分121が底面24を構成する。
【0031】
4つの側面のうちの第1縁部シール部341側の両側面22は、表面フィルム11における、芯材10の両側面に相当する位置である第2部分112により構成される。
【0032】
4つの側面のうちの第3縁部シール部342側の両側面23は、表面フィルム11における、芯材10の両側面に相当する位置である第3部分113と、裏面フィルム12における、芯材10の両側面に相当する位置である第3部分123とにより構成される。
【0033】
[第1延出部]
本実施形態において、底面24と側面22とで形成される一辺が第1位置221であり、この第1位置221を基点として、第1縁部シール部341を含む第1延出部311が、真空断熱材1Aの両側に延出されている。第1延出部311は表面フィルム11の第4部分114と、裏面フィルム12の第4部分124とで構成される。これにより、表面フィルム11は、水平な天面21から垂直な側面22を介して水平な第1延出部311の第1縁部シール部341まで連続して亘るように構成されている。
【0034】
本実施形態においては、第1位置221から第1縁部シール部341までは、未シール部であってもよいが、好ましくは、少なくとも一部が接合部によって接合されていることが好ましい(図示せず)。これにより、表面フィルム11が、芯材10の側面により密着して沿うことができ、隙間やシワの発生を抑制できる。接合部は、縁部シール部と同様に、熱や超音波を利用した溶着によって形成することができる。
【0035】
[第3延出部]
本実施形態において、天面21と側面23とで形成される一辺を基点として延出される表面フィルム11の第3部分113と、該一辺に対向して底面24と側面23とで形成される他の一辺を基点として延出される裏面フィルム12の第3部分123とで、第3縁部シール部342を含む第3延出部313が両側に延出されている。第3延出部313は表面フィルム11と裏面フィルム12とで構成される。これにより、表面フィルム11は、水平な天面21から第3延出部313の第3縁部シール部342まで連続して亘るように構成されている。ここで、第3延出部313は天面21と底面24の対向する一側縁の間から延びるもの、言い換えると天面21と側面23とで形成される一辺および底面24と側面23とで形成される一辺から延びないものであり、
図3に示すように、本実施形態において、第3延出部313は天面21と底面24の対向する一側縁の間の中間位置P1から水平方向に延びている。この場合、後述するガセット折部33を形成するときに、表面フィルム11と裏面フィルム12に加える力を同じにしやすくすることができるため、製造適性を向上させることができる。なお、第3延出部313は天面21と底面24の対向する一側縁の間の中間位置P1から延びる例に限らず、中間位置P1の下方または上方から延びていてもよい。
【0036】
また、第3延出部313を折り返す前の真空断熱材1Aにおいて、基点から第3縁部シール部342までの間には、ガセット折部33を形成するために未シール部が形成されている。なお、未シール部は、第3延出部313を折り返した後に接合してもよい。あるいは、ガセット折部33を形成してから未シール部を接合した後、第3延出部313を折り返すようにしてもよい。
【0037】
本実施形態では、第3延出部313の両側縁には、ガセット折部33が形成されている。このガセット折部33は、表面フィルムの第3部分113の両側縁から内方に向かって折り込まれる折込部と、裏面フィルム12の平面部分とで形成されているガセット形状である。第3延出部313の両側縁にガセット折部33が形成されていることにより、真空断熱材1を直方体形状に近い形状にすることができる。また、側面23へのシワの発生を抑制することができる。
【0038】
<真空断熱材1>
次に、上記の真空断熱材1Aの第1延出部を折返して得られる本実施形態の真空断熱材1について
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、
図1から第1延出部を折返して得られた本実施形態の真空断熱材1の斜視図であり、
図6は、
図5の真空断熱材1を底面側から見た斜視図である。
【0039】
真空断熱材1は、真空断熱材1Aの第1延出部311を底面24側に第1位置221を基点にして折返し、底面24に固定させることにより製造することができる。このことにより、側面22に第1縁部シール部341を含む第1延出部311に起因する段差が生じない構成にすることができる。第1延出部311を底面に固定する方法は特に限定されず、たとえば、テープ40を第1延出部311と底面24とに亘って貼着して固定してもよい(
図6参照)。また、これに限らず、両面テープ、接着剤、ホットメルト剤、ヒートシール剤を用いることにより第1延出部311を底面24に固定してもよい(図示せず)。たとえば、
図6に示すように、テープ40を底面24の一方の側縁から他方の側縁に亘って設けた場合、経時によって真空度が下がることを抑制することができる。
【0040】
本実施形態の真空断熱材1は、第1延出部311を底面24側に第1位置221を基点として折返すことにより、第1延出部311が側面22に存在しなくなる構成である。そのため、複数の真空断熱材1を側面22同士が対向するように配置した場合に、真空断熱材間に隙間が生じることによる断熱性の低下を抑制することができる。
【0041】
なお、
図7、
図8に示すように、第3延出部313を第3延出部313の基部である第3位置223で裏面フィルム12の第3部分123と第3延出部313が対向するように折り返して、袋本体13の側面の最外面の大部分が表面フィルム11で覆われるように固定してもよい。本実施形態においては、第3位置223が中間位置P1と重なる例が示されている。このことにより、正面視および背面視において第3延出部313が底面24から突出せず、かつ、袋本体12の側面の最外面をほぼ一つの平面で構成することができるため、真空断熱材1をより直方体形状に近い形状にすることができる。このことにより、複数の真空断熱材を並べて配置する際に、さらに収容率を高めることができる。
【0042】
あるいは、図示しないが、第3延出部313を第3延出部313の基部である第3位置223で表面フィルム11の第3部分113と第3延出部313が対向するように折り返して、袋本体13の側面の最外面が表面フィルム11のみで構成されるように固定してもよい。この場合、第3縁出部313と表面フィルム11の第3部分113の間には第1延出部311が存在しないため、第3延出部313を折り返しやすくすることができ、製造適性を向上させることができる。
【0043】
<真空断熱材の使用方法>
次に、真空断熱材1の使用例につき
図9を用いて説明する。
図9は、3つの真空断熱材1を横に並べて配置した際の断面模式図である。
図9に示すように、平面的に横に並べた際に、側面22同士が密接に配置されるので、複数の真空断熱材1を側面22同士が対向するように並べて配置する際に、隣接する真空断熱材1同士に余分な隙間が形成されることを抑制することができるため、収容率を高めて断熱性を向上できる。
【0044】
なお、真空断熱材1は、
図10(a)に示すように、第1延出部311が天面21と側面22とで形成される一辺から延びるようにし、天面21と側面22とで形成される一辺を基点として天面21側に折り返した第1延出部311を天面21に固定するようにしてもよい。
【0045】
<第1実施形態の変形例>
図10は、第1実施形態の変形例を示す断面模式図である。
図10(b)(c)は、
図10(a)と比べて、一対の第1延出部の延出基点となる第1位置が両側で異なっている点が上記の真空断熱材1と異なっている。すなわち、たとえば、
図10(b)においては、一方の第1延出部311aは、底面24から延出されて底面24側に折返されており、他方の第1延出部311bは、天面21から延出されて天面21側に折返されている。このように、本実施形態においては、第1延出部は天面および底面から延出されていてもよい。
【0046】
<第2実施形態>
図11は、本発明の第2実施形態を示す断面模式図である。以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同様の図番については、第1実施形態における説明を援用して読み替えることとし、その説明を省略する。この実施形態においては、
図11(a)の折返前の真空断熱材の第2延出部が、天面21および底面24の対向する一側縁の間の第2位置222から延出された第2延出部312を備える。そして、
図11(b)に示すように、第2延出部312を折返すことにより真空断熱材1dが形成される。真空断熱材1dでは、第2延出部は、第2位置222を基点として、一方の第2延出部312は、底面24側に折返されて固定されており、他方の第2延出部312は、天面21側に折返されて固定されている。このように、本実施形態においては、第2延出部は側面22から延出されていてもよい。
【0047】
この場合、底面24側に折り返す第2延出部312の延出幅Hは、折返した際に、底面24から第2延出部312が突出しない長さである。すなわち、第2延出部312は、正面視および背面視において、底面24から突出しないように側面22に固定されている。そして、天面21側に折り返す第2延出部312は、側面22同士を対向させて真空断熱材1dを並べて配置させたときに、底面24側に折り返す第2延出部312と干渉しないように構成されている。これにより、
図12に示すように、複数の真空断熱材1dを側面22同士が対向するように並べて配置した場合、隣接する側面22では、第2延出部312同士が互いに重ならずに一平面上に配置される構成となり、隣接する真空断熱材1同士に余分な隙間が形成されることを抑制することができるため、収容率を高めて断熱性を向上できる。好ましくは、第2延出部312は、第2延出部312を側面22に沿って折り返したときの長さh2が天面21と底面24との間隔h1の半分以下となるように構成される。このことにより、真空断熱材1dを、天面21および底面24に延部シール部を含む第2延出部312に起因する段差が生じない構成にすることができる。このため、複数の真空断熱材1dを天面21と底面24の少なくともいずれかが対向するように並べて配置した場合、隣接する真空断熱材1d同士に余分な隙間が形成されることを抑制することができるため、収容率を高めて断熱性を向上させることができる。この場合、第2延出部312は、2つとも天面21側に折り返してもよいし、2つとも底面24側に折り返してもよい。