特開2017-115487(P2017-115487A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-115487(P2017-115487A)
(43)【公開日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】鋼製水門
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/22 20060101AFI20170602BHJP
   E02B 7/44 20060101ALI20170602BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20170602BHJP
【FI】
   E02B7/22
   E02B7/44
   E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-253692(P2015-253692)
(22)【出願日】2015年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 陸弥
【テーマコード(参考)】
2D019
2E139
【Fターム(参考)】
2D019AA71
2D019CA03
2E139AA07
2E139AA08
(57)【要約】
【課題】小型化を図り狭い所でも両開き式の水門を設置することができる鋼製水門を提供すること。
【解決手段】両開き式の鋼製水門1において、鋼製の扉体10a,10bが回動可能に取り付けられる取付柱20a,20bと、取付柱20a,20bの前方に配置され、扉体10a,10bが開状態のときに当接するストッパ31a,31bが設けられる前柱30a,30bとを有し、取付柱20a,20b及び前柱30a,30bが鋼製であり、取付柱20a,20b同士、前柱30a,30b同士、及び前後に配置されている取付柱20a,20bと前柱30a,30bとが、それぞれ鋼製の梁40,41,42a,42b,43a,43b,45により連結されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両開き式の水門において、
鋼製の扉体が回動可能に取り付けられる取付柱と、
前記取付柱の前方に配置され、前記扉体が開状態のときに当接するストッパが設けられる前柱とを有し、
前記取付柱及び前記前柱が鋼製であり、
前記取付柱同士、前記前柱同士、及び前後に配置されている前記取付柱と前記前柱とが、それぞれ鋼製の梁により連結されている
ことを特徴とする鋼製水門。
【請求項2】
請求項1に記載する鋼製水門において、
前記扉体は、閉じた時に前方へ突出する「く」の字状で互いの先端同士が当接するように、前記取付柱に取り付けられている
ことを特徴とする鋼製水門。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鋼製水門において、
地上から地下に進入する鉄道の地下進入口に設置される
ことを特徴とする鋼製水門。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両開き式の水門に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上から地下に進入する鉄道や地下駐車場などにおいて、集中豪雨や河川の氾濫で出水した場合に地下へ浸水してしまうと、重大な事故を招くため、地下への進入口などの近くには止水を行うための水門が設置されている。このような水門には両開き式のものがあり、両開き式の水門では、従来から、水門の扉体が鋼製、扉体を支える柱がコンクリート製で製作されていることが一般的である。そして、出水した場合や出水のおそれがある場合に、扉体が閉じられて、地下への浸水を防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−034841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、扉体を支持する柱をコンクリート製とした場合、柱の断面積を大きくする必要があり、水門全体が大型化してしまうため、狭い所に両開き式の水門を設置をすることが非常に困難であった。また、扉体を開閉するための機械類を柱の内側(水門内)に配置する場合、その配置スペースを確保する必要があり、更に水門全体が大型化してしまうという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、小型化を図り狭い所でも両開き式の水門を設置することができる鋼製水門を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、両開き式の水門において、鋼製の扉体が回動可能に取り付けられる取付柱と、前記取付柱の前方に配置され、前記扉体が開状態のときに当接するストッパが設けられる前柱とを有し、前記取付柱及び前記前柱が鋼製であり、前記取付柱同士、前記前柱同士、及び前後に配置されている前記取付柱と前記前柱とが、それぞれ鋼製の梁により連結されていることを特徴とする。
【0007】
この鋼製水門では、両開き式の各扉体が左右一対の取付柱に回動可能に取り付けられており、各扉体が回動することによって水門が開閉する。そして、水門が開いているときには、取付柱の前方に配置された前柱に設けられたストッパに当接して、それ以上開かないようになっている。これらの取付柱及び前柱は鋼製であり、取付柱同士、前柱同士、及び前後に配置されている取付柱と前柱とが、それぞれ鋼製の梁により連結されている。これにより、十分な強度を確保した上で、コンクリート製の柱に比べて、水門全体を小型化することができるため、狭い所でも両開き式の水門を設置することができる。
【0008】
上記した鋼製水門において、前記扉体は、閉じた時に前方へ突出する「く」の字状で互いの先端同士が当接するように、前記取付柱に取り付けられていることが望ましい。
【0009】
このように扉体を取り付けることにより、水圧により扉体を閉じる方向に力が加わるため、確実に水門を閉じることができる。
【0010】
上記した鋼製水門において、地上から地下に進入する鉄道の地下進入口に設置されることが好ましい。
【0011】
鉄道の場合、用地の関係から(線路の両側の)限られたスペースに水門を設置する必要がある。そのため、この鋼製水門であれば、狭い所に両開き式の水門を設置することができるので、鉄道の地下進入口に設置することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋼製水門によれば、小型化を図り狭い所でも両開き式の水門を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る鋼製水門の正面図である。
図2】実施形態に係る鋼製水門の平面図である。
図3】実施形態に係る鋼製水門の側面図である。
図4図1に示すA−Aにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る鋼製水門の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、地上から地下に進入する鉄道の地下進入口に設置される鋼製水門について説明する。そこで、本実施形態に係る鋼製水門について、図1図4を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る鋼製水門の正面図である。図2は、実施形態に係る鋼製水門の平面図である。図3は、実施形態に係る鋼製水門の側面図である。図4は、図1に示すA−Aにおける断面図である。なお、図2では、扉体10a,10bを省略している。
【0015】
鋼製水門1は、鉄道軌道を囲うように立設された左右一対のコンクリート壁2a,2bの端部に配置されている。鋼製水門1は、鋼製の扉体10a,10bと、鋼製の取付柱20a,20bと、鋼製の前柱30a,30bと、非常用発電機50と、操作盤51とを備えている。そして、鋼製水門1では、通常時は扉体10a,10bが開いた状態であり、出水が発生した場合などに、操作盤51からの指令に基づいて扉体10a,10bが閉じられて鉄道軌道内への浸水を防止するようになっている。
【0016】
扉体10aは、取付柱20aに対し2箇所でヒンジ21aを介して回動可能に取り付けられている。同様にして、扉体10bもヒンジ21bを介して取付柱20bに回動可能に取り付けられている。これにより、扉体10a,10bが観音開きで開閉するようになっている。
【0017】
ここで、鋼製水門1の開閉機構について簡単に説明する。扉体10a,10bには、それぞれモータ付減速機11a,11bが設けられている。モータ付減速機11a,11bには、上方へ伸びるシャフト12a,12bが連結されている。シャフト12a,12bの先端にはピニオンギヤ13a,13bが取り付けられている。ピニオンギヤ13a,13bは、取付柱20a,20bに取り付けられたセクターギヤ14a,14bと噛み合っている。なお、セクターギヤ14a,14bは、鉄道車両に干渉しない高さ位置(建築限界よりも外側)に配置されている。本実施形態では、セクターギヤ14a,14bは、取付柱20a,20b及び後述する梁43a,43bに固定されている。
【0018】
モータ付減速機11a,11bが駆動してシャフト12a,12bが回転すると、ピニオンギヤ13a,13bが回転する。そうすると、ピニオンギヤ13a,13bは、セクターギヤ14a,14bに沿って円弧を描きながら移動する。これにより、扉体10a,10bがヒンジ21a,21bを支点として回動して開閉するようになっている。なお、モータ付減速機11a,11bは、通常は電力会社から、非常時(停電時)は非常用発電機50から電力が供給され、操作盤51から入力される動作指令に基づいて駆動するようになっている。これら非常用発電機50及び操作盤51は、コンクリート壁2aに沿うように設置、つまり、取付柱20a,20bの内側(鋼製水門1内)に配置されている。
【0019】
このように鋼製水門1では、操作盤51からの指令によって自動で扉体10a,10bを閉じるようになっているが、モータ付減速機11a,11bが故障などにより駆動しない場合も想定される。そのため、鋼製水門1では、手動でシャフト12a,12bを回転させるための手動ハンドル15a,15bを設けている。なお、手動ハンドル15a,15bは、着脱可能になっている。
【0020】
そして、扉体10a,10bは、それぞれ取付柱20a,20bに対して、閉じた時に前方(図4下方向)へ突出する「く」の字状で互いの先端同士が当接するように取り付けられている。これにより、水圧により扉体10a,10bを閉じる方向に力が加わるため、確実に鋼製水門1を閉じることができるようになっている。
【0021】
また、扉体10a,10bには、閉門状態を維持するためのロック装置16a,16bが設けられている。このロック装置16a,16bをロック状態にして締付金具17を取り付けることにより、全閉状態が保持されるようになっている。ロック装置16a,16bは周知のため、詳細は省略する。
【0022】
さらに、扉体10a,10bには、下部スライドゲート18a,18b及びパワーシリンダ19a,19bが備わっている。下部スライドゲート18a,18bは、パワーシリンダ19a,19bによって扉体10a,10bの下端部から下方へスライド移動して、地面と扉体10a,10bとの間を閉鎖するようになっている。なお、扉体10a,10bが開閉されるときは、下部スライドゲート18a,18bは上方へ移動しており、下部スライドゲート18a,18bは地面から離間している。
【0023】
ここで、閉門時に下部スライドゲート18a,18bが位置するレールの部分には、レール60の両側にゴム部材61が埋め込まれており、レール部分から水門内へ浸水しないようにされている。レール部分は、ゴム部材61を埋め込む空間を残してコンクリートにより覆われている。なお、通常(開門)時には、ゴム部材61が設けられているレール部分を鉄道車両が通過する際、ゴム部材61が弾性変形するため、埋め込まれたゴム部材61が鉄道車両の走行に悪影響を与えることはない。
【0024】
このような扉体10a,10bが取り付けられている取付柱20a,20bは、コンクリート壁2a,2bの端部に設けられている。これらの取付柱20a,20bは、地面に対して強固に固定されている。これにより、閉門時に水圧がかかった場合に、取付柱20a,20bには互いに離れる方向に力が加わるが、その力に十分に対抗することができるようになっている。また、取付柱20a,20bには、閉門時に各扉体10a,10bが当接するストッパ22a,22bが取り付けられている。
【0025】
一方、前柱30a,30bは、取付柱20a,20bの前方に設けられており、扉体10a,10bが開状態のときに当接するストッパ31a,31bを備えている。通常(開門)時には、扉体10a,10bがストッパ31a,31bに当接した状態で開門状態とされている。
【0026】
ここで、取付柱20a,20b及び前柱30a,30bは鋼製であり、取付柱20a,20b同士、前柱30a,30b同士、及び前後に配置されている取付柱20a,20bと前柱30a,30bとが、それぞれ鋼製の梁40,41,42a,42b,43a,43bにより連結されている。また、梁40と梁41とを連結する補強梁45と、X形状の補強部材46a,46bとが設けられている。このように、取付柱20a,20b及び前柱30a,30bは、鋼製の梁(補強梁も含む)により連結された鉄骨構造をなしている。
【0027】
すなわち、取付柱20aと取付柱20bとが上端部において、梁40により連結されている。同様に、前柱30aと前柱30bとが上端部において、梁41により連結されている。また、取付柱20aと前柱30aとが上端部及び中央部付近において、梁42a及び43aにより連結されている。同様に、取付柱20bと前柱30bとが上端部及び中央部付近において、梁42b及び43bにより連結されている。さらに、梁40と梁41とが補強梁45により連結されている。そして、梁40,41,42a,42b,45の各連結部(隅部)に連結するように、X形状の補強部材46a,46bが設けられている。
【0028】
このような構成にすることにより、鋼構造物が構成されるため、水圧が各部材に分散する。すなわち、扉体10a,10bにかかる水圧は、取付柱20a,20b、梁40,41,42a,42b,43a,43b、及び補強梁45を介して前柱30a,30bにかかるため、鋼製の取付柱20a,20bを用いても十分な強度を確保することができ、コンクリート製の柱に比べて、水門全体を小型化することができる。また、扉体10a,10bを開閉させる非常用発電機50や操作盤51を、水門内に配置することができる。
【0029】
そのため、狭い所でも両開き式の水門を設置することができる。その結果として、本実施形態に係る鋼製水門1であれば、軌道の両側に設置スペースが制限されている鉄道の地下進入口などにも設置することができる。
【0030】
続いて、上記の鋼製水門1の動作について説明する。鋼製水門1は、通常時、扉体10a,10bが開いた(開門)状態になっている。つまり、扉体10a,10bがコンクリート壁2a,2bの延長線上に配置されている。このとき、扉体10a,10bは、ヒンジ21a,21bで支持される端部とは反対側の端部において、前柱30a,30bに設けられたストッパ31a,31bに当接している。
【0031】
そして、地下への浸水のおそれが発生した場合には、操作盤51を操作して、モータ付減速機11a,11bを駆動させる。なお、停電時には、まず、非常用発電機50を作動させて、操作盤51及びモータ付減速機11a,11bへ電力を供給する。モータ付減速機11a,11bが駆動すると、シャフト12a,12bを介してピニオンギヤ13a,13bが回転する。ピニオンギヤ13a,13bが回転すると、ピニオンギヤ13a,13bは、セクターギヤ14a,14bに沿って円弧を描きながら移動する。この移動に伴い、扉体10a,10bがヒンジ21a,21bを支点として回動して閉じられる。次いで、ロック装置16a,16bをロック状態にして締付金具17を取り付ける。その後、操作盤51を操作して、パワーシリンダ19a,19bを駆動させて、下部スライドゲート18a,18bを下降させる。かくして、鋼製水門1が全閉状態となり、進入口から地下への浸水を防止することができる。
【0032】
以上、詳細に説明したように本実施形態に係る鋼製水門1によれば、取付柱20a,20b及び前柱30a,30bは鋼製であり、取付柱20a,20b同士、前柱30a,30b同士、及び前後に配置されている取付柱20a,20bと前柱30a,30bとが、それぞれ鋼製の梁40,41,42a,42b,43a,43b,45により連結されている。これにより、扉体10a,10bの取付部において十分な強度を確保することができるとともに、コンクリート製の柱に比べて鋼製水門1全体を小型化することができるため、狭い所でも両開き式の水門を設置することができる。
【0033】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。上記した実施形態では、鉄道の地下進入口に設置する場合を例示したが、本発明に係る水門は、地下鉄や地下駐車場の入口に設置することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼製水門
10a,10b 扉体
20a,20b 取付柱
22a,22b ストッパ
30a,30b 前柱
40,41,42a,42b,43a,43b 梁
45 補強梁
50 非常用発電機
51 操作盤
図1
図2
図3
図4