【解決手段】電気コネクタに備えられるコンタクト11は、矩形状の横断面を呈する基材12の互いに対向する二面121,122のうち少なくとも一面において、基材12の長さ方向における一部に貴金属めっき層18およびその下地である下地めっき層17を有している。二面121,122に隣接する基材12の側面123,124には貴金属めっき層18および下地めっき層17のいずれも有しておらず、基材12が露出している。
矩形状の横断面を呈する基材の互いに対向する二面のうち少なくとも一面において、前記基材の長さ方向における一部に貴金属めっき層およびその下地である下地めっき層を有し、
前記二面に隣接する前記基材の側面には前記貴金属めっき層および前記下地めっき層のいずれも有しておらず、前記基材が露出している、
ことを特徴とするコンタクト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金等の貴金属によりめっき層が形成される領域をコンタクトの接点部のみに限定し、貴金属の使用量を抑えることで、コンタクトのコストを抑えたいというニーズがある。
しかし、貴金属めっき層が形成される領域以外の基材表面をマスキングしたとしても、当該領域外への貴金属めっき液の付着を完全に防ぐことは難しく、マスキング部材と基材との隙間からめっき液がにじんだり、めっきが必要ない基材の側面へとめっき液が垂れてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、コンタクトの表面の一部にめっきされる貴金属の使用量を抑えることでコストを低減することのできるコンタクトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンタクトは、矩形状の横断面を呈する基材の互いに対向する二面のうち少なくとも一面において、基材の長さ方向における一部に貴金属めっき層およびその下地である下地めっき層を有し、二面に隣接する基材の側面には貴金属めっき層および下地めっき層のいずれも有しておらず、基材が露出していることを特徴とする。
本発明のコンタクトにおいて、下地めっき層は、長さ方向に所定の寸法で、かつ基材の幅方向の全体に亘って基材に形成され、貴金属めっき層は、下地めっき層の長さ方向における中央部に、基材の幅方向の全体に亘って形成されていることが好ましい。
本発明のコンタクトにおいて、下地めっき層は、ニッケルを含有する合金からなり、貴金属めっき層は、金を含有する金合金からなることが好ましい。
本発明のコンタクトにおいては、基材の長さ方向における一端側に、下地めっき層および貴金属めっき層が形成され、基材の長さ方向における他端側に、下地めっき層および貴金属めっき層とは別のめっき層が形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明のコンタクトによれば、基材の側面には貴金属が付着しておらず、貴金属が付着する領域が基材の二面のうちの少なくとも一面における所定の領域に限定されている。
つまり、高価な貴金属が、所定の領域以外の領域に無駄に使用されていないので、貴金属の使用量を最小限に抑えてコストを抑えることができる。
【0009】
本発明は、貴金属めっき層およびその下地である下地めっき層が基材に形成されたコンタクトを製造する方法であって、部分めっき条材から打ち抜くことで、基材が引き出される向きに連なった複数のコンタクトからなるコンタクト群を得ることを特徴とする。
本発明における部分めっき条材は、基材に用いられる合金材料からなる長尺な条材であって、当該条材が引き出される向きと直交する方向における一部に、下地めっき層および貴金属めっき層が引き出される向きに連続して形成されている。
本発明の製造方法では、部分めっき条材として、引き出される向きと直交する方向における一端側に下地めっき層および貴金属めっき層が形成されているものを使用し、部分めっき条材からコンタクト群を打ち抜くステップと、コンタクト群を構成するコンタクトの長さ方向で下地めっき層および貴金属めっき層から離れた側において基材に別のめっき層を形成するステップと、を含むことが好ましい。
【0010】
部分めっき条材からコンタクト群を打ち抜くと、コンタクトにおける所定の領域に下地めっき層および貴金属めっき層が残される。打ち抜きにより部分めっき条材の板厚方向に沿って表れるコンタクトの側面には貴金属が付着していないので、貴金属が、所定の領域以外の領域に無駄に使用されていない。
また、打ち抜きにより生じた切り屑から貴金属を分離して回収できるので、切り屑に付着した貴金属も無駄にならない。
つまり、本発明によれば、貴金属の使用量を必要最小限に抑えてコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンタクトおよびその製造方法によれば、コンタクトの表面の一部にめっきされる貴金属の使用量を抑えることでコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すコンタクト群10は、一方向に整列された複数のコンタクト11からなる。
コンタクト群10を構成するコンタクト11は、基材12の一部が連なっている状態で一体化されている。この状態のままハンドリングされるコンタクト群10が複数のコンタクト11に切り離されながら、電気コネクタ8に備えられたハウジング81の図示しないキャビティ内部に、必要な数のコンタクト11が装着される。
コンタクト11は、電気コネクタ8に挿抜される図示しない相手コネクタに備えられた相手コンタクトに接触導通される。
【0014】
コンタクト11は、
図2(a)および(b)に示すように、平坦なタブ状に形成されたオス型コンタクトである。コンタクト11の長さ方向D1に直交する幅方向D2に沿ったIII−III線横断面は、
図3に示すように、矩形状を呈する。
図2(a)に示すように、コンタクト11の基材12は、相手コンタクト(メス型コンタクト)に挿抜される接触部13と、電気コネクタ8が組み込まれる機器(図示しない)の基板に接続される基板接続部14と、接触部13および基板接続部14の間に配置される中間部15とを備えている。
本実施形態のコンタクト11は、接触部13から中間部15を経て基板接続部14まで、全体に亘り一直線上を延びている。
【0015】
接触部13は、基材12の長さ方向D1の一端側に位置している。接触部13には、挿抜に必要な剛性を考慮して所定の幅が与えられている。相手コンタクトのソケット部に挿入し易いように、接触部13の端部は、先端13Aに向かうにつれて次第に幅が狭くなっている。
【0016】
長さ方向D1における接触部13のほぼ中央部には、相手コンタクトの接点に導通される接点部131が設定されている。相手コンタクトの内部にコンタクト11が所定位置まで挿入されると、相手コンタクトの接点に接点部131が所定の接圧で導通される。
電気コネクタ8に振動等の外力が加えられたとしても導通を安定させるため、本実施形態のコンタクト11の両面(
図3における上面および下面)に、相手コンタクトのソケット部の一部が接触導通される。
【0017】
中間部15は、
図1に示すように、長さ方向D1に所定の寸法で幅方向D2に連続する帯状の領域である。接触部13は中間部15から長さ方向D1の一端側に突出し、基板接続部14は中間部15から長さ方向D1の他端側に突出している。
中間部15により、隣り合うコンタクト11同士が連結されている。
中間部15が長さ方向D1に沿ってカットされることにより、複数のコンタクト11が互いに分離する。
【0018】
基板接続部14は、ハウジング81(
図1)に形成された図示しないキャビティの内部に保持される。基板接続部14には、接触部13よりも細い幅が与えられている。
基板接続部14の先端部14Aは、ハウジング81から突出し、基板のスルーホールにはんだで接続される。
【0019】
コンタクト11の基材12は、導電率の高い銅や銅合金等の金属材料から形成されている。基材12の表面を酸化から保護し、コンタクト11と相手コンタクトとの接触抵抗を抑えるため、コンタクト11の接点部131には貴金属めっきが施されている。本実施形態では、良好な導電率および耐腐食性に基づいて長期に亘り安定した導通品質を得ることのできる金を用いて、接点部131に金めっきが施されている。
【0020】
図2および
図3に示すように、コンタクト11の接触部13は、基材12の表面にニッケル下地めっき層17および金めっき層18を有している。
各図において金めっき層18を格子状のパターンで示している。
【0021】
図3に示すように、金めっき層18およびその下地であるニッケル下地めっき層17は、基材12の互いに対向する2つの面121,122(以下、二面)のいずれにも形成されている。
ニッケル下地めっき層17は、ニッケルを含有するニッケル合金からなる。
金めっき層18は、金を含有する金合金からなる。
【0022】
ニッケル下地めっき層17は、
図2(a)に示すように、接触部13の長さ方向D1のほぼ全体に亘り、かつ接触部13の幅方向D2の全体に亘り形成されている。
ニッケル下地めっき層17は、基材12の銅原子が金めっき層18の表面へと経時的に拡散することを防御する。
ニッケル下地めっき層17は、電気コネクタの使用温度や想定寿命を考慮して適宜な厚みに形成することができる。
【0023】
金めっき層18は、
図2(a)に示すように、ニッケル下地めっき層17の長さ方向D1におけるほぼ中央部に、基材12の幅方向D2の全体に亘り形成されている。金めっき層18の周囲からの銅原子の拡散を防御するため、ニッケル下地めっき層17は、金めっき層18の直下だけでなく金めっき層18の周囲にも形成されている。
金めっき層18は、コンタクト11の接点部131として相手コンタクトの接点に接触導通される。基材12において金めっき層18が形成されている領域内に、相手コンタクトの接点が位置する。
金めっき層18は、必要な導通品質や使用による摩耗を考慮して適宜な厚みに形成することができる。
【0024】
本実施形態のコンタクト11は、
図3に示すように、接点部131を基材12の二面121,122に有しているため、二面121,122の接点部131のいずれにもニッケル下地めっき層17および金めっき層18が形成されることが好ましい。
二面121,122におけるニッケル下地めっき層17および金めっき層18の位置や形状は同じである。
【0025】
二面121,122に隣接する基材12の側面123,124には、金めっき層18およびニッケル下地めっき層17のいずれも形成されていない。
図2(b)に示すように、基材12の側面123(側面124も同じ)は露出している。
基材12の先端13Aに位置する側面(
図2(b)に125で示す)にも、金めっき層18およびニッケル下地めっき層17のいずれも形成されていない。
【0026】
図2(a)に示すように、接触部13から長さ方向D1に離れている基板接続部14は、錫めっき層19を有している。
錫めっき層19は、錫を含有する合金からなる。錫めっき層19は、基材12の表面を覆って基材12表面への酸化皮膜の形成を防ぐ。それにより、基板のスルーホールとの接続に用いられるはんだへの基材12のぬれ性を確保する。
【0027】
以下、コンタクト11を製造する手順を説明する。
本実施形態では、
図4(a)に示すように条材20から、
図4(c)に示すように、複数のコンタクト11を含むコンタクト群10を得る。コンタクト群10を構成する複数のコンタクト11は、コイル状に巻かれている長尺な条材20である条材ロール(図示しない)から条材20が引き出される向きD3に連なっている。
条材20が引き出される向きD3は、上述したコンタクト11の幅方向D2に相当する。
引き出される向きD3と直交する条材幅方向は、上述したコンタクト11の長さ方向D1に相当する。
【0028】
まず、条材20について簡単に説明する。条材20は、銅または銅合金からなる母材22に、引き出される向きD3に連続してニッケル下地めっき部27および金めっき部28が形成された部分めっき条材である。
母材22は、原料のインゴットから圧延により形成されている。
母材22は、コンタクト11の長さに足りるだけの幅(引き出される向きD3と直交する方向の寸法)を有しており、所定の厚みに形成されている。母材22の表裏両面に、マスキングテープ等を用いてニッケル下地めっき部27および金めっき部28が形成されている。
【0029】
ニッケル下地めっき部27および金めっき部28は、条材20の幅方向における一端側に形成されている。
金めっき部28は、ニッケル下地めっき部27の幅方向中央部に、所定の幅で形成されている。
【0030】
上記の条材20から、所定の数のコンタクト11を含むコンタクト群10を打ち抜く(打ち抜きステップ)。
図4(b)は、条材ロールから引き出された条材20に対して、コンタクト群10の形状に対応する金型を用いて打ち抜くことで得られた複数のコンタクト11を示す。条材ロールから条材20を引き出しつつ、打ち抜きを繰り返すことにより、多数のコンタクト群10を得ることができる。
【0031】
各コンタクト11の接触部13には、条材20(
図4(a))の幅方向一端側に形成されていたニッケル下地めっき部27および金めっき部28がそれぞれ、ニッケル下地めっき層17および金めっき層18として残される。したがって、条材20から打ち抜いた後、接触部13にめっきを施す必要がない。
このとき、コンタクト11の基材12の側面123,124には、
図2(b)に示すように、打ち抜きによる破断面が露出している。これらの側面123,124をはじめとして、基材12の板厚方向に沿っているコンタクト11の全周に亘る側面の全体が同様に露出している。
コンタクト11の全周に亘る基材12の側面には金が全く付着しておらず、金が付着する領域は接点部131に限定されている。そのため、各コンタクト11には、高価な金が、接点部131に金めっき層18を形成するために必要な限度で使用されている。
【0032】
本実施形態のコンタクト11のように、ニッケル下地めっき層17および金めっき層18とは別のめっき層(錫めっき層19)を形成する場合は、続いて、そのめっき処理を行う。
つまり、コンタクト11の基板接続部14に、適宜な方法により錫めっき層19を形成する(錫めっき形成ステップ)。錫は安価であるため、使用量の多寡について特段考慮する必要がない。また、基板接続部14において、錫めっき層19が形成される領域をマスキング部材により厳密に限定する必要もない。
そのため、例えば、錫を含有する溶融しためっき浴に、基板接続部14の先端部14Aから所定の範囲までを浸漬した後、引き上げて洗浄するとよい。この方法によれば、
図2(b)に示すように、基材12の側面123,124にも錫めっき層19が形成される。
【0033】
以上で説明したステップを経ることにより、コンタクト群10の製造が完了する。
そのコンタクト群10をハウジング81(
図1)のキャビティ内に挿入しながら個別のコンタクト11に切り離すことで、複数のコンタクト11をハウジング81内部に整列させて装着することができる。コンタクト11の中間部15がハウジング81の内壁に突き当てられると、基板接続部14の基端付近がハウジング81に保持される。
【0034】
製造されたコンタクト11においては、付着している金の全部が接点部131に使用されており、その他の領域に無駄に使用されていない。
ところで、条材20からコンタクト群10を打ち抜くと、切り屑が生じる。その切り屑には金が付着している。しかし、切り屑の収集は容易であり、その切り屑から金を分離して回収できるので、切り屑に付着した金も無駄にならない。
【0035】
以上で説明したように、本実施形態では、部分めっき条材20からコンタクト群10を打ち抜くことで複数のコンタクト11を得ている。条材20において既に、接点部131に対応する位置にめっきが施されているので、条材20から打ち抜いた後にマスキングを伴うめっき処理が不要である。条材20の板厚方向に沿って表れるコンタクト側面には、条材20の製造およびコンタクト11の製造の全過程に亘り、一切、金が付着しない。したがって、金の使用量が最小限に抑えられているので、コンタクト11および電気コネクタ8のコストを抑えることができる。
【0036】
図5(a)に示すように、引き出される向きD3において間欠的に金めっき部28が形成された条材26を用いることもできる。この条材26から
図5(b)に示すように打ち抜くことにより、コンタクト群30を得ることができる。コンタクト群30に含まれるコンタクト31では、金めっき層18がより小さい領域に形成されているので、金の使用量をより一層抑えることができる。
【0037】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
コンタクト11の基材12の材料、貴金属めっきに用いる材料、および下地めっきに用いる材料は、上記実施形態には限定されない。
例えば、ステンレス鋼やアルミニウム合金から形成された基材12に、適宜な材料を用いて下地めっきを施した後、銀やパラジウムを用いて貴金属めっき層18を形成することもできる。
【0038】
本発明は、矩形状の横断面を呈するタブ状またはピン状のコンタクトに適用することができる。本発明において、正方形は矩形に含まれる。
【0039】
本発明は、接触部13に対して基板接続部14が屈曲しているコンタクトにも適用することができる。その場合は、条材20からコンタクト群10を打ち抜くとともに各コンタクト11の基板接続部14を二面121,122の一方の面外方向に折り曲げるとよい。
また、本発明のコンタクトにおいて二面121,122のうちの一面のみに下地めっき層17および金めっき層18が形成されていてもよい。