特開2017-109483(P2017-109483A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-109483遮熱材料、それを用いる遮熱組成物および遮熱構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-109483(P2017-109483A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】遮熱材料、それを用いる遮熱組成物および遮熱構造
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20170526BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20170526BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170526BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20170526BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B32B27/20 A
   C08L101/00
   C08K9/02
   E04B1/80 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-226437(P2016-226437)
(22)【出願日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】104141877
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】105131235
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】傅 懷廣
(72)【発明者】
【氏名】劉 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】張 家維
(72)【発明者】
【氏名】黄 元昌
(72)【発明者】
【氏名】徐 雅怡
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA04
2E001FA16
2E001FA32
2E001GA24
2E001HA10
2E001HB04
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4J002GH01
4J002GL00
4J002GR00
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(57)【要約】
【課題】
良好な日射反射率および耐熱性の要求を満たす、改善された遮熱材料を提供する。
【解決手段】
遮熱材料を提供する。該遮熱材料は、シート材と、シート材を覆う顔料層とを含む。顔料層は、シロキサン官能基から形成される架橋構造と、架橋構造中に分散している顔料とを含む。また、これを用いる遮熱組成物および遮熱構造も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材、ならびに
前記シート材を覆う顔料層であって、シロキサン官能基からなる架橋構造、および前記架橋構造中に分散している顔料、を含む顔料層、
を含む遮熱材料。
【請求項2】
前記顔料層と前記シート材とが前記シロキサン官能基によって化学結合を形成する、請求項1に記載の遮熱材料。
【請求項3】
前記顔料と前記架橋構造との間に分子間力がある、請求項1または2に記載の遮熱材料。
【請求項4】
前記シート材の平均アスペクト比が10〜100である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮熱材料。
【請求項5】
前記シート材には、雲母、合成雲母、ハイグロフィライト(hygrophilite)、カオリン粘土、モンモリロナイト、二酸化ケイ素、シート状金属酸化物(sheet metal oxides)、粘板岩薄片(slate flake)、アルミニウムケイ酸塩(aluminum silicate salt)、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮熱材料。
【請求項6】
前記シロキサン官能基が、化学式Si(OR)(ただし、Rはそれぞれ独立にHまたはアルキル基である)を有する化合物から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮熱材料。
【請求項7】
前記シロキサン官能基がテトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、n−オクチルトリエトキシシラン、またはこれらの組み合わせから選ばれる、請求項6に記載の遮熱材料。
【請求項8】
前記顔料には、黒色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮熱材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の遮熱材料1重量部と、
溶媒0.1〜300重量部と、
を含む遮熱組成物。
【請求項10】
前記溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサン、メチルターシャリーブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチル−2−エトキシエタノールアセテート、3−エトキシプロピオネート、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項9に記載の遮熱組成物。
【請求項11】
樹脂0.1〜60重量部をさらに含み、前記樹脂には、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、ポリエーテル樹脂、含フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、でんぷん、セルロース、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項9または10に記載の遮熱組成物。
【請求項12】
分散剤0.1〜3重量部をさらに含み、前記分散剤にはポリマータイプの分散剤が含まれ、前記ポリマータイプの分散剤には、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体混合物、エチレンアクリル酸共重合体、ポリアミド/酸化ポリエチレン共重合体混合物、ポリエチレン共重合体、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遮熱組成物。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に配置された遮熱層であって、樹脂中で規則的に配列し、互いに平行であると共に前記基板の表面に実質的に平行である請求項1〜8のいずれか1項に記載の前記遮熱材料を含む遮熱層と、
を含み、
前記遮熱材料と前記樹脂との重量比が0.02〜10である、遮熱構造。
【請求項14】
前記基板には、リジッド基板(rigid substrate)またはフレキシブル基板が含まれる、請求項13に記載の遮熱構造。
【請求項15】
前記樹脂には、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、ポリエーテル樹脂、含フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、でんぷん、セルロース、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13または14に記載の遮熱構造。
【請求項16】
分散剤をさらに含み、前記遮熱材料と前記分散剤との重量比が0.3〜10であり、前記分散剤にはポリマータイプの分散剤が含まれ、前記ポリマータイプの分散剤には、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体混合物、エチレンアクリル酸共重合体、ポリアミド/酸化ポリエチレン共重合体混合物、ポリエチレン共重合体、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13〜15のいずれか1項に記載の遮熱構造。
【請求項17】
L−値が<30であり、かつ全日射反射率(total solar reflectance,TSR)が>20%である請求項13〜16のいずれか1項に記載の遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月14日に出願された台湾特許出願第104141877号および2016年9月29日に出願された台湾特許出願第105131235号に基づいていると共に、これら優先権を主張し、これらの開示全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、遮熱材料、それを用いる遮熱組成物および遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0003】
地球の温暖化によって全世界で気候が大きく変化している。省エネルギーおよび二酸化炭素削減が最も有効と思われる対応戦略(response stategies)となっている。現在、遮熱材料は主に建築物の屋根、外壁および窓に用いられる重要なグリーンエネルギープロダクトである。
【0004】
太陽光の約40%は屋根または外壁から室内に入る。白色の屋根は、日射反射率が高いため、理想的なクールルーフ(cool roof)である。しかし実際には、外観と光害を考慮して、暗色の屋根がより多く用いられている。暗色の遮熱材料は海外からの輸入に頼っているため、高価な上に選択肢が少ない。また、既存の暗色の遮熱コーティングが提供する日射反射率および耐熱性は不十分なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8361597号明細書
【特許文献2】米国特許第8394498号明細書
【特許文献3】米国特許第8491985号明細書
【特許文献4】米国特許第8679617号明細書
【特許文献5】米国特許第8034432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、良好な日射反射率および耐熱性の要求を満たす、改善された遮熱材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記およびその他の目的を達成するため、本発明の実施形態は、シート材と、シート材を覆う顔料層とを含む遮熱材料を提供する。顔料層は、シロキサン官能基から形成された架橋構造と、架橋構造中に分散している顔料とを含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、上記遮熱材料1重量部と、溶媒0.1〜300重量部とを含む遮熱組成物を提供する。
【0009】
本発明のまた別の実施形態は、基板と、基板上に配置された遮熱層とを含む遮熱構造を提供する。遮熱層は、樹脂中に規則的に配列した上記遮熱材料を含む。遮熱材料は互いに平行であると共に、基板の表面に実質的に平行である。遮熱材料と樹脂の重量比は0.02〜10である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遮熱材料の全日射反射率(total solar reflectance,TSR)および遮熱性が向上する。さらに本発明によれば、遮蔽材料は低いL−値をも備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面を参照しながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【0012】
添付の図面を参照しながら後続の詳細な説明および実施例を読むことによって、本発明をより十分に理解することができる。
図1】例示的実施形態による遮熱材料の断面図である。
図2】例示的実施形態による反応プロセス時の遮熱材料の概略図である。
図3】例示的実施形態による遮熱構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の開示では、記載された主題のそれぞれ異なる特徴を実施するために、多数の実施形態または実施例が記載される。以下、特定の構成要素および配置の例が、本発明を簡潔とするように記載される。それらは当然に単なる例であって、限定を意図するものではない。例えば、以下の記載において、第1の特徴の第2の特徴の上方または上への形成には、第1の特徴と第2の特徴とが直接に接触して形成される実施形態、および第1の特徴と第2の特徴とが直接に接触し得ないように第1の特徴と第2の特徴との間にさらなる特徴が形成され得る実施形態が含まれていてよい。さらに、本開示では、各種例において参照番号および/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、簡潔および明確とするためになすものであって、それ自体が、記載される各種実施形態および/または構成間の関係を特定するものではない。
【0014】
遮熱コーティングの品質は、主に遮熱コーティングの日射反射率(例えばTSR)に依存する。白色コーティングのTSRは約90%であり、これを用いて形成されたコーティングフィルムはほとんどの赤外線(IR)を反射することができる。それとは逆に、黒色コーティングのTSRは10%未満であり、これを用いて形成されたコーティングフィルムは赤外線(IR)を反射する能力に劣っている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、本発明は、遮熱材料、それを用いる遮熱組成物および遮熱構造を提供する。本発明の遮熱材料は、顔料層に覆われてなるシート材である。当該遮熱材料は、得られる遮熱組成物および遮熱構造の全日射反射率(TSR)を向上させると共に、L−値を低減させることができ、広く建築物、壁、屋根または自動車に適用され得るものである。
【0016】
図1は、本発明の例示的実施形態による遮熱材料100の断面図である。図1に示されるように、本発明の実施形態は、シート材102および顔料層104を含む遮熱材料100を提供する。顔料層104はシート材102を覆う。いくつかの実施形態によれば、本発明に用いられるシート材102には、雲母、合成雲母、ハイグロフィライト(hygrophilite)、カオリン粘土、モンモリロナイト、二酸化ケイ素、シート状金属酸化物(sheet metal oxides)、粘板岩薄片(slate flake)、アルミニウムケイ酸塩(aluminum silicate salt)またはこれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、本発明のシート材102の平均粒径は0.1〜300μm、例えば5〜80μmとすることができる。いくつかの実施形態によれば、本発明に用いられるシート材102の平均アスペクト比(長さ/厚さの値)は10〜100、例えば20〜80とすることができる。本発明のシート材102の平均アスペクト比が高すぎる(つまり100より大きい)と、分散性が悪くなり、塗膜の表面が粗くなる。また、本発明のシート材102の平均アスペクト比が低すぎる(つまり10より小さい)と、遮蔽性能が悪くなり、かつ効果(efficacy)が不十分となる。
【0017】
本発明の実施形態において、シート材102を覆う顔料層104は、シロキサン官能基で形成された架橋構造と、架橋構造中に分散している顔料とを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明に用いられるシロキサン官能基は化学式Si(OR)を備えるものであってよい。式中、Rはそれぞれ独立にHまたはアルキル基であってよく、アルキル基は例えばC−Cアルキル基であり得る。
【0018】
上記シロキサン官能基には、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、n−オクチルトリエトキシシラン、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。加水分解された後、上記シロキサン官能基はOH基を備え得る。いくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる顔料には、黒色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。これら着色顔料(colored pigments)の各々は、単独で、または組み合わせて用いることができる。一実施形態において、黒色顔料と他の着色顔料との配合比率(重量比)は0.1〜5とすることができる。本発明に用いられる黒色顔料には、アニリンブラック、カーボンブラック、シュンガイト、ランプブラック(Lamp Black)、バインブラック(Vine Black)、ボーンブラック(Bone Black)、グラファイト、マーズブラック(Mars Black)、鉄チタンブラウンスピネル(Iron Titanium Brown Spinel)、コバルトブラック(Cobalt Black)、マンガンブラック(Manganese Black)、クロムグリーンブラックヘマタイト(Chromium Green Black Hematite)、硫化亜鉛、ミネラルブラック(Mineral Black)、スレートブラック(Slate Black)、錫アンチモングレー(Tin Antimony Gray)、チタンバナジウムアンチモングレー(Titanium Vanadium Antimony Gray)、コバルトニッケルグレー(Cobalt Nickel Gray)、マンガンフェライトブラック(Manganese Ferrite Black)、鉄コバルトクロマイトブラック(Iron Cobalt Chromite Black)、銅クロマイトブラック(Copper Chromite Black)、鉄コバルトブラック(Iron Cobalt Black)、クロム鉄ニッケルブラック(Chrome Iron Nickel Black)、パリオゲンブラック(Paliogen Black)、ペリレンブラック(Perylene Black)、鉄マンガン酸化物(Iron Manganese Oxide)、二硫化モリブデン(Molybdenum Disulfide)、二酸化チタンブラック(Titanium Dioxide Black)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0019】
本発明に用いられる赤色顔料には、トルイジンレッド(Toluidine Red)、パーマネントレッド(Permanent Red)R、ナフトールレッド(Naphthol Red DK)DK、パーマネントレッドY、ナフトールクリムゾンレッド(Naphthol Crimson Red)AS−TR、パーマネントレッドF4R、ナフトールASレッド、パーマネントボルドー(Permanent Bordeaux)TRR、トルイジンマルーン(Toluidine Maroon)、パーマネントボルドーFGR、パーマネントマルーンミディアム(Permanent Maroon Medium)、ピグメントレッド(Pigment Red)17、アリーリドマルーン(Arylide Maroon)、ピグメントレッド21、ナフトールレッドブライト(Naphthol Red Bright)、ナフトールレッドダーク(Naphthol Red Dark)、ナフトールレッドエキストラダーク(Naphthol Red Extra Dark)、ピグメントレッド32、ピラゾロンレッド(Pyrazolone Red)、硫化ヒ素(Arsenic Sulphide)、ピグメントレッド47、パーマネントレッドBB、パーマネントレッドBB[FIAT]、Irgalite Red 2BY、パーマネントレッド2B、リソールレッド(Lithol Red)LN、バリウムリソールレッド(Barium Lithol Red)、カルシウムリソールレッド(Calcium Lithol Red)、ピグメントレッド52.1、ピグメントレッド52.2、レーキレッド(Lake Red)C、ピグメントレーキレッド(Pigment Lake Red)C、ナトリウムリソールルビン(Sodium Lithol Rubine)、リソールルビン、ピグメントレッド57:2、ピグメントレッド58:4、パーマネントローズ9(Permanent Rose)、ピグメントスカーレット(Pigment Scarlet)、レーキカルミン(Lake Carmine)L、ピグメントカルミン(Pigment Carmine)3B、ピグメントレッド63、リソールボルドー(Lithol Bordeaux)、リソールレッドGG、ローダミン(Rhodamine)6G、ローダミン6G[FIAT]、ローダミンYS、ローダミンYS PTMA、アリザリンクリムゾン(Alizarin Crimson)、アリザリンレーキ(Alizarin Lake)、インドレッド(Indo Red)、チオインジゴバイオレット(Thioindigoid Violet)、Vermilionette、ゼラニウムレーキ(Geranium lake)、ピグメントレッド89、ナフトールレッドAS−D、メルカジウムレッド(Mercadium red)、メルカジウムリトポンレッド(Mercadium Lithopone Red)、ピグメントレッド114、ナフトールレッドFG、ナフトールレッドMEG−DR、キナクリドンレッド(Quinacridone Red)、ペリレンスカーレット(Perylene Scarlet)、アゾ縮合系レッド(Azo Condensation Red)、パーマネントカルミン(Permanent Carmine)、ペリレンレッド(Perylene Red)BX、ピグメントレッド150、ナフトールカルバミド(Naphthol Carbamide)、アントラキノンスカーレット(Anthradquinone Scarlet)、ローダミン、ナフトールレッドAS、ナフトールレッド、ベンゾイミダゾロンボルドー(Benzimidazolone Bordeaux)、D&CレッドNo.3 アルミニウムレーキ(Aluminium Lake)、ローダミンレッド、ピグメントレッド174、ベンゾイミダゾロンレッドHFT、ベンゾイミダゾロンカルミン、アントラキノンレッド、ペリレンマルーン(Perylene Maroon)、ピグメントレッド4BS、ピロールレッド(Pyrrole Red)、Pyrazo Quinazo、ピロールスカーレット、オーガニックニッケルバイオレット(Organic Nickel Violet)、シムラファストレッド(Shimura Fast Red)、ピロールレッドルビン(Pyrrole Red Rubine)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0020】
本発明に用いられる青色顔料には、ビクトリアブルー(Victoria Blue)、ビクトリアブルーSMA、ピグメントブルー(Pigment Blue)9、フタロシアニンブルー(Phthalocyanine Blue)、フタロシアニンアルファブルー(Phthalocyanine Alfa Blue)、ヘリオゲンブルー(Heliogen Blue)L7560、フタロシアニンシアン(Phthalocyanine Cyan)、ピグメントブルー25、プルシアンブルー(Prussian Blue)、コバルトブルー(Cobalt Blue)、群青(Ultramarine Blue)、炭酸銅(Copper Carbonate)、エジプシャンブルー(Egyptian Blue)、スマルト(Smalt)、マンガニーズブルー(Manganese Blue)、硫化銅(Copper sulfide)、セルリアンブルー(Cerulean Blue)、コバルトクロマイト(Cobalt Chromite)、亜鉛コバルトクロムアルミニウムスピネル(Zinc Cobalt Chrome Aluminum Spinel)、Modorant Blue R、リフレックスブルー(Reflex Blue)A5L−G、ファストゲンブルー(Fastogen Blue)5007、ジルコニウムバナジウムブルー(Zirconium Vanadium Blue)、コバルト亜鉛アルミネートブルー(Cobalt Zinc Aluminate Blue)、コバルトシリケートブルー(Cobalt Silicate Blue)、クロモファインブルー(Chromofine Blue)5000P、ファストゲンブルー(Fastogen Blue)10GN、アルミニウムクロロフタロシアニン(Aluminum Chloro−phthalocyanine)、ホスタパームブルー(Hostaperm Blue)R5R、コバルトスズアルミナブルースピネル(Cobalt Tin Alumina Blue Spinel)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0021】
本発明に用いられる緑色顔料には、ピグメントグリーン(Pigment Green)1、ファストグリーンレーキ(Fast Green Lake)、3606ファストグリーンレーキ、フタロシアニングリーン(Phthalocyanine Green)BS、ニトロソグリーン(Nitroso Green)、ニッケル−アゾイエロー(Nickel Azo Yellow)、フタロクロムグリーン(Phthalochrome Green)、カドミウムグリーン(Cadmium Green)、クロムグリーン(Chrome Green)、亜鉛緑(Zinc Green)、酸化クロムグリーン(Chrome Oxide Green)、クロミウムグリーンブラックヘマタイト(Chromium Green Black Hematite)、ビリジアン(Viridian)、コバルトグリーン(Cobalt Green)、緑青(Verdigris)、エメラルドグリーン(Emerald Green)、亜砒酸銅(Copper Arsenite)、グリーンアース(Green Earth)、ウルトラマリングリーン(Ultramarine Green)、コバルトクロマイトグリーン(Cobalt Chromite Green)、フタロシアニングリーン(Phthalocyanine Green)YS、炭酸水酸化銅(Copper Carbonate Hydroxide)、銅フェロシアニド(Copper Ferrocyanide)、クロモシアニングリーン(Chromocyanine Green)、ビクトリアグリーンガーネット(Victoria Green Garnet)、ニッケルグリーンオリバイン(Nickel Green Olivine)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0022】
本発明に用いられる黄色顔料には、ハンザイエロー(Hansa Yellow)G、モノライトイエロー(Monolite Yellow)G、ハンザイエロー GR、ハンザイエロー10G、アリライドイエロー(Arylide Yellow)13G、ハンザイエロー5G、ハンザイエロー3G、アゾイエロー(Azo Yellow)2GX、ハンザイエローR、ベンジジンイエロー(Benzidine Yellow)G、ベンジジンイエローGR、ジアリライドイエロー(Diarylide Yellow)AAOT、パーマネントイエロー(Permanent Yellow)NCG、ダイアリライドイエロー(Dairylide Yellow)17、C.I.ピグメントイエロー21、Flaventhrone Yellow、オキシ塩化鉛(Lead Oxychloride)、クロム酸バリウム(Barium Chromate)、クロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate)、クロム酸カルシウム(Calcium Chromate)、クロム酸鉛(Lead Chromate)、硫酸鉛を含むクロム酸鉛(Lead Chromate with Lead sulfate)、カドミウムイエロー(Cadmium Yellow)、カドミウムリトポンイエロー(Cadmium lithopone Yellow)、亜鉛黄(Zinc Yellow)、塩基性亜鉛黄(Basic Zinc Yellow)、カドミウム−バリウムイエローディープ(Cadmium−Barium Yellow Deep)、硫化スズ(Tin Sulphide)、オーピメント(Orpiment)、リアルガー(Realgar)、 オーレオリン(Aureoline)、ナポリイエロー(Naples Yellow)、黄色酸化鉄(Yellow Iron Oxide)、ナチュラルイエロー酸化鉄(Natural Yellow Iron Oxide)、塩基性クロム酸カドミウム(Basic cadmium chromate)、クロム酸鉄(Iron Chromate)、マシコットリサージ(Massicot Litharge)、チタン酸鉛(Lead Titanate)、シアナミド鉛(Lead Cyanamide)、ニッケルアンチモンチタンイエロールチル(Nickel Antimony Titanium Yellow Rutile)、ジアリライドイエローAAPT、ピグメントイエロー61、ピグメントイエロー62、ピグメントイエロー62:1、Suimei Yellow 3G、ハンザイエロー65、アリライドイエローGX、アリライドイエロー5GX、アリライドイエロー、ジスアゾ縮合イエロー(Disazo Condensation Yellow)、ジアリライドイエローH10G、ジアリライドイエローHR、ジアリライドイエロー1285、ジスアゾイエロー(Disazo Yellow)3G、クロモフタルイエロー(Cromophtal Yellow)6G、ジスアゾイエローGR、ジアリライドイエローFGL、ジアリライドイエロー、タートラジンレーキ(Tartrazine Lake)、ルモゲンイエロー(Lumogen Yellow)、FD&Cイエロー6、D&CイエローNo.10レーキ、アントラピリミジンイエロー(Anthrapyrimidine Yellow)、イソインドールイエロー(Isoindole Yellow)、イソインドリノンイエロー(Isoindolinone Yellow)、ハンザブリリアントイエロー(Hansa Brilliant Yellow)、フラバントロンイエロー(Flavanthrone Yellow)、ジアゾイエロー10HG、D&Cイエロー10、ヘリオファストイエロー(Helio Fast Yellow)ER、パリオトールイエロー(Paliotol Yellow)、クロムチタンイエロー(Chromium Titan Yellow)、亜鉛鉄イエロー(Zinc Iron Yellow)、PVファストイエロー(Fast Yellow)H2G、ジアリライドイエローDGR、ベンジジンイエロー(Benzidine Yellow)GRL、DCCジアリライドイエロー、アゾ縮合イエロー(Azo Condensation Yellow)、イルガジンイエロー(Irgazin Yellow)、ピグメントイエロー130、ピグメントイエロー133、ピグメントイエロー134、ピグメントイエロー136、イソインドリンイエロー(Isoindoline Yellow)、キノフタロンイエロー(Quinophthalone Yellow)、ピグメントイエロー147、フィラミッドイエロー(Filamid Yellow)4G、ニッケルアゾイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー(Benzimidazolone Yellow)H4G、ジアリライドイエロー152、ニッケルジオキシムイエロー(Nickel Dioxime Yellow)、ベンゾイミダゾロンイエロー154、ベンゾイミダゾロンイエロー155、ベンゾイミダゾロンイエロー156、ダイピロキサイドイエロー(Daipyroxide Yellow)、スズバナジウムイエロー(Tin Vanadium Yellow)、ジルコニウムプラセオジミウムシリケートイエロー(Zirconium Praseodymium Silicate Yellow)、ジルコニウムバナジウムイエロー(Zirconium Vanadium Yellow)、ニッケルニオブチタンイエロー(Nickel Niobium Titanium Yellow)、クロムニオブチタン黄褐色ルチル(Chrome Niobium Titanium Buff Rutile)、クロミウムタングステンチタン黄褐色(Chromium Tungsten Titanium Buff)、マンガンアンチモンチタン黄褐色ルチル(Manganese Antimony Titanium Buff Rutile)、サンヨーファストイエロー(Sanyo Fast Yellow)F5G、クロモファインイエロー(Chromofine Yellow)、セイカファストエロー(Seikafast Yellow)A−3、アゾイエロー168、リオノールイエロー(Lionol Yellow)K−2R、ピグメントイエローFRN、リオノールイエローNBK、Irgalite Yellow LBT、 ベンゾイミダゾロンイエローH6G、 ジアリールイエロー(Diaryl Yellow)、ピグメントイエロー179、 ベンゾイミダゾロンイエロー、ベンゾイミダゾゴールデン(Benzimidazo Golden)、サンドリンイエロー(Sandorin Yellow)、 パリオトールイエローK227、バナジン酸ビスマスイエロー(Bismuth Vanadate Yellow)、Irgalite Yellow、ニッケルチタネート(Nickel Titanate)、パリオトールイエローK1570、ピグメントブリリアントイエローHGR、クロモフタルイエロー、Sandofil Yellow、アントラキノンイエロー(Anthraquinone Yellow)、ノボパームイエロー(Novoperm Yellow)F2G、サングロウイエロー(Sunglow Yellow)、ピグメントイエロー204、Neolor Yellow、Solaplex Yellow、チタン亜鉛アンチモンスタネート(Titanium Zinc Antimony Stannate)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0023】
本発明の1実施形態において、顔料層104およびシート材102は、シロキサン官能基により、Si−O−Si結合のような化学結合を形成する。さらに、分子間力が顔料106と架橋構造との間にあるため、この分子間力によって顔料106が架橋構造に付着し、架橋構造中で分散する。故に、上述の化学結合および分子間力のために、顔料106および架橋構造で形成された顔料層104は、より完全にかつ安定してシート材102を覆うことができるようになり、得られる遮熱組成物および遮熱構造のTSR%の改善に寄与し得る。
【0024】
本発明が提供する遮熱材料100は、ゾルゲル法を用いることにより形成することができる。例えば、先ずシロキサン官能基、酸、シート材および顔料を混合してから、その混合物に加熱処理を施すことで、上述した本発明の遮熱材料100を形成することができる。以下に、説明の目的で特定の実施例を記載するが、本発明を限定する意図はない。
【0025】
本発明の1実施形態では、テトラエトキシシラン(TEOS)、酸、シート材102、および顔料106を混合してから、その混合物に加熱処理を施して、遮熱材料100を形成する。反応プロセスにおいて、先ずTEOSが酸と反応し、Siに結合している4つのOR基が加水分解されて4つのOH基になる。このとき、OH基のうち1つがシート材102表面上のOH基と反応して水素結合が形成される。他の3つのOH基と顔料106との間には分子間力が形成され、これにより、図2に示されるように、顔料106がOH基に付着する。次いで、加熱処理を行う。シロキサン官能基のSi−OHの縮合反応がSi−O−Si結合を生じ、これにより架橋構造を形成する。OH基に付着した顔料106は、シロキサン官能基で形成された架橋構造中に閉じ込められ(trapped)、分散する。このとき、架橋構造とその中で分散している顔料106とが共に顔料層104を形成する。顔料層104はシート材102を覆う。さらに、ゾルゲル反応時にシート材102の表面とシロキサン官能基との間にもSi−O−Si結合が形成される。故に、この化学結合によって、顔料層104はより完全にかつ安定してシート材102を覆うことができ、得られる遮熱組成物および遮熱構造のTSR%の向上に寄与し得る。
【0026】
ゾルゲル反応において本発明で用いられるシロキサン官能基は、テトラエトキシシラン(TEOS)に限定されることはなく、他の適したシロキサン官能基であってもよい。1実施形態では、シロキサン官能基は化学式Si(OR)を備えるものであってよい。式中、Rはそれぞれ独立にHまたはアルキル基であり得る。
【0027】
一実施形態において、本発明に用いられるシロキサン官能基は、メチルトリエトキシシラン(MTES)、n−オクチルトリエトキシシラン、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態によれば、ゾルゲル反応に用いられる酸には、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、シート材102には、雲母、合成雲母、ハイグロフィライト(hygrophilite)、カオリン粘土、モンモリロナイト、二酸化ケイ素、シート状金属酸化物(sheet metal oxides)、粘板岩薄片(slate flake)、アルミニウムケイ酸塩(aluminum silicate salt)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。しかしながら本発明のシート材102はこれらに限定されることはなく、平均アスペクト比が10〜100のシート材であれば、いずれも本発明に適用可能である。いくつかの実施形態によれば、顔料106には、黒色顔料、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、シュンガイト、ランプブラック(Lamp Black)、バインブラック(Vine Black)、ボーンブラック(Bone Black)、グラファイト、マーズブラック(Mars Black)、鉄チタンブラウンスピネル(Iron Titanium Brown Spinel)、コバルトブラック(Cobalt Black)、マンガンブラック(Manganese Black)、クロムグリーンブラックヘマタイト(Chromium Green Black Hematite)、硫化亜鉛、ミネラルブラック(Mineral Black)、スレートブラック(Slate Black)、錫アンチモングレー(Tin Antimony Gray)、チタンバナジウムアンチモングレー(Titanium Vanadium Antimony Gray)、コバルトニッケルグレー(Cobalt Nickel Gray)、マンガンフェライトブラック(Manganese Ferrite Black)、鉄コバルトクロマイトブラック(Iron Cobalt Chromite Black)、銅クロマイトブラック(Copper Chromite Black)、鉄コバルトブラック(Iron Cobalt Black)、クロム鉄ニッケルブラック(Chrome Iron Nickel Black)、パリオゲンブラック(Paliogen Black)、ペリレンブラック(Perylene Black)、鉄マンガン酸化物(Iron Manganese Oxide)、二硫化モリブデン(Molybdenum Disulfide)、二酸化チタンブラック(Titanium Dioxide Black)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。これらの例は単なる説明にすぎず、本発明の範囲はこれらに限定されないという点に留意されたい。
【0028】
本発明では、反応にシロキサン官能基および酸を加えることでOH基の数を増やし、顔料をより多くのOH基と反応させる。酸を添加せずに直接シート材、シロキサン官能基、および顔料を混合すると、加水分解が起こりにくく、よってゾルゲル反応が生じないことが分かった。顔料とシート材表面上のOH基との間に分子間力が形成されるが、シロキサン官能基により立体障害が生じるためにシート材表面に付着する顔料の数は多くない。反対に、シート材、シロキサン官能基、および顔料を酸と共に混合すると、加水分解が速くなる。このような場合にゾルゲル反応は起こる。Si−O−Si結合が形成される前に、加水分解されたシロキサン官能基によって生じる立体障害は小さく、このため分子間力が容易に顔料とシート材表面上のOH基との間に形成され、よって顔料がシート材に付着する。さらに、前述したように、加水分解されたシロキサン官能基がシート材上のOH基と水素結合を形成するのみならず、加水分解されたシロキサン官能基の残りのOH基も材料と分子間力を生じ、材料をシート材に付着させることができる。このように、酸の添加によって、顔料がより多くのOH基と反応できるようになり、シート材をより完全に覆うことができるようになる。
【0029】
本発明の別の実施形態は、遮熱組成物を提供する。本発明において、遮熱組成物における各反応物質の比率は、所望の遮熱組成物の特性に応じて調整可能である。例えば、遮熱組成物を形成するのに、前述の遮熱材料100を1重量部、および溶媒を0.1〜300重量部用いることができる。あるいは、遮熱組成物を形成するのに、前述の遮熱材料100を1重量部、および溶媒を1〜1000重量部用いることができる。いくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサン、メチルターシャリーブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチル−2−エトキシエタノールアセテート、3−エトキシプロピオネート、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0030】
遮熱組成物は樹脂をさらに含んでいてよい。樹脂の量は、所望の遮熱組成物の特性、および該遮熱組成物から形成される塗膜層の厚さに応じて調整可能である。例えば、樹脂の量は0.1〜60重量部または1〜45重量部であってよい。本発明に用いられる樹脂には、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、ポリエーテル樹脂、含フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、でんぷん、セルロース、これらの共重合体、またはこれらの混合物が含まれ得る。さらに、上記遮熱組成物に、任意で、分散剤を0.1〜3重量部、例えば0.5〜2重量部加え、得られる遮熱組成物のTSR%を改善することができる。分散剤はポリマータイプの分散剤であってよく、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体混合物、エチレンアクリル酸共重合体、ポリアミド/酸化ポリエチレン共重合体混合物、ポリエチレン共重合体、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0031】
分散剤を加えなくても、本発明の遮熱組成物はすでに、市販の暗色遮熱材料に比してはるかに優れたTSR%を備えているという点に留意されたい。だが、分散剤を加えることで、本発明の遮熱組成物のTSR%をさらに向上させることができる。こうした結果は、分散剤の存在下で遮熱材料が単一方向の配列を生じ易いことから得られるものと思われる。
【0032】
図3は、本発明の例示的実施形態による遮熱構造200の断面図である。図3に示されるように、本発明の一実施形態は、基板202と、基板202上に配置された遮熱層204とを含む遮熱構造200を提供する。遮熱層204は、樹脂206中で規則的に配列した上記遮熱材料100を含む。遮熱材料100と樹脂206との重量比は0.02〜10である。遮熱材料100は、互いに平行であると共に、基板202の表面に実質的に平行である。留意すべきは、先述の遮熱材料100が基板202の表面に実質的に平行という状態には、遮熱材料100の平面方向と基板202の表面との間の角度が10度より大きくないという状態が含まれ得る、という点である。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、本発明の基板202は任意の固体の基板であってよく、例えば金属、鉄板、鋼板、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、リチウム合金、半導体、ガラス、セラミックス、セメント、瓦、シリコン基板などのリジッド基板(rigid substrate)、または例えばPES(ポリエーテルスルホン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PE(ポリエチレン)、PI(ポリイミド)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)のようなプラスチック基板、樹脂、もしくはこれらの組み合わせなどのフレキシブル基板とすることができる。本発明に用いられる樹脂206には、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)、ポリエーテル樹脂、含フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、でんぷん、セルロース、これらの共重合体、またはこれらの混合物が含まれ得る。
【0034】
本発明において、遮熱層204の厚さは各種異なる応用に応じて調整可能であり、これにより所望の特性を備える遮熱構造を得ることができる。例えば、遮熱層204の厚さは50〜1000nmまたは200〜600nmとすることができる。さらに、遮熱層204に分散剤を任意で加え、得られる遮熱層204のTSR%を改善することができる。分散剤はポリマータイプの分散剤であってよく、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体混合物、エチレンアクリル酸共重合体、ポリアミド/酸化ポリエチレン共重合体混合物、ポリエチレン共重合体、またはこれらの組み合わせであり得る。遮熱材料100と分散剤との重量比は0.3〜10、例えば0.5〜5とすることができる。
【0035】
本発明の遮熱材料100は二次元構造(two−dimensional structure)であり、特定の塗布プロセスを用い遮熱層204を基板202上に塗布して、基板202上で遮熱材料100を規則的に配列させることができる。例えば、規則的な配列のための塗布プロセスには、ブレード塗布、バー塗布、ワイヤバー塗布、刷毛塗布、ローラー塗布、スプレー塗布、フローコーティング(flow coating)、その他の適用可能な規則的な配列のための塗布プロセス、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本発明の一実施形態では、得られる遮熱構造200のL−値は30未満、例えば25未満または20未満であり得る。本発明の一実施形態では、得られる遮熱構造200のTSR%は20%よりも大きい、例えば30%よりも大きい、35%よりも大きい、40%よりも大きい、または45%よりも大きいものであり得る。
【0036】
本発明により提供される遮熱材料は、一つのステップで、シロキサン官能基、酸、シート材および顔料でゾルゲル反応を進行させることにより形成されるため、工程がより容易である。顔料を含む塗布材料を内部材料(inner material)上に塗布するステップ、および後続の硬化のステップなどが不要となる。また、本発明において形成される遮熱材料によって、顔料層がシート材をより完全に安定して覆うようになる。さらに、得られる遮熱構造は、高いTSR%(>20%)、高い遮熱性、および低いL−値(L<30)を備える。よって本発明は、十分なTSR%および遮熱性を備えた遮熱材料を提供する。
【0037】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、実施例および比較例を詳細に記述する。
【実施例】
【0038】
実施例1
【0039】
テトラエトキシシラン(TEOS)1g、雲母(Mica M)(平均粒径5.72μm、平均アスペクト比23.83)1g、および黒色顔料(BASF Paliogen S0084)1gをイソプロパノール(IPA)100mL中に加えて充分に混合した。次いで、0.1N塩酸0.5mLをその混合物に加えた。次いで、室温(25℃)で3時間ゾルゲル反応を進行させてから、80℃まで昇温し、さらに3時間反応させて、遮熱材料を作った。
【0040】
実施例2
【0041】
テトラエトキシシラン(TEOS)1g、雲母(Mica M)(平均粒径5.72μm、平均アスペクト比23.83)1g、黒色顔料(BASF Paliogen S0084)0.05g、および赤色顔料(Pigment red224)0.05gをイソプロパノール(IPA)100mL中に加えて充分に混合した。次いで、0.1N塩酸0.5mLをその混合物に加えた。次いで、室温(25℃)で3時間ゾルゲル反応を進行させてから、80℃まで昇温し、さらに6時間反応させて、遮熱材料を作った。
【0042】
比較例1
【0043】
雲母(Mica M)を球状二酸化チタン(TiO)微粒子(平均粒径0.45μm)に置き換えたことを除き、実施例1と同じ工程を繰り返し行った。
【0044】
比較例2
【0045】
比較例2は、市販の遮熱ナノ粒子(球状粒子、Shepherd 10C909A)とした。
【0046】
ISO 9050(建築物のガラス―光線透過率、日射直接透過率、全日射エネルギー透過率、紫外線透過率、および関連グレージング係数の測定)により、実施例1および比較例1の遮熱材料ならびに比較例2の市販の遮熱ナノ粒子のTSR%を測定した。また、ASTM D1003により、実施例1および比較例1の遮熱材料ならびに比較例2の市販の遮熱ナノ粒子のヘイズ(haze)を測定した。次いでL−値を算出した。L−値は、1から100までの、色の明るさ(brightness of color)を表すのに用いられる値である。L−値が高いほどその色は明るく、L−値が小さいほどその色は暗い。TSR%の測定結果およびL−値が表1に示されている。
【0047】
表1:異なる遮熱材料の比較
【表1】
【0048】
表1に示されるように、雲母(Mica M)をシート材として用いたとき、得られた遮熱材料のTSR%は最も高く、かつL−値は最も低かった。TiO微粒子および雲母(Mica M)は粒径および色(白色)が類似している。TiO微粒子で形成された遮熱材料および雲母(Mica M)で形成された遮熱材料のTSR%は近いが、雲母(Mica M)で形成された遮熱材料のL−値は顕著に小さかった。市販の遮熱ナノ粒子と比べると、雲母(Mica M)で形成された遮熱材料のTSR%は顕著に大きかった。
【0049】
実施例3
【0050】
雲母(Mica M)を合成雲母に置き換えたことを除き、実施例1と同じ工程を繰り返し行った。
【0051】
実施例4
【0052】
雲母(Mica M)をハイグロフィライト(hygrophilite)に置き換えたことを除き、実施例1と同じ工程を繰り返し行った。
【0053】
表2:平均アスペクト比の異なるシート材で形成された遮熱材料の比較
【表2】
【0054】
表2に示されるように、平均アスペクト比が23.83、70.55、および74.12のシート材で形成された遮熱材料のTSR%はいずれも40%よりも大きく、45%より大きいものもあった。また、これら遮熱材料のL−値はいずれも30未満であり、25未満のものもあった。
【0055】
以下、実施例5および実施例6の遮熱材料を、それぞれ異なるシロキサン官能基を用いて作製した。ISO 9050により、得られた遮熱材料のTSR%を測定し、ASTM D1003により、得られた遮熱材料のL−値を算出した。実施例1ならびに実施例5および6を比較した結果が表3に示されている。
【0056】
実施例5
【0057】
TEOSをMTES(Momentive;A162)に置き換えたことを除き、実施例1と同じ工程を繰り返した。
【0058】
実施例6
【0059】
TEOSをn−オクチルトリエトキシシラン(Momentive;A137)に置き換えたことを除き、実施例1と同じ工程を繰り返した。
【0060】
表3:異なるシロキサン官能基で形成された遮熱材料の比較
【表3】
【0061】
表3に示されるように、異なるシロキサン官能基で形成された遮熱材料のTSR%はいずれも20%より大きく、さらにTEOSおよびMTESで形成された遮熱材料のTSR%は40%より大きかった。また、異なるシロキサン官能基で形成されたこれら遮熱材料のL−値いずれも30未満であり、25未満のものもあった。
【0062】
実施例7
【0063】
実施例1の遮熱材料1g、およびアクリル樹脂(Eternal Materials Co.,Ltd.,ETERAC 7132−2−M−20)5gを充分に混合した。その混合物を、ブレード塗布プロセスにより金属基板上に塗布してから、100℃で10分乾燥して、遮熱構造を形成した。ISO 9050により、得られた遮熱構造のTSR%を測定し、ASTM D1003により、得られた遮熱構造のL−値を算出した。
【0064】
実施例8
【0065】
実施例1の遮熱材料1g、および分散剤(DISPARLON,4200−10)1gを充分に混合してから、アクリル樹脂(Eternal Materials Co.,Ltd.,ETERAC 7132−2−M−20)5gを加えて充分に混合した。その混合物を、ブレード塗布プロセスにより亜鉛メッキ鋼(galvanized steel)上に塗布してから、100℃で10分乾燥して、遮熱構造を形成した。ISO 9050により、得られた遮熱構造のTSR%を測定し、ASTM D1003により、得られた遮熱構造のL−値を算出した。
【0066】
比較例3
【0067】
市販のカーボンブラック(Cabot ML)1gおよびアクリル樹脂(Eternal Materials Co.,Ltd.,ETERAC 7132−2−M−20)5gを充分に混合した。その混合物を、ブレード塗布プロセスにより亜鉛メッキ鋼(galvanized steel)上に塗布してから、100℃で10分乾燥して、遮熱構造を形成した。ISO 9050により、得られた遮熱構造のTSR%を測定し、ASTM D1003により、得られた遮熱構造のL−値を算出した。
【0068】
実施例7、実施例8、および比較例3のTSR%の測定結果およびL−値が表4に示されている。実施例7、実施例8、および比較例3の遮熱構造の遮熱層の厚さは同じである。
【0069】
【表4】
【0070】
表4に示されるように、分散剤の添加の有無にかかわらず、実施例1の遮熱材料で形成された遮熱構造のTSR%は、市販のカーボンブラックで形成された遮熱構造よりも大きかった。また、これら遮熱構造のL−値はいずれも30未満であった。分散剤を含まない実施例1の遮熱材料で遮熱構造が形成されていると、そのTSR%は35.1%であるが、分散剤を含む実施例1の遮熱材料で遮熱構造が形成されていると、そのTSR%は42.6%に向上した。つまり、分散剤を含まない場合と比較して、遮熱構造のTSR%は約7.5%向上した。
【0071】
実施例7および実施例8の遮熱構造に対し促進耐候性(QUV)試験を行った。その結果、1000時間のQUV照射後も遮熱構造のTSR%が維持され得ることがわかった。ASTM G154の規格によると、上記遮熱構造の耐用年数は5年にも達していた。
【0072】
本発明が提供する遮熱材料は、シート材を完全かつ安定に覆う顔料層を含み、これがTSR%の改善に寄与する。さらに、この遮熱材料から作られる遮熱構造は、全日射反射率(total solar reflectance)が向上し(TSR%>40%)、L−値が低く(L<30)、かつ耐候性も向上する(QUV照射約1000時間)ため、広く建築物、壁、屋根、および自動車に適用できる。
【0073】
開示した方法および材料には各種修飾および変化を加え得るということが、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされるように意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。
【符号の説明】
【0074】
100…遮熱材料
102…シート材
104…顔料層
106…顔料粒子
200…遮熱構造
202…基板
204…遮熱層
206…樹脂
図1
図2
図3