【解決手段】 リグニンと無機酸とフェノール類とを互いに接触させてリグニンとフェノール類とが反応したリグノフェノールを得る反応工程と、リグノフェノールを溶解させる第1溶媒にリグノフェノールを溶解させたリグノフェノール溶液と、アルカリ土類金属の水酸化物とを混合することによって、無機酸とアルカリ土類金属との固体状の塩を生成させる塩生成工程と、を備えるリグノフェノールの製造方法を提供する。
前記塩生成工程の後に、生成した前記塩を除去したリグノフェノール溶液と、前記第1溶媒よりもリグノフェノールの溶解度が小さい第2溶媒と、を混合することによってリグノフェノールを析出させる析出工程をさらに備える、請求項1又は2に記載のリグノフェノールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るリグノフェノールの製造方法の一実施形態について詳しく説明する。
【0013】
本実施形態のリグノフェノールの製造方法は、リグニンと無機酸とフェノール類とを互いに接触させてリグニンとフェノール類とが反応したリグノフェノールを得る反応工程と、前記リグノフェノールを溶解させる第1溶媒に前記リグノフェノールを溶解させたリグノフェノール溶液と、アルカリ土類金属の水酸化物とを混合することによって、前記無機酸と前記アルカリ土類金属との固体状の塩を生成させる塩生成工程と、を備える。
【0014】
好ましくは、本実施形態のリグノフェノールの製造方法は、上記反応工程と、上記塩生成工程と、塩生成工程によって生成した上記塩をリグノフェノール溶液から取り除く塩除去工程と、塩除去工程によって上記塩を除去した後のリグノフェノール溶液と第1溶媒よりもリグノフェノールの溶解度が小さい第2溶媒とを混合することによってリグノフェノールを析出させる析出工程と、を備える。
【0015】
反応工程で用いる無機酸としては、硫酸、塩酸、及びリン酸からなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、硫酸がより好ましい。以下、無機酸として硫酸を用いた場合について詳しく説明する。
【0016】
反応工程では、例えば、リグニンを含む材料と、硫酸を含む水溶液と、フェノール類とを混合することによって、リグニンと硫酸とフェノール類とを互いに接触させる。これにより、硫酸が触媒となって、リグニンとフェノール類とが反応する。また、硫酸によって加水分解反応が進み、リグニンが低分子化する。リグニンが低分子化しつつ、リグニンの構成単位であるフェニルプロパン単位のα位の炭素にフェノール類が結合する。反応工程における反応の一例を
図1において模式的に示す。なお、反応工程は、通常、室温にて実施する。
【0017】
リグニンは、フェニルプロパン単位(C6−C3単位)を基本骨格として有し、フェニルプロパン単位が酵素によりランダムに酸化重合した高分子化合物である。リグニンは、植物細胞壁を構成する成分であり、植物細胞壁においてセルロースやヘミセルロースに結合している。
【0018】
リグニンを含む材料は、通常、セルロースとリグニンとを少なくとも含むリグノセルロース系材料である。リグニンを含む材料は、例えば、木質材料や草本材料などである。木質材料としては、マツ、スギやヒノキなどの針葉樹、シイ、柿、サクラなどの広葉樹、又は、熱帯樹が挙げられる。草本材料としては、ケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ、バガス、とうもろこしなどが挙げられる。リグニンを含む材料は、粉状、チップ状(例えば、廃木材の端材)など種々の状態で使用される。
【0019】
硫酸を含む水溶液は、通常、65質量%以上98質量%以下のH
2SO
4を含む。硫酸を含む水溶液は、好ましくは、72質量%以上98質量%以下のH
2SO
4を含む。
【0020】
フェノール類は、フェノール構造を分子中に有する化合物である。フェノール類としては、フェノール、o(オルト)−クレゾール、m(メタ)−クレゾール、p(パラ)−クレゾール、アニソール、2,4−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、tert−ブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノール、バニリン、シリンゴール、グアイアゴール、フェルラ酸、及び、クマル酸からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。フェノール類としては、m(メタ)−クレゾール又はp(パラ)−クレゾールなどのクレゾールが好ましい。
【0021】
反応工程では、リグニンを含む材料と、硫酸を含む水溶液と、フェノール類とを混合したときの混合液における硫酸(H
2SO
4)の濃度が、69質量%以上75質量%以下であることが好ましい。混合液における硫酸(H
2SO
4)の濃度が、69質量%以上であることにより、反応工程における加水分解反応、又は、リグニンのフェニルプロパン単位へのフェノール類の付加反応などがより確実に進行するという利点がある。混合液における硫酸(H
2SO
4)の濃度が、75質量%以下であることにより、リグニンのスルホン化を抑制でき、リグノフェノールの収率及び品質がより良好になるという利点がある。
【0022】
反応工程では、リグニンに対する硫酸(H
2SO
4)の質量比が6倍以上30倍以下となるように、リグニンを含む材料と硫酸を含む水溶液とを混合することが好ましい。反応工程では、リグニンに対するフェノール類の質量比が1倍以上4倍以下となるように、リグニンを含む材料とフェノール類とを互いに接触させることが好ましい。
なお、リグニンを含む材料に含有されるリグニンの量は、クラーソン法(硫酸法)によって求めることができる。例えば、リグニンを含む材料が針葉樹である場合、針葉樹のリグニン含有量を30質量%と規定することで、上記のような質量比を設定する。また、リグニンを含む材料が広葉樹である場合、広葉樹のリグニン含有量を20質量%と規定することで、上記のような質量比を設定する(参考文献:リグニンの化学; 中野準三編、ユニ出版)。
【0023】
反応工程で得られるリグノフェノールは、リグニンのフェニルプロパン骨格のC1位にフェノール誘導体が結合した1,1−ビス(アリール)プロパン構造を有する化合物である。リグノフェノールの分子量は、通常、1,000〜20,000である。リグノフェノールは、単一の化合物のみを含むものではなく、上記の化合物であって分子量の異なる化合物を含むものである。
【0024】
具体的には、反応工程では、例えば、アセトンなどの有機溶媒に入れることによって油脂分を取り除いた木粉を、リグニンを含む材料として用いる。次に、油脂分を取り除いた木粉にクレゾールなどのフェノール類を収着させる。続いて、フェノール類が収着した木粉に70質量%程度の濃硫酸を加えて混合する。最後に、混合液を水によって希釈して、硫酸による加水分解反応などを停止させる。
【0025】
本実施形態の製造方法では、反応工程の後の溶液に液状炭化水素(n−ヘキサンなどの非極性溶媒)を加え、長時間(例えば12時間)静置することによって、炭化水素層と、リグノフェノールを含む層(以下、リグノフェノール含有液ともいう)と、硫酸を含む水層とに分けることができる。これにより、硫酸の大部分を上記の水層に分配させることができ、リグノフェノール含有液に含まれる硫酸の量を比較的少なくすることができる。また、リグノフェノール以外の非極性成分を上記の炭化水素層に分配させることができる。そして、リグノフェノール含有液を、続く塩生成工程で用いることができる。なお、リグノフェノール含有液は、リグノフェノール以外にも、比較的少量の硫酸や、反応しなかった未反応物(セルロースなどの炭水化物等)を含み得る。
【0026】
塩生成工程では、リグノフェノールを溶解させる第1溶媒と、第1溶媒に溶解したリグノフェノールと、を含むリグノフェノール溶液を調製する。具体的には、第1溶媒と、反応工程で得られたリグノフェノールを含む上記の層(リグノフェノール含有液)とを混合することにより、リグノフェノール溶液を調製する。塩生成工程では、さらに、リグノフェノール溶液にアルカリ土類金属の水酸化物を添加して混合する。これにより、硫酸とアルカリ土類金属との固体状の塩を生成させる。なお、塩生成工程は、通常、室温にて行う。
【0027】
第1溶媒は、リグノフェノールを溶解させる溶媒である。第1溶媒は、リグノフェノールを溶解させる溶媒であれば、特に限定されない。第1溶媒は、C(炭素)と、H(水素)と、O(酸素)及びN(窒素)の少なくとも一方と、で構成された分子式で表される化合物であることが好ましい。第1溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。第1溶媒は、後述する第2溶媒と任意の割合で互いに溶解する溶媒であることが好ましい。
【0028】
第1溶媒としては、アルキルケトン類、非プロトン極性溶媒、環状エーテル類、ヘテロ環状化合物、アルコール類などが挙げられる。第1溶媒は、通常、有機溶媒である。
【0029】
アルキルケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
非プロトン極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などが挙げられる。
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどが挙げられる。
ヘテロ環状化合物としては、ピリジンなどが挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、セロソルブなどが挙げられる。
第1溶媒としては、アルコール類が好ましく、アルコール類としてのメタノールがより好ましい。
【0030】
第1溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、及び、ジメチルホルムアミドからなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0031】
塩生成工程で調製するリグノフェノール溶液は、通常、リグノフェノールを10質量%以上35質量%以下含む。例えば、リグノフェノール濃度が10質量%以上35質量%以下となるようにリグノフェノール溶液を調製することができる。リグノフェノール濃度は、例えば、後の析出工程で析出させたリグノフェノール量から算出することができる。
【0032】
塩生成工程では、リグノフェノール1質量部に対して1質量部以上10質量部以下の第1溶媒を用いることが好ましい。リグノフェノール1質量部に対して1質量部以上の第1溶媒を用いることにより、より十分にリグノフェノールを溶解させることができるという利点がある。リグノフェノール1質量部に対して10質量部以下の第1溶媒を用いることにより、必要量を超える第1溶媒を用いなくても上記の塩を生成させることができるという利点がある。
【0033】
アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、得られるリグノフェノールに含まれる不純物をより少なくできるという点で、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0034】
塩生成工程では、アルカリ土類金属の水酸化物を加えた後のリグノフェノール溶液のpHを酸性に調整することが好ましく、pHを2以上4以下に調整することがより好ましい。酸性とは、pHが6未満であることである。アルカリ土類金属の水酸化物を加えた後のpHを酸性に調整することにより、リグノフェノールが分解することを抑えつつ上記の塩を生成させることができるという利点がある。
pHの調整は、アルカリ土類金属の水酸化物の添加量を変えることによって調節できる。詳しくは、リグノフェノール溶液には、反応工程で用いた硫酸が含まれていることから、アルカリ土類金属の水酸化物(塩基性)の添加量を変えることで、リグノフェノール溶液のpHを調整できる。なお、リグノフェノール溶液は、上記の反応工程によって生じる水分を含むことから、第1溶媒が有機溶媒であっても、所定のpHを示す。
【0035】
塩生成工程では、リグノフェノール溶液に溶解する上限量よりも多いアルカリ土類金属水酸化物を、リグノフェノール溶液と混合することが好ましい。即ち、過剰のアルカリ土類金属水酸化物をリグノフェノール溶液に添加することが好ましい。また、アルカリ土類金属水酸化物は、粒子径が1μm程度の粒子状であることが好ましい。アルカリ土類金属水酸化物の添加量が過剰であり、アルカリ土類金属水酸化物が上記のごとき粒子状であることによって、後述する塩除去工程において、溶解しなかったアルカリ土類金属の水酸化物をリグノフェノール溶液から簡便に取り除けるという利点がある。また、硫酸との反応性がより高まるという点で、アルカリ土類金属水酸化物の粒子径は、小さい方が好ましい。
【0036】
塩生成工程で生成させる塩は、アルカリ土類金属の塩(無機塩)である。具体的には、硫酸マグネシウム又は硫酸カルシウムなどの硫酸塩である。
塩生成工程によって、リグノフェノール溶液中で上記の塩が生成することとなる。斯かる塩は、第1溶媒への溶解性が極めて低いため、不溶物となる。これにより、溶解した状態のリグノフェノールと、不溶物となった無機塩(硫酸塩)とを分離することができる。固体状の硫酸塩が分離した分、硫酸成分を減らすことができる。また、後述する塩除去工程によって、硫酸塩をリグノフェノール溶液から簡便に取り除ける。なお、塩生成工程で生成する塩が硫酸マグネシウム又は硫酸カルシウムであることにより、塩は、粒径が比較的大きい粒子状となって生成する。これにより、後述する塩除去工程によって、リグノフェノール溶液から硫酸塩をより簡便に取り除けるという利点がある。
【0037】
塩除去工程では、生成した固体状の上記塩をリグノフェノール溶液から取り除く。例えば、ろ過、遠心分離などによって、固体状の上記塩をリグノフェノール溶液から除去することができる。
【0038】
析出工程では、生成した上記の硫酸塩を除去した後のリグノフェノール溶液と、前記第1溶媒よりもリグノフェノールの溶解度が小さい第2溶媒と、を混合することによって、溶解していたリグノフェノールを、混合後の液中で、析出させる。これにより、固体状のリグノフェノールを得ることができる
【0039】
第2溶媒は、リグノフェノールの溶解度が第1溶媒のリグノフェノールの溶解度よりも小さい。第2溶媒は、リグノフェノールの溶解度が上記のごとき溶媒であれば、特に限定されない。第2溶媒は、C(炭素)と、H(水素)とで構成された分子式で表される化合物であることが好ましい。第2溶媒は、非極性有機溶媒であることが好ましい。第2溶媒は、上述した第1溶媒と任意の割合で互いに溶解する溶媒であることが好ましい。
【0040】
第2溶媒としては、アルキルエーテル類、アルキルエステル類、環状炭化水素類、直鎖状炭化水素類、水を90質量%以上含む水溶液などが挙げられる。
アルキルエーテル類としては、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテルやジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
アルキルエステル類としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどが挙げられる。
環状炭化水素類としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
直鎖状炭化水素類としては、n−ヘキサン、ペンタンなどが挙げられる。
水を90質量%以上含む水溶液としては、純水、0.1質量%以上10質量%以下の濃度の塩化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0041】
第2溶媒としては、水を90質量%以上含む水溶液、n−ヘキサン、n−ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン、ベンゼンからなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。第2溶媒は、有機溶媒であることが好ましい。
【0042】
析出工程では、塩除去工程によって上記の硫酸塩を除去したリグノフェノール溶液100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下の第2溶媒を用いることが好ましい。リグノフェノール溶液100質量部に対して、100質量部以上の第2溶媒を用いることにより、リグノフェノールをより確実に析出させることができるという利点がある。リグノフェノール溶液100質量部に対して、1000質量部以下の第2溶媒を用いることにより、必要量を超える第2溶媒を用いなくてもリグノフェノールを析出させることができるという利点がある。
【0043】
本実施形態の製造方法で得られたリグノフェノールは、例えば、プラスチック用の難燃剤、合板接着剤、含浸材などの用途で使用される。
【0044】
なお、上記では、反応工程で無機酸として硫酸を用いた場合について詳しく説明した。本実施形態の製造方法では、反応工程で無機酸として塩酸やリン酸を用いることもできる。反応工程で無機酸として塩酸やリン酸を用いた場合でも、塩生成工程において、固体状の塩化物塩やリン酸塩を生成させることができる。そして、同様に、不純物としての無機成分が比較的少ないリグノフェノールを得ることができる。
【0045】
本実施形態のリグノフェノールの製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示のものに限定されない。
また、一般のリグノフェノールの製造方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例)
以下のようにして、リグノフェノールの製造方法を行った。具体的には、リグニン及びセルロースを含む木質材料を用いてリグノフェノールを製造した。工程のフローを
図2に示す。
・前処理
針葉樹(スギ)の木粉に含まれる油脂分を取り除くために、木粉をアセトンに入れた。木粉から乾燥によってアセトンを揮発させた。このようにして油脂分を取り除いた木粉を用意した。油脂分を取り除いた木粉(7.5g)にp−クレゾール(7.5g)、アセトン(33g)を添加し撹拌後、減圧乾燥によりアセトンを留去させ、木粉にp−クレゾールを収着させた。
・反応工程
p−クレゾールを収着させた状態の木粉15gに、61gの72質量%硫酸水溶液を加え、1時間激しく撹拌した。
12.8gの水を加えることにより、反応工程を停止した。
反応工程後の液に105gのn−ヘキサンを加え、激しく撹拌した後、一晩静置することにより、比重差によってn−ヘキサン層、リグノフェノール層、硫酸層の3層に分離した。n−ヘキサン層及び硫酸層を取り除いた後、リグノフェノール層を取り出した。
・塩生成工程
リグノフェノール層と、第1溶媒としてのメタノール(55g)とを混合して、メタノールにリグノフェノールを溶解させた。メタノールに溶解しない不溶分を吸引ろ過によって取り除き、50gのリグノフェノール溶液を得た。このリグノフェノール溶液に過剰量の水酸化マグネシウム(平均粒子径1μmの粉末)を添加することにより、pHを3.08に調整した。これにより、リグノフェノールのメタノール溶液において固体状の硫酸塩(硫酸マグネシウム)が生成した。
・塩除去工程
過剰量の水酸化マグネシウム及び生成した硫酸塩を、吸引ろ過によって取り除いた。
・析出工程
硫酸塩及び過剰の水酸化マグネシウムを除去したリグノフェノール溶液を、該リグノフェノール溶液の5倍質量の0.5質量%濃度食塩水(第2溶媒)に滴下し、リグノフェノールを析出させた。析出させたリグノフェノールを、ろ紙を用いた吸引ろ過によって分離し、50℃にて一晩乾燥させ、固体状のリグノフェノールを製造した。
【0048】
(比較例1)
塩生成工程において、粉末状の水酸化マグネシウムを用いる代わりに、15N水酸化カリウム水溶液を用いてリグノフェノール溶液のpHを2.9に調整した点以外は、実施例と同様にしてリグノフェノールを製造した。
【0049】
(比較例2)
塩生成工程において、粉末状の水酸化マグネシウムを用いる代わりに、15N水酸化ナトリウム水溶液を用いてリグノフェノール溶液のpHを3.0に調整した点以外は、上記実施例と同様にしてリグノフェノールを製造した。
【0050】
<リグノフェノール中の不純物量の分析>
乾燥によって得られた固体状のリグノフェノールにおける全イオウ濃度(硫酸イオン濃度と相関あり)を、管状炉燃焼による前処理の後、イオンクロマトグラフ法によって測定した。
また、上記の塩生成工程におけるpH調整前(水酸化マグネシウム添加前)のリグノフェノール溶液、pH調整後のリグノフェノール溶液、水酸化マグネシウム及び生成した硫酸塩を取り除いた後のリグノフェノール溶液、のそれぞれにおける硫酸イオン濃度を電気キャピラリー法によって測定した。
なお、析出工程において析出したリグノフェノールの粒径をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定によって測定した。
上記の分析結果を表1に示す。また、全イオウ濃度の分析結果を
図3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
以上の結果から把握されるように、実施例のリグノフェノールの製造方法によって、不純物としての硫酸成分(無機成分)が比較的少ないリグノフェノールを得ることができる。