特開2017-1109(P2017-1109A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017001109-マスキング装置及びマスキング方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-1109(P2017-1109A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】マスキング装置及びマスキング方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/04 20060101AFI20161209BHJP
【FI】
   B24C1/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-114612(P2015-114612)
(22)【出願日】2015年6月5日
(11)【特許番号】特許第5916928号(P5916928)
(45)【特許公報発行日】2016年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】510268130
【氏名又は名称】株式会社キーテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】関根 一英
(57)【要約】
【課題】ワークに均一な表面処理を施すことが可能なマスキングプラグ、マスキング装置及びマスキング方法を提供する。
【解決手段】このマスキングプラグ50、マスキング装置100及びマスキング方法は、マスキングプラグ50のネジ頭部56がネジ孔12より小さく且つワーク10面から大きく突出しないため、マスキングプラグ50が遮蔽物とならず、ワーク10に対する均一な表面処理を行うことができる。また、マスキングプラグ50をプラグベース30ごとハンドリングすることで、マスキングプラグ50の効率的な運用が可能となる。またさらに、マスキングプラグ50の塗膜除去とワーク10に対するショットブラスト処理とを同時に行うことで、ショットブラスト装置の稼働率の向上とコスト削減とを図ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのネジ孔をマスキングするマスキングプラグであって、
前記ネジ孔と螺合するネジ部と、前記ネジ孔と略同径のキャップ部と、前記ネジ孔よりも小径のネジ頭部と、を有することを特徴とするマスキングプラグ。
【請求項2】
ワークのネジ孔をマスキングするマスキング装置において、
請求項1記載のマスキングプラグと、
前記マスキングプラグを保持する保持孔を複数有するプラグベースと、
前記マスキングプラグを前記ネジ孔に抜き差しするロボットアーム部と、
前記ロボットアーム部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ワークのネジ孔の位置情報とこのネジ孔と対応するマスキングプラグのプラグ情報とを備えたネジ孔情報と、前記プラグベース内における前記マスキングプラグの位置情報とプラグ情報とを備えたプラグベース情報と、を有し、
前記ロボットアーム部は、前記ネジ孔に対応する前記マスキングプラグを前記プラグベースから選択して抜き出して前記ネジ孔に螺入するとともに、所定の処理が終了した前記ワークから前記マスキングプラグを抜き取って、前記プラグベースの所定の保持孔に保持させること特徴とするマスキング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のマスキング装置を用いたマスキング方法であって、
ネジ孔情報とプラグベース情報とに基づいて、所定の前記マスキングプラグをプラグベースから抜き出して、ワークのネジ孔に順次螺入するマスキング工程と、
前記ワークに対する所定の表面処理後に、前記ワークのネジ孔から前記マスキングプラグを抜き出して、前記プラグベースの所定の保持孔に保持させるプラグ除去工程と、
前記マスキングプラグを前記プラグベースごとショットブラスト処理して、前記マスキングプラグ上の塗膜を除去するプラグ塗膜除去工程と、
を有することを特徴とするマスキング方法。
【請求項4】
プラグベース及びマスキングプラグのセットを複数有し、
使用後のマスキングプラグに対するプラグ塗膜除去工程をワークに対するショットブラスト処理と同時に行うことを特徴とする請求項3記載のマスキング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の表面処理の際に、機械部品に形成されたネジ孔を保護するためのマスキングプラグ、マスキング装置及びマスキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、比較的大型の機械部品のバリ取りや塗装等の処理は、機械部品(ワーク)に対するショットブラストやスプレー塗装により行うことが一般的である。尚、ショットブラスト処理とは、ワークの表面に粒状のショットを高速で衝突させてバリ取りや研磨を行うものである。しかしながら、通常、これらワークには他部材との接合に用いるネジ孔が形成されており、このネジ孔が露出した状態でショットブラスト処理を行うとネジ孔が削られて寸法精度が悪化するという問題点がある。また、ネジ孔が露出した状態でスプレー塗装を行うとネジ孔内にも塗料が進入しネジ溝が埋没するという問題点がある。このため、下記[特許文献1]にも示されるように、これらの表面処理を行うワークのネジ孔にはダミーネジを挿入し、ネジ孔に対するマスキング処理を施すことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−287592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、[特許文献1]に示すような通常のダミーネジを完全に締め付けて用いた場合、ダミーネジのネジ頭部に隠れた領域に表面処理が施されないという問題点がある。また、ネジ頭部をワークから浮かせた状態とした場合でも、ネジ頭部が遮蔽物となって均一な塗装や表面処理が行えないという問題点がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ワークに均一な表面処理を施すことが可能なマスキングプラグ、マスキング装置及びマスキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)ワーク10のネジ孔12をマスキングするマスキングプラグであって、
前記ネジ孔12と螺合するネジ部52と、前記ネジ孔12と略同径のキャップ部54と、前記ネジ孔12よりも小径のネジ頭部56と、を有することを特徴とするマスキングプラグ50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ワーク10のネジ孔12をマスキングするマスキング装置において、
上記(1)記載のマスキングプラグ50と、前記マスキングプラグ50を保持する保持孔36を複数有するプラグベース30と、前記マスキングプラグ50を前記ネジ孔12に抜き差しするロボットアーム部40と、前記ロボットアーム部40を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ワーク10のネジ孔12の位置情報とこのネジ孔12と対応するマスキングプラグ50のプラグ情報とを備えたネジ孔情報と、前記プラグベース30内における前記マスキングプラグ50の位置情報とプラグ情報とを備えたプラグベース情報とを有し、
前記ロボットアーム部40は、前記ネジ孔12に対応する前記マスキングプラグ50を前記プラグベース30から選択して抜き出して前記ネジ孔12に螺入するとともに、所定の処理が終了した前記ワーク10から前記マスキングプラグ50を抜き取って、前記プラグベース30の所定の保持孔36に保持させること特徴とするマスキング装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)上記(2)に記載のマスキング装置100を用いたマスキング方法であって、
ネジ孔情報とプラグベース情報とに基づいて、所定の前記マスキングプラグ50をプラグベース30から抜き出して、ワーク10のネジ孔12に順次螺入するマスキング工程(ステップS104)と、
前記ワーク10に対する所定の表面処理後に、前記ワーク10のネジ孔12から前記マスキングプラグ50を抜き出して、前記プラグベース30の所定の保持孔36に保持させるプラグ除去工程(ステップS110)と、
前記マスキングプラグ50を前記プラグベース30ごとショットブラスト処理して、前記マスキングプラグ50上の塗膜を除去するプラグ塗膜除去工程(ステップS112)と、を有することを特徴とするマスキング方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)プラグベース30及びマスキングプラグ50のセットを複数有し、
使用後のマスキングプラグ50に対するプラグ塗膜除去工程(ステップS112)をワーク10に対するショットブラスト処理(ステップS106)と同時に行うことを特徴とする上記(3)記載のマスキング方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るマスキングプラグ、マスキング装置及びマスキング方法は、マスキングプラグのネジ頭部がワークのネジ孔より小さく且つワーク面から大きく突出しないため、マスキングプラグが遮蔽物とならず、ワークに対する均一な表面処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るマスキングプラグを示す図である。
図2】本発明に係るマスキングプラグの作製例を示す図である。
図3】本発明に係るプラグベースを示す図である。
図4】本発明に係るマスキング装置を説明する図である。
図5】本発明に係るマスキング装置を説明する図である。
図6】本発明に係るマスキング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るマスキングプラグ、マスキング装置及びマスキング方法について図面に基づいて説明する。先ず、図1に示す本発明に係るマスキングプラグ50は、ショットブラスト処理や塗装処理等の所定の表面処理を行うワーク10のネジ孔12をマスキングするものであって、ワーク10のネジ孔12と螺合するネジ部52と、このネジ部52を備えた軸部53と、ワーク10のネジ孔12と略同径のキャップ部54と、ワーク10のネジ孔12よりも小径のネジ頭部56と、を有している。また、マスキングプラグ50の軸部53の長さLはワーク10の厚みWと略同等もしくはそれ以上となるように形成する。これにより、図1(b)に示すように、マスキングプラグ50がネジ孔12に設置された状態においてキャップ部54がネジ孔12の一端を塞ぎ、軸部53の軸端53aがネジ孔12の他端を塞ぐ。これにより、ネジ孔12に対するマスキングが行われる。このとき、ネジ頭部56はワーク10に近接し、且つネジ孔12よりも小径のため表面処理時の遮蔽物となることは無い。尚、異なる径のネジ孔12が存在する場合や、異なる厚みWのワーク10が存在する場合、これらのネジ孔12に対応するマスキングプラグ50がそれぞれ個別に作製される。また、ネジ部52は軸部53の全長に亘って形成しても良いが、ロボットアーム部40による抜き差しが楽なように軸部53の中程の領域に設けることが好ましい。また、これらマスキングプラグ50は、図2に示すように、ネジ部52とキャップ部54とが形成された本体部に、所定のネジ頭寸法のネジ14を螺合させ接着剤等で固定することで作製することが好ましい。このとき、ネジ14は後述のロボットアーム部40が保持し易い六角のネジ頭部56を備えた六角ネジを用いることが好ましい。
【0010】
次に、本発明に係るマスキング装置100を構成するプラグベース30に関して図3を用いて説明する。本発明に係るプラグベース30は差込端32と持ち手部34とを備えた板状部材であり、マスキングプラグ50を保持する保持孔36を複数有している。尚、保持孔36はマスキングプラグ50のネジ部52と対応するネジ溝を切り、マスキングプラグ50を螺合によって保持することが好ましい。また、プラグベース30は異なる径のマスキングプラグ50を一枚のプラグベース30で保持できるよう、それぞれのマスキングプラグ50に対応した異なる径の保持孔36a、36bを備えることが好ましい。尚、図3では2つの径の保持孔36a、36bをプラグベース30に設けた例を示している。また、図3では保持孔36a、36bを交互に配列した例を示しているが、この配列には特に限定は無く如何なる配列としても良い。
【0011】
次に、本発明に係るマスキング装置100の構成を図4図5を用いて説明する。本発明に係るマスキング装置100は、図4図5に示すように、プラグベース30と、このプラグベース30に保持されたマスキングプラグ50と、ワーク10を保持する保持機構16と、マスキングプラグ50をワーク10のネジ孔12に抜き差しするロボットアーム部40と、このロボットアーム部40を制御する図示しない制御部と、を有している。
【0012】
次に、マスキング装置100の動作と本発明に係るマスキング方法とを図4図5、及び図6のフローチャートを用いて説明する。先ず、マスキング処理を施すワーク10を保持機構16で保持する。また、複数のマスキングプラグ50を保持したプラグベース30をマスキング装置100にセットする。尚、ここではプラグベース30の差込端32をプラグベースホルダ14の上面に形成した差込スリット15に挿入することで、プラグベース30をマスキング装置100にセットする例を示している。尚、プラグベース30はワーク10の種類に関わらず共用とすることが好ましいが、特殊なワーク10の場合には、これと対応する特別なプラグベース30を別に設けても良い。この場合、制御部は後述のプラグベース情報を複数有し、セットされたプラグベース30と対応したプラグベース情報を選択して取得する。
【0013】
ワーク10がマスキング装置100にセットされると、制御部はセットされたワーク10の種類を特定する(ステップS102)。尚、このワーク10の特定は作業者による入力作業により行っても良いし、工程ラインからの情報伝達により行っても良い。また、マスキング装置100がワーク10の種別を読み取って特定するようにしても良い。そして、セットされたワーク10が特定されると、制御部は特定されたワーク10のネジ孔情報をメモリ等の記録手段から取得する。尚、このネジ孔情報はセットされたワーク10の各ネジ孔12の位置情報と、このネジ孔12に螺入するマスキングプラグ50のプラグ情報とを少なくとも有している。また、制御部はプラグベース情報をメモリ等の記録手段から取得する。尚、このプラグベース情報はプラグベース30内におけるマスキングプラグ50の位置情報、即ち保持孔36a、36bの位置情報と、この保持孔36a、36bに保持されているマスキングプラグ50の種類を示すプラグ情報とを少なくとも有している。尚、同径で軸長L(軸部53の長さL)の異なるマスキングプラグ50が存在する場合、プラグ情報はこの軸長Lの情報も付加したものとなる。
【0014】
ネジ孔情報及びプラグベース情報が読み込まれると、制御部は一番目にマスキングするネジ孔12のプラグ情報を取得する。次に、制御部はこのプラグ情報と対応するマスキングプラグ50のプラグベース30内における位置情報をプラグベース情報から取得する。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、図4に示すように、目的のマスキングプラグ50が保持されているプラグベース30の位置にロボットアーム部40のプラグ保持部42を位置させる。次に、プラグ保持部42は対応するマスキングプラグ50のネジ頭部56を保持する。次に、プラグ保持部42は反時計回りに回転し、マスキングプラグ50をプラグベース30の保持孔36から抜き取る。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、一番目にマスキングするネジ孔12にプラグ保持部42を位置させる。そして、ネジ孔12にマスキングプラグ50のネジ部52を当接させた上で時計回りに回転し、ネジ孔12にマスキングプラグ50を螺入する。これにより、図5に示すように、このネジ孔12に対するマスキングが完了する。一番目のネジ孔12に対するマスキングが終了すると、制御部は次のネジ孔12のプラグ情報を取得し、上記の動作と同様にしてこのネジ孔12に対するマスキングを行う。そして、これらの動作をマスキングを施す全てのネジ孔12に対して行う(ステップS104:マスキング工程)。
【0015】
このようにしてマスキング処理が施されたワーク10は、例えばショットブラスト装置内に搬入され、ここでショットブラスト処理が施される(ステップS106)。このときワーク10のネジ孔12にはマスキングプラグ50が設置されているため、ネジ孔12にはショットブラスト処理は施されず、ネジ孔の寸法精度が悪化することも無い。また、マスキングプラグ50のネジ頭部56はワーク10面から大きく突出しないため、ネジ頭部56がショットの遮蔽物となることは無く、ワーク10に対して均一なショットブラスト処理を行うことができる。
【0016】
ショットブラスト処理が施されたワーク10は、次に塗装ブースに搬入され、ここでスプレー塗装される(ステップS108)。このときもワーク10のネジ孔12にはマスキングプラグ50が設置されているため、ネジ孔12内に塗料が進入することは無い。また、前述のようにマスキングプラグ50のネジ頭部56はワーク10面から大きく突出しないため、ネジ頭部56が塗装時の遮蔽物となることは無く、ワーク10に対する塗装を均一にムラなく行うことができる。
【0017】
塗装処理が完了したワーク10は所定の塗料乾燥工程等を経た後、再度、マスキング装置100にセットされる。また、プラグベースホルダ14には、空もしくは空きスペースを有するプラグベース30がセットされる。ワーク10がマスキング装置100にセットされると、制御部はステップS102と同様にセットされたワーク10の種類を特定し、特定されたワーク10のネジ孔情報とプラグベース情報とを取得する。
【0018】
次に、制御部は一番目にプラグ除去するネジ孔12の位置情報とプラグ情報とを取得する。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、一番目にプラグ除去するネジ孔12にプラグ保持部42を位置させる。次に、プラグ保持部42はネジ孔12に螺入されているマスキングプラグ50のネジ頭部56を保持回転し、マスキングプラグ50をネジ孔12から抜き取る。次に、制御部はこのマスキングプラグ50と対応する空の保持孔36にプラグ保持部42を位置させる。そして、この保持孔36にマスキングプラグ50のネジ部52を当接させた上で回転し、保持孔36にマスキングプラグ50を螺入、保持させる。そして、制御部は上記の動作を全てのネジ孔12のマスキングプラグ50に対して行う(ステップS110:プラグ除去工程)。これにより、ワーク10に設置されたマスキングプラグ50は全て回収される。
【0019】
尚、回収されたマスキングプラグ50はワーク10とともに塗装工程を経ているため、キャップ部54やネジ頭部56等に塗膜が付着している。そして、これらの塗膜はプラグベース30ごとショットブラスト処理を行って除去する(ステップS112:プラグ塗膜除去工程)。尚、マスキングプラグ50に対する塗膜除去をプラグベース30で保持した状態で行うことで、マスキングプラグ50の塗膜除去を一括して効率的に行うことができる。また、この構成では塗膜除去後のプラグベース30をそのままマスキング装置100にセットして、塗膜除去後のマスキングプラグ50を直ちにマスキング処理に用いることができる。このように、マスキングプラグ50をプラグベース30に保持した状態でハンドリングすることで、マスキングプラグ50を極めて効率的に運用することができる。尚、マスキングプラグ50のネジ部52を軸部53の中程の領域に設けた構成では、ネジ部52がプラグベース30から露出せず、ショットブラスト処理によるネジ部52の摩耗を防止することができる。
【0020】
またさらに、このプラグ塗膜除去工程はワーク10に対するショットブラスト処理と同時に行うことが特に好ましい。この構成ではプラグベース30とマスキングプラグ50とを複数セット用意し、先のプラグ除去工程で回収されたマスキングプラグ50と、別セットのマスキングプラグ50でマスキング処理されたワーク10とを一緒にショットブラスト装置内に搬入する。そして、ワーク10に対するショットブラスト処理(ステップS106)とプラグ塗膜除去工程(ステップS112)とを同時に行う。この構成では、プラグ塗膜除去工程のためだけにショットブラスト装置を稼働させる必要が無いため、ショットブラスト装置の稼働率の向上とコスト削減とを図ることができる。
【0021】
以上のように、本発明に係るマスキングプラグ50、マスキング装置100及びマスキング方法は、マスキングプラグ50のネジ頭部56がネジ孔12より小さく且つワーク10面から大きく突出しないため、マスキングプラグ50が遮蔽物とならず、ワーク10に対する均一な表面処理を行うことができる。また、マスキングプラグ50をプラグベース30ごとハンドリングすることで、マスキングプラグ50の効率的な運用が可能となる。またさらに、マスキングプラグ50の塗膜除去とワーク10に対するショットブラスト処理とを同時に行うことで、ショットブラスト装置の稼働率の向上とコスト削減とを図ることができる。
【0022】
尚、本例で示したマスキングプラグ50、マスキング装置100は一例であるから、マスキングプラグ50、プラグベース30、マスキング装置100の形状、寸法、構成、機構、その他は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、ワーク10に対する表面処理はショットブラスト処理、スプレー塗装処理に限らず、ネジ孔12に対するマスキング処理が必要な全ての表面処理に適用が可能である。またさらに、本例で示したマスキング方法は一例であるから、適宜必要な工程を挿入して良い他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ワーク
12 ネジ孔
30 プラグベース
36 保持孔
40 ロボットアーム部
50 マスキングプラグ
52 ネジ部
54 キャップ部
56 ネジ頭部
100 マスキング装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2016年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのネジ孔をマスキングするマスキング装置において、
前記ネジ孔と螺合するネジ部と、前記ネジ孔と略同径のキャップ部と、前記ネジ孔よりも小径のネジ頭部と、を有するマスキングプラグと、
前記マスキングプラグを保持する保持孔を複数有するプラグベースと、
前記マスキングプラグを前記ネジ孔に抜き差しするロボットアーム部と、
前記ロボットアーム部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ワークのネジ孔の位置情報とこのネジ孔と対応するマスキングプラグのプラグ情報とを備えたネジ孔情報と、前記プラグベース内における前記マスキングプラグの位置情報とプラグ情報とを備えたプラグベース情報と、を有し、
前記ロボットアーム部は、前記ネジ孔に対応する前記マスキングプラグを前記プラグベースから選択して抜き出して前記ネジ孔に螺入するとともに、所定の処理が終了した前記ワークから前記マスキングプラグを抜き取って、前記プラグベースの所定の保持孔に保持させること特徴とするマスキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマスキング装置を用いたマスキング方法であって、
ネジ孔情報とプラグベース情報とに基づいて、所定の前記マスキングプラグをプラグベースから抜き出して、ワークのネジ孔に順次螺入するマスキング工程と、
前記ワークに対する所定の表面処理後に、前記ワークのネジ孔から前記マスキングプラグを抜き出して、前記プラグベースの所定の保持孔に保持させるプラグ除去工程と、
前記マスキングプラグを前記プラグベースごとショットブラスト処理して、前記マスキングプラグ上の塗膜を除去するプラグ塗膜除去工程と、
を有することを特徴とするマスキング方法。
【請求項3】
プラグベース及びマスキングプラグのセットを複数有し、
使用後のマスキングプラグに対するプラグ塗膜除去工程をワークに対するショットブラスト処理と同時に行うことを特徴とする請求項2記載のマスキング方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の表面処理の際に、機械部品に形成されたネジ孔を保護するためのマスキング装置及びマスキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、比較的大型の機械部品のバリ取りや塗装等の処理は、機械部品(ワーク)に対するショットブラストやスプレー塗装により行うことが一般的である。尚、ショットブラスト処理とは、ワークの表面に粒状のショットを高速で衝突させてバリ取りや研磨を行うものである。しかしながら、通常、これらワークには他部材との接合に用いるネジ孔が形成されており、このネジ孔が露出した状態でショットブラスト処理を行うとネジ孔が削られて寸法精度が悪化するという問題点がある。また、ネジ孔が露出した状態でスプレー塗装を行うとネジ孔内にも塗料が進入しネジ溝が埋没するという問題点がある。このため、下記[特許文献1]にも示されるように、これらの表面処理を行うワークのネジ孔にはダミーネジを挿入し、ネジ孔に対するマスキング処理を施すことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−287592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、[特許文献1]に示すような通常のダミーネジを完全に締め付けて用いた場合、ダミーネジのネジ頭部に隠れた領域に表面処理が施されないという問題点がある。また、ネジ頭部をワークから浮かせた状態とした場合でも、ネジ頭部が遮蔽物となって均一な塗装や表面処理が行えないという問題点がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ワークに均一な表面処理を施すことが可能なマスキング装置及びマスキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
)ワーク10のネジ孔12をマスキングするマスキング装置において、
前記ネジ孔12と螺合するネジ部52と、前記ネジ孔12と略同径のキャップ部54と、前記ネジ孔12よりも小径のネジ頭部56と、を有するマスキングプラグ50と、前記マスキングプラグ50を保持する保持孔36を複数有するプラグベース30と、前記マスキングプラグ50を前記ネジ孔12に抜き差しするロボットアーム部40と、前記ロボットアーム部40を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ワーク10のネジ孔12の位置情報とこのネジ孔12と対応するマスキングプラグ50のプラグ情報とを備えたネジ孔情報と、前記プラグベース30内における前記マスキングプラグ50の位置情報とプラグ情報とを備えたプラグベース情報とを有し、
前記ロボットアーム部40は、前記ネジ孔12に対応する前記マスキングプラグ50を前記プラグベース30から選択して抜き出して前記ネジ孔12に螺入するとともに、所定の処理が終了した前記ワーク10から前記マスキングプラグ50を抜き取って、前記プラグベース30の所定の保持孔36に保持させること特徴とするマスキング装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
)上記()に記載のマスキング装置100を用いたマスキング方法であって、
ネジ孔情報とプラグベース情報とに基づいて、所定の前記マスキングプラグ50をプラグベース30から抜き出して、ワーク10のネジ孔12に順次螺入するマスキング工程(ステップS104)と、
前記ワーク10に対する所定の表面処理後に、前記ワーク10のネジ孔12から前記マスキングプラグ50を抜き出して、前記プラグベース30の所定の保持孔36に保持させるプラグ除去工程(ステップS110)と、
前記マスキングプラグ50を前記プラグベース30ごとショットブラスト処理して、前記マスキングプラグ50上の塗膜を除去するプラグ塗膜除去工程(ステップS112)と、を有することを特徴とするマスキング方法を提供することにより、上記課題を解決する。
)プラグベース30及びマスキングプラグ50のセットを複数有し、
使用後のマスキングプラグ50に対するプラグ塗膜除去工程(ステップS112)をワーク10に対するショットブラスト処理(ステップS106)と同時に行うことを特徴とする上記()記載のマスキング方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るマスキング装置及びマスキング方法は、マスキングプラグのネジ頭部がワークのネジ孔より小さく且つワーク面から大きく突出しないため、マスキングプラグが遮蔽物とならず、ワークに対する均一な表面処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るマスキングプラグを示す図である。
図2】本発明に係るマスキングプラグの作製例を示す図である。
図3】本発明に係るプラグベースを示す図である。
図4】本発明に係るマスキング装置を説明する図である。
図5】本発明に係るマスキング装置を説明する図である。
図6】本発明に係るマスキング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るマスキング装置及びマスキング方法について図面に基づいて説明する。先ず、図1に示す本発明に係るマスキングプラグ50は、ショットブラスト処理や塗装処理等の所定の表面処理を行うワーク10のネジ孔12をマスキングするものであって、ワーク10のネジ孔12と螺合するネジ部52と、このネジ部52を備えた軸部53と、ワーク10のネジ孔12と略同径のキャップ部54と、ワーク10のネジ孔12よりも小径のネジ頭部56と、を有している。また、マスキングプラグ50の軸部53の長さLはワーク10の厚みWと略同等もしくはそれ以上となるように形成する。これにより、図1(b)に示すように、マスキングプラグ50がネジ孔12に設置された状態においてキャップ部54がネジ孔12の一端を塞ぎ、軸部53の軸端53aがネジ孔12の他端を塞ぐ。これにより、ネジ孔12に対するマスキングが行われる。このとき、ネジ頭部56はワーク10に近接し、且つネジ孔12よりも小径のため表面処理時の遮蔽物となることは無い。尚、異なる径のネジ孔12が存在する場合や、異なる厚みWのワーク10が存在する場合、これらのネジ孔12に対応するマスキングプラグ50がそれぞれ個別に作製される。また、ネジ部52は軸部53の全長に亘って形成しても良いが、ロボットアーム部40による抜き差しが楽なように軸部53の中程の領域に設けることが好ましい。また、これらマスキングプラグ50は、図2に示すように、ネジ部52とキャップ部54とが形成された本体部に、所定のネジ頭寸法のネジ14を螺合させ接着剤等で固定することで作製することが好ましい。このとき、ネジ14は後述のロボットアーム部40が保持し易い六角のネジ頭部56を備えた六角ネジを用いることが好ましい。
【0010】
次に、本発明に係るマスキング装置100を構成するプラグベース30に関して図3を用いて説明する。本発明に係るプラグベース30は差込端32と持ち手部34とを備えた板状部材であり、マスキングプラグ50を保持する保持孔36を複数有している。尚、保持孔36はマスキングプラグ50のネジ部52と対応するネジ溝を切り、マスキングプラグ50を螺合によって保持することが好ましい。また、プラグベース30は異なる径のマスキングプラグ50を一枚のプラグベース30で保持できるよう、それぞれのマスキングプラグ50に対応した異なる径の保持孔36a、36bを備えることが好ましい。尚、図3では2つの径の保持孔36a、36bをプラグベース30に設けた例を示している。また、図3では保持孔36a、36bを交互に配列した例を示しているが、この配列には特に限定は無く如何なる配列としても良い。
【0011】
次に、本発明に係るマスキング装置100の構成を図4図5を用いて説明する。本発明に係るマスキング装置100は、図4図5に示すように、プラグベース30と、このプラグベース30に保持されたマスキングプラグ50と、ワーク10を保持する保持機構16と、マスキングプラグ50をワーク10のネジ孔12に抜き差しするロボットアーム部40と、このロボットアーム部40を制御する図示しない制御部と、を有している。
【0012】
次に、マスキング装置100の動作と本発明に係るマスキング方法とを図4図5、及び図6のフローチャートを用いて説明する。先ず、マスキング処理を施すワーク10を保持機構16で保持する。また、複数のマスキングプラグ50を保持したプラグベース30をマスキング装置100にセットする。尚、ここではプラグベース30の差込端32をプラグベースホルダ14の上面に形成した差込スリット15に挿入することで、プラグベース30をマスキング装置100にセットする例を示している。尚、プラグベース30はワーク10の種類に関わらず共用とすることが好ましいが、特殊なワーク10の場合には、これと対応する特別なプラグベース30を別に設けても良い。この場合、制御部は後述のプラグベース情報を複数有し、セットされたプラグベース30と対応したプラグベース情報を選択して取得する。
【0013】
ワーク10がマスキング装置100にセットされると、制御部はセットされたワーク10の種類を特定する(ステップS102)。尚、このワーク10の特定は作業者による入力作業により行っても良いし、工程ラインからの情報伝達により行っても良い。また、マスキング装置100がワーク10の種別を読み取って特定するようにしても良い。そして、セットされたワーク10が特定されると、制御部は特定されたワーク10のネジ孔情報をメモリ等の記録手段から取得する。尚、このネジ孔情報はセットされたワーク10の各ネジ孔12の位置情報と、このネジ孔12に螺入するマスキングプラグ50のプラグ情報とを少なくとも有している。また、制御部はプラグベース情報をメモリ等の記録手段から取得する。尚、このプラグベース情報はプラグベース30内におけるマスキングプラグ50の位置情報、即ち保持孔36a、36bの位置情報と、この保持孔36a、36bに保持されているマスキングプラグ50の種類を示すプラグ情報とを少なくとも有している。尚、同径で軸長L(軸部53の長さL)の異なるマスキングプラグ50が存在する場合、プラグ情報はこの軸長Lの情報も付加したものとなる。
【0014】
ネジ孔情報及びプラグベース情報が読み込まれると、制御部は一番目にマスキングするネジ孔12のプラグ情報を取得する。次に、制御部はこのプラグ情報と対応するマスキングプラグ50のプラグベース30内における位置情報をプラグベース情報から取得する。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、図4に示すように、目的のマスキングプラグ50が保持されているプラグベース30の位置にロボットアーム部40のプラグ保持部42を位置させる。次に、プラグ保持部42は対応するマスキングプラグ50のネジ頭部56を保持する。次に、プラグ保持部42は反時計回りに回転し、マスキングプラグ50をプラグベース30の保持孔36から抜き取る。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、一番目にマスキングするネジ孔12にプラグ保持部42を位置させる。そして、ネジ孔12にマスキングプラグ50のネジ部52を当接させた上で時計回りに回転し、ネジ孔12にマスキングプラグ50を螺入する。これにより、図5に示すように、このネジ孔12に対するマスキングが完了する。一番目のネジ孔12に対するマスキングが終了すると、制御部は次のネジ孔12のプラグ情報を取得し、上記の動作と同様にしてこのネジ孔12に対するマスキングを行う。そして、これらの動作をマスキングを施す全てのネジ孔12に対して行う(ステップS104:マスキング工程)。
【0015】
このようにしてマスキング処理が施されたワーク10は、例えばショットブラスト装置内に搬入され、ここでショットブラスト処理が施される(ステップS106)。このときワーク10のネジ孔12にはマスキングプラグ50が設置されているため、ネジ孔12にはショットブラスト処理は施されず、ネジ孔の寸法精度が悪化することも無い。また、マスキングプラグ50のネジ頭部56はワーク10面から大きく突出しないため、ネジ頭部56がショットの遮蔽物となることは無く、ワーク10に対して均一なショットブラスト処理を行うことができる。
【0016】
ショットブラスト処理が施されたワーク10は、次に塗装ブースに搬入され、ここでスプレー塗装される(ステップS108)。このときもワーク10のネジ孔12にはマスキングプラグ50が設置されているため、ネジ孔12内に塗料が進入することは無い。また、前述のようにマスキングプラグ50のネジ頭部56はワーク10面から大きく突出しないため、ネジ頭部56が塗装時の遮蔽物となることは無く、ワーク10に対する塗装を均一にムラなく行うことができる。
【0017】
塗装処理が完了したワーク10は所定の塗料乾燥工程等を経た後、再度、マスキング装置100にセットされる。また、プラグベースホルダ14には、空もしくは空きスペースを有するプラグベース30がセットされる。ワーク10がマスキング装置100にセットされると、制御部はステップS102と同様にセットされたワーク10の種類を特定し、特定されたワーク10のネジ孔情報とプラグベース情報とを取得する。
【0018】
次に、制御部は一番目にプラグ除去するネジ孔12の位置情報とプラグ情報とを取得する。次に、制御部はロボットアーム部40を制御して、一番目にプラグ除去するネジ孔12にプラグ保持部42を位置させる。次に、プラグ保持部42はネジ孔12に螺入されているマスキングプラグ50のネジ頭部56を保持回転し、マスキングプラグ50をネジ孔12から抜き取る。次に、制御部はこのマスキングプラグ50と対応する空の保持孔36にプラグ保持部42を位置させる。そして、この保持孔36にマスキングプラグ50のネジ部52を当接させた上で回転し、保持孔36にマスキングプラグ50を螺入、保持させる。そして、制御部は上記の動作を全てのネジ孔12のマスキングプラグ50に対して行う(ステップS110:プラグ除去工程)。これにより、ワーク10に設置されたマスキングプラグ50は全て回収される。
【0019】
尚、回収されたマスキングプラグ50はワーク10とともに塗装工程を経ているため、キャップ部54やネジ頭部56等に塗膜が付着している。そして、これらの塗膜はプラグベース30ごとショットブラスト処理を行って除去する(ステップS112:プラグ塗膜除去工程)。尚、マスキングプラグ50に対する塗膜除去をプラグベース30で保持した状態で行うことで、マスキングプラグ50の塗膜除去を一括して効率的に行うことができる。また、この構成では塗膜除去後のプラグベース30をそのままマスキング装置100にセットして、塗膜除去後のマスキングプラグ50を直ちにマスキング処理に用いることができる。このように、マスキングプラグ50をプラグベース30に保持した状態でハンドリングすることで、マスキングプラグ50を極めて効率的に運用することができる。尚、マスキングプラグ50のネジ部52を軸部53の中程の領域に設けた構成では、ネジ部52がプラグベース30から露出せず、ショットブラスト処理によるネジ部52の摩耗を防止することができる。
【0020】
またさらに、このプラグ塗膜除去工程はワーク10に対するショットブラスト処理と同時に行うことが特に好ましい。この構成ではプラグベース30とマスキングプラグ50とを複数セット用意し、先のプラグ除去工程で回収されたマスキングプラグ50と、別セットのマスキングプラグ50でマスキング処理されたワーク10とを一緒にショットブラスト装置内に搬入する。そして、ワーク10に対するショットブラスト処理(ステップS106)とプラグ塗膜除去工程(ステップS112)とを同時に行う。この構成では、プラグ塗膜除去工程のためだけにショットブラスト装置を稼働させる必要が無いため、ショットブラスト装置の稼働率の向上とコスト削減とを図ることができる。
【0021】
以上のように、本発明に係るマスキング装置100及びマスキング方法は、マスキングプラグ50のネジ頭部56がネジ孔12より小さく且つワーク10面から大きく突出しないため、マスキングプラグ50が遮蔽物とならず、ワーク10に対する均一な表面処理を行うことができる。また、マスキングプラグ50をプラグベース30ごとハンドリングすることで、マスキングプラグ50の効率的な運用が可能となる。またさらに、マスキングプラグ50の塗膜除去とワーク10に対するショットブラスト処理とを同時に行うことで、ショットブラスト装置の稼働率の向上とコスト削減とを図ることができる。
【0022】
尚、本例で示したマスキングプラグ50、マスキング装置100は一例であるから、マスキングプラグ50、プラグベース30、マスキング装置100の形状、寸法、構成、機構、その他は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、ワーク10に対する表面処理はショットブラスト処理、スプレー塗装処理に限らず、ネジ孔12に対するマスキング処理が必要な全ての表面処理に適用が可能である。またさらに、本例で示したマスキング方法は一例であるから、適宜必要な工程を挿入して良い他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ワーク
12 ネジ孔
30 プラグベース
36 保持孔
40 ロボットアーム部
50 マスキングプラグ
52 ネジ部
54 キャップ部
56 ネジ頭部
100 マスキング装置