(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-109455(P2017-109455A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】RGB印刷体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/06 20060101AFI20170526BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20170526BHJP
B41M 1/14 20060101ALI20170526BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20170526BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
B41M3/06 B
B41M3/14
B41M1/14
B41C1/10
B41C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-247853(P2015-247853)
(22)【出願日】2015年12月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.公開物 デザインのひきだし25 110〜113頁 2.公開日 平成27年6月25日 3.公開者 株式会社グラフィック社 〔刊行物等〕1.公開物 日新 NISSIN VOL.400 SUMMER創刊400号記念号 第17〜19頁 2.公開日 平成27年8月31日 3.公開者 株式会社廣済堂 〔刊行物等〕1.掲載アドレス http://www.jiku−chu.com/ 2.掲載年月日 平成27年12月18日 3.掲載者 アールビバン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500192702
【氏名又は名称】株式会社 廣済堂
(71)【出願人】
【識別番号】592215435
【氏名又は名称】株式会社T&K TOKA
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】新 家 孝 久
(72)【発明者】
【氏名】中 村 和 久
【テーマコード(参考)】
2H084
2H113
【Fターム(参考)】
2H084AA14
2H084AE05
2H084AE06
2H084BB04
2H084CC05
2H113AA04
2H113BA05
2H113BA17
2H113BB02
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA11
2H113CA32
2H113CA39
2H113DA53
2H113EA01
(57)【要約】
【課題】ブラックライト用の画像を複数の色を重ね合わせたカラーにて印刷可能とする新規なRGB印刷方法を提供すること。
【解決手段】RGB印刷原画を準備する工程、RGB印刷原画の少なくとも一部の分解処理を行って赤色(R)、緑色(G)および青色(B)ごとに分解された分解画像データを取得する工程、分解画像データに基づいて、R版、G版およびB版を作成する工程、R版、G版およびB版を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に施す工程
を含み、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するものである、RGB印刷体の製造方法を用いる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGB印刷原画を準備する工程、
RGB印刷原画の画像データの少なくとも一部の分解処理を行って、R版、G版およびB版ごとに分解された少なくとも3つの分解画像データを取得する工程、
前記分解画像データに基づいて、赤色(R)版、緑色(G)版および青色(B)版を含む少なくとも3つの版を作成する工程、
R版、G版およびB版を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に施す工程
を含み、前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するものである、RGB印刷体の製造方法。
【請求項2】
前記RGB印刷原画の画像データの色深度が8ビット以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分解画像データを取得する工程が、RGB印刷原画を参照してRGB印刷原画の画像データの色相を調整する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分解画像データを取得する工程が、RGB印刷原画の画像データのハイダイナミックレンジ補正を行うことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ブラックライトの波長が360〜385nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物がいずれも、(メタ)アクリル系樹脂および蛍光剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
RGB印刷原画の少なくとも一部が、可視光下で分光特性を示すインキにより被印刷体上に予め印刷されている、請求1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
可視光下で分光特性を示すインキが、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、黄色(Y)および黒色(K)のうち少なくとも一つを含むものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記被印刷体が蛍光増白剤を実質的に含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記被印刷体が、上質紙、マット紙およびファンシーペーパーからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記RGB印刷体上の印刷画像が、前記被印刷体上に予め印刷されたRGB印刷原画の少なくとも一部と、オフセット印刷により被印刷体上に印刷されるRGB印刷原画の少なくとも一部とから構成される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
RGB印刷原画の少なくとも一部の分解処理を行って赤色(R)、緑色(G)および青色(B)ごとに分解された分解画像データを取得する画像生成部、
前記分解画像データに基づいて、R版、G版およびB版を含む少なくとも3つの版を作成するRGB版作成部、ならびに
R版、G版およびB版を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物を用いたオフセット印刷を被印刷体に行う印刷部
を備え、前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するものである、RGB印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRGB印刷体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質感や多様性に優れたアートの一つにブラックライトアートと呼ばれるものがある。ブラックライトとは、蛍光物質に当たると可視光を出す、紫外線のような不可視光線であり、ブラックライトアートとは、この蛍光物質により描かれ、ブラックライトを受けると美しい光を発する芸術作品である。ブラックライトアートにブラックライトを当てると、いままでは普通の絵だったものが暗闇の中で異なる様相で見えたり、絵の中に隠されていたトリックアートが浮き出てきたりする。ブラックライトアートとして有名なものに、公共場所の壁や天井に描かれた夜景、夜空、宇宙、水中の風景等があり、今後も、夜型の生活にあった新しい分野の芸術として有望視されている。
【0003】
印刷分野においては、ブラックライトに反応して発光する蛍光材料をインキとして用いた印刷技術が報告されている。例えば、特許文献1には、蛍光材料を含有するインキで印字、図形、バーコード等のマークを形成することにより、紙幣、証券、商品券などの偽造を防止する方法が開示されている。しかしながら、上記偽造防止に活用された従来の技術は、あくまでも単色で、ブラックライト用の画像を複数の色を重ね合わせたカラーにて印刷することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−227817号公報
【発明の概要】
【0005】
また、蛍光印刷物をインキジェット等により印刷すると、印刷の位置精度が悪く、コストが著しく増加するため大量生産が困難という問題が本発明者らの検討から明らかとなった。したがって、本発明は、ブラックライト用の画像を複数の色を重ね合わせたカラーにて効率的かつ大量に印刷可能とする手段を提供することを目的としている。
【0006】
本発明者らは、今般、鋭意検討した結果、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の蛍光インキを用いた特定の手法によりオフセット印刷を行うと、ブラックライト用の画像を、階調を有するカラーにて効率的かつ大量に印刷しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)RGB印刷原画を準備する工程、
RGB印刷原画の画像データの少なくとも一部の分解処理を行って、R版、G版およびB版ごとに分解された少なくとも3つの分解画像データを取得する工程、
前記分解画像データに基づいて、赤色(R)版、緑色(G)版および青色(B)版を含む少なくとも3つの版を作成する工程、
R版、G版およびB版を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に施す工程
を含み、前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するものである、RGB印刷体の製造方法。
(2)前記RGB印刷原画の画像データの色深度が8ビット以上である、(1)に記載の方法。
(3)前記分解画像データを取得する工程が、RGB印刷原画を参照してRGB印刷原画の画像データの色相を調整する工程を含む、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記分解画像データを取得する工程が、RGB印刷原画の画像データのハイダイナミックレンジ補正を行うことを含む、(1)または(2)に記載の方法。
(5)前記ブラックライトの波長が360〜385nmである、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物がいずれも、(メタ)アクリル系樹脂および蛍光剤を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)RGB印刷原画の少なくとも一部が、可視光下で分光特性を示すインキにより被印刷体上に予め印刷されている、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)可視光下で分光特性を示すインキが、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、黄色(Y)および黒色(K)のうち少なくとも一つを含むものである、(7)に記載の製造方法。
(9)前記被印刷体が蛍光増白剤を実質的に含まない、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記被印刷体が、上質紙、マット紙およびファンシーペーパーからなる群から選択される、(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記RGB印刷体上の印刷画像が、前記被印刷体上に予め印刷されたRGB印刷原画の少なくとも一部と、オフセット印刷により被印刷体上に印刷されるRGB印刷原画の少なくとも一部とから構成される、(7)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)RGB印刷原画の少なくとも一部の分解処理を行って赤色(R)、緑色(G)および青色(B)ごとに分解された分解画像データを取得する画像生成部、
前記分解画像データに基づいて、R版、G版およびB版を含む少なくとも3つの版を作成するRGB版作成部、ならびに
R版、G版およびB版を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物を用いたオフセット印刷を被印刷体に行う印刷部
を備え、前記R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するものである、RGB印刷システム。
【0008】
本発明によれば、R、GおよびBの蛍光インキを用いて、オフセット印刷を行うと、ブラックライト用の画像を、階調を有するカラーにて効率的かつ大量に印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】RGB印刷システムの一例を示す模式図である。
【
図2】例1において、RGB印刷に用いられた各画像を示す図である。1aはRGB印刷原画を示す。2aはRGB印刷原画1aの分解画像データを示す。3a、4aおよび5aはそれぞれ、分解画像データ2aに基づき作成されたR版、G版およびB版を示す。6aは、実施例1で取得されたRGB印刷体を示す。
【
図3】例5において、RGB印刷に用いられた各画像を示す図である。1bはRGB印刷原画を示す。2bはRGB印刷原画1bの分解画像データと7のCMYK印刷データを合成した物を示す。3b、4bおよび5bはそれぞれ、分解画像データ2bに基づき作成されたR版、G版およびB版を示す。6bは、実施例2で取得されたRGB印刷体を示す。7は、RGB印刷原画1bを元に作成されたCMYK印刷原画データを示す。8b、9b、10b及び11bは、実施例2で取得されたC版M版Y版K版を示す。
【
図4】例5において得られたRGB印刷体の断面の模式図である。8はRGBインキ層を示し、9はCMYKインキ層を示す。10は印刷用紙を示す。
【0010】
RGB印刷体の製造方法
本発明のRGB印刷体の製造方法では、まず、RGB印刷原画を準備する。
RGB印刷原画は、特に限定されず、図形、モチーフ等の描画、写真等が挙げられる。RGB印刷原画は、紙面上に記載されたものであってもよく、コンピュータ上で作成された電子データであってもよい。紙面上に記載されたRGB印刷原画は、例えば、スキャナ等により電子データに変換して、コンピュータを用いた後続工程に用いることができる。
【0011】
RGB印刷原画を電子データとして取得する場合、例えば、一般的なコンピュータソフトウェア(JPEG,PING,EPS,PSD,CameraROW等のAdobe社PhotoshopCC以降のソフトウェア)により編集可能な電子データとすることが好ましい。取得した原画の電子データの各色の色深度は、好ましくは8ビット以上であり、より好ましくは16〜32ビットである。かかる色深度に設定することは、階調飛びを防止する上で有利である。
【0012】
本発明の製造方法では、次に、上記RGB印刷原画の少なくとも一部の分解処理を行ってR版、G版およびB版ごとに分解された少なくとも3つの分解画像データを取得する。分解処理の対象となる画像は、RGB印刷原画の一部であっても全部であってもよい。
【0013】
また、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物は、RGB各濃度100%でホワイトバランスが取れる一方で、顔料の特性上理論値としてのRGBとは色相が相違する場合がある。そこで、3つの分解画像データの取得工程では、RGB印刷原画とRGB印刷体上の印刷画像とが同等の色相となるようにRGB印刷原画データの各色値を調整することが好ましい。かかる色相調整の方法は特に限定されないが、好適な一例では、RGB印刷原画データのうち、R、GまたはBのいずれかの色相データについて、コンピュータソフトウェア上でR、GまたはBの版をマスクとして色材の使用範囲を色空間上で限定し、トーンカーブを調整する。例えば、R、GまたはBの色相データのマスクは、マスクする色相をソフトウェア(例えば、Adobe社PhotoShopCCなど)上でアルファチャンネルとすることにより実施することができる。かかる調整では、RGB印刷原画とRGB印刷体上の印刷画像とが同等の色相となるように、各インキ組成物における色相の違いを参照して色相データの色値を補正することが好ましい。例えば、G版用インキ組成物の色相がRGB印刷原画よりも黄色寄りであれば、色相データでは逆にシアン寄りに補正を行うことが好ましい。色相調整は、RGB各色に対して調整することがより好ましい。また、色相調整は、RGB全表示原画データにおいても行うことがより一層好ましい。RGB全表示原画データにおいても、トーンカーブにより調整を行うことが好ましい。RGB全表示原画データにおける色相調整では、RGB印刷原画とRGB印刷体上の印刷画像とが同等の色相となるように、RGB印刷体上の印刷画像の色相を参照して各色相における彩度および/または明度を調整することがさらに好ましい。RGB全表示原画データにおける調整と、色相をマスクした原画データにおける調整との順序は特に限定されないが、RGB全表示原画データにおける調整は、色相をマスクした原画データにおける調整の後に行うことが好ましい。色調調整を行った画像データは元画像に対して通常モードから乗算モードに変更して、後続する工程に用いることができる。
【0014】
また、上記分解画像データの取得工程では、RGB印刷原画の画像データのハイダイナミックレンジ(HDR)補正を行うことが好ましい。また、当該HDR補正では、RGB印刷原画とRGB印刷体上の印刷画像とを同等の色相とするために、ミドルトーンおよびシャドートーンにおける輝度を下げ、ハイライトトーンにおける画像データの濃度および/または彩度が向上するように調整することがさらに好ましい。このようなHDR補正は、各インキ組成物が高輝度であることに起因して、蛍光画像の明るい部分が白飛びを起こしてハイキーな印象になることを防止する上で有利である。特に、上記HDR補正では、ハイライトトーン部の彩度が向上するように調整することが好ましい。このような彩度の調整は、原色の輝度を下げない上で有利である。かかるHDR補正は、色相の調整と同様、公知のソフトウェアを用いて実施することができる。また、ミドルトーン、シャドートーン、ハイライトトーンは、Adobe社PhotoShopCCにおける通常の設定基準に従い決定することができる。
【0015】
本発明の製造方法では、上記RGB印刷原画データをR版、G版およびB版ごとに分解し、階調を反転させて少なくとも3つの分解画像データを好適に取得する。RGB部分は加法混色のため、RGB印刷原画データとは階調が反転することが必要となる。上記解画像データの取得は、市販のDTPソフトを用いて、各色相の原画データを対応するチャンネルへコピーし、階調を反転して実施することができる。
【0016】
本発明の製造方法では、次に、上記分解画像データに基づいて、R版、G版およびB版等を作成する。この際、後述する試験例5に記載のように、印刷用7色画像を、任意のDTPアプリケーションにてレイアウト処理(紙面に組込み)を行った後にPDFX-4形式でデータ書き出しを行ってもよい。完成したデータは、汎用CTP出力機(Computer to Plate)を使用し印刷機用の版を作成することに利用することができる。ここで、設定値としては、例えば、「線数 175〜200線/inch、スクウェアドット、CMS(カラーマネージメント)OFF」が挙げられる。なお、上記設定値は一例であって、線数等の各パラメータは画像に応じて適宜変更することができる。
【0017】
本発明の製造方法では、次に、R版、G版およびB版等を用いて、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に施す。本発明におけるオフセット印刷は平版印刷とも呼ばれている。この印刷方法には、親油性であるインキ組成物と親水性である湿し水が互いに反発する原理を利用した印刷方式の水ありオフセット印刷と、版の表面をシリコーン樹脂で処理し、撥水性を持たせることで湿し水を必要としない水なしオフセット印刷の2種類がある。これらのオフセット印刷方式はインキ壺にあるインキ組成物がインキ着けローラーから複数のローラーを経て、版まで移動させ、次いで、版からゴムブランケットへ移り、ゴムブランケットから印刷紙などにインキ組成物を転移させる方式である。本発明のインキ組成物は水ありオフセット用インキ組成物、水なしオフセット用インキ組成物のいずれにも適用可能である。
【0018】
また、本発明において、R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物は各々、上述の通り、ブラックライトの照射により蛍光発光する薬品を含有している。本発明のインキ組成物は、可視光下で無色であることが好ましい。
【0019】
また、本発明のインキ組成物は、本発明の方法に適用可能な限り特に限定されないが、好ましくは蛍光剤と、(メタ)アクリル酸樹脂を含んでなる。かかる組成物は、紫外線照射時に蛍光発色が引き立つことに加え、セット乾燥(セット乾燥とはインキ組成物に含まれる溶剤が、印刷後に印刷した用紙浸透することであり、浸透乾燥とも呼ばれる)に時間を短縮することにより、重ね刷りを行う際にインキを盛ってインキの色域を広げる上で有利である。
【0020】
本発明のインキ組成物に含まれる(メタ)アクリル酸樹脂は、好ましくは炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上有している。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂の製造において使用可能な(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基の炭素数としては、4〜30が好ましく、4〜20が好ましく、4〜15がさらに好ましい。また、炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基は、分岐または環状アルキル基が好ましく、環状アルキル基がさらに好ましい。
【0022】
また、(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上有し、最終的に得られる(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度が63℃〜180℃となる量で使用できるが、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。上限としては、100重量%であってもよいが、99.5重量%以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が63℃〜180℃であることが好ましい。ガラス転移温度の下限値は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、100℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度の上限値は、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。ここで、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度はT.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.,1,(3),123(1956)の記載に従い下記式(1)から求めることができる。
式(1)
【数1】
Tg1、Tg2、・・・は、それぞれ、(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー単位をホモポリマーとしたときのガラス転移温度(K)を示しており、w1、w2・・・は、それぞれ、(メタ)アクリル系樹脂を構成する前記モノマー単位の重量分率を示している。
【0024】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量が1000〜80,000であることが好ましい。重量平均分子量の下限値は、2000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましい。重量平均分子量の上限値は、60000未満であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、31000以下であることがさらに好ましく、30000未満であることが一層好ましく、20000以下であることがより一層好ましく、19500以下がさらに一層好ましい。
重量平均分子量を1000以上とすることは、オフセット印刷におけるセット乾燥性を良好に保つ上で好ましい。また、重量平均分子量を80,000以下にすることは、得られる(メタ)アクリル系樹脂の粘度を取り扱いが容易となるようにし、相溶性が劣る場合や希釈した場合には希釈溶剤の量が増加しないようにする上で好ましい。
【0025】
本発明における重量平均分子量は、昭和電工社製Shodex System21Hを使用し、カラムには昭和電工社製ShodexKF−85Lを直列で2本、溶離液にテトラヒドロフラン、検量線標準物質として、日本分析工業社製標準ポリスチレンを使用して測定した値である。
【0026】
本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリルモノマーは、4−tert−ブチルメタクリレート(Tg:107℃、Tgはホモポリマーのときの値、以下同じ)、tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(Tg:125℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:155℃)、アダマンチルメタクリレート(Tg:170℃)、ジシクロペンテニルメタクリレート(Tg:170℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃);アダマンチルアクリレート(Tg:115℃)等が挙げられ、中でも、入手の容易さという観点から、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートが特に好ましい。
(メタ)アクリルモノマーは、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリルモノマー以外に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、下記のようなものが例示され、1種または2種以上を併用して用いることができる。他のモノマー単位を含める場合、その割合は、全モノマー単位の20〜40重量%が好ましい。
【0028】
スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー。
【0029】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、等の炭化水素基を有し、上記(1)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーを満足しない(メタ)アクリルモノマー。
【0030】
前記(メタ)アクリルモノマー等の炭化水素基における水素原子を、ハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素等に置換したハロゲン化炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマー。
【0031】
トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシプロピルポリ(n=2〜400)ジメチルシロキサン等のケイ素含有(メタ)アクリルモノマー。
【0032】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:モメンティブパフォーマンスケミカルズ社製等)の置換されていても良い炭化水素基を有するビニルエステル系モノマー。
【0033】
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー。
【0034】
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の炭化水素基を有するビニルエーテル系モノマー。
【0035】
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー。
【0036】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、モノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系モノマー。
【0037】
p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート若しくはポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、またはこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル〔カージュラE;モメンティブパフォーマンスケミカルズ社製〕のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有モノマー。
【0038】
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有モノマー。
【0039】
ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー。
【0040】
その他、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系モノマー、マレイミド、ビニルスルホン等のモノマー。
【0041】
前記他のモノマーの中では、製造時の共重合性の観点から、スチレン系モノマーおよび/または上記上記(1)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーを満足しない(メタ)アクリルモノマーを用いることが特に好ましい。
【0042】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂の製造方法としては、公知慣用の任意の重合方法を用いることができ、中でも、最終的な用途がオフセット印刷用インキ組成物である場合、溶液ラジカル重合法によるのが最も簡便であり、特に好ましい。
【0043】
溶液ラジカル重合法により製造する際の溶剤としては、特に制限なく用いられ、トルエン、キシレン、または芳香族炭化水素の化合物(ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200;エクソンモービル社製)等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、またはケロシン等の脂肪族もしくは脂環族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、またはブチルセロソルブアセテート等のエステル系化合物;大豆油、再生大豆油、菜種油、ヤシ油、麻実油、アマニ油、オリーブ油、カヤ油、キリ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、米糠油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、綿実油、トール油等の植物油および牛脂、豚脂等の動物油等から得られる脂肪酸のメチルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、n−オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、トリメチロールプロパンのモノ〜トリエステル、ペンタエリスリトールのモノ〜テトラエステル、ジペンタエリスリトールのモノ〜ヘキサエステル等の脂肪酸エステル化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系化合物等を挙げることができ、好ましくは、芳香族炭化水素化合物、脂肪族もしくは脂環族炭化水素化合物が挙げられる。また、最終的な用途がオフセット印刷用インキ組成物である場合、脂肪族もしくは脂環族炭化水素化合物が特に好ましい。具体的には、後述する石油系溶剤を用いることもできる。
【0044】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系樹脂の製造には、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物または過酸化物系化合物のようなラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、工業的には通常1〜48時間程度の範囲で選ばれる。また、重合温度も特に制限されないが、通常30〜200℃、好ましくは60〜150℃である。
【0045】
また、本発明における(メタ)アクリル系樹脂は、インキ組成物に対し、下限値は1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下とすることもできる。
【0046】
本発明のインキ組成物に使用される蛍光剤は、染料であっても顔料であってもよいが、通常は顔料である。また、蛍光剤は有機顔料であっても無機顔料であっても良く、組成に特に制限はなく公知の種々の蛍光剤を使用することができる。赤色蛍光顔料(R)は、例えばY
2O
3、Eu等の無機化合物の他にEuに代表される有機金属錯体等が用いられる。本発明に使用可能な市販されている赤色系の蛍光顔料では、例えば、セントラルテクノ株式会社の商品名;ルミシス E−250、E−300、E−400、E−500、R−600の他、Honeywell社製の商品名;CD740などが挙げられる。緑色蛍光顔料(G)は、例えばZn
2SiO
4等の無機化合物の他にチオフェン誘導体に代表される有機蛍光顔料が用いられる。本発明に使用可能な市販されている緑色系の蛍光顔料では、例えば、セントラルテクノ株式会社の商品名;ルミシス Y−700、G−900、G−3300の他、Honeywell社製の商品名;CD766などが挙げられる。青色蛍光顔料(B)は、Sr
2P
2O
7等の無機化合物などが用いられる。本発明に使用可能な市販されている青色系の蛍光顔料では、例えば、セントラルテクノ株式会社の商品名;ルミシス B−800、WB−1000、YB−1200の他、Honeywell社製の商品名;CD397などが挙げられる。蛍光剤は1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物における蛍光顔料の配合量は、インキ組成物の0.01〜30重量%であることが好ましく、3〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
本発明のインキ組成物に使用される顔料は有機顔料、無機顔料が挙げられるが、バインダー樹脂に分散して、印刷物のインキ層が透明になることが望ましい。特に無機顔料の中でも体質顔料と呼ばれる顔料が望ましく、例えば、タルク、クレー、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、バライト、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、ベントナイト、等が挙げられる。
顔料は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物における着色剤の配合量は、配合する場合、下限値として、0.01重量%以上が好ましく、5%重量%以上がより好ましく、10重量%以上がより好ましい。上限値としては、55重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。
【0047】
本発明のインキ組成物は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂;フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、脂肪酸変性フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンフェノール樹脂、アルキッド樹脂変性ロジンフェノール樹脂、ウレタン樹脂変性ロジンフェノール樹脂、エポキシ樹脂変性ロジンフェノール樹脂、等のフェノール系樹脂;石油樹脂、ロジン変性石油樹脂、脂肪酸変性石油樹脂等の石油系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ系樹脂;ロジン、脂肪酸変性ロジン、多価アルコール変性ロジン、アルキッド樹脂変性ロジン、石油樹脂変性ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジンエステル、ロジン変性エステル樹脂、等の天然由来のロジン系樹脂;酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;環化ゴム等が挙げられ、ポリエステル系樹脂、石油変性ロジン樹脂、ロジン変性エステル樹脂およびフェノール系樹脂が好ましく、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性エステル樹脂および脂肪酸変性アルキッド樹脂がより好ましく、ロジン変性エステル樹脂およびロジン変性フェノール樹脂がさらに好ましい。
バインダー樹脂は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物におけるバインダー樹脂の配合量は、下限値として、インキ組成物の20重量%以上であることが好ましく、23重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましく、上限値として、インキ組成物の40重量%以下であることが好ましく、37重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。
また、インキ組成物中のフェノール量は、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、3%以下がより好ましい。
【0048】
本発明のインキ組成物は、乾性油を含むことが好ましい。乾性油は、空気中で徐々に酸化して固まる油のことをいう。本発明では、ヨウ素価が100以上のものが好ましい。乾性油は、例えば、大豆油、再生大豆油、菜種油、ヤシ油、麻実油、アマニ油、オリーブ油、カヤ油、キリ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、米糠油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、綿実油、トール油等の植物油;牛脂、豚脂等の動物油等が挙げられ、植物油が好ましく、大豆油、アマニ油、キリ油、米糠油がより好ましい。
乾性油は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物における乾性油の配合量は、下限値として、インキ組成物の8重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上であることがさらに好ましく、上限値として、インキ組成物の40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
本発明のインキ組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、石油系溶剤および植物油からなる群より選ばれる少なくとも1種から選択されることが好ましい。
石油系溶剤は、芳香族系溶剤および脂肪族系溶剤であり、日本では通常、環境対策の面から鉱油と呼ばれる脂肪族系の溶剤が好ましいため多く用いられる。また、石油系溶剤は、沸点が240〜360℃の溶剤が好ましく用いられ、特に、枚葉インキ組成物用途に用いる場合には、280〜360℃の溶剤が好ましく用いられる。市販品としては、AF4号ソルベント、AF5号ソルベント、AF6号ソルベント、AF7号ソルベント(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)が挙げられる。
植物油系溶剤は、植物油から得られる脂肪酸のエステル化合物が例示される。エステルとしては、メチルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、n−オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、トリメチロールプロパンのモノ〜トリエステル、ペンタエリスリトールのモノ〜テトラエステル、ジペンタエリスリトールのモノ〜ヘキサエステル等が挙げられる。植物油としては、上記乾性油の所で述べた植物油と同義であり、好ましい範囲も同様である。
石油系溶剤および植物油系溶剤は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物に溶剤を配合量する場合は、下限値として、インキ組成物の3重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、上限値として、インキ組成物の40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることが特に好ましい。
【0050】
本発明のインキ組成物は、ドライヤーを含まなくても良いが添加することもできる。ドライヤーは乾燥促進剤とも呼ばれ、金属ドライヤーが好ましい。
金属ドライヤーとしては、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属塩が一般的であり、使用される金属塩としては、例えばコバルト、マンガン、亜鉛、鉄、ジルコニウム、カルシウムなどが挙げられる。また、より乾燥性を向上させるために過酸化化合物を添加することもできる。
金属ドライヤーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物における金属ドライヤーの配合量は、配合する場合、インキ組成物の0.1〜3重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%であることがより好ましい。過酸化化合物を添加する場合には、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
【0051】
本発明のインキ組成物は、ワックスを配合してもよい。このようなワックスは、インキ組成物による印刷物の皮膜強化を向上させるための補助剤と好ましく用いられる。ワックスの例としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、マイクロクリスタリン、カルナバ、みつろう、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、1種または2種以上を混合して使用することができる。これらのワックスは、ワックス粉体をインキに練り込んでも良いが、作業性の良いワックスコンパウンドを使用しても良い。ワックスの配合量は、配合する場合、インキ組成物に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜4重量%であることがより好ましい。
【0052】
その他、本発明のインキ組成物には、必要に応じて、ゲル化剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、酸化防止剤、耐摩擦性向上剤、界面活性剤等の添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明のインキ組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば公知の方法を採用することができる。例えば、ロジン変性フェノール樹脂などのバインダー樹脂、乾性油およびその加工油、石油系溶剤などを150〜250℃で1〜2時間加熱してワニスを製造する。得られたワニスに、顔料等の着色剤、溶剤(通常は、石油系溶剤や植物油系溶剤)や添加剤などを加えて、ビーズミルや三本ロールミルなどで練肉・分散を行い、溶剤等で粘度調整し、オフセットインキを製造することができる。
【0053】
本発明の被印刷体は、本発明の効果を妨げない特に限定されず、例えば、上質紙、マット紙、ファンシーペーパー、コート紙、ボール紙、壁紙、 等が挙げられる。
【0054】
本発明の被印刷体は、ブラックライト照射時のRGB画像の明瞭な再現を勘案すれば、蛍光増白剤を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、被印刷体における蛍光増白剤の含量は、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以下である。
【0055】
上記蛍光増白剤としては、特に限定されず、ブラックライトの照射により蛍光発光を生じる物質が挙げられる。かかる蛍光増白剤の例としては、蛍光着色剤(蛍光染料・蛍光顔料)等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の被印刷体において、RGB印刷原画の少なくとも一部は、可視光下で分光特性を示すインキを用いた通常の印刷手法により予め印刷されていてもよい。このような通常の印刷手法としては、特に限定されないが、いわゆるシアン色(C)、マゼンタ色(M),黄色(Y)および黒色(K)を用いたCMYK印刷等が挙げられる。したがって、本発明の一つの態様によれば、上記可視光下で分光特性を示すインキは、C、M、YおよびKのうち少なくとも一つを含むものである。なお、本発明の方法においては、可視光下で分光特性を示すインキによる印刷工程と、RGB印刷工程とを順次行って印刷画像を形成する態様も含まれる。かかる態様では、可視光下で分光特性を示すインキによる印刷工程と、RGB印刷工程との間に被印刷体の乾燥工程を実施してもよい。
【0057】
また、RGB印刷原画の少なくとも一部が被印刷体上に上述のような通常の印刷手法等により予め印刷されている場合、RGB印刷体上に形成される印刷画像は、可視光下で分光特性を示すインキを用いて被印刷体上に予め印刷されたRGB印刷原画の少なくとも一部と、オフセット印刷により被印刷体上に印刷されるRGB印刷原画の少なくとも一部とから構成することができる。このような場合には、可視光下では、可視光下で分光特性を示すインキを用いて予め印刷された原画の一部を出現させ、ブラックライト照射下ではRGB印刷による原画の一部をさらに出現させることができ、被印刷体への美観付与の観点から好ましい。
【0058】
本発明のブラックライトの波長は、好ましくは360〜385nmであり、より好ましくは365〜380nmであり、さらに好ましくは375nmである。
【0059】
また、本発明の別の態様によれば、RGB印刷システムであって、RGB印刷原画の少なくとも一部の分解処理を行ってRGB分解画像データを取得する画像作成部、RGB分解画像データに基づいて、R版、G版およびB版を作成するRGB版作成部、ならびに、R版、G版およびB版を用いて、Rインキ組成物、Gインキ組成物およびBインキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に行う印刷部を含み、Rインキ組成物、Gインキ組成物およびB蛍光インキ組成物が各々、ブラックライトの照射により蛍光発光するインキを含有するシステムが提供されるRGB印刷システムは、RGB印刷原画の準備部をさらに備えていてもよい。このようなシステムの一例は、
図1に示される通りである。
上記RGB印刷システムは、本願発明のRGB印刷体の製造方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例】
【0060】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0061】
例1:インキ組成物の製造
以下の製造例などにおいて「部」および「%」は特に示さない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。なお、特段の記載のない限り、本明細書における測定方法および測定単位は、。JIS(日本工業規格)の規定に従う。
【0062】
例11−1:ワニス
撹拌装置に温度計を装着した1L三口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂としてHR−311(杭華油墨化学社製;フェノール量25%)(43部)、大豆白絞油(サミット製油株式会社)(20部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(16部)を仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、桐油(カネダ株式会社製)(10部)、AF5号ソルベント(10部)およびゲル化剤としてALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、株式会社 川研ファインケミカル製)(1部)を添加し、180℃で1時間加熱撹拌し、ワニスAを得た。ワニスAの組成を表1にまとめる。
【0063】
【表1】
表1において、単位は重量部である。
【0064】
1−2:インキ組成物用の(メタ)アクリル系樹脂
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサーおよび乾燥窒素ガス導入装置を備えたガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(99部)、メタクリル酸(1部)、アゾビスメチロブチロニトリル (5部)、AF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で、30分間で120℃まで加熱し、さらに、120℃で3時間保持して固形分換算40重量%の(メタ)アクリル系樹脂の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は155℃であり、重量平均分子量は4000(MW)であった。
【0065】
1−3:R版用インキ組成物
ワニスの製造例で得られたワニスA(70部)および蛍光顔料R(セントラルテクノ株式会社製、E−750)(10部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(森村ケミカル株式会社製、MC−850)(4部:ワックス成分1.5部)、金属ドライヤー(日本化学産業株式会社製、ナフテン酸コバルトおよびナフテン酸マンガン)(各0.5部)、(メタ)アクリル系樹脂(溶液ベースで10部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、
R版用蛍光インキ組成物を得た。
【0066】
1−4:G版用インキ組成物
ワニスの製造例で得られたワニスA(65部)および蛍光顔料G(セントラルテクノ株式会社製、Y−700)(15部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(森村ケミカル株式会社製、MC−850)(4部:ワックス成分1.5部)、金属ドライヤー(日本化学産業株式会社製、ナフテン酸コバルトおよびナフテン酸マンガン)(各0.5部)、(メタ)アクリル系樹脂(溶液ベースで10部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、
G版用蛍光インキ組成物を得た。
【0067】
1−5:B版用インキ組成物
ワニスの製造例で得られたワニスA(60部)および蛍光顔料B(DKSHジャパン株式会社製、LUNACURE OB)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(森村ケミカル株式会社製、MC−850)(4部:ワックス成分1.5部)、金属ドライヤー(日本化学産業株式会社製、ナフテン酸コバルトおよびナフテン酸マンガン)(各0.5部)、(メタ)アクリル系樹脂(溶液ベースで10部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、B版用蛍光インキ組成物を得た。
【0068】
例2
図2に示される手順に従い、RGB印刷体の製造を行った。より具体的な手順は以下の通りである。
(1)RGB印刷原画1aを準備し、物理的形態を持つ紙原稿や写真フィルム等の場合はスキャナにより処理して、RGB印刷原画1のデータを取得した。画像データにて取得する場合は、一般的なフォーマットであるJPEG、PING、EPS、PSD、CameraROW等のAdobe社PhotoshopCC以降のソフトウェアにより編集可能なデータとして取得した。取得した原画データは、色深度各色8ビット以上とし、RGB各色16ビットから32ビットとした。これは処理過程での階調飛びを防止するためである。また画像モードがLab,CMYK、インデックスカラー、グレースケール、モノクロ2階調の場合、RGBモードに変換を行った。
【0069】
(2)次に、RGB印刷原画1のデータの分解処理をコンピュータにて行い、R、GおよびBごとに分解された分解画像データ2aを取得した。
分解画像データ2aの取得手順
作業手順
Adobe社PhotoShopCC以降のソフトウェアを利用し、以下の手順で調整を行った。
色相調整
(i)ソース画像のダイナミックレンジとバランスがとれているかチェックし、RGB色調調整を行った。
(ii)元画像を複製し、レイヤーを作成した。
(iii)レイヤーに対し、RGBそれぞれの画像を利用しアルファチャンネルを作成した。
(iv)Gのアルファチャンネルをマスクとしてトーンカーブ調整を行った。
設定値:Bチャンネル色材料表示で(100,100)を(60,100)に変更した。
(v)Rのアルファチャンネルをマスクとしてトーンカーブ調整を行った。
設定値:Bチャンネル色材料表示で(100,100)を(100,80)に変更した。
(vi)Bのアルファチャンネルをマスクとしてトーンカーブ調整を行った。
設定値:Rチャンネル色材料表示で(100,100)を(80,100)に変更した。
設定値:Gチャンネル色材料表示で(100,100)を(90,100)に変更した。
(vii)RGB全チャンネルに対してトーンカーブ調整を行った。
設定値:RGBチャンネル色材料表示で3点の設定を行った。
(10,10)を(10,8)に変更した。
(16,16)を(16,22)に変更した。
(100,100)を(30,100)に変更した。
(viii)編集したレイヤーの描画モードを通常から乗算に変更した。
【0070】
HDR補正
以下の設定値によりHDR補正を行った。なお、絵柄によりトーンカーブとヒストグラムは変更することができる。
設定値
方法:ローカル割付
エッジ光彩:半径1.6px 強さ0.23 “エッジを滑らかに” チェックなし
トーンとディテール:ガンマ1.00 露光量0.00 ディテール+30%
詳細:シャドウ0% ハイライト0% 自然な彩度50% 彩度50%
トーンカーブとヒストグラム:色材料表示で(22,22)を(22,15)に変更 (100,100)を(100,85)に変更
【0071】
R版、G版およびB版の作成
(i)版出力データは7色で作成した。
これは画像以外の部分を通常のオフセット印刷で行えるようにするためである。
(ii)新規スポットカラーチャンネルをR、G、Bと3版作成した。
設定値:それぞれの表示色を光量表示で設定
(iii)変換済RGB画像からR版を7色データのRチャンネルへコピーし、階調を反転する。それぞれの版で繰り返し作成した。
(iv)完成したファイルをPSD形式(フォトショップ形式)で保存した。DTPソフトでは、CMYKRGBの7色データとして認識するため、印刷用版を出力できるようになる。
(v)分解画像データ2aは、CMYKは減法混色であるため階調は変化が無いが、RGB部分は加法混色のため、RGB印刷原画1aとは階調が反転している。
【0072】
(3)次に、分解画像データ2aに基づいて、R版3a、G版4aおよびB版5aを作成する。具体的には、以下に記載の方法より版を作成した。
汎用DTP編集ソフトウェアを利用し、紙面のレイアウトを作成した後、(2)で作成した7色画像をレイアウトした。汎用DTPソフトウェアからPDFX-4形式でデータ書き出しを行い、汎用CTP出力機(Computer to Plate)を使用し印刷機用の版を作成した。
設定値 線数 175線/inch、スクウェアドット、CMS(カラーマネージメント)OFF。
【0073】
(4)次に、R版3a、G版4aおよびB版5aを用いて、蛍光顔料R、蛍光顔料G、および蛍光顔料Gをそれぞれ含有する3つのオフセット印刷用インキ組成物(R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物)によるオフセット印刷を、被印刷体(上質紙、日本製紙 社製)に施し、RGB印刷体6aを取得した。その結果、暗室内にてブラックライトをRGB印刷体6aに照射したところ、鮮やかな階調を有するフルカラーの写真の画像が目視にて確認された。また、上記フルカラーの写真は1時間で10,000枚複製した。この際、全ての写真が、鮮やかな階調を有する同様の画像であることが目視にて確認された。
【0074】
例3
R版用インキ組成物、G版用インキ組成物およびB版用インキ組成物における(メタ)アクリル系樹脂を、ガラス転移温度64または155℃のものに変更して試験を実施したところ、上記と同様に鮮やかな階調を有するフルカラーの写真の画像が目視にて確認された。また、上記フルカラーの写真は1時間で 10,000枚複製した。この際、全ての写真が、鮮やかな階調を有する同様の画像がであることが目視にて確認された。
【0075】
例4
インキ組成物における(メタ)アクリル系樹脂を、重量平均分子量を8,200(MW)のものに変更して試験を実施したところ、上記と同様に鮮やかな階調を有するフルカラーの写真のRGB画像が目視にて確認された。
【0076】
例5
図3に示される手順に従い、RGB印刷体の製造を行った。より具体的な手順は以下の通りである。
(1)RGB印刷原画1bを準備し、物理的形態を持つ紙原稿や写真フィルム等の場合はスキャナにより処理して、RGB印刷原画1のデータを取得する。画像データにて取得する場合は、一般的なフォーマットであるJPEG,PING,EPS,PSD,CameraROW等のAdobe社PhotoshopCC以降のソフトウェアにより編集可能なデータとして取得した。取得した画像データは、色深度各色8ビット以上とし、各色16から32ビットであることが望ましい。これは処理過程での階調飛びを防止するためである。また画像モードがLab、CMYK、インデックスカラー、グレースケール、モノクロ2階調の場合、RGBモードに変換を行った。
なお、7は、RGB印刷原画1bを元に作成されたCMYK印刷原画データである。
【0077】
(2)次に、RGB印刷原画1bのデータの分解処理をコンピュータにて行い、R、GおよびBごとに分解された分解画像データと、CMYK印刷原画データ7とを重ね合わせたデータ2bを取得した。
【0078】
画像生成時の設計
CMYK画像をベースとする場合、
図4に示される通り、K版を除く処理を行った。これはRGBインキがUVにて発光した時にK版のアミ点に光が吸収されて効果が落ちるためである(イラスト等はこれを逆手にとり、コントラストを出す)。
【0079】
作業手順
Adobe社PhotoShopCC以降を利用し、以下の手順で調整を行った。
まず、実施例2の手順と同様に、色調調整およびHDR補正を行いた。次に、以下に示される通りR版、G版およびB版等の作成(7色データの作成)を行った。
【0080】
R版、G版およびB版等の作成
(i)ベースにCMYK印刷の有無にかかわらず、版出力データは7色で作成した。
これは画像以外の部分を通常のオフセット印刷で行えるようにするためである。
(ii)ベース画像を複製し、”色相彩度”機能で色彩の統一を実行し、必要に応じて全体の色相を調整した。ベース色としてはセピア調が好ましい。
(iii)次に、CMYK変換を実施した。
設定値:JapanColor
(iv)K版を選択し、絵柄を削除した(白)。
(v)新規スポットカラーチャンネルをR,G,Bの3版作成した。
設定値:それぞれの表示色を光量表示で設定した。
(vi)変換済RGB画像からR版を7色データのRチャンネルへコピーし、階調を反転した。これをそれぞれの版で繰り返した。
(vii)完成したファイルをPSD形式(フォトショップ形式)で保存した。DTPソフトでは、CMYKRGBの7色データとして認識するため、印刷用版を出力できるようになる。
(viii)分解画像データ2bは、CMYKは減法混色である為階調は変化が無いが、RGB部分は、加法混色のため、RGB印刷原画1bとは階調が反転している。
【0081】
(3)次に、分解画像データ2bに基づいて、R版3b、G版4bおよびB版5bおよびC版8b、M版9b,Y版10B、K版11Bを作成した。
版の作成方法
汎用DTP編集ソフトウェアを利用し、紙面のレイアウトを作成した後(2)で作成した7色画像をレイアウトした。汎用DTPソフトウェアからPDFX-4形式でデータ書き出しを行い、汎用CTP出力機(Computer to Plate)を使用し印刷機用の版を作成した。
設定値 線数 175線/inch、スクウェアドット、CMS(カラーマネージメント)OFF。
【0082】
(4)次に、C版8b、M版9b,Y版10B、K版11Bを用いて汎用カラーオフセット用インキによるカラー印刷を被印刷体(上質紙、日本製紙社製)に施した。次に、R版3b、G版4bおよびB版5bを用いて、3つのオフセット印刷用インキ組成物によるオフセット印刷を被印刷体に重ねて施した。ここで、3つのオフセット印刷用蛍光インキ組成物は、例1と同様とした。
【0083】
(5)R蛍光インキ、G蛍光インキおよびB蛍光インキから構成された印刷画像を有するRGB印刷体6bを取得した。
RGB印刷体6bを可視光下で観察したところ、CMYK印刷原画のみが観察された。一方で、暗室内にてブラックライトをRGB印刷体6bに照射したところ、鮮やかな階調を有するフルカラーのRGB印刷体6bが出現した。また、上記フルカラーのRGB印刷体は1時間で10,000枚複製した。この際、全てのRGB印刷体が、鮮やかな階調を有する同様の画像がであることが目視にて確認された。
【符号の説明】
【0084】
1a、1b…RGB印刷原画
2a、2b…分解画像データ
3a、3b…R版
4a、4b…G版
5a、5b…B版
6a、6b…RGB印刷体
7…CMYK印刷原画データ
8…RGBインキ層
9…CMYKインキ層
10…印刷用紙