【解決手段】吸着装置(20)は、内部流路(C2、C3)を有する吸着パッド(31)と、吸着パッドを支持する吸着パッド支持体(33)と、内部流路と連通し内部流路よりも開口面積が小さい絞り(36a)を有し、吸着パッドと吸着パッド支持体との間に取り外し可能に設けられる板状の絞り部材36と、を備える。
前記絞り部材と平行な方向において前記固定部材と前記絞り部材とを相対的に移動可能なように、前記絞り部材に切り欠きが設けられている、請求項3に記載の吸着装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、XYZの各方向において、適宜、矢印と同じ側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を−側(例、−X側)と称す。
【0012】
図1(A)は、実施形態に係る吸着装置を適用したワーク支持装置を示す図であり、
図1(B)は加工パレットを示す図である。ここでは、ワーク支持装置の一例としてフォーク装置を説明する。フォーク装置1は、例えば、加工機によって切断加工が施されたワークWを受け取り、このワークWを支持する。切断加工は、レーザ光の照射によりワークWを切断するレーザ加工機によるレーザ加工でもよいし、切断刃によりワークWを切断するパンチプレスによるパンチ加工でもよく、レーザ加工機およびパンチプレス機を用いる複合加工でもよい。切断加工が施されたワークWは、例えば、
図1(B)に示す加工パレット2に保持され、所定の位置まで運ばれる。フォーク装置1は、例えば、所定の位置において、加工パレット2からワークWを受け取る。
【0013】
加工パレット2は、例えば、レール3に沿って移動可能な車輪(図示せず)を備える。レール3は、加工パレット2によりワークWを搬送するワーク搬送システムは、加工パレット2を牽引することによって、レール3に沿って加工パレット2を移動させる。例えば、加工パレット2には、ワイヤと接続されたフックが掛けられ、このワイヤが駆動部に巻き取られることで加工パレット2が牽引される。なお、加工パレット2を移動させる機構は適宜変更可能であり、例えば、加工パレット2が自走式でもよい。
【0014】
加工パレット2は、ベースプレート5および複数の支持プレート6を備える。複数の支持プレート6は、それぞれ板状であり、ベースプレート5の上面に対してほぼ垂直に設けられる。複数の支持プレート6は、それぞれワークWの下面と平行な所定方向(例、Y方向)に延びており、X方向に所定の間隔で並んでいる。複数の支持プレート6は、それぞれ、鋸歯状に形成された上端部を有する。複数の支持プレート6は、ワークWの下面を複数の点(鋸歯の先端)で支持する。
【0015】
切断加工にレーザ加工機を用いる場合、レーザ加工機は、例えば、加工パレット2に載置された加工前のワークWに対してレーザ光を照射して、ワークWにレーザ加工を施す。ワークWは、切断加工により、例えば製品Waと残材Wb(スケルトン、製品Waの周辺部分)とに切り分けられる。
【0016】
レーザ加工機は、レーザヘッドと、ヘッド駆動部とを備える。レーザヘッドは、光ファイバなどの光伝送体を介してレーザ光源に接続され、下方にレーザ光を射出する。レーザ光源は、例えばファイバーレーザなどの固体レーザの光源であり、炭酸ガスレーザなどに比べて熱密度の高いレーザ光が得られる。そのため、ファイバーレーザを用いたレーザ加工機は、高速で切断加工を行うことが可能である。レーザ加工によりワークWと加工パレット2の支持プレート6とが溶着することがあるが、支持プレート6がワークWを複数の点で支持するので、支持プレート6とワークWとの溶着部を減らすことができる。
【0017】
フォーク装置1は、基部11と、複数の腕部12と備える。基部11は、X方向に延びる板状であり、複数の腕部12は、それぞれ基部11から+Y方向に延びる棒状である。複数の腕部12は、例えば、加工パレット2の支持プレート6とほぼ等しいピッチ(中心間距離)でX方向に配列されている。各腕部12の幅は、加工パレット2において隣り合う2つの支持プレート6のギャップよりも狭く設定され、各腕部12は、隣り合う2つの支持プレート6の間に挿入可能である。各腕部12の上面12aは、ワークWが受け渡される際に、ワークWの下面と対向する。腕部12の上面12aには、実施形態に係る吸着装置として吸着部20(後に
図3等にも示す)が設けられる。フォーク装置1は、基部11を駆動する駆動部、及びガイド13を備える。ガイド13は、X方向における基部11の両側にそれぞれ配置され、Y方向に延びている。フォーク装置1の駆動部は、基部11および複数の腕部12をガイド13に沿って、Y方向に移動させる。
【0018】
図2は、実施形態に係るワーク支持装置の動作を示す図である。フォーク装置1は、
図2(A)に示すように、ワークWを保持する加工パレット2に向かって、複数の腕部12を−Y側へ移動させる。この際に、複数の腕部12の高さは、加工パレット2のベースプレート5の上面よりも上方、かつワークWの下面よりも下方に設定されている。複数の腕部12は、加工パレット2の支持プレートに対して所定方向(Y方向)に相対的に移動して、加工パレット2において隣り合う2つの支持プレート6の間に挿入され、ワークWの下方に配置される。
【0019】
図2(A)の状態では、ワークWは、加工パレット2の複数の支持プレート6によって支持されている。
図2(B)に示すように、複数の腕部12がワークWの下方に配置された状態で、加工パレット2は、複数の腕部12に対して下方に移動し、ワークWが複数の腕部12上に渡される。このように、フォーク装置1は、加工パレット2に対して鉛直方向に相対的に移動して、加工パレット2からワークWを受け取る。複数の腕部12は、それぞれ、加工パレット2の複数の支持プレート6の間でワークWの下面を支持する。なお、フォーク装置1は、複数の腕部12が上方に移動することで加工パレット2からワークWを受け取るものでもよい。
【0020】
ところで、ワークWと加工パレット2とがレーザ加工により溶着している場合、ワークWが複数の腕部12に支持された状態で加工パレット2が下方に移動することで、溶着を剥がして、ワークWを加工パレット2から分離することができる。また、フォーク装置1は、加工パレット2と比べてレーザ加工に供する上での制約が少ないことから、加工パレット2と比べてワークWを安定的に支持するように構成することができる。例えば、複数の腕部12は、複数の支持プレート6と比べて、多点あるいは広い接触面積でワークWを支持することが可能であり、ワークWを安定的に保持することができる。
【0021】
図3は、実施形態に係る吸着装置(吸着部20)を示す図である。吸着部20は、フォーク装置1の腕部12に設けられる。
図3には、吸着部20のうち1つの腕部12に設けられる部分を代表的に示した。吸着部20は、ワークWと対向する腕部12の上面12aに設けられる。吸着部20は、例えば、フォーク装置1に支持されたワークW(
図2(B)参照)のうち少なくとも製品Waを吸着する。吸着部20は、複数の吸着パッド31を備え、複数の吸着パッド31は、腕部12の長さ方向(Y方向)に並んでいる。ここでは、複数の吸着パッド31は、所定の数の吸着パッド31ごとに一括して、腕部12に取り付けられている。以下の説明において、所定の数の吸着パッド31を含む部分を吸着ユニット32と称する。ここでは、腕部12の内部に気密性を有する流路C1(空洞)が設けられ、吸着パッド31は、流路C1を介した減圧により、ワークWを吸着する。流路C1は、腕部12の長さ方向(Y方向)に延びており、減圧装置(吸気装置、吸引装置)と接続される。
【0022】
図4は、実施形態に係る吸着装置の一部(吸着ユニット32)を示す斜視図および平面図であり、
図5は、吸着ユニット32を示す分解斜視図および断面図である。
図4(A)に示すように、吸着ユニット32は、吸着パッド31と、吸着パッド支持体33と、押さえ部材35と、絞り部材36と、固定部材37と、を備える。
【0023】
吸着パッド31は、吸着対象のワークWと対向する位置に配置される。吸着パッド31は、吸着パッド支持体33に支持されている。ここでは、吸着パッド支持体33は、フォーク装置1の腕部12の上面12aを含む部分(天井部)である。吸着パッド31は、腕部12の長さ方向に所定の間隔で並んでいる。吸着パッド31は、ワークWの表面に接触する部分である。吸着パッド31は、例えばゴムなどの変形容易な材質で形成される。
【0024】
吸着パッド31(
図5(B)参照)は、上部31aおよび下部31bを有し、内部流路(流路C2、流路C3)を有する中空構造である。吸着パッド31の上部31aは、その内部に流路C2(空洞)を有する。上部31aは、下方から上方にむかうにつれて外径および内径が大きくなるテーパ状である。吸着パッド31の下部31bは、その内部に流路C3(空洞)を有する中空構造であり、流路C3は上部31aの流路C2と連通している。下部31bは、概ね円筒状である。
【0025】
絞り部材36は、例えば金属製あるいは樹脂製であり、板状(薄板状、シート状)の部材である。絞り部材36は、吸着パッド31と吸着パッド支持体33との間に取り外し可能に設けられる。絞り部材36は、吸着パッド31ごとに設けられる絞り36a(ノズル)を有する。絞り36aは、絞り部材36を貫通する貫通孔であり、エアのリーク(負圧の漏れ)を抑制可能である。本実施形態において吸着部20は吸着パッド31を複数備えており、絞り部材36は、吸着パッド31ごとに設けられる絞り36aを複数有する。例えば、絞り36aと吸着パッド31とが1対1の対応で設けられ、1つの絞り部材36が複数の吸着パッド31に対応して設けられる。
【0026】
絞り36aは、吸着パッド31の内部流路(流路C2、流路C3)と連通するように配置され、流路C2、流路C3のいずれよりも開口面積が小さい。例えば、流路C2、流路C3および絞り36aは、それぞれ開口形状が円形であり、絞り36aの内径は、流路C2、流路C3の内径よりも小さい。吸着パッド31の流路C2、流路C3の開口面積がZ方向の位置によって変化する場合、その最小値を吸着パッド31における内部流路(流路C2、流路C3)の開口面積とする。絞り36aの開口面積についても同様に、Z方向の位置によって変化する場合、その最小値を絞り36aの開口面積とする。絞り36aは、例えば微小な孔であり、その平均内径が1mm以下でもよいし、0.5mm以下でもよく、0.1mm以下でもよい。このような絞り部材36は、例えば、金属シートあるいは樹脂シートなどの母材に、加工パレット2上のワークにレーザ加工を施すレーザ加工機を用いて絞り36aを形成したものでもよい。
【0027】
吸着パッド支持体33と絞り部材36との間には、ガスケット38が設けられる。ガスケット38は、吸着パッド支持体33と絞り部材36とに挟み込まれている。ガスケット38は、その上面が絞り部材36の下面と接しており、その下面が吸着パッド支持体33の上面(腕部12の上面12a)と接している。ガスケット38は、板状(例、薄板状、シート状)の部材であり、絞り36aと連通する貫通孔38aを有する。吸着パッド支持体33には、腕部12の流路C1と通じる貫通孔33aが設けられており、ガスケット38の貫通孔38aは、吸着パッド支持体33の貫通孔33aとも連通している。絞り部材36の絞り36aの絞り36aの開口面積は、ガスケット38の貫通孔38aの開口面積よりも小さい。
【0028】
ガスケット38は、吸着パッド支持体33と絞り部材36との間のエアのリーク(負圧漏れ)を抑制するシール部材として利用される。例えば、吸着パッド支持体33と絞り部材36とが金属製である場合、ガスケット38は、吸着パッド支持体33および絞り部材36のそれぞれと密着するように、可撓性を有するゴムあるいは樹脂などで形成される。
【0029】
ここで、吸着部20による吸着動作について説明する。腕部12の流路C1と接続される減圧装置(図示せず)は、腕部12の流路C1を減圧する。すると、吸着パッド支持体33の貫通孔33c、ガスケット38の貫通孔38a、及び絞り部材36の絞り36aを介して、吸着パッド31の内部流路(流路C2、流路C3)が減圧される。これにより、吸着パッド31とワークWの表面との間が負圧となり、この負圧によって吸着パッド31の上のワークWが吸着(吸引)される。
【0030】
ところで、絞り部材36の絞り36aは、開口面積が小さいことから粉塵等が詰まることがある。絞り36aに粉塵等が詰まった場合、絞り36aを介した吸引を十分に行うことができず、吸着不良を生じる。本実施形態に係る吸着装置(吸着部20)は、押さえ部材35による絞り部材36の押圧を弱めて絞り部材36を取り外し、絞り部材36の交換、あるいは絞り36aの詰まりを開通するメンテナンス等を行うことができる。以下、絞り部材36の取り付け構造、及び取り外し方法について説明する。
【0031】
押さえ部材35(
図5参照)は、絞り部材36に対して、吸着パッド支持体33と反対側(−Z側)に設けられる。押さえ部材35は、板状の部材であり、吸着パッド31が取り付けられる取り付け孔35aを有する。取り付け孔35aは、吸着パッド31ごとに設けられる。押さえ部材35は、吸着ユニット32ごとに設けられ、複数の吸着パッド31(
図5では3個)に共通で設けられる。
【0032】
吸着パッド31は、例えば、上部31aをすぼめて、取り付け孔35aに対して下方から挿入されて、押さえ部材35に取り付けられる。取り付け孔35aは、例えば、その周囲に部分が吸着部20の下部31bに引っかかるように、その内径が吸着パッド31の下部31bの外径よりも小さく設定される。なお、押さえ部材35に、取り付け孔35aの代わりに切り欠きを設けておき、この切り欠きに沿って吸着パッド31をスライドさせて取り付けてもよい。押さえ部材35は、吸着パッド支持体33に向かって押しつけられて固定され、吸着パッド31の下部31bを介して、絞り部材36およびガスケット38を吸着パッド支持体33へ押圧する。
【0033】
固定部材37は、押さえ部材35を吸着パッド支持体33と固定する。固定部材37は、例えば、吸着パッド31の配列方向(Y方向)において、吸着パッド31よりも外側(+Y側、−Y側)のそれぞれに設けられる。固定部材37は、例えばネジ(締結部材)などであり、そのネジの軸にスペーサ41が挿通され、吸着パッド支持体33のネジ穴33bにねじ込まれる。固定部材37は、ネジ穴33bから緩めることで、押さえ部材35を吸着パッド支持体33へ押し付ける力が弱くなり、これにより、押さえ部材35が吸着パッド31の下部31bを介して絞り部材36を押圧する押圧力が弱くなる。このように、固定部材37は、押さえ部材35の押圧力を可変である。なお、固定部材37は、バネなどにより押さえ部材35を吸着パッド支持体33に向けて押圧して、押さえ部材35を固定するものでもよい。
【0034】
図5(A)に示すように、絞り部材36には、絞り部材36と平行な方向において固定部材37と絞り部材36とを相対的に移動可能なように、切り欠き36bが設けられている。切り欠き36bは、例えば、絞り部材36の短手方向(X方向)の片側(−X側)が外部へ開放されている。固定部材37は、切り欠き36bを通してネジ穴33bにねじ込まれる。また、
図4(B)に示すように、絞り部材36は、絞り部材36の厚み方向(Z方向)から見た場合に押さえ部材35の外側に張り出す張り出し部36cを有する。張り出し部36cは、絞り部材36をX方向に移動させる際のツマミ(タブ)として利用される。
【0035】
図6は、実施形態に係る吸着装置における絞り部材の取り外し方法を示す図である。絞り部材36を取り外すには、まず、固定部材37を緩めて、押さえ部材35による絞り部材36の押圧を弱める。固定部材37は、絞り部材36を移動可能なレベルに緩められていればよく、その軸部の一部がネジ穴33b(
図5(A)参照)にねじ込まれたままでよい。そして、作業者は、絞り部材36の張り出し部36cを掴んで、絞り部材36を+X側に引っ張ることにより、絞り部材36を押さえ部材35と吸着パッド支持体33(腕部12)との間から引き出すことができる。このように、絞り部材36は、固定部材37がネジ穴33bにねじ込まれ、かつ緩められた状態において、切り欠き36bが固定部材37に対する逃げ部となって+X側に引き出すことができる。この場合、吸着部20の部品がバラバラになることを避けることができる。
【0036】
また、作業者は、絞り部材36を取り外した後、絞り36aが詰まっていない他の絞り部材36を、押さえ部材35と吸着パッド支持体33(腕部12)との間に挿入し、固定部材37を締めることで絞り部材36を交換することができる。交換用の絞り部材36は、新品であってもよいし、また、取り外された絞り部材36を、詰まりを開通するメンテナンスを行った後に再利用するものでもよい。なお、絞り部材36を挿入する際に、固定部材37を絞り部材36の位置決めに用いることもできる。例えば、絞り部材36を固定部材37に接触するまで挿入することで、絞り部材36が所定の位置に配置されるように、切り欠き36bの形状、寸法、配置を設定してもよい。
【0037】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0038】
上述の実施形態では、吸着部20をフォーク装置1に適用した例を説明したが、実施形態に係る吸着装置は、フォーク装置1以外の装置にも適用可能である。例えば、実施形態に係る吸着装置は、特開2015−199078号公報に開示されているローダ装置などに適用することもできる。例えば、実施形態に係る吸着装置は、製品Waを吸着して移載する移載装置(製品アンローダ)に適用することもできる。また、特開2015−104793号公報に開示されている板材搬送システム、板材加工システム、及び仕分け装置などに適用することもできる。例えば、実施形態に係る吸着装置は、加工前のワークWを吸着して加工パレット2に供給(載置)するワーク供給装置に適用することもできる。
【0039】
なお、吸着ユニット32において、上述の実施形態では吸着パッド31が1次元的に配列されているが、吸着パッド31が2次元的に配列されていてもよい。また、上述の実施形態において、1つの絞り部材36が複数の吸着パッド31に対応して設けられるが、絞り部材36が吸着パッド31ごとに設けられてもよい。