(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-108638(P2017-108638A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】果実袋
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20170526BHJP
【FI】
A01G13/02 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-243159(P2015-243159)
(22)【出願日】2015年12月14日
(71)【出願人】
【識別番号】514177649
【氏名又は名称】ピセ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 秋則
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024FC04
(57)【要約】
【課題】食害及び虫害を効果的に防止することが可能な果実袋を提供する。
【解決手段】育成過程における果実を覆うための果実袋1であって、果実2を収容可能な収容空間12及び収容空間12の内部に果実2を挿入させるための開口14を有する袋本体10と、袋本体10の表面に積層された忌避剤層20とを備えている。忌避剤層20は、刺激成分を有する食品添加物を主成分とする材料からなる。食品添加物は、例えば、酢類、からし類又はわさび類等である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育成過程における果実を覆うための果実袋であって、
果実を収容可能な収容空間及び該収容空間の内部に果実を挿入させるための開口を有する袋本体と、
前記袋本体の表面に積層された忌避剤層と
を備えることを特徴とする果実袋。
【請求項2】
前記忌避剤層は、刺激成分を有する食品添加物を主成分とする材料からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の果実袋。
【請求項3】
前記食品添加物は、酢類、からし類又はわさび類である
ことを特徴とする請求項2に記載の果実袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りんご、ぶどう、桃、梨及び柑橘類等の果実類を食害や虫害等から保護するための果実袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、りんご、ぶどう、桃、梨及び柑橘類等の果実類をシンクイムシ等の害虫から保護するために、防害虫効果のある農薬の散布が行われている(特許文献1)。
【0003】
また、従来、果実を虫害、冷害及び日焼け等から保護するために、育成過程の果実に果実袋を被せることが行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−221816号公報
【特許文献2】特開2000−188975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、農薬を散布する従来の方法では、土壌汚染や水質汚染等の環境に与える影響が大きく、また、人体へ悪影響を及ぼすおそれがあるという問題がある。
【0006】
また、従来の果実袋は、果実を覆うための袋に過ぎず、害虫に対する忌避効果を有するものではないため、果実袋の開口部と果実との隙間から害虫が進入するおそれがある等、防害虫効果が十分ではないという問題がある。さらに、果実袋を用いた従来の方法では、カラス等の鳥類が果実袋を破って果実を啄むおそれがあり、食害への対策が不十分であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、食害及び虫害を効果的に防止することが可能な果実袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る果実袋は、育成過程における果実を覆うための果実袋であって、果実を収容可能な収容空間及び該収容空間の内部に果実を挿入させるための開口を有する袋本体と、前記袋本体の表面に積層された忌避剤層とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る果実袋において、前記忌避剤層は、刺激成分を有する食品添加物を主成分とする材料からなることが好ましい。
【0010】
この場合において、前記食品添加物は、酢類、からし類又はわさび類等であるとしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食害及び虫害を効果的に防止することが可能な果実袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る果実袋の概略構成を示す正面図である。
【
図2】
図1のA−A´線に沿った断面を拡大して示す概略拡大断面図である。
【
図3】本実施形態に係る果実袋の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本実施形態に係る果実袋1は、りんご、ぶどう、桃、梨及び柑橘類等の果実類を食害や虫害等から保護するために用いられる包み袋であって、
図1及び
図2に示すように、上端部に開口14を有する袋本体10と、袋本体10の外表面に積層された忌避剤層20とを備えている。
【0015】
袋本体10は、
図1に示すように、果実を収容可能な収容空間12と、収容空間12の内部に果実を挿入させるための開口14とを有している。袋本体10の開口14の近傍には、針金等からなる封口部材16が埋設されており、この封口部材16によって開口14の近傍を収束した状態で封口することが可能に構成されている。このような袋本体10は、例えば、横長の紙材を横方向に二つ折りし、その側縁部10aの重ね合わせ部分に封口部材16を位置させた状態で、その側縁部10a及び下端縁部10bを接着剤で接着させることにより製造することができる。なお、本実施形態において、袋本体10は、
図1に図示したものの他、種々の公知の果実袋を用いることが可能である。
【0016】
忌避剤層20は、カラス等の鳥類やシンクイムシ等の害虫に対する忌避効果を有する材料から形成されており、
図2に示すように、袋本体10の外表面の略全域に積層されている。このような忌避剤層20を形成するための材料としては、食品中に添加されることが許可され、かつ、その刺激成分により鳥類や害虫に対する忌避効果を有する、例えば、酢類、からし類及びわさび類等の食品添加物を主成分とする材料を好適に用いることができる。
【0017】
本実施形態に係る果実袋1は、酢類、からし類及びわさび類等の食品添加物を含有する水溶液をハケやスプレー等によって袋本体10の外表面に塗布し、その後乾燥させる方法や、酢類、からし類及びわさび類等の食品添加物を含有する水溶液に袋本体10を浸漬させ、その後乾燥させる方法等により製造することができる。なお、食品添加物が例えば酢類等の液状物質である場合には、水で薄めることなくそのまま塗布乃至浸漬させるとしても良い。
【0018】
以上の構成を備える果実袋1は、
図3に示すように、果実2が小さい間に、開口14から収容空間12内に果実2を収容させた後、果軸4(又は枝8)上で袋本体10の開口14を収束し、封口部材16によって収束した開口14の近傍を巻き付けることで、育成過程における果実2を覆うように取り付けられる。
【0019】
以上のとおり、本実施形態に係る果実袋1は、育成過程における果実2を覆うための果実袋1であって、果実2を収容可能な収容空間12及び収容空間12の内部に果実2を挿入させるための開口14を有する袋本体10と、袋本体10の表面に積層された忌避剤層20とを備えている。このように、本実施形態に係る果実袋1は、袋本体10に忌避剤層20が積層され、果実袋1自体に鳥類や害虫に対する忌避効果が付与されることにより、果実に対する害虫の付着を確実に防止することができると共に、鳥類が果実袋1を啄むことを確実に防止することができるため、食害及び虫害を効果的に防止することが可能となる。
【0020】
また、本実施形態に係る果実袋1は、忌避剤層20が、例えば酢類、からし類又はわさび類等の刺激成分を有する食品添加物を主成分とする材料から構成されているため、環境に優しく、かつ、忌避剤が果実に付着した場合であっても人体に悪影響を与えることがないという利点を有する。
【0021】
さらに、本実施形態に係る果実袋1は、袋本体10の外表面に忌避剤層20が積層されているため、果実の表面に忌避剤が付着することがないという利点を有している。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0023】
例えば、上述した実施形態では、果実袋が、りんご、ぶどう、桃、梨及び柑橘類等の果実類を食害や虫害等から保護するために用いられる包み袋であるものとして説明したが、このような用途に限定されず、本発明に係る果実袋は、食害や虫害からの保護が要求される育成物に広く転用可能であり、例えば、メロン、トマト及びイチゴ等の野菜類にも用いることが可能である。
【0024】
また、上述した実施形態では、忌避剤層20が、袋本体10の外表面の略全域に積層されるものであるとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、袋本体10の内表面の略全域に積層されるものであるとしても良いし、袋本体10の外表面及び内表面の双方に積層されるものであるとしても良い。また、袋本体10の外表面及び/又は内表面の一部にのみ積層されるものであるとしても良い。
【0025】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0026】
1 果実袋、2 果実、4 果軸、8 枝、10 袋本体、10a 側縁部、10b 下端縁部、12 収容空間、14 開口、16 封口部材(針金等)、20 忌避剤層