【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通りギターを演奏する上で必要になる演奏コードを練習する為の器具は幾つか提案されている。しかしながら、従来提案されているこの種の器具は、専ら演奏コードを表示するものであり、実際にその演奏コードを押えているか否かを確認するものではなかった。
【0008】
この点、前記特許文献3で提案されている演奏支援機能付電子楽器は、手本楽曲データに基づいて、時間進行とともに、前記チャンネル別に少なくとも前記手本発音タイミングを可視表示する可視表示手段と、発音タイミングを前記チャンネル別に入力する発音タイミング入力手段を備え、発音タイミングの入力の有無を検知する事が行われている。
【0009】
しかしながら、この文献で提案されている演奏支援機能付電子楽器における発音タイミングの入力の検知は、手本発音タイミングを有する全ての前記音符を発音させるためのものであり、可視表示手段が可視表示しているチャンネルを選択しているか否かを検知するものではない。更に、この特許文献3で提案されている演奏支援機能付電子楽器は、発光指示LED付フレットスイッチのオン/オフを検知するものであり、ギターなどにおけるフレットにおいて弦を押えているか否かを検知するものではない。この為、当該演奏支援機能付電子楽器は、ギターなどの様に弦を手指で押さえて演奏する弦楽器の練習に適するものではなかった。
【0010】
そこで本発明は、ギターやバイオリンを始めとする撥弦楽器や擦弦楽器において、演奏時において手指で押さえる場所をガイドし、望ましくは当該手指で押さえる場所を時間の経過(曲の進行など)とともに順次変化させて表示することの出来る弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を提供する事を第一の課題とする。
【0011】
そして、前記弦楽器を演奏する為に手指で押さえる場所を表示した際に、実際にその場所を手指で押さえたか否かを確認した上で、次の押さえ場所を表示することが望ましい。そこで本発明は、弦を手指で押さえた際に、所定の場所を正しく押えたか否かを検知し、その検知結果から、正しい場所を押えた後に、次の押さえ場所を表示するようにした弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を提供することを第二の課題とする。
【0012】
更に、ギターなどの様に弦を手指で押さえて演奏する弦楽器においては、客観的又は事後的に、どの場所を手指で押さえているのかを確認する事ができなかった。この為、当該弦楽器で演奏した曲を記録する場合には、発生した音をマイクなどで取得し、これを電気信号に変換して保存又は記録しなければならなかった。即ち、曲の保存に際しては、発した音の取得及び変換処理が介在することになり、その結果、和音などを正確にデータ化するのは困難であった。この為、例えばギター等で楽曲を作る場合には、音を録音して此れを電子化するか、これから楽譜を作成しなければならなかった。
【0013】
そこで本発明では、音を取得して電子データ化するのではなく、演奏時に手指で押さえている場所を読み取る事ができ、更に望ましくは、当該演奏している楽曲の音符を正確に電子データ化する事ができるようにした弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を提供することを第三の課題とする。
【0014】
更に実際に弦を振動させて音を発生させる弦楽器では、弦を弾いた時に音が発生する事から、弦楽器の演奏をより正確に練習する場合や、その演奏を正確に記録する場合には、弾いている弦が間違っていないか否かや、弾いているタイミングが合っているか否かもチェックすることが望ましい。
【0015】
そこで本発明は、手指で押さえている弦とフレットの情報の他に、何れの弦をピック等によって弾いているかの情報を取得し、更に弦を弾いたタイミングの情報も取得することのできるようにした弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を提供することを第四の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題の少なくとも何れかを解決する為、本発明では弦楽器の演奏時において、手指で押さえている弦と、フレットの位置情報を電気的に取得できるようにし、更に望ましくはピックなどで弾いた弦や、引いたタイミングの情報を電気的に取得できるようにした弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を提供するものである。
【0017】
即ち、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、弦を手指で押さえて演奏する弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置であって、手指で押さえた位置を電気信号によって検知する押さえ位置検知手段と、当該押さえ位置検知手段が検知した位置情報を記録する記録手段、及び当該押さえ位置検知手段が検知した位置情報を外部に出力する出力手段の少なくとも何れかとを備えて構成する。
【0018】
かかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、上記押さえ位置検知手段と共に、記録手段及び/又は出力手段を備えている事から、ギターなどの弦楽器の演奏を練習する為に使用したり、演奏時に手指で押さえた位置を記録する為の装置として使用したりする事ができる。特に、弦楽器の演奏の練習用に使用する場合には、位置検知手段が検知した位置情報が、本来の演奏時に押えなければならない位置と合致するのかを、演奏と同時又は演奏後に確認する事ができる。そして演奏時に手指で押さえた位置を記録する為の装置として使用する場合には、演奏時における手指の押さえ位置(弦及びフレット位置)や、演奏コードを正確に記録する事ができ、よってギターなどの弦楽器を使用して作曲し、当該手指の押さえ位置(弦及びフレット位置)を検知する事で、その音階や演奏コードを正確に保存する事ができる。なお、上記押さえ位置検知手段は、手指で押さえている弦およびフレットの位置情報を検出するだけでなく、更に弦を離した時のタイミングを検知する事もできる。押さえている弦を離すことにより、本来であれば弦の振動数が変わり、音が変わる事から、そのタイミングを検出する事ができる。
【0019】
かかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、演奏する弦楽器に組み込むことができるモジュールとして形成する他、これ自体で演奏の練習・記録を可能とする単独の装置として実現する事ができる。特に本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を、弦楽器の練習又は演奏記録の専用の装置として構成する場合には、必ずしも音を発する必要は無い事から、任意の形状及び大きさに形成する事もできる。例えば対象とする弦楽器がギターである場合には、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、ギターにおけるネック部分を模した形状、または当該ネック部分の一部を模した形状に形成する事もできる。特に、ネック部分の一部を模した形状にすることにより小型化を実現する事ができ、その結果、携帯可能であって、場所を選ばずに使用できる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置となる。よって、本明細書及び特許請求の範囲の記載において、ネックとは弦楽器のネック部分の他、当該ネック部分の全部または一部を模した部材を手指し、フレットとは当該多義的な意味合いにおけるネックの長さ方向に平行に並んで突出している部材を意味し、弦とは当該多義的な意味合いにおけるネックに架設されたものであって、音を発する為に振動するか否かは問わないものとする。
【0020】
上記押さえ位置情報検知手段は、手指で押さえた位置(押さえた弦及びフレット)を電気信号によって検知するものであり、使用者が押えた場所における電気的な通電を、ADコンバータや電圧コンパレータ等で検知する事ができる。またタッチパネルに採用されている技術、即ち、抵抗膜方式(アナログ抵抗膜方式)、表面型静電容量方式 (Surface Capacitive Type)、投影型静電容量方式 (Projected Capacitive Type)、超音波表面弾性波方式、音響パルス認識方式、振動検出方式(DST)、赤外線遮光方式、電磁誘導方式、画像認識方式、又は光センサ内蔵LCD方式等を利用して、使用者が手指で押さえた場所を検知する事もできる。
【0021】
かかる押さえ位置情報検知手段は、ギターのネック部分等を模した形状の指板面に埋め込んだ状態で設ける他、当該指板面に設けたフレットを利用する事もできる。指板面に直接設ける場合には、電気回路の開閉を行うスイッチなどを用いる事ができる。またフレットを利用する場合には、当該フレットと弦とが接触することによる電気的な接続を利用して位置情報を検知する事ができる。特にフレットを備える弦楽器においては、演奏に際して弦とフレットとの接触位置を調整して音階を発することから、演奏に際して、弦とフレットとは確実に接触する事になる。この為、当該弦とフレットとの接触に基づいて、手指で押さえた場所を特定することにより、当該手指で押さえ位置情報を確実に取得する事ができる。
【0022】
よって本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置では、前記指板面には、その幅方向に延伸する複数のフレットが平行に設けられており、当該フレットと前記弦とは導電性を有して構成されており、前記押さえ位置検知手段は、当該フレットと弦との電気的な接続によって、手指で押さえた位置を電気信号によって検知するように構成することが望ましい。
【0023】
また本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置では、前記の通り弦を押さえている位置情報(押さえている弦とフレット位置)の他に、更に弦を弾いている情報を取得することが望ましい。当該弾いている弦の情報としては、弾いている弦を特定する情報の他、弾いたタイミングの情報も取得する事ができる。よって、本発明にかかる当該支援装置は、更に弾いた弦を検知する弦検知手段を備えることが望ましい。かかる弦検知手段を備える事により、押さえている弦を、正確に弾いているか否かを確認する事ができる。かかる弦検知手段は、弦を弾くピックと弦との電気的な接続によって弾いた弦の情報を取得する事ができる。その他にも、弦の振動を検知するセンサ(振動センサなど)を検知する事により、弾いた弦の情報を取得する事もできる。また。当該弦検知手段を備える事により、弦検知手段が検知した減において、前記押さえ位置情報検知手段における手指で押さえている弦とフレットの位置情報を取得するように構成する事もできる。これにより、実際に演奏している時の音を電子データとして取得する事ができる。
【0024】
また、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置を、特に弦楽器の演奏練習用に使用する場合には、手指で押さえる場所をガイドする為のガイド手段を設けることが望ましい。かかるガイド手段は、色彩や明度の変化などによって識別表示するように構成する他、発光手段を使用して、その点灯/消灯等による輝度の違いによって識別表示する事もできる。特に発光手段を用いて手指の押さえ位置(弦及びフレット位置など)を表示する事により、室内(例えばスタジオ等)等の照明が十分ではない場所であっても、当該手指で押さえる場所を的確に認識する事ができる。
【0025】
よって、本発明の弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置において、前記指板面には、その幅方向に延伸する複数のフレットが平行に設けられていることが望ましく、当該フレット同士の間には、各弦の対向位置に、手指で押さえる位置を表示する発光手段が設けられていることが望ましい。
【0026】
かかる発光手段としてはLEDを用いる事ができ、当該LEDを前記指板面に添設するか、または発光部が露出した状態に埋設する事ができる。更に当該指板面が透明に形成されている場合には、発光手段における透過光が表面に露出するようにして、当該ネック部内に設ける事もできる。
【0027】
かかる発光手段は、使用者が押さえるべき場所を表示する為に機能させる他、これに代えて使用者が押さえている弦及びフレット位置を発光表示するように構成する事もできる。このように使用者が押さえている位置を発光させることにより、実際に押さえている弦のフレット位置を正確に記録している事を確認する事ができ、また第三者に演奏方法を教授する場合において、手本となる演奏で、何れの弦のフレット位置を押さえているかを明確に示す事ができる。
【0028】
また、かかる発光手段は、各弦における夫々のフレット同士の間に設けられることになるが、必ずしも1つである必要は無く、2つ以上設けても良く、また相互に異なる色で発光する発光手段を2つ以上設ける事もできる。このように形成すれば、当該発光手段を異なる色で発光させる事ができ、次に演奏する弦及びフレット位置と、その次に演奏する弦及びフレット位置とを異なる色で表示させることができる。
【0029】
そして本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置が、特に弦楽器演奏の練習用に使用される場合には、練習する楽曲、練習する演奏コード(和音)、又は練習する音階等を演奏する際において、押さえるべき弦とフレット位置を記憶して、順次、前記発光手段に出力表示する為の構成を伴うことが望ましい。
【0030】
よって、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、更に演奏時において手指で押さえる位置を記憶した記憶手段と、当該記憶手段が保有する情報に基づいて前記発光手段のオン/オフを制御する制御手段とを備えており、当該制御手段は、記憶手段が保有する情報に従って順次発光手段のオン/オフを制御すると共に、発光手段を発光させた位置のフレットで弦を押えながら弾いたことを、前記押さえ位置検知手段及び弦検知手段からの信号に基づいて検知したことを契機として、次に手指で押さえる位置の発光手段を発光させるように構成することが望ましい。
【0031】
上記記憶手段としてはメモリを使用する事ができ、制御手段としてはCPU等の情報処理装置を使用する事ができる。かかる制御手段は、その処理内容を予めプログラミングされている他、任意に指定したプログラムを記憶手段又は外部から書き込み保存できるように構成する事ができる。かかる記憶手段は、前記制御手段と共にマイクロプロセッサーユニットにより構成する事ができる。
【0032】
また、前記記憶手段に記憶している情報を指定する為、及び/又は前記制御手段の処理内容を選択・制御する為に、コントロール部を備えることが望ましい。かかるコントロール部は、使用者の選択を入力する為のボタンなどの入力部と、入力した情報を表示するディスプレイや発光部を備えて構成する事ができる。
【0033】
そして、上記制御手段の制御により、練習する楽曲、演奏コード又は音階が、順次、発光手段に出力されることになるが、当該出力のタイミングは、現在発光手段が発光表示している弦及びフレットを、実際に使用者が押さえた事を契機として行う事ができる。かかる検知は、前記押さえ位置検知手段からの信号を取得することにより行う事ができる。更に望ましくは、弾いた弦を前記弦検知手段によって検知し、前記押さえ位置検知手段からの信号とともに取得する事で、指定された弦を指定されたフレットで押さえると共に、当該弦を弾いたことの条件を満たした時に、現在発光手段が発光表示している弦及びフレットを、実際に使用者が押さえたと判断する事ができる。
【0034】
また、当該制御手段は、順序良く又はランダムに、押さえるべき弦とフレット位置の情報を発光手段に出力するだけでなく、更に、又はこれに代えて、何れかの弦を何れかのフレット位置で押さえた場合に、当該押さえた弦のフレットを含む演奏コード(和音)で押さえるべき弦及びフレットを表示させることもできる。このような処理を実行する場合には、押さえた弦とフレットをキーとして、これに関連する弦とフレット位置の情報を取得することにより実現する事ができる。
【0035】
更に、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、前記制御手段が発光させている発光手段の位置を表示するディスプレイを備えて構成することが望ましい。かかるディスプレイには、少なく制御手段が発光手段に出力している演奏コードを表示させることができる。このように形成すれば、使用者は、発光手段を手掛かりに押さえている演奏コードの名称を、このディスプレイから取得する事ができる。また、このディスプレイには、発光手段が出力している演奏コードや音階において、何れの弦について正しく押さえているかを表示する事ができる。このように形成すれば、実際に押さえている弦ごとに、何れの弦の押さえ位置(フレット位置)が誤っているのかを明確に確認する事ができる。かかるディスプレイは、液晶ディスプレイを使用する他、文字や位置をLED表示する事ができる。
【0036】
また、本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、弦の振動によって音を発するものでないものとして形成する事もできる。例えばネックの全体または一部、若しくはこれを模した形状(即ち、ボディーを伴っていない形状)で構成することもできる。このように、弦の振動によって音を発するものでない場合には、前記押さえた弦とフレット位置に応じた音を発する発音手段を備えて構成する事もできる。かかる発音手段は、前記押さえ位置検知手段が検知した情報、更に望ましくは弦検知手段が検知した情報に基づいて、前記制御手段が発生させる音を特定し、当該発音手段から音を発するように構成する事ができる。かかる発音手段としては、スピーカーやピエゾ素子等を用いて形成する事ができる。かかる発音手段を設ける事により、小型化によって本来であれば音を発することのできない当該支援装置であっても、使用者が実際に押さえている時の音を確認しながら練習する事ができ、また演奏している音の演奏コードなどを記録する事ができる。
【0037】
なお、このように当該弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置が音を発生させるものでない場合、より具体的には、押さえ位置検知手段により、手指で押さえている弦とフレットの位置情報を取得し、また弦検知手段により、弾いている弦の情報を取得するものとして構成されており、これらの情報を外部のコンピュータなどに送信する場合には、当該弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、コンピュータに対する入力デバイスとして機能する事ができる。また発光手段を発光させる情報を、外部のコンピュータから取得する場合には、当該弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、コンピュータからの出力デバイスとして機能する事ができる。また、これらの情報を取得するものであって、弦の振動によって音を発生させることが無い場合には、当該弦について調律の必要性は無くなる。
【0038】
上記本発明にかかる弦楽器演奏の練習用又は記録用の支援装置は、ギターの他、様々な弦楽器の練習用、又は演奏の記録用に使用する事ができ、例えば、バイオリン、琴、琵琶、エレキベース、チェンバロ、胡弓などの様々な撥弦楽器や擦弦楽器等の弦楽器の演奏を支援する為に使用する事ができる。