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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-112840(P2017-112840A)
(43)【公開日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】動物忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/16 20110101AFI20170602BHJP
【FI】
   A01M29/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-248225(P2015-248225)
(22)【出願日】2015年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】506267673
【氏名又は名称】キーオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】大友 光博
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121AA06
2B121AA07
2B121DA51
2B121DA58
2B121DA60
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA08
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】音波の周波数や音の放出時間を変化させて動物忌避作用の低下を防ぐ。
【解決手段】動物の検知信号を受けたとき、又は、予定時刻に達したときに、無作為に変化する周波数の音波制御信号を休止時間としての時間間隔ごとに出力する制御手段30と、制御手段30から出力された音波制御信号に基づいて音波を発信する音波発信器40と、この音波発信器40から出力された音波信号に基づいて音を放出する音放出手段50と、を有する。制御手段30は、休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能を有し、休止時間を隔てて0.5〜1.5secの時間内でだけ上記音波制御信号を繰り返し出力する機能を有するほか、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに周波数を無作為に変化させる機能を有する。制御手段30によって出力される周波数が1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を放出することによって動物を忌避するための動物忌避装置であって、
無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する制御手段と、この制御手段から出力された上記音波制御信号に基づいて音波を発信する音波発信器と、この音波発信器から出力された音波信号に基づいて音を放出する音放出手段と、を有することを特徴とする動物忌避装置。
【請求項2】
上記制御手段は、動物の存在を検知する検知器がその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有することを特徴とする請求項1に記載した動物忌避装置。
【請求項3】
上記制御手段は、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器の上記起動信号を受けて無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、上記時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有することを特徴とする請求項1に記載した動物忌避装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能を有する請求項2又は請求項3に記載した動物忌避装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記休止時間を隔てて、0.5〜1.5secの時間内で、無作為に変化する周波数の上記音波制御信号を繰り返し出力する機能を有する請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【請求項6】
上記制御手段は、0.5〜2msecの時間内で選択される時間ごとに上記周波数を無作為に変化させる機能を有する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【請求項7】
上記制御手段によって出力される周波数が1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載した動物忌避装置。
【請求項8】
上記制御手段によって出力される周波数が2〜12kHzの範囲内で無作為に変化する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載した動物忌避装置。
【請求項9】
上記音放出手段が、上記音波発信器から出力された音波信号を音声信号に変換して増幅する音声出力手段と、この音声出力手段に接続されて音を放出するスピーカと、を有する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【請求項10】
上記音波発信器がパルス波形の音波信号を出力する機能を有する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【請求項11】
上記音波発信器が、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能を有する請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を放出して動物を追い払うことに使用される動物忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より鳥獣害対策としての種々の忌避装置ないし忌避システムが知られている。たとえば、爆音やディストレスコールのような大音響を利用したもの、鳥獣が嫌う音を発生させるもの、超音波を利用するもの、ロケット花火のように実際に物体をとばして鳥獣を追い払うものなどが知られている。こういった忌避システムによって、空港などにおけるバードストライクや、風力発電機に巻き込まれる鳥を追い払うことは、鳥を殺傷せずに忌避し被害に遭わないようにすることで、動物保護にも役立つものである。
【0003】
先行例として、所定エリア内に侵入した害獣、たとえばイノシシを、周波数が20〜32kHzで音圧レベルが70dB以上である超音波を照射することによって、エリア外へ逃避させることができるとする害獣威嚇装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1では、超音波を間欠的に放射することについても言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−112098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記装置ないしシステムでは、動物の学習能力に基づく慣れによって忌避作用が早期に低減してしまうという問題があった。先行例に係る害獣威嚇装置についても同様の問題があった。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、音を放出して動物を一定の場所から追い払ったり一定の場所に近付かないようにすることを基本とし、その上で、音の周波数を無作為に変化させたり、音の周波数や放出時間を無作為に変化させたりするという対策を講じることにより、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低下してしまうという事態を生じにくくすることが可能になる動物忌避装置を提供することを目的とする。なお、本発明に係る動物忌避装置の使用対象となる動物には、4足歩行の獣類は勿論、鳥類や大形あるいは小形の魚類も含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、音を放出することによって動物を忌避するための動物忌避装置であって、無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する制御手段と、この制御手段から出力された上記音波制御信号に基づいて音波を発信する音波発信器と、この音波発信器から出力された音波信号に基づいて音を放出する音放出手段と、を有する。この発明によると、音放出手段から放出される音の高低が無作為に変化する。そのため、動物にとっては音の聞こえ方に関して学習困難な状況が作り出され、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態を回避しやすくなる。
【0008】
本発明において、上記制御手段は、動物の存在を検知する検知器がその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有するものであってもよい。この発明によると、検知器が動物の存在を検知すると、制御手段が、上記時間制御器により制御される休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器が音波信号を出力する。そして、その音波信号に基づいて音放出手段が音を放出する。しかも、音波制御信号の周波数が無作為(ランダム)に変化することにより、動物にとっては音の高低などに関して学習困難な状況が作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が回避される。
【0009】
本発明において、上記制御手段は、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器の上記起動信号を受けて無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、上記時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有するものであってもよい。この発明によると、時間制御器が予定時刻に起動信号を出力すると、その起動信号を受けた制御手段が、上記時間制御器により制御される休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器が音波信号を出力する。そして、その音波信号に基づいて音放出手段が音を放出する。しかも、音波制御信号の周波数が無作為(ランダム)に変化することにより、動物にとっては音の高低などに関して学習困難な状況が作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が回避される。
【0010】
上記のように音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況を作り出して忌避作用の低減を回避するには、特に、上記制御手段が、上記休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能を有していることが望ましい。音波制御信号を出力しない休止時間が余りに短すぎたり長過ぎたりすると、動物にとっての学習困難な状況が作り出されにくくなると考えられることから、休止時間は1〜3secの範囲から無作為に選択されることが望ましい。
【0011】
また、上記制御手段は、上記休止時間を隔てて、0.5〜1.5secの時間内で、無作為に変化する周波数の上記音波制御信号を繰り返し出力する機能を有することが望ましい。制御手段が音波制御信号を繰り返し出力する時間が余りに短すぎたり長過ぎたりすると、動物にとっての学習困難な状況が作り出されにくくなると考えられることから、出力時間は0.5〜1.5secの範囲から無作為に選択されることが望ましい。
【0012】
本発明において、上記制御手段は、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに上記周波数を無作為に変化させる機能を有することが望ましい。制御手段が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数を無作為に変化させる機能を有していると、音の高低が極めて短時間の内に頻繁に変化することになるので、動物にとっての学習困難な状況が顕著に作り出されるようになる。
【0013】
本発明では、上記制御手段によって出力される周波数が1〜50kHzの範囲内で無作為に変化することが望ましい。周波数が1〜50kHzの音は相当に高音域の音であり、動物を追い払うのに有効である。
【0014】
本発明では、上記制御手段によって出力される周波数が2〜12kHzの範囲内で無作為に変化することが望ましい。周波数が2〜12kHzの音は鳥類を追い払うのに特に有益であることが判っている。
【0015】
本発明では、上記音放出手段が、上記制御手段から出力された音波信号を音声信号に変換して増幅する音声出力手段と、この音声出力手段に接続されて音を放出するスピーカと、を有することが望ましい。このように音放出手段によって音が放出されるようになっていると、音のボリウムを変化させて動物に対する威嚇作用を高めやすくなり、そのことが動物を追い払う作用を向上させることに役立つ。
【0016】
本発明では、上記音波発信器がパルス波形の音波信号を出力する機能を有することが望ましい。また、本発明では、上記音波発信器が、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能を有することが望ましい。動物に対する威嚇作用が高まるという点では、連続波形による音よりもパルス波形による音の方が優れた効果を発揮し、さらに、単なるパルス波形による音よりも、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形による音の方が優れた効果を発揮することが判っている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなるので、長期間に亘って高い忌避作用を持続して発揮させることが可能になり、永続的な忌避作用を得やすくなる。また、音の周波数を変化させたり、パルス波形をオーバーシュート又はアンダーシュートに変調させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)及び(B)は本発明の異なる実施形態に係る動物忌避装置の概略構成図である。
図2】制御手段によって出力される音波制御信号の周波数の範囲を示した説明図である。
図3】制御手段の時間制御器による間欠出力制御のパターンを例示した説明図である。
図4】音放出時間t0〜tn内で0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図5】音波放出時間t0〜t1内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図6】音波放出時間t2〜t3内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図7】オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(A)(B)は本発明の異なる実施形態に係る動物忌避装置の概略構成図である。また、図2は制御手段30によって出力される音波制御信号の周波数の範囲を示した説明図、図3は制御手段30の時間制御器32による間欠出力制御のパターンを例示した説明図である。さらに、図4は音放出時間t0〜tn内で0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図5は音波放出時間t0〜t1内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図6は音波放出時間t2〜t3内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図7はオーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を例示した説明図である。
【0020】
図1(A)に概略的に示した動物忌避装置の電源Pは、乾電池などの可搬型バッテリであっても商用電源であってもよく、この電源Pから出力される電力が、検知器10や時間制御器20、制御手段30、音波発信器40、音放出手段50などの駆動電力に利用される。
【0021】
検知器10には赤外線センサーなどの一般的な動物検知センサーを採用することが可能であり、動物が検知領域に侵入すると、その動物の存在を検知してその検知信号を出力する。動物には、4足歩行の脊椎動物に分類されるイノシシやシカといった獣類やヘビなどの軟体動物のほか、カラスやハトなどの鳥類、さらにはサメやイルカなどの大形魚やイワシなどの小形魚、その他の中形魚なども含まれる。検知器10が動物の存在を検知することによって出力される検知信号は制御手段30に入力される。
【0022】
制御手段30は、検知器10が動物の存在を検知してその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有し、その機能が周波数制御器31によって発揮される。
【0023】
周波数制御器31は、音波制御信号の周波数を制御する要素であり、図2に示したように、この周波数制御器31の機能により、音波制御信号の周波数を1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する値に設定することができるようになっている。周波数が1〜50kHzの音は相当に高音域の音であり、しかもその範囲内で無作為に変化する音は動物を追い払うのに明らかに有効な帯域であるとされている。周波数が1kHzよりも小さいと中音域ないし低音域の音になり、動物を追い払う効果が希薄化され、また、動物が音慣れしやすいとされている。周波数が50kHzを超えると最高音域になり、動物の可聴範囲外になることが懸念される。また、忌避対象が鳥類で有る場合には、音波制御信号の周波数を2〜12kHzの範囲内で無作為に変化する値に定めることができるようになっている。周波数が2〜12kHzの音は相当に高音域の音であり、しかもその範囲内で無作為に変化する音は鳥類を追い払うのに明らかに有効な帯域である。さらに、周波数制御器31は、上記した音波制御信号の出力時間内に、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに、音波信号の周波数を無作為に変化させる機能を有している。
【0024】
また、周波数制御器31が出力する音波制御信号は、上記時間制御器20により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力される。したがって、時間制御器32は、周波数制御器31が出力する音波制御信号の出力時間を制御する要素である。そして、時間制御器32により、周波数制御器31が出力する音波制御信号を休止時間を含まずに一定の時間だけ連続させるような制御方法(連続出力制御)を採用することが可能であるだけでなく、周波数制御器31が出力する音波制御信号を、出力する時間と出力しない休止時間とを交互に繰り返す制御方法(間欠出力制御)を採用することも可能である。図3によって例示した時間制御器32による間欠出力制御のパターンでは、図1(A)に示した検知器10が動物の存在を検知している時間帯t0〜t5において、周波数制御器31による音波制御信号の出力時間帯をt0〜t1、t2〜t3、t4〜t5で示し、休止時間帯をt1〜t2、t3〜t4で示している。同図に示したパターンでは、音波制御信号の出力時間が0.5〜1.5secの範囲から無作為に選択され、休止時間が1〜3secの範囲から無作為に選択される。
【0025】
音波発信器40は、制御手段30の周波数制御器31や時間制御器32によって制御された音波制御信号を音波信号に変換して音放出手段50に出力する。
【0026】
図4には、音波発信器40により時間範囲t0〜tn(たとえば20秒間)で音波信号の連続出力制御を採用した場合の音波信号の周波数とパルス波形とを例示している。このものでは、時間T=0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに周波数とパルス波形とが無作為に変化している。
【0027】
図5には、音波発信器40により時間範囲t0〜t1(たとえば1.5秒間)で、音波信号の間欠出力制御を採用した場合の音波信号の周波数とパルス波形とを例示している。このものでは、時間T=2msecの範囲で選択される時間ごとに周波数とパルス波形とが無作為に変化している。図6についても同様に、時間範囲t2〜t3(たとえば1秒間)で、音波信号の放出時間に出力される周波数とパルス波形とが時間T=2msecごとに無作為に変化している。なお、パルス波形は、図7に例示したようなオーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能を有していることが望ましい。
【0028】
音波発信器40によって出力された音波信号は音放出手段50に入力される。音波発信器40によって出力される音波にはパルス波と連続波が含まれ、これらは択一的に選択可能であるけれども、通常はパルス波が選択される。音放出手段50は、音声出力手段51とスピーカ52とを有する。
【0029】
音声出力手段51は、音波発信器40から出力された連続波又はパルス波を音声信号に変換して増幅する機能を有している。そして、この音声出力手段51に接続されたスピーカ52が音を放出する。4足歩行の獣類や鳥類を対象として使用されるスピーカ52は、その単一又は複数基が、陸上に設置したポストや建物の屋根などに設置される。これに対し、水族館の水槽や養殖場などで大形あるいは小形の魚類を対象として使用されるスピーカ42は防水仕様として水中に設置される。
【0030】
以上のように構成されている動物忌避装置において、検知器10が動物を検知すると、その検知信号に基づいて、制御手段30が連続出力制御モードである場合には一定の時間内に連続して音波制御信号を出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器40が音波信号を出力し、その音波信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。これに対し、制御手段30が間欠出力モードである場合には休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。この場合に、音波制御信号の周波数が図2のように1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する。特に、間欠出力モード下において図3のように音波放出時間が0.5〜1.5secの範囲で無作為に変化し、休止時間も1〜3secの範囲で無作為に変化すると、動物にとっては音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況が顕著に作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こらない。制御手段30周波数制御器31の機能によって音波制御信号の周波数を図2のように2〜12kHzの範囲内で無作為に変化させた場合には、特に鳥類に対して大きな忌避作用を発揮する。
【0031】
また、制御手段30によって、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに音波信号の周波数を無作為に変化させると、制御手段30が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数が無作為に変化するので、音の高低が短時間の内に頻繁に変化し、動物にとっての学習困難な状況がいっそう顕著に作り出されて優れた忌避作用が発揮される。
【0032】
このように、この動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなり、永続的に高い忌避作用を発揮させることが可能になる上、音の周波数を変化させたり、パルス波形にオーバーシュート又はアンダーシュート部分を形成させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができる。
【0033】
上記した図1(A)の動物忌避装置についての実施形態では、検知器10が動物を検知したときに出力する検知信号を、装置全体の起動のためのトリガーとして利用している。これに対し、図1(B)の動物忌避装置についての実施形態は、図1(A)の動物忌避装置の検知器10を省略し、その代わりに、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器20の上記起動信号を装置全体の起動のためのトリガーとして利用した事例である。
【0034】
図1(B)の実施形態では、予め人為的に設定した予定時刻に起動信号を出力したり、時間制御器20が周囲の明るさを検知してその明るさが一定レベルに下がった時刻に起動信号を出力したりするようになっている。そして、その時間制御器20が出力した起動信号を受けた制御手段30が、無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力したり、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、当該時間制御器20により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力したりする。また、図1(B)の実施形態では、電源Pから出力される電力が、時間制御器20や制御手段30、音波発信器40、音放出手段50などの駆動電力に利用される。
【0035】
周波数制御器31の作用、時間制御器32で上記した連続出力制御や間欠出力制御を採用することが可能である点、音波発信器40の作用、音放出手段50の作用、などは、図1(A)で説明した事例と同様である。
【0036】
図1(B)の実施形態に係る動物忌避装置において、人為的に設定された時刻又は周囲の明るさが一定レベルに下がった時刻、言い換えると、予定された時刻に時間制御器20が起動信号を出力すると、制御手段30が連続出力制御モードである場合には一定の時間内に連続して音波制御信号を出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器40が音波信号を出力し、その音波信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。これに対し、制御手段30が間欠出力モードである場合には休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。この場合に、音波制御信号の周波数が図2のように1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する。特に、間欠出力モード下において図3のように音波放出時間が0.5〜1.5secの範囲で無作為に変化し、休止時間も1〜3secの範囲で無作為に変化すると、動物にとっては音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況が顕著に作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こらない。制御手段30周波数制御器31の機能によって音波制御信号の周波数を図2のように2〜12kHzの範囲内で無作為に変化させた場合には、特に鳥類に対して大きな忌避作用を発揮する。
【0037】
また、制御手段30によって、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに音波信号の周波数を無作為に変化させると、制御手段30が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数が無作為に変化するので、音の高低が短時間の内に頻繁に変化し、動物にとっての学習困難な状況がいっそう顕著に作り出されて優れた忌避作用が発揮される。
【0038】
このように、この動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなり、永続的に高い忌避作用を発揮させることが可能になる上、音の周波数を変化させたり、パルス波形にオーバーシュート又はアンダーシュート部分を形成させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 検知機
20 時間制御器
30 制御手段
40 音波発信器
50 音放出手段
51 音声出力手段
52 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2016年11月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を放出することによって動物を忌避するための動物忌避装置であって、
無作為に変化する周波数の音波制御信号を時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する制御手段と、この制御手段から出力された上記音波制御信号に基づいて音波を発信する音波発信器と、この音波発信器から出力された音波信号に基づいて音を放出する音放出手段と、を有し、
上記制御手段は、上記休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能と、上記休止時間を隔てて、0.5〜1.5secの時間内で、無作為に変化する周波数の上記音波制御信号を繰り返し出力する機能と、0.5〜2msecの時間内で選択される時間ごとに上記周波数を無作為に変化させる機能と、を有し、
上記音波発信器が、パルス波形の音波信号を出力する機能と、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能と、を有する、
ことを特徴とする動物忌避装置。
【請求項2】
上記制御手段は、動物の存在を検知する検知器がその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有することを特徴とする請求項1に記載した動物忌避装置。
【請求項3】
上記制御手段は、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器の上記起動信号を受けて無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、上記時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有することを特徴とする請求項1に記載した動物忌避装置。
【請求項4】
上記制御手段によって出力される周波数が1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載した動物忌避装置。
【請求項5】
上記制御手段によって出力される周波数が2〜12kHzの範囲内で無作為に変化する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載した動物忌避装置。
【請求項6】
上記音放出手段が、上記音波発信器から出力された音波信号を音声信号に変換して増幅する音声出力手段と、この音声出力手段に接続されて音を放出するスピーカと、を有する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した動物忌避装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を放出して動物を追い払うことに使用される動物忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より鳥獣害対策としての種々の忌避装置ないし忌避システムが知られている。たとえば、爆音やディストレスコールのような大音響を利用したもの、鳥獣が嫌う音を発生させるもの、超音波を利用するもの、ロケット花火のように実際に物体をとばして鳥獣を追い払うものなどが知られている。こういった忌避システムによって、空港などにおけるバードストライクや、風力発電機に巻き込まれる鳥を追い払うことは、鳥を殺傷せずに忌避し被害に遭わないようにすることで、動物保護にも役立つものである。
【0003】
先行例として、所定エリア内に侵入した害獣、たとえばイノシシを、周波数が20〜32kHzで音圧レベルが70dB以上である超音波を照射することによって、エリア外へ逃避させることができるとする害獣威嚇装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1では、超音波を間欠的に放射することについても言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−112098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記装置ないしシステムでは、動物の学習能力に基づく慣れによって忌避作用が早期に低減してしまうという問題があった。先行例に係る害獣威嚇装置についても同様の問題があった。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、音を放出して動物を一定の場所から追い払ったり一定の場所に近付かないようにすることを基本とし、その上で、音の周波数を無作為に変化させたり、音の周波数や放出時間を無作為に変化させたりするという対策を講じることにより、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低下してしまうという事態を生じにくくすることが可能になる動物忌避装置を提供することを目的とする。なお、本発明に係る動物忌避装置の使用対象となる動物には、4足歩行の獣類は勿論、鳥類や大形あるいは小形の魚類も含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、音を放出することによって動物を忌避するための動物忌避装置であって、無作為に変化する周波数の音波制御信号を時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する制御手段と、この制御手段から出力された上記音波制御信号に基づいて音波を発信する音波発信器と、この音波発信器から出力された音波信号に基づいて音を放出する音放出手段と、を有する。この発明によると、音放出手段から放出される音の高低が無作為に変化する。そのため、動物にとっては音の聞こえ方に関して学習困難な状況が作り出され、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態を回避しやすくなる。
【0008】
本発明において、上記制御手段は、上記休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能と、上記休止時間を隔てて、0.5〜1.5secの時間内で、無作為に変化する周波数の上記音波制御信号を繰り返し出力する機能と、0.5〜2msecの時間内で選択される時間ごとに上記周波数を無作為に変化させる機能と、を有している。
【0009】
上記のように音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況を作り出して忌避作用の低減を回避するには、特に、上記制御手段が、上記休止時間を1〜3secの範囲から無作為に選択する機能を有していることが望ましい。音波制御信号を出力しない休止時間が余りに短すぎたり長過ぎたりすると、動物にとっての学習困難な状況が作り出されにくくなると考えられることから、休止時間は1〜3secの範囲から無作為に選択されることが望ましい。
【0010】
また、上記制御手段は、上記休止時間を隔てて、0.5〜1.5secの時間内で、無作為に変化する周波数の上記音波制御信号を繰り返し出力する機能を有することが望ましい。制御手段が音波制御信号を繰り返し出力する時間が余りに短すぎたり長過ぎたりすると、動物にとっての学習困難な状況が作り出されにくくなると考えられることから、出力時間は0.5〜1.5secの範囲から無作為に選択されることが望ましい。
【0011】
本発明において、上記制御手段は、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに上記周波数を無作為に変化させる機能を有することが望ましい。制御手段が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数を無作為に変化させる機能を有していると、音の高低が極めて短時間の内に頻繁に変化することになるので、動物にとっての学習困難な状況が顕著に作り出されるようになる。
【0012】
本発明では、上記音波発信器がパルス波形の音波信号を出力する機能を有することが望ましい。また、本発明では、上記音波発信器が、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能を有することが望ましい。動物に対する威嚇作用が高まるという点では、連続波形による音よりもパルス波形による音の方が優れた効果を発揮し、さらに、単なるパルス波形による音よりも、オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形による音の方が優れた効果を発揮することが判っている。
【0013】
上記制御手段は、動物の存在を検知する検知器がその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有するものであってもよい。この発明によると、検知器が動物の存在を検知すると、制御手段が、上記時間制御器により制御される休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器が音波信号を出力する。そして、その音波信号に基づいて音放出手段が音を放出する。しかも、音波制御信号の周波数が無作為(ランダム)に変化することにより、動物にとっては音の高低などに関して学習困難な状況が作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が回避される。
【0014】
本発明において、上記制御手段は、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器の上記起動信号を受けて無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有すると共に、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、上記時間制御器により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力する機能を有するものであってもよい。この発明によると、時間制御器が予定時刻に起動信号を出力すると、その起動信号を受けた制御手段が、上記時間制御器により制御される休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器が音波信号を出力する。そして、その音波信号に基づいて音放出手段が音を放出する。しかも、音波制御信号の周波数が無作為(ランダム)に変化することにより、動物にとっては音の高低などに関して学習困難な状況が作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が回避される。
【0015】
本発明では、上記制御手段によって出力される周波数が1〜50kHzの範囲内で無作為に変化することが望ましい。周波数が1〜50kHzの音は相当に高音域の音であり、動物を追い払うのに有効である。
【0016】
本発明では、上記制御手段によって出力される周波数が2〜12kHzの範囲内で無作為に変化することが望ましい。周波数が2〜12kHzの音は鳥類を追い払うのに特に有益であることが判っている。
【0017】
本発明では、上記音放出手段が、上記制御手段から出力された音波信号を音声信号に変換して増幅する音声出力手段と、この音声出力手段に接続されて音を放出するスピーカと、を有することが望ましい。このように音放出手段によって音が放出されるようになっていると、音のボリウムを変化させて動物に対する威嚇作用を高めやすくなり、そのことが動物を追い払う作用を向上させることに役立つ。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなるので、長期間に亘って高い忌避作用を持続して発揮させることが可能になり、永続的な忌避作用を得やすくなる。また、音の周波数を変化させたり、パルス波形をオーバーシュート又はアンダーシュートに変調させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)及び(B)は本発明の異なる実施形態に係る動物忌避装置の概略構成図である。
図2】制御手段によって出力される音波制御信号の周波数の範囲を示した説明図である。
図3】制御手段の時間制御器による間欠出力制御のパターンを例示した説明図である。
図4】音放出時間t0〜tn内で0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図5】音波放出時間t0〜t1内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図6】音波放出時間t2〜t3内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図である。
図7】オーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(A)(B)は本発明の異なる実施形態に係る動物忌避装置の概略構成図である。また、図2は制御手段30によって出力される音波制御信号の周波数の範囲を示した説明図、図3は制御手段30の時間制御器32による間欠出力制御のパターンを例示した説明図である。さらに、図4は音放出時間t0〜tn内で0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図5は音波放出時間t0〜t1内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図6は音波放出時間t2〜t3内で2msecの範囲で選択される時間ごとに出力される音波信号の周波数と波形とを例示した説明図、図7はオーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を例示した説明図である。
【0021】
図1(A)に概略的に示した動物忌避装置の電源Pは、乾電池などの可搬型バッテリであっても商用電源であってもよく、この電源Pから出力される電力が、検知器10や時間制御器20、制御手段30、音波発信器40、音放出手段50などの駆動電力に利用される。
【0022】
検知器10には赤外線センサーなどの一般的な動物検知センサーを採用することが可能であり、動物が検知領域に侵入すると、その動物の存在を検知してその検知信号を出力する。動物には、4足歩行の脊椎動物に分類されるイノシシやシカといった獣類やヘビなどの軟体動物のほか、カラスやハトなどの鳥類、さらにはサメやイルカなどの大形魚やイワシなどの小形魚、その他の中形魚なども含まれる。検知器10が動物の存在を検知することによって出力される検知信号は制御手段30に入力される。
【0023】
制御手段30は、検知器10が動物の存在を検知してその検知信号を出力している時間内に無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力する機能を有し、その機能が周波数制御器31によって発揮される。
【0024】
周波数制御器31は、音波制御信号の周波数を制御する要素であり、図2に示したように、この周波数制御器31の機能により、音波制御信号の周波数を1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する値に設定することができるようになっている。周波数が1〜50kHzの音は相当に高音域の音であり、しかもその範囲内で無作為に変化する音は動物を追い払うのに明らかに有効な帯域であるとされている。周波数が1kHzよりも小さいと中音域ないし低音域の音になり、動物を追い払う効果が希薄化され、また、動物が音慣れしやすいとされている。周波数が50kHzを超えると最高音域になり、動物の可聴範囲外になることが懸念される。また、忌避対象が鳥類で有る場合には、音波制御信号の周波数を2〜12kHzの範囲内で無作為に変化する値に定めることができるようになっている。周波数が2〜12kHzの音は相当に高音域の音であり、しかもその範囲内で無作為に変化する音は鳥類を追い払うのに明らかに有効な帯域である。さらに、周波数制御器31は、上記した音波制御信号の出力時間内に、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに、音波信号の周波数を無作為に変化させる機能を有している。
【0025】
また、周波数制御器31が出力する音波制御信号は、上記時間制御器20により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力される。したがって、時間制御器32は、周波数制御器31が出力する音波制御信号の出力時間を制御する要素である。そして、時間制御器32により、周波数制御器31が出力する音波制御信号を休止時間を含まずに一定の時間だけ連続させるような制御方法(連続出力制御)を採用することが可能であるだけでなく、周波数制御器31が出力する音波制御信号を、出力する時間と出力しない休止時間とを交互に繰り返す制御方法(間欠出力制御)を採用することも可能である。図3によって例示した時間制御器32による間欠出力制御のパターンでは、図1(A)に示した検知器10が動物の存在を検知している時間帯t0〜t5において、周波数制御器31による音波制御信号の出力時間帯をt0〜t1、t2〜t3、t4〜t5で示し、休止時間帯をt1〜t2、t3〜t4で示している。同図に示したパターンでは、音波制御信号の出力時間が0.5〜1.5secの範囲から無作為に選択され、休止時間が1〜3secの範囲から無作為に選択される。
【0026】
音波発信器40は、制御手段30の周波数制御器31や時間制御器32によって制御された音波制御信号を音波信号に変換して音放出手段50に出力する。
【0027】
図4には、音波発信器40により時間範囲t0〜tn(たとえば20秒間)で音波信号の連続出力制御を採用した場合の音波信号の周波数とパルス波形とを例示している。このものでは、時間T=0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに周波数とパルス波形とが無作為に変化している。
【0028】
図5には、音波発信器40により時間範囲t0〜t1(たとえば1.5秒間)で、音波信号の間欠出力制御を採用した場合の音波信号の周波数とパルス波形とを例示している。このものでは、時間T=2msecの範囲で選択される時間ごとに周波数とパルス波形とが無作為に変化している。図6についても同様に、時間範囲t2〜t3(たとえば1秒間)で、音波信号の放出時間に出力される周波数とパルス波形とが時間T=2msecごとに無作為に変化している。なお、パルス波形は、図7に例示したようなオーバーシュート又はアンダーシュートしたパルス波形を生成する機能を有していることが望ましい。
【0029】
音波発信器40によって出力された音波信号は音放出手段50に入力される。音波発信器40によって出力される音波にはパルス波と連続波が含まれ、これらは択一的に選択可能であるけれども、通常はパルス波が選択される。音放出手段50は、音声出力手段51とスピーカ52とを有する。
【0030】
音声出力手段51は、音波発信器40から出力された連続波又はパルス波を音声信号に変換して増幅する機能を有している。そして、この音声出力手段51に接続されたスピーカ52が音を放出する。4足歩行の獣類や鳥類を対象として使用されるスピーカ52は、その単一又は複数基が、陸上に設置したポストや建物の屋根などに設置される。これに対し、水族館の水槽や養殖場などで大形あるいは小形の魚類を対象として使用されるスピーカ42は防水仕様として水中に設置される。
【0031】
以上のように構成されている動物忌避装置において、検知器10が動物を検知すると、その検知信号に基づいて、制御手段30が連続出力制御モードである場合には一定の時間内に連続して音波制御信号を出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器40が音波信号を出力し、その音波信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。これに対し、制御手段30が間欠出力モードである場合には休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。この場合に、音波制御信号の周波数が図2のように1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する。特に、間欠出力モード下において図3のように音波放出時間が0.5〜1.5secの範囲で無作為に変化し、休止時間も1〜3secの範囲で無作為に変化すると、動物にとっては音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況が顕著に作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こらない。制御手段30周波数制御器31の機能によって音波制御信号の周波数を図2のように2〜12kHzの範囲内で無作為に変化させた場合には、特に鳥類に対して大きな忌避作用を発揮する。
【0032】
また、制御手段30によって、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに音波信号の周波数を無作為に変化させると、制御手段30が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数が無作為に変化するので、音の高低が短時間の内に頻繁に変化し、動物にとっての学習困難な状況がいっそう顕著に作り出されて優れた忌避作用が発揮される。
【0033】
このように、この動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなり、永続的に高い忌避作用を発揮させることが可能になる上、音の周波数を変化させたり、パルス波形にオーバーシュート又はアンダーシュート部分を形成させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができる。
【0034】
上記した図1(A)の動物忌避装置についての実施形態では、検知器10が動物を検知したときに出力する検知信号を、装置全体の起動のためのトリガーとして利用している。これに対し、図1(B)の動物忌避装置についての実施形態は、図1(A)の動物忌避装置の検知器10を省略し、その代わりに、予定された時刻に起動信号を出力する時間制御器20の上記起動信号を装置全体の起動のためのトリガーとして利用した事例である。
【0035】
図1(B)の実施形態では、予め人為的に設定した予定時刻に起動信号を出力したり、時間制御器20が周囲の明るさを検知してその明るさが一定レベルに下がった時刻に起動信号を出力したりするようになっている。そして、その時間制御器20が出力した起動信号を受けた制御手段30が、無作為に変化する周波数の音波制御信号を出力したり、無作為に変化する周波数の音波制御信号を、当該時間制御器20により制御される休止時間としての時間間隔ごとに出力したりする。また、図1(B)の実施形態では、電源Pから出力される電力が、時間制御器20や制御手段30、音波発信器40、音放出手段50などの駆動電力に利用される。
【0036】
周波数制御器31の作用、時間制御器32で上記した連続出力制御や間欠出力制御を採用することが可能である点、音波発信器40の作用、音放出手段50の作用、などは、図1(A)で説明した事例と同様である。
【0037】
図1(B)の実施形態に係る動物忌避装置において、人為的に設定された時刻又は周囲の明るさが一定レベルに下がった時刻、言い換えると、予定された時刻に時間制御器20が起動信号を出力すると、制御手段30が連続出力制御モードである場合には一定の時間内に連続して音波制御信号を出力し、その音波制御信号に基づいて音波発信器40が音波信号を出力し、その音波信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。これに対し、制御手段30が間欠出力モードである場合には休止時間を隔てて音波制御信号を間欠的に繰り返し出力し、その音波制御信号に従って音放出手段50のスピーカ52が音を放出する。この場合に、音波制御信号の周波数が図2のように1〜50kHzの範囲内で無作為に変化する。特に、間欠出力モード下において図3のように音波放出時間が0.5〜1.5secの範囲で無作為に変化し、休止時間も1〜3secの範囲で無作為に変化すると、動物にとっては音の高低や音の聞こえるタイミングに関して学習困難な状況が顕著に作り出されるため、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こらない。制御手段30周波数制御器31の機能によって音波制御信号の周波数を図2のように2〜12kHzの範囲内で無作為に変化させた場合には、特に鳥類に対して大きな忌避作用を発揮する。
【0038】
また、制御手段30によって、0.5〜2msecの範囲で選択される時間ごとに音波信号の周波数を無作為に変化させると、制御手段30が音波制御信号を連続して出力している時間帯では、0.5〜2msecの範囲という極めて短い範囲で選択される時間ごとに周波数が無作為に変化するので、音の高低が短時間の内に頻繁に変化し、動物にとっての学習困難な状況がいっそう顕著に作り出されて優れた忌避作用が発揮される。
【0039】
このように、この動物忌避装置によると、動物が音に慣れてしまって忌避作用が低減してしまうという事態が起こりにくくなり、永続的に高い忌避作用を発揮させることが可能になる上、音の周波数を変化させたり、パルス波形にオーバーシュート又はアンダーシュート部分を形成させたりすることによって、動物を威嚇する作用も高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 検知機
20 時間制御器
30 制御手段
40 音波発信器
50 音放出手段
51 音声出力手段
52 スピーカ