【解決手段】制御部は、搬送ロボット10を駆動させる駆動処理において、少なくとも駆動部(昇降駆動部、回転駆動部及びアーム回転駆動部)によってアーム部11を駆動させるとき、搬送ロボット10を、搬送ロボット10の駆動部(モータ、シャフト等)が外部から封止されない非封止状態(アームベース11bの下端がOリング15aと接触しない状態、且つ、中空Oリング15bが膨張せず、シャフト11S1〜11S3の周囲空間を密閉しない状態)に維持する一方、搬送空間にガスを供給するガス供給処理の間、搬送ロボット10を、搬送ロボット10の駆動部が外部から封止される封止状態(アームベース11bの下端がOリング15aと接触した状態、且つ、中空Oリング15bが膨張し、シャフト11S1〜11S3の周囲を封止した状態)に維持する。
搬送物を搬送するための搬送ロボットであって、前記搬送物を保持するためのアームを有するアーム部と、前記アーム部を駆動させるための駆動部とを有する搬送ロボットと、
前記搬送ロボットが配置される搬送空間と、
前記搬送ロボットの前記駆動部に対して腐食性を有するガスを前記搬送空間に供給するガス供給部と、
前記搬送ロボット及び前記ガス供給部を制御する制御部とを備え、
前記搬送ロボットは、前記アーム部における前記駆動部によって駆動される駆動部分と前記駆動部分に対向する部材との間に介在することで前記駆動部を前記搬送ロボットの外部から封止することが可能な封止部材を有し、前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止される封止状態と前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止されない非封止状態とを選択的に取り、
前記制御部は、前記搬送ロボットを駆動させる駆動処理と、前記搬送空間に前記ガスを供給するガス供給処理とを実行し、前記駆動処理において少なくとも前記駆動部によって前記アーム部を駆動させるとき、前記搬送ロボットを前記非封止状態に維持し、前記ガス供給処理の間、前記搬送ロボットを前記封止状態に維持することを特徴とする、搬送装置。
搬送物を搬送するための搬送ロボットであって、前記搬送物を保持するためのアームを有するアーム部と、前記アーム部を駆動させるための駆動部とを有する搬送ロボットと、前記搬送ロボットが配置される搬送空間と、前記搬送ロボットの前記駆動部に対して腐食性を有するガスを前記搬送空間に供給するガス供給部とを備え、前記搬送ロボットは、前記アーム部における前記駆動部によって駆動される駆動部分と前記駆動部分に対向する部材との間に介在することで前記駆動部を前記搬送ロボットの外部から封止することが可能な封止部材を有し、前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止される封止状態と前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止されない非封止状態とを選択的に取る、搬送装置の制御方法において、
前記搬送ロボットを駆動させる駆動ステップと、
前記搬送空間に前記ガスを供給するガス供給ステップとを備え、
前記駆動ステップにおいて少なくとも前記駆動部によって前記アーム部を駆動させるとき、前記搬送ロボットを前記非封止状態に維持し、
前記ガス供給ステップの間、前記搬送ロボットを前記封止状態に維持することを特徴とする、制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送ロボットが配置される搬送空間の環境を整える等の目的で、搬送空間にガス(例えば、過酸化水素ガス等の滅菌ガス)を供給する技術が知られている。搬送空間に供給されるガスが搬送ロボットの駆動部(モータ、シャフト等)に対して腐食性を有する場合において、駆動部の腐食を防止するため、特許文献1のように封止部材を設けることが考えられる。しかしながら、この場合、搬送ロボットの駆動時(アーム部の回転時や昇降時)に、封止部材がその周囲の部材と摺接すること等により、封止部材が摩耗し、封止機能の劣化やパーティクルの発生等の問題が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、封止部材の摩耗を抑制しつつ搬送ロボットの駆動部の腐食を防止することが可能な搬送装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によると、搬送物を搬送するための搬送ロボットであって、前記搬送物を保持するためのアームを有するアーム部と、前記アーム部を駆動させるための駆動部とを有する搬送ロボットと、前記搬送ロボットが配置される搬送空間と、前記搬送ロボットの前記駆動部に対して腐食性を有するガスを前記搬送空間に供給するガス供給部と、前記搬送ロボット及び前記ガス供給部を制御する制御部とを備え、前記搬送ロボットは、前記アーム部における前記駆動部によって駆動される駆動部分と前記駆動部分に対向する部材との間に介在することで前記駆動部を前記搬送ロボットの外部から封止することが可能な封止部材を有し、前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止される封止状態と前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止されない非封止状態とを選択的に取り、前記制御部は、前記搬送ロボットを駆動させる駆動処理と、前記搬送空間に前記ガスを供給するガス供給処理とを実行し、前記駆動処理において少なくとも前記駆動部によって前記アーム部を駆動させるとき、前記搬送ロボットを前記非封止状態に維持し、前記ガス供給処理の間、前記搬送ロボットを前記封止状態に維持することを特徴とする、搬送装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によると、搬送物を搬送するための搬送ロボットであって、前記搬送物を保持するためのアームを有するアーム部と、前記アーム部を駆動させるための駆動部とを有する搬送ロボットと、前記搬送ロボットが配置される搬送空間と、前記搬送ロボットの前記駆動部に対して腐食性を有するガスを前記搬送空間に供給するガス供給部とを備え、前記搬送ロボットは、前記アーム部における前記駆動部によって駆動される駆動部分と前記駆動部分に対向する部材との間に介在することで前記駆動部を前記搬送ロボットの外部から封止することが可能な封止部材を有し、前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止される封止状態と前記封止部材によって前記駆動部が前記外部から封止されない非封止状態とを選択的に取る、搬送装置の制御方法において、前記搬送ロボットを駆動させる駆動ステップと、前記搬送空間に前記ガスを供給するガス供給ステップとを備え、前記駆動ステップにおいて少なくとも前記駆動部によって前記アーム部を駆動させるとき、前記搬送ロボットを前記非封止状態に維持し、前記ガス供給ステップの間、前記搬送ロボットを前記封止状態に維持することを特徴とする、制御方法が提供される。
【0008】
第1及び第2観点によれば、駆動処理(駆動ステップ)において少なくとも駆動部によってアーム部を駆動させるときは搬送ロボットを非封止状態に維持する一方、ガス供給処理(ガス供給ステップ)の間は搬送ロボットを封止状態に維持する。これにより、封止部材の摩耗を抑制しつつ、搬送ロボットの駆動部の腐食を防止することができる。
【0009】
前記搬送ロボットは、前記アーム部を支持する支持部を有し、前記駆動部は、前記支持部に対して前記アーム部を昇降させるための昇降駆動部を含み、前記封止部材は、前記昇降駆動部の駆動により前記アーム部が前記支持部に対して最も近くに配置されたときに前記アーム部と前記支持部との間に介在する位置に設けられてよい。この場合、アーム部の昇降時に生じ得る封止部材の摩耗を抑制することができる。また、封止状態のときの搬送ロボットの昇降方向のサイズを小さくすることができる。さらに、封止状態のときの支持部の内部空間を小さくすることができるため、搬送ロボットの駆動時に搬送空間に排出される支持部の内部空間の非滅菌ガスの量を少なくすることができる。
【0010】
前記搬送ロボットは、前記アーム部を支持する支持部を有し、前記駆動部は、前記支持部に対して前記アーム部を昇降させるための昇降駆動部を含み、前記封止部材は、前記昇降駆動部の駆動により前記アーム部が前記支持部に対して最も遠くに配置されたときに前記アーム部と前記支持部との間に介在する位置に設けられてよい。この場合、アーム部の昇降時に生じ得る封止部材の摩耗を抑制することができる。また、支持部の外面においてガスに晒される面積が大きくなり、支持部の外面に対する広範囲の滅菌を行うことができる。
【0011】
前記搬送ロボットは、前記アーム部を支持する支持部を有し、前記駆動部は、前記支持部に対して前記アーム部を回転させるための回転駆動部を含んでよい。この場合、アーム部の回転時に生じ得る封止部材の摩耗を抑制することができる。
【0012】
前記アーム部は、前記アームと、前記アームを支持するアームベースとを有し、前記駆動部は、前記アームベースに対して前記アームを回転させるためのアーム回転駆動部を含み、前記封止部材は、前記アーム回転駆動部に含まれるアームシャフトであって前記アームの回転中心を構成するアームシャフトの周囲に設けられた中空部材を含み、前記中空部材の中空部に圧力を供給するための圧力供給部をさらに備え、前記制御部は、前記中空部に圧力を供給するよう前記圧力供給部を制御することで、前記搬送ロボットを前記非封止状態から前記封止状態に切り換えてよい。この場合、比較的簡単な構成で上記効果(封止部材の摩耗を抑制しつつ搬送ロボットの駆動部の腐食を防止することができるという効果)を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動処理(駆動ステップ)において少なくとも駆動部によってアーム部を駆動させるときは搬送ロボットを非封止状態に維持する一方、ガス供給処理(ガス供給ステップ)の間は搬送ロボットを封止状態に維持することで、封止部材の摩耗を抑制しつつ搬送ロボットの駆動部の腐食を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る搬送装置1は、細胞の培養や試験、基板(例えば、半導体ウェハ、液晶ディスプレイ)の処理等に用いられるものであり、
図1に示すように、搬送ロボット10と、搬送ロボット10が配置される搬送空間20xを画定する筐体20とを有する。搬送装置1は、さらに、
図6に示すように、搬送空間20xにガス(例えば、過酸化水素ガス等の滅菌ガス)を供給するガス供給部40と、搬送ロボット10及びガス供給部40を制御する制御部100とを有する。ガス供給部40は、ガスタンク(図示略)に貯留されたガスを搬送空間20xに供給するためのポンプ等を含む。
【0016】
筐体20は、鉛直方向に延在した側壁20a〜20d(
図1参照)と、水平方向に延在した下壁及び上壁(図示略)とを有する。一対の側壁20a,20bは、搬送空間20xを挟んで対向し、且つ、それぞれ搬送ロボット10が走行する方向(水平面に沿った方向であり、以下、「走行方向」という。)に延在している。一対の側壁20c,20dは、搬送空間20xを挟んで対向し、且つ、それぞれ鉛直方向と走行方向との両方と直交する方向(以下、「直交方向」という。)に延在している。
【0017】
搬送空間20xの周辺には、搬送ロボット10による搬送物(細胞が収容された容器、基板等)の搬送先となる複数の周辺空間50が配置されている。本実施形態では、一対の側壁20a,20bに対してそれぞれ4つの周辺空間50が対向するように配置されている。搬送空間20xは、一対の側壁20a,20bのそれぞれに形成された4つの連通口21を介して、各周辺空間50と連通している。一対の側壁20a,20bの一方(側壁20a)の内側面には、搬送ロボット10をガイドするための走行方向に延在したガイド部材30が設けられている。
【0018】
搬送ロボット10は、
図2〜
図5に示すように、搬送物を保持するためのアーム11a及びアーム11aを支持するアームベース11bを有するアーム部11と、アーム部11を昇降可能且つ回転可能に支持する支持部12と、支持部12をアーム部11と共に走行方向に走行させるための走行モータ12M1と、支持部12に対してアーム部11を昇降させるための昇降駆動部(昇降モータ12M2及び昇降機構13)と、支持部12に対してアーム部11を回転させるための回転駆動部(回転モータ12M3、シャフト12S等)と、アームベース11bに対してアーム11aを回転させるためアーム回転駆動部(アームモータ11M、アームシャフト11S1〜11S3等)とを有する。
【0019】
アーム11aは、
図2〜
図5に示すように、互いに回転可能に連結された3つのアーム要素11a1〜11a3と、搬送物が載置されるプレート11xとを含む。アーム要素11a1は、一端がアームベース11bの上面に取り付けられており、当該一端を通って鉛直方向に延在したアーム軸線11ax(
図3(a),(b)及び
図4(a)参照)を中心として、アームベース11bに対して回転可能である。アーム要素11a2は、一端がアーム要素11a1の他端の上面に取り付けられており、当該一端を通って鉛直方向に延在した軸線を中心として、アーム要素11a1に対して回転可能である。アーム要素11a3は、一端がアーム要素11a2の他端の上面に取り付けられており、当該一端を通って鉛直方向に延在した軸線を中心として、アーム要素11a2に対して回転可能である。プレート11xは、アーム要素11a3の他端の側面に固定されている。
【0020】
アーム要素11a1の一端の下方におけるアームベース11bの内部に、減速機11R付きのアームモータ11Mが配置されている(
図5(a)参照)。また、アーム要素11a1の一端及び他端のそれぞれにプーリ11P1,11P2が配置され、プーリ11P1,11P2にベルト11B1が巻回され、アーム要素11a2の一端及び他端のそれぞれにプーリ11P3,11P4が配置され、プーリ11P3,11P4にベルト11B2が巻回され、プーリ11P1がアームモータ11Mの駆動軸(アームシャフト11S1)に固定され、プーリ11P2がアームシャフト11S2を介してプーリ11P3に固定され、プーリ11P4がアームシャフト11S3を介してアーム要素11a3の一端に固定されている。
【0021】
アームモータ11Mの駆動力がアーム要素11a1〜11a3に順次伝達され、各アーム要素11a1〜11a3が回転することで、アーム11aの伸縮動作が実現される(
図3(a),(b)参照)。搬送ロボット10を連通口21と対向させた状態でアーム11aを伸長させることで、プレート11xが連通口21を通過し、周辺空間50に搬送物を搬送することができる。
【0022】
アームベース11bは、
図4(a)に示すように、アーム11aと支持部12との間に介在し、アーム11aと共に昇降可能且つ回転可能に支持部12に支持されている。アーム部11は、プレート11xが連通口21の鉛直方向の範囲内となるように昇降する。
【0023】
アームベース11bは、回転モータ12M3の駆動により、ベース軸線11bxを中心として支持部12に対して回転する。回転モータ12M3は、アームベース11b及び支持部12の内部であって、アームベース11bにおける水平面の中央に配置されている。ベース軸線11bxは、アームベース11bにおける水平面の中央において鉛直方向に延在している。また、
図5(a)に示すように、回転モータ12M3は減速機12R付きであり、回転モータ12M3の駆動軸(シャフト12S)がアームベース11bに固定されている。
【0024】
各アームシャフト11S1〜11S3の周囲には、
図5(a)に示すように、中空Oリング15bが設けられている。中空Oリング15bは、ゴム等の弾性材料からなる中空部を有する環状の部材であり、制御部100の制御によりインフレータ15bx(
図6参照)が駆動すると、中空部に圧力が供給され、膨張する(
図5(b),(c)参照)。これにより、アームシャフト11S1〜11S3の周囲空間が密閉され、アーム回転駆動部(アームモータ11M、アームシャフト11S1〜11S3、プーリ11P1〜11P4、ベルト11B1,11B2等)が搬送ロボット10の外部から封止される。中空Oリング15bは本発明に係る「中空部材」に該当し、インフレータ15bxは本発明に係る「圧力供給部」に該当する。即ち、搬送ロボット10は、アーム部11における駆動部(アーム回転駆動部)によって駆動される駆動部分(アームシャフト11S1〜11S3)と当該駆動部分に対向する部材との間に介在することでアーム回転駆動部を搬送ロボット10の外部から封止することが可能な封止部材(中空Oリング15b)を有し、封止部材(中空Oリング15b)によってアーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止される封止状態(
図5(c)に示す状態)と、封止部材(中空Oリング15b)によってアーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されない非封止状態(
図5(b)に示す状態)とを選択的に取り得る。
図5(b)に示す状態において、中空Oリング15bは膨張しておらず、アームシャフト11S1〜11S3の周囲空間が密閉されておらず、アーム回転駆動部は搬送ロボット10の外部から封止されていない。
【0025】
支持部12には、
図4(a)に示すように、昇降機構13が設けられている。昇降機構13は、プーリ13p、プーリ13pと昇降モータ12M2とに巻回されたベルト(図示略)、プーリ13pの回転軸に固定され且つ鉛直方向に延在したボールねじ13x、ボールねじ13xの周面に形成された雄ねじ部に噛み合う雌螺子部が内周面に形成された筒部13y、及び、筒部13yとアームベース11bとを連結する連結部13zを含む。昇降モータ12M2の駆動により、プーリ13p及びボールねじ13xが回転し、連結部13zが昇降するのに伴い、アーム部11が昇降する。
【0026】
支持部12の上部の周囲(アームベース11bの下端と鉛直方向に対向する部分)には、Oリング15aが設けられている(
図4(a),(b)及び
図5(a)参照)。Oリング15aは、ゴム等の弾性材料からなる環状の部材であり、昇降駆動部(昇降モータ12M2及び昇降機構13)の駆動によりアーム部11が最も下方(支持部12に対して最も近く)に配置されたときに、アーム部11と支持部12との間に介在する。アーム部11が最も下方に配置されたとき、アームベース11bと支持部12との間にOリング15aが介在し、昇降駆動部(昇降モータ12M2及び昇降機構13)と回転駆動部(回転モータ12M3、シャフト12S等)とが搬送ロボット10の外部から封止される。即ち、搬送ロボット10は、アーム部11における駆動部(昇降駆動部及び回転駆動部)によって駆動される駆動部分(アームベース11b)と当該駆動部分に対向する部材との間に介在することで昇降駆動部及び回転駆動部を搬送ロボット10の外部から封止することが可能な封止部材(Oリング15a)を有し、封止部材(Oリング15a)によって昇降駆動部及び回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止される封止状態(
図4(a),(b)及び
図5(a)に示す状態)と、封止部材(Oリング15a)によって昇降駆動部及び回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されない非封止状態(
図4(a),(b)及び
図5(a)に示す状態よりもアーム部11が上方に位置する状態)とを選択的に取り得る。
【0027】
支持部12には、さらに、ガイド部材30のラックと噛合するピニオン(図示略)が設けられている。走行モータ12M1の駆動によってピニオンが回転し、ピニオンがラック上を移動することで、搬送ロボット10が走行方向に移動する。
【0028】
次いで、
図7を参照し、制御部100による制御内容について説明する。
【0029】
制御部100は、先ず、外部からの指令に基づき、搬送ロボット10を駆動させる(S1:駆動処理・駆動ステップ)。S1において、制御部100は、搬送ロボット10の走行、昇降及び/又は回転が実現されるよう、走行モータ12M1、昇降モータ12M2、回転モータ12M3及びアームモータ11Mを制御する。
【0030】
なお、S1において搬送ロボット10が搬送空間20x内で駆動する間、搬送空間20x内の雰囲気は清浄に維持されている。
【0031】
S1の間、制御部100は、搬送ロボット10を非封止状態(封止部材(Oリング15a)によって昇降駆動部及び回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されず、且つ、封止部材(中空Oリング15b)によってアーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されない状態)に維持する。即ち、アームベース11bの下端がOリング15aと接触しない範囲でアーム部11を昇降させ、且つ、中空Oリング15bの中空部に圧力を供給せず、中空Oリング15bを
図5(b)の状態に維持する。
【0032】
S1の後、制御部100は、外部からガス供給指令を受信したか否かを判断する(S2)。ガス供給指令を受信していないと判断した場合(S2:NO)、制御部100は、S2の処理を繰り返す。ガス供給指令を受信したと判断した場合(S2:YES)、制御部100は、昇降モータ12M2、回転モータ12M3及びアームモータ11Mの駆動を停止させることで搬送ロボット10の昇降及び回転を停止させた後、走行モータ12M1を駆動することで搬送ロボット10を搬送空間20xに定められた待機位置に移動させる(S3)。
【0033】
S3の後、制御部100は、搬送ロボット10を非封止状態(封止部材(Oリング15a)によって昇降駆動部及び回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されず、且つ、封止部材(中空Oリング15b)によってアーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止されない状態)から封止状態(封止部材(Oリング15a)によって昇降駆動部及び回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止され、且つ、封止部材(中空Oリング15b)によってアーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止される状態)に切り換える(S4)。S4において、制御部100は、昇降モータ12M2を駆動することでアーム部11を最も下方に配置して、アームベース11bと支持部12との間をOリング15aによって封止し(
図4(a),(b)及び
図5(a)参照)、且つ、インフレータ15bxを駆動することで、中空Oリング15bの中空部に圧力を供給して中空Oリング15bを膨張させ、アームシャフト11S1〜11S3の周囲空間を密閉する(
図5(c)参照)。
【0034】
S4の後、制御部100は、搬送ロボット10の駆動を停止させた状態で、ガス供給部40を駆動させ、搬送空間20xにガスを供給する(S5:ガス供給処理・ガス供給ステップ)。当該ガスは、搬送ロボット10の駆動部(昇降駆動部、回転駆動部及びアーム回転駆動部)に対して腐食性を有するガス(例えば、過酸化水素ガス)である。
【0035】
S5の間、制御部100は、搬送ロボット10を封止状態に維持する。即ち、アームベース11bの下端がOリング15aと接触して支持部12とアームベース11bとの間にOリング15aが介在し、Oリング15aによって昇降駆動部及び回転駆動部が外部から封止された状態(
図4(a),(b)及び
図5(a)参照)と、中空Oリング15bが膨張してアームシャフト11S1〜11S3の周囲空間が密閉され、アーム回転駆動部が搬送ロボット10の外部から封止された状態(
図5(c)参照)とを維持する。
【0036】
S5の後、制御部100は、当該ルーチンを終了する。
【0037】
以上に述べたように、本実施形態によれば、S1(駆動処理・駆動ステップ)において少なくとも駆動部(昇降駆動部、回転駆動部及びアーム回転駆動部)によってアーム部11を駆動させるときには搬送ロボット10を非封止状態に維持する一方、S5(ガス供給処理・ガス供給ステップ)の間は搬送ロボット10を封止状態に維持する。これにより、Oリング15a,15bの摩耗を抑制しつつ、搬送ロボット10の駆動部の腐食を防止することができる。
【0038】
駆動部は、支持部12に対してアーム部11を昇降させるための昇降駆動部(昇降モータ12M2及び昇降機構13)を含み、Oリング15aは、昇降駆動部の駆動によりアーム部11が最も下方(支持部12に対して最も近く)に配置されたときに、アーム部11と支持部12との間に介在する位置に設けられている(
図4(a),(b)及び
図5(a)参照)。この場合、アーム部11の昇降時に生じ得るOリング15aの摩耗を抑制することができる。また、封止状態のときの搬送ロボット10の昇降方向(鉛直方向)のサイズを小さくすることができる。さらに、封止状態のときの支持部12の内部空間を小さくすることができるため、搬送ロボット10の駆動時に搬送空間20xに排出される支持部12の内部空間の非滅菌ガスの量を少なくすることができる。
【0039】
駆動部は、支持部12に対してアーム部11を回転させるための回転駆動部(回転モータ12M3、シャフト12S等)を含む。この場合、アーム部11の回転時に生じ得るOリング15aの摩耗を抑制することができる。
【0040】
駆動部は、アームベース11bに対してアーム11aを回転させるためのアーム回転駆動部(アームモータ11M、アームシャフト11S1〜11S3等)を含み、封止部材は、各シャフト11S1〜11S3の周囲に設けられた中空Oリング15bを含む。制御部100は、中空Oリング15bの中空部に圧力を供給するようインフレータ15bxを制御することで、搬送ロボット10を非封止状態から封止状態に切り換える(
図5(a),(b)参照)。この場合、比較的簡単な構成で上記効果(封止部材の摩耗を抑制しつつ搬送ロボット10の駆動部の腐食を防止することができるという効果)を得ることができる。
【0041】
続いて、
図8を参照し、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態は、Oリング15aの配置、並びに、アームベース11b及び支持部12におけるOリング15aが配置される部分の構成が、上述の実施形態と異なる。
【0042】
本実施形態では、アームベース11bの下端に、内側に突出した内側突出部11btが設けられている。支持部12の上端に、外側に突出した外側突出部12tが設けられている。内側突出部11btの先端の上面と外側突出部12tの先端の下面とが、鉛直方向に対向する。Oリング15aは、外側突出部12tの下面に設けられている。アーム部11は、内側突出部11btがOリング15aの下方に位置する範囲内で、昇降可能となっている。Oリング15aは、昇降駆動部(昇降モータ12M2及び昇降機構13)の駆動によりアーム部11が最も上方(支持部12に対して最も遠く)に配置されたときに、アーム部11と支持部12との間に介在する位置に設けられている。
【0043】
本実施形態によれば、アーム部11の昇降時に生じ得るOリング15aの摩耗を抑制することができる。また、支持部12の外面においてガスに晒される面積が大きくなり、支持部12の外面に対する広範囲の滅菌を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、例えば以下のように、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0045】
駆動処理(駆動ステップ)において、少なくとも駆動部によってアーム部を駆動させるときに、搬送ロボットが非封止状態に維持されればよく、例えば、搬送ロボットの走行時に搬送ロボットが封止状態となってもよい。
搬送空間に供給されるガスは、搬送ロボットの駆動部に対して腐食性を有する限り、過酸化水素ガスに限定されず、任意である。
ガスの供給タイミング及び供給時間は、任意である。例えば、ガスの供給タイミングは数週間に1度等であってよく、ガスの供給時間は数時間等であってよい。
封止部材は、任意の部材に対して固定されてよい。例えば、Oリング15a(
図4(b)及び
図8参照)は、支持部12ではなくアームベース11bに固定されてよい。
封止部材は、搬送空間に供給されるガスに対する耐性を有する材料(例えば、過酸化水素ガスの場合、フッ素系ゴム等)からなることが好ましいが、これに限定されない。
封止部材として、上述の実施形態ではOリング15a及び中空Oリング15bを例示したが、これらのうち一方のみを設けてもよい。即ち、Oリング15a及び中空Oリング15bの一方を省略してもよい。
アームは、複数のアーム要素で構成されることに限定されず、1つのアーム要素で構成されてもよい。また、単数又は複数のアーム要素で構成されたアームを複数設けてもよい。
アームは、鉛直方向と交差する方向に延在する軸線を中心としてアームベースに対して回転してもよい。
ガイド部材は、筐体の側壁に設けられることに限定されず、例えば筐体の下壁に設けられてもよい。
複数の周辺空間は、搬送空間の周辺の任意の位置に配置されてよい。例えば、複数の周辺空間は、搬送空間の周囲全体に亘って配置されてもよい。或いは、複数の周辺空間は、搬送空間の一方側のみに設けられてもよい。複数の周辺空間は、互いに異なる構成であってもよいし、互いに同じ構成であってもよい。
「封止状態」とは、搬送ロボットの駆動部を収容した空間と搬送ロボットの外部との連通が駆動部の腐食を防止可能な程度に遮断された状態をいい、完全な密封状態に限定されるものではない。