【実施例】
【0015】
図4および
図5に示すように、実施例に係るリテーナ40は、インストルメントパネル10において、エアバッグ装置20の作動時にエアバッグドア28となる部分の裏側に設置されている。また、リテーナ40は、インフレータケース22と組み合わせられ、エアバッグ26の展開時にインフレータケース22に係合することで、浮き上がりが規制される。リテーナ40としては、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)等から成形した成形品を好適に用いることができ、実施例では、インジェクション成形等の型成形により後述する各部(リテーナ本体42,ドア支持部44および保持部58)が一体的に形成されている。実施例のインストルメントパネル10は、剛性を担う基材12と、この基材12の表側を覆う表層材14とからなる複層構造であり、表層材14は、表皮の裏側にウレタン等の発泡体が設けられたものである。また、エアバッグドア28は、インストルメントパネル10に設けられていることを表側(乗員室16)から認識できない所謂インビジブルタイプである。リテーナ40の内側には、エアバッグ26を膨張させるインフレータが設けられたインフレータケース22が配置されると共に、インフレータケース22およびエアバッグドア28の間に、折り畳まれたエアバッグ26が収納される。エアバッグ装置20は、基材12に開設されたエアバッグ開口12a(
図6参照)にリテーナ40を嵌め合わせて、エアバッグ26の膨張によりリテーナ40の表側を覆う表層材14がエアバッグドア28として破断して開放するよう構成される。
【0016】
図6に示すように、インフレータケース22は、例えば金属製の箱状体であり、車両前側および車両後側の側面のそれぞれに、鉤状の取付片24が設けられている。インフレータケース22は、取付具を介してリインフォースバー38に固定されると共に、取付片24を介してリテーナ40と組み合わせられる。取付片24は、インフレータケース22の側面から該側面と直交するように延出し、後述の取付開口56の貫通方向へ延びる挿通部24aを有している。また、取付片24は、挿通部24aの延出端からエアバッグドア28と反対側へインフレータケース22の側面に沿うように折れ曲がり、後述のリテーナ本体42の壁部46,47に沿うように延びる掛止部24bを備え、側面視略「L」字状に形成されている(
図4および
図5参照)。
【0017】
図1〜
図3に示すように、リテーナ40は、一縁がインストルメントパネル10に接合されて、エアバッグドア28の周辺を支持するリテーナ本体42と、リテーナ本体42におけるエアバッグドア28側に設けられ、エアバッグドア28を裏側から支持するドア支持部44とを備えている。リテーナ本体42は、エアバッグドア28が設けられたインストルメントパネル10と交差するように延在する壁部46,47,48,48と、壁部46,47,48,48の上端縁(エアバッグドア28側の端縁)に、外方へ延出するように形成されたフランジ部50を備えている。実施例のリテーナ本体42は、前後左右の壁部46,47,48,48が角環状に連なる筒状体であり、対向する壁部46,47,48,48の間に、折り畳まれたエアバッグ36およびインフレータケース22が配置されるスペースが設けられている。フランジ部50は、リテーナ本体42の全周に亘って形成され、基材12におけるエアバッグ開口12aの開口縁に重なると共に、エアバッグドア28の周辺を構成する表層材14と接合される。前後の壁部46,47は、上から下に向かうにつれて車両前側に傾くように延在しており、上部開口がフロントガラス18側ではなく乗員室16側に指向するようにリテーナ本体42が傾いている。
【0018】
図1および
図3に示すように、リテーナ40は、リテーナ本体42の上部に設けられたドア支持部44により上部開口が塞がれる一方で、下部開口が開放されており、この下部開口から内側にインフレータケース22が挿入される。ドア支持部44は、エアバッグドア28となる表層材14に接合されている。また、ドア支持部44は、板厚を薄くすることで脆弱化した破断予定部52を備えている。実施例では、ドア支持部44の前後中央に左右へ延在する中央ラインと、この中央ラインの各端からドア支持部44の角のそれぞれへ向けて延在する斜めラインとで破断予定部52が構成されている。更に、ドア支持部44には、リテーナ本体42の各壁部46,47,48,48に連なる根元部分にヒンジ部54が設けられている(
図3参照)。リテーナ40は、エアバッグ26に押し上げられて破断予定部52で破断することで4つに分割されたドア支持部44が、前後左右のヒンジ部54で折れ曲がって上側(乗員室16側)に開くようになっている。
【0019】
図1(a),
図4および
図5に示すように、前記リテーナ本体42には、前壁部46と、この前壁部46に対向する後壁部47とのそれぞれに、インフレータケース22の取付片24が挿入される取付開口56が設けられている。前後の壁部46,47には、左右方向に一定間隔で離間して、複数(実施例では5箇所)の取付開口56が下側に偏倚して設けられている。取付開口56は、掛止部24bにおける挿通部24aからの延出寸法L以上の開口幅Hで、該掛止部24bの延出方向(実施例では上下方向)に開口するように形成されている。なお、各取付開口56は、壁部46,47を前後(板厚方向)に貫通する略矩形状に形成され、実施例では、取付開口56の形状および大きさが同じに設定されている。リテーナ40には、リテーナ本体42の内側から取付片24が取付開口56に嵌め込まれ、取付片24において取付開口56を貫く挿通部24aから折れ曲がって壁部46,47に沿って延びる掛止部24bが該取付開口56の下側開口縁に重なるように、インフレータケース22とリテーナ40とが配置される。このように、リテーナ40は、取付開口56から壁部46,47の外方に延出する取付片24の掛止部24bが、取付開口56の下側開口縁に掛かることで、インフレータケース22から外れるのを防止している。また、リテーナ本体42は、エアバッグ26の展開時に、取付開口56に通した取付片24と該取付開口56の開口縁との引っ掛かりにより、インフレータケース22に対する相対的な移動(浮き上がり)が規制される。
【0020】
図1〜
図5に示すように、前記リテーナ40には、取付開口56に挿入された取付片24から外れないようにするために保持部58が設けられている。実施例では、リテーナ本体42における前後に対向する壁部46,47のそれぞれに取付開口56が設けられているので、前壁部46および後壁部47のそれぞれに保持部58が設けられている。保持部58は、該保持部58自身が連なる壁部46,47に形成された取付開口56へ嵌め込み可能に構成されている。また、保持部58は、取付片24の挿通部24aが貫いた取付開口56に嵌め込んだ際に、該取付開口56に残る上下方向(掛止部24bの延出方向)の隙間が、掛止部24bの延出寸法Lよりも小さくなるように構成されている。すなわち、リテーナ40は、保持部58の取付開口56への嵌め込みにより、取付開口56の開口面積を小さくして、取付開口56に挿入された取付片24から外れ難くしてある。なお、前後の保持部58の構成は、基本的に同じである。
【0021】
図4および
図5に示すように、保持部58は、取付開口56が設けられた前後の壁部46,47の下端縁(エアバッグドア28と反対側の端縁)にインテグラルヒンジ60を介して設けられ、壁部46,47および保持部58より薄肉に形成されたインテグラルヒンジ60で折り曲げて姿勢変位可能になっている。保持部58は、前後の壁部46,47の左右幅と同じ幅で形成され、壁部46,47の下端縁に左右方向に亘って形成されたインテグラルヒンジ60に連なっている。前後の壁部46,47の下端縁は、フランジ部50と同様に外方へ延出するように屈曲しており、その先端に設けられたインテグラルヒンジ60が取付開口56から外方へ延出する取付片24よりも外方に位置している。
【0022】
図1〜
図5に示すように、保持部58は、インテグラルヒンジ60に連なる基部62aから折れ曲がる折曲部62bを有する側面視略「L」字状に形成された連結片62と、連結片62における折曲部62bの延出端(インテグラルヒンジ60と反対側の縁)に設けられた嵌入部64とを備えている。嵌入部64は、連結片62の折曲部62bを更に延長するように突出する嵌入本体64aと、この嵌入本体64aの先端に該嵌入本体64aの突出方向と交差する方向へ突出する係合爪64bとを備え、連結片62の延出端に左右方向に離間して複数(実施例では5箇所)設けられている。取付開口56と嵌入部64とは対応させて設けられ、実施例では、1つの保持部58に該保持部58が連なる壁部46,47の取付開口56に合わせて複数の嵌入部64が形成されている。嵌入部64は、その左右幅が取付開口56の左右幅と同一またはわずかに小さく設定されると共に、係合爪64bが最も突出する部位での上下幅が、取付片24が挿入された取付開口56の上下の隙間に応じて設定されている。また、嵌入部64は、取付開口56への挿入端から連結片62に連なる根元側に向かうにつれて上下幅が大きくなるように、係合爪64bがテーパ状に形成されている。
【0023】
前記保持部58は、インテグラルヒンジ60で折り曲げて、自身が連なる壁部46,47の外面に対して連結片62を接近または遠ざかるように揺動させて、壁部46,47の外面から離れて取付開口56を開放した姿勢(
図1(a),
図2(a)および
図4参照)と、嵌入部64が取付開口56に嵌合した保持姿勢(
図1(b),
図2(b)および
図5参照)との間で姿勢変位可能である。保持部58は、保持姿勢において、連結片62の基部62aが壁部46,47の外面に対向すると共に連結片62の折曲部62bが取付開口56の貫通方向に沿うように延びて、取付開口56に挿入された嵌入部64の係合爪64bが取付開口56の上側開口縁内側に掛かる。実施例では、保持部58の保持姿勢において、取付開口56を通る嵌入部64の嵌入本体64aによって、取付片24が貫いた取付開口56に残る上下方向の隙間を、掛止部24bの延出寸法Lよりも小さくしている。
【0024】
図5に示すように、保持部58は、壁部46,47において外方へ延出するよう屈曲した下端縁に連ねられ、保持姿勢とした際に、連結片62の基部62aと壁部46,47との間に、取付片24において取付開口56から外方へ延出する掛止部24bを収容し得る隙間があくように設定される。また、保持部58は、保持姿勢における連結片62の基部62aと壁部46,47との間の隙間が、取付片24において取付開口56から外方へ延出する掛止部24bの突出寸法に合わせて設定される。そして、保持部58は、取付開口56に嵌入部64を嵌め込んだ保持姿勢において、リテーナ本体42の壁部46,47との間に、取付片24の掛止部24bを挟むように構成されている。前壁部46に設けられた保持部58には、嵌入部64から連結片62にかけて溝部66が設けられ(
図3参照)、嵌入部64を取付開口56に嵌合した際に、取付開口56から外方へ延出する掛止部24bを溝部66に収めて(
図5参照)、左右方向の変位を規制するようになっている。
【0025】
前記保持部58は、リテーナ40を成形する成形型の開き方向または該成形型からの型抜き方向に合わせた姿勢(成形姿勢)で型成形される。実施例の保持部58は、成形姿勢において、連結片62の基部62aおよび嵌入部64の係合爪64bが壁部46,47の下端縁から該壁部46,47に沿って下方へ延びると共に、連結片62の折曲部62bおよび嵌入部64の嵌入本体64aが取付開口56の貫通方向へ延びた状態にある(
図1(a),
図2(a)および
図4参照)。保持部58は、インテグラルヒンジ60で折り曲げて、成形姿勢から壁部46,47に接近する方向および遠ざかる方向の何れにも姿勢変位可能であり、取付開口56を開放している成形姿勢から壁部46,47の外面に近づけるように姿勢変位して、保持姿勢となる。
【0026】
実施例のリテーナ40は、次のように組み付けられる。リテーナ本体42の壁部46,47,48,48を、基材12のエアバッグ開口12aに上方から挿入し、フランジ部50をエアバッグ開口12aの開口縁に重ね合わせて、リテーナ20を基材12に取り付ける。リテーナ40を取り付けた基材12に、表層材14を発泡成形や貼り付けなどによって取り付ける。インフレータケース22を、インストルメントパネル10に取り付けられたリテーナ40におけるリテーナ本体42の下部開口から挿入する(
図6(a))。インフレータケース22における前後の取付片24を、リテーナ本体42の内側から取付開口56へそれぞれ挿入し、取付片24を介してリテーナ40とインフレータケース22とを組み合わせる。なお、取付片24を取付開口56に挿入するときは、保持部58を開放姿勢にして取付開口56を開放してある。次に、保持部58をインテグラルヒンジ60で折り曲げて開放姿勢から保持姿勢へ姿勢変位し、嵌入部64を対応の取付開口56に外側から挿入し、嵌入部64の係合爪64bを取付開口56の開口縁に掛けて、保持姿勢で係止する。インストルメントパネル10を車体に設置し、リテーナ40と接続されたインフレータケース22を、取付具を介してリインフォースバー38に固定する(
図6(b))。
【0027】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るリテーナ40の作用について説明する。リテーナ40は、インテグラルヒンジ60で折り曲げる保持部58の姿勢変位により、取付開口56を開放した状態から取付片24が挿入された取付開口56に保持部58の嵌入部64を嵌め込むことで、嵌入部64によって取付片24が挿入された取付開口56の隙間を小さくすることができる。これにより、インストルメントパネル10またはリテーナ30がインフレータケース22に対して相対的に下がった位置に設置された場合であっても、取付片24が取付開口56から抜け難くなるから、取付片24からリテーナ本体42を外れ難くすることができる。また、取付片24を挿入した取付開口56にできる隙間が保持部58の嵌入部64の挿入により小さくなっているので、取付片24の配置ずれ(遊び)が生じ難くなり、取付開口56に挿入された取付片24(インフレータケース22)とリテーナ本体42との相対的な位置関係がずれることを防止できる。従って、取付片24の掛止部24bと取付開口36の開口縁との掛かり代を適切に確保することができると共に、掛かり状態を保つことができる。また、取付開口56への保持部58の嵌入部64の挿入により取付片24の遊びが少なくなるので、インストルメントパネル10を車体に設置する際に、インフレータケース22がリテーナ40に対して安定して、リテーナ40とインフレータケース22とが外れ難くなる。
【0028】
前記リテーナ40は、嵌入部64で取付片24が貫いた取付開口56の隙間を埋めることで、インストルメントパネル10のエアバッグドア28となる部分を表側から押した際の剛性感が向上すると共に、車両走行時にリテーナ40と取付片24との干渉に起因する異音の発生を防止することができる。また、エアバッグ26の膨張時に前壁部46および後壁部47に内側から力が加わっても、取付開口56に嵌まった嵌入部64により取付片24から壁部46,47が外れることを防止することができる。従って、リテーナ40とインフレータケース22との分離を防止できるので、膨張するエアバッグ26の力がエアバッグドア28に効率よく伝わることになり、エアバッグドア28をインストルメントパネル10から素早く破断させて開放させて、エアバッグ26を乗員室16に円滑に展開させることができる。
【0029】
前記保持部58は、取付開口56を開放した状態から姿勢変位することで取付開口56に嵌め込む構成であるので、取付開口56を開放した状態にしておけば、取付開口56にインフレータケース22の取付片24を挿入する際に邪魔にならない。リテーナ40は、取付片24の挿通部24aが貫いた取付開口56に嵌まった保持部58の嵌入部64によって、取付開口56に残る隙間を、掛止部24bの延出寸法Lよりも小さくなるように構成してある。これにより、取付開口56を、掛止部24bの延出寸法L以上の開口幅Hで開口するように形成して、取付開口56の開口幅Hを取付片24が無理なく挿入できるように設定しても、取付片24の掛止部24bが取付開口56を通らないので、取付片24からリテーナ40をより外れ難くすることができる。また、保持部58は、取付開口56の開口縁に掛かる嵌入部64の係合爪64bにより取付開口56に嵌め込んだ状態を保つことができるので、取付片24からリテーナ40をより外れ難くすることができる。更に、リテーナ40は、保持部58を取付開口56に嵌め込んだ際に、リテーナ本体42の壁部46,47との間に、取付片24において取付開口56から外方へ延出する掛止部24bを挟む構成であるから、保持部58によって取付片24を前後にずれないように位置規制することができる。実施例のエアバッグ装置20では、エアバッグ26の膨張時に後壁部47よりも前壁部46に力が大きくかかるが、前側の取付片24の掛止部24bを保持姿勢とした保持部58の溝部66に収容して位置規制しているので、保持部58の嵌合により抜け止めされた取付片24との掛かりにより前壁部46の変形を防止して、膨張するエアバッグ26の力をエアバッグドア28により効率よく伝えることができる。
【0030】
前記リテーナ40は、保持部58がリテーナ本体42と一体的に形成されているので、部品点数を減らすことができると共に、部品管理の手間が変わらない。また、1つの保持部58に複数の嵌入部64が設けられているので、保持部58の姿勢変位に伴って複数の取付開口56に嵌入部64を嵌め込むことができ、保持部58の嵌め込み手間を減らすことができる。リテーナ40は、インテグラルヒンジ60で折り曲げて保持部58を姿勢変位して取付開口56に嵌め込む構成であるから、成形型の開き方向または該成形型からの型抜き方向に合わせた成形姿勢で保持部58をリテーナ本体42と一体成形することができ、保持部58を設けたとしても成形型に要するコストを低減することができる。
【0031】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のようにも変更可能である。
(1)リテーナ本体の壁部は、筒状に連なる構成に限らず、エアバッグの設置部位を挟んで対向するように構成されていてもよい。また、取付開口が形成された壁部が少なくとも1つあればよい。
(2)保持部は、リテーナ本体において取付開口が設けられた壁部であれば、何れに設けてもよく、また取付開口が設けられた壁部の全てに設ける必要もない。
(3)保持部は、取付開口毎または所定数の取付開口毎に分割して複数設けてもよい。
(4)嵌入部の係合爪は、取付開口の上側開口縁に掛かる構成に限らず、取付開口の横などの他の開口縁に掛かるように形成してもよい。
(5)実施例ではインストルメントパネルに取り付けるリテーナを挙げたが、ピラーやその他の車両内装部材に取り付けるリテーナにも適用可能である。
(6)実施例では、取付開口を、掛止部における挿通部からの延出寸法L以上の開口幅Hで、掛止部の延出方向(上下方向)に開口するように形成したが、リテーナにインフレータケースを組み付ける際に、掛止部が取付開口を挿通することができれば、開口幅Hは延出寸法L以下であってもよい。