【実施例】
【0050】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0051】
<実施例1>
43m
2/gのBET法による比表面積と30のL値を有するITO粒子(三菱マテリアル製P2−ITO)を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のMMB145gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、50nmであった。得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.19g、テルペンフェノール樹脂0.44gをMMBとメチルイソブチルケトン(MIBK)を1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.007g(塗料中の含有量が0.014質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0052】
<実施例2>
膜表面調整剤として実施例1と同じ上記式(3)に示されるスルホベタイン型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0053】
<実施例3>
膜表面調整剤として実施例1と同じ上記式(3)に示されるスルホベタイン型化合物を塗料中の含有量が0.013g(塗料中の含有量が0.025質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0054】
<実施例4>
膜表面調整剤として上記式(5)に示されるスルホベタイン型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0055】
<実施例5>
膜表面調整剤として上記式(4)に示されるスルホベタイン型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0056】
<実施例6>
膜表面調整剤として上記式(2)に示されるカルボベタイン型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0057】
<実施例7>
実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.16g、テルペンフェノール樹脂0.38gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.100g(塗料中の含有量が0.200質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0058】
<実施例8>
膜表面調整剤として上記式(6)に示されるアミンオキシド型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0059】
<実施例9>
膜表面調整剤として上記式(7)に示されるホスホベタイン型化合物を0.008g(塗料中の含有量が0.016質量%)添加し混合した。これ以外は、実施例1と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0060】
<実施例10>
実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.15g、テルペンフェノール樹脂0.34gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.150g(塗料中の含有量が0.300質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0061】
<実施例11>
40m
2/gのBET法による比表面積と37のL値を有するITO粒子を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のMMB95gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、58nmであった。得られたITO分散液44.82gとアクリル樹脂(大阪有機化学工業製ビスコート802)3.38g、光重合開始剤(BASF社製イルガキュア184)0.27gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒0.59gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.150g(塗料中の含有量が0.081質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は44.8質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0062】
<実施例12>
65m
2/gのBET法による比表面積と22のL値を有するITO粒子を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のMMB145gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、48nmであった。得られたITO分散液4.15gとエポキシ樹脂(吉村油化学社製ユカレジンNE−002)0.40g、硬化剤(吉村油化学社製ユカレジンH−40)0.05gを溶媒として、MMB10.00gと水35.51g混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.003g(塗料中の含有量が0.006質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は3.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0063】
<実施例13>
実施例1で得られたITO分散液26.25gとウレタン樹脂(第一工業製薬社製スーパーフレックス170)11.98gを溶媒のMMB3.00gと水8.23gを混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.023g(塗料中の含有量が0.045質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は21.0質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、30質量%であった。
【0064】
<実施例14>
43m
2/gのBET法による比表面積と30のL値を有するITO粒子(三菱マテリアル製P2−ITO)を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のトルエン70g、MMB75gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、49nmであった。得られたITO分散液16.88gとポリヒドロキシポリオレフィンポリマー(三菱化学製ポリテールH)0.40gを溶媒のトルエン32.38gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.011g(塗料中の含有量が0.023質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は13.5質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、10質量%であった。
【0065】
<比較例1>
膜表面調整剤を添加混合せずに、ITO導電膜形成用塗料を調製した。実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.19g、テルペンフェノール樹脂0.45gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合し、ITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0066】
<比較例2>
実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.19g、テルペンフェノール樹脂0.44gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤としてポリエステル変性シリコーン系樹表面調整剤(商品名:BYK−313、ビックケミー社製)を0.013g(塗料中の含有量が0.025質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0067】
<比較例3>
実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.18g、テルペンフェノール樹脂0.41gを溶媒のMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤としてポリエステル変性シリコーン系樹表面調整剤(商品名:BYK−313、ビックケミー社製)を0.050g(塗料中の含有量が0.100質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0068】
<比較例4>
膜表面調整剤として上記式(9)に示されるカチオン型含窒素フッ素系化合物を塗料中の含有量が0.025質量%になるように添加し混合した。これ以外は、実施例9と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。
【0069】
<比較例5>
膜表面調整剤として上記式(8)に示されるアニオン型含窒素フッ素系化合物を塗料中の含有量が0.025質量%になるように添加し混合した。これ以外は、実施例9と同様にしてITO導電膜形成用塗料を調製した。
【0070】
<比較例6>
70m
2/gのBET法による比表面積と55のL値を有するITO粒子を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のMMB145gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、150nmであった。得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.19g、テルペンフェノール樹脂0.44gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.010g(塗料中の含有量が0.020質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0071】
<比較例7>
35m
2/gのBET法による比表面積と36のL値を有するITO粒子を準備し、このITO粒子100gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系の分散剤5gと溶媒のMMB145gの混合液に添加し、ビーズミル分散機にて、分散することにより、ITO分散液を得た。ITO分散液中のITO粒子の粒子径は、堀場製作所製LB−550にて測定したところ、70nmであった。得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.19g、テルペンフェノール樹脂0.44gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.010g(塗料中の含有量が0.020質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0072】
<比較例8>
実施例1で得られたITO分散液2.50gとエチルセルロース0.13g、テルペンフェノール樹脂0.30gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒47.02gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.003g(塗料中の含有量が0.006質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は2.0質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、33質量%であった。
【0073】
<比較例9>
実施例11で得られたITO分散液47.00gとエチルセルロース0.32g、テルペンフェノール樹脂0.74gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒0.96gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.051g(塗料中の含有量が0.102質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は47.0質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、8質量%であった。
【0074】
<比較例10>
実施例1で得られたITO分散液10.38gとエチルセルロース0.14g、テルペンフェノール樹脂0.33gをMMBとMIBKを1:2の比率で混合した溶媒38.78gと混合した。最後に膜表面調整剤として上記式(3)に示される両性型含窒素フッ素系化合物のスルホベタイン型化合物を0.175g(塗料中の含有量が0.350質量%)添加し混合してITO導電膜形成用塗料を調製した。この塗料中のITO粒子の含有量は8.3質量%であり、塗料固形分中、ITO粒子以外の成分含有量は、17質量%であった。
【0075】
<比較試験及び評価>
実施例1〜14及び比較例1〜10で得られたITO導電膜形成用塗料を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.5)を用いて、厚さ1.1mm、たて100mm、よこ100mmのガラス基材と厚さ0.1mm、たて100mm、よこ100mmのポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布した。塗布後、実施例11、12及び14以外の実施例、比較例では、大気雰囲気下、80℃で3分間乾燥することにより、21種類のITO導電膜を得た。実施例11では、バーコーターで塗布後、大気雰囲気下、80℃で3分乾燥し、240mJ/cm
2(90mW/cm
2)の紫外線を照射してITO導電膜を得た。実施例12及び実施例14では、大気雰囲気下、110℃で30分間乾燥することによりITO導電膜を得た。
【0076】
ガラス基材に成膜した24種類のITO導電膜については、以下に示す方法で、ITO導電膜中の両性型含窒素フッ素系化合物及びITO粒子の各含有量を測定した。またその透明性を全光線透過率とヘーズを測定することにより、また導電性をその表面抵抗率を測定することにより評価した。PETフィルムに成膜した24種類のITO導電膜については、以下に示す方法で保護フィルムの剥離試験を行った。実施例1〜14及び比較例1〜10の各ITO導電膜形成用塗料の製造条件等を表1に、上記測定結果、試験結果を表2にそれぞれ示す。なお、表1中、膜表面調整剤の種類として、例えば「式(2)」と記載したものは、「式(2)に示される化合物」を意味する。表1中のECは、エチルセルロース、TPは、テルペンフェノール樹脂を意味する。
【0077】
(1) ITO導電膜中の両性型含窒素フッ素系化合物及びITO粒子の各含有量
得られたITO導電膜をアセトンにて溶解することで、膜成分を回収した。回収した液中のフッ素濃度を、ICP発光分析法により定量し、化合物式から、両性型含窒素フッ素系化合物濃度(質量%)を算出した。また得られたITO導電膜を酸にて溶解することで、膜成分を回収した。回収した液中のインジウム濃度を、ICP発光分析法により定量し、化合物式から、ITO粒子濃度(質量%)を算出した。
【0078】
(2) ITO導電塗料中の両性型含窒素フッ素系化合物及びITO粒子の各含有量
塗料の重量を測定後、乾燥させ、乾燥後の固形分を算出した。また得られた固形分をアセトンにて溶解し、溶解した液中のフッ素濃度を、ICP発光分析法により定量し、化合物式及び固形分濃度から、ITO導電塗料中の両性型含窒素フッ素系化合物濃度(質量%)を算出した。また得られた固形分を酸にて溶解し、溶解した液中のインジウム濃度を、ICP発光分析法により定量し、化合物式及び固形分濃度から、ITO導電塗料中のITO粒子濃度(質量%)を算出した。
【0079】
(3) 透明性(全光線透過率とヘーズ)
ヘーズメータ(スガ試験機製、型番HZ-2)を用いて、ガラス基材に成膜したITO導電膜を全光線透過率とヘーズを求め、ITO導電膜の透明性を測定した。なお、表1に記載された全光線透過率は、ガラス基材込みの数値であり、ガラス基材のみの全光線透過率は90.3%であり、同じくヘーズは0.04%であった。
【0080】
(4) 導電性(表面抵抗率)
三菱化学アナリテック製ハイレスタ(型番:MCP−HT450)を用いて、ガラス基材に成膜し、成膜2時間後のITO導電膜の表面抵抗率を加圧電圧10Vで測定した。
【0081】
(5) 保護フィルムの剥離試験
PETフィルムに成膜したITO導電膜の表面に、シリコーン系離型剤層が対向するように、シリコーン系離型剤層付き保護フィルムを積層し、この保護フィルムの上面をハンドローラーで10mm/sの速度で往復させ加圧した。これにより保護フィルムをITO導電膜表面に均一に貼合せた。24時間後に保護フィルムを静かにITO導電膜表面から剥がした。保護フィルムを剥離した後のITO導電膜の表面を目視にて観察した後、光学顕微鏡により50倍の倍率で更に詳細にITO導電膜の表面を観察した。ITO導電膜の剥離箇所が全く無かった場合を「良好」、一部剥離が有った場合を「不良」とした。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表2から明らかなように、比較例1では、膜表面調整剤を塗料中に全く含まないため、保護フィルムの剥離試験でITO導電膜の剥離が見られ「不良」であった。
【0085】
また膜表面調整剤としてポリエステル変性シリコーン系化合物を塗料中に0.025質量%含んだ比較例2では、保護フィルムの剥離試験でITO導電膜の剥離防止効果に乏しく「不良」と判定されたことに加え、表面抵抗率が15.0MΩ/□と高かった。
【0086】
同じくポリエステル変性シリコーン系化合物を塗料中に0.100質量%含んだ比較例3では、ITO導電膜の剥離防止効果が発現し「良好」と判定されたが、表面抵抗率が85.0MΩ/□と極めて高かった。
【0087】
膜表面調整剤としてカチオン型含窒素フッ素系化合物を塗料中に0.025質量%含んだ比較例4では、ITO粒子がフッ素化合物と凝集し、保護フィルムの剥離試験でITO導電膜の剥離防止効果に乏しく「不良」と判定されたことに加え、全光線透過率が85.5%と低く、ヘーズも4.0%と高かった。
【0088】
また膜表面調整剤としてアニオン型含窒素フッ素系化合物を塗料中に0.025質量%含んだ比較例5でも、ITO粒子がフッ素化合物と凝集し、保護フィルムの剥離試験でITO導電膜の剥離防止効果に乏しく「不良」と判定されたことに加え、表面抵抗率が10.0MΩ/□と高く、全光線透過率が86.6%と低く、ヘーズも3.5%と高かった。
【0089】
比表面積が70m
2/g、L値40のITO粒子を用いた比較例6は、表面抵抗率が12.0MΩ/□と高く、全光線透過率が85.3%と低く、ヘーズも10.5%と高かった。
【0090】
比表面積が35m
2/g、L値36のITO粒子を用いた比較例7は、全光線透過率が86.3%と低く、ヘーズも2.3%と高かった。
【0091】
膜中のITO含有量が68.0質量%で、塗料中のITO含有量が2.0質量%の比較例8は、薄膜であるため、剥離防止効果に乏しく「不良」と判定されたことに加え、表面抵抗率が5.3MΩ/□と高かった。
【0092】
塗料中のITO粒子の含有量が47.0質量%、塗料の固形分中のITO粒子以外の成分が8質量%であって、膜中のITO粒子の含有量が92質量%である比較例9は、樹脂成分が不足していることから、剥離防止効果に乏しく「不良」と判定されたことに加え、全光線透過率が86.8%と低く、ヘーズは2.9%と高かった。
【0093】
塗膜中の両性型含窒素フッ素系化合物を3.50質量%含んだ比較例10は、表面抵抗率が3.5MΩ/□と高く、ヘーズも2.5%と高かった。
【0094】
これに対して、膜表面調整剤として両性型含窒素フッ素系化合物を含む塗料で成膜された実施例1〜14で得られたITO導電膜は、保護フィルムの剥離試験についてすべて「良好」であり、表面抵抗率は3.0MΩ/□以下と低く、全光線透過率は87.8%以上で高く、ヘーズも2.0%以下と低かった。