(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-113318(P2017-113318A)
(43)【公開日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】敷きパッド
(51)【国際特許分類】
A47C 27/06 20060101AFI20170602BHJP
A47C 27/05 20060101ALI20170602BHJP
【FI】
A47C27/06
A47C27/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-252342(P2015-252342)
(22)【出願日】2015年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】599071946
【氏名又は名称】株式会社弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘樹
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AD02
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】スプリングユニットを内蔵する敷きパッドの構造を簡素化して、その分だけ製造に要する手間を削減して、敷きパッドを低コストで製造する。
【解決手段】上下一対の表装材1・2の間に弾性ユニット3を収容する。弾性ユニット3の上下方向の中途部において、各表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着して、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定する。弾性ユニット3を、一群のポケットコイル11を縦横に並設してなるスプリングユニット10と、ウレタンフォームからなる一対の弾性マット12・13と、スプリングユニット10および弾性マット12・13の上下面を覆う上下一対のクッション材14・15とで構成する。弾性ユニット3の長手方向の中途部にスプリングユニット10を配置し、同方向の両端にスプリングユニット10を間に挟む状態で一対の弾性マット12・13を配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の表装材(1・2)と、両表装材(1・2)の間に収容される弾性ユニット(3)とを備えており、
弾性ユニット(3)の上下方向の中途部において、各表装材(1・2)の周縁どうしが周回状に縫着されて、弾性ユニット(3)が両表装材(1・2)でずれ動き不能に被覆固定されており、
弾性ユニット(3)は、一群のポケットコイル(11)を縦横に並設してなるスプリングユニット(10)と、ウレタンフォームからなる一対の弾性マット(12・13)と、スプリングユニット(10)および弾性マット(12・13)の上下面を覆う上下一対のクッション材(14・15)とで構成されており、
弾性ユニット(3)の長手方向の中途部にスプリングユニット(10)が配置され、同方向の両端にスプリングユニット(10)を間に挟む状態で一対の弾性マット(12・13)が配置されていることを特徴とする敷きパッド。
【請求項2】
弾性ユニット(3)が一対の表装材(1・2)で被覆固定された状態において、各ポケットコイル(11)を構成するコイルスプリング(20)の直径寸法(D)が上下寸法(H)よりも大きく設定されている請求項1に記載の敷きパッド。
【請求項3】
弾性ユニット(3)の長手方向の中央にスプリングユニット(10)が配置されて、同方向における一対の弾性マット(12・13)の寸法が同一に設定されており、
上下一対のクッション材(14・15)が、同一の上下厚みのウレタンフォームで形成されており、
弾性ユニット(3)の長手方向におけるスプリングユニット(10)の寸法が、弾性ユニット(3)の全長寸法の3分の1を越え、かつ2分の1未満に設定されている請求項1または2に記載の敷きパッド。
【請求項4】
スプリングユニット(10)および一対の弾性マット(12・13)の上下面に、上下一対のクッション材(14・15)が接着固定されており、
スプリングユニット(10)と一対の弾性マット(12・13)がクッション材(14・15)を介して間接的に固定されている請求項1から3のいずれかに記載の敷きパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド用マットレスや敷き布団などの上面に敷いて使用する敷きパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の敷きパッドは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、シート状のウレタンフォームの少なくとも表面に立体編物を積層して敷きパッドを構成している。この敷きパッドを使用すると、表面の立体編物が有するソフトな触感および良好な通気性により、快適な寝心地が得られる。また、ウレタンフォームが体重を吸収することにより、立体編物の残留ひずみを有効に低減して、立体編物の初期の良好なクッション性を比較的長期にわたって維持することができる。
【0003】
一方、ベッド用マットレスの市場では、多数のコイルスプリングを縦横に並設してなるスプリングユニットを内蔵したスプリングマットレスが多く流通している。スプリングマットレスには主として、コイルスプリングどうしがヘリカル線で連結されるボンネルコイルマットレスと、コイルスプリングが一つずつ袋体に収容されて互いに独立しているポケットコイルマットレスとが存在する。本発明は、ポケットコイル式のスプリングユニットを内蔵する敷きパッドを提供するものである。
【0004】
従来のポケットコイルマットレスの公知例としては、例えば特許文献2を挙げることができる。そこでは、スプリングユニットをクッション材で包囲し、クッション材を表装材で覆ってポケットコイルマットレスを構成している。スプリングユニットは、一群のポケットコイルを平面的に敷き詰め、接着テープで連結して構成してある。クッション材はウレタンフォームからなり、スプリングユニットの周面を囲むボーダークッション材と、同ユニットの上下面に配置される上面クッション材および下面クッション材で構成される。表装材はキルト素材からなり、クッション材の周面を囲むボーダー表装材と、クッション材の上下面に配置される上面表装材および下面表装材で構成される。上面表装材および下面表装材の周縁は、ボーダー表装材の上下縁にそれぞれ縫着されている。スプリングユニットを構成する各ポケットコイルは、直径寸法よりも上下寸法が充分に大きい円筒状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−109896号公報(段落番号0006〜0007)
【特許文献2】特開平11−244098号公報(段落番号0008〜0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に敷きパッドは、折り畳んだ状態や渦巻状に巻いた状態での収納あるいは持ち運びを可能にするため、ベッド用マットレスに比べて充分に薄く形成される。例えば、一般的なベッド用マットレスの上下厚みが約20cmであるのに対し、敷きパッドの上下厚みは約6cmである。
【0007】
特許文献2に記載のベッド用マットレスは厚みが大きいため、敷きパッドのように折り畳んだ状態や渦巻状に巻いた状態で収納し、あるいは持ち運ぶことはできない。スプリングユニットの上下寸法を充分に小さくして、折り畳みや巻回が可能な敷きパッドとすることは不可能ではない。しかし、この場合の敷きパッドは、スプリングユニットの上下のクッション材と表装材に加え、同ユニットの周面を囲むボーダークッション材とボーダー表装材を含む多くの部材で構成されるため、製造に多くの手間が掛かり低コスト化するのが難しい。また、スプリングユニットを構成する各ポケットコイルの上下寸法が直径寸法よりも充分に大きいため、上下厚みが6cm前後の敷きパッドを構成しようとすると、各ポケットコイルの直径寸法が小さくなり過ぎて、各ポケットコイルが充分な反発力を発揮できなくなる。さらに、各ポケットコイルの直径寸法が小さくなる分だけ、スプリングユニットを構成するのに必要なポケットコイルの個数が増加し、その分だけスプリングユニットの重量が増加し、材料コストも嵩んでしまう。
【0008】
本発明の目的は、スプリングユニットを内蔵する敷きパッドの構造を簡素化して、その分だけ製造に要する手間を削減して、敷きパッドを低コストで製造することにある。また本発明の目的は、スプリングユニットを構成する各ポケットコイルが充分な反発力を発揮できる敷きパッドを提供することにある。さらに本発明の目的は、スプリングユニットを軽量化するとともに、その材料コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上下一対の表装材1・2と、両表装材1・2の間に収容される弾性ユニット3とを備える敷きパッドを対象とする。弾性ユニット3の上下方向の中途部において、各表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着して、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定する。弾性ユニット3を、一群のポケットコイル11を縦横に並設してなるスプリングユニット10と、ウレタンフォームからなる一対の弾性マット12・13と、スプリングユニット10および弾性マット12・13の上下面を覆う上下一対のクッション材14・15とで構成する。弾性ユニット3の長手方向の中途部にスプリングユニット10を配置し、同方向の両端にスプリングユニット10を間に挟む状態で一対の弾性マット12・13を配置することを特徴とする。
【0010】
弾性ユニット3を一対の表装材1・2で被覆固定した状態において、各ポケットコイル11を構成するコイルスプリング20の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定することが好ましい。
【0011】
弾性ユニット3の長手方向の中央にスプリングユニット10を配置し、同方向における一対の弾性マット12・13の寸法を同一に設定し、上下一対のクッション材14・15を、同一の上下厚みのウレタンフォームで形成し、弾性ユニット3の長手方向におけるスプリングユニット10の寸法を、弾性ユニット3の全長寸法の3分の1を越え、かつ2分の1未満に設定することができる。
【0012】
スプリングユニット10および一対の弾性マット12・13の上下面に、上下一対のクッション材14・15を接着固定して、スプリングユニット10と一対の弾性マット12・13をクッション材14・15を介して間接的に固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、上下一対の表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着して、両表装材1・2の間に弾性ユニット3を収容した。このように、上下一対の表装材1・2を直接縫着すると、従来のベッド用マットレスで用いられていた周面のボーダー表装材を省略して、敷きパッドの構造を簡素化することができる。ボーダー表装材を上面表装材と下面表装材にそれぞれ縫着していた従来の構造に比べて、表装材1・2を縫着する作業の手間を半減させて、敷きパッドを低コストで製造することができる。また、弾性ユニット3の上下方向の中途部において、各表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着して、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定すると、弾性ユニット3と表装材1・2の間における接着剤などの固定手段を省略し、その分だけ製造に要する手間を削減して、敷きパッドを低コストで製造することができる。
【0014】
また本発明のように、弾性ユニット3の長手方向の中途部にスプリングユニット10を配置し、同方向の両端にウレタンフォームからなる一対の弾性マット12・13を配置すると、弾性マット12・13はスプリングユニット10に比べて軽量であることから、弾性ユニット3の全面にスプリングユニット10を配置する場合に比べて敷きパッドを軽量化して、敷きパッドの持ち運びなどを容易化することができる。また、ウレタンフォームからなる弾性マット12・13は、スプリングユニット10に比べて安価であることから、弾性ユニット3の全面にスプリングユニット10を配置する場合に比べて、敷きパッドの材料コストを削減することができる。
【0015】
さらに、弾性ユニット3の長手方向の両端に弾性マット12・13を配置すると、敷きパッドを渦巻き状に巻くことが容易になる。すなわち、ウレタンフォームからなる弾性マット12・13は、ポケットコイル11の集合体であるスプリングユニット10に比べて、厚み方向に圧縮したときの反発力が小さい。このような弾性マット12・13を弾性ユニット3の両端に配置すると、敷きパッドの長手方向の一端部すなわち巻き始め部分を、厚み方向に圧縮して細く巻くことが容易になり、この細い巻き始め部分を芯にして、敷きパッドの全体を容易に渦巻き状に巻くことができる。
【0016】
各ポケットコイル11を構成するコイルスプリング20の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、各ポケットコイル11が充分な反発力を発揮することができる。すなわち、上述したように、ベッド用マットレスに比べて上下厚みが充分に小さい敷きパッドにおいて、上下寸法が直径寸法よりも充分に大きいポケットコイルを用いると、各ポケットコイルの直径寸法が小さくなり過ぎて、各ポケットコイルが充分な反発力を発揮できない。これに対して本発明のように、各コイルスプリング20の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、上下厚みが小さい敷きパッドに内蔵できるように各コイルスプリング20の上下寸法Hを設定しても、その直径寸法Dが小さくなり過ぎず、従って各ポケットコイル11が充分な反発力を発揮することができる。また、直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、上下寸法が従来のポケットコイルを用いる場合に比べて、スプリングユニット10を少ない個数のポケットコイル11で構成することができ、その分だけスプリングユニット10を軽量化し、またその材料コストを削減することができる。
【0017】
弾性ユニット3の前後方向(長手方向)の中央にスプリングユニット10を配置し、一対の弾性マット12・13の前後寸法を同一に設定し、さらに、上下一対のクッション材14・15を、同一の上下厚みのウレタンフォームで形成すると、弾性ユニット3を前後対称かつ上下対称に形成して、敷きパッドを前後と上下(表裏)の区別無く使用することができる。このように、敷きパッドの前後と上下の区別を無くすと、敷きパッドを定期的に前後反転あるいは上下反転させるローテーションを可能として、敷きパッドを長寿命化することができる。
【0018】
また、弾性ユニット3の長手方向におけるスプリングユニット10の寸法が、弾性ユニット3の全長寸法の3分の1を越えるように設定すると、同ユニット10を敷きパッドの使用者の腰部に確実に臨ませることができる。弾性マット12・13に比べて反発力に優れるスプリングユニット10で、使用者の体重が最も集中する腰部を支持すると、使用者の寝姿勢を良好なものとして、使用者の寝心地を向上させることができる。さらに、弾性ユニット3の長手方向におけるスプリングユニット10の寸法を、弾性ユニット3の全長寸法の2分の1未満に設定すると、弾性ユニット3に占めるスプリングユニット10の割合が大きくなることに伴う弾性ユニット3の重量化および材料コストの増加の問題を解消することができる。
【0019】
スプリングユニット10および一対の弾性マット12・13の上下面に上下一対のクッション材14・15を接着固定して、スプリングユニット10と一対の弾性マット12・13を間接的に固定すると、スプリングユニット10と各弾性マット12・13の隣接部分の連結構造を省略することができる。この隣接部分に連結構造を設けると、連結構造が敷きパッドの使用者に対して異物感を与えてしまい、使用者の寝心地が低下するおそれがある。これに対して本発明のように、スプリングユニット10と各弾性マット12・13を間接的に固定して、隣接部分の連結構造を省略すると、弾性マット12・13に対するスプリングユニット10のずれ動きを規制しながらも、連結構造に起因する異物感を解消して使用者の寝心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例に係る敷きパッドの縦断面を示す
図2におけるA−A線断面図である。
【
図2】実施例に係る敷きパッドの(a)一部破断平面図と(b)側面図である。
【
図3】実施例に係る敷きパッドの分解斜視図である。
【
図4】スプリングユニットの一部破断平面図である。
【
図7】実施例に係る敷きパッドの(a)三つ折り状態と(b)巻回状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例)
図1ないし
図7は、本発明に係る敷きパッドの実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、
図1および
図6に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。本発明における敷きパッドの長手方向は、本実施例における前後方向に一致する。また、本実施例における左右方向と上下方向は、敷きパッドの幅方向と厚み方向にそれぞれ一致する。
【0022】
図1ないし
図3において敷きパッドは、キルティング生地からなる上下一対の表装材1・2の間に弾性ユニット3を収容して構成される。弾性ユニット3は、複数個のポケットコイル11を縦横に並設してなるスプリングユニット10と、同ユニット10の前後に並設される一対の弾性マット12・13と、これら三者10・12・13の上下面を覆う一対のクッション材14・15とで構成される。各弾性マット12・13および各クッション材14・15はウレタンフォームからなり、スプリングユニット10と略同一の左右寸法を有する。一対の弾性マット12・13は同一形状の矩形板状に形成されており、一対のクッション材14・15も同一形状の矩形シート状に形成されている。各クッション材14・15の前後寸法は、スプリングユニット10と一対の弾性マット12・13の前後寸法を合わせたものに略等しい。弾性マット12・13はスプリングユニット10と略同一の上下寸法を有し、クッション材14・15はこれら三者10・12・13よりも上下方向に薄く形成されている。
【0023】
本実施例に係る敷きパッドはシングルサイズとし、弾性ユニット3を構成するスプリングユニット10等の各部材の左右寸法を100cmに設定した。また、スプリングユニット10の前後寸法を85cm、各弾性マット12・13の前後寸法を55cm、各クッション材14・15の前後寸法を195cmに設定した。スプリングユニット10は600個のポケットコイル11の集合体からなり、前後方向に24個、左右方向に25個のポケットコイル11が配列されている。なお本発明は、シングルサイズとは左右寸法が異なるセミダブルサイズやダブルサイズの敷きパッドにも適用が可能である。セミダブルサイズの敷きパッドは、左右寸法が例えば120cmに設定され、スプリングユニット10が720個(前後に24個、左右に30個)のポケットコイル11で構成される。ダブルサイズの敷きパッドは、左右寸法が例えば140cmに設定され、スプリングユニット10が840個(前後に24個、左右に35個)のポケットコイル11で構成される。
【0024】
図4においてスプリングユニット10は、複数個の中空円筒状のコイルスプリング20と、通気性を有する不織布からなる2枚の被覆シート21・21とで構成される。各コイルスプリング20の軸心方向は、スプリングユニット10の上下方向に一致している。本実施例に係るスプリングユニット10を作製するには、2枚の被覆シート21・21の間にコイルスプリング20を縦横に配列し、隣接するコイルスプリング20・20の間で2枚の被覆シート21・21を熱溶着によりミシン目状に接合して、各コイルスプリング20を1個ずつ囲むように格子状の区画線22を形成するとよい。2枚の被覆シート21・21と区画線22で囲まれる空間が、コイルスプリング20を個別に収容するポケット23を構成する。
【0025】
被覆シート21を不織布のような通気性の素材で構成すると、各コイルスプリング20が中空円筒状であることと相俟って、スプリングユニット10の全体が上下方向に優れた通気性を発揮するので、敷きパッドの全体としての上下方向の通気性を高めて、蒸れの少ない敷きパッドとすることができる。なお区画線22は、ミシン目以外に例えば実線で形成してもよく、また熱溶着以外の例えば縫製などの方法で形成することができる。
【0026】
図5に拡大して示すように、スプリングユニット10の被覆シート21は、上下のクッション材14・15に対してそれぞれ接着剤25で固定されている。スプリングユニット10の前後の弾性マット12・13も同様に、上下のクッション材14・15に対してそれぞれ接着剤25で固定されている。つまり、スプリングユニット10と前後の弾性マット12・13が、上下のクッション材14・15を介して間接的に固定されている。これによれば、スプリングユニット10と弾性マット12・13の隣接部分の連結構造を省略して、連結構造に起因する異物感を解消し、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0027】
前側の弾性マット12の後面および後側の弾性マット13の前面は垂直に形成されており、これら後面および前面に対してスプリングユニット10の前後面がそれぞれ当接させてある。これによれば、スプリングユニット10と弾性マット12・13の間に隙間が生じないので、隙間に起因する使用者の寝心地の低下を招くことがなく、さらに、スプリングユニット10の前後方向のずれ動きを弾性マット12・13で規制することができる。弾性マット12・13はわたなどに比べて弾性の高いウレタンフォームからなるため、スプリングユニット10のずれ動きを的確に規制することができる。
【0028】
弾性ユニット3の前後中央にスプリングユニット10を配置し、その前後にウレタンフォームからなる弾性マット12・13を配置すると、弾性マット12・13はスプリングユニット10に比べて軽量であることから、弾性ユニット3の全面にスプリングユニット10を配置する場合に比べて、敷きパッドを軽量化することができる。また、ウレタンフォームからなる弾性マット12・13は、スプリングユニット10に比べて安価であることから、弾性ユニット3の全面にスプリングユニット10を配置する場合に比べて、敷きパッドの材料コストを削減することができる。さらに本実施例では、前後寸法が85cmのスプリングユニット10を弾性ユニット3の前後中央に配置して、同ユニット10が敷きパッドの使用者の腰部に確実に臨むものとした。弾性マット12・13に比べて反発力に優れるスプリングユニット10で、使用者の体重が最も集中する腰部を支持すると、使用者の寝姿勢を良好なものとして、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0029】
上記のようにスプリングユニット10と弾性マット12・13とクッション材14・15が一体化された弾性ユニット3は、2枚の表装材1・2の間に収容される。
図6に拡大して示すように各表装材1・2は、外面側から順に織布30と、ポリエステルわたで形成されたシート状のキルト芯31と、ウレタンフォームからなる弾性シート32と、不織布33とを積層し、キルティング加工を施すことにより作製されている。本実施例に係る敷きパッドを得るには、2枚の表装材1・2の間に弾性ユニット3を挟み、両表装材1・2の周縁どうしを全周にわたって重ね合わせ、縁テープ37を被せて糸38で周回状に縫着すればよい。縫着前の各表装材1・2の縦横寸法(前後寸法および左右寸法)は、その周縁どうしの間に弾性ユニット3が挟まれて縫着されない程度に、弾性ユニット3の縦横寸法よりも一回り大きく設定されている。縫着された両表装材1・2の周縁は、弾性ユニット3の上下方向の略中央と同じ高さに位置する。上下の表装材1・2の周縁どうしを直接縫着すると、従来のベッド用マットレスで用いられていた周面のボーダー表装材を省略して、敷きパッドの構造を簡素化することができる。ボーダー表装材を上面表装材と下面表装材にそれぞれ縫着していた従来の構造に比べて、表装材を縫着する作業の手間を半減させて、敷きパッドを低コストで製造することができる。
【0030】
両表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着すると、弾性ユニット3が両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定される。より詳しくは、上下のクッション材14・15に正対する各表装材1・2の主面部が、弾性ユニット3の上下面に対して上下方向に圧接し、また各主面部の周囲の部分が、弾性ユニット3の上下面の前後左右の周縁に対して斜め下向きあるいは斜め上向きに圧接することにより、表装材1・2に対する弾性ユニット3の全方向(上下方向、前後方向、および左右方向)のずれ動きが規制されている。弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定すると、弾性ユニット3と表装材1・2の間における接着剤などの固定手段を省略し、その分だけ製造に要する手間を削減して、敷きパッドを低コストで製造することができる。
【0031】
弾性ユニット3を表装材1・2で被覆固定して完成する敷きパッドの上下厚みは約6cmである。この敷きパッドにおいて、スプリングユニット10の各ポケットコイル11を構成するコイルスプリング20の直径寸法Dは上下寸法Hよりも大きく設定されている(
図1参照)。そのため、敷きパッドの上下厚み(約6cm)に内蔵できるように各コイルスプリング20の上下寸法Hを設定しても、その直径寸法Dが小さくなり過ぎず、従って各ポケットコイル11が充分な反発力を発揮することができる。また、直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、上下寸法が大きい従来のポケットコイルを用いる場合に比べて、スプリングユニット10を少ない個数のポケットコイル11で構成することができ、その分だけスプリングユニット10を軽量化し、またその材料コストを削減することができる。
【0032】
本実施例に係る敷きパッドは、
図7(a)に示すように三つに折り畳んだ状態や、
図7(b)に示すように渦巻き状に巻いた状態で、収納あるいは持ち運ぶことができる。布団のように竿に掛けて干すことも可能である。上記のように本実施例では、弾性ユニット3の前後中央にのみスプリングユニット10を配置し、また、直径寸法Dが上下寸法Hよりも大きいコイルスプリング20でスプリングユニット10を構成して、敷きパッドの全体を軽量化したので、折り畳んだ状態や渦巻き状に巻いた状態で容易に持ち運ぶことができる。この敷きパッドの全体重量は約5kgである。
【0033】
また本実施例では、弾性ユニット3の前後両端に弾性マット12・13を配置して、敷きパッドを渦巻き状に巻くことを容易とした。すなわち、ウレタンフォームからなる弾性マット12・13は、スプリングユニット10に比べて厚み方向に圧縮したときの反発力が小さい。このような弾性マット12・13を弾性ユニット3の前後両端に配置すると、敷きパッドの巻き始め部分(前端または後端)を、厚み方向に圧縮して細く巻くことが容易になり、この細い巻き始め部分を芯にして、敷きパッドの全体を容易に渦巻き状に巻くことができる。なお、本実施例に係る敷きパッドは、展開状態で厚み方向に圧縮された後で渦巻き状に巻かれ、気密性の袋に梱包された状態で出荷、販売に供される。
【0034】
本実施例では、弾性ユニット3の前後中央にスプリングユニット10を配置し、前後一対の弾性マット12・13と上下一対のクッション材14・15をそれぞれ同一の形状とし、敷きパッドの全体を前後対称かつ上下対称に形成して、敷きパッドを前後および上下(表裏)の区別無く使用できるようにした。このように、敷きパッドの前後と上下の区別を無くすと、敷きパッドを定期的に上下反転あるいは前後反転させるローテーションを可能として、敷きパッドを長寿命化することができる。ただし本発明において、敷きパッドを前後対称かつ上下対称とすることは必須ではなく、例えば一対の弾性マット12・13の前後寸法を異ならせてもよく、また一対のクッション材14・15を異なる素材で形成してもよい。クッション材14・15はウレタンフォーム以外に、例えば表装材1・2と同様のキルティング生地で形成することができる。コイルスプリング20は中空円筒状以外に、上下中央が括れた鼓形状や、上下中央が膨らんだ樽形状などに形成してあってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・2 表装材
3 弾性ユニット
10 スプリングユニット
11 ポケットコイル
12・13 弾性マット
14・15 クッション材
20 コイルスプリング
21 被覆シート