(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-110202(P2017-110202A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20170526BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20170526BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20170526BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20170526BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20170526BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20170526BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20170526BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20170526BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20170526BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20170526BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20170526BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20170526BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20170526BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20170526BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20170526BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L77/06
C08L51/06
C08K3/34
C08K5/09
C08K5/05
C08K5/20
C08L101/00
C08K3/16
C08K5/13
C08K5/18
C08L35/00
C08L63/00 Z
F02M37/00 301M
B60K15/04 Z
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-237650(P2016-237650)
(22)【出願日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0178634
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】511009514
【氏名又は名称】シンイル ケミカル インダストリー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516368276
【氏名又は名称】コリアエフティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尹 智 ヨン
(72)【発明者】
【氏名】柳 東 烈
(72)【発明者】
【氏名】李 東 チョル
(72)【発明者】
【氏名】權 ボ ラム
(72)【発明者】
【氏名】金 基 弘
(72)【発明者】
【氏名】徐 今 錫
(72)【発明者】
【氏名】崔 チョル 圭
【テーマコード(参考)】
3D038
4J002
【Fターム(参考)】
3D038CA19
3D038CA22
3D038CC14
4J002AA004
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4J002EP027
4J002FB086
4J002FD016
4J002FD068
4J002FD069
4J002FD177
4J002FD334
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】燃料注入管用複合樹脂からブロー成形が容易くて、低温衝撃及び引張強度の機械的物性に優れるとともに気体遮断性を大幅に向上させることができる燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物を提供する。
【解決手段】燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ポリアミド6 41〜77重量%;メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミド5〜15重量%;無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物14〜30重量%;及び混合クレイ3〜10重量%を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド6を41〜77重量%と、
メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミドを5〜15重量%と、
無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を14〜30重量%と、
混合クレイを3〜10重量%と、
を含むことを特徴とする燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミドは、メタ−キシレンジアミン6ナイロン、芳香族ナイロン及び非結晶性ナイロンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記混合クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト及びバーミキュライトからなる群から選択された2種以上を混合して有機化前処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機化前処理は、1〜4級アンモニウム、ホスホニウム、マレエート、スクシネート、アクリレート、ベンジルヒドロゲン、ジメチルステアリルアンモニウム及びオキサゾリンからなる群から選択されたいずれか一種以上の作用基を含む有機物で前処理されたことを特徴とする請求項3に記載の染料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ステアリン酸、ステアリルアルコール及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上の物質の0.3〜1.0重量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ビニル系、エポキシ系、メタクリルオキシ系、アミノ系、メルカプト系、アクリルオキシ系、イソシアネート系、スチリル系及びアルコキシオリマー系からなる群から選択された1種以上の粘度増進剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ハロゲン化ナトリウム類、ハロゲン化カリウム類及びハロゲン化リチウム類からなる群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、塩化第1銅、臭化第1銅及びヨウ化第1銅からなるハロゲン化第1銅類の群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%に範囲でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ヒンダード(hindered)フェノール類、ヒドロキノン類及び芳香族アミン類からなる群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項10】
分子量を高めるために、前記ポリアミド6にマレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂が0.01〜15重量%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【請求項11】
遮断性を改善するために、前記ポリアミド6に芳香族系ナイロンの0.01〜15重量%が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物に係り、より詳しくは、ブロー成形が容易であり、低温衝撃性及び引張強度の機械的物性に優れるとともに気体遮断性を大幅に向上させることができる燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料注入管は技術的に多くの挑戦を受けている。例えば、蒸発ガスの規制強化に対する対応、二酸化炭素排出規制による軽量素材及びバイオ燃料に対する親和性を満足しなければならない。プラスチック素材は軽量素材として適合するが、バイオエタノールの添加によるガソリン燃料の構成変化によってアルコール含有燃料の気体に対する遮断性が問題点として浮上している。既存の燃料タンクの注入部部品材料はポリアミドとゴムを含むものであり、既存のガソリンに対する遮断性は優れるが、アルコールに対する遮断性は劣る欠点がある。
また、各国は蒸発ガスに対する法規強化によって遮断性に優れた素材の開発が要求されている。このような蒸発ガスは、例えば韓国国内の場合、E0に対して10mg以下(F/Neck Ass’y 30mg)、ヨーロッパE10に対して100mg(EURO IV)、北米はE10に対して2.5mg(EPA規定level III)の許容値に規制している。
【0003】
一方、ブローモールディング用樹脂として通常に使われる高密度ポリエチレン(high density polyethylene:HDPE)は気体遮断性が68g.mm/m
2/dayと低いため、エチレンビニルアルコール共重合体(ethylene vinyl alcohol copolymer:EVOH)と多層構造を形成して使用されている。しかし、多層構造を形成するためには高価な多重押出成形装備による、ブロー押出性を満たす設計が必要となる。
一方、気体遮断性に優れた材料としてナイロン系樹脂を使うことができる。このようなナイロン系樹脂のうち、ポリアミド6(商品名:6ナイロン)はガソリンに対する遮断性に優れるが、低温衝撃性を満足することができないという欠点がある。
【0004】
特許文献1には、ポリオレフィン層と遮断性樹脂と層状粘土化合物とのナノ複合体連続相にポリオレフィン樹脂を分散した遮断性ナノ複合体ブレンド層を含む遮断性多層物品について開示されているが、ポリエチレン樹脂内にポリアミド分散層を製造するための特殊なスクリューを持った成形機が必要であり、また、ブロー成形の場合には、モーフォロジーを効率的に制御しにくい欠点がある。
また、特許文献2には、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性弾性体樹脂などからなる群から選択される樹脂と、カーボンブラック及び炭素ナノチューブを含む伝導性ポリアミド複合体組成物について開示されているが、ポリアミド分散層の制御がブロー成形において難しく、ポリオレフィン樹脂内に多量の相溶化剤を添加しなければならないことと、モーフォロジー制御の難しさによってガス及びガソリンの遮断性が低下する欠点がある。
【0005】
また、特許文献3には、ポリアミド−6からなる熱可塑性モールディング材料、ナノ充填剤、纎維状充填剤、衝撃調節剤及びポリアミド−66を含むブローモールディング素材について開示されているが、無機物(纎維状充填剤)の添加によって耐衝撃性低下と延伸応力の増加し、延伸性が低下してブロー成形が難しくなることが記載されている。
また、特許文献4には、有機化合物によって表面が修飾された無機物層状粘土化合物と結晶性ポリアミド樹脂であるメタ−キシレンジアミン変性6−ナイロン(meta−xylenediamine:以下、MXD−6と略す。)をブレンド混合することでなるガス遮断性に優れたMXD−6ナノ樹脂組成物について開示されている。MXD−6ナノブランドの製造時に製造コストが高くなる欠点と、層状粘土化合物の熱安定性が悪く、ブロー成形時にガスが発生するなど、成形が難しいという欠点が記載されている。また、MXD−6あるいはMXD−6ナノブランド組成のみでは燃料タンクの注入部部品で要求する耐衝撃性の確保が難しいとの問題がある。
したがって、ブロー成形が容易であり、衝撃性、引張強度及び気体遮断性を向上させることができる燃料タンクの注入部部品に適用可能な素材開発が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1002050号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開第2011−0012430号公報
【特許文献3】アメリカ特許公開第2011−0217495号公報
【特許文献4】大韓民国特許公開第2006−0120548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ブロー成形が容易であり、低温衝撃性及び引張強度等の機械的物性に優れた燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物を提供することにある。
また他の目的とするところは、ガソリンだけでなくガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大幅に向上させることができる燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ポリアミド6を41〜77重量%と、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンを5〜15重量%と、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を14〜30重量%と、混合クレイを3〜10重量%と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のメタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミドは、メタ−キシレンジアミン変性6ナイロン、芳香族ナイロン及び非結晶性ナイロンからなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
混合クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト及びバーミキュライトからなる群から選択された2種以上を混合して有機化前処理されたものであることが好ましい。
【0010】
本発明の有機化前処理は、1〜4級アンモニウム、ホスホニウム、マレエート、スクシネート、アクリレート、ベンジルヒドロゲン、ジメチルステアリルアンモニウム及びオキサゾリンからなる群から選択されたいずれか一種以上の作用基を含む有機物で前処理されることができる。
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ステアリン酸、ステアリルアルコール及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上の物質の0.3〜1.0重量%をさらに含むことができる。
【0011】
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ビニル系、エポキシ系、メタクリルオキシ系、アミノ系、メルカプト系、アクリルオキシ系、イソシアネート系、スチリル系及びアルコキシオリマー系からなる群から選択された1種以上の粘度増進剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことが好ましい。
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ハロゲン化ナトリウム類、ハロゲン化カリウム類及びハロゲン化リチウム類からなる群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことができる。
【0012】
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、塩化第1銅、臭化第1銅及びヨウ化第1銅からなるハロゲン化第1銅類の群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことがよい。
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ヒンダード(hindered)フェノール類、ヒドロキノン類及び芳香族アミン類からなる群から選択された1種以上の耐熱安定剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことができる。
【0013】
本発明の好適な具現例において、分子量を高めるために、ポリアミド6にマレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂を0.01〜15重量%の範囲で含有させることができる。
本発明は、気体遮断性を改善するために、ポリアミド6に芳香族系ナイロンの0.01〜15重量%が含有されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、燃料注入管用複合樹脂からブロー成形が容易であり、低温衝撃性及び引張強度の機械的物性に優れるとともにガソリンのみでなくガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による実施例1で製造されたポリアミド複合樹脂の透過電子燎微鏡(transmission electron microscope;TEM)写真である。
【
図2】本発明による比較例1で製造されたポリアミド複合樹脂の走査電子燎微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真である。
【
図3】本発明による実施例2及び3及び比較例1で製造されたポリアミド複合樹脂を用いて製造された成形品の燃料残量透過度測定結果を示すグラフである。
【
図4】本発明による遮断性評価に使用された燃料油容器を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ポリアミド(Polyamide)6を41〜77重量%、メタ−キシレンジアミン(m−xylendiamine:MXD)変性ナイロンを5〜15重量%、無水マレイン酸(Maleic anhydride)がグラフト(Graft)されたエチレン−オクテン共重合体(Ethylene−octene copolymer)、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(Ethylene−propylene−diene−monomer)またはこれらの混合物を14〜30重量%、及び、混合クレイを3〜10重量%含む。
本発明で使用したポリアミド6は、ジアミンとジカルボン酸を含むナイロン6で、特にガソリンに対する遮断性が5g.mm/m
2/dayと優れ、機械的特性、耐化学性及び耐熱性に優れる特性がある。また、ポリアミド6は、燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物に41〜77重量%含有されることが好ましい。その含量が41重量%より少ないと、耐化学性、耐熱性及び気体遮断性が低下する虞があり、77重量%より多いと、低温衝撃性の低下とブロー成形性が低下する虞がある。
【0017】
また、このようなポリアミド6に、その分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂を添加することがよく、ポリアミド6は硫酸溶液においてRV(Relative Viscosity)2.70以上のものを使うことが好ましい。RV2.70を使用するときには、流動性が高く、押出ブロー成形に必要なパリソン(Parison)を形成できなくなり、ブロー成形ができないため、ポリアミドの分子量を高めるためにマレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂を添加することが好ましい。樹脂の添加は、ポリアミド末端の−NH官能基とエポキシ系またはマレイン酸系を含む樹脂との押出反応によって分子量を調節することができる。分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂はポリアミド6に0.01〜15重量%含有されることが好ましい。ポリアミド6の例としては、EMS社のGrivoly BRZ 350またはRhodia社のTechnyl C544を挙げることができる。また、ポリアミド6に気体遮断性がもっと優れた芳香族系ナイロンを一部含むことができる。遮断性を改善するために、芳香族系ナイロンはポリアミド6に0.01〜15重量%含有されることが好ましい。
【0018】
本発明のメタ−キシレンジアミン(m−xylendiamine:MXD)系変性ナイロンは、分散層を形成する素材で、275℃で測定したMI(Melt flow Index)が0.5である変性ナイロンであり、ポリアミドと混合するとき、積層構造(laminar structure)形態の分散層を成して気体遮断性に優れた特性がある。このような分散層は成形温度によって敏感に変化するので、成形温度を275℃以下に調節することが必要である。メタ−キシレンジアミン系変性ナイロンは、メタ−キシレンジアミン6ナイロン、芳香族ナイロン及び非結晶性ナイロンからなる群から選択された1種以上のものを使うことができる。また、メタ−キシレンジアミン(m−xylendiamine:MXD)系変性ナイロンは燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物に5〜15重量%配合されることが好ましい。具体的に、その含量が5重量%未満では、ガソリン又はガソリンとアルコールが混合された混合燃料の気体遮断性を高めるための積層構造を形成することができにくくなる虞があり、15重量%より多くなると、機械的物性が低下する虞がある。
【0019】
本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含むことが好ましい。無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物は、熱可塑性弾性体(Thermoplastic olefin:TPO)であり、ゴムの一種である。具体的に、このような熱可塑性弾性体は、ポリアミド6の鎖と反応して分散性を向上させるために添加される。また、既存のエチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)に比べて熱可塑性弾性体の分散性を増加させて空隙のサイズを小さくする特性があるので、少ない含量でも耐衝撃性を確保することができる利点があり、また、気体透過を防ぐ積層構造の形成を妨げないようにする利点がある。
【0020】
本発明の無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物は、二軸押出機で1〜10μmのサイズに分散させることができる。また、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物は燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物に14〜30重量%含有されることが好ましい。これらの化合物の含量が14重量%より少なければ低温衝撃性の効果が低く、30重量%より多ければ衝撃補強物性が低下する虞がある。
【0021】
本発明の混合クレイは、マトリックス樹脂の気体遮断性を補強する無機フィラーで、そのサイズが0.1〜10nmの微細粒子であることが好ましい。このような混合クレイは、板状のモンモリロナイト(Montmorillonite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト(saponite)及びバーミキュライト(vermiculite)からなる群から選択された2種以上のクレイが混合されて有機化前処理された混合クレイを使うことができる。有機化前処理された混合クレイは、クレイ製造の際、2種以上のクレイを反応槽で混合した後、有機物で前処理して製造することができる。有機物は、1〜4級アンモニウム(Ammonium)、ホスホニウム(Phosphonium)、マレエート(Maleate)、スクシネート(Succinate)、アクリレート(Acrylate)、ベンジルヒドロゲン(Benzylic hydrogen)、ジメチルステアリルアンモニウム(Dimethyldistearyl Ammonium)及びオキサゾリン(Oxazoline)からなる群から選択されたいずれか一種の作用基を含むことができる。好ましくは、アルキルアンモニウム基の作用基を持つ有機物で混合クレイを有機化前処理することができる。このような混合クレイは単一クレイより樹脂内で分散が向上し、有機化前処理の際、有機物の添加量を少なく使うことによりナノ複合体の熱安定性を向上させてブロー成形時のガス発生の問題を解決することができる。
混合クレイは、3〜10重量%の範囲で混合されることがよい。その含量が3重量%より少なければ気体遮断性の効果が低くなり、10重量%より多ければ引張強度及び屈曲強度の急激な上昇及び伸び率の低下によって衝撃性能を大きく低下させる虞がある。
【0022】
本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、耐熱安定剤の0.3〜1.0重量%をさらに含むことが好ましい。耐熱安定剤は部品の長期耐熱特性を維持する機能を付与するものであり、ハロゲン化ナトリウム類、ハロゲン化カリウム類、ハロゲン化リチウム類のようなハロゲン化I族金属、塩化第1銅、臭化第1銅及びヨウ化第1銅等のハロゲン化第1銅類(cuprous)からなる群から選択された1種以上の物質を例として挙げることができる。更に、ヒンダード(hindered)フェノール類、ヒドロキノン類及び芳香族アミン類からなる群から選択された1種以上の物質を挙げることができる。
また、本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、ステアリン酸、ステアリルアルコール及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上の物質を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことができる。ステアリン酸、ステアリルアルコール及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上の物質は滑剤として内部潤滑剤の役目をして射出加工時に円滑な流れを誘導することができる。
【0023】
また、本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は粘度増進剤を0.3〜1.0重量%の範囲でさらに含むことができる。粘度増進剤は押出温度でポリアミド複合材料の粘度を増加させてブローモールディングに適した粘度に調整する役目を果たす。このような粘度増進剤は、ビニル系、エポキシ系、メタクリルオキシ系、アミノ系、メルカプト系、アクリルオキシ系、イソシアネート系、スチリル系及びアルコキシオリマー系からなる群から選択された1種以上を使うことができる。また、粘度増進剤の使用含量が0.3重量%より少なければ粘度増進の効果が得られず、一方、1.0重量%より多ければブローモールディング性が低下する虞がある。
また、本発明の燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物は、充填剤の0.1〜1.0重量%をさらに含むことが好ましい。充填剤はカーボンブラックマスターバッチなどであることができる。
本発明による燃料注入管用ポリアミド複合樹脂組成物はポリアミド6にメタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミド及び混合クレイを添加することで、燃料注入管用複合樹脂からブロー成形が容易になり、低温衝撃性及び引張強度の機械的物性を付与し、さらに、ガソリンのみでなくガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大幅に向上させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明が次の実施例に限定されるものではない。
〔製造例:有機化前処理された混合クレイの製造〕
モンモリロナイト及びヘクトライトを1:1重量比で混合して混合クレイを製造した。その後、反応槽に、混合クレイにアルキルアンモニウム基の作用基を持つ1級アンモニウムを添加して反応させることで前処理した混合クレイを製造した。
【0025】
〔実施例1〜3及び比較例1〜9〕
実施例1〜3及び比較例1〜9は、各化合物を下記表1に記載した成分比で混合した後、二軸押出機を用いてポリアミド複合素材を製造した。
樹脂、熱可塑性弾性体(Thermoplastic olefin:TPO)ゴム、耐熱安定剤、滑剤及び粘度増進剤は、メインフィーダーを通じて投入し、有機化前処理された混合クレイはサイドフィーダーを通じて投入して製造した。メインフィーダーに混合クレイを投入する場合、混合クレイの凝集現象が発生する虞があるため、サイドフィーダーを通じて投入したが、スプレー法で投入してもよい。押出機のスクリューは分散性を向上させるために無秩序混錬が可能な装置を使用した。また、混錬領域での押出温度は275℃以下に維持した。押出温度が275℃より高くなればドメインのサイズがあまり微細になって気体遮断性が低下する虞があった。混錬されたポリアミド複合素材はダイカッターによってペレット化した後、除湿乾燥器で乾燥した。
【0026】
【表1】
【0027】
〔実験例1〕
実施例1〜3及び比較例1〜9で製造されたポリアミド複合樹脂から製造された成形品の物性、加工性及び気体遮断性などを調査するために、下記の項目に対して測定した後、その結果を下記の表2及び3及び
図1及び2に示した。
(1)引張強度(MPa):ASTM D638に基づいて50mm/minで測定した。
(2)屈曲弾性率(MPa):ASTM D790規定に基づいて3mm/minで測定した。
(3)IZOD衝撃強度(KJ/m
2):ASTM D256に基づいて1/4”ノッチ(Notched)条件で低温(−30℃)の温度条件で測定した。
(4)熱変形温度(℃):ASTM D648に基づいて0.45MPaの表面圧力を加え、熱変形温度を測定した。
(5)ベンディング評価:ベンディング装置を用い、往復10回の曲げによる損傷の状況を観察した。
(6)低温落下評価:低温区間−40℃で
3時間放置後、30秒内に1mの高さから自由落下させ、クラックの発生状況を観察した。
(7)遮断性評価:SAE J2665法によって燃料油容器(
図4)に装着して60℃で時間経過による重さ変化量を測定した。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
表2及び3に示した結果によれば、単独でモンモリロナイトクレイのみを含む比較例2〜4の場合、特に低温衝撃強度及び引張強度で低い物性を持つことを確認することができた。これから、モンモリロナイトクレイがナイロンマトリックスに選択的に分散されて、ベンディング及び気体遮断性の評価が良くないことが分かった。
また、ポリアミド6及びMXD6を含むが有機化前処理された混合クレイが添加されなかった比較例5〜6の場合、特に衝撃強度及び熱変形温度でその数値が大きく低下したことを確認することができる。
また、MXD6を少量含む比較例7とMXD6を過量含む比較例8〜9の場合、引張及び屈曲弾性率は比較的優れるが、衝撃強度及び熱変形温度において比較例5〜6と同様にその数値が良くないことが分かった。
【0031】
これに対し、ポリアミド6にMXD6、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体ゴム及び混合クレイを含む実施例1〜3の場合、ブロー成形が容易であるとともに、特に引張強度及び低温衝撃強度が大きく向上し、屈曲弾性率と熱変形温度においても既存と類似した程度であることを確認することができた。また、混合クレイがゴムとポリアミド樹脂上に均一に分散される工法を用いることにより、気体遮断性がいずれも優れることを確認した。
図1は実施例1で製造されたポリアミド複合樹脂の透過電子燎微鏡(transmission electron microscope;TEM)写真である。
図1に示したとおり、ポリアミド樹脂上に分散された有機化前処理された混合クレイを確認することができた。
図2は比較例1で製造されたポリアミド複合樹脂の走査電子燎微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真である。
図2に示したとおり、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体ゴムにMXD6が均一に分散されたことを確認することができた。
【0032】
〔実験例2〕
実施例2及び3及び比較例1で製造されたポリアミド複合樹脂から製造された成形品の透過度を調査するために、E10燃料を注入した後、60℃のチャンバー温度でSAE J2665法によって燃料残量透過度を測定し、その結果を
図3に示した。
SAE J2665法による燃料残量透過度は次の式で計算することができる。
【数1】
燃料残量透過度は重量損失[%]に比例する。
【0033】
図3は実施例2及び3及び比較例1で製造されたポリアミド複合樹脂から製造された成形品の燃料残量透過度を測定した結果を示すグラフである。
図3に示したとおり、比較例1に比べ、実施例2及び3は燃料残量透過度がずっと向上したことを確認することができた。即ち、ポリアミド6にMXD6、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体ゴム及び混合クレイを混合することによって積層構造の形態に層が均一に形成されて燃料透過度を向上させたことが分かった。
以上のことより、実施例1〜3で製造されたポリアミド複合樹脂組成物はポリアミド6にメタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ポリアミド及び混合クレイを添加することにより、ブロー成形が容易であり、低温衝撃及び引張強度の機械的物性に優れるとともに気体遮断性を大幅に向上させることができる燃料注入管用複合樹脂であることを確認した。
【0034】
以上に本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は前述した実施例に限定されなく、次の特許請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の多くの変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。