【解決手段】本発明の音響共振器は、第1の電極、第2の電極及び圧電層を含む共振部と、この共振部の一側に配置される複数のシード層と、を含み、圧電層の高結晶性の確保が可能であることにより音響波の損失を最小化し音響共振器のkt2値及び性能を向上させることができるという効果がある。
前記複数のシード層を形成する段階において、前記複数のシード層のうち少なくとも一つのシード層を積層方向にのみ成長させる請求項13又は14に記載の音響共振器の製造方法。
前記第1のシード層又は前記第2のシード層は前記圧電層を形成する物質と同一の結晶系に属する物質を含む請求項18から20のいずれか一項に記載の音響共振器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0013】
データ転送量とデータ転送速度を増加させるために、例えば、薄膜バルク音響共振器(FBAR)のような音響共振器の帯域幅は広い必要がある。
【0014】
このように広い帯域幅を確保するためには、音響共振器のkt2値が増加しなければならない。
【0015】
しかしながら、通常、音響共振器のkt2値は品質係数(QF:Quality Factor)と相反する関係にあり得るため、品質係数が犠牲になることなく音響共振器のkt2値を高めることができる技術が求められる。
【0016】
kt2値を向上させるための一つの方法として、圧電層自体の結晶性を高めるための方法が研究されている。
【0017】
本発明は、圧電材料の結晶性を向上させることにより全体の性能が向上することができる音響共振器を提案する。また、本発明は、圧電層の結晶性の確保によるkt2値の向上のために電極下に複数のシード層を追加する方法を提案する。
【0018】
本発明によれば、音響共振器は、第1の電極、第2の電極、及び上記第1の電極と上記第2の電極の間に位置する圧電層を含む共振部と、上記共振部の一側に配置される複数のシード層と、を含むことを特徴としており、圧電層の結晶性を確保することができ、これにより、音響共振器のkt2値を向上させることができる。
【0019】
本発明によれば、音響共振器の製造方法は、基板の上部に犠牲層を形成する段階と、上記基板又は上記犠牲層の上部に複数のシード層を形成する段階と、上記複数のシード層上に第1の電極を形成する段階と、上記第1の電極の上部に圧電層を形成する段階と、上記圧電層の上部に第2の電極を形成する段階と、を含むことを特徴としており、単純な工程で高いkt2値を有する音響共振器を提供することができる。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例による音響共振器の断面図であり、
図2は、
図1の要部を示した拡大断面図である。
【0021】
これらの図に示されたように、本発明の第1の実施例による音響共振器100は、第1の電極121、第2の電極122、及び上記第1の電極と上記第2の電極の間に位置する圧電層123を含む共振部120と、この共振部の一側に配置される複数のシード層140と、を含んでいる。
【0022】
また、本発明の第1の実施例による音響共振器100は、複数のシード層140を基準に共振部120の反対側に配置された基板110をさらに含むことができる。
【0023】
基板110は、シリコン基板又はSOI(Silicon On Insulator)型の基板であればよい。
【0024】
上記基板110と複数のシード層140の間にはエアギャップ130が形成されることができ、このエアギャップを介して複数のシード層は基板から少なくとも一部が離隔するように配置される。
【0025】
複数のシード層140と基板110の間にエアギャップ130が形成されることにより、圧電層123で発生する音響波(Acoustic Wave)が基板の影響を受けないようにすることができる。
【0026】
また、エアギャップ130によって共振部120で発生する音響波の反射特性が向上することができる。
【0027】
エアギャップ130は空いている空間で、インピーダンスが無限大に近いため、エアギャップによって音響波は損失されず共振部120内に残存することができる。
【0028】
したがって、エアギャップ130によって縦方向への音響波の損失を最小化させることができ、これにより、共振部120の品質係数(QF)を向上させることができる。
【0029】
共振部120は、前述したように第1の電極121と第2の電極122及び圧電層123を含み、下から第1の電極と圧電層及び第2の電極が順次積層されて形成されることができる。
【0030】
これらの層がこの順序で形成されるとき、第1の電極121と第2の電極122の間に圧電層123が配置されることができる。
【0031】
上記共振部120は、第1の電極121と第2の電極122に印加される電気信号により圧電層123を共振させて共振周波数及び反共振周波数を発生させることができる。
【0032】
第1の電極121及び第2の電極122は、金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどのような金属で形成されることができる。
【0033】
共振部120は圧電層123の音響波を用い、例えば、第1の電極121と第2の電極122に信号が印加されると、圧電層の厚さ方向に機械的振動が発生して音響波が生成される。
【0034】
ここで、圧電層123は、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、二酸化シリコン(SiO
2)、ドープされた酸化亜鉛(例えば、W−ZnO)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)などのような圧電体材質で形成されることができる。
【0035】
圧電層123の共振現象は、印加された信号波長の1/2が圧電層の厚さと一致するときに発生する。
【0036】
このような共振現象が発生するとき、電気的インピーダンスが急激に変わるため、本発明の音響共振器は、周波数を選択することができるフィルタとして用いられることができる。
【0037】
共振周波数は、圧電層123の厚さ、及び圧電層を囲んでいる第1の電極121と第2の電極122及び圧電層123の固有の弾性波速度などによって決定される。
【0038】
一例として、圧電層123の厚さが薄ければ薄いほど共振周波数は大きくなる。
【0039】
また、圧電層123が共振部120内にのみ配置されるため、圧電層によって形成された音響波が共振部の外部に漏れることを最小化することができる。
【0040】
共振部120は保護層124をさらに含むことができる。
【0041】
この保護層124は、第2の電極122を覆い、第2の電極が外部環境に露出することを防止する。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0042】
第1の電極121と第2の電極122は、圧電層123の外側に延びて形成され、延びた部分にそれぞれ第1の接続部180と第2の接続部190が連結される。
【0043】
これらの第1の接続部180と第2の接続部190は、共振器とフィルタの特性を確認し、必要な周波数トリミングを行うために備えられることができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
複数のシード層140は、共振部120の一側、即ち、第1の電極121の下に配置される。
【0045】
複数のシード層140は、第1のシード層141と第2のシード層142を含み、第1のシード層と第2のシード層は、平面化した基板110又は犠牲層(図示せず)上にスパッタリングされることにより形成されることができる。
【0046】
第1のシード層141は、窒化アルミニウム(AlN)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)又はその他の同一の結晶性物質、例えば、酸窒化アルミニウム(AlON)、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)などを用いて製造されることができる。
【0047】
第2のシード層142は、第1のシード層141を形成した物質と同一の結晶系又は同一のブラベー格子系(Bravais Lattice System)を有する物質で形成される。一例として、第1のシード層が窒化アルミニウム(AlN)で形成されるとき、窒化アルミニウムは六方晶系を有しているため、第2のシード層142はマグネシウム、チタン、亜鉛などのように同一の幾何形状の単位格子(Unit Cell)を有する六方晶系の金属で形成されることができる。
【0048】
図1又は
図2は第2のシード層142上に第1のシード層141が積層された例を示しているが、必ずしもこれに限定されず、逆に、第1のシード層上に第2のシード層が積層されるように形成されてもよい。
【0049】
これらのシード層のうち少なくとも一つが圧電体材料で形成されることにより、電極として作用せず、むしろ圧電層としてその機能を発揮し、圧電層123の圧電特性に影響を与えるのと同じになる。
【0050】
よって、これらのシード層の膜厚が厚くなりすぎると、圧電層の圧電特性の影響が大きくなってしまうため、その影響が必要以上に大きくならないように、第1のシード層141の厚さは10〜1,000Å程度の範囲内にあることが好ましい。
【0051】
また、チタンなどのように六方晶系の金属で、又は同一の結晶格子構造(Crystal Lattice Structure)を有する金属でできた第2のシード層142は(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長しなければならないが、その厚さが1,000Å以上となると、(001)方向以外に(010)方向にも成長するようになり、第1のシード層141との格子不整合(Lattice Mismatch)を増加させる可能性がある。
【0052】
結局、(010)方向への成長が、第2のシード層142の上で成長する第1の電極121と圧電層123の結晶性の低下の原因となるため、第2のシード層142の厚さも、(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長するようになる1,000Å以下とすることが好ましい。
【0053】
圧電層123の結晶性を高めるためには、その下に載せられた第1の電極121の結晶性が確保されなければならず、このために、本発明では、第1の電極の下に複数のシード層140を用いる。
【0054】
例えば、圧電層123が窒化アルミニウム(AlN)で形成され、第1の電極121がモリブデンで形成される場合、窒化アルミニウムでできた圧電層の薄膜は、初期に多結晶(Polycrystalline)成長特性を示してから成長速度が最も速い(001)方向に整列する。
【0055】
もし、シード層なしでモリブデンでできた第1の電極121を成長させると、モリブデンの結晶性の低下によって、その上に蒸着される窒化アルミニウムの圧電層123も結晶性が非常に悪くなる。
【0056】
しかしながら、例えば、窒化アルミニウムでできた第1のシード層141を用いると、(001)方向、即ち、積層方向に成長し始めた窒化アルミニウムシードがモリブデンでできた第1の電極121の結晶性の確保を可能にし、その上に載せられた窒化アルミニウムの圧電層123も高結晶性を有するようになる。
【0057】
このように圧電層123の結晶性に優れると、音響共振器100のkt2値が大きくなるという効果が得られる。
【0058】
一方、窒化アルミニウム(002)とモリブデン(110)は格子不整合が12.45%と非常に大きいため、窒化アルミニウムでできた圧電層の厚さを厚くして圧電特性を高める方法を適用することができるが、サイズの限界があり、多結晶成長が単結晶成長に次第に変化するまで圧電層の厚さを厚くする方法のみを用いるのには困難がある。
【0059】
しかしながら、モリブデン(110)とチタン(002)の格子不整合は7.64%であるため、チタンシード層を並置することにより、モリブデンの結晶性を確保するのが有利となる。
【0060】
モリブデンが(110)結晶面方向に整列されると、(110)結晶面を露出したモリブデン層上に窒化アルミニウム層を形成することにより窒化アルミニウムの結晶性を確保することも有利となる。
【0061】
X線回折試験によれば、チタンを(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長するようにしその上にモリブデンと窒化アルミニウムを蒸着するときは、窒化アルミニウムシードの上に載せたときと同様に、窒化アルミニウムは(001)方向にのみ、モリブデンは(110)方向にのみ成長し、窒化アルミニウムシードのみを用いたときより向上した圧電層の結晶性を確保することができることが確認できる。
【0062】
また、窒化アルミニウム(002)とチタン(002)の格子不整合は5.49%で、モリブデン(110)とチタン(002)の格子不整合である7.64%より低いことが分かる。
【0063】
さらに、窒化アルミニウムとチタンは同一の六方晶系(Hexagonal System)を有しており、二つの物質を積層するときは結晶性の確保が有利であることが分かる。
【0064】
よって、本発明は、圧電層123の結晶性の確保によるkt2値の向上のために、例えば、窒化アルミニウムなどでできた第1のシード層141の下に、格子不整合の低い、例えば、チタンなどでできた第2のシード層142、即ち、複数のシード層が設けられたことを特徴としている。
【0065】
例えば、窒化アルミニウムでできた第1のシード層141の下に、格子不整合の低いチタンでできた第2のシード層142を採用すると、チタンは(001)方向、即ち、積層方向に成長し、チタン(002)と窒化アルミニウム(002)は低い格子不整合を有するため、窒化アルミニウムでできた第1のシード層は初期に多結晶成長せずにすぐに(001)方向、即ち、積層方向に成長する。
【0066】
これにより、窒化アルミニウム(002)でできた第1のシード層141の高結晶性が確保され、その上に成長したモリブデン(110)でできた第1の電極121と窒化アルミニウム(002)でできた圧電層123の結晶性が向上し、音響波の損失が大きくならず且つ高いkt2値が得られるようになる。
【0067】
図6は、本発明の音響共振器の製造方法の一例を示している。
【0068】
まず、基板110の上部に犠牲層を形成する(段階610)。上記犠牲層の材質としては、二酸化シリコン、ポリシリコン又はポリマーなどを用いることができる。
【0069】
上記犠牲層は、後のエッチング工程により除去されてエアギャップ130を形成するようになる。犠牲層の形状は、後で形成されるエアギャップの形状に沿うようになる。
【0070】
次に、基板110又は犠牲層の上部に複数のシード層140を順次形成する(段階620)。シード層を製造する技術及びプロセスとしては、当該技術分野に広く知られている、例えば、スパッタリング技術を用いることができる。
【0071】
特に、スパッタリングの工程条件、例えば、温度、真空度、電源の強さ、注入されるガス量などを適当に制御することにより、複数のシード層140を(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長させることができる。
【0072】
このようにほとんどが所望の配向、即ち、(001)方向に配向していると、後述するように、複数のシード層140上に圧電層123を形成するとき、圧電層がシード層140の結晶構造を継承して同一の結晶構造で配向される。
【0073】
第1のシード層141は、窒化アルミニウム(AlN)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)、酸窒化アルミニウム(AlON)などの多様な材質で形成されることもできる。
【0074】
また、第2のシード層142は、チタン(Ti)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、マグネシウムや亜鉛などのような金属で形成されることもできる。
【0075】
例えば、複数の共振器を含むフィルタにおいて、高いkt2値が必要な共振器にのみ選択的に第2のシード層142を形成しなければならない場合は、スパッタリングによりチタンで第2のシード層を形成した後、パターニングを施して必要な部分にのみ第2のシード層を残し、後続工程を行ってもよい。
【0076】
一例によれば、第2のシード層142は、第1のシード層141前に、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などのような六方最密構造(Hexagonal Close Packed Structure)を有する物質で形成されることができる。例えば、10〜1,000Åの厚さを有するチタンシード層がシリコン(Si)基板上にすぐに形成されることができる。スパッタリングにより蒸着されチタンでできた第2のシード層の結晶方位は、その六方格子の(002)面を露出するために調節されることができる。チタンシード層の厚さが1,000Å以上となると、格子の(010)面に沿う成長が増大して格子不整合を増加させる。
【0077】
チタン層の(002)面に相応する上部面に第1のシード層141が成長することができる。第1のシード層141は、窒化アルミニウム(AlN)層であり得るが、これに限定されるものではなく、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)、酸窒化アルミニウム(AlON)などの多様な材質で形成されることができる。
【0078】
窒化アルミニウム(AlN)でできた第1のシード層141は、格子不整合が低いため、チタン層の(002)面に高結晶性を有して成長することができる。窒化アルミニウム(AlN)でできたシード層は、その六方格子の(002)面を露出するようにスパッタリングにより蒸着されることができる。窒化アルミニウム(002)の第1のシード層141を形成する前にチタン(002)の第2のシード層142を形成することにより、シリコン(Si)基板上に窒化アルミニウムの初期の多結晶成長を防止することができる。したがって、複数のシード層140は、その上に蒸着される後続層の高結晶性を確保することができるようになる。
【0079】
次いで、複数のシード層140の上部に第1の電極121と圧電層123を順次形成する。
【0080】
段階630において、第1の電極121は、シード層140の上部に導電層を蒸着することにより形成されることができ、同様に、段階640において、圧電層123は、第1の電極121上に圧電物質を蒸着することにより形成されることができる。
【0081】
第1の電極121は、モリブデン(Mo)材質で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、金、ルテニウム、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどの多様な金属で形成されることもできる。
【0082】
一例によれば、モリブデン(Mo)でできた第1の電極121は、窒化アルミニウム(AlN)で形成された第1のシード層141の(002)面に蒸着され、この第1のシード層141は、チタン(Ti)で形成された第2のシード層142の(002)面に蒸着される。例えば、モリブデン(110)の第1の電極121は、(002)に配向した窒化アルミニウムの第1のシード層141上に成長することができる。
【0083】
また、圧電層123は、窒化アルミニウム(AlN)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、酸化亜鉛(ZnO)や二酸化シリコン(SiO
2)、ドープされた酸化亜鉛(例えば、W−ZnO)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)などの多様な圧電材質で形成されることもできる。
【0084】
一例によれば、窒化アルミニウム(AlN)で形成された圧電層123は、窒化アルミニウム(002)の第1のシード層141とチタン(002)の第2のシード層142上に形成されたモリブデン(110)の第1の電極121上に形成されることができる。第1のシード層141と第2のシード層142の間、第1のシード層141と第1の電極121の間、及び第1の電極121と圧電層123の間の境界面で結晶方位を調節することにより、高結晶性の圧電層123が得られる。
【0085】
ここで、第1の電極121と圧電層123はそれぞれ、導電層又は圧電層の上部にフォトレジストを蒸着し、フォトリソグラフィー工程によりパターニングを施した後、パターニングされたフォトレジストをマスクとして不要な部分を除去することにより必要なパターンで形成されることができる。
【0086】
これにより、圧電層123は第1の電極121の上部にのみ残るようになるため、第1の電極は圧電層の周辺にさらに突出する形で残るようになる。
【0087】
次いで、段階650で第2の電極122を形成する。
【0088】
第2の電極122は、圧電層123と第1の電極121の上に導電層を形成した後、導電層上にフォトレジストを蒸着し、フォトリソグラフィー工程によりパターニングを施した後、パターニングされたフォトレジストをマスクとして必要なパターンで形成されることができる。
【0089】
第2の電極122は、ルテニウム(Ru)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、金、モリブデン、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどの多様な金属で形成されることもできる。
【0090】
また、第2の電極122と圧電層123の上部に保護層124を形成してもよい(段階660)。
【0091】
保護層124は、絶縁物質で形成されることができ、絶縁物質としては、シリコンオキサイド系、シリコンナイトライド系及びアルミニウムナイトライド系の物質を用いることができる。
【0092】
次いで、例えば、周波数トリミングに用いられることができる接続部180、190を形成する(段階670)。
【0093】
第1の接続部180と第2の接続部190はそれぞれ、保護層124を貫通して第1の電極121と第2の電極122に接合される。
【0094】
第1の接続部180は、エッチングにより保護層124を部分的に除去して穴を形成することにより第1の電極121を外部に露出させた後、金(Au)又は銅(Cu)などを第1の電極上に蒸着して形成されることができる。
【0095】
同様に、第2の接続部190も、エッチングにより保護層124を部分的に除去して穴を形成することにより第2の電極122を外部に露出させた後、金(Au)又は銅(Cu)などを第2の電極上に蒸着して形成されることができる。
【0096】
これらの接続部180、190を用いて共振部120又はフィルタの特性を確認し、必要な周波数トリミングを行った後、エアギャップ130を形成する。
【0097】
エアギャップ130は、前述したように犠牲層を除去することにより形成され、これにより、共振部120が完成される。
【0098】
ここで、犠牲層は、乾式エッチングにより除去されることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、犠牲層をポリシリコンで形成する場合、この犠牲層は、二フッ化キセノン(XeF
2)などのような乾式エッチング用ガスによって除去されることができる。
【0100】
一方、本発明による音響共振器とその製造方法は、前述した実施例に限定されず、多様な変形が可能である。
【0101】
図3は、本発明の第2の実施例による音響共振器の断面図であり、
図4は、
図3の要部を示した拡大断面図である。
【0102】
これらの図に示されたように、本発明の第2の実施例による音響共振器200は、第1の電極121、第2の電極122、及び第1の電極と第2の電極の間に位置する圧電層123を含む共振部120と、この共振部の一側に配置される複数のシード層140と、これらのシード層を基準に共振部の反対側に配置されるメンブレン150と、を含んでいる。
【0103】
本発明の第2の実施例では、メンブレン150が複数のシード層140の下に配置される点のみを除き、残りの構成要素は前述した第1の実施例の構成要素と同一である。
【0104】
よって、本発明の第2の実施例による音響共振器200を説明するにあたり、第1の実施例による音響共振器100と同一の構成要素については同一の符号を付与して説明する。
【0105】
本発明の第2の実施例による音響共振器200も、複数のシード層140を基準に共振部120の反対側に配置された基板110をさらに含むことができ、メンブレン150が複数のシード層と基板の間に介在される。
【0106】
基板110は、シリコン基板又はSOI型の基板であればよい。
【0107】
このような基板110とメンブレン150の間にはエアギャップ130が形成されることができ、このエアギャップを介してメンブレンは基板から少なくとも一部が離隔するように配置される。
【0108】
また、共振部120がメンブレン150上に形成されるため、共振部もエアギャップ130を介して基板110から離隔するようになる。
【0109】
基板110とメンブレン150の間にエアギャップ130が形成されることにより、圧電層123で発生する音響波が基板の影響を受けないようにすることができる。
【0110】
また、エアギャップ130によって共振部120で発生する音響波の反射特性が向上することができる。
【0111】
エアギャップ130は空いている空間で、インピーダンスが無限大に近いため、エアギャップ130によって音響波は損失されず共振部120内に残存することができる。
【0112】
したがって、エアギャップ130によって縦方向への音響波の損失を最小化させることができ、これにより、共振部120の品質係数(QF)を向上させることができる。
【0113】
メンブレン150は、エアギャップ130の上部に位置してエアギャップの形状を維持させ、共振部120の構造を支持する役割をする。
【0114】
このメンブレン150は、二酸化シリコン(SiO
2)などで構成されることができる。
【0115】
後述するように、犠牲層をエッチングしてエアギャップ130を形成するとき、メンブレン150がエッチングストッパーとして機能することができるようにメンブレンを複数のメンブレン層で形成することが好ましい。
【0116】
例えば、
図5に示されたように、メンブレンは、例えば、二酸化シリコン(SiO
2)などで形成された第1のメンブレン層151と、例えば、窒化シリコン(SiN
X)などで形成され、第1のメンブレン層上に形成された第2のメンブレン層152と、を含むことができる。
【0117】
また、基板110を保護するために基板上にもエッチングストッパーとして機能する阻止層160が形成されることができ、この阻止層には酸化シリコン(SiO
X)又は窒化シリコン(SiN
X)などが含まれることができる。
【0118】
共振部120は、前述したように第1の電極121と圧電層123及び第2の電極122を含み、下から第1の電極と圧電層及び第2の電極が順次積層されて形成されることができる。
【0119】
上記共振部120は、第1の電極121と第2の電極122に印加される電気信号により圧電層123を共振させて共振周波数及び反共振周波数を発生させることができる。
【0120】
第1の電極121及び第2の電極122は、金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどのような金属で形成されることができる。
【0121】
共振部120は圧電層123の音響波を用い、例えば、第1の電極121と第2の電極122に信号が印加されると、圧電層の厚さ方向に機械的振動が発生して音響波が生成される。
【0122】
ここで、圧電層123は、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)及び二酸化シリコン(SiO
2)、ドープされた酸化亜鉛(例えば、W−ZnO)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)などのような圧電体材質で形成されることができる。
【0123】
共振部120は保護層124をさらに含むことができる。
【0124】
この保護層124は、第2の電極122を覆い、第2の電極が外部環境に露出することを防止する。
【0125】
第1の電極121と第2の電極122は、圧電層123の外側に延びて形成され、延びた部分にそれぞれ第1の接続部180と第2の接続部190が連結される。
【0126】
これらの第1の接続部180と第2の接続部190は、共振器とフィルタの特性を確認し、必要な周波数トリミングを行うために備えられることができるが、これに限定されるものではない。
【0127】
複数のシード層140が共振部120とメンブレン150の間、即ち、第1の電極121の下とメンブレン150の上に配置される。
【0128】
複数のシード層140は、第1のシード層141と第2のシード層142を含み、第1のシード層と第2のシード層は、平面化した基板110又は犠牲層(図示せず)上にスパッタリングされることにより形成されることができる。
【0129】
第1のシード層141は、窒化アルミニウム(AlN)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)、又はその他の同一の結晶性物質、例えば、酸窒化アルミニウム(AlON)、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)などを用いて製造されることができる。
【0130】
第2のシード層142は、第1のシード層141を形成した物質と同一の結晶系又は同一のブラベー格子系を有する物質で形成される。一例として、第1のシード層が窒化アルミニウム(AlN)で形成されるとき、窒化アルミニウムは六方晶系を有しているため、第2のシード層142はマグネシウム、チタン、亜鉛などのように同一の幾何形状の単位格子を有する六方晶系の金属で形成されることができる。
【0131】
図3〜
図5には第2のシード層142上に第1のシード層141が積層された例を示しているが、必ずしもこれに限定されず、逆に、第1のシード層上に第2のシード層が積層されるように形成されてもよい。
【0132】
これらのシード層140のうち少なくとも一つが圧電体材料で形成されることにより、電極として作用せず、むしろ圧電層としてその機能を発揮し、圧電層123の圧電特性に影響を与えるのと同じになる。
【0133】
よって、これらのシード層の膜厚が厚くなりすぎると、圧電層123の圧電特性の影響が大きくなってしまうため、その影響が必要以上に大きくならないように、第1のシード層141の厚さは10〜1,000Å程度の範囲内にあることが好ましい。
【0134】
また、チタンなどのように六方晶系の金属でできた第2のシード層142は(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長しなければならないが、その厚さが1,000Å以上となると、(001)方向以外に(010)方向にも成長するようになり、第1のシード層141との格子不整合を増加させる可能性がある。
【0135】
これは結局、その上で成長する第1の電極121と圧電層123の結晶性の低下の原因となるため、第2のシード層142の厚さも、(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長する1,000Å以下とすることが好ましい。
【0136】
圧電層123の結晶性を高めるためには、その下に載せられた第1の電極121の結晶性が確保されなければならず、このために、本発明では、第1の電極の下に複数のシード層140を用いる。
【0137】
特に、本発明は、圧電層123の結晶性の確保によるkt2値の向上のために、例えば、窒化アルミニウムなどでできた第1のシード層141の下に、格子不整合の低い、例えば、チタンなどでできた第2のシード層142、即ち、複数のシード層が設けられたことを特徴としている。
【0138】
例えば、窒化アルミニウムでできた第1のシード層141の下に、格子不整合の低いチタンでできた第2のシード層142を採用すると、チタンは(001)方向、即ち、積層方向に成長し、チタンと窒化アルミニウムは低い格子不整合を有するため、窒化アルミニウムでできた第1のシード層は初期に多結晶成長せずにすぐに(001)方向、即ち、積層方向に成長する。
【0139】
これにより、窒化アルミニウムでできた第1のシード層141の高結晶性が確保され、その上に成長したモリブデンでできた第1の電極121と窒化アルミニウムでできた圧電層123の結晶性が向上し、音響波の損失が大きくならず且つ高いkt2値が得られるようになる。
【0140】
以下では、音響共振器の製造方法の他の例を説明する。
【0141】
まず、
図6の段階610のように、基板110の上部に犠牲層を形成する。上記犠牲層の材質としては、二酸化シリコン、ポリシリコン又はポリマーなどを用いることができる。
【0142】
上記犠牲層は、後のエッチング工程により除去されてエアギャップ130を形成するようになる。
【0143】
次に、基板110又は犠牲層の上部にメンブレン150を蒸着して形成する。
【0144】
このメンブレン150に対しては、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリングなどのような蒸着法のうち、形成する材質によって適切な方法が選択されて用いられることができる。
【0145】
また、メンブレンは、例えば、二酸化シリコン(SiO
2)などでできた第1のメンブレン層151が形成され、この第1のメンブレン層上に、例えば、窒化シリコン(SiN
X)などでできた第2のメンブレン層152が形成されることができる。
【0146】
次に、メンブレン150の上部に複数のシード層140を順次形成する。シード層を製造する技術及びプロセスとしては、当該技術分野に広く知られている、例えば、スパッタリング技術を用いることができる。
【0147】
特に、スパッタリングの工程条件、例えば、温度、真空度、電源の強さ、注入されるガス量などを適当に制御することにより、シード層140を(001)方向、即ち、積層方向にのみ成長させることができる。
【0148】
このようにほとんどが所望の配向、即ち、(001)方向に配向していると、後述するように複数のシード層上に圧電層123を形成するとき、圧電層がシード層140の結晶構造を継承して同一の結晶構造で配向される。
【0149】
第1のシード層141は、窒化アルミニウム(AlN)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)、酸窒化アルミニウム(AlON)などの多様な材質で形成されることもできる。
【0150】
また、第2のシード層142は、チタン(Ti)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、マグネシウム(Mg)や亜鉛(Zn)などのような金属で形成されることもできる。
【0151】
次いで、複数のシード層140の上部に第1の電極121と圧電層123を順次形成する。
【0152】
第1の電極121は、シード層140の上部に導電層を蒸着することにより形成されることができ、同様に、圧電層123は、第1の電極上に圧電物質を蒸着することにより形成されることができる。
【0153】
第1の電極121は、モリブデン(Mo)材質で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、金、ルテニウム、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどの多様な金属で形成されることもできる。
【0154】
また、圧電層123は、窒化アルミニウム(AlN)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、酸化亜鉛(ZnO)や二酸化シリコン(SiO
2)、ドープされた酸化亜鉛(例えば、W−ZnO)、ドープされた窒化アルミニウム(例えば、Sc−AlN、MgZr−AlN、Cr−AlN、Er−AlN、Y−AlN)などの多様な圧電材質で形成されることもできる。
【0155】
ここで、第1の電極121と圧電層123はそれぞれ、導電層又は圧電層の上部にフォトレジストを蒸着し、フォトリソグラフィー工程によりパターニングを施した後、パターニングされたフォトレジストをマスクとして不要な部分を除去することにより必要なパターンで形成されることができる。
【0156】
これにより、圧電層123は第1の電極121の上部にのみ残るようになるため、第1の電極は圧電層の周辺にさらに突出する形で残るようになる。
【0157】
次いで、第2の電極122を形成する。
【0158】
第2の電極122は、圧電層123と第1の電極121の上に導電層を形成した後、導電層上にフォトレジストを蒸着し、フォトリソグラフィー工程によりパターニングを施した後、パターニングされたフォトレジストをマスクとして必要なパターンで形成されることができる。
【0159】
第2の電極122は、ルテニウム(Ru)で形成されることができるが、これに限定されるものではなく、金、モリブデン、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、クロム、ニッケル、イリジウムなどの多様な金属で形成されることもできる。
【0160】
また、第2の電極122と圧電層123の上部に保護層124を形成してもよい。
【0161】
また、第1の接続部180と第2の接続部190はそれぞれ、保護層124を貫通して第1の電極121と第2の電極122に接合される。
【0162】
これらの接続部180、190を用いて共振部120又はフィルタの特性を確認し、必要な周波数トリミングを行った後、エアギャップ130を形成する。
【0163】
エアギャップ130は、前述したように犠牲層を除去することにより形成され、これにより、共振部120が完成される。
【0164】
ここで、犠牲層は、乾式エッチングにより除去されることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0165】
例えば、犠牲層をポリシリコンで形成する場合、この犠牲層は、二フッ化キセノン(XeF
2)などのような乾式エッチング用ガスによって除去されることができる。
【0166】
このように、犠牲層をエッチングしてエアギャップ130を形成するとき、メンブレン150が複数のメンブレン層で形成されていると、第1のメンブレン層151上に形成された第2のメンブレン層152がエッチングストッパーとして機能し、その上に形成された複数のシード層140をエッチングから保護するようになる。
【0167】
第1のメンブレン層151は、例えば、二酸化シリコン(SiO
2)などで形成されることができ、第2のメンブレン層152は、例えば、窒化シリコン(SiN
X)などで形成されることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0168】
一方、本発明による音響共振器とその製造方法は、前述した実施例に限定されず、多様な変形が可能である。
【0169】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。