【課題を解決するための手段】
【006】
睾丸が圧迫されたり、股に密着して心地が悪い時に、手で睾丸を少し上に引き上げると、睾丸や陰茎が心地よくなるが、股部分は人目が気になる所なので常に手を差し込んで睾丸を引き上げることはできない。そこで、機械的にこの仕組みをつくれば、睾丸が太腿の外に位置し挟まれないと考えた。
【007】
人間は刻々と姿勢が変化する。睾丸が股に挟まれないようにするには、常に睾丸を持ち上げる仕組みが簡単であるが、手以外で持ち上げると、睾丸を圧迫して幾分の違和感と伴に、不快感を強く感じる。発明者はフェルト、スポンジ、布など様々な柔軟素材を用い、形は三角形、球形、四角形などの袋状やハンモック状、平状にして使用感を較べた。しかし、睾丸を一時的に持ち上げることはできるが、本発明の目的である、継続した快適な使用感を得ることができなかった。多くの試作品での使用結果から、布で睾丸を持ち上げようとすると、様々に変化する姿勢によって布位置がずれて安定しない結論に至った。そして、布では加わる力によって容易に変形して、定型を得ることが困難であるため、布の使用に捕らわれると、睾丸が股に挟まれない商品の制作はできないと考えた。
【008】
数多くの試作品から、快適な使用感を得るためには常に睾丸根元に留まり、睾丸全体を均等な力で持ち上げる必要があることが判明した。そして、(1)睾丸根元に留まる形と材料。(2)引っ張る位置。(3)適切な張力。(4)睾丸全体を圧迫なく持ち上げる仕組みの4項目の課題を解決することが必要であると考えた。
【009】
そこで、発明者は従来の下着の概念から外れているが、睾丸根元に順応して定着する形を得るために、硬質の材料を使用した。
図1で示すよう、通常の使用では変形し難く、変形しても復元する性質を有する厚さ1.7mm、幅15mm、全長170mmの合成樹脂をU字又はV字型または又はこれらを組み合わせた形にして睾丸保護体を得、これを睾丸根元に配置して、両端にゴム紐を取り付けて履くと、ゴム紐は太腿の付け根に沿うように配され、様々な姿勢でも睾丸根元に定着し、違和感も少ないことが判明した。この時使用したゴム紐は4mm幅の丸ゴムである。
【010】
更に厚さが0.8mmと5mmを加えて試したところ、0.8mm厚では姿勢によって柔軟に変形復元して違和感がなく快適であるが、股の圧迫によって変形する場合がある。0.8、5mm厚共に睾丸根元に定着して持ち上げようとする機能は果たすが、5mm厚は変形しにくいため使用始めや椅子に座った時に少し違和感がある。このように、厚さは多くの機能に直接関わらないが1.7±0.7mmが使い心地に優れている。この時のゴム紐は太腿の付け根に沿うように配された4mm径の丸ゴムである。
【011】
硬質の合成樹脂中で最適な材質を探るため、PE樹脂、PV樹脂、PP樹脂などを使用したが、違いは認められなかった。よって、復元力があり通常の使用で変形しなければ、材質は特定しなくても良い。断面の形には長方形、三角形、楕円形があるが、いずれを用いても機能に大きくは関わらないので特定しなくても良い。またV字型とU字型の使用感は概ね同じであり、大きな違いは認められなかったので、厳密に形を特定しなければならないわけではない。
【012】
ここに(1)睾丸根元に留まる形と材料(2)引っ張る位置は前記のように解決した。また、(3)適切な張力は例えばコードストッパーのような長さ調節器具を使用すれば容易に得れるので、課題4項目中3項目は解決できた。
【013】
睾丸保護体に一定以上の曲げ強度を有する布、例えば縦15mm、横160mmの睾丸保護体を縦60mm、横180mmのフェルト製の布袋に封入して横端に固定した場合、睾丸保護体部分約15mmが股と睾丸の間に定着し、布部分の約45mmが睾丸を抱くようにして持ち上げる力が生まれることを発見し、併せて布袋に睾丸保護体を固定することで、さらに持ち上げる力が増加することも発見した。持ち上げる力は睾丸保護体から離れるに従って次第に減少して、睾丸への圧迫感がなくなる。また、ゴム紐の取り付け方法や取り付け位置によっても、持ち上げる力が変化することも発見した。
【014】
そこで、
図3で示すように、この睾丸保護体を全長180mm、幅が70mmの布袋に封入し、横端に固定して、両端に長さが調節できる器具付きのゴム紐、例えばコードストッパー付きゴム紐を接続した構造が特徴の睾丸保護具を得た。ゴム紐の接続場所は睾丸保護体近傍が望ましく、
図4で示すように一個所に取り付けてもよい。長さはパンツの種類や体形によって相違するので、適度な張力を保つための長さ調節器具を取り付けるが、その場所や種類は問わない。ゴム紐は平ゴム、丸ゴムのいずれでもよいが、睾丸や腰回りに負担が少ない、張力の弱いゴム紐が望ましく、例えば丸ゴムの場合は3〜6mmが適当である。布袋に使用する布はフェルトや樹脂塗装布のように厚みと曲げ強度があるものが望ましいが、睾丸を支える形を保つ強度があればどのような材質でもよく、肌への刺激を抑制するために角を取って曲線にしてもよい。また、布袋に滑りにくく吸水性に優れた布や発砲ゴムを被せてもよい。
【015】
睾丸保護具を履くと、概ね太腿の付け根に沿うようにゴム紐が配されて、その方向から睾丸を持ち上げようとする力が架かり、横上からの張力と睾丸から受ける力との相互作用で睾丸保護具が睾丸根元に定着する。そして睾丸保護体の形と、これを封入して固定した数倍の幅からなる布袋の構造によって、睾丸保護体がない布部分に均等に睾丸を持ち上げる力が生まれ、折れ曲がらずに睾丸を心地よく持ち上げる。
【016】
ここに、(1)睾丸根元に留まる形と材料。(2)引っ張る位置。(3)適切な張力。(4)睾丸全体を圧迫なく持ち上げる仕組みの4項目の課題の全てが解決して、本発明の目的が達成できた。
【017】
この睾丸保護具をパンツに一体化するために、発明者は、パンツの左右2箇所を支点として、ゴム紐でパンツと睾丸保護具を接続した構造を特徴とした睾丸保護パンツを得た。支点となる位置は、パンツを履いた時にゴム紐が太腿の付け根に沿って配される位置であり、睾丸保護具を単独で履いた時と同じが望ましい。この場所はゴム部下1〜50mmの間と、太腿の付け根に沿った位置が交わるパンツ裏面の左右2個所である。この位置が姿勢の変化に最適に順応する場所で、ここが睾丸保護具を引き上げる支点となる。
【018】
パンツにゴム紐を取り付ける方法は、支点にゴム紐通しを設けて、これにゴム紐を通して一体化する方法、ゴム紐を直接支点に接続する方法、腰後ろから支点までゴム紐を縫製する方法などが考えられ、これらを実施したが、睾丸保護具を単独で使用するのと同様に快適な使用感を得ることができた。
【019】
睾丸保護具が接続したパンツを履き、睾丸保護具を睾丸下に配すると、いずれの方法でも全ての課題は解決できた。