特開2017-112984(P2017-112984A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-112984甲殻類の燻製の製造方法および甲殻類の燻製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-112984(P2017-112984A)
(43)【公開日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】甲殻類の燻製の製造方法および甲殻類の燻製
(51)【国際特許分類】
   A23B 4/044 20060101AFI20170602BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20170602BHJP
【FI】
   A23B4/04 503A
   A23L1/33 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-257823(P2015-257823)
(22)【出願日】2015年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】594168115
【氏名又は名称】福井 勇吉
(72)【発明者】
【氏名】福井 勇吉
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AD08
4B042AG72
4B042AG74
4B042AH01
4B042AP03
4B042AP18
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】 高級なエビ・カニの燻製を低価格で提供すべく、カニ・エビを大量に仕入れて順次燻製にして行くのであるが、燻製している間にも燻製を待つカニ・エビの品質が急速に劣化してしまう。そこで今すぐには使わない分を冷凍してこれを保存すれば良いように思われるのであるが、実際には冷凍によってエビ・カニ特有の黒変を生じてしまう。
【解決手段】 カニ本来の舌触りや風味を残しつつも味が良く低コストで製造可能な燻製の提供を目的として、この発明ではカニの剥き身を予めボイルする工程(S1)の後に、このボイルした剥き身を燻製する工程(S2)を、少なくとも燻煙が剥き身の表面の全体に亘るまで行う(S3)ようにして、炭化表面2を有するカニの剥き身の燻製1を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存性を高めるべく甲殻類の剥き身を予めボイルする工程の後に、このボイルした剥き身を燻製する工程を、少なくとも燻煙が前記剥き身の表面の全体に亘るまで行うことを特徴とする、甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項2】
前記ボイル工程と前記燻製工程との間に冷凍・解凍工程を含む、請求項1に記載の甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項3】
前記ボイル工程と前記燻製工程との間に、ボイルした前記剥き身を調味液に漬ける工程を含む、請求項1に記載の甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項4】
前記燻製工程の後に、この燻製を冷凍する工程を含む、請求項1に記載の甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項5】
前記燻製工程の後に、この燻製を真空パックする工程とこの真空パックした燻製を高温殺菌する工程とを含む、請求項1に記載の甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項6】
更に前記真空パックした燻製を冷凍する工程を含む、請求項5に記載の甲殻類の燻製の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一に記載の製造方法で製造して成る甲殻類の燻製。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一定品質の甲殻類の燻製を大量に安価に製造することが出来る製造方法と、この製造方法により得られる甲殻類の燻製に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先に当発明者は、特許第4940482号で「甲殻類の加工食材の製造方法」の技術を開示した。エビ・カニなどの高級甲殻類には独特の舌触りや淡泊な風味がありまた素材としても高級感があるが、生のカニ・エビに特有の旨味が酵素などの作用で変質しやすく、家庭やレストランでないとなかなか食べられず、また水分値の多さがマイナスと成っているカニ・エビ等の甲殻類に対して、独特の舌触りや風味や素材としての高級感を活かした美味しい加工食材とすることが出来ないという問題があり、当発明者はこれを解決した。
【0003】
また当発明者は特開2000−312555号の「甲殻類の燻製品及びその製造方法」を開示している。燻製は水分値70パーセント以下、脂肪値8パーセント以上の魚貝類を素材として製造されるが、当発明者はエビ・カニなどの甲殻類に付いても燻製を提供したいと考えるに至ったが、エビ・カニなどの甲殻類は水分値が上記よりもずっと高いため、普通に燻製しても身は固く成り過ぎ、素材本来の味が失われてまい、美味しいものを作ることが出来なかった。エビ・カニには独特の舌触りや淡泊な風味がありまた素材としても高級感があるが、一方生のエビ・カニに特有の旨味が酵素などの作用で変質し易く、何時でも何処でも食べられると言うものではなかったが、このような困難な課題も解決した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4940482号公報
【特許文献2】特開2000−312555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第4940482号や特開2000−312555号の発明によれば、確かにいわゆるミシュラン(登録商標)ガイド級の味覚の繊細さが要求される職人の技を工業化することに成功しているが、高級な燻製であるがゆえに製造コストが高い、と言う大きな問題があった。このため素材のエビ・カニを大量に仕入れることで製造コストを下げる試みを行ってはみたのであるが、新たに次のような課題が持ち上がって来た。
【0006】
すなわちエビ・カニを大量に仕入れて順次燻製にして行くのであるが、製造している間にも急速に品質が劣化してしまう。そこで今すぐには使わない分を冷凍してこれを保存すれば良いように思われるのであるが、実際には冷凍によってエビ・カニ特有の黒変が発生すると言う大きな問題がある。結局のところ大量に仕入れることが出来ず、製造コストを下げることは依然として難しいままである。
【0007】
この発明は上述したような問題点を解決して、高級なエビ・カニの燻製を比較的低価格で提供出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで素材本来の舌触りや風味を残しつつも味が良く低コストで製造可能な燻製の提供を目的として、この発明では甲殻類の剥き身を予めボイルする工程の後に、このボイルした剥き身を燻製する工程を、少なくとも燻煙が前記剥き身の表面の全体に亘るまで行う、甲殻類の燻製の製造方法を開発した。なおこの発明で言うボイル工程に代えてスチームで蒸すことでも同様の効果が得られる。従って甲殻類の剥き身を予め蒸す工程の後に、このボイルした剥き身を燻製する工程を、少なくとも燻煙が前記剥き身の表面の全体に亘るまで行う燻製の製造方法も、この発明の権利範囲である。この他にはボイルする工程を焼いたり揚げたりする工程に代えることも可能である。
【0009】
大量に仕入れた素材のエビ・カニを剥き身にして予めボイルする或いはスチームで蒸すのは、保存性を高めるためである。この工程によってエビ・カニを生の場合よりも状態が良いままに保つことが出来、しかも黒変を発生させることなく保存して、次の工程である燻製に渡すことが可能になる。この燻製工程では剥き身の表面の全体が見た目に炭化したところで燻製を止めるようにすれば良い。なお上記ボイルする工程で湯温センサーや加熱時間タイマーを用い、燻製する工程で素材を撮影して基準となる燻製画像と比較して同じになったら燻製を止める、と言うような管理装置を用いるなどしてこの発明の燻製の製造方法を完全自動化することも可能である。
【0010】
この発明の製造方法によれば特許第4940482号や特開2000−312555号の発明ほどの繊細な味覚は求めないものの、エビ・カニの燻製でありながらも素材本来の舌触りや風味がしっかりと残りかつ味が良い燻製となっている。この辺りのことはやはり味覚の繊細な職人であれば容易に納得し得ることである。従ってこの発明が甲殻類の剥き身を予めボイルする工程の後にこのボイルした剥き身を燻製する工程を燻煙が前記剥き身の表面の全体に亘るまで行う、と言う全く新しい製造方法を見出したことによる経済効果には極めて大きいものがある。
【0011】
次にボイル工程と燻製工程との間に冷凍・解凍工程を含むようにしても良い。この工程を加えることによってエビ・カニをボイルした状態のままよりも、更に状態を良好に保つことが可能である。このようにして安価に大量に仕入れたエビ・カニを黒変を生じさせることなく冷凍保存して、次なる燻製工程に送ることが出来る。
【0012】
次にボイル工程と燻製工程との間にボイルした剥き身を調味液に漬ける工程を含むようにしても良い。調味液には醤油系などもあるが基本は塩である。塩分は下味を付け、保存性を高め、エビ・カニの発色をより鮮やかなものにする作用がある。なおボイルした剥き身の水分量を元に近い状態に戻すべく調味液に漬けることも行って良い。
【0013】
次に燻製工程の後にこの燻製を冷凍する工程を含むようにしても良い。冷凍により保存性がより高まる。
【0014】
また燻製工程の後に、この燻製を真空パックする工程とこの真空パックした燻製を高温殺菌する工程とを含むようにしても良い。遠隔地まで出荷したり店頭に並べたり、通販を行ったりするのにより好適なものとなる。燻製の保存性が高まるからである。なお更に、真空パックした燻製を冷凍する工程を含むようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、甲殻類の剥き身を予めボイルする工程の後に、これを燻製する工程を燻煙が前記剥き身の表面の全体に亘るまで行うようにしたので、素材を大量に仕入れることが可能になり、高級なエビ・カニの燻製を比較的低価格で提供出来るようになった。なおいつも一定の仕上がりでエビ・カニの燻製が得られることも特筆すべきことである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】 実施例1の製造工程の説明図である。
図2】 実施例1によって得られたカニの燻製の説明図である。
図3】 実施例2の製造工程の説明図である。
図4】 実施例3の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
この実施例は図1で表すように、鍋にカニの剥き身を入れてボイルしておき(S1)、このカニの身に付いて燻煙し(S2)、燻煙が身の表面の全体に行き亘ったか、未だその状態に至っていないかを確かめて見て(S3)、図2で表すように燻煙が身の表面の全体に行き亘ったならば燻煙を止めるが(S4)、S3で未だ確認できない内は確認出来るようになるまで燻煙を続けて適時S3の作業を行う。
【0018】
ボイル工程によればカニの剥き身を生の場合よりも状態が良いままに保つことが出来、しかも黒変を発生させることなく保存して燻煙工程を待つことが出来る。
【0019】
燻煙工程では特定の状態を確認すれば良いから、誰にでも一定の仕上がりのカニの燻製を製造することが出来る。燻煙がカニの剥き身の表面の全体に行き亘った状態は、剥き身の表面の全体が炭化したように見える状態である。しかしながら更に燻製の度合いを高めたいのであれば、燻煙に時間を長く取って燻煙を止めるタイミングを見定めるようにすれば良い。これは以下で述べる各種実施例に於いても同様である。またカニ以外の魚介類、例えばエビの剥き身でも同様である。このようにして図2で表すようなカニの燻製を得ることが出来る。符号1はカニの剥き身の燻製を指し、符号2は炭化表面を指す。
【実施例2】
【0020】
図3はこの実施例を表したものである。なおS5から始まる工程は上述した実施例1のS4に続くものではない。カニの剥き身をボイルしてから一旦冷凍しておき(S5)、これを解凍処理してから調味液である塩水に漬け(S6)、これを引き上げて燻煙を開始する(S7)。この後の工程は上述した実施例1のS3に引き継ぐ。
【0021】
この実施例の各種工程により、カニの剥き身に黒変を生じることが抑えられ、保存性も向上する。またボイルした剥き身の水分量を元に近い状態に戻すことが出来るから、燻煙しても素材本来の舌触りや風味をしっかりと残すのにより好都合である。なおこの工程はカニ以外の魚介類、例えばエビの剥き身でも同様に実施可能である。
【実施例3】
【0022】
この実施例のS8始まる工程は上述した実施例S3に続くものであり、図4で表すように、燻煙を終了したら(S8)、カニの剥き身の燻製を真空パックして(S9)、これを高温度にて殺菌し(S10)、引き続いてこの殺菌済パックを冷凍する(S11)工程を経るものである。
【0023】
この実施例では、黒変を生じておらずまた表面の全体に燻煙が行き亘ったカニの剥き身を、遠隔地の店頭まで届けたり通販を行ったりする場合であっても、真空パック後の高温殺菌と冷凍保存とによって仕上がり時の品質を極力落とさずに済む効果を奏する。
【符号の説明】
【0024】
1 カニの剥き身の燻製
2 炭化表面
図1
図2
図3
図4