特開2017-111412(P2017-111412A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-111412(P2017-111412A)
(43)【公開日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】映像表示システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20170526BHJP
   G09F 19/18 20060101ALI20170526BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20170526BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20170526BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20170526BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
   G03B21/60
   G09F19/18 F
   H04N5/74 C
   H04R7/04
   G10K11/16 H
   H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】書面
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-257792(P2015-257792)
(22)【出願日】2015年12月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】藤村 忠正
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 茂
【テーマコード(参考)】
2H021
5C058
5D016
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
2H021BA01
2H021BA27
2H021BA29
5C058BA08
5C058EA02
5C058EA33
5D016AA01
5D061FF02
5D220AA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】日中の野外や明るい照明の下でも、透過度を低下させずに、明度及びコントラストに優れた鮮明な映像を映し出すことのできるスクリーンを備えた、アンビエントディスプレイとして使用可能な映像表示システムを提供する。
【解決手段】映像表示システムは、ダイヤモンド粒子100を含有する基板11からなるスクリーン10と、スクリーン10に映像又は動画を投影する映写装置とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド粒子を含有する基板からなるスクリーンと、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置とを有することを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記基板が板ガラス又は曲面ガラスであることを特徴とする映像表示システム。
【請求項3】
請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記基板が透明又は不透明な高分子樹脂板であることを特徴とする映像表示システム。
【請求項4】
ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなるスクリーンと、前記スクリーンに映像又は動画を映写する映写装置とを有することを特徴とする映像表示システム。
【請求項5】
請求項4に記載の映像表示システムにおいて、前記基板が板ガラス又は曲面ガラスであることを特徴とする映像表示システム。
【請求項6】
請求項4に記載の映像表示システムにおいて、前記基板が透明又は不透明な高分子樹脂板であることを特徴とする映像表示システム。
【請求項7】
請求項5に記載の映像表示システムにおいて、前記ダイヤモンド粒子を含有する層がダイヤモンド粒子を含有するガラスからなることを特徴とする映像表示システム。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の映像表示システムにおいて、前記ダイヤモンド粒子を含有する層がダイヤモンド粒子を含有する高分子樹脂からなることを特徴とする映像表示システム。
【請求項9】
請求項8に記載の映像表示システムにおいて、前記ダイヤモンド粒子を含有する層が除去可能に設けられていることを特徴とする映像表示システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがハードコート層を有することを特徴とする映像表示システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、さらに前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーを有することを特徴とする映像表示システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがタッチセンサー機能を有していることを特徴とする映像表示システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、さらに周辺の音を集音する集音装置と、音の位相を反転させる位相反転器とを有していることを特徴とする映像表示システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、さらに通信機能を有していることを特徴とする映像表示システム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンが電車、自動車、船舶又は飛行機の窓であることを特徴とする映像表示システム。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンが新幹線、地下鉄又は電車の安全柵に設けられた開閉扉の窓であることを特徴とする映像表示システム。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがショーウインドウ、看板、パネル、案内表示板、ケース又は玄関に設けられた案内表示板であることを特徴とする映像表示システム。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがテーブル又はカウンターの天板であることを特徴とする映像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに映像を表示する映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示の分野の中で、液晶プロジェクタに代表される映像表示装置は、低コストで手軽に大画面の映像を得る手段として広く実用され、主に会議、商品発表会というように、多くの人々に同じ画面を見てもらいながらプレゼンテーションを行う場合に使われることが多い。さらに、商品紹介や店舗の宣伝を行う用途として、デジタルサイネージが使用されている。
【0003】
近年、アンビエントディスプレイと呼ばれる、表示デバイスを意識させず、自然に様々な情報をあらゆる面に表示する新たなディスプレイが提唱されている。アンビエントディスプレイとは、例えば、壁やガラス、床、机等の身の回りにある日常品を、必要なときにディスプレイとして使用する方式であり、特に窓ガラス、ショーウインドウ等の透明な面に、その透明性を損なうことなく情報表示することにより新たな価値を提供することが可能となる。
【0004】
例えば、国際公開第2012/114512号(特許文献1)は、光学的特性を変化させ、映像光が投影される部位を含む領域の光学状態を、透明状態から時間又は空間で変調された散乱状態に切り替えることのできるスクリーンを備えた表示装置を開示している。
【0005】
さらに特開2015−79201号(特許文献2)は、投影した映像を反射する反射状態と、投影した映像を透過する透明状態とを、前記スクリーンの全面又は部分的に切り替え可能であるスクリーンを備えた映像表示システムを開示している。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のスクリーンは、透明状態で使用した場合、投影した映像を反射させる能力が低いため、明度及びコントラストの低い映像となってしまい、日中の野外はもちろん、少し明るい照明の下では鮮明な映像を観察できないという問題を有している。このため、透過度を低下させずに明度及びコントラストに優れた鮮明な映像を映し出すことのできるスクリーンの開発が望まれている。
【0007】
一方、特開2012−68580号(特許文献3)は、窓ガラス、ガラスケース、パネル、テーブル、額縁等を振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーと、周辺の音を集音する集音装置とを備え、前記周囲の音を位相反転させて出力することによりノイズキャンセラー効果を発揮することのできる、特定の領域にいる人にだけ音声を伝達する音響装置を開示している。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載された技術を透過型のスクリーンを備えたシステムに適用しようとしても、前記と同様に、明るい照明の下でも鮮明な映像を映し出すことのできるスクリーンが存在しないため、適用できる環境が限られてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2012/114512号
【特許文献2】特開2015−79201号公報
【特許文献3】特開2012−68580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、日中の野外や明るい照明の下でも、透過度を低下させずに、明度及びコントラストに優れた鮮明な映像を映し出すことのできるスクリーンを備えた、アンビエントディスプレイとして使用可能な映像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、投影された映像を高い効率で反射及び散乱することのできるダイヤモンド粒子を有する基板が、高い透過度を有するとともに、明度及びコントラストに優れた鮮明な映像を映し出すことのできるスクリーンとして使用できることを見出し、本発明に想到した。
【0012】
すなわち、本発明の映像表示システムは、ダイヤモンド粒子を含有する基板からなるスクリーンと、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置と、前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーとを有することを特徴とする
【0013】
本発明のもう一つの映像表示システムは、ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなるスクリーンと、前記スクリーンに映像又は動画を映写する映写装置とを有することを特徴とする。
【0014】
前記基板は板ガラス又は曲面ガラスであってもよいし、透明又は不透明な高分子樹脂板であってもよい。
【0015】
前記基板は板ガラス又は曲面ガラスである場合、前記ダイヤモンド粒子を含有する層はダイヤモンド粒子を含有するガラス又は高分子樹脂からなるのが好ましい。
【0016】
前記基板は高分子樹脂板である場合、前記ダイヤモンド粒子を含有する層はダイヤモンド粒子を含有する高分子樹脂からなるのが好ましい。
【0017】
前記ダイヤモンド粒子を含有する層は除去可能に設けられているのが好ましい。
【0018】
前記スクリーンはハードコート層を有するのが好ましい。
【0019】
本発明の映像表示システムは、さらに前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーを有するのが好ましい。
【0020】
前記スクリーンはタッチセンサー機能を有しているのが好ましい。
【0021】
本発明の映像表示システムは、さらに周辺の音を集音する集音装置と、音の位相を反転させる位相反転器とを有しているのが好ましい。
【0022】
本発明の映像表示システムは、さらに通信機能を有しているのが好ましい。
【0023】
本発明の映像表示システムにおいて、前記スクリーンが電車、自動車、船舶又は飛行機の窓であるのが好ましい。
【0024】
本発明の映像表示システムにおいて、前記スクリーンが新幹線、地下鉄又は電車の安全柵に設けられた開閉扉の窓であるのが好ましい。
【0025】
本発明の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがショーウインドウ、看板、パネル、案内表示板、ケース又は玄関に設けられた案内表示板であるのが好ましい。
【0026】
本発明の映像表示システムにおいて、前記スクリーンがテーブル又はカウンターの天板であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の映像表示システムは、ダイヤモンド粒子を使用することにより、高い透過性を保ったまま投影した映像を鮮明に高い明度で映し出すことができるスクリーンを備えているので、前記スクリーンを電車、自動車、船舶、飛行機等の窓ガラス、新幹線、地下鉄、電車の乗降口の扉や安全柵の開閉扉の窓、ショーウインドウ、看板、パネル、案内表示板、ガラスケース、玄関に設けられた案内表示板並びにテーブル、カウンターの透明天板に適用することにより、昼夜問わずどのような環境においても、高いパフォーマンス性に優れた映像表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の映像表示システムの第一の態様を示す模式図である。
図2】本発明の映像表示システムの第二の態様を示す模式図である。
図3】本発明の映像表示システムの第三の態様を示す模式図である。
図4】ダイヤモンド粒子を含有する基板からなるスクリーンの一例を示す模式断面図である。
図5】基板とダイヤモンド粒子を含有する層とを有するスクリーンの一例を示す模式断面図である。
図6】基板とダイヤモンド粒子を含有する層とを有するスクリーンの他の一例を示す模式断面図である。
図7】ダイヤモンド粒子を含有する基板からなるスクリーン及び基板とダイヤモンド粒子を含有する層とを有するスクリーンにハードコート層を設けた例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1)全体構成
本発明の映像表示システムの第一の態様は、図1に示すように、スクリーン1と、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置2とを有し、前記スクリーン1は、ダイヤモンド粒子を含有する基板、又はダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなる。ダイヤモンドは2.4という高い屈折率を有するため良好な光散乱体として働き、ミー散乱により高い散乱効果を発揮する。そのため、透明な基板を用いた透過型スクリーンであっても明度及びコントラストの高い、鮮明な映像を映し出すことが可能となる。
【0030】
本発明の映像表示システムの第二の態様は、図2に示すように、スクリーン1と、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置2と、前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカー3とを有し、前記スクリーン1は、ダイヤモンド粒子を含有する基板、又はダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなる。
【0031】
本発明の映像表示システムの第三の態様は、図2に示すように、スクリーン1と、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置2と、前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカー3と、周辺の音を集音する集音装置4と、音の位相を反転させる位相反転器(図示せず)とを有し、前記スクリーン1は、ダイヤモンド粒子を含有する基板、又はダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなる。
【0032】
本発明の映像表示システムは、さらに通信機能を有していても良い。通信機能を有することにより、LAN回線等を通じて配信された画像及び動画を投影することや、ユーザーの入力した各種情報をサーバーに送信し集計することなどが可能となる。
【0033】
(2)スクリーン
本発明の映像表示システムで用いるスクリーンは、図4に示すように、ダイヤモンド粒子100を含有する基板11からなるスクリーン10であってもよいし、ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなるスクリーンであってもよい。ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなるスクリーンは、図5に示すように、基板21上にダイヤモンド粒子100を含有する層22が設けられたスクリーン20、又は図6に示すように、基板31と基板31との間にダイヤモンド粒子100を含有する層32が挟まれたスクリーン30であるのが好ましい。ダイヤモンド粒子100を含有する層22及びダイヤモンド粒子100を含有する層32は、それぞれ基板21及び基板31と直接接するように設けられていても良いし、接着層又はその他の層(図示せず)を介して設けられていても良い。
【0034】
前述したように、前記スクリーンは、ダイヤモンド粒子が高い散乱効果を発揮する光散乱体として働き映像を映し出すため、ダイヤモンド粒子がより高い濃度で、より薄い厚さで配置されているのが好ましい。ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板からなるスクリーンの場合、基板の厚さに関わらず、ダイヤモンド粒子を含有する層の厚さを調節できるので、高い濃度で薄い層を有するスクリーンを容易に設計することができる。またダイヤモンド粒子を含有する基板からなるスクリーンの場合、基板中に均一にダイヤモンド粒子を存在させるよりも、表面近くに多く存在する様にするのが好ましく、また基板表面にダイヤモンド粒子の一部が飛び出しているような状態で存在させるのが好ましい。
【0035】
本発明の映像表示システムには、図7(a)及び図7(b)に示すように、さらにその表面にハードコート層43,53を有してなるスクリーン40,50を用いてもよい。またハードコート層にダイヤモンド粒子を含有させても良いし、ダイヤモンド粒子を含有する層をハードコート層としても良い。
【0036】
本発明の映像表示システムで用いるスクリーンは、透明な基板を用いたスクリーンで構成した場合にその効果をより発揮するが、もちろん不透明な基板を用いたスクリーンで構成しても良い。透明な基板を用いたスクリーンの場合、反射型スクリーンとして使用(投影側から観察)しても良いし、透過型スクリーン(投影側の反対側から観察)として使用しても良い。不透明な基板としては、結晶性の高分子、発泡性の高分子、着色されたガラス又は高分子、すりガラス等の不透明な高分子樹脂又はガラスを用いることができる。またこれらの一般的な基板に限らず、例えば、部屋の壁、建物の壁、車、電車、飛行機等のボディ等を基板として、ダイヤモンド粒子を含有する層を設けてスクリーンとすることも可能である。
【0037】
(i)ダイヤモンド粒子を含有する基板
基板はガラス又は高分子樹脂の板状からなるのが好ましい。これらの板状の基板は、平面状であっても良いし、曲面状であっても良い。ガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスが実用的であり、特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスが好ましい。
【0038】
高分子樹脂としては可視光の透過性に優れたものが好ましく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0039】
ダイヤモンド粒子は、天然ダイヤモンドの粒子又は人工ダイヤモンドの粒子を用いることができる。人工ダイヤモンドとしては、例えば、爆射法で得られたグラファイト相を有するナノダイヤモンドを酸化処理して得られるものが好ましい。爆射法で得られたナノダイヤモンド(グラファイト相を有するナノダイヤモンド)は、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、そのため黒く着色しておりスクリーンにおける光散乱体として用いるには好ましくない。このため酸化処理を施すことにより、グラファイト相がほとんど除去されたダイヤモンド粒子とするのが好ましい。
【0040】
溶剤等との親和性を高めるため、ダイヤモンド粒子の表面をケイ素又はフッ素で修飾して用いても良い。特にダイヤモンド粒子をフッ素処理して得られたフッ素化ダイヤモンド粒子は、高分子樹脂への分散性に優れており、前記光散乱体として好適である。
【0041】
ダイヤモンド粒子は、比重が3.38g/cmより大きいものであるのが好ましく、3.5g/cm以下であるのが好ましい。爆射法で得られたダイヤモンドは、1〜10nm程度の径を有するナノサイズのダイヤモンドが凝集したメジアン径10〜250nm(動的光散乱法)の粒子であるので、光散乱体として使用する場合、さらに凝集させて使用するのが好ましい。
【0042】
ダイヤモンド粒子のメジアン径は、0.01〜1μmであるのが好ましい。ダイヤモンド粒子のメジアン径が可視光の波長と同等以上になると前方散乱S(入射光に対してスクリーンの反対側で起こる散乱)が著しく強くなり、透過型スクリーンとして構成した場合、透過してくる光が滲んでしまう。従って、前記ダイヤモンド粒子のメジアン径は1μm以下であり、400nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましい。ダイヤモンド粒子のメジアン径が0.01μmより小さくなると後方散乱S(入射光に対してスクリーンの手前側で起こる散乱)がほとんど起こらなくなり、透過型スクリーンの散乱反射性が低下する。ダイヤモンド粒子のメジアン径は30nm以上であるのが好ましい。
【0043】
(ii)ダイヤモンド粒子を含有する層を有する基板
基板及びダイヤモンド粒子は、前記ダイヤモンド粒子を含有する基板と同様のものを使用できるので、ここでは説明を省略する。
【0044】
ダイヤモンド粒子を含有する層は、前記基板に用いることのできる高分子樹脂で形成するのが好ましい。基板及びダイヤモンド粒子を含有する層の両方を高分子樹脂で構成する場合、それらの樹脂は同じであっても異なっていてもよい。ダイヤモンド粒子を含有する層の厚みは、特に限定されないが、0.5〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのがより好ましく、2〜200μmであるのが最も好ましい。0.5μm未満の場合は十分な反射像が得られなくなり、1000μmを越えると像がぼけてしまう。
【0045】
ダイヤモンド粒子を含有する層は、ダイヤモンド粒子を含有する樹脂溶液を基板上に塗装することにより形成しても良いし、あらかじめ作製したダイヤモンド粒子を含有する樹脂からなるシートを基板上に貼り付けて形成しても良い。また、密着性を改良するために、中間層を基板上に設けた後、ダイヤモンド粒子を含有する層を設けても良い。塗装によりダイヤモンド粒子を含有する層を形成する場合、熱又はUV硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。塗装方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等が挙げられる。
【0046】
ダイヤモンド粒子を含有する層は、除去可能に設けられていてもよい。例えば、普段はショーウインドウとして使用している板ガラスに、例えば何かのイベントのために、一時的にスプレーコート等の方法によりダイヤモンド粒子を含有する層を設けて透明スクリーンとし、本発明の映像表示システムを構成し、そのイベント終了後には溶剤等によりショーウインドウ上に設けたダイヤモンド粒子を含有する層を拭き取るといった使用方法が可能である。
【0047】
(iii)ハードコート層
スクリーンには、さらにハードコート層を設けても良い。ハードコート層は、ハードコート剤をダイヤモンド粒子を含有する層の上に、塗装することにより形成する。密着性を改良するために、中間層をダイヤモンド粒子を含有する層上に設けた後、ハードコート剤を塗装してもよい。塗装方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法が挙げられる。
【0048】
(iv)タッチセンサー
スクリーンは、さらにタッチセンサー機能を有していてもよい。タッチセンサー機能を有していることにより、情報を一方的に提供するだけでなく、ユーザーの意志で情報の選択を行うことができ、さらにユーザーからの情報入力等が可能となる。
【0049】
(3)映写装置
本発明の映像表示システムは、画像、動画等を投影するための映写装置2を有する。映写装置2は、ブルーレイディスク(BD)、DVD等のメディアに保存されたデータ又はLAN回線によって配信されたデータを、映像出力部で処理し、画像及び動画にしてスクリーンに投影する。なお映像出力部から映写装置2に送られる電気信号は、有線で送信しても良いし、無線装置によって送信しても良い。
【0050】
(4)振動スピーカー
本発明の映像表示システムは、さらにスクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーを有するのが好ましい。振動スピーカー3は、音声出力部から出力される電気信号を振動に変換し、振動体を振動させて音を発生させる電磁素子や圧電素子などで形成された振動素子を備え、スクリーン(窓ガラス、ショーウインドウ、看板、パネル等)に取り付けることによりスクリーンをスピーカーとして利用する装置である。なお音声出力部から振動スピーカー3に送られる電気信号は、有線で送信しても良いし、無線装置によって送信しても良い。
【0051】
(5)集音装置及び位相反転器
本発明の映像表示システムは、さらに周囲の音を集める集音マイクからなる集音装置4を有するのが好ましい。集音マイクで集めた音を音声入力部を介してシステム制御部に入力し、システム制御部に含まれる音の位相を反転させる機能を備えた位相反転器で、集めた音の位相を反転させた逆相ノイズを発生させ、音声出力部を介して振動スピーカー3から出力することによって、周囲の音を逆相ノイズで打ち消すことができる。すなわち、ノイズキャンセラーの効果を発揮させることにより、振動スピーカーからの音楽、音声、効果音などをより鮮明に視聴者に聴かせることができる。なお集音装置4から音声入力部に入力する信号は、有線で送信されても良いし、無線装置によって送信されても良い。
【0052】
このように、周囲の音を逆相ノイズで打ち消すことにより、振動スピーカー3の設置されたスクリーン(窓ガラス、ショーウインドウ、看板、パネル等)の前の限られた領域の中のみ音楽、音声、効果音などが良く聞こえ、その領域を外れた位置では聞こえないという指向性を持った音響効果(音響マスキング)を演出することができる。
【0053】
例えば、店舗や美術館の展示物のガラスケースやデパートのショーウインドウなどに振動スピーカー3を設置することで、展示用ガラスケースやショーウインドウの前に立ち止まっている人々にのみ飾られた作品や商品の案内を、人が語りかける程度の音量で伝達することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・スクリーン
2・・・映写装置
3・・・振動スピーカー
4・・・集音装置
100・・・ダイヤモンド粒子
11,21,31,41,51・・・基板
22,32,52・・・ダイヤモンド粒子を含有する層
10,20,30,40,50・・・スクリーン
43,53・・・ハードコート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7