(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-110480(P2017-110480A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】水道用弁筐
(51)【国際特許分類】
E03B 9/10 20060101AFI20170526BHJP
【FI】
E03B9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-248076(P2015-248076)
(22)【出願日】2015年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】591116092
【氏名又は名称】株式会社福原鋳物製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100062797
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100188385
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 道俊
(72)【発明者】
【氏名】福原 勝
(57)【要約】
【課題】 弁筐の高さ及び蓋受枠上面の傾斜を容易に調節でき、製造コストも少なくてすみ、しかも作業が行い易く、作業効率を向上させて時間や経費の削減を図ることができる水道用弁筐を提供する。
【解決手段】底盤1と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と、下面に前記弁筐本体2と係合するテーパーを付した凹部4を設け、且つ上面に筒状部9を設けた台盤6’と、前記筒状部9に昇降自在に嵌挿した鋳物製蓋受枠3”とから構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設けた鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【請求項2】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設け、且つ上面に設けた凹部に鋳物製蓋受枠を載置した台盤とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【請求項3】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設け、且つ上面に筒状部を設けた台盤と、前記筒状部に昇降自在に嵌挿した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【請求項4】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設けた鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【請求項5】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の上端の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設け、且つ上面に凹部を設けた台盤と、前記凹部に載置した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【請求項6】
底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の上端の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設け、且つ上面に筒状部を設けた台盤と、前記筒状部に昇降自在に嵌挿した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道設備における仕切弁、空気弁、地下式消火栓等の弁筐に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道の仕切弁の弁筐として鋳物製のねじ式弁筐が用いられている。かかるねじ式弁筐は外周に雄ねじを設けた蓋受枠を兼ねる上部筒体と該上部筒体を螺合した下部筒体とから構成されており、施工時に上部筒体を回転させて上下させることによって上部筒体に嵌合した鉄蓋の上面を路面と合わせる構成となっており、路面が道路の再舗装時や地震等により上下した場合であっても上部筒体を回転させて新たな路面に合わせることができるが、路面が傾斜している場合、鉄蓋の上面を路面と合わせるには、弁筐自体を傾斜させて設置しなければならないという、施工上の問題があった。
【0003】
また、前記ねじ式弁筐においては、ねじ構造の上部筒体と下部筒体を鋳造するのが難しいばかりでなく、製造時に上部筒体と下部筒体を螺合しようとしても上手く回転しない等の不良品が発生しやすく、コスト高になっていた。また埋設後に上述したように路面の高さが変わってしまったとき、長期間の埋設によって錆が生じたり、ねじ部に土砂等が入って先行文献に示すような道具を用いないと回転できなくなり高さを調節できなくなるといった問題があった。
【0004】
更にねじ式弁筐は、上部筒体に嵌合した鉄蓋に加わる車両等の加重に耐えるようにするため弁筐全体の強度を高くする必要があり、そのために重量が増し、製品コストが高くなると共に輸送や設置作業等において取り扱いが困難といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−241377号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本水道協会規格 JWWA 水道用ねじ式弁筐 (社)日本水道協会 平成12年6月8日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、弁筐の高さ及び蓋受枠上面の傾斜を容易に調節でき、製造コストも少なくてすみ、しかも作業が行い易く、作業効率を向上させて時間や経費の削減を図ることができる水道用弁筐を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設けた鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0009】
請求項2記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設け、且つ上面に設けた凹部に鋳物製蓋受枠を載置した台盤とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0010】
請求項3記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体と係合するテーパーを付した凹部を設け、且つ上面に筒状部を設けた台盤と、前記筒状部に昇降自在に嵌挿した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0011】
請求項4記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設けた鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0012】
請求項5記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の上端の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設け、且つ上面に凹部を設けた台盤と、前記凹部に載置した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0013】
請求項6記載の発明は、底盤と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体と、下面に前記弁筐本体の上端の内面又は外面と係合するテーパーを付した数個の突起を設け、且つ上面に筒状部を設けた台盤と、前記筒状部に昇降自在に嵌挿した鋳物製蓋受枠とから構成したことを特徴とする水道用弁筐である。
【0014】
前記底盤と台盤は、鋳物又はレジンコンクリートで構成され、蓋受枠又は台盤の弁筐本体の上端と接する部分にはゴムパッキン等のシールリングを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る弁筐は、弁筐本体の上端と係合する蓋受枠または台盤の凹部あるいは突起にはテーパーが付されているので、道路勾配(通常0〜5%)に対応して蓋受枠上面を路面の傾斜に容易に合わせることができる。
【0016】
また、請求項2及び請求項3記載の本発明によれば、台盤と蓋受枠間にスペーサーを挿入することにより高さの調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の縦断面図で、(a)図は路面が水平面の場合、(b)図は傾斜路面に対応させた場合を示すものである。
【
図2】本発明の実施例2の縦断面図で、(a)図は路面が水平面の場合、(b)図は傾斜路面に対応させた場合を示すものである。
【
図4】本発明の実施例3の使用例を示す説明図で、(a)図は嵩上げした場合、(b)図と(c)図は傾斜路面に対応させた場合の状態を示すものである。
【
図5】本発明の実施例4の上部縦断面図で、(a)図は突起を弁筐本体の内面に係合するように設けた場合、(b)図は突起を弁筐本体の外面に係合するように設けた場合を示すものである。
【
図6】本発明の実施例5の上部縦断面図で、(a)図は突起を弁筐本体の内面に係合するように設けた場合、(b)図は突起を弁筐本体の外面に係合するように設けた場合を示すものである。
【
図7】本発明の実施例6の縦断面図で、(a)図は突起を弁筐本体の内面に係合するように設けた場合、(b)図は突起を弁筐本体の外面に係合するように設けた場合を示すものである。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の第1の実施例の縦断面図で、(a)図は路面が水平面の場合、(b)図は傾斜路面に対応させた場合の状態を示すもので、1は係合部1aを設けた鋳物、レジンコンクリート等で構成される底盤、2は硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体、3は鋳物製の蓋受枠で、下面にテーパーPを付した凹部4が形成され、前記凹部4にはリング状のゴムパッキン5が接着剤で取付けられている。
【0019】
次に、この実施例の現場における設置手順について説明すると、先ず底盤1を設置し、次に用意した長めの硬質塩化ビニール管を現場で適切な長さに切断して弁筐本体2を作り、その下端を底盤1の係合部1aに嵌合させた後、弁筐本体2の周囲を埋め戻し、転圧して十分に強固な基礎を形成し、その上に蓋受枠3を設置すると共に下面に設けた凹部4を弁筐本体2と係合させ、蓋受枠3の周囲を埋め戻すと共に、アスファルト舗装を施す。
【0020】
このようにして設置された弁筐が、地表面上を走行する車両等から蓋受枠3に取付けられた蓋体と、蓋受枠3を介して力を受けた場合において、この力は蓋受枠3と弁筐本体2に分散支持され、指定荷重に耐える弁筐を提供することができる。
【0021】
また凹部4にはテーパーPを付してあるので、蓋受枠3を(b)図のように傾斜させることができるため、弁筐設置に要求される道路勾配に対応する弁筐を提供することができる。
【0022】
以上のように、本発明に係る弁筐は、弁筐本体2として硬質塩化ビニール管を用いたので、全体を鋳物で構成される従来のねじ式弁筐に比し、遥かに軽量であるから、使い勝手がよく、在庫管理、輸送、設置作業等に優れているばかりでなく、現場において、適切な長さの弁筐を迅速に提供することができ、傾斜路面にも対応し得ることと相俟って頗る有用な弁筐である。
【実施例2】
【0023】
図2は、弁筐の高さ及び蓋受枠上面の傾斜度の微調整を行いうるように工夫した実施例2の縦断面図である。
【0024】
実施例1と異なる点は、下面に硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と係合するテーパーPを付した凹部4を設けた台盤6の上面の凹部7に鋳物製の蓋受枠3’を嵌挿するように構成した点である。
【0025】
このように構成することにより、前記実施例1の場合と同様に傾斜路面に対応し得ると共に、台盤6と蓋受枠3’の間にスペーサー8,8を挿入することにより、弁筐の高さの微調整を行うことができる。また傾斜路面用スペーサー(図示せず)を用いることにより、蓋受枠3’の傾斜度の微調整を行うことができる弁筐を提供することができ、弁筐本体2を硬質塩化ビニール管としたことによる施工上の利点や、製造コストの低減等の効果と相俟って、有用な弁筐を提供することができる。
【実施例3】
【0026】
図3は、実施例3の縦断面図を示すもので、実施例1の作用、効果の他、嵩上げが必要となった場合や、弁筐の高さ不足の場合に、蓋受枠の周囲を掘ることなく、即ちノンカットで嵩上げ又は弁筐の高さの調整を行う得るように構成したものである。
【0027】
即ち、
図3に示す実施例3では、底盤1と、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と、下面に前記弁筐本体2と係合するテーパーPを付した凹部4を設け、且つ上面に筒状部9を設けた台盤6’と、前記筒状部9に昇降自在に嵌挿した鋳物製の蓋受枠3”とから構成したものである。
【0028】
この
図3に示す実施例の弁筐は、
図4の(a)図に示すように嵩上げを必要とするとき、台盤6’と蓋受枠3”間にスペーサー10,10を挟むことによりノンカットで嵩上げを行うことができる。
【0029】
また、
図4の(b)図に示すように台盤6’を傾斜させることにより、実施例1の弁筐と同様、傾斜路面に対応することができると共に、筒状部9と蓋受枠3”間に1mm程度の隙間があれば、
図4の(c)図に示すように台盤6’と蓋受枠3”間に傾斜用スペーサー11を挟むことによっても0〜5%程度の傾斜路面に対応させることができる。
【0030】
なお、この実施例の場合、雨水等の浸水を防止するため、筒状部9と蓋受枠3”の隙間に防水リング12又は12’を施す。
【実施例4】
【0031】
図5は実施例4の上部縦断面図を示すもので、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と鋳物製蓋受枠を係合させるために実施例1のように凹部とせずにテーパーを付した数箇の突起13(実施例では3箇を等間隔に設けた)を設けるようにしたものである。
【0032】
即ち、(a)図に示すように蓋受枠3aに設けた突起13を弁筐本体2の内面に、又は(b)図に示すように突起13’を弁筐本体2の外面に係合するように設けるようにしたものである。
【0033】
このように構成することにより前記実施例1と同様の作用・効果が得られ、また使い方ができる弁筐を提供することができる。
【実施例5】
【0034】
図6は実施例5の上部縦断面図を示すもので、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と蓋受枠3bを上部凹部7に載置した台盤6aとを係合させるために、実施例2のように凹部とせずにテーパーを付した数箇の突起(実施例では3箇を等間隔に設けた)を設けるようにしたものである。
【0035】
即ち、(a)図に示すように台盤6aに設けた突起13を弁筐本体2の内面に、又は(b)図に示すように突起13’を弁筐本体2の外面に係合するように設けるようにしたものである。
【0036】
このように構成することにより、前記実施例2と同様の作用・効果が得られ、また使い方ができる弁筐を提供することができる。
【実施例6】
【0037】
図7は実施例6の上部縦断面図を示すもので、硬質塩化ビニール管からなる弁筐本体2と蓋受枠3”を上部筒状部9に昇降自在に嵌挿した台盤6bとを係合させるために、実施例3のように凹部とせずにテーパーを付した数箇の突起(実施例では3箇を等間隔に設けた)を設けるようにしたものである。
【0038】
即ち、(a)図に示すように台盤6bに設けた突起13を弁筐本体2の内面に、又は(b)図に示すように突起13’を弁筐本体2の外面に係合するように設けるようにしたものである。
【0039】
このように構成ことにより、前記実施例3と同様の作用・効果が得られ、また使い方ができる弁筐を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 底盤
1a 係合部
2 弁筺本体
3,3’ 蓋受枠
4,7 凹部
5 ゴムパッキン
6,6’,6a,6a’,6b,6b’ 台盤
8,10 スペーサー
9 筒状部
11 傾斜用スペーサー
12,12’ 防水リング
13,13’ 突起