(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-109418(P2017-109418A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】筒状ゴム部材の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/22 20060101AFI20170526BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20170526BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20170526BHJP
【FI】
B29C55/22
B29C43/32
B29K21:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-246948(P2015-246948)
(22)【出願日】2015年12月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝野 寿治
【テーマコード(参考)】
4F204
4F210
【Fターム(参考)】
4F204AA45
4F204AC03
4F204AR04
4F204FB01
4F204FN08
4F204FN21
4F204FQ31
4F204FQ40
4F210AA45
4F210AC00
4F210AG08
4F210QA08
4F210QC02
4F210QG02
4F210QG17
4F210QS10
4F210QW50
(57)【要約】
【課題】設備全体がコンパクトでありながら、早期に寸法を安定化できる筒状ゴム部材の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材9の製造装置1であって、互いの回転軸111,121が平行となるように配置され、成形された筒状ゴム部材9が掛け渡される一対のローラ11,12と、一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を回転駆動する回転駆動装置13と、一対のローラ11,12が互いに接近又は離間する方向に一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を移動させる移動装置14と、回転駆動装置13及び移動装置14を制御する制御部と、を備え、制御部は、一対のローラ11,12を回転させて筒状ゴム部材9を回転させながら、一対のローラ11,12が互いに離間する方向に一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を移動させて筒状ゴム部材9を伸張させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材の製造装置であって、
互いの回転軸が平行となるように配置され、前記成形された筒状ゴム部材が掛け渡される一対のローラと、
前記一対のローラのうち少なくとも一方を回転駆動する回転駆動装置と、
前記一対のローラが互いに接近又は離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させる移動装置と、
前記回転駆動装置及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記一対のローラを回転させて前記筒状ゴム部材を回転させながら、前記一対のローラが互いに離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させて前記筒状ゴム部材を伸張させることを特徴とする筒状ゴム部材の製造装置。
【請求項2】
前記ローラは、回転軸の一端側が前記回転駆動装置に片持ちで接続され、他端側が受け具により回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の筒状ゴム部材の製造装置。
【請求項3】
前記回転軸の他端側には軸方向に突出する凸部が形成されており、前記受け具には前記凸部に嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の筒状ゴム部材の製造装置。
【請求項4】
ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材の製造方法であって、
互いの回転軸が平行となるように配置された一対のローラに前記成形された筒状ゴム部材を掛け渡す工程と、
前記一対のローラを回転駆動させて前記筒状ゴム部材を回転させながら、前記一対のローラが互いに離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させて前記筒状ゴム部材を伸張させる工程と、を備えることを特徴とする筒状ゴム部材の製造方法。
【請求項5】
前記筒状ゴム部材を伸張させる工程の後、前記一対のローラ間の間隔を所定時間保持する工程をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の筒状ゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのインナーライナー等の薄肉のゴム部材は、押出機による押出成形ではゴム流速の均一化が困難なことに加え、金型内圧が高くなりがちで成形しづらく、一般的にはカレンダーロールにより成形されることが多い。しかし、カレンダーロールにて成形すると、内部応力が緩和されにくいため、寸法が安定化するまでに多くの時間や工数を要していた。
【0003】
下記特許文献1には、未加硫ゴムを圧延してゴムシートを形成するカレンダー装置よりもゴムシートの移動方向下流側に設けられ、このゴムシートの移動方向と直交するゴムシート幅方向に、当該ゴムシートの幅寸法を、元の寸法の110%以上に拡大させる伸張装置を備えるゴムシートの成形装置が記載されている。この成形装置によれば、伸張装置によりゴムシートの幅の寸法を、元の寸法の110%以上に拡大させることにより、ゴムシートの移動方向に収縮するための内部応力が緩和されることから、収縮を早期に、かつ簡便に終了させることができ、よってゴムシートの収縮を改善できる。
【0004】
下記特許文献2には、カレンダーロールにより成形されたゴムシートの寸法が安定状態になるまで冷却するゴム用圧延装置におけるゴムシートの寸法安定方法であって、前記ゴムシートを冷却する際に、該ゴムシートの全幅に対して所定の圧力で押圧しながら冷却してゴムシートの寸法の安定を早めることを特徴とするゴムシートの寸法安定方法が記載されている。この寸法安定方法によれば、ゴムシートを冷却する際に、該ゴムシートの全幅に対して所定の圧力で押圧しながら冷却するようにしたので、カレンダーロールにより圧延された未加硫のゴムシートを拘束してその収縮を抑制し、ゴムシートの寸法を早期に安定状態に導くことができる。
【0005】
下記特許文献3には、未加硫ゴムをカレンダーロールで圧延したゴムシートを成形し、ゴムシートの全面を全幅に亘って加熱することによってゴムシートの寸法安定化を促進することを特徴とするゴムシートの成形方法が記載されている。
【0006】
特許文献1〜3に記載の装置又は方法によれば、収縮による寸法変化量は抑えられるが、カレンダー装置よりもゴムシートの移動方向下流側にゴムシートを伸張、押圧、加熱する装置を設けるため、設備全体の設置面積が大きくなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−126099号公報
【特許文献2】特開平5−245864号公報
【特許文献3】特開2002−283376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、設備全体がコンパクトでありながら、早期に寸法を安定化できる筒状ゴム部材の製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の筒状ゴム部材の製造装置は、ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材の製造装置であって、
互いの回転軸が平行となるように配置され、前記成形された筒状ゴム部材が掛け渡される一対のローラと、
前記一対のローラのうち少なくとも一方を回転駆動する回転駆動装置と、
前記一対のローラが互いに接近又は離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させる移動装置と、
前記回転駆動装置及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記一対のローラを回転させて前記筒状ゴム部材を回転させながら、前記一対のローラが互いに離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させて前記筒状ゴム部材を伸張させることを特徴とする。
【0010】
この構成に係る製造装置によれば、筒状ゴム部材を伸張させることで、筒状ゴム部材の内部応力が緩和されるため、早期に寸法を安定化できる。さらに、筒状ゴム部材を回転させながら伸張させるため、全体を均一に緩和させることができる。また、本発明の製造装置は、一対のローラに筒状ゴム部材を掛け渡して回転させながら緩和させるため、カレンダーロールで圧延したゴムシートをシート状のまま緩和させる方法に比べ、設備全体をコンパクトにできる。
【0011】
本発明の筒状ゴム部材の製造装置において、前記ローラは、回転軸の一端側が前記回転駆動装置に片持ちで接続され、他端側が受け具により回転可能に支持されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ローラの回転軸の他端側から受け具を取り外すことで、一対のローラに筒状ゴム部材を容易に掛け渡すことができる。一方、ローラを片持ちとすると、ローラにかかる荷重やローラの自重によってローラに撓みや軸ブレが生じるおそれがあるが、他端側を受け具により支持してローラを両持ちとすることで撓みや軸ブレを抑制できる。その結果、回転する筒状ゴム部材の蛇行を抑制できる。
【0013】
本発明の筒状ゴム部材の製造装置において、前記回転軸の他端側には軸方向に突出する凸部が形成されており、前記受け具には前記凸部に嵌合する凹部が形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ローラの回転軸の他端側を受け具に容易に嵌めることができる。
【0015】
また、本発明の筒状ゴム部材の製造方法は、ゴムを筒状に成形した後に寸法を安定化させる筒状ゴム部材の製造方法であって、
互いの回転軸が平行となるように配置された一対のローラに前記成形された筒状ゴム部材を掛け渡す工程と、
前記一対のローラを回転駆動させて前記筒状ゴム部材を回転させながら、前記一対のローラが互いに離間する方向に前記一対のローラのうち少なくとも一方を移動させて前記筒状ゴム部材を伸張させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成に係る製造方法によれば、筒状ゴム部材を伸張させることで、筒状ゴム部材の内部応力が緩和されるため、早期に寸法を安定化できる。さらに、筒状ゴム部材を回転させながら伸張させるため、全体を均一に緩和させることができる。また、本発明の製造方法は、一対のローラに筒状ゴム部材を掛け渡して回転させながら緩和させるため、カレンダーロールで圧延したゴムシートをシート状のまま緩和させる方法に比べ、設備全体をコンパクトにできる。
【0017】
本発明の筒状ゴム部材の製造方法において、前記筒状ゴム部材を伸張させる工程の後、前記一対のローラ間の間隔を所定時間保持する工程をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、筒状ゴム部材の内部応力が効果的に緩和されるため、より早期に寸法を安定化できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の製造装置及び製造方法は、ゴムを筒状に成形した筒状ゴム部材の寸法を早期に安定化させるためのものである。本発明により寸法が安定化される筒状ゴム部材は、筒状をしたゴム部材であれば特に限定されないが、本発明は、薄肉のシート状ゴムの端部同士を接合して筒状に成形したゴム部材の寸法安定化に有用であり、インナーライナー等のタイヤ構成部材の寸法安定化に特に有用である。なお、薄肉のシート状ゴムは、公知の押出機により押出成形されるか又は公知のカレンダーロールにより圧延される。
【0021】
図1は筒状ゴム部材9の製造装置1の斜視図である。
図2は
図1に示す製造装置1の平面図及び正面図である。
図3は製造装置1の使用状態を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、製造装置1は、一対のローラ11,12と、一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を回転駆動する回転駆動装置13と、一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を移動させる移動装置14と、回転駆動装置13及び移動装置14を制御する制御部(不図示)と、を備えている。
【0023】
第1ローラ11と第2ローラ12は、間隔を空けて配置されている。
図3に示すように第1ローラ11と第2ローラ12の間には筒状ゴム部材9が掛け渡され、第1ローラ11と第2ローラ12が同一方向に回転すると筒状ゴム部材9も回転する。第1ローラ11と第2ローラ12は、互いの回転軸111,121が平行となるように配置される。回転軸111,121は、いずれも略水平に延びている。
【0024】
第1ローラ11及び第2ローラ12は回転可能となっており、本実施形態では、第1ローラ11が駆動ローラ、第2ローラ12がフリーローラとなっている。第1ローラ11の回転軸111の一端側111aが回転駆動装置13に片持ちで接続され、第1ローラ11は回転駆動装置13により回転駆動される。回転駆動装置13としては、例えばサーボモータが用いられる。第1ローラ11の回転軸111は、2つの軸受112に回転自在に支持されている。2つの軸受112は、基台15に固定されている。
【0025】
第2ローラ12の回転軸121は、2つの軸受122に回転自在に支持されている。2つの軸受122は、移動装置14に固定されており、第2ローラ12は第1ローラ11に対して接近又は離間する方向に移動することができる。
【0026】
移動装置14は、一対のローラ11,12が互いに接近又は離間する方向に延びるボールねじ軸141を備える。ボールねじ軸141のねじ溝には、ボールねじナット142が螺合されている。これにより、ボールねじ軸141を回転させると、ボールねじナット142はボールねじ軸141に沿って移動する。ボールねじ軸141はサーボモータ145等により回転駆動される。
【0027】
ボールねじナット142の上部には移動台143が固定され、第2ローラ12の軸受122が移動台143の上面に固定されている。移動台143の下部には、ボールねじ軸141を両側から挟むように一対のスライドレール144が設けられている。
【0028】
不図示の制御部は、回転駆動装置13及び移動装置14を制御することができる。具体的には、制御部は、回転駆動装置13を制御して第1ローラ11の回転速度や回転のタイミングを調整でき、移動装置14のサーボモータ145を制御して第2ローラ12の移動速度や移動のタイミングを調整できる。
【0029】
図4は、他の実施形態に係る製造装置1の平面図である。この例では、第1ローラ11の回転軸111の他端側111bが受け具16により回転可能に支持され、第2ローラ12の回転軸121の他端側121bが受け具16により回転可能に支持されている。これにより、第1ローラ11及び第2ローラ12の撓みや軸ブレを抑制でき、回転する筒状ゴム部材9の蛇行を抑制できる。
【0030】
図5は、第1ローラ11と受け具16とを拡大して示している。
図5(a)のように第1ローラ11の回転軸111の他端側111bには、軸方向に突出する凸部111cが形成されている。凸部111cは断面三角形状をしている。受け具16は、受け部161と、受け部161を回転自在に支持する軸受部162とを備える。受け具16の受け部161には、回転軸111の凸部111cに嵌合する凹部161aが形成されている。受け部161の凹部161aは、回転軸111の凸部111cに対して着脱可能となっており、
図5(b)のように凹部161aに凸部111cが嵌合した状態では、第1ローラ11の回転軸111と受け具16の受け部161は一体として回転する。
【0031】
2つの受け具16は、それぞれ第1ローラ11及び第2ローラ12に対して着脱可能となっており、第1ローラ11と第2ローラ12に筒状ゴム部材9を掛け渡す際には、第1ローラ11及び第2ローラ12から取り外され、筒状ゴム部材9を架け渡した後に第1ローラ11と第2ローラ12に対して取り付けられる。第1ローラ11に対応する受け具16は、第1ローラ11を支持する際には基台15に固定される。また、第2ローラ12に対応する受け具16は、第2ローラ12を支持する際には移動台143に固定される。
【0032】
次に、上記の製造装置1を用いた筒状ゴム部材9の製造方法を説明する。本発明の筒状ゴム部材9の製造方法は、互いの回転軸111,121が平行となるように配置された一対のローラ11,12に筒状ゴム部材9を掛け渡す工程と、一対のローラ11,12を回転駆動させて筒状ゴム部材9を回転させながら、一対のローラ11,12が互いに離間する方向に一対のローラ11,12のうち少なくとも一方を移動させて筒状ゴム部材9を伸張させる工程と、を備えるものである。
【0033】
初めに、
図6(a)のように、第1ローラ11と第2ローラ12とを接近させ、筒状ゴム部材9を第1ローラ11と第2ローラ12に掛け渡す。次いで、移動装置14により第2ローラ12を第1ローラ11から遠ざかる方向に移動させていき、
図6(b)のように筒状ゴム部材9のたるみを無くす。次いで、
図6(c)のように、回転駆動装置13により第1ローラ11を回転駆動させて筒状ゴム部材9を回転させながら、移動装置14により第2ローラ14を移動させて筒状ゴム部材9を伸張させていき、所望の引張率となるまで第2ローラ14を移動させる。このように筒状ゴム部材9に適切な引張力を付与することで、筒状ゴム部材9の内部応力を緩和し、早期に寸法を安定化できる。
【0034】
本発明の製造方法では、筒状ゴム部材9を伸張させる工程の後、
図6(d)のように、引張力を付与した状態のまま一対のローラ11,12間の間隔を所定時間保持する工程をさらに備えてもよい。このとき、一対のローラ11,12は回転させたままでもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 製造装置
9 筒状ゴム部材
11 第1ロール
12 第2ロール
13 回転駆動装置
14 移動装置
111 回転軸
121 回転軸