(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-109235(P2017-109235A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】圧造部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B21K 1/46 20060101AFI20170526BHJP
B21J 5/08 20060101ALI20170526BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
B21K1/46 Z
B21J5/08 Z
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-247810(P2015-247810)
(22)【出願日】2015年12月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】六渡 秀鷹
(72)【発明者】
【氏名】片山 直人
【テーマコード(参考)】
2F065
4E087
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA17
2F065BB27
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ04
2F065QQ28
2F065QQ31
4E087CA17
4E087CA33
4E087CC01
4E087HA53
4E087HA58
(57)【要約】
【課題】頭頂面の圧造痕などが目立ち難い圧造部品およびその製造方法の提供。
【解決手段】所定の長さに切断した棒状素材16の直径よりも大径の頭部2と、この頭部2よりも小径の軸部5とを圧造した圧造部品1であり、頭部2は、その頭頂面2aに微細な凹凸面2bを備えて成る。また、圧造部品1の製造方法は、棒状素材16の端部に第1パンチ14を押圧する予備成形工程と、この予備成形工程により成形した予備成形頭部16bに第2パンチ15を押圧する仕上げ成形工程とを含み、前記仕上げ成形工程は、微細な凸凹面15bを備えた前記第2パンチ15により前記予備成形頭部16bを押圧し、前記頭部2の頭頂面2aに微細な凹凸面2bを成形する。これにより、本発明の圧造部品1およびその製造方法は、従来に比べて製造時に頭頂面2aに発生していた圧造痕等が目立ち難い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さに切断した棒状素材の直径よりも大径の頭部と、この頭部よりも小径の軸部とを圧造により成形した圧造部品において、
前記頭部は、その頭頂面に微細な凹凸面を備えて成ることを特徴とする圧造部品。
【請求項2】
前記頭部は、その頭頂面の中心に所定の深さに成形された基準穴を備えて成り、
前記基準穴は、前記凹凸面と異なるコントラストで画像処理され、前記基準穴の位置を正確に画像処理できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の圧造部品。
【請求項3】
所定の長さに切断した棒状素材を受け駒の端面から一部突出させて前記棒状素材の端部に第1パンチを押圧して予備成形を行う予備成形工程と、前記予備成形工程により成形した予備成形頭部に第2パンチを押圧して前記棒状素材の直径よりも大径の頭部を圧造成形する仕上げ成形工程とを含む圧造部品の製造方法において、
前記仕上げ成形工程は、微細な凸凹面を備えた前記第2パンチにより前記予備成形頭部を押圧し、前記頭部の頭頂面に微細な凹凸面を成形することを特徴とする圧造部品の製造方法。
【請求項4】
前記仕上げ工程は、前記当接面に突起部を備えた第2パンチにより前記予備成形頭部を押圧し、前記頭部の頭頂面に所定深さの基準穴を成形して、前記基準穴が前記凹凸面と異なるコントラストで画像処理できるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の圧造部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状素材に複数のパンチをそれぞれ押圧して段階的に圧造成形した圧造部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧造部品およびその製造方法は、特許文献1および特許文献2に示されており、以下に説明する。前記圧造部品は、一定の直径から成る線材を所定の長さに切断した棒状素材を圧造成形して構成されており、前記棒状素材の直径よりも大径の頭部と、この頭部よりも小径の軸部とから構成されている。
【0003】
また、従来の圧造部品の製造方法は、前記棒状素材を受け駒の端面から一部突出させるように保持する保持工程と、突出した前記棒状素材の端部へ第1パンチを押圧して前記頭部の予備成形を行う予備成形工程と、この予備成形工程により成形された予備成形頭部へ第2パンチを押圧して前記頭部を仕上げる仕上げ成形工程とを含む。
【0004】
このように従来の圧造部品の製造方法は、前記棒状素材の一端へ前記第1パンチおよび第2パンチを順に押圧し前記受け駒から突出させた棒状素材の直径を段階的に拡張させ前記頭部を仕上げるものである。
【0005】
ところで、従来の製造方法により得られた圧造部品をロボットなどを用いてワークへ組み付ける作業においては、ロボットに接続したカメラにより前記圧造部品の頭頂面を撮影し前記頭部の位置を認識させることがある。また、この場合、前記頭部の頭頂面には位置認識の基準となる基準穴が頭頂面の中心に予め付されている。
【0006】
このように基準穴を付した圧造部品を認識する具体的な方法としては、カメラにより頭頂面全体を撮影するとともに撮影画像を二値化処理することが知られ、これにより、前記基準穴が白く、その他の頭頂面が黒く表現される。この処理された二値化画像は、基準穴とその他頭頂面との色彩に違いがあるので、ロボットは、この色彩の違いに基づいて頭頂面の中心を割り出すことができる。よって、ロボットが割り出した頭頂面の中心と予め設定されている頭部の直径とに基づいて頭部の外周を認識するので、例えば圧造部品をワークに溶接する作業であれば、頭部外周に沿って溶接可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4684862号公報
【特許文献2】特許第2909892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の圧造部品およびその製造方法によれば、受け駒端面から棒状素材を一部突出させこの状態で第1パンチを押圧するので、第1パンチに当接する棒状素材の端面は径方向へ膨れず軸方向に押圧され、突出している棒状素材の軸方向中間付近は座屈して径方向に膨れて変形する。また、次の仕上げ成形工程では、前記予備成形頭部の端面に第2パンチを押圧して前記予備成形工程により径方向へ膨れた箇所をさらに径方向へ広がるように変形させる。この仕上げ成形工程において、第2パンチと当接している予備成形頭部の端面は、前記予備成形工程とほぼ同じ径寸法を保ち軸方向へ押圧されるので、最終的に仕上がった頭部の頭頂面は、前記棒状素材の端面外周線(以下、ピン跡という)が残り、そのピン跡の周りに前述の膨れた箇所の余肉がまわり成形されることになる。したがって、従来の圧造部品およびその製造方法は、頭頂面にピン跡が残ってしまい製品外観上に問題があった。
【0009】
また、従来の圧造部品およびその製造方法は、前記頭部の頭頂面に前記ピン跡とは異なるくすんだ圧造痕(
図4の矢印箇所など)がピン跡の周囲に表れる。この圧造痕は、上述した予備成形頭部の膨れた箇所がさらに径方向へ拡張して変形する際に生じるものであり、前記第2パンチにより押圧され前記余肉がまわることで前記頭頂面に表れてしまう。これにより、従来の圧造部品およびその製造方法は、頭部の頭頂面に前記ピン跡が残るだけでなく、このピン跡周辺に前記圧造痕が表れるため、さらに製品の外観が悪く、商品価値を失うという問題もあった。
【0010】
さらに、上述のロボットなどにより圧造部品をワークに溶接する作業では、前記カメラを用いて前記頭頂面の二値化画像から圧造部品の外周を認識しているが、上述したピン跡や圧造痕が前記基準穴と同じように白く処理されるので、前記ピン跡や圧造痕を前記基準穴と誤認され易かった。また、これらピン跡や圧造痕は、上述および
図4に示すように頭頂面の中心から離れた位置に表れてしまうので、頭頂面の中心に位置しないピン跡あるいは圧造痕が中心に設定され溶接箇所が設定されてしまう。したがって、従来の製造方法により得られた圧造部品は、その頭頂面にピン跡や圧造痕が表れるので、カメラによる画像処理では頭頂面の正確な中心位置を設定できないという問題もあった。しかも、この後、ロボットは、頭頂面の中心位置を誤認した状態で溶接してしまうため、圧造部品をワークに正確に組み付けできないばかりでなく、圧造部品を組み付けたワーク表面が溶接による熱で破損するなどの問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧造部品は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、所定の長さに切断した棒状素材の直径よりも大径の頭部と、この頭部よりも小径の軸部とを圧造により成形した圧造部品において、前記頭部は、その頭頂面に微細な凹凸面を備えて成ることを特徴とする。なお、前記頭部は、その頭頂面の中心に所定の深さに成形された基準穴を備えて成り、前記基準穴は、前記凹凸面と異なるコントラストで画像処理され、前記基準穴の位置を正確に画像処理できるように構成することが好ましい。
【0012】
また、本発明の圧造部品の製造方法は、所定の長さに切断した棒状素材を受け駒の端面から一部突出させて前記棒状素材の端部に第1パンチを押圧して予備成形を行う予備成形工程と、前記予備成形工程により成形した予備成形頭部に第2パンチを押圧して前記棒状素材の直径よりも大径の頭部を圧造成形する仕上げ成形工程とを含み、前記仕上げ成形工程は、微細な凸凹面を備えた前記第2パンチにより前記予備成形頭部を押圧し、前記頭部の頭頂面に微細な凹凸面を成形することを特徴とする。なお、前記仕上げ工程は、前記当接面に突起部を備えた第2パンチにより前記予備成形頭部を押圧し、前記頭部の頭頂面に所定深さの基準穴を成形して、前記基準穴が前記凹凸面と異なるコントラストで画像処理できるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧造部品およびその製造方法は、頭部の頂面を凹凸状態に成形するため、従来のように頭頂面に表れていたピン跡や圧造痕が目立ち難くなるという利点がある。これにより、外観検査において問題になることも少なくなり、生産性が向上するという利点もある。また、本発明の圧造部品の頭頂面に基準穴が付され、この頭頂面をカメラにより画像処理した場合、凹凸の頭頂面が基準穴とは異なる色彩に処理されるため、前記ピン跡や圧造痕が基準穴と誤認され難い。つまり、本発明の圧造部品およびその製造方法によれば、画像処理しても前記基準穴とその他の凹凸面とが明確に識別されるので、従来の誤認による問題が起こり難いという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る圧造部品の一実施形態を示す図である。また、(a)は圧造部品の頭頂面を示す平面図であり、(b)は(a)の側方から見た一部切欠き断面図である。
【
図2】本発明に係る圧造部品の製造方法を示す工程図である。また、(a)は切断工程、(b)は絞り工程、(c)は予備成形工程、(d)は仕上げ成形工程、(e)は排出工程を示す。
【
図3】本発明に係る圧造部品の頭頂面またはこれを仕上げる第2パンチの当接面を撮影した平面写真であり、(a)は頭頂面、(b)は当接面を示す。
【
図4】従来の圧造部品の頭頂面を撮影した平面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る圧造部品を
図1に基づき説明する。本発明の圧造部品1は、金属から成る所謂リベットであり、大径の頭部2と、この頭部2の直径よりも小径の軸部5とを備えて成る。また、前記頭部2の頭頂面2aには、その中心に配され所定の深さから成る基準穴2cと、所定の面荒さから成る凹凸面2bとが成形されており、前記基準穴2cは、
図1(a)および
図1(b)に示すように円筒形状となっている。
【0016】
前記凹凸面2bは、その算術平均荒さRaが0.8〜5.0の範囲、その最大高さRyが4.0〜22.0の範囲、その十点平均荒さRzが3.5〜16.0の範囲に設定され、好ましくは前記算術平均荒さRaが1.0〜2.0の範囲、前記最大高さRyが4.5〜12.5の範囲、前記十点平均荒さRzが4.0〜7.0の範囲に設定された微細な凹凸状態となるように成形されている。
【0017】
これにより、本発明の圧造部品1は、従来問題となっていた圧造痕等(例えば、
図4の矢印部など)が
図3(a)に示すように微細な凹凸面2bによって目立ち難くなる。また、前記頭頂面2aを上方から撮影して画像処理する場合であると、前記凹凸面2bと奥行きのある前記基準穴2cとでは、
図3(a)に示すようにコントラストの違いが表れ易く、前記凹凸面2bと基準穴2cとを確実に見分けることができる。したがって、カメラ等により頭頂面2aを撮影して画像処理した結果に基づいて例えば前記頭部2の外周を認識しこの頭部2の外周に溶接を施したり、或いは、認識した頭部2の外周をロボットハンド(図示せず)等により把持して前記圧造部品1を所定の場所へ移載することが確実に行える。
【0018】
次に、本発明に係る圧造部品の製造方法について
図2に基づき説明する。本発明の圧造部品1の製造方法は、線材10を所定の長さに切断する切断工程(
図2(a)の状態)と、前記切断工程により切断した棒状素材16の先端を絞り加工する絞り工程(
図2(b)の状態)と、前記棒状素材16の端部に第1パンチ14を押圧して予備成形頭部16bを成形する予備成形工程(
図2(c)の状態)と、前記予備成形頭部16bに第2パンチ15を押圧して前記頭部2を圧造成形する仕上げ工程(
図2(d)の状態)と、前記仕上げ工程によって仕上がった圧造部品1を受け駒13aから排出する排出工程(
図2(e)の状態)とを含む。
【0019】
前記切断工程は、材質がアルミである線材10を切り駒11aへ挿通するとともに、線材10の先端がストッパ11bに当接するまで繰出し、切り駒11aの一端から突出した線材10を所定の長さに切断する工程である。また、線材10の切断は、線材10の軸線と直交する方向へ移動するカッター11cにより行われる。
【0020】
前記絞り工程は、前記切断工程によって切断した棒状素材16と、この棒状素材16を挿通可能な挿通穴およびこの挿通穴よりも小径の絞り穴を備えた絞り駒12aと、前記絞り穴の所定の位置まで挿通された絞り駒ピン12cと、前記挿通穴を挿通自在な絞りピン12bとが用いられる工程である。また、前記棒状素材16が前記絞り駒ピン12cをセットした絞り駒12aの挿通穴へ挿通され、前記絞りピン12bによって所定の位置まで押圧される。これにより、前記棒状素材16の先端は線材10の直径よりも小径に絞り込まれる。
【0021】
前記予備成形工程は、前記絞り工程により絞られた先端形状の棒状素材16を完成形状に近づけるための工程であり、前記棒状素材16と、この棒状素材16を挿通してガイドする受け駒13aと、この受け駒13aの端部に設けられた最小径穴部へ挿通された受け駒ピン13bと、前記受け駒13aの端面へ接近する方向に移動して前記棒状素材16の一端を押圧し予備成形する第1パンチ14とが用いられる。これにより、前記棒状素材16の一端は、前記第1パンチ14の端面形状に沿って胴膨れするように変形して前記予備成形頭部16bとなる。
【0022】
前記仕上げ工程は、前記予備成形工程により成形された予備成形頭部16bを有する棒状素材16と、前記予備成形工程で使用した前記受け駒13aおよび受け駒ピン13bと、予備成形頭部16bを押圧して前記頭頂面2aを凹凸面2bに仕上げる第2パンチ15とが用いられる工程である。また、前記第2パンチ15は、前記予備成形頭部16bに当接する当接面15aを備えており、この当接面15aは、
図3(b)に示すような前記基準穴2cを成形する突起部15cと、前記凹凸面2bを成形する微細な凸凹面15bとが形成されている。この仕上げ工程では、まず、前記棒状素材16が前記受け駒13aにセットされ、前記予備成形頭部16bの一部が前記第2パンチ15側へ突出する状態にする。次に、前記第二パンチ15の当接面15aが前記受け駒13aの最大穴径の座繰り部に入り込み、前記頭部2が成形される。これにより、前記頭部2の頭頂面2aには、凸凹面15bに成形された凹凸面2bおよび前記突起部15cに成形された基準穴2cが表れる。
【0023】
前記排出工程は、前記仕上げ工程によって成形した圧造部品1を前記受け駒13aから排出する工程であり、前記受け駒ピン13bが延びる方向へ移動して前記圧造部品1を押し出している。
【0024】
なお、本実施形態において、圧造部品1をリベットとしたが、これに限定されることは無く、例えば、軸部3におねじを成形したねじやボルトであってもよいことはいうまでもない。また、圧造部品1の材質をアルミとしたがこれに限定されるものではなく、例えば底炭素鋼や銅などであってもよい。さらに、前記基準穴2cは円筒形状に限定されるものではなく、例えば、多角柱形状や円錐形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 圧造部品
2 頭部
2a 頭頂面
2b 凹凸面
2c 基準穴
15 第2パンチ
15a 当接面
15b 凸凹面
15c 突起部
16 棒状素材