【解決手段】受信回路10は、信号A、Bの差分に対応する信号A−Bを生成する差動レシーバ13aと、信号B、Cの差分に対応する信号B−Cを生成する差動レシーバ13bと、信号C、Aの差分に対応する信号C−Aを生成する差動レシーバ13cと、信号A−B、B−C、C−Aのゼロクロスに応答してクロック信号を生成するクロック再生回路14と、クロック信号に同期して信号A−B、B−C、C−AをラッチするDフリップフロップ15a、15b、15cとを具備する。クロック再生回路14は、信号A、B、Cの状態遷移が発生したときに信号A−B、B−C、C−Aそれぞれのゼロクロスを検出し、信号A−B、B−C、C−Aのうちの複数においてゼロクロスが検出された場合、最先のゼロクロスに同期してクロック信号を生成するように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、添付図面においては、同一、類似又は対応する構成要素を同一又は類似の参照番号により参照することがあることに留意されたい。
【0014】
以下では、本発明が表示装置(例えば、液晶表示パネルを備えた液晶表示装置)へのデータ通信に適用される場合の実施形態について説明する。ただし、本発明は、様々な機器へのデータ通信に用いられ得ることに留意されたい。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における表示装置の構成を示す概念図である。
図1に図示された表示装置の構成は、後述の各実施形態に適用され得ることに留意されたい。
図1の表示装置は、液晶表示パネル1と、この液晶表示パネル1を駆動する表示ドライバ2とを備えている。詳細には、液晶表示パネル1は、ソース線、ゲート線及び画素が配置された表示領域1aと、ゲート線を駆動するGIP(gate in panel)回路1bとを備えている。表示ドライバ2は、液晶表示パネル1の表示領域1aに設けられたソース線(信号線、ディジット線とも呼ばれる)を駆動し、更に、GIP回路1bを制御する制御信号をGIP回路1bに供給する。本実施形態では、表示ドライバ2は、液晶表示パネル1のガラス基板の上にCOG(chip on glass)技術によって搭載されている。
【0016】
表示ドライバ2は、フレキシブル配線基板4に形成された信号線を介してホスト3に接続されている。
図1には、フレキシブル配線基板4に形成された信号線のうち、MIPI C−PHYに準拠したデータ通信に用いられる3本の信号線5a、5b、5cのみが図示されている。MIPI C−PHYによるデータ通信では、3つの信号A、B、Cが伝送される。信号線5a、5b、5cは、それぞれ、ホスト3のトランスミッタ6a、6b、6cから出力された信号A、B、Cを表示ドライバ2に伝送する。MIPI C−PHYによる通信では、信号A、B、Cに、通信すべきデータのみならずクロック信号が埋め込まれることに留意されたい。
【0017】
表示ドライバ2は、ホスト3からMIPI C−PHYに準拠して生成された信号A、B、Cを受信するように構成される。以下では、表示ドライバ2の構成の実施形態、特に、ホスト3から信号A、B、Cを受け取る受信回路の構成の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における表示ドライバ2の構成、特に、ホスト3から信号A、B、Cを受け取る受信回路10の構成を示すブロック図である。なお、
図2には、受信回路10のうちHSモードでの通信が行われる場合に信号A、B、Cの受信に関与する回路部分の構成が図示されているが、実際の実装においては、LPモードにおける通信が行われる場合に信号A、B、Cの受信に関与する構成が追加され得ることに留意されたい。
【0019】
HSモードでの通信が行われる場合、
図3に示されているように、信号A、B、Cのそれぞれは、High, Middle, Lowの値をとり得る3値信号として生成される。また、信号A、B、C全体としては、“+x”、“−x”、“+y”、“−y”、“+z”、“−z”の6つの状態が許容される。例えば、状態“+x”は、信号A、B、Cが、それぞれ、High, Low, Middleの値を有する状態である。信号A、B、Cの状態は、UI(unit interval)毎に遷移する。MIPI C−PHYの規格においては、信号A、B、Cの状態遷移において信号A、B、Cが、元の状態と異なる状態に遷移すると決められているので、結果として、信号A、B、Cは、全体として、各UIにおいて5値のデータを送ることができることになる。各UIで伝送されるデータはシンボルと呼ばれ、シンボルがとり得る5つの値は、“0”、“1”、“2”、“3”、“4”と表記される。
【0020】
図2に戻り、受信回路10は、終端回路11と、差動レシーバ12a、12b、12cと、遅延回路13a、13b、13cと、クロック再生回路14と、Dフリップフロップ15a、15b、15cと、シンボルデコーダ(symbol decoder)16と、デシリアライザ(deserializer)17と、デマッパ(demapper)18とを備えている。
【0021】
終端回路11は、終端抵抗11a、11b、11cと容量素子11dとを備えている。本実施形態では、終端抵抗11a、11b、11cは、Y結線で接続されている。詳細には、終端抵抗11aは、信号線5aの端と中性点11nの間に接続されており、終端抵抗11bは、信号線5bの端と中性点11nの間に接続されており、終端抵抗11cは、信号線5cの端と中性点11nの間に接続されている。容量素子11dは、中性点11nと回路接地(circuit ground)の間に接続されている。
【0022】
差動レシーバ12a、12b、12cは、それぞれ、信号A、B、Cのうちの2つの間の差分に対応する差分信号を生成する。詳細には、差動レシーバ12aは、非反転出力(
図2において、記号“+”で示されている)が信号線5aに接続され、反転出力(
図2において、記号“−”で示されている)が信号線5bに接続されており、信号Aと信号Bとの差分に対応する信号A−Bを出力する。差動レシーバ12bは、非反転出力が信号線5bに接続され、反転出力が信号線5cに接続されており、信号Bと信号Cとの差分に対応する信号B−Cを出力する。更に、差動レシーバ12cは、非反転出力が信号線5cに接続され、反転出力が信号線5aに接続されており、信号Cと信号Aとの差分に対応する信号C−Aを出力する。
【0023】
遅延回路13a、13b、13cは、それぞれ、信号A−B、B−C、C−Aを所定の遅延時間だけ遅延する。
【0024】
クロック再生回路14は、信号A−B、B−C、C−Aに対してクロック再生を行ってクロック信号Rx_CLKを生成する。クロック再生回路14の構成及び動作の詳細については後に詳細に説明する。
【0025】
Dフリップフロップ15a、15b、15cは、クロック再生回路14から出力されるクロック信号Rx_CLKに同期して信号A−B、B−C、C−Aをラッチするラッチ回路部として動作する。詳細には、Dフリップフロップ15aは、クロック信号Rx_CLKに同期して信号A−Bをラッチしてロジック信号LOGIC_ABを生成する。同様に、Dフリップフロップ15bは、クロック信号Rx_CLKに同期して信号B−Cをラッチしてロジック信号LOGIC_BCを生成し、Dフリップフロップ15cは、クロック信号Rx_CLKに同期して信号C−Aをラッチしてロジック信号LOGIC_CAを生成する。ロジック信号LOGIC_AB、LOGIC_BC、LOGIC_CAは、いずれも、2値のシングルエンド信号である。
【0026】
シンボルデコーダ(symbol decoder)16と、デシリアライザ(deserializer)17と、デマッパ(demapper)18とは、Dフリップフロップ15a、15b、15cから出力されるロジック信号LOGIC_AB、LOGIC_BC、LOGIC_CAを処理してホスト3から送られてくるデータを再生する回路部分である。シンボルデコーダ16は、ロジック信号LOGIC_AB、LOGIC_BC、LOGIC_CAをデコードして3ビットシンボルを生成する。MIPI C−PHYにおいては、各シンボルが、Flip、Rotation、Polarityの3つの属性を有すると規定されている。これらの3つの属性の組み合わせで、各シンボルの値“0”、“1”、“2”、“3”、“4”が表現される。
【0027】
デシリアライザ17は、シンボルデコーダ16から受け取った3ビットシンボルに対してシリアル−パラレル変換を行う。シンボルデコーダ16からシリアルに受け取った一連の7つのシンボルをパラレルに出力する。各シンボルは、3ビットデータであるから、デシリアライザ17からは21ビットデータが出力されることになる。
【0028】
デマッパ18は、デシリアライザ17から受け取った7シンボルに対してデマッピング処理を行い、16ビットの通信データを再生する。デマッパ18で再生された通信データが内部回路19に送られ、内部回路19の動作に使用される。例えば、信号A、B、Cによりホスト3から表示ドライバ2に送信される通信データが画像データを含んでいる場合には、デマッパ18によって画像データが再生され、該画像データが内部回路19に供給される。内部回路19のソース駆動回路は、該画像データに応答して液晶表示パネル1のソース線を駆動する。
【0029】
続いて、クロック再生回路14の動作の概略を説明する。クロック再生回路14は、信号A−B、B−C、C−Aのゼロクロス(zero-crossing)検出を行い、信号A−B、B−C、C−Aのゼロクロス、即ち、信号A−B、B−C、C−Aが電圧0を横切る時刻に同期するようにクロック信号Rx_CLKを生成する。ただし、信号A、B、Cの各状態遷移において信号A−B、B−C、C−Aのうちの複数の信号が電圧0を横切る場合、クロック信号Rx_CLKは、最先のゼロクロスに同期するように生成される。最先のゼロクロスに同期するようにクロック信号Rx_CLKを生成することは、クロック信号Rx_CLKに同期して動作するDフリップフロップ15a、15b、15cによって信号A−B、B−C、C−Aをラッチする動作の信頼性を向上する上で好適である。後述されるように、このような動作をするクロック再生回路14は、簡便な構成で実現でき、受信回路10の回路規模を低減し、消費電力を低減するために好適である。
【0030】
図4A〜
図4Cは、HSモードでの通信における信号A、B、Cの状態遷移、及び、該状態遷移における信号A−B、B−C、C−Aのゼロクロス検出を図示するタイミングチャートである。信号A、B、Cには6状態が許容され、信号A、B、Cは、状態遷移によって元の状態と異なる状態に遷移するので、結果としては、30(=6×5)種類の状態遷移が許容されることになる。
【0031】
しかしながら、30種類の状態遷移には等価な状態遷移が含まれており、30種類の状態遷移は、
図4A〜
図4Cに図示された3種類の状態遷移に纏めることができる。第1の種類の状態遷移は、信号A−B、B−C、C−Aの全てが電圧0を横切る場合であり、
図4Aは、その一例として、状態“+x”から状態“−x”への遷移を示している。第2の種類の状態遷移は、信号A−B、B−C、C−Aのうちの2つが電圧0を横切る場合であり、
図4Bは、その一例として、状態“+x”から状態“+y”への遷移を示している。第3の種類の状態遷移は、信号A−B、B−C、C−Aのうちの1つが電圧0を横切る場合であり、
図4Cは、その一例として、状態“+x”から状態“−y”への遷移を示している。他の状態遷移は、これらの3つの状態遷移のいずれかと等価である。なお、
図4A〜
図4Cでは、信号A、B、Cの値High、Middle、Lowが、それぞれ、電位(3/4)V、(1/2)V、(1/4)Vに対応する場合の状態遷移が図示されていることに留意されたい。
【0032】
信号A−B、B−C、C−Aの全てが電圧0を横切る
図4Aの状態遷移では、クロック再生回路14は、信号A−B、B−C、C−Aのうち最先に電圧0を横切る信号のゼロクロスを検出するとトリガを生成し、生成したトリガに同期するクロック信号Rx_CLKを生成する。
図4Aの状態遷移では、信号Aが電位(3/4)Vから電位(1/4)Vに遷移し、信号Bが電位(1/4)Vから電位(3/4)Vに遷移し、信号Cの電位が電位(1/2)で不変であるから、信号A−Bの電位の変化が最も大きく、よって、信号A−Bが最先に電圧0を横切り、その後、信号B−C、信号C−Aが電圧0を横切る。クロック再生回路14は、信号A−Bのゼロクロスを検出するとトリガを生成し、該トリガに同期するようにクロック信号Rx_CLKを生成する。
【0033】
信号A−B、B−C、C−Aのうちの2つが電圧0を横切る
図4Bの状態遷移においても、クロック再生回路14は、電圧0を横切る2つの信号のうち先に電圧0を横切る信号のゼロクロスを検出するとトリガを生成し、生成したトリガに同期するクロック信号Rx_CLKを生成する。
図4Bの状態遷移では、信号Aが電位(3/4)Vから電位(1/2)Vに遷移し、信号Bが電位(1/4)Vから電位(3/4)Vに遷移し、信号Cが電位(1/2)Vから電位(1/4)Vに遷移するから、信号B−Cが最先に電圧0を横切り、その後、信号A−Bが電圧0を横切る。信号C−Aは、電圧0を横切らない。クロック再生回路14は、信号B−Cのゼロクロスを検出するとトリガを生成し、生成したトリガに同期するクロック信号Rx_CLKを生成する。
【0034】
信号A−B、B−C、C−Aのうちの1つのみが電圧0を横切る
図4Cの状態遷移においては、クロック再生回路14は、電圧0を横切る信号のゼロクロスを検出するとトリガを生成し、生成したトリガに同期したクロック信号Rx_CLKを生成する。
図4Cの状態遷移では、信号Aが電位(3/4)Vから電位(1/2)Vに遷移し、信号Bが電位(1/4)Vで不変であり、信号Cが電位(1/2)Vから電位(3/4)Vに遷移するから、信号C−Aのみが電圧0を横切る。クロック再生回路14は、信号C−Aのゼロクロスを検出するとトリガを生成し、生成したトリガに同期するようにクロック信号Rx_CLKを生成する。
【0035】
留意すべきことは、単純にクロック再生回路14を信号A−B、B−C、C−Aのゼロクロス検出を行い、ゼロクロスの検出に応じてトリガを生成するように構成すると、本来はクロック信号Rx_CLKの生成に用いられるべきでないトリガも生成されることである。本来はクロック信号Rx_CLKの生成に用いられるべきでないトリガを、以下では、疑似トリガと呼ぶ。クロック信号Rx_CLKを適正に生成するためには、クロック再生回路14は、最先でないゼロクロス点の検出に応じて生成されたトリガ、即ち、疑似トリガをマスクする(無視する)ように構成することが望ましい。例えば、
図4Aにおいては、信号A−Bのゼロクロスに同期したトリガが生成され、その後、信号B−C、C−Aのゼロクロスに同期した疑似トリガが生成される。
図4Aにおいて、t
ΔJは、トリガと疑似トリガの間の時間差を示している。疑似トリガに同期してクロック信号Rx_CLKが生成されると、この時間差t
ΔJに起因してクロック信号Rx_CLKにジッタが発生する。
図4Bに図示されているように、信号A−B、B−C、C−Aのうちの2つにゼロクロスが発生する場合も同様である。以下では、疑似トリガをマスクするためのクロック再生回路14の構成について説明する。
【0036】
図5は、本実施形態におけるクロック再生回路14の構成を示すブロック図である。クロック再生回路14は、トリガ検出回路21と、SRラッチ22と、遅延回路23と、AND回路24とを備えている。
【0037】
トリガ検出回路21は、信号A−B、B−C、C−Aに対してゼロクロス検出を行い、信号A−B、B−C、C−Aのいずれかにおいてゼロクロスを検出すると、トリガを生成する。生成されたトリガは、トリガ検出出力TRIGによってSRラッチ22に供給される。本実施形態では、トリガ検出出力TRIGは、生成されたトリガを、短時間の間だけHighレベルであるパルスの形で伝送する。
【0038】
SRラッチ22は、トリガ検出出力TRIGがセット端子に供給され、AND回路24の出力信号がリセット端子に供給されている。SRラッチ22は、トリガ検出回路21から出力されるトリガに応答してセットされ(例えば、トリガ検出出力TRIGが一瞬でもHighレベルになるとセットされ)、AND回路24の出力信号が一瞬でもHighレベルになるとリセットされる。SRラッチ22のデータ出力Qから出力される信号が、クロック信号Rx_CLKとして用いられる。
【0039】
遅延回路23は、クロック信号Rx_CLKを所定の遅延時間だけ遅延する。
図6は、遅延回路23の構成の一例を示す回路図である。一実施形態では、遅延回路23は、直列に接続されたインバータ41と、セレクタ回路42とを備えている。クロック信号Rx_CLKは、初段のインバータ41(
図6においては、左端に位置するインバータ41)の入力に入力され、後段のインバータ41に順次に伝送される。セレクタ回路42は、直列に接続されたインバータ41の出力信号のいずれかを選択し、選択した出力信号を出力する。セレクタ回路42から出力される信号が、遅延されたクロック信号Rx_CLKである。セレクタ回路42には、遅延制御信号DELAY_CTRLが供給されており、セレクタ回路42は、遅延制御信号DELAY_CTRLに応じてインバータ41の出力信号を選択する。このような構成では、遅延制御信号DELAY_CTRLを適切に設定することにより、遅延回路23の遅延時間を調節することができる。
【0040】
図5に戻り、AND回路24は、SRラッチ22から出力されるクロック信号Rx_CLKと、遅延回路23によって遅延されたクロック信号Rx_CLKとの論理積に対応する出力信号を出力する。本実施形態では、SRラッチ22から出力されるクロック信号Rx_CLKと遅延回路23によって遅延されたクロック信号Rx_CLKとの両方がHighレベルの場合に、AND回路24の出力信号がHighレベルに設定され、それ以外の場合にはAND回路24の出力信号がLowレベルに設定される。上述のように、AND回路24の出力信号は、SRラッチ22のリセット端子に供給される。
【0041】
上述されたクロック再生回路14の構成の利点の一つは、回路規模を小さくでき、消費電力を低減できることである。クロック再生においては、DLL(delay-locked loop)回路やPLL(phase-locked loop)回路が用いられることが一般的であるが、DLL回路やPLL回路は、回路規模が大きく、消費電力も大きい。本実施形態のクロック再生回路14は、DLL回路やPLL回路を使用していないので、回路規模を小さくでき、消費電力を低減することができる。
【0042】
図7は、
図5に図示された構成のクロック再生回路14の動作を示すタイミングチャートである。
図7には、信号A、B、Cの状態が遷移したときに、信号A−B、B−C、C−Aのうちの2つが電圧0を横切る場合のクロック再生回路14の動作が図示されている。
図7には、信号A、B、Cの状態遷移が2回行われる間のクロック再生回路14の動作が図示されている。
【0043】
最初の状態遷移(
図7の左側部分参照)においては、信号A−Bが電圧+V/2から電圧−V/4に遷移し、信号B−Cが、電圧−V/4から電圧+V/2に遷移し、信号C−Aが電圧−V/4で維持される。この場合、信号B−Cが先に電圧0を横切り、信号A−Bが次に電圧0を横切る。トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGには、信号B−Cのゼロクロスに応じて生成されたトリガに対応するパルスが現れ、その後、信号A−Bのゼロクロスに応じて生成されたトリガに対応するパルスが現れる。信号B−Cのゼロクロスに応じて生成されたトリガは、クロック信号Rx_CLKの生成に用いられるべきトリガであり、信号A−Bのゼロクロスに応じて生成されたトリガは、クロック信号Rx_CLKの生成に用いられるべきでない疑似トリガである。
【0044】
SRラッチ22は、先に検出されたゼロクロス、即ち、信号B−Cのゼロクロスに応じてトリガが生成されるとセットされ、クロック信号Rx_CLKをHighレベルにプルアップする。
【0045】
SRラッチ22は、その後、リセット端子がHighレベルになるまで、即ち、AND回路24の出力信号がHighレベルになるまで、クロック信号Rx_CLKをHighレベルに維持し続ける。詳細には、クロック信号Rx_CLKがHighレベルになった直後では、遅延回路23の出力がLowレベルであるので、AND回路24の出力信号はLowレベルである。その後、遅延回路23の遅延時間と同一の時間が経過すると、遅延回路23の出力がHighレベルになるので、AND回路24の出力信号がHighレベルになり、SRラッチ22がリセットされる。SRラッチ22がリセットされると、クロック信号Rx_CLKはLowレベルに戻る。
【0046】
2回目の状態遷移(
図7の右側部分参照)においても同様の動作が行われる。2回目の状態遷移においては、信号A−Bが電圧−V/4に維持され、信号B−Cが、電圧+V/2から電圧−V/4に遷移し、信号C−Aが電圧−V/4から電圧+V/2に遷移する。この場合、信号C−Aが先に電圧0を横切り、信号B−Cが次に電圧0を横切る。トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGには、信号C−Aのゼロクロスに応じて生成されたトリガに対応するパルスが現れ、その後、信号B−Cのゼロクロスに応じて生成されたトリガに対応するパルスが現れる。
【0047】
SRラッチ22は、先に検出されたゼロクロス、即ち、信号C−Aのゼロクロスに応じてトリガが生成されるとセットされ、クロック信号Rx_CLKをHighレベルにプルアップする。
【0048】
SRラッチ22は、その後、リセット端子がHighレベルになるまで、即ち、AND回路24の出力信号がHighレベルになるまで、クロック信号Rx_CLKをHighレベルに維持し続ける。詳細には、信号C−Aのゼロクロスに応じたトリガの後、遅延回路23の遅延時間と同一の時間が経過すると、AND回路24の出力信号がHighレベルになり、SRラッチ22がリセットされる。SRラッチ22がリセットされると、クロック信号Rx_CLKはLowレベルに戻る。
【0049】
このような動作によれば、信号A−B、B−C、C−Aのうち最先に電圧0を横切る信号のゼロクロスに同期したクロック信号Rx_CLKを生成することができる。加えて、上述の動作によれば、遅延回路23の遅延時間を適切に設定することで、最先でないゼロクロスに応じて生成された疑似トリガをマスクし、信号A−B、B−C、C−Aのラッチを確実に実行できるクロック信号Rx_CLKを生成することができる。
【0050】
Dフリップフロップ15a、15b、15cは、クロック再生回路14によって生成されたクロック信号Rx_CLKに同期して、遅延回路13a、13b、13cから出力される信号A−B、B−C、C−Aをラッチする。本実施形態では、Dフリップフロップ15a、15b、15cは、クロック信号Rx_CLKがHighレベルにプルアップされると信号A−B、B−C、C−Aをラッチする。遅延回路13a、13b、13cの遅延時間は、クロック再生回路14における遅延、及び、Dフリップフロップ15a、15b、15cのホールド時間に合わせて調節される。このような動作により、信号A−B、B−C、C−AがDフリップフロップ15a、15b、15cにラッチされてロジック信号LOGIC_AB、LOGIC_BC、LOGIC_CAが生成される。ロジック信号LOGIC_AB、LOGIC_BC、LOGIC_CAは、シンボルデコーダ16、デシリアライザ17、デマッパ18によって処理され、所望の通信データが再生される。
【0051】
以上に説明されているように、本実施形態の受信回路10は、MIPI C−PHYのHSモードによる通信に対応した動作を実現することができる。加えて、回路規模が大きく消費電力も大きいDLL回路やPLL回路を使用していない本実施形態の受信回路10の構成によれば、クロック再生回路14の回路規模を小さくでき、クロック再生回路14の消費電力を低減できる。
【0052】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態における受信回路10の構成を示すブロック図である。ただし、
図8においては、図面を見やすくするためにシンボルデコーダ16、デシリアライザ17、デマッパ18、及び、内部回路19は図示されていない。
【0053】
第2の実施形態における受信回路10の構成は、第1の実施形態とほぼ同じであるが、第2の実施形態では、クロック再生回路14の構成が変更される。第2の実施形態では、クロック再生回路14に、UI検出回路25とUI検出期間タイミング生成回路26とが追加される。
【0054】
UI検出回路25とUI検出期間タイミング生成回路26とは、データ通信のUIを検出し、検出したUIに応答して遅延回路23の遅延時間を制御する遅延時間制御部として動作する。このような構成は、遅延回路23の遅延時間を動的に調節するためのものである。遅延回路23の遅延時間は、製造バラツキや、電源電圧及び温度の変動や、経時変化等により変動し得る。遅延回路23の遅延時間の変化の結果、遅延回路23の遅延時間が不適切になると、疑似トリガが適切にマスクされなくなり、データ通信の信頼性が低下する。本実施形態では、UI検出回路25とUI検出期間タイミング生成回路26とによって検出されたUIに基づいて遅延回路23の遅延時間を制御することで、最先のゼロクロスの検出に応じてクロック信号Rx_CLKの生成に使用されるトリガが生成された後、疑似トリガをマスクすべき時間が動的に調節される。これは、データ通信の信頼性の向上に寄与する。
【0055】
詳細には、UI検出回路25は、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGからUIを検出し、検出したUIに応答して遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。遅延回路23の遅延時間は、遅延制御信号DELAY_CTRLに応じて、即ち、UI検出回路25に応じて検出されたUIに応じて制御される。
【0056】
UI検出期間タイミング生成回路26は、UI検出期間、即ち、UI検出回路25がUIを検出すべき期間をUI検出回路25に指示するUI検出イネーブル信号S
UI_ENを生成する。UI検出期間タイミング生成回路26は、UI検出期間の開始を検出するT3−PREBEGIN−start検出ブロック27と、UI検出期間の終了を検出するT3−PREBEGIN−end検出ブロック28とを備えており、UI検出期間の開始を検出すると、UI検出イネーブル信号S
UI_ENをアサートし、UI検出期間の終了を検出するとUI検出イネーブル信号S
UI_ENをネゲートする。UI検出回路25は、UI検出イネーブル信号S
UI_ENがアサートされている間の期間、即ち、UI検出期間においてUIを検出し、検出したUIに応答して遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。
【0057】
続いて、UI検出期間の選択について説明する。MIPI C−PHYによるデータ通信では、HSモードにおける通信の開始の直後に、クロック信号Rx_CLKの生成に使用すべきトリガしか発生せず、疑似トリガが生成されない期間が存在する。この期間においてはトリガの発生の時間間隔がUIに一致するので、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGからUIを検出することができる。本実施形態では、クロック信号Rx_CLKの生成に使用すべきトリガしか発生せず疑似トリガが生成されない期間が、UI検出期間として用いられる。UI検出期間タイミング生成回路26は、UI検出期間の開始を検出するとUI検出イネーブル信号S
UI_ENをアサートし、UI検出期間の終了を検出するとUI検出イネーブル信号S
UI_ENをネゲートする。UI検出回路25は、UI検出イネーブル信号S
UI_ENがアサートされている間にUIを検出する。
【0058】
図9は、MIPI C−PHYにおけるHSモードでの通信、特に、LPモードからHSモードへの切り換えの手順を示すタイミングチャートである。
【0059】
LPモードからHSモードへの切り換えを行う場合、LPモードの終了を通知するために、信号A、B、Cのデータ値が、それぞれ、“111”、“001”、“000”の順で遷移する。このような動作は、
図9において、記号“LP−111”、“LP−001”、“LP−000”によって示されている。なお、信号A、B、Cにおいて、値“1”はHighレベルで表され、値“0”はLowレベルで表されることに留意された。
図9において、記号t
LPXは、信号A、Bの電位がLowレベルの信号の許容最大電位V
IL(MAX)よりも低くなった時刻から、信号Cの電位がLowレベルの信号の許容最大電位V
IL(MAX)よりも低くなった時刻までの時間を表している。信号Cの電位がLowレベルの信号の許容最大電位V
IL(MAX)よりも低くなった時刻から、期間t
3−PREPARE(準備期間)が開始する。MIPI C−PHYの規格においては、期間t
3−PREPAREの長さが満たすべき条件が指定されている。
【0060】
期間t
3−PREPAREの後に期間t
3−PREANBLE(プリアンブル期間)及び期間t
3−SYNC(同期期間)が設けられ、その後、パケットデータが実際に行われる期間が開始する。期間t
3−PREANBLEは、プリアンブルデータが伝送される期間であり、期間t
3−SYNCは、同期ワードが伝送される期間である。MIPI C−PHYの規格においては、期間t
3−PREANBLEにおいてプリアンブルデータとして値“3”のシンボルが伝送されることが規定されており、また、期間t
3−SYNCにおいて値“4”のシンボルが伝送されることが規定されている。期間t
3−PREANBLEは、期間t
3−PREBEGINと期間t
3−PREENDとで構成される。MIPI C−PHYの規格においては、期間t
3−PREBEGINの長さが満たすべき条件が指定されている。一方、期間t
3−PREENDの長さは、MIPI C−PHYの規格には規定されておらず、期間t
3−PREENDが設けられることは必須ではない。
【0061】
本実施形態では、値“3”のシンボルが連続して伝送される場合には信号A−B、B−C、C−Aのうちの一つしかゼロクロスせず、疑似トリガが発生しないことを利用し、値“3”のシンボルが伝送されると規定されている期間t
3−PREANBLEの少なくとも一部、より詳細には、期間t
3−PREBEGINの少なくとも一部がUI検出期間として利用される。上述の通り、期間t
3−PREENDは必ずしも設けられるとは限られないから、期間t
3−PREBEGINの少なくとも一部がUI検出期間として利用されることが好ましい。
【0062】
図10は、値“3”のシンボルが連続して伝送される場合の信号A−B、B−C、C−Aの波形を示すタイミングチャートである。値“3”のシンボルが伝送される場合、信号A−B、B−C、C−Aは、次の2つの遷移を交互に繰り返す。
遷移#1:信号A−B、B−C、C−Aのうちの第1の信号が電位+V/2から電位+V/4に遷移し、第2の信号が電位−V/4から電位+V/4に遷移し、第3の信号が電位−V/4から電位−V/2に遷移する。
遷移#2:信号A−B、B−C、C−Aのうちの第1の信号が電位+V/4から電位+V/2に遷移し、第2の信号が電位+V/4から電位−V/4に遷移し、第3の信号が電位−V/2から電位−V/4に遷移する。
【0063】
図10から理解されるように、遷移#1、遷移#2のいずれの場合も、信号A−B、B−C、C−Aのうちの一つしかゼロクロスせず、よって、値“3”のシンボルが伝送される期間t
3−PREBEGINではトリガの発生の時間間隔がUIに一致する。したがって、期間t
3−PREBEGIN又はその一部をUI検出期間として利用すれば、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGに現れるトリガの時間間隔としてUIを正しく検出することができる。
【0064】
図11に図示されているように、このように検出されたUIに基づいて遅延回路23の遅延時間を制御することで、最先のゼロクロスの検出に応じてクロック信号Rx_CLKの生成に使用されるトリガが生成された後、疑似トリガをマスクすべき時間を動的に調節することができる。遅延回路23の遅延時間は、製造バラツキや、電源電圧及び温度の変動や、経時変化等により変動し得るが、本実施形態の構成によれば、遅延回路23の遅延時間がデータ通信のUIに整合するように調節されるので、データ通信の信頼性を向上させることができる。
【0065】
以下では、UIの検出、及び、UI検出期間の開始及び終了の検出について詳細に説明する。
【0066】
上述のように、UIの検出は、UI検出回路25によって行われる。
図12Aは、UIを検出するUI検出回路25の構成の一例を示すブロック図である。
図12Aの構成では、UI検出回路25は、Tフリップフロップ31と、直列に接続された遅延回路32
1〜32
n、Dフリップフロップ33
1〜33
nと、UI検出ロジック回路34とを備えている。
【0067】
Tフリップフロップ31は、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGがトリガ入力に入力されており、トリガ検出出力TRIGにトリガが現れるごとに保持する値を反転する。UI検出期間においては、トリガ検出出力TRIGに現れるトリガの時間間隔がUIとなるので、Tフリップフロップ31のデータ出力Qから出力される出力信号は、UI毎に値が反転する。
図12Aにおいて、Tフリップフロップ31のデータ出力Qから出力される出力信号は、信号UI_CYCLEとして示されている。
【0068】
遅延回路32
1〜32
nは、それぞれが遅延時間Dを有しており、信号UI_CYCLEからの遅延時間が異なる順次遅延信号DELAY1〜DELAYnを生成する順次遅延部として動作する。詳細には、遅延回路32
1は、信号UI_CYCLEを遅延時間Dだけ遅延して順次遅延信号DELAY1を生成する。遅延回路32
2は、順次遅延信号DELAY1を遅延時間Dだけ遅延して順次遅延信号DELAY2を生成する。以下、同様に、遅延回路32
jは、順次遅延信号DELAY(j−1)を遅延して順次遅延信号DELAYjを生成する。ここで、jは、2以上n以下の整数である。
【0069】
Dフリップフロップ33
1〜33
nは、それぞれ、順次遅延信号DELAY1〜DELAYnに同期して信号UI_CYCLEをラッチし、ラッチした信号UI_CYCLEの値(“1”又は“0”)を、それぞれのデータ出力Qから出力する。後の議論から理解されるように、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値は、全体としてUIの長さを表している。以下では、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値からなるデータを、UI検出データと呼ぶ。
【0070】
UI検出ロジック回路34は、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値、即ち、UI検出データに応じて遅延回路23の遅延時間を制御する遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。
【0071】
図12Bは、
図12Aの構成のUI検出回路25の動作を示すタイミングチャートである。
図12Bでは、Dフリップフロップ33
1〜33
nが、それぞれ、順次遅延信号DELAY1〜DELAYnの立ち上がりエッジに応答して信号UI_CYCLEをラッチする場合の動作が図示されている。Dフリップフロップ33
1〜33
nが、それぞれ順次遅延信号DELAY1〜DELAYnに同期して信号UI_CYCLEをラッチした場合、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値は、それぞれ、順次遅延信号DELAY1〜DELAYnの位相と信号UI_CYCLEの位相との先後を示している。よって、Dフリップフロップ33
1〜33
10から出力される値から、信号UI_CYCLEが反転する時間間隔、即ち、UIを、遅延時間D刻みで特定することができる。
【0072】
例えば、
図12Bに図示されているように、順次遅延信号DELAY1〜DELAYiに同期して信号UI_CYCLEをラッチして得られた値が“1”であり、遅延信号DELAY(i+1)が不安定であり、順次遅延信号DELAY(i+2)〜DELAYnに同期して信号UI_CYCLEをラッチして得られた値が“0”である場合、信号UI_CYCLEが反転する時間間隔、即ち、UIは、概ね、信号UI_CYCLEから順次遅延信号DELAYiまでの遅延時間i×Dに一致していると考えられる。即ち、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力されるUI検出データは、UIが、概ねi×Dであることを示している。UI検出ロジック回路34は、このようにして得られたUI検出データに応じて遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。
【0073】
図13Aは、UI検出回路25の構成の他の例を図示している。
図13Aの構成においても、UI検出回路25は、Tフリップフロップ31、遅延回路32
1〜32
n、Dフリップフロップ33
1〜33
nと、UI検出ロジック回路34とを備えている。ただし、
図13Aの構成では、Dフリップフロップ33
1〜33
nが、それぞれ、信号UI_CYCLEに同期して順次遅延信号DELAY1〜DELAYnをラッチし、ラッチした遅延信号DELAY1〜DELAYnの値(High又はLowレベル)を、それぞれのデータ出力Qから出力する。この場合にも、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値は全体としてUIの長さを表しており、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値が、UI検出データとして用いられる。UI検出ロジック回路34は、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値、即ち、UI検出データに応じて遅延回路23の遅延時間を制御する遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。これにより、遅延回路23の遅延時間をUIに合わせて調整することができる。
【0074】
図13Bは、
図12Aの構成のUI検出回路25の動作を示すタイミングチャートである。
図13Bでは、Dフリップフロップ33
1〜33
nが、それぞれ、順次遅延信号DELAY1〜DELAYnの立ち下がりエッジに応答して信号UI_CYCLEをラッチする場合の動作が図示されている。
図13Aの構成を採用する場合においても、本質的な動作は、
図12Aの構成を採用する場合と同一である。Dフリップフロップ33
1〜33
nが、信号UI_CYCLEに同期してそれぞれ順次遅延信号DELAY1〜DELAYnをラッチした場合、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力される値は、それぞれ、信号UI_CYCLEの位相と順次遅延信号DELAY1〜DELAYnの位相との先後を示している。よって、Dフリップフロップ33
1〜33
10から出力される値から、信号UI_CYCLEが反転する時間間隔、即ち、UIを、遅延時間D刻みで特定することができる。
【0075】
例えば、
図13Bに図示されているように、信号UI_CYCLEに同期して順次遅延信号DELAY1〜DELAYiをラッチして得られた値が“1”であり、信号UI_CYCLEに同期して順次遅延信号DELAY(i+1)をラッチして得られた値が不安定であり、信号UI_CYCLEに同期して順次遅延信号DELAY(i+2)〜DELAYnをラッチして得られた値が“0”である場合、信号UI_CYCLEが反転する時間間隔、即ち、UIは、概ね、信号UI_CYCLEから順次遅延信号DELAYiまでの遅延時間i×Dに一致していると考えられる。即ち、Dフリップフロップ33
1〜33
nから出力されるUI検出データは、UIが、概ねi×Dであることを示している。UI検出ロジック回路34は、このようにして得られたUI検出データに応じて遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。これにより、遅延回路23の遅延時間をUIに合わせて調整することができる。
【0076】
UI検出期間の開始の検出は、T3−PREBEGIN−start検出ブロック27によって行われる。UI検出期間の開始が検出されると、UI検出期間タイミング生成回路26は、UI検出イネーブル信号S
UI_ENをアサートする。UI検出期間の開始の検出は、様々な手法で実現され得る。以下では、UI検出期間の開始の検出について詳細に説明する。
【0077】
図14を参照して、一実施形態では、期間t
3−PREBEGINの開始を検出し、期間t
3−PREBEGINの開始が検出されたときにUI検出期間を開始してもよい。
図14においては、期間t
3−PREBEGINの開始時刻が、時刻T
3−PREBEGIN−start1として図示されている。
【0078】
一実施形態では、期間t
3−PREBEGINが開始すると、中性点11nの電位(以下、「コモン電位V
CM」という。)が変動することを利用して期間t
3−PREBEGINの開始を検出してもよい。
図14に図示されているように、信号A、B、Cは、期間t
3−PREBEGINが開始される直前においては、接地電位GNDに設定されている。なぜなら、
図9に図示されているように、期間t
3−PREBEGINの前の期間t
3−PREPAREでは、信号A、B、Cが、値“000”に設定されるからである。この場合、中性点11nの電位も接地電位GNDになる。期間t
3−PREBEGINが開始すると、信号A、B、Cにより、シンボル“3”が伝送されるので、中性点11nの電位、即ち、コモン電位V
CMが接地電位GNDから上昇する。このコモン電位V
CMの上昇を検知することにより、期間t
3−PREBEGINの開始が検出される。
【0079】
図15Aは、コモン電位V
CMの変動を利用して期間t
3−PREBEGINの開始を検出するT3−PREBEGIN−start検出ブロック27の構成の一例を示す概念図である。T3−PREBEGIN−start検出ブロック27は、閾値電位生成部51とコンパレータ52とを備えている。閾値電位生成部51は、コモン電位V
CMの上昇の検知に用いられる閾値電位Vth1を生成する。閾値電位生成部51の接地側端子は表示ドライバ2の回路接地に接続されており、ここでいう「閾値電位Vth1」は、表示ドライバ2の回路接地を基準として定義されることに留意されたい。コンパレータ52は、一方の入力が中性点11nに接続され、他方の入力は、閾値電位生成部51の出力に接続されている。コンパレータ52は、コモン電位V
CMと閾値電位Vth1とを比較し、比較結果に対応する出力信号を出力する。コンパレータ52から出力される出力信号が、期間t
3−PREBEGINの開始、即ち、UI検出期間の開始を示すUI開始検出信号S
DET1として用いられる。
【0080】
図15Bは、T3−PREBEGIN−start検出ブロック27の構成の他の例を示す概念図である。
図15Bの構成においても、
図15Aの構成と同様に、T3−PREBEGIN−start検出ブロック27は、閾値電位生成部53とコンパレータ54とを備えている。閾値電位生成部53は、コモン電位V
CMの上昇の検知に用いられる閾値電位Vth2を生成する。閾値電位生成部53の接地側端子は表示ドライバ2の回路接地55に接続されており、ここでいう「閾値電位Vth2」も、表示ドライバ2の回路接地55を基準として定義される。ただし、
図15Bの構成では、ホスト3が設けられている基板(典型的にはプリント配線基板)の回路接地56が、ホスト3の回路接地57に接続されると共に、フレキシブル配線基板4に設けられた配線5dを介して表示ドライバ2の回路接地55に接続される。これにより、表示ドライバ2の回路接地55とホスト3の回路接地57の電位が同一に保たれる。
図15Aの構成では、表示ドライバ2の回路接地とホスト3の回路接地との間に電位差が存在すると、ホスト3と表示ドライバ2とを接続する信号線5a〜5cに該電位差に対応する電流(接地電流)が流れ、電圧降下が発生するため、閾値電位生成部51によって生成される閾値電位Vth1に許容される電位範囲が狭くなる。一方、
図15Bに図示されている接続によれば、ホスト3と表示ドライバ2とを接続する信号線5a〜5cに流れる接地電流の影響を排除することができ、閾値電位Vth2に許容される電位範囲を広くすることができる。
【0081】
また、
図15Cに図示されているように、閾値電位生成部53の接地側端子が、配線5dを介してホスト3が設けられている基板の回路接地56に接続される(即ち、ホスト3の回路接地57に電気的に接続される)一方で、表示ドライバ2の回路接地55から電気的に分離されていてもよい。このような構成でも、表示ドライバ2の回路接地55とホスト3の回路接地57の電位差の影響、即ち、ホスト3と表示ドライバ2とを接続する信号線5a〜5cに流れる接地電流の影響を排除することができる。
【0082】
他の実施形態では、期間t
3−PREBEGINが開始すると、信号A、B、Cとして小振幅信号が送られるために信号A、B、Cにピーク電位V
PEAKが発現することを利用して期間t
3−PREBEGINの開始を検出してもよい。
図15Dは、信号A、B、Cにピーク電位V
PEAKが発現することを利用して期間t
3−PREBEGINの開始を検出するT3−PREBEGIN−start検出ブロック27の構成の一例を示す概念図である。
【0083】
図15Dの構成では、T3−PREBEGIN−start検出ブロック27は、閾値電位生成部58とコンパレータ59a〜59cとOR回路60とを備えている。閾値電位生成部58は、ピーク電位V
PEAKの発現の検知に用いられる閾値電位V
TH3を生成する。コンパレータ59aは、一方の入力が信号線5aに接続され、他方の入力が閾値電位生成部58の出力に接続されている。コンパレータ59aは、信号線5aの電位、即ち、信号Aの電位と閾値電位Vth3とを比較し、比較結果に対応する出力信号を出力する。同様に、コンパレータ59bは、一方の入力が信号線5bに接続され、他方の入力が閾値電位生成部58の出力に接続されており、コンパレータ59cは、一方の入力が信号線5cに接続され、他方の入力が閾値電位生成部58の出力に接続されている。コンパレータ59b、59cは、それぞれ、信号線5b、5cの電位、即ち、信号B、Cの電位と閾値電位Vth3とを比較し、比較結果に対応する出力信号を出力する。OR回路60は、コンパレータ59a〜59cの論理和に対応する出力信号を出力する。OR回路60の出力信号が、期間t
3−PREBEGINの開始、即ち、UI検出期間の開始を示すUI開始検出信号S
DET1として用いられる。
【0084】
なお、
図15Dに図示されたT3−PREBEGIN−start検出ブロック27は、信号A、B、Cの全てについてピーク電位V
PEAKの発現を検出可能に構成されているが、信号A、B、Cのうちの1つ又は2つについてピーク電位V
PEAKの発現を検出するように構成されてもよい。この場合、コンパレータ59a〜59cのうちピーク電位V
PEAKの発現を検出しない信号に対応するコンパレータは、設けられなくてもよい。例えば、信号A、Bのみについてピーク電位V
PEAKの発現が検出される場合、コンパレータ59cは設けられなくてもよい。また、信号A、B、Cのうちの1つの信号のみについてピーク電位V
PEAKの発現を検出するように構成される場合、OR回路60は設けられなくてもよく、該一つの信号のピーク電位V
PEAKの発現を検出するコンパレータ(59a〜59c)の出力信号が、UI検出期間の開始を示すUI開始検出信号S
DET1として用いられてもよい。
【0085】
他の実施形態では、
図9を参照して、期間t
3−PREBEGINの途中に定義された時刻T
3−PREBEGIN−start2の到来を検出し、時刻T
3−PREBEGIN−start2においてUI検出期間を開始してもよい。ここで、時刻T
3−PREBEGIN−start2とは、期間t
3−PREPAREが開始される時刻から時間t
3−SETTLEだけ経過した時刻である。ここで、時間t
3−SETTLEは、MIPI C−PHYの規格において、期間t
3−PREPAREの開始以後、HSレシーバが如何なるHSモードでの信号遷移をも無視すべき時間として規定されている。
【0086】
一実施形態では、期間t
3−PREBEGINの開始を検出し、更に、期間t
3−PREBEGINの開始の後、所定時間(即ち、時間t
3−SETTLE)の経過を検出することで、時刻T
3−PREBEGIN−start2の到来を検出してもよい。期間t
3−PREBEGINの開始は、LPモードからHSモードへの切り換えの際に行われる、信号A、B、Cのデータ値の“001”から“000”への遷移を検出することで行ってもよい。
【0087】
図16は、期間t
3−PREBEGINの開始(信号A、B、Cのデータ値の“001”から“000”への遷移時刻)を検出し、期間t
3−PREBEGINの開始の後、時間t
3−SETTLEの経過を検出することで時刻T
3−PREBEGIN−start2の到来を検出する構成の受信回路10の構成を示すブロック図である。
図16では、LPモードにおける信号A、B、Cの受信に用いられるLPレシーバ61a〜61cの出力が、期間t
3−PREBEGINの開始の検出に用いられる。T3−PREBEGIN−start検出ブロック27には、LP−000検出ブロック62と遅延回路63とが設けられ、LP−000検出ブロック62の入力は、LPレシーバ61a〜61cの出力に接続される。LP−000検出ブロック62は、LPレシーバ61a〜61cの出力から信号A、B、Cのデータ値の値“000”への遷移、即ち、期間t
3−PREBEGINの開始を検知する。LP−000検出ブロック62は、期間t
3−PREBEGINの開始を検知すると、その出力をアサートする。遅延回路63は、LP−000検出ブロック62の出力のアサートから所定の遅延時間(即ち、時間t
3−SETTLE)が経過すると、その出力をアサートする。遅延回路63の出力から出力される出力信号が、UI検出期間の開始を示すUI開始検出信号S
DET1として用いられる。
【0088】
UI検出期間を開始する時刻は、時刻T
3−PREBEGIN−start2に限られず、期間t
3−PREBEGINの間のいずれの時刻としてもよい。遅延回路63の遅延時間を、期間t
3−PREPAREの長さより長く、時間t
3−SETTLEよりも短く設定することで、期間t
3−PREBEGINの間の所望の時刻に、UI検出期間の開始を示すUI開始検出信号S
DET1をアサートすることができる。
【0089】
一方、UI検出期間の終了については、UI検出期間の開始が検出された後、所定時間が経過した時刻にUI検出期間が終了されてもよい。UI検出期間の終了を検出すると、UI検出期間タイミング生成回路26は、UI検出イネーブル信号S
UI_ENをネゲートする。
【0090】
UI検出期間の開始時刻が期間t
3−PREBEGINの開始時刻T
3−PREBEGIN−start1に設定される場合、期間t
3−PREBEGINの開始の検出の後、所定時間の経過がT3−PREBEGIN−end検出ブロック28によって検出され、期間t
3−PREBEGINの開始の検出の後、該所定時間が経過した時刻が、UI検出期間が終了する時刻として設定される。また、UI検出期間の開始時刻が、期間t
3−PREBEGINの間に定められた時刻T
3−PREBEGIN−start2に設定される場合、時刻T
3−PREBEGIN−start2の到来の検出の後、所定時間が経過した時刻にUI検出期間が終了されてもよい。期間t
3−PREBEGINの開始の検出の後、又は、時刻T
3−PREBEGIN−start2の到来の検出の後の所定時間の経過は、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGに現れるトリガの数をカウントすることにより検出してもよい。
【0091】
UIの検出結果は、トリガ検出回路21のトリガ検出出力TRIGにおけるジッタやノイズの影響により、ばらつきが生じ得る。UIの検出結果のばらつきの影響を低減するためには、
図17に図示されているように、UI検出回路25に、UIの検出結果を平均化する平均化回路25aが設けられることが好ましい。
図17の構成では、UI検出期間の間に、所定回数だけUIが検出され、平均化回路25aは、検出されたUIの平均である平均化UIを算出する。遅延回路23の遅延時間を制御する遅延制御信号DELAY_CTRLは、算出された平均化UIに応答して生成される。これにより、UIの検出結果のばらつきの影響を低減することができる。
【0092】
上述の実施形態では、期間t
3−PREBEGINの間の少なくとも一部の期間がUI検出期間として設定されていたが、期間t
3−PREBEGINが終了した後、クロック信号Rx_CLKに基づいてUIが検出され、遅延回路23の遅延時間が、クロック信号Rx_CLKに基づいて検出されたUIに応答して制御されてもよい。
図18は、このような動作に対応したクロック再生回路14の構成を示すブロック図である。
【0093】
図18の構成では、クロック再生回路14にセレクタ29が設けられる。セレクタ29は、トリガ検出回路21から出力されるトリガ検出出力TRIGと、SRラッチ22から出力されるクロック信号Rx_CLKの一方をUI検出イネーブル信号S
UI_ENに応答して選択し、選択した信号をUI検出回路25に供給する。詳細には、セレクタ29は、初期状態では、トリガ検出出力TRIGを選択する。その後、UI検出期間タイミング生成回路26によって期間t
3−PREBEGINにおけるUI検出期間の開始が検出され、更に、当該UI検出期間の終了が検知されると、セレクタ29は、クロック信号Rx_CLKを選択する。期間t
3−PREBEGINにおけるUI検出期間の開始が検出されるとUI検出イネーブル信号S
UI_ENがアサートされ、その後、該UI検出期間が終了するとUI検出イネーブル信号S
UI_ENがネゲートされるから、セレクタ29は、UI検出イネーブル信号S
UI_ENから、期間t
3−PREBEGINにおけるUI検出期間の開始と終了を検知することができる。
【0094】
期間t
3−PREBEGINにおけるUI検出期間が終了すると、セレクタ29は、クロック信号Rx_CLKを選択し、クロック信号Rx_CLKをUI検出回路25に供給し始める。それ以後、UI検出回路25は、クロック信号Rx_CLKからUIを検出し、検出したUIに応答して遅延制御信号DELAY_CTRLを生成する。ここで、UI検出回路25に平均化回路25aが含まれている場合、平均化回路25aは、最近に検出された所定数のUIの平均である平均化UIを算出してもよい。遅延回路23の遅延時間を制御する遅延制御信号DELAY_CTRLは、算出された平均化UIに応答して生成される。
【0095】
このような構成によれば、期間t
3−PREBEGINの後、HSモードでのデータ通信が行われている間においても、UIの検出を行うことができる。このような構成によれば、期間t
3−PREBEGINの後においても、UIに応じた遅延回路23の遅延時間の制御を実行することができる。これは、遅延回路23の経時変化に対応する上で好ましい。
【0096】
上述の実施形態において、遅延回路23の遅延時間の変動を抑えるための追加手法として、
図19に図示されているように、遅延回路23について、インバータ41に供給される電源電圧V
con_Oを制御する構成が採用されてもよい。
図19に図示されている遅延回路23の構成では、基準電圧生成回路43とレギュレータ44とが設けられる。基準電圧生成回路43は、制御信号V_CTRLに応答して基準電位V
REFを生成する。レギュレータ44は、電源電圧V
con_Oが基準電位V
REFに一致するように電源電圧V
con_Oを制御する。このような構成の遅延回路23では、電源電圧V
con_Oを制御信号V_CTRLによって制御することにより、遅延回路23の遅延時間を制御し、遅延時間の変動を抑制することができる。例えば、遅延回路23のインバータ41に含まれるMOSトランジスタの閾値電圧の変動に起因する遅延回路23の遅延時間のばらつきについては、MOSトランジスタの閾値電圧に合わせて電源電圧V
con_Oを制御することにより、MOSトランジスタの閾値電圧の変動の影響を抑制することができる。また、基準電圧生成回路43を、基準電圧生成回路43が発生する基準電位V
REFが温度依存性を有するように構成することで、温度による遅延時間の変動を抑制してもよい。
【0097】
以上には、本発明の実施形態が具体的に記載されているが、本発明が上記の実施形態に限定されると解釈してはならない。本発明が様々な変更と共に実施され得ることは、当業者には自明的であろう。
【0098】
例えば、上記では、本発明が液晶表示パネル1を表示ドライバ2で駆動するように構成された液晶表示装置に適用される実施形態について説明しているが、本発明は、他の表示パネル(例えば、OLED(organic light emitting diode)表示パネル)を表示ドライバで駆動する表示装置に適用されてもよい。また、本発明は、表示装置に限らず、様々な機器へのデータ通信に用いられ得ることに留意されたい。