(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-110168(P2017-110168A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】アクリル樹脂を含む蛍光インキおよびその印刷方法と印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/00 20140101AFI20170526BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20170526BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
C09D11/00
B41M3/06 B
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-247884(P2015-247884)
(22)【出願日】2015年12月18日
(71)【出願人】
【識別番号】500192702
【氏名又は名称】株式会社 廣済堂
(71)【出願人】
【識別番号】592215435
【氏名又は名称】株式会社T&K TOKA
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡 辺 修 一
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BC09
2H113CA32
2H113CA39
2H113DA53
2H113EA02
2H113EA13
4J039AB03
4J039AB08
4J039AB12
4J039AD09
4J039AE02
4J039AE03
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA06
4J039BA13
4J039BA14
4J039BA16
4J039BA18
4J039BA21
4J039BA23
4J039BC20
4J039BC59
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE15
4J039BE22
4J039BE24
4J039EA14
4J039EA27
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA10
4J039GA13
(57)【要約】
【課題】
印刷媒体への印刷時のセット乾燥性が速く、紫外線照射時の発色性および色域に優れ、製造時および使用時の作業性と性能の安定性に優れた蛍光インキ組成物を提供する。
【解決手段】
(メタ)アクリル系樹脂を1〜10重量%と、紫外線励起により蛍光発光する蛍光顔料とを含む蛍光インキ組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、
(a)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上含有し、
(b)ガラス転移温度が63℃〜180℃であり、
(c)重量平均分子量が1,000〜80,000である、
蛍光インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂を1〜10重量%と、紫外線励起により蛍光発光する蛍光顔料とを含む蛍光インキ組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、
(a)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上含有し、
(b)ガラス転移温度が63℃〜180℃であり、
(c)重量平均分子量が1,000〜80,000である、
蛍光インキ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光インキ組成物を少なくとも1つ含むインキセット。
【請求項3】
請求項1に記載の蛍光インキ組成物を印刷媒体に付着させる工程を含む、印刷方法。
【請求項4】
請求項1に記載の蛍光インキ組成物を印刷媒体に付着させる工程を含む、印刷物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の蛍光インキ組成物を用いて印刷された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射することにより蛍光発光する蛍光インキ組成物、蛍光インキ組成物を含む蛍光インキを用いた印刷方法および印刷物に関し、より詳しくは、オフセット印刷用の蛍光インキ組成物とその蛍光インキ組成物を含む蛍光インキを用いた印刷方法および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光インキは、可視光などの自然光の下では読み取りができないが、紫外線(ブラックライト)照射の下ではR(赤色系)、G(緑色系)、B(青色系)などの蛍光発色が得られるためにセキュリティーなどの偽造防止用に多く利用されている。
【0003】
自然光の下では肉眼で視認できないが、紫外線(紫外光)を照射することにより可視光領域で発光して視認できる蛍光インキが開発および使用されている。また、このような蛍光インキを用いることにより、紫外光下で可視光領域の発光により、絵柄が現れる印刷物が開発および使用されている。蛍光インキにより印刷される絵柄の代表例としては、バーコードなどが挙げられるが、これらの絵柄は、単色でかつ絵柄面積が少ないものがほとんどである。
【0004】
また、カレンダーやポスターなどに代表される商業用印刷物は、ブラックライト照射などの特定の条件下で発光させることで目を引き付けるような画像にしたり、絵柄を浮き出させたりすることで注目を集めようとすることがある。
【0005】
このような要求に応えるために、紫外線を照射したときに画像が形成される方法として、R(赤色系)、G(緑色系)、B(青色系)の蛍光剤を使用したインキで熱転写を行う方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、蛍光剤をインキ組成物に含有させることによって、紫外線照射時に蛍光発光させることで画像を形成することが提案されている(特許文献2)。
【0007】
また、市場では印刷物を短時間で製造する短納期化が求められている。それに応えるためにセット乾燥を速くする必要がある。そのためにインキ組成物に対して溶解性の低い樹脂を配合する場合があるが、樹脂の組成や配合量などによっては樹脂が均一に分散せずに析出し、インキ組成物が不均一なものとなってしまうため製品として使用することができない。また、樹脂が均一に分散せずに凝集したり析出したりすると、製造時および使用時の作業性(効率)が低下したり、インキ組成物の性能が安定的かつ十分に発揮されなくなったりする等の問題が生じる。
【0008】
このような状況下、樹脂を含む蛍光インキ組成物において、高い発色性および広い色域を発揮し、製造時および使用時の作業性が高く、セット乾燥性が速く短納期に対応できるインキ組成物およびそれを用いた印刷物が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−125403号公報
【特許文献2】特開平10−35089号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、印刷時のセット乾燥性が速く(セット乾燥時間が短く)、短納期に対応したインキ組成物であって、セット乾燥性と、紫外線照射時の発色性(発光強度)の高さおよび色域の広さとが高い次元で両立したインキ組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、セット乾燥性の速さと優れた発色性および色域に加え、製造時および使用時の作業性や性能の安定性が高いインキ組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、このようなインキ組成物を用いた印刷方法および印刷物の製造方法、ならびにそれらの方法により得られる、発色が鮮やかでインキの乾燥が早い印刷物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明者らは、蛍光インキ組成物中に特定の物性を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有させることにより、印刷時のセット乾燥性に優れ、高い発色性と広い色域を発揮し、製造時および使用時の作業性や性能の安定性が高い蛍光インキ組成物が得られることを見出した。また、本発明者らは、そのような蛍光インキ組成物を用いることにより、発色が鮮やかで印刷時のインキの乾燥が早い印刷物が効率よく得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0012】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)(メタ)アクリル系樹脂を1〜10重量%と、紫外線励起により蛍光発光する蛍光顔料とを含む蛍光インキ組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂が、
(a)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上含有し、
(b)ガラス転移温度が63℃〜180℃であり、
(c)重量平均分子量が1,000〜80,000である、
蛍光インキ組成物。
(2)(1)に記載の蛍光インキ組成物を少なくとも1つ含むインキセット。
(3)(1)に記載の蛍光インキ組成物を印刷媒体に付着させる工程を含む、印刷方法。
(4)(1)に記載の蛍光インキ組成物を印刷媒体に付着させる工程を含む、印刷物の製造方法。
(5)(1)に記載の蛍光インキ組成物を用いて印刷された印刷物。
【0013】
本発明によれば、印刷時のセット乾燥性が速く、従来のR(赤色系)、G(緑色系)、B(青色系)の蛍光インキと比べて発色性(発光強度)および色域の広さが同等またはそれ以上であり、製造時および使用時の作業性や性能の安定性が高いインキ組成物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、また、本発明によれば、このようなインキ組成物を用いた印刷方法および印刷物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の蛍光インキ組成物を用いた印刷方法の一例を示す概略図である。
【0015】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0016】
[蛍光顔料]
本明細書において、「紫外線励起により蛍光発光する蛍光顔料」(以下、単に「蛍光顔料」ともいう)とは、紫外線を照射した場合に可視光領域で視認できる蛍光を発する顔料を意味する。蛍光顔料は有機顔料であっても無機顔料であってもよく、組成に特に制限はなく公知の種々の蛍光顔料を使用することができる。このような蛍光顔料としては、例えば、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)または希土類金属から選択される1つの原子、またはこれらの希土類金属を中心金属として有する錯体を含む蛍光顔料が挙げられる。このような錯体を形成する配位子としては、例えば、アセチルアセトナートが挙げられる。また、蛍光顔料としては、銅、銀およびマンガン等で活性化した硫化亜鉛;マンガン等で活性化した珪酸亜鉛;カドミウムおよびビスマス等で活性化した硫化カルシウム;サマリウムおよびセリウム等で活性化した硫化ストロンチウム;鉛等で活性化したタングステン酸カルシウム;ユウロピウム等で活性化したSr
5(PO
4)
3Cl;マンガン等で活性化したZn
2GeO
2;ユウロピウム等で活性化したY
2O
2S;ユウロピウム等で活性化したY
2O
3;チオフェンおよびその誘導体;ベンゾオキサジン系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物等を含む各種蛍光顔料を使用することもできる。ベンゾオキサジン系化合物としては、ベンゾオキサジン環を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。また、ベンゾオキサゾール系化合物としては、ベンゾオキサゾール環を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。また、ベンゾオキサジノン系化合物としては、ベンゾオキサジノン環を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。
【0017】
上述した蛍光顔料の具体的なものとして、赤色蛍光顔料としては、例えば、Y
2O
3やEu(ユウロピウム)等の無機化合物の他に、アセチルアセトナートなどに代表される配位子と中心金属がEuの有機金属錯体等が用いられる。本発明に使用可能な市販されている赤色系の蛍光顔料としては、例えば、ケミライトレッド(東洋ケミカルズ株式会社製)、ルミシス(登録商標) E−250、E−300、E−400、E−500およびR−600(いずれもセントラルテクノ株式会社製)ならびにルミラックス(登録商標) CD740(Honeywell社製)などが挙げられる。緑色蛍光顔料としては、例えば、Zn
2SiO
4等の無機化合物の他に、ベンゾオキサジノン誘導体に代表される有機蛍光顔料が用いられる。本発明に使用可能な市販されている緑色系の蛍光顔料としては、例えば、ルミシス(登録商標) Y−700、G−900およびG−3300(いずれもセントラルテクノ株式会社製)ならびにルミラックス(登録商標) CD397(Honeywell社製)などが挙げられる。青色蛍光顔料としては、例えば、Sr
2P
2O
7等の無機化合物の他に、チオフェン誘導体などが用いられる。本発明に使用可能な市販されている青色系の蛍光顔料としては、例えば、ルミシス(登録商標) B−800、WB−1000およびYB−1200(いずれもセントラルテクノ株式会社製)、ルミラックス(登録商標) CD766(Honeywell社製)ならびにLUNACURE OB(DKSHジャパン株式会社製)などが挙げられる。これらの蛍光顔料は、1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物における蛍光顔料の配合量は、蛍光インキ組成物に対して0.01〜30重量%であることが好ましく、3〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
【0018】
[(メタ)アクリル系樹脂]
本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。
また、本明細書中において、(メタ)アクリル系樹脂はアクリル系樹脂とメタクリル系樹脂を包含するものとし、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを包含するものとする。例えばメチル(メタ)アクリレートはメチルアクリレートとメチルメタクリレートの両方を意味するものとする。
【0019】
本発明の蛍光インキ組成物は、(a)炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を少なくとも40重量%以上有し、(b)ガラス転移温度が63℃〜180℃であり、(c)重量平均分子量が1,000〜80,000である(メタ)アクリル系樹脂を含有する。(メタ)アクリル系樹脂の製造において使用可能なモノマーとしては、製造された(メタ)アクリル系樹脂が前記条件(a)〜(c)を満たすものであれば特に限定されない。本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよいし、(メタ)アクリレートと他のビニル基を有するモノマーとの共重合体、即ち、炭素−炭素二重結合が開裂して重合が進行する化合物との重合体であってもよい。
【0020】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、後述する「溶剤」、特に、脂肪族炭化水素溶剤および/または芳香族炭化水素溶剤に可溶であることが好ましい。
また、本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂において、炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基の炭素数としては、4〜30が好ましく、4〜20がより好ましく、4〜15がさらにより好ましい。また、炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基は、分岐または環状アルキル基が好ましく、環状アルキル基がより好ましい。
また、本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を40〜100重量%であることが好ましく、60〜100重量%であることがより好ましく、70〜99.5重量%であることがさらにより好ましい。
【0021】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が63℃〜180℃である。また、ガラス転移温度は、70〜170℃であることが好ましく、80〜170℃であることがより好ましく、90〜170℃であることがさらにより好ましく、100〜160℃であることが特により好ましい。ここで、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、T. G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc., 1, (3), 123(1956)の記載に従い、下記式(I)から求めることができる。
【0022】
【数1】
式中、Tg1、Tg2、・・・は、それぞれ、(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマー単位をホモポリマーとしたときのガラス転移温度(K)を示しており、w1、w2・・・は、それぞれ、(メタ)アクリル系樹脂を構成する前記モノマー単位の重量分率を示している。
【0023】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量が1,000〜80,000である。重量平均分子量は2,000〜40,000であることが好ましく、2,000〜31,000であることがより好ましく、3,000〜30,000であることがさらにより好ましい。
【0024】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、昭和電工社製Shodex System21Hを使用し、カラムには昭和電工社製Shodex KF-85Lを直列で2本、溶離液にテトラヒドロフラン、検量線標準物質として日本分析工業社製標準ポリスチレンを使用して測定した値である。
【0025】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂のモノマーとして好ましく用いられる(メタ)アクリルモノマーとしては、4−tert−ブチルメタクリレート(Tg:107℃、Tgはホモポリマーとしたときの値、以下同じ)、tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(Tg:125℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:155℃)、アダマンチルメタクリレート(Tg:170℃)、ジシクロペンテニルメタクリレート(Tg:170℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃);アダマンチルアクリレート(Tg:115℃)等が挙げられる。これらのうち、入手の容易さという観点から、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびイソボルニルアクリレートが特に好ましい。これらの(メタ)アクリルモノマーは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリルモノマー以外に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、下記のようなものが例示され、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。他のモノマーを含有させる場合、その割合は、全モノマー単位の20〜40重量%であることが好ましい。
【0027】
スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレンおよびビニルトルエン等のスチレン系モノマー。
【0028】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートおよびi−プロピル(メタ)アクリレート等の、炭化水素基を有し、上記(a)の条件を満足しない(メタ)アクリルモノマー。
【0029】
前記(メタ)アクリルモノマー等の炭化水素基における水素原子を、ハロゲン原子、例えば、フッ素および塩素等に置換したハロゲン化炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマー。
【0030】
トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロキシプロピルポリ(n=2〜400)ジメチルシロキサン等のケイ素含有(メタ)アクリルモノマー。
【0031】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニルおよび分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:モメンティブパフォーマンスケミカルズ社製等)の、置換されていても良い炭化水素基を有するビニルエステル系モノマー。
【0032】
アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー。
【0033】
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテル等の炭化水素基を有するビニルエーテル系モノマー。
【0034】
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドおよびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー。
【0035】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸およびモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系モノマー。
【0036】
p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート若しくはポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、またはこれらのε−カプロラクトン付加物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;モメンティブパフォーマンスケミカルズ社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有モノマー。
【0037】
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよび3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有モノマー。
【0038】
ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランおよびγ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー。
【0039】
エチレンおよびプロピレン等のオレフィン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系モノマー、マレイミドおよびビニルスルホン等のモノマー。
【0040】
前記他のモノマーの中では、製造時の共重合性の観点から、スチレン系モノマーおよび/または上記(a)の条件を満足しない(メタ)アクリルモノマーを用いることが好ましい。
【0041】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂の製造方法としては、公知慣用の任意の重合方法を用いることができ、中でも、最終的な用途がオフセット印刷用インキ組成物である場合、溶液ラジカル重合法によるのが最も簡便であり好ましい。
【0042】
溶液ラジカル重合法により製造する際の溶剤としては、特に制限なく用いられ、トルエン、キシレンおよび芳香族炭化水素の化合物(ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200;エクソンモービル社製)等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリットおよびケロシン等の脂肪族もしくは脂環族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチルおよびブチルセロソルブアセテート等のエステル系化合物;大豆油、再生大豆油、菜種油、ヤシ油、麻実油、アマニ油、オリーブ油、カヤ油、キリ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、米糠油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、綿実油およびトール油等の植物油、ならびに牛脂および豚脂等の動物油等から得られる脂肪酸のメチルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、n−オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、トリメチロールプロパンのモノ〜トリエステル、ペンタエリスリトールのモノ〜テトラエステルおよびジペンタエリスリトールのモノ〜ヘキサエステル等の脂肪酸エステル化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノンおよびイソホロン等のケトン系化合物等を挙げることができる。これらのうち、芳香族炭化水素化合物、脂肪族もしくは脂環族炭化水素化合物を用いることが好ましい。また、最終的な用途がオフセット印刷用インキ組成物である場合、脂肪族または芳香族炭化水素化合物を用いることが特に好ましい。脂肪族または芳香族炭化水素化合物としては、具体的には、後述する石油系溶剤を用いることもできる。
【0043】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系樹脂の製造は、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物または過酸化物系化合物のようなラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、工業的には通常1〜48時間程度の範囲で選択される。また、重合温度も特に制限されないが、通常30〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。
【0044】
また、本発明における(メタ)アクリル系樹脂の配合量は、蛍光インキ組成物に対して1〜10重量%であり、2〜8重量%であることが好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。
【0045】
[バインダー樹脂]
本明細書において、「バインダー樹脂」とは、通常インキ組成物に含有されるものであれば特に限定されない。本発明の蛍光インキ組成物に用いられるバインダー樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂;フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、脂肪酸変性フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンフェノール樹脂、アルキッド樹脂変性ロジンフェノール樹脂、ウレタン樹脂変性ロジンフェノール樹脂およびエポキシ樹脂変性ロジンフェノール樹脂等のフェノール系樹脂;石油樹脂、ロジン変性石油樹脂および脂肪酸変性石油樹脂等の石油系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂およびベンゾグアナミン樹脂等のアミノ系樹脂;ロジン、脂肪酸変性ロジン、多価アルコール変性ロジン、アルキッド樹脂変性ロジン、石油樹脂変性ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジンエステルおよびロジン変性エステル樹脂等のロジン系樹脂;脂肪酸変性アルキッド樹脂等のアルキッド系樹脂;環化ゴム等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル系樹脂、石油樹脂変性ロジン、ロジン変性エステル樹脂、フェノール系樹脂およびアルキッド系樹脂が好ましく、ロジン変性エステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂および脂肪酸変性アルキッド樹脂がより好ましく、ロジン変性エステル樹脂およびロジン変性フェノール樹脂がさらにより好ましい。これらのバインダー樹脂は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物におけるバインダー樹脂の配合量は、蛍光インキ組成物に対して、20〜40重量%であることが好ましく、23〜37重量%であることがより好ましく、25〜35重量%であることがさらにより好ましい。
また、蛍光顔料として、ベンゾオキサジン系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物およびベンゾオキサジン系化合物から選択される1種または2種類以上を含むインキ組成物を使用する場合には、蛍光インキ組成物中の総フェノール量は、8重量%以下であることが好ましく、6重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらにより好ましい。
【0046】
[乾性油]
乾性油とは、空気中で徐々に酸化して固まる油のことをいう。本明細書において、「乾性油」とは、通常インキ組成物に含有されるものであれば特に限定されないが、ヨウ素価が100以上のものが好ましい。本発明の蛍光インキ組成物に用いられる乾性油としては、大豆油、再生大豆油、菜種油、ヤシ油、麻実油、アマニ油、オリーブ油、カヤ油、キリ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、米糠油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、綿実油およびトール油等の植物油;牛脂および豚脂等の動物油等が挙げられる。これらのうち、植物油が好ましく、特に大豆油、アマニ油、キリ油および米糠油がより好ましい。これらの乾性油は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物における乾性油の配合量は、蛍光インキ組成物に対して、8〜40重量%であることが好ましく、10〜35重量%であることがより好ましく、12〜20重量%であることがさらにより好ましい。
【0047】
本発明においては、バインダー樹脂および乾性油を混合したものをワニスとして用いることができる。ワニスには、任意に溶剤および各種添加剤等を混合することができる。
【0048】
[その他の顔料]
本発明の蛍光インキ組成物には、蛍光顔料の他に、任意に「その他の顔料」を含有させることができる。本明細書において「その他の顔料」とは、通常インキ組成物に含有されるものであれば特に限定されない。その他の顔料としては、ワニスに分散させた場合に、分散体が透明または半透明となるものが好ましい。その他の顔料としては、有機顔料および無機顔料ともに使用することができるが、無機顔料が好ましく、その中でも体質顔料がより好ましい。体質顔料としては、タルク、クレー、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、バライト、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウムおよびベントナイト等が挙げられる。これらのその他の顔料は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物におけるその他の顔料の配合量は、蛍光インキ組成物に対して、0.01〜55重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがより好ましく、10〜25重量%であることがさらにより好ましい。
【0049】
[溶剤]
本発明の蛍光インキ組成物には、任意に溶剤を含有させることができる。本明細書において「溶剤」とは、通常インキ組成物に含有されるものであれば特に限定されない。本発明の蛍光インキ組成物に用いられる溶剤としては、石油系溶剤および植物油系溶剤等が挙げられる。
石油系溶剤としては、芳香族系溶剤および脂肪族系溶剤ともに使用することができる。日本においては、通常、環境対策の面から鉱油と呼ばれる脂肪族系の溶剤が好ましく用いられることが多い。石油系溶剤の沸点は、240〜360℃であることが好ましく、特に、枚葉インキ組成物用途に用いる場合には、280〜360℃であることが好ましい。脂肪族系溶剤の市販品としては、AF4号ソルベント、AF5号ソルベント、AF6号ソルベントおよびAF7号ソルベント(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)が挙げられる。芳香族系溶剤の市販品としては、アルケンLおよびアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)等が挙げられる。
植物油系溶剤としては、植物油から得られる脂肪酸のエステル化合物が挙げられる。エステル化合物としては、メチルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、n−オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、トリメチロールプロパンのモノ〜トリエステル、ペンタエリスリトールのモノ〜テトラエステルおよびジペンタエリスリトールのモノ〜ヘキサエステル等が挙げられる。植物油については、上記「乾性油」の項で述べた植物油と同義であり、好ましい範囲も同様である。
石油系溶剤および植物油系溶剤は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物における溶剤の配合量は、蛍光インキ組成物に対して、3〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましく、15〜25重量%であることがさらにより好ましい。
【0050】
[ドライヤー]
本発明の蛍光インキ組成物には、任意にドライヤーを含有させることができる。ドライヤーは乾燥促進剤とも呼ばれる。本発明の蛍光インキ組成物に用いられるドライヤーは、通常インキ組成物に含有されるものであれば特に限定されない。ドライヤーとしては、ナフテン酸金属塩およびオクチル酸金属塩が一般的であり、金属種としては、例えばコバルト、マンガン、亜鉛、鉄、ジルコニウムおよびカルシウムなどが挙げられる。また、より乾燥性を向上させるために、これらの過酸化物を添加することもできる。これらのドライヤーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蛍光インキ組成物におけるドライヤーの配合量は、蛍光インキ組成物に対して、0.01〜3重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%であることがより好ましい。過酸化物を添加する場合には、蛍光インキ組成物に対して、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.05〜0.5重量%であることがより好ましい。
また、蛍光顔料として、希土類金属を中心原子として有する錯体を含む蛍光顔料を使用する場合には、コバルト系ドライヤーを実質的に含有しないことが好ましい。「実質的に含有しない」とは、コバルト系ドライヤーに含有される、単体換算されたコバルト元素量が、蛍光インキ組成物に対して、0.015重量%以下であり、好ましくは0.010重量%以下であり、より好ましくは0重量%であることを意味する。
【0051】
[ワックス]
本発明の蛍光インキ組成物には、任意にワックスを配合することができる。このようなワックスは、蛍光インキ組成物による印刷物の皮膜強化を向上させるための補助剤と組み合わせて用いることが好ましい。ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、マイクロクリスタリン、カルナバ、みつろうおよびポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらのワックスは、1種または2種以上を混合して使用することができる。これらのワックスは、ワックス粉体をインキに練り込んでも良いが、作業性の良いワックスコンパウンドを使用しても良い。本発明の蛍光インキ組成物におけるワックスの配合量は、蛍光インキ組成物に対して、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜4重量%であることがより好ましい。
【0052】
[その他の添加剤]
その他、本発明の蛍光インキ組成物には、必要に応じて、ゲル化剤、顔料分散剤、酸素発生剤(過酸化物)、皮張り防止剤、酸化防止剤、耐摩擦性向上剤および界面活性剤等の添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
[インキセット]
本発明の蛍光インキ組成物を組み合わせることによって、インキセットとすることができる。蛍光インキ組成物の組み合わせは特に限定されないが、赤色、緑色および青色の蛍光顔料をそれぞれ含む蛍光インキ組成物を少なくとも含むことが好ましい。
【0054】
[印刷媒体]
本発明の蛍光インキ組成物を用いた印刷に使用される印刷媒体は、通常インキ組成物を用いた印刷に使用することができるものであれば特に限定されず、印刷方式に応じた印刷媒体を用いることができ、印刷紙のような紙の他に、種々の原料から得られる媒体を使用することができる。本発明に用いられる印刷媒体は、蛍光増白剤を含まないことが好ましく、蛍光増白剤を含まない印刷紙がより好ましい。
【0055】
[印刷方法]
本発明の蛍光インキ組成物を用いた印刷方法は、インキ組成物を用いた印刷方法として用いられる方法であれば特に限定されない。本発明の印刷方法としては、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷および凸版印刷等が挙げられる。これらのうち、オフセット印刷が好ましい。
【0056】
オフセット印刷は平版印刷とも呼ばれている。オフセット印刷には、水ありオフセット印刷と水なしオフセット印刷の二種類の方式がある。水ありオフセット印刷は、親油性であるインキ組成物と親水性である湿し水とが互いに反発する原理を利用する方式である。一方、水なしオフセット印刷は、版の表面をシリコーン樹脂で処理し、撥水性を持たせることで湿し水を必要としない方式である。これらのオフセット印刷方式は、インキ壺にあるインキ組成物がインキ着けローラーから複数のローラーを経て、版まで移動させ、次いで、版からゴムブランケットへ移り、ゴムブランケットから印刷紙などにインキ組成物を転移させる方式である。本発明の蛍光インキ組成物は、水ありオフセット用インキ組成物、水なしオフセット用インキ組成物のいずれにも適用可能である。
【0057】
オフセット印刷は、単色だけでなく、インキ組成物を重ね合わせることで様々な色調を表現することができるという特徴がある。インキ組成物を重ね合わせる場合、「タック」と呼ばれるインキ組成物の粘度を、印刷する順に軟らかくすることできれいな絵柄を形成できる。後から重ね合わせるインキの粘度(タック値)が高い場合、それまでに印刷したインキが、後から重ね合わせるインキに引っ張られてインキ壺まで上がってしまう逆トラッピングと呼ばれる現象が起こり、インキ壺でインキが混ざってしまい、印刷物が汚れてしまうことがある。したがって、本発明において蛍光インキ組成物を重ね合わせて印刷する場合、ある蛍光インキ組成物のタック値と、その蛍光インキ組成物の直前に重ね合わせる蛍光インキ組成物のタック値の差が、0.3〜7.0であることが好ましい。具体的には、蛍光インキ組成物R、GおよびBをこの順(R→G→Bの順)に重ね合わせる場合、Rのタック値とGのタック値の差((R)−(G))の値、および、Gのタック値とBのタック値の差((G)−(B))の値がそれぞれ0.3〜7.0であることが好ましい。
【0058】
本発明の印刷方法は、常温環境下(10〜40℃)で印刷物を乾燥する印刷方法、および、高温環境下(100〜200℃)で印刷物を乾燥する印刷方法(ヒートセット印刷)のいずれであってもよい。
また、本明細書において「絵柄」とは、「絵」や「模様」等の他に、「文字」、「数字」および「記号」等をも含む概念である。
【0059】
また、本明細書において、「セット乾燥」とはインキ組成物に含まれる溶剤が、印刷後に印刷媒体に浸透することであり、浸透乾燥とも呼ばれるものである。セット乾燥性を速くすることにより、インキの乾燥が早くなり、印刷の作業性が向上する。
【0060】
本発明の蛍光インキ組成物を用いた印刷方法の一例を
図1に示す。
図1において、1〜6はそれぞれ以下のものを表す。
1.石油系溶剤
2.印刷紙
3.酸素
4.着色剤
5.バインダー樹脂
6.乾性油
【0061】
図1に示すように、蛍光インキ組成物に含まれる石油系溶剤1が印刷紙2の内部に浸透し、印刷紙の表面に残る残余成分が空気中の酸素3によって酸化重合乾燥して、印刷紙表面に固体被膜を形成し、印刷がなされる。
図1において、(1)は、印刷直後の状態を示しており、(2)はセット乾燥中の状態を示しており、(3)は酸化重合乾燥後の状態を示している。印刷直後(1)は、印刷物の表面に適用された(付着した)蛍光インキ組成物層は乾燥していない状態にある。セット乾燥中(2)では、蛍光インキ組成物中の溶剤1が印刷紙2に浸透することによって、蛍光インキ組成物の粘度が上昇する。この蛍光インキ組成物の粘度上昇によって、多少の外部加圧に耐えられるようになるが、セット乾燥では乾燥が完全に進行しない。セット乾燥と並行して酸化重合乾燥が進行し、セット乾燥は蛍光インキ組成物適用した後数分単位で終了し、酸化重合乾燥は終了までに数時間を要する。セット乾燥および酸化重合乾燥の終了により乾燥の全工程が完了し、溶剤が印刷紙に浸透し、着色剤とバインダー樹脂が結合した状態(3)となる。セット乾燥が終了するまでの時間が短い(セット乾燥性が速い)ほど、印刷紙裏面の印刷を早く行うことが出来るため、作業性が良くなる。
本発明の蛍光インキ組成物は、上記(1)および(2)のセット乾燥工程のみで印刷が完了する、いわゆる「浸透乾燥型」のインキ組成物であってもよい。または、印刷後加熱オーブンに通すことで溶剤の一部を蒸発させる、いわゆる「ヒートセット型」のインキ組成物であってもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の製造例などにおいて「部」および「%」は特に示さない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
【0063】
[(メタ)アクリル系樹脂の合成例]
(メタ)アクリル系樹脂1(樹脂1)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサーおよび乾燥窒素ガス導入装置を備えたガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(99部)、メタクリル酸(1部)、アゾビスメチロブチロニトリル (5部)、AF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で、30分間で120℃まで加熱し、さらに、120℃で3時間保持して固形分換算40重量%の(メタ)アクリル系樹脂1の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂1のガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂2(樹脂2)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様のガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(78部)、2−エチルヘキシルアクリレート(21部)、メタクリル酸(1部)、アゾビスメチロブチロニトリル(2.5部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様に操作して(メタ)アクリル系樹脂2の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂2のガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。
【0065】
(メタ)アクリル系樹脂3〜5(樹脂3〜5)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例において、イソボルニルメタアクリレート、メタクリル酸、アゾビスメチロブチロニトリルおよびAF5号ソルベントの量を各々下記表1に記載の量に変更し、反応温度を各々下記表1に記載の温度に変更したこと以外は、(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様に操作して、(メタ)アクリル系樹脂3〜5の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂3〜5のガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。
【0066】
(メタ)アクリル系樹脂A(比較樹脂A)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様のガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(50部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(50部)、アゾビスメチロブチロニトリル(3部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様に操作して(メタ)アクリル系樹脂A(比較例A)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。得られた(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度は63℃未満であり、条件(b)を満していない。
【0067】
(メタ)アクリル系樹脂B(比較樹脂B)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様のガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(40部)、n−ブチルメタクリレート(60部)、アゾビスメチロブチロニトリル(5部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様に操作して(メタ)アクリル系樹脂B(比較例B)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。得られた(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度は63℃未満であり、条件(b)を満していない。
【0068】
(メタ)アクリル系樹脂C(比較樹脂C)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様のガラス製反応機に、メチルメタクリレート(80部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(20部)、アゾビスメチロブチロニトリル(2.5部)をAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様に操作したが、120℃での重合途中に白色固体が析出し、溶液として得ることができなかった。得られた(メタ)アクリル系樹脂C(比較例C)のガラス転移温度および重量平均分子量を表1に示す。得られた(メタ)アクリル系樹脂Cは、炭素数4以上の、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有するアクリルモノマー単位が40重量%未満であり、条件(a)を満たしていない。
【0069】
(メタ)アクリル系樹脂D(比較樹脂D)
(メタ)アクリル系樹脂1の合成例と同様のガラス製反応機に、イソボルニルメタクリレート(99部)、メタクリル酸(1部)、アゾビスメチロブチロニトリル(0.5部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(150部)を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で、30分間で90℃まで加熱し、さらに、90℃で3時間保持した後に冷却し、80℃においてAF5号ソルベント(75部)を添加して固形分換算30重量%の(メタ)アクリル系樹脂D(比較例D)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂Dのガラス転移温度、重量平均分子量および固形分濃度を表1に示す。
【0070】
【表1】
IBMA:イソボルニルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
n−BuMA:n−ブチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
AMBN:アゾビスメチロブチロニトリル
AF5:AFソルベント5号
Tg:上述した式(I)により計算したガラス転移温度(単位:℃)
Mw:上述した方法により測定した重量平均分子量
固形分濃度:熱風循環式乾燥機を用い、150℃で1時間加熱して溶剤を完全に除去したときの残渣の量から算出した。
【0071】
[ワニスの製造方法]
ワニスA
撹拌装置に温度計を装着した1L三口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂としてHR−311(杭華油墨化学社製)(43部)、大豆白絞油(サミット製油株式会社)(20部)およびAF5号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(16部)を仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、桐油(カネダ株式会社製)(10部)、AF5号ソルベント(10部)およびゲル化剤としてALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、株式会社 川研ファインケミカル製)(1部)を添加し、180℃で1時間加熱撹拌し、ワニスAを得た。
【0072】
ワニスB
撹拌装置に温度計を装着した1L三口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂としてHR−311(杭華油墨化学社製)(43部)、大豆白絞油(サミット製油株式会社製)(16部)およびAF7号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製)(20部)を仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、AF7号ソルベント(20部)およびゲル化剤としてALCH(株式会社 川研ファインケミカル製)(1部)を添加し、180℃で1時間加熱撹拌し、ワニスBを得た。
以上のワニスAおよびBの組成を表2に示す。
【0073】
【表2】
表2において、単位は重量部である。
【0074】
実施例1〜5
ワニスの製造例で得られたワニスA(60部)および蛍光顔料B(LUNACURE OB、DKSHジャパン株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)、コバルト系ドライヤー(MIX−D、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、マンガン系ドライヤー(MIX−E、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、(メタ)アクリル系樹脂1〜5のそれぞれ(10部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、実施例1〜5の蛍光インキ組成物を得た。
【0075】
実施例6
ワニスの製造例で得られたワニスB(60部)および蛍光顔料B(LUNACURE OB、DKSHジャパン株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)、(メタ)アクリル系樹脂1(10部)およびAF7号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、実施例6の蛍光インキ組成物を得た。
【0076】
比較例1
ワニスの製造例で得られたワニスA(70部)および蛍光顔料B(LUNACURE OB、DKSHジャパン株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)、コバルト系ドライヤー(MIX−D、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、マンガン系ドライヤー(MIX−E、日本化学産業株式会社製)(0.5部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、比較例1の蛍光インキ組成物を得た。
【0077】
比較例2〜4
ワニスの製造例で得られたワニスA(60部)および蛍光顔料B(LUNACURE OB、DKSHジャパン株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)、コバルト系ドライヤー(MIX−D、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、マンガン系ドライヤー(MIX−E、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、比較例A、BまたはDの(メタ)アクリル系樹脂(10部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、それぞれ比較例2〜4の蛍光インキ組成物を得た。
【0078】
比較例5
ワニスの製造例で得られたワニスA(70部)および体質顔料(NEOLIGHT SA−200、竹原化学工業株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)、コバルト系ドライヤー(MIX−D、日本化学産業株式会社製)(0.5部)、マンガン系ドライヤー(MIX−E、日本化学産業株式会社製)(0.5部)およびAF5号ソルベント(5部)を添加、撹拌し、比較例5の蛍光インキ組成物を得た。
【0079】
比較例6
ワニスの製造例で得られたワニスB(70部)および蛍光顔料B(LUNACURE OB、DKSHジャパン株式会社製)(20部)を混合し、ビーズミル、三本ロールで順次練肉し、分散体を得た。次いで、この分散体に対して、ポリエチレンワックス(MC−850、森村ケミカル株式会社製)(4部:ワックス成分1.5部)およびAF7号ソルベント(6部)を添加、撹拌し、比較例6の蛍光インキ組成物を得た。
【0080】
[蛍光インキ組成物の性能評価試験]
実施例1〜5と比較例1〜6の蛍光インキ組成物の性能に関して、下記の評価項目について試験を行った。
【0081】
試験片の作成
実施例1〜5および比較例1〜4の蛍光インキ組成物を、RIテスター(株式会社 明製作所製)を使用して、4分割ゴムロールに0.075mlのインキ盛り量で、OKトップコートプラス(王子製紙株式会社製)に展色し、得られた印刷物を常温(25℃)で乾燥させて常温乾燥試験片を得た。
実施例8および比較例6の蛍光インキ組成物を、RIテスター(株式会社 明製作所製)を使用して、4分割ゴムロールに0.075mlのインキ盛り量で、OKトップコートプラス(王子製紙株式会社製)に展色し、得られた印刷物を熱風乾燥機(DKN612、ヤマト科学株式会社製)により150℃で10秒間放置して乾燥させてヒートセット試験片を得た。
【0082】
セット乾燥性
実施例1〜5および比較例1〜4の蛍光インキ組成物を三菱特両アート紙(三菱製紙社製)にそれぞれ展色して、自動インキセット乾燥性試験機(HOEI SEIKO社製)を用いて蛍光インキ組成物の乾燥度を観察し、蛍光インキ組成物の溶剤が紙に浸透して付着しなくなるまでに要する時間(セット乾燥時間(分))を測定した。なお、本試験は常温下(25℃)で行い、加熱はしなかった。試験結果を表3に示す。
【0083】
樹脂分散性
実施例1〜5と比較例1〜5の蛍光インキ組成物に(メタ)アクリル系樹脂を添加する作業において、樹脂の蛍光インキ組成物に対する分散性を下記のように評価した。なお、本試験における「常温」とは25℃を意味する。
A・・・常温で液体もしくは粘性体であり、分散性が非常に良く作業性が高い。
B・・・常温で固形または固体になり易いが、加熱して液体になると分散性が良く作業性が高い。
C・・・常温以下で固形または固体になり易く、加熱して液体になっても分散性が低く作業性が低い。
試験結果を表3に示す。
【0084】
インキ均一性
実施例1〜6と比較例1〜6の蛍光インキ組成物に(メタ)アクリル系樹脂を添加した際の(メタ)アクリル系樹脂とインキ組成物との均一性とその作業性を下記のように評価した。
A・・・インキ組成物において樹脂が容易に分散した。
B・・・インキ組成物において樹脂が馴染みにくいが分散した。
C・・・インキ組成物において樹脂が析出した。
試験結果を表3に示す。
【0085】
蛍光発色性
前記各試験片に紫外線(CHROMATO-VUE、ULTRA-VIOLET PRODUCTS社製)を照射して、試験片の蛍光発色性を下記の評価基準に基づき評価した。
A・・・強い蛍光発色が確認された。
B・・・弱い蛍光発色が確認された。
C・・・蛍光発色が確認されなかった。
試験結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
表3において、単位について特に断りのない数値の単位は重量部である。
【0087】
上記表3結果から、実施例の蛍光インキ組成物においては、樹脂の分散性および相溶性、印刷時のセット乾燥性、ならびに、蛍光発色性の高いレベルでの両立が認められた。
また、表3の結果から、実施例の蛍光インキ組成物は、常温乾燥および高温乾燥(ヒートセット)のいずれを行った場合でも、同量またはそれ以下の蛍光顔料の配合量で、蛍光発色性の著しい向上が見られた。
一方、表3の結果から、比較例1〜3の蛍光インキ組成物では、実施例の蛍光インキ組成物と比較して、セット乾燥性が遅かった。セット乾燥性が遅い蛍光インキ組成物を用いる場合、両面印刷時に片面に印刷した後にもう一方の面に印刷をするまでに時間を要するため、印刷効率が低下する。
また、表3の結果から、比較樹脂BおよびCのそれぞれを含有する比較例3および4の蛍光インキ組成物では、実施例の蛍光インキ組成物と比較して、樹脂分散性または相溶性が低くかった。これらの比較樹脂を用いて蛍光インキ組成物を製造する場合、製造時の作業性が悪く、製造効率が低下する。さらに、これらの比較樹脂は、蛍光インキ組成物中で凝集するため、使用時のインキの伸びが損なわれ印刷できない。
また、表3の結果から、比較例5および6の蛍光インキ組成物では蛍光発色性が低かった。
【0088】
本発明の蛍光インキ組成物は、従来品よりも発色性が高く、色域が広いという顕著な効果を有する。また、本発明の蛍光インキ組成物を単体で、または、既存のCMYKのインキと組み合わせて用いることで、紫外線照射によって絵柄を浮き出させたり、絵柄を変えたりすることが可能である。また、セキュリティー性を求められる印刷物や偽造防止等の印刷物のみならず、一般的な商業用印刷物においては多彩な印刷物を提供することができる。さらに、印刷媒体に印刷した時のセット乾燥性に優れるため、裏面を印刷するまでの時間を短縮することができ、印刷時の高い作業性(作業効率)の実現を可能とする。さらに、本発明の蛍光インキ組成物では、含有する樹脂の分散性および相溶性が高いため、樹脂の凝集が抑制され、蛍光インキ組成物の製造効率が向上し、使用時のインキの伸びが損なわれることがない。