【解決手段】基材11と、基材11の少なくとも一方の面上に、第1の層1と、第2の層2とを有し、第1の層1が、親水性分子構造を含有し、第2の層2が、低屈折率フィラー2Aを含有し、第2の層2の表面の純水接触角が、90°以上である防曇防汚積層体。第2の層2の動的摩擦係数が0.4以下であることが好ましく、第2の層2が撥水水分子構造を有するか、又は親水性分子構造を有することが好ましい防曇防汚積層体。視感反射率が3.0%以下であることが好ましい、防曇防汚積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(防曇防汚積層体)
本発明の防曇防汚積層体は、基材と、第1の層と、第2の層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記防曇防汚積層体においては、前記1の層及び前記第2の層のうちの前記第1の層が、前記基材に近い位置に配されている。
【0012】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製基材、無機基材などが挙げられる。
【0013】
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
前記樹脂製基材は、例えば、トリアセチルセルロース又はポリカーボネートで構成された偏光シートであってもよい。
【0014】
前記無機基材の材質としては、例えば、金属酸化物(例えば、石英、サファイア、ガラス等)、金属(例えば、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、ニオブ、銅、チタン、アルミニウム、亜鉛、シリコン、マグネシウム、マンガン等)、合金(例えば、前記金属の組合せ等)などが挙げられる。
【0015】
前記基材は、透明性を有することが好ましい。
【0016】
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フィルム状であることが好ましい。
前記樹脂製基材がフィルム状の場合、前記樹脂製基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜1,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
前記無機基材がフィルム状の場合、前記無機基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜100mmが好ましい。
ここで、本明細書において「〜」を用いて規定される数値範囲は、下限値及び上限値を含む範囲である。即ち、「5μm〜1,000μm」は「5μm以上1,000μm以下」と同義である。
【0017】
前記基材の表面には、文字、模様、画像などが印刷されていてもよい。
【0018】
前記基材の表面には、前記防曇防汚積層体を成形加工時、前記基材と成形材料との密着性を高めるため、又は成形加工時の成形材料の流動圧から前記文字、前記模様、及び前記画像を保護するために、バインダー層を設けてもよい。前記バインダー層の材質としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレンブチルアルコール系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、各種接着剤を用いることができる。なお、前記バインダー層は2層以上設けてもよい。使用するバインダーは、成形材料に適した感熱性、感圧性を有するものを選択できる。
【0019】
前記第1の層及び前記第2の層が、前記樹脂製基材の片面に積層されている場合、前記第1の層及び前記第2の層側と反対側の前記樹脂製基材の表面は、シワ模様を有していてもよい。そうすることで、複数の前記防曇防汚積層体を重ねたときのブロッキングが防止され、後工程でのハンドリング性が向上し、物品を効率よく製造できる。
前記シワ模様は、例えば、シボ加工により形成できる。
ここで、ブロッキングとは、複数のシートを重ねた際に、各シートの引き離しが困難になることをいう。
【0020】
<第1の層>
前記第1の層は、親水性分子構造を含有する。
前記第1の層としては、製造が容易な点で、樹脂製の層が好ましい。
前記第1の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。
【0021】
前記親水性分子構造としては、親水性の分子構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性の有機分子構造などが挙げられ、具体的には、ポリオキシアルキル鎖、ポリオキシアルキレン鎖などが挙げられる。前記親水性分子構造は、例えば、前記第1の層を作製する際に、後述する親水性モノマーを用いることにより、前記第1の層中に導入することができる。
【0022】
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマー(以下、「親水性モノマー」と称することがある)と、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0023】
−−親水性モノマー−−
前記ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらは、単官能モノマーであってもよいし、多官能モノマーであってもよい。
前記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン鎖が、親水性に優れる点で好ましい。
ここで、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
【0024】
前記親水性モノマーとしては、例えば、多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物との反応によって得られるモノ若しくはポリアクリレート、又はモノ若しくはポリメタクリレートなどが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール、3価のアルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300〜1,000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。前記4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0025】
前記ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリン(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、MEPM−1000(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、エトキシ化グリセリン(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが、前記第1の層の適度な硬度と親水性とを両立できる点から、好ましい。
【0026】
前記4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0027】
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、末端スルホン酸変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは、塩を形成していてもよい。前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0029】
前記カルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0030】
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、リン酸エステルを有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
前記親水性モノマーは、多官能の親水性モノマーであることが好ましい。
【0032】
前記親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200以上が好ましい。
【0033】
前記親水性モノマーは市販品であってもよい。前記市販品としては、例えば、SR9035(サートマー社製、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート)などが挙げられる。
【0034】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60質量%以上が好ましく、60質量%〜99.9質量%がより好ましく、63質量%〜95質量%が更により好ましく、65質量%〜90質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0035】
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられる。
【0036】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0037】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレート、フィラーなどが挙げられる。
これらは、前記第1の層の伸び率、硬度などを調整するために用いることがある。
【0038】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0040】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、更に、平滑性を向上させるためのレベリング剤を含有していてもよい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記レベリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.0001質量%〜5質量%が好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0041】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、使用時には、有機溶剤を用いて希釈して用いることができる。前記有機溶剤としては、例えば、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0042】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化する。前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波などが挙げられる。
【0043】
前記第1の層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm〜100μmが好ましく、4μm〜50μmがより好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。前記平均厚みが、好ましい範囲内であると、防曇性が優れ、干渉ムラが低減し、また生産性に優れる点で有利である。前記平均厚みが、特に好ましい範囲内であると、干渉ムラをより低減させることができる。
【0044】
<第2の層>
前記第2の層の表面の純水接触角は、90°以上である。
前記第2の層は、低屈折率フィラーを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記第2の層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記第2の層は、撥水性分子構造を含有することが好ましい。前記撥水性分子構造は、純水接触角を高くすることに寄与するとともに、反射防止機能の向上にも寄与する。
前記第2の層は、親水性分子構造を含有することが好ましい。前記第2の層が前記親水性分子構造を有することで、防曇性が向上する。
【0045】
前記撥水性分子構造としては、撥水性の分子構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撥水性の有機分子構造などが挙げられ、具体的には、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、ジメチルシロキサン基などが挙げられる。前記撥水性分子構造は、例えば、前記第2の層を作製する際に、後述するラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマー(以下、「撥水性モノマー」と称することがある)を用いることにより、前記第2の層中に導入することができる。
【0046】
前記親水性分子構造としては、親水性の分子構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性の有機分子構造などが挙げられ、具体的には、ポリオキシアルキル鎖、ポリオキシアルキレン鎖などが挙げられる。前記親水性分子構造は、例えば、前記第2の層を作製する際に、前記親水性モノマーを用いることにより、前記第2の層中に導入することができる。
【0047】
前記第2の層の表面は平滑であることが好ましい。ここで、表面が平滑であるとは、意図的に形成された凸部又は凹部を表面に有さないことを意味する。例えば、前記防曇防汚積層体においては、前記第2の層を形成する際(前記硬化物を形成する際)に、物理的な加工による微細な凸部又は凹部が表面に形成されていないことが好ましい。
前記第2の層が表面に微細な凸部又は凹部を有さないことで、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着し難い。また、例えそれらの汚れが付着した場合でもティッシュなどで容易に除去でき、防曇特性の持続性に優れた物品を得ることができる。
【0048】
−純水接触角−
前記第2の層の表面の純水接触角は、90°以上であり、100°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、115°以上が特に好ましい。前記純水接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、170°などが挙げられる。
前記純水接触角は、例えば、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定することができる。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
水を滴下して5秒経過後の接触角を、前記第2の層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とする。
【0049】
−ヘキサデカン接触角−
前記第2の層の表面のヘキサデカン接触角は、30°以上が好ましく、60°以上がより好ましく、70°以上が更により好ましく、80°以上が特に好ましい。前記ヘキサデカン接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、150°などが挙げられる。
前記ヘキサデカン接触角が、前記好ましい範囲内であると、表面に指紋、皮脂、汗、涙、化粧品などが付着した場合でも、簡単に払拭することができ、優れた防曇性が維持できる点で有利である。
前記ヘキサデカン接触角は、例えば、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定することができる。
・ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・ヘキサデカンの滴下量:1μL
・測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して20秒経過後の接触角を、前記第2の層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とする。
【0050】
純水接触角が上記範囲内であり、且つヘキサデカン接触角が上記範囲内であると、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着した場合でも、それらの汚れが第1の層に浸透することが防止される。そのため、ティッシュなどによる払拭により、汚れは容易に払拭できるとともに、防曇性が汚れ付着前の状態に戻る。
【0051】
−動摩擦係数−
前記第2の層の動摩擦係数は、0.4以下であることが好ましい。そうすることにより、払拭による物理的な圧力を低く抑えることができ、耐傷性が向上する。また、ティッシュなどでの汚れの払拭性が向上する。
前記動摩擦係数は、例えば、以下の方法により測定できる。
Triboster TS501(商品名;協和界面科学株式会社製)を用いて測定する。面接触子にBEMCOT(登録商標) M−3II(商品名、旭化成株式会社製)を両面テープで貼り付け、測定荷重50g/cm
2、測定速度1.7mm/s、測定距離20mmとし、12回測定してその平均値を得る。これを任意の5箇所で繰り返し、得られた5つの値の平均値を動摩擦係数とする。
【0052】
−低屈折率フィラー−
前記低屈折率フィラーとしては、低屈折率のフィラーであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、「低屈折率」とは、一般的なプラスチックの屈折率1.50〜1.70よりも低い屈折率を意味する。
前記低屈折率フィラーの屈折率としては、1.10〜1.40などが挙げられる。
【0053】
前記低屈折率フィラーの材質としては、例えば、フッ化マグネシム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。
また、前記低屈折率フィラーの構造としては、中実粒子、中空粒子、多孔質粒子などが挙げられる。
これらの中でも、前記低屈折率フィラーとしては、中空シリカ、多孔質シリカが好ましい。
【0054】
前記低屈折率フィラーの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0055】
前記低屈折率フィラーの表面は、末端に(メタ)アクリル基、ビニル基、或いはエポキシ基をもつ有機系分散剤で表面処理されていることが好ましい。この場合、前記低屈折率フィラーを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化工程で有機系分散剤が周囲のモノマーと共重合し、得られる硬化物が低屈折率フィラーを含んで全体が一体化するので、塗膜強度や可撓性が向上する。
【0056】
前記第2の層における前記低屈折率フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜80質量%が好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、十分な反射防止機能が得られないことがあり、80質量%を超えると、耐傷性や加工性が低下することがある。
【0057】
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記第2の層が前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である場合、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記低屈折率フィラーと、撥水性モノマーと、重合開始剤とを含有し、好ましくは親水性モノマーを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0058】
前記親水性モノマーとしては、例えば、前記第1の層の説明における前記親水性モノマーが挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記重合開始剤としては、例えば、前記第1の層の説明における前記重合開始剤が挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記その他の成分としては、例えば、前記第1の層の説明における前記その他の成分が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0059】
−−撥水性モノマー−−
前記ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーとしては、例えば、ラジカル重合性不飽和基とフッ素及びケイ素の少なくともいずれかとを有するモノマーが挙げられる。そのような撥水性モノマーとしては、例えば、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する(メタ)アクリレートが挙げられ、更には、例えば、フッ化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられ、更に具体的には、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、フルオロアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート、ジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
前記撥水性モノマーとしては、更には、以下の(1)〜(5)に分類される撥水性モノマーが挙げられる。
(1)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレン、クロロトリフロロエチレンなどのフロロオレフィン類;
(2)アルキルパーフロロビニルエーテル類もしくはアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテル類;
(3)パーフロロ(メチルビニルエーテル)、パーフロロ(エチルビニルエーテル)、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)、パーフロロ(ブチルビニルエーテル)、パーフロロ(イソブチルビニルエーテル)などのパーフロロ(アルキルビニルエーテル)類;
(4)パーフロロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)などのパーフロロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類;
(5)トリフロロエチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート類
前記撥水性モノマーは、前記親水性モノマーと相溶することが好ましい。
【0061】
前記撥水性モノマーは、市販品であってもよい。
前記フッ化(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製KY−1200シリーズ、DIC株式会社製メガファックRSシリーズ、ダイキン工業株式会社製オプツールDACなどが挙げられる。
前記シリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製X−22−164シリーズ、エボニック社製TEGO Radシリーズなどが挙げられる。
【0062】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.018質量%超が好ましく、0.018質量%超5.0質量%未満が好ましく、0.075質量%〜3.0質量%がより好ましく、0.18質量%〜1.5質量%が特に好ましい。前記含有量が、5.0質量%以上であると、硬化物の撥水性は優れるものの、ガラス転移温度が低くなることで、柔らかくなりすぎ、耐磨耗性が低下することがある。また、前記第2の層中に前記撥水性モノマーの反応物が多く存在する結果、呼気防曇性が低下することがある。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0063】
前記第2の層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、視感反射率を低く抑え反射防止機能を高めることができる点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0064】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、第3の層、第4の層、アンカー層、保護層などが挙げられる。
【0065】
−第3の層−
前記第3の層としては、前記第1の層と前記第2の層との間に配され、前記第1の層及び前記第2の層と異なる層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第3の層を設けることで、耐傷性が向上する。
ここで、前記第1の層と前記第2の層と異なる層としては、例えば、前記第1の層よりも薄く、かつ前記第2の層よりも厚い層などが挙げられる。
【0066】
前記第3の層の表面の純水接触角は、65°以下であることが好ましい。そうすることにより、前記第1の層と前記第3の層との密着性が向上するとともに、得られる防曇防汚積層体の耐傷性がより向上する。
【0067】
前記第3の層としては、製造が容易な点で、樹脂製の層が好ましい。
前記第3の層は、親水性分子構造を含有することが好ましい。前記第3の層における前記親水性分子構造は、分子量1000以下であることが好ましい。前記第3の層における前記親水性分子構造が、分子量1000以下の低分子量であることで、前記第1の層と前記第3の層との密着性が向上する。
前記第3の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。
【0068】
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマー(以下、「親水性モノマー」と称することがある)と、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0069】
前記親水性モノマーとしては、例えば、前記第1の層の説明における前記親水性モノマーが挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記重合開始剤としては、例えば、前記第1の層の説明における前記重合開始剤が挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記その他の成分としては、例えば、前記第1の層の説明における前記その他の成分が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0070】
前記第3の層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜5μmが好ましく、0.5μm〜3μmがより好ましく、0.5μm〜2μmが特に好ましい。
【0071】
−第4の層−
前記第4の層としては、前記第1の層と前記第2の層との間に配され、高屈折率フィラーを含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚積層体が前記第4の層を有することは、視感反射率を低く抑え反射防止機能を高めることができる点で好ましい。
【0072】
前記高屈折率フィラーとしては、前記低屈折率フィラーよりも屈折率が高いフィラーであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記高屈折率フィラーの屈折率としては、1.60以上が好ましく、1.70〜2.50が好ましい。
【0073】
前記高屈折率フィラーの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫、五酸化アンチモン、アルミナ、酸化亜鉛などが挙げられる。
前記高屈折率フィラーは中実粒子であることが好ましい。
【0074】
前記高屈折率フィラーの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0075】
前記高屈折率フィラーの表面は、末端に(メタ)アクリル基、ビニル基、或いはエポキシ基をもつ有機系分散剤で表面処理されていることが好ましい。この場合、前記高屈折率フィラーを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化工程で有機系分散剤が周囲のモノマーと共重合し、得られる硬化物が高屈折率フィラーを含んで全体が一体化するので、塗膜強度や可撓性が向上する。
【0076】
前記第4の層における前記高屈折率フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜80質量%が好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、十分な反射防止機能が得られないことがあり、80質量%を超えると、耐傷性や加工性が低下することがある。
【0077】
前記第4の層は、防曇性を向上させる点で、親水性分子構造を含有することが好ましい。
前記親水性分子構造としては、親水性の分子構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性の有機分子構造などが挙げられ、具体的には、ポリオキシアルキル鎖、ポリオキシアルキレン鎖などが挙げられる。前記親水性分子構造は、例えば、前記第4の層を作製する際に、前述の親水性モノマーを用いることにより、前記第4の層中に導入することができる。
【0078】
前記第4の層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記高屈折率フィラーと、重合開始剤とを少なくとも含有し、好ましくは、親水性モノマーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記第1の層上に塗布し、次いで、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成する方法などが挙げられる。
【0079】
前記親水性モノマーとしては、例えば、前記第1の層の説明における前記親水性モノマーが挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記重合開始剤としては、例えば、前記第1の層の説明における前記重合開始剤が挙げられる。好ましい態様も同様である。
前記その他の成分としては、例えば、前記第1の層の説明における前記その他の成分が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0080】
前記第4の層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、視感反射率を低く抑え反射防止機能を高めることができる点から、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0081】
−アンカー層−
前記アンカー層は、前記基材と、前記第1の層との間に配される層である。
前記アンカー層を配することにより、前記基材と前記第1の層との接着性を向上できる。
前記アンカー層の屈折率は、干渉ムラを防止するために、前記第1の層の屈折率と近いことが好ましい。そのため、前記アンカー層の屈折率は、前記第1の層の屈折率の±0.10以内が好ましく、±0.05以内がより好ましい。または、前記アンカー層の屈折率は、前記第1の層の屈折率と前記基材の屈折率との間であることが好ましい。
【0082】
前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成できる。即ち、前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化した硬化物である。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤としては、例えば、前記第1の層の説明において例示した前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤がそれぞれ挙げられる。前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0083】
前記基材が無機基材の場合、前記アンカー層の材料としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などが挙げられる。これらは、ラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。
前記基材が無機基材の場合の前記アンカー層の形成方法としては、例えば、前記材料を溶かした溶液を前記無機基材上に塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱処理を所定時間行う方法などが挙げられる。
前記溶液に使用する溶媒としては、前記材料を溶解するものを選択する。例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等)、アノン(例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド:DMF)、スルフィド(例えば、ジメチルスルホキシド:DMSO)などから選択される少なくとも1種類以上が使用される。
塗布の方法としては、特に限定されるものではなく公知の塗布法を用いることができる。公知の塗布法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、ゴム版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
加熱温度としては、例えば、80℃以上200℃以下である。加熱時間は、例えば、1分間以上12時間以内である。
【0084】
前記アンカー層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましく、0.3μm〜3μmが特に好ましい。
【0085】
なお、前記アンカー層には、反射率低減や帯電防止の機能を付与してもよい。
【0086】
−保護層−
前記保護層は、前記第2の層の表面(純水接触角が90°以上である表面)を保護する層である。
前記保護層は、前記防曇防汚積層体を用いて後述する物品を製造する際に、前記表面を保護する。
前記保護層は、前記第2の層の前記表面上に配される。
【0087】
前記保護層の材質としては、例えば、前記アンカー層と同様の材質が挙げられる。
【0088】
前記防曇防汚積層体の伸び率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%以上が好ましく、10%〜200%がより好ましく、40%〜150%が特に好ましい。前記伸び率が、10%未満であると、成形加工が困難になることがある。前記伸び率が、前記特に好ましい範囲内であると、成形加工性に優れる点で有利である。
前記伸び率は、例えば、以下の方法により求めることができる。
前記防曇防汚積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。前記伸び率の測定においては、前記樹脂製基材の品種によって測定温度が異なり、前記伸び率は、前記樹脂製基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、前記樹脂製基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、150℃で測定するのが好ましい。
【0089】
前記防曇防汚積層体は、前記防曇防汚積層体の面内におけるX方向とY方向の加熱収縮率差が小さい方が好ましい。前記防曇防汚積層体の前記X方向と前記Y方向とは、例えば、防曇防汚積層体がロール形状の場合、ロールの長手方向と幅方向とに相当する。成形時の加熱工程に使用する加熱温度にて、防曇防汚積層体におけるX方向の加熱収縮率とY方向の加熱収縮率との差は5%以内であることが好ましい。この範囲外であると、成形加工時に、前記第1の層及び前記第2の層に剥離やクラックが発生したり、樹脂製基材の表面に印刷された前記文字、前記模様、前記画像などが変形や位置ズレを起こしてしまい、成形加工が困難になることがある。
【0090】
前記防曇防汚積層体の視感反射率は、3.0%以下であることが好ましい。前記視感反射率が3.0%を超えると、十分な反射防止機能が得られないことがある。
前記視感反射率は、例えば、以下の方法により測定できる。
防曇防汚積層体の第2の層とは反対側に黒色のビニールテープ(ニチバン株式会社製VT−50)を貼合し、第2の層側から5°正反射率スペクトルを日本分光株式会社製V−560で絶対反射率測定ユニットを用いて測定し、視感反射率を算出する。これを任意の3箇所で行い、その平均値を得る。
【0091】
前記防曇防汚積層体は、熱曲げ用フィルム、インモールド成形用フィルム、インサート成形用フィルム、オーバーレイ成形用フィルムに特に適している。
【0092】
前記防曇防汚積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する防曇防汚積層体の製造方法が好ましい。
【0093】
ここで、本発明の防曇防汚積層体の一例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の防曇防汚積層体の一例の概略断面図である。
図1の防曇防汚積層体は、樹脂製基材11と、樹脂製基材11上に順次積層された第1の層1と、第2の層2とを有する。第2の層2は、低屈折率フィラー2Aを含有している。また、第2の層2においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化している。
【0094】
図2は、本発明の防曇防汚積層体の他の一例の概略断面図である。
図2の防曇防汚積層体は、樹脂製基材11と、樹脂製基材11上に順次積層された第1の層1と、第3の層3と、第2の層2とを有する。第2の層2は、低屈折率フィラー2Aを含有している。また、第2の層2においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化している。第3の層3により、本発明の防曇防汚積層体の耐傷性が向上する。
【0095】
図3は、本発明の防曇防汚積層体の他の一例の概略断面図である。
図3の防曇防汚積層体は、樹脂製基材11と、樹脂製基材11上に順次積層された第1の層1と、第4の層4と、第2の層2とを有する。第2の層2は、低屈折率フィラー2Aを含有している。また、第2の層2においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化している。第4の層4は、高屈折率フィラー4Aを含有している。
【0096】
<防曇防汚積層体の製造方法>
前記防曇防汚積層体の製造方法は、第1の未硬化層形成工程と、第1の層形成工程と、第2の未硬化層形成工程と、第2の層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記防曇防汚積層体の製造方法は、本発明の前記防曇防汚積層体を製造する方法である。
【0097】
<<第1の未硬化層形成工程>>
前記第1の未硬化層形成工程としては、基材上に第1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して第1の未硬化層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0098】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記基材などが挙げられる。
前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の前記第1の層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0099】
前記第1の未硬化層は、前記基材上に前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して、必要に応じて乾燥を行うことにより形成される。前記第1の未硬化層は、固体の膜であってもよいし、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される低分子量の硬化性成分によって流動性を有した膜であってもよい。
【0100】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0101】
前記第1の未硬化層は、活性エネルギー線が照射されていないため、硬化していない。
【0102】
前記第1の未硬化層形成工程においては、アンカー層が形成された前記基材の前記アンカー層上に前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して前記第1の未硬化層を形成してもよい。
前記アンカー層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記アンカー層などが挙げられる。
【0103】
<<第1の層形成工程>>
前記第1の層形成工程としては、前記第1の未硬化層に活性エネルギー線を照射し前記第1の未硬化層を硬化させて、第1の層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0104】
前記第1の活性エネルギー硬化性樹脂組成物が、前記親水性モノマーを有することにより、得られる第1の層中には、親水性成分(吸水性成分)が存在する。そうすることにより、水蒸気は第1の層中に捕捉されやすくなる。その結果、より優れた防曇性が得られる。
【0105】
−活性エネルギー線−
前記活性エネルギー線としては、前記第1の未硬化層を硬化させる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線などが挙げられる。
【0106】
<<第2の未硬化層形成工程>>
前記第2の未硬化層形成工程としては、前記第1の層上に第2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して第2の未硬化層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0107】
前記第2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の前記第2の層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0108】
前記第2の未硬化層は、前記第1の層上に前記第2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して、必要に応じて乾燥を行うことにより形成される。前記第2の未硬化層は、固体の膜であってもよいし、前記第2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される低分子量の硬化性成分によって流動性を有した膜であってもよい。
【0109】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0110】
前記第2の未硬化層は、活性エネルギー線が照射されていないため、硬化していない。
【0111】
<<第2の層形成工程>>
前記第2の層形成工程としては、前記第2の未硬化層に活性エネルギー線を照射し前記第2の未硬化層を硬化させて、第2の層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第2の層を形成する際、通常、微細な凸部又は凹部を表面に形成するための物理的な加工は行われない。
【0112】
前記第2の活性エネルギー硬化性樹脂組成物が、前記撥水性モノマーと、前記親水性モノマーとを有することにより、得られる第2の層においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化する一方で、前記第2の層中には、親水性成分(吸水性成分)が存在する。そうすることにより、水滴は、前記第2の層の表面において撥水化され、水蒸気は、第2の層中に捕捉されやすくなる。その結果、より優れた防曇性が得られる。
更に、前記第2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が低屈折率フィラーを含有することにより、得られる前記防曇防汚積層体においては、前記低屈折率フィラーに由来する反射防止機能が得られる。
【0113】
(物品)
本発明の物品は、本発明の前記防曇防汚積層体を表面に有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形、オーバーレイ成形により形成されることが好ましい。
【0114】
前記防曇防汚積層体は、前記物品の表面の一部に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
【0115】
前記物品の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の物品の製造方法が好ましい。
【0116】
(物品の製造方法)
本発明の物品の製造方法は、加熱工程と、防曇防汚積層体成形工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じて、射出成形工程やキャスト成形工程などのその他の工程を含む。
前記物品の製造方法は、本発明の前記物品の製造方法である。
【0117】
<加熱工程>
前記加熱工程としては、防曇防汚積層体を加熱する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚積層体は、本発明の前記防曇防汚積層体である。
【0118】
前記加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外線加熱或いは高温雰囲気への暴露であることが好ましい。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂製基材のガラス転移温度近傍若しくはガラス転移温度以上であることが好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0119】
<防曇防汚積層体成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程としては、加熱された前記防曇防汚積層体を所望の形状に成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させて、空気圧により、所望の形状に成形する工程などが挙げられる。
【0120】
<射出成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、射出成形工程を行ってもよい。
前記射出成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0121】
前記成形材料としては、例えば、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂、各種複合樹脂、各種変性樹脂などが挙げられる。
【0122】
前記射出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させた前記防曇防汚積層体の基材側に、溶融した前記成形材料を流し込む方法などが挙げられる。
【0123】
<キャスト成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、キャスト成形工程を行ってもよい。
前記キャスト成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の基材側に、溶液に溶解させた樹脂材料を流し込み、前記樹脂材料を固化させて成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0124】
前記物品の製造方法は、インモールド成形装置、インサート成形装置、オーバーレイ成形装置を用いて行うことが好ましい。
【0125】
ここで、本発明の物品の製造方法の一例を、図を用いて説明する。この製造方法はインモールド成形装置を用いた製造方法である。
まず、防曇防汚積層体500を加熱する。加熱は、赤外線加熱、或いは高温雰囲気への暴露が好ましい。
続いて、
図4Aに示すように、加熱した防曇防汚積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、防曇防汚積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、第2の層が第2金型502を向くように配置する。
図4Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
【0126】
第1金型501と第2金型502との間に防曇防汚積層体500を配置した後、第1金型501と第2金型502とを型締めする。続いて、第2金型502のキャビティ面に開口されている吸引穴504で防曇防汚積層体500を吸引して、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。そうすることにより、キャビティ面が防曇防汚積層体500で賦形される。また、このとき、図示されていないフィルム押さえ機構で防曇防汚積層体500の外周を固定し位置決めしてもよい。その後、防曇防汚積層体500の不要な部位をトリミングする(
図4B)。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から防曇防汚積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。
【0127】
続いて、防曇防汚積層体500の樹脂製基材に向けて、第1金型501のゲート505から溶融した成形材料506を射出し、第1金型501と第2金型502を型締めして形成したキャビティ内に注入する(
図4C)。これにより、溶融した成形材料506がキャビティ内に充填される(
図4D)。更に、溶融した成形材料506の充填完了後、溶融した成形材料506を所定の温度まで冷却して固化する。
【0128】
その後、第2金型502を動かして、第1金型501と第2金型502とを型開きする(
図4E)。そうすることにより、成形材料506の表面に防曇防汚積層体500が形成され、かつ所望の形状にインモールド成形された物品507が得られる。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた物品507を取り出す。
【0129】
前記オーバーレイ成形装置を用いる場合の製造方法は、下記の通りである。これは、防曇防汚積層体を成形材料の表面に直接加飾する工程であり、その一例としては、TOM(Three dimension Overlay Method)工法が挙げられる。前記TOM工法を用いた本発明の物品の製造方法の一例を下記に説明する。
まず、固定枠に固定された防曇防汚積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成形した成形材料を設置しておく。同時に、防曇防汚積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。防曇防汚積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、防曇防汚積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。防曇防汚積層体が成形体に密着した後、得られた加飾成形品を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
【0130】
オーバーレイ成形の際には、前記防曇防汚積層体と前記成形材料とを接着するために、前記防曇防汚積層体の第2の層の面とは反対側の面に粘着層を設けてもよい。前記粘着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。前記粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材上に前記第1の層及び前記第2の層を形成後に、前記基材の前記第2の層側とは逆側に、粘着層用塗工液を塗工して、前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。また、剥離シート上に粘着層用塗工液を塗工して前記粘着層を形成した後に、前記基材と前記剥離シート上の前記粘着層とをラミネートして、前記基材上に前記粘着層を積層してもよい。
【0131】
ここで、本発明の物品の一例を図を用いて説明する。
図5〜
図8は、本発明の物品の一例の概略断面図である。
【0132】
図5の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213がこの順で積層されている。
この物品は、例えば、インサート成形により製造できる。
【0133】
図6の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213と、ハードコート層600とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213とがこの順で積層されている。また、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、ハードコート層600が形成されている。
この物品は、例えば、
図5の物品を製造後、第2の層213上に保護層を形成した後で、成形材料506の表面にハードコート層600を、成形材料506をハードコート液に浸漬、その後乾燥、硬化させること等により形成し、更に、保護層を剥離することで製造できる。なお、第2の層213が平滑面であり、純水接触角が前述の範囲内であり、且つヘキサデカン接触角が前述の範囲内である場合、第2の層213がハードコート液をはじくため、保護層を形成せずとも、第2の層上にはハードコートが形成されず、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側にのみハードコート層600が形成されるため、生産性に優れる。
【0134】
図7の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213とを有し、成形材料506の両側に、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213とがこの順に積層されている。
【0135】
図8の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213と、光学フィルム601とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、第1の層212と、第2の層213とがこの順で積層されている。成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、光学フィルム601が形成されている。光学フィルム601としては、例えば、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、偏光フィルムなどが挙げられる。
図7又は
図8に示す物品は、例えば、ダブルインサート成形により製造できる。ダブルインサート成形は、両面積層フィルム一体品を成形する方法であって、例えば、特開平03−114718号公報に記載の方法などを用いて行うことができる。
【0136】
(防汚方法)
本発明に関する防汚方法は、本発明の前記防曇防汚積層体を物品の表面に積層することにより前記物品の汚れを防ぐ方法である。
【0137】
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形により形成されることが好ましい。
【0138】
前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を積層する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を貼り付ける方法などが挙げられる。また、本発明の前記物品の製造方法によっても、前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を積層することができる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0140】
まず、各種評価方法を以下に示す。
【0141】
<層厚>
防曇防汚積層体の断面を、電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察することで層厚を測定した。任意の5箇所で測定し、その平均値を層厚とした。
【0142】
<呼気防曇性>
25℃37%RHの環境で、第2の層の表面に対して、該表面から法線方向に5cm離れた距離から息を大きく1回吐きかけた後直ちに、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎: 第2の層表面に外観変化が全くなかった。
○: 第2の層表面の一部において、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
×: 第2の層表面の全面において、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
【0143】
<純水接触角>
純水接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定した。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
水を滴下して5秒経過後の接触角を、第2の層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とした。
【0144】
<ヘキサデカン接触角>
ヘキサデカン接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定した。
・ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・ヘキサデカンの滴下量:1μL
・測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して20秒経過後の接触角を、第2の層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とした。
【0145】
<動摩擦係数>
Triboster TS501(商品名;協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。面接触子にBEMCOT(登録商標) M−3II(商品名、旭化成株式会社製)を両面テープで貼り付け、測定荷重50g/cm
2、測定速度1.7mm/s、測定距離20mmとし、12回測定してその平均値を得た。これを任意の5箇所で繰り返し、得られた5つの値の平均値を動摩擦係数とした。
【0146】
<汚れ付着性>
Sharpie PROFESSIONAL(黒の油性マジック、商品名、Newell Rubbermaid社製)で第2の層の表面を汚し、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:マジックを滴状あるいは線状にはじいた。
×:マジックをはじかずべっとり付着した。
【0147】
<汚れ拭き取り性>
Sharpie PROFESSIONAL(黒の油性マジック、商品名、Newell Rubbermaid社製)で第2の層の表面を汚した後、これをティッシュ(カミ商事株式会社製、エルモア)で10回、円を描くように払拭後に、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:汚れがなくなっていた。
×:汚れが残っていた。
【0148】
<耐傷性>
スチールウール(商品名:ボンスター、番手:#0000)を第2の層の表面に置き、荷重400gf/13mmφにて10往復摺動(摺動ストローク:3cm、摺動速度:6cm/s)した後、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:外観及び呼気防曇性に変化がなかった。
×:外観に傷付きや白濁などの変化があり、及び/又は防曇性が劣化した。
だだし、実施例3、4、比較例3〜5においては、荷重500gf/13mmφで試験を行った。
【0149】
<視感反射率>
防曇防汚積層体の第2の層とは反対側に黒色のビニールテープ(ニチバン株式会社製VT−50)を貼合し、第2の層側から5°正反射率スペクトルを日本分光株式会社製V−560で絶対反射率測定ユニットを用いて測定し、視感反射率を算出した。これを任意の3箇所で行い、その平均値を得た。
【0150】
<成型加工>
作製した防曇防汚積層体を赤外線照射により130℃で60秒間加熱後、真空圧空成型により、凹面が第2の層となるように、φ80mmの6カーブレンズ状に成型した。その後、トムソン刃でφ80mmの6カーブレンズ状防曇防汚積層体を打ち抜いた。これをインサート成型用金型にセットし、溶融したポリカーボネートを充填後、ポリカーボネートが固化するまで冷却した。その後、金型を開き、凹面が第2の層の6カーブレンズを得た。
【0151】
<<成型加工後の呼気防曇性>>
25℃37%RHの環境で、6カーブレンズの第2の層の表面に対して、レンズ中心部から法線方向に5cm離れた距離から息を大きく1回吐きかけた後直ちに、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎: 第2の層表面に外観変化が全くなかった。
○: 第2の層表面の一部において、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
×: 第2の層表面の全面において、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
【0152】
(実施例1)
<防曇防汚積層体の作製>
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のFE−2000(PC基材、平均厚み180μm)を用いた。
【0153】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥、硬化後の厚みが10μmとなるように、前記樹脂製基材上に塗布した。塗布後、60℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量600mJ/cm
2で紫外線を照射して硬化させ、第1の層を得た。
【0154】
−第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
・SR9035(サートマー社製) 34.5質量部
・EBECRYL 40(ダイセルオルネクス株式会社製) 14.8質量部
・イルガキュア 184D(BASF社製) 1.5質量部
・イソプロピルアルコール(関東化学株式会社製) 49.2質量部
【0155】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥、硬化後の厚みが100nmとなるように、前記第1の層上に塗布した。塗布後、60℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量600mJ/cm
2で紫外線を照射して硬化させ、反射防止機能を有する防曇防汚積層体を得た。
【0156】
−第2の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・スルーリア1110(日揮触媒化成株式会社製) 2.50質量%
・オプツールDAC−HP(ダイキン工業株式会社製) 0.05質量%
・SR9035(サートマー社製) 0.34質量%
・EBECRYL40(ダイセルオルネクス株式会社製) 0.15質量%
・イルガキュア184D(BASF社製) 0.02質量%
・IPA(関東化学株式会社製) 96.94質量%
【0157】
ここで、上記各材料の詳細は以下のとおりである。
スルーリア1110:中空シリカスラリーIPA分散液、固形分濃度20.5質量%
SR9035:エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート
EBECRYL40:ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート
オプツールDAC−HP:フッ化(メタ)アクリレート
【0158】
得られた防曇防汚積層体について、上記の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0159】
(比較例1)
実施例1において、第2の層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0160】
得られた積層体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示した。なお、比較例1の評価において、上記評価項目中の「第2の層」は、「第1の層」と読み替える。また、「防曇防汚積層体」は、「積層体」と読み替える。
【0161】
(実施例2)
下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて第2の層を形成した以外は実施例1と同様にして防曇防汚積層体を得た。
得られた防曇防汚積層体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0162】
−第2の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・オプスターTU2205(JSR株式会社製) 12.45質量%
・オプツールDAC−HP(ダイキン工業株式会社製) 0.05質量%
・tert−ブタノール(関東化学株式会社製) 85.5質量%
・ジアセトンアルコール(関東化学) 2.0質量%
【0163】
ここで、オプスターTU2205の詳細は以下のとおりである。
オプスターTU2205:フッ素ポリマー、低屈折率フィラーを含むMIBK分散液、固形分濃度10質量%
【0164】
(比較例2)
実施例1において、第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として下記の第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。比較例2の積層体は、第1の層が親水性分子構造を含有しない。
【0165】
得られた積層体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示した。
なお、比較例2の評価において、上記評価項目中の「防曇防汚積層体」は、「積層体」と読み替える。
【0166】
−第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
・A−TMMT(新中村化学工業株式会社製) 49.3質量部
・イルガキュア 184D(BASF社製) 1.5質量部
・イソプロピルアルコール(関東化学株式会社製) 49.2質量部
【0167】
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
【0168】
【表1】
【0169】
実施例1及び実施例2の防曇防汚積層体は、防曇性及び防汚性を有することに加え、反射防止機能も備えていた。
比較例1の積層体は、第2の層を有しないために、防汚性と反射防止機能とが不十分であった。
比較例2の積層体は、第1の層が親水性分子構造を含有しないため、防曇性が不十分であった。
【0170】
(実施例3)
<防曇防汚積層体の作製>
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のFE−2000(PC基材、平均厚み180μm)を用いた。
【0171】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥、硬化後の厚みが10μmとなるように、前記樹脂製基材上に塗布した。塗布後、60℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量600mJ/cm
2で紫外線を照射して硬化させ、第1の層を得た。
【0172】
−第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・SR9035(サートマー社製) 34.5質量%
・EBECRYL 40(ダイセルオルネクス株式会社製) 14.8質量%
・イルガキュア 184D(BASF社製) 1.5質量%
・イソプロピルアルコール(関東化学株式会社製) 49.2質量%
【0173】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥、硬化後厚みが1μmとなるように、前記第1の層上に塗布した。塗布後、60℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量600mJ/cm
2で紫外線を照射して硬化させ、第3の層を得た。
【0174】
−第3の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
・A600(新中村化学工業製) 24.9質量%
・M−313(東亞合成株式会社製) 24.9質量%
・Lucirin TPO(BASF社製) 0.5質量%
・イソプロピルアルコール(関東化学株式会社製) 49.7質量%
【0175】
A600:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート
M−313:イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート
【0176】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥、硬化後の厚みが100nmとなるように、前記第3の層上に塗布した。塗布後、60℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量600mJ/cm
2で紫外線を照射して硬化させ、反射防止機能を有する防曇防汚積層体を得た。
【0177】
−第2の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・スルーリア1110(日揮触媒化成株式会社製) 2.50質量%
・オプツールDAC−HP(ダイキン工業株式会社製) 0.05質量%
・SR9035(サートマー社製) 0.34質量%
・EBECRYL40(ダイセルオルネクス株式会社製) 0.15質量%
・イルガキュア184D(BASF社製) 0.02質量%
・IPA(関東化学株式会社製) 96.94質量%
【0178】
得られた防曇防汚積層体について、上記の評価を行った。評価結果を表2に示した。
ただし、耐傷性試験においては、荷重を500gf/13mmφにして試験を行った。
【0179】
(実施例4)
下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて第2の層を形成した以外は実施例3と同様にして防曇防汚積層体を得た。
得られた防曇防汚積層体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0180】
−第2の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・オプスターTU2205(JSR株式会社製) 12.3質量%
・tert−ブタノール(関東化学株式会社製) 85.7質量%
・ジアセトンアルコール(関東化学) 2.0質量%
【0181】
(比較例3)
実施例3において、第1の層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして、積層体を作製した。
【0182】
得られた積層体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。なお、比較例3の評価において、上記評価項目中の「防曇防汚積層体」は、「積層体」と読み替える。
【0183】
(比較例4)
実施例3において、第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として下記の第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用して、5μmの第1の層を形成した以外は、実施例3と同様にして、積層体を作製した。比較例4の積層体は、第1の層が親水性分子構造を含有しない。
【0184】
得られた積層体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。
なお、比較例4の評価において、上記評価項目中の「防曇防汚積層体」は、「積層体」と読み替える。
【0185】
−第1の層用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・A−DPH(新中村化学工業株式会社製) 39.4質量%
・ビスコート#300(大阪有機化学工業株式会社製) 9.8質量%
・イルガキュア 184D(BASF社製) 1.5質量%
・2−ブタノン(関東化学株式会社製) 49.3質量%
【0186】
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
ビスコート#300:ペンタエリスリトールとアクリル酸との縮合物
【0187】
(比較例5)
実施例3において、第2の層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして、積層体を作製した。
【0188】
得られた積層体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果を表2に示した。なお、比較例5の評価において、上記評価項目中の「防曇防汚積層体」は、「積層体」と読み替える。
【0189】
【表2】
【0190】
実施例3及び実施例4の防曇防汚積層体は、防曇性及び防汚性を有することに加え、反射防止機能も備えていた。更に、第1の層と第2の層との間に、第3の層を設けることで、実施例1及び実施例2と比べ、耐傷性がより優れていた。
比較例3の積層体は、第1の層を有しないために、防曇性が不十分であった。
比較例4の積層体は、第1の層が親水性分子構造を含有しないため、防曇性が不十分であった。
比較例5の積層体は、第2の層を有しないために、防汚性と反射防止機能とが不十分であった。